27)
お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。
今現在、王国で最も有名な夫妻と言えば、私の向い側の席に座っているオリヴェル氏とカステヘルミ夫婦になるのは間違いないわね!
オリヴェル氏は自分の結婚式でやらかしまくったのは間違いないもの。名残惜しげに、切なげな眼差しでピンク頭を見つめ続けていたオリヴェル氏だけど、そのピンク頭は婚約者がいる男を弄んで楽しみまくっているような人だし!そのピンク頭を後ろから応援しているのがラウタヴァーラ公爵夫人だっていうのですもの。
しかも!しかも!結婚後、カステヘルミ夫妻は完全なる没交渉状態になっているのは皆も知るところになっているし?カステヘルミ自身が、ピンク頭の求める一妻多夫という状況を応援すると宣言しているのだもの。
面白すぎて噂がグルグル回り続けているような状態なのだけれど、そのピンク頭が実は病気を持っているんじゃないかっていう噂が第二弾となって流れ出してからというもの、何故だか私の元に相談に来る令嬢が増えているの。
「カステヘルミ様とリューディア様が親友同士の間柄だというお話は聞いております」
「実は私の婚約者が・・私の婚約者が・・」
ハンカチを握り締めながら号泣する令嬢たちが多数現れることになったのだけれど、顔が広いお母様と私が噂をばら撒いた結果とも言えるでしょう。
「ユリアナ様の所為でこんなに被害に遭われているご令嬢が居ただなんて!」
「それでもカステヘルミ様は一妻多夫を応援し続けているらしいですわよ?」
「私たちもユリアナ様の一妻多夫を応援すれば良いのでしょうか?」
「応援する形で!今すぐにでも婚約者とは手を切りたいと思っておりますの!」
北に位置するラハティ王国では『女は慎ましく従順であれ』みたいな風潮が貴族の間で広まっていたのだけれど、ユリアナ様って慎ましくもなければ従順でもないものね?確かに彼女はラウタヴァーラ公爵家の庇護下にいるのかもしれないけれど、所詮は子爵家の庶子、そこまで堂々と勝手に出来るような血筋ではないわけよ。
「「「「まあ!まあ!まあ!まあ!」」」」
「「「「信じられないわー〜!」」」」
私たちは噂が大好きなラハティ人だもの。
最近では貴族を飛び越して平民界隈にも広がりを見せているというのだから恐ろしいなとは思うのだけれど、兎にも角にも、今、最もホットな話題を作り続けているのはカステヘルミ夫妻と言えるでしょう。
そんな悪目立ち状態をしているカステヘルミ夫妻の他に、ラハティ王国でホットな話題をいつだって掻っ攫っていくのがハーク男爵夫妻なの。
男爵夫妻の経歴というのは、それは、それは、とってもユニークなものなのよ。
男爵夫人であるイザベル様は、カルコスフキ伯爵家の領地で鍋屋を営んでいた両親の元に生まれたの。鍋を作る祖父について見習いとして最初は働いていたんだけど、幼い時から穴が開いたり割れたりしない鍋を作るのにはどんな成分を鉄鋼に混ぜれば良いものかと研究をしていた天才肌だったのね。
穴が開かないようにするために、程よく頑丈で加工もしやすい鋼を作り出すためには、炭素の他にケイ素、マンガン、リン、硫黄、銅なんかを私にはよく分からない配分で混ぜていく必要があるのですって。
どれをどれだけ?何をどれだけ混ぜたら鋼はどうなってしまうのか?もっと長持ちする鍋を作るには?もっと軽量で持ち運びも簡単で、だけど強靭なつくりの鍋を作るにはどうすれば良いのか?イザベル様は研究に研究を重ねた結果、穴が開かない鍋を作り出すことに成功をすることになったというの。そこに目を付けたのがカルコフスキ伯爵家の令嬢であるカステヘルミなわけね!
鉄鋼の天才と言われるイザベル様を見出したのは間違いなくカステヘルミなのだけれど、そのカステヘルミがハーク男爵夫妻と共につい最近まで帝国に行っていたというのは有名な話になるのよ。
「リューディア様!カステヘルミ様からお話を聞いていて、いつかはお会いしたいと思っていたんです!」
イザベル夫人はダークブラウンの髪に灰色の瞳をした背の高い美人だったのだけれど、眼鏡をかけてひっつめ髪にすることで、わざと地味に見えるようにしているみたい。
「リューディア嬢、はじめまして。お噂はかねがね伺っていたんですよ」
イザベル様の夫となるダビト様も背が高い方で、黒髪に褐色の瞳の野生的な雰囲気が溢れ出ているような方ね!
二人と握手をして挨拶を交わすと、隣に立っていたおじさんが、
「実はメゾンのマダムがどうも怪しいということを我々に教えてくれたのがハーク夫妻なんだよ」
と、言い出した。
おじさんの部下が冷めたお茶を入れ替えてくれたので、私たちは再び応接セットのソファに座ることになったのだけれど、そこでおじさんが私に説明してくれたのよ。
「リューディア、お前も知っての通りハーク男爵夫妻はつい最近まで帝国に滞在していたのだが、ご夫妻の知り合いとなる帝国貴族が、とある高級娼婦に騙される形で有り金全部を持ち去られることになったんだ」
私がご夫妻の方を見ると、二人は大きなため息を吐き出しながら言い出したの。
「昨年のことになるのですけれど、私たちの恩人とも言えるような方がこの帝国貴族に巨額の出資をしておりました。結局、その高級娼婦に恩人が出資した資金まで持ち去られることとなりまして」
「そこで俺たちは詐欺を働いた高級娼婦の行方を探していたのですが、結局見つけることも出来ないまま王国へ戻ることになったわけなんだ」
王国に戻って来たご夫妻は、帝国の最先端のデザインを取り入れたドレスを作るという話題のメゾンがあることを知ることになったというの。最先端とはどれほどの物になるのかと興味を持つことになったご夫妻は、ーメゾンを覗いてみることになったのだけど、
「帝国で詐欺を働いた高級娼婦がメゾンのマダムとして店を取り仕切っていることに気が付いて、これは明らかにおかしいと思ったんです」
高級娼婦が一朝一夕でここまで繁盛するメゾンを作り出せる訳がないって思ったのですって!
そこで二人は知り合いであるおじさんに相談をすることになったのだけれど、その時、おじさんは劇場通りの売春が問題になっていることを知っていたため、
「二人に言われてマダムに目をつけることになったんだが、最初はマダムが売春の元締めだとは思いもしなかったんだよな」
と、おじさんはため息交じりに言い出したのよ。
「劇場通りで行われている売春は女衒が女を仲介する形で、娼館を利用するわけではなく、近隣の宿泊所を利用する形になるわけだ。可愛らしい素人の女の子を相手に出来るとあって噂にもなっていたようなんだが、その可愛らしい素人の女の子っていうのがメゾンで働く針子の女の子たちだったんだよな」
「そこにジェニーさんのお姉様も含まれていたというわけよね?」
私もミカエルの家に来ているメゾンのマダムを見たことがあるのだけれど、泣きぼくろがやたらと色っぽい美人ではあったのよ。ミカエルのお母様は私にもドレスを作ってくれると言っていたのだけれど、断って本当に良かったわ!
「ハークご夫妻はメゾンのマダムを通して流れていく金の行き先を気にされていた。我々も彼女たちが作り出す金の受け渡し先にオムクス人がいるのは間違いないと判断したため、監視の目を強めることにしたのだが、敵に先手を打たれた形になったのは間違いない事実だ」
オリヴェル氏がうんざりした様子でそう言うと、ハーク男爵が私の方を見てにこりと笑いながら言い出したのよ。
「実は今日の朝、うちの侍従が死体となって発見されまして」
「死体ですか・・」
「どうも内臓を引き抜かれているみたいなんですよね」
「内臓を・・」
するとオリヴェル氏とおじさんが私の方を真面目な顔で見つめながら言い出したのよ。
「「悪いんだけど、男爵家の侍従のご遺体を、確認に行ってはくれないか?」」
そこで、二人で声を揃えるところが嫌いだわ。
「なんでおじさんがご遺体の確認に行かないのよ?」
「おじさんは、古代文字の確認をしにマリアーナ嬢のところに行かなければならないんだ」
「どうしてよ?マリアーナのところだったら私が行くわよ!」
「おじさんの部下がこれからハーク男爵と一緒にご遺体を確認しに行くんだが、これに同行をして、十年前にも同じような遺体を飽きるほど見たうちのリューディアの観察力を発揮して欲しいと思っているんだ」
「え・・なんで・・なんでまたご遺体の確認なんかを・・」
するとオリヴェル氏がぺこりと頭を下げて言い出したのよ。
「リューディア嬢、本当に申し訳ないんだが同道を頼みたい」
「なんでそんなことを私に頼むんですか?」
「悲しい話なんだが、今現在、信頼できる人間があまりにも少ない状況なんだ」
ちっとも家に帰れていないオリヴェル氏が、目の下の隈を真っ黒にしながら言い出したわ。
「思いの外、オムクスの間諜が中に紛れ込んでいるようなんだ」
「本当にそうみたいですね」
そこでうん、うん、と頷きながらハーク男爵が言い出したのよ。
「敵の手は我が男爵家にまで伸びていたのは間違いないですしね、まさかうちの侍従が殺されるなんて思いもしませんでしたよ」
「だからって私を利用しますか?」
私は思わず仰け反りながら言っちゃったわよ。
「私、医者でも何でもないんですよ?」
みんながにっこりと笑って私を見ている。何故?何故なの?素人の娘っ子が遺体の確認をしに行くだなんて!そんなの小説の中だけにして貰いたいわよ!
こちらの作品、アース・スター大賞 金賞 御礼企画として番外編の連載を開始しております。殺人事件も頻発するサスペンスとなりますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!
モチベーションの維持にも繋がります。
もし宜しければ
☆☆☆☆☆ いいね 感想 ブックマーク登録
よろしくお願いします!