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言われた通り、僕は水晶に手を当てた。
ひんやりしている。
少しだけ、嫌な予感がした。
――次の瞬間。
水晶の中で、魔力が渦を巻いた。
ただし、綺麗な光じゃない。
どこか濁っていて、
色も定まらず、もやもやしている。
受付嬢は水晶を見つめ、首をかしげた。
「……濁ってて、汚い魔力ですね」
(失礼もいいところだ)
思わず反論しかけたが、飲み込む。
ここで揉めても得はない。
「これだと、正確な魔力量が測定できません」
受付嬢は淡々と続ける。
「ですので、とりあえず――
一番下のEランクからのスタートになります」
そう言って、カード状のものを差し出してきた。
「こちらが冒険者証明証です。
これから頑張ってくださいね」
(雑にまとめられたな……)
とはいえ、文句はない。
最初は誰でも下からだ。
「ここで、依頼を受けますか?」
「あ、はい」
即答だった。
受付嬢は依頼一覧に目を落とす。
「Eランクですと、
魔沈草の採取、土木掃除、
それから――村に発生したゴブリンの討伐などがありますが?」
「じゃあ……ゴブリン討伐で」
一瞬の迷いもなかった。
受付嬢は少しだけ驚いたような顔をしてから、頷く。
「承知いたしました」
「ゴブリンは、ここから北方の村に三十匹ほど出現しています」
三十匹。
(……まあ、数は多いけど)
「他のEランク冒険者四名と、
Bランク冒険者一名で討伐隊を組みます」
Bランクがいるなら、致命的なことにはならないだろう。
「移動手段については、ギルドが馬車を出します」
「出発は二時間後です。
それまでに、このギルドの受付前に集合してください」
「わかりましたー」
軽く返事をして、冒険者証を受け取る。
Eランク。
最低ランクだけど、問題ない。
(ここからだ)
ゴブリンを倒して、
魔力を外に流す。
目的は、ただそれだけ。
僕は、受付から離れ、
ギルドの壁にもたれかかった。
出発まで、あと二時間。
(……少し、休もう)
走ってきた疲れが、今になってどっと出てきた。
冒険者としての最初の仕事は、
もうすぐ始まる。