38
日が沈む前、僕は罠を仕掛けた。
簡単なものだが、完璧だった。
落とし穴の下に槍が立っているタイプ。
普通のゴブリンなら、動きを止めるには十分だ。
他の冒険者たちは、少し離れた場所で仮眠を取る。
Eランクも、僕も、体力温存だ。
そして、夜が訪れた。
森の奥から、ゴブリンの群れが現れる。
数は想像以上に多く、Eランクたちは慌てふためいた。
それでも、なんとか戦っている。
僕も戦い始めるが、数が多すぎてやばい。
狙った通り、仕掛けていた罠にゴブリンを誘導する。
落とし穴に落ちたゴブリンに、僕は油魔法を浴びせた。
炎が一気に広がり、まとめて燃える。
「よし、いっぺんに行ったぜ〜」
振り返る。
新鮮な死体から放たれる魔力を浴びて、少しだけゲートの詰まりが解消される。
気のせいかもしれないが、まぁいい。
(よし、他の奴もさっさと片付けるか)
後ろを見た瞬間、目が合った。
――Bランクの冒険者だったと思う。
こっちを後ろから押そうとしている。
一瞬、そいつは固まる。
焦ったのか、体重を乗せて思いっきり殴ってきた。
スッ、と避けた。
次の瞬間、そいつは僕が作った罠の中に落ちていった。
落ちたときの悲鳴と地面に刺さった槍の音。
勝手に起こったことだが、なぜか少しスッとした気分になった。
穴に落ちたBランク冒険者は、まだ息があった。
生きている……このままだったら、もしかすると助かってしまう。
(やばい。もしこいつが回復して、ギルドで “Eランクのレインとか言う奴が不意打ちでやった” とか言ったら、僕はおしまいだ。ギルドは高いランクを優遇している。そしたら当然Bランクの方を信じるだろうし)
落ちた本人は、焦った顔で僕を見上げていた。
「おい……助けてくれ!仲間だろ!」
仲間?
さっき僕を罠に落とそうとして、さらに拳で仕留めにきたやつが、よく言えるな。
(ここで迷ってる場合じゃない。僕は生き残る側に回らなきゃいけない)
僕は静かに落とし穴の縁へ歩み寄った。
「すまない。僕は、こんなところで終わっていい人間じゃないんだ。」
それを言って、剣を突き下ろす。
抵抗が一瞬だけあったが、その後すっと軽くなった。
その瞬間、僕の中の“ゲート”がぐっと開く感覚が走った。
まるで何かが体の奥で外れたみたいに、魔力の通りが一段滑らかになった。
(えっ……どういうことだ?
僕が倒したのは、人間だぞ。
人間を殺してゲートが開くなんて聞いた事がない。
しかも、ゲートの開き方はゴブリンを倒したときより遥かに大きい。
……やっぱり、僕だけの“とくべつな力”が出てきなのでは?!)
僕は、少し笑った。
「これは、いいですねーー」