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指定された時間にギルドの前へ行くと、すでに馬車が用意されていた。
その横に、数人の冒険者が集まっている。
たぶん――今回の討伐隊だ。
Eランク冒険者が四人。
それから、一人だけ明らかに雰囲気の違う男がいた。
装備がいい。
立ち方も、視線も、どこか上からだ。
(ああ、あれがBランクか)
全員が揃ったところで、馬車に乗り込む。
中は思ったより狭く、自然と向かい合う形になった。
「じゃ、移動中に軽く自己紹介しとくか」
Bランク冒険者が、腕を組んだまま言った。
口調からして、すでに面倒くさい。
Eランクの冒険者たちは、順番に名乗っていく。
緊張した声。控えめな態度。
それを聞きながら、Bランク冒険者は鼻で笑った。
「へえ……まあ、Eランクって感じだな」
空気が、少し沈む。
誰かが視線を落とし、
誰かが口を閉ざす。
自分が劣っているという事実。
それと、うっすらとした嫌悪。
でも――
(……話長いな)
僕は、正直どうでもよかった。
話の内容も、
誰が何ランクかも、
ほとんど頭に入っていない。
窓の外を見ながら、
今夜どうやって魔力を外に流すか、そればかり考えていた。
「おい」
声をかけられて、ようやく顔を上げる。
Bランク冒険者が、こっちを睨んでいた。
「お前、聞いてたか?」
「あ、えっと……ごめん。ちょっと考え事してた」
それが、気に食わなかったらしい。
「はぁ?
Eランクのくせに、随分余裕だな」
そこからは、露骨だった。
他の冒険者にも当たりは強い。
でも、僕にだけは、明らかに一段階きつい。
見下すような視線。
刺すような言葉。
(……ああ、こういうの)
どこにでもいる。
強くなった途端、
自分より下を探して安心するタイプ。
(だからBランク止まりで、
ゴブリン討伐なんてやってるんだろ)
そう思っただけで、口には出さなかった。
反論する価値もない。
馬車は、しばらくして目的の村に到着した。
――そして、僕たちは言葉を失った。
家は壊れ、
道には血の跡が残り、
人の気配が、やけに少ない。
生き残った住民たちが、
怯えた目でこちらを見ていた。
(……半分くらい、死んでるな)
ゴブリンは、弱い。
でも、数と奇襲が揃えば、こうなる。
「ゴブリンは夜に来るらしい」
誰かが言った。
「……なら、待つか」
日は、まだ高い。
戦いは、
これからだった。