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凡人は正々堂々を捨てた - 37
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37


 指定された時間にギルドの前へ行くと、すでに馬車が用意されていた。

 その横に、数人の冒険者が集まっている。


 たぶん――今回の討伐隊だ。


 Eランク冒険者が四人。

 それから、一人だけ明らかに雰囲気の違う男がいた。


 装備がいい。

 立ち方も、視線も、どこか上からだ。


(ああ、あれがBランクか)


 全員が揃ったところで、馬車に乗り込む。

 中は思ったより狭く、自然と向かい合う形になった。


「じゃ、移動中に軽く自己紹介しとくか」


 Bランク冒険者が、腕を組んだまま言った。

 口調からして、すでに面倒くさい。


 Eランクの冒険者たちは、順番に名乗っていく。

 緊張した声。控えめな態度。


 それを聞きながら、Bランク冒険者は鼻で笑った。


「へえ……まあ、Eランクって感じだな」


 空気が、少し沈む。


 誰かが視線を落とし、

 誰かが口を閉ざす。


 自分が劣っているという事実。

 それと、うっすらとした嫌悪。


 でも――


(……話長いな)


 僕は、正直どうでもよかった。


 話の内容も、

 誰が何ランクかも、

 ほとんど頭に入っていない。


 窓の外を見ながら、

 今夜どうやって魔力を外に流すか、そればかり考えていた。


「おい」


 声をかけられて、ようやく顔を上げる。


 Bランク冒険者が、こっちを睨んでいた。


「お前、聞いてたか?」


「あ、えっと……ごめん。ちょっと考え事してた」


 それが、気に食わなかったらしい。


「はぁ?

 Eランクのくせに、随分余裕だな」


 そこからは、露骨だった。


 他の冒険者にも当たりは強い。

 でも、僕にだけは、明らかに一段階きつい。


 見下すような視線。

 刺すような言葉。


(……ああ、こういうの)


 どこにでもいる。


 強くなった途端、

 自分より下を探して安心するタイプ。


(だからBランク止まりで、

 ゴブリン討伐なんてやってるんだろ)


 そう思っただけで、口には出さなかった。


 反論する価値もない。


 馬車は、しばらくして目的の村に到着した。


 ――そして、僕たちは言葉を失った。


 家は壊れ、

 道には血の跡が残り、

 人の気配が、やけに少ない。


 生き残った住民たちが、

 怯えた目でこちらを見ていた。


(……半分くらい、死んでるな)


 ゴブリンは、弱い。

 でも、数と奇襲が揃えば、こうなる。


「ゴブリンは夜に来るらしい」


 誰かが言った。


「……なら、待つか」


 日は、まだ高い。


 戦いは、

 これからだった。


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