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凡人は正々堂々を捨てた - 36
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 言われた通り、僕は水晶に手を当てた。


 ひんやりしている。

 少しだけ、嫌な予感がした。


 ――次の瞬間。


 水晶の中で、魔力が渦を巻いた。

 ただし、綺麗な光じゃない。


 どこか濁っていて、

 色も定まらず、もやもやしている。


 受付嬢は水晶を見つめ、首をかしげた。


「……濁ってて、汚い魔力ですね」


(失礼もいいところだ)


 思わず反論しかけたが、飲み込む。

 ここで揉めても得はない。


「これだと、正確な魔力量が測定できません」


 受付嬢は淡々と続ける。


「ですので、とりあえず――

 一番下のEランクからのスタートになります」


 そう言って、カード状のものを差し出してきた。


「こちらが冒険者証明証です。

 これから頑張ってくださいね」


(雑にまとめられたな……)


 とはいえ、文句はない。

 最初は誰でも下からだ。


「ここで、依頼を受けますか?」


「あ、はい」


 即答だった。


 受付嬢は依頼一覧に目を落とす。


「Eランクですと、

 魔沈草の採取、土木掃除、

 それから――村に発生したゴブリンの討伐などがありますが?」


「じゃあ……ゴブリン討伐で」


 一瞬の迷いもなかった。


 受付嬢は少しだけ驚いたような顔をしてから、頷く。


「承知いたしました」


「ゴブリンは、ここから北方の村に三十匹ほど出現しています」


 三十匹。


(……まあ、数は多いけど)


「他のEランク冒険者四名と、

 Bランク冒険者一名で討伐隊を組みます」


 Bランクがいるなら、致命的なことにはならないだろう。


「移動手段については、ギルドが馬車を出します」


「出発は二時間後です。

 それまでに、このギルドの受付前に集合してください」


「わかりましたー」


 軽く返事をして、冒険者証を受け取る。


 Eランク。


 最低ランクだけど、問題ない。


(ここからだ)


 ゴブリンを倒して、

 魔力を外に流す。


 目的は、ただそれだけ。


 僕は、受付から離れ、

 ギルドの壁にもたれかかった。


 出発まで、あと二時間。


(……少し、休もう)


 走ってきた疲れが、今になってどっと出てきた。


 冒険者としての最初の仕事は、

 もうすぐ始まる。

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