【十九人目】 嘘がつけない幼馴染みに俺のことをどう思っているのか聞いてみた
俺の幼馴染みは嘘がつけない。
俺はそんな正直な彼女が羨ましいと思っている。
誰に対しても嘘をつかない彼女。
俺も彼女みたいに正直にいろんなことを言いたい。
「あっ、そこの赤いスカートを履いているお姉さん」
「えっ、私?」
幼馴染みの彼女と一緒に下校中に、彼女が前を歩いている女の人に声をかけた。
「スカートの裾が地面についていますよ」
「えっ、ありがとう」
彼女が女の人にそう言うと、女の人は焦ったようにスカートの裾を上げて、早歩きで行ってしまった。
「また何か見つけたみたいだね?」
俺は彼女にそう言った。
「そうなの。スカートの裾が汚れちゃうから教えてあげたのよ」
「そうなんだね。君は偉い子だね」
俺はそう言いながら彼女の頭を撫でた。
彼女は無表情でされるがままだった。
◇
彼女が嘘をつけないのは昔、彼女が嘘をついたことにより、彼女の弟が危険な目にあったことが原因だ。
彼女は教えてくれないから、詳しくは知らないが、彼女は自分を責めている。
そして嘘をつかない、正直になるという選択をしたんだ。
◇
「ちょっと、調子に乗るのはやめてもらえる? 可愛いからって、この子の傷つくことを言っていいと思っているの?」
俺は昼休みに彼女を探して校舎裏に来ていた。
すると女子の声がした。
バレないように何をしているのか物陰から見た。
するとそこには、幼馴染みの彼女と女子が三人いた。
「えっ、傷ついたならごめんね。誰にも聞こえないように、歯に青のりがついていることを教えたんだけど、他の人にも聞こえてたかな?」
彼女の言葉に一人の女子が顔を赤くしている。
「あなたがしているのは余計なお世話よ」
さっきから彼女に文句を言っている女子は、顔を赤くしてうつむいている女子の為に言っているのだろう。
自分で言えばいいのに。
俺は見ていてそう思った。
「誰も教えてあげてなかったから教えたのよ。ちゃんと言わなきゃ傷つくのは彼女だと思ったの。それもダメだったのかなぁ?」
「本人に言わないで、私に言ってくれれば彼女に言ったのよ」
「あんなにずっと彼女と一緒にいたのに、気付かなかったの?」
「言うタイミングを考えていたのよ」
「そうだったの? てっきり気付いていたのに、教えてあげない意地悪な人だと思っていたわ」
彼女の言葉に、文句を言っている女子の顔が怒りで歪む。
「なんなのよ。ムカつく」
女子は彼女の肩を押す。
彼女は押されたことにより、バランスを崩して後ろへ倒れる。
「痛い」
「あんたが人をバカにするから悪いのよ」
女子はそう言って、彼女を置き去りにしていった。
「大丈夫?」
俺は女子達がいなくなるのを確認して、彼女の前に立って手を差し出した。
彼女は俺の手を取り、立ち上がる。
「どうしてここにいるの? もしかして見てた?」
「うん」
「私は悪いことをしたのかな?」
「してないよ。君は間違ってないよ」
「それならどうして私は、あの子にあんなに言われなきゃいけないの?」
「君に言われて図星だったからだよ」
「図星だったの?」
彼女は首をかしげて言った。
「君の言葉で彼女達の関係は変わると思うよ。良くなるか悪くなるかは分からないけどね」
「余計なお世話だったかなぁ?」
「そんなことはないよ。君は偉い子だね」
俺はそう言って彼女の頭を撫でた。
「ねぇ、どうしていつも私の頭を撫でるの?」
いつもは彼女の頭を、俺が気が済むまで撫でて、彼女は無表情でされるがままなのに、今日は違う。
彼女は俺に撫でる理由を聞いてきた。
何故、撫でるのかなんて考えたことがなかった。
「何でなんだろう?」
「意味もなく撫でるの?」
「それなら君は、どんな気持ちで撫でられているんだよ?」
「私はあなたから、ペットと思われているんだって思っているわ」
「ペット?」
「だって動物を撫でるのって気持ちいいでしょう? それが好きだから撫でてるのよね?」
彼女はペットを撫でる時の気持ち良さを、思い出しながらニコニコして言った。
「好き?」
「好きだからでしょう?」
「君は? 好きなの?」
「えっ」
「君は撫でられるのは好き?」
「あっ、うん。好きだよ」
彼女が好きと言うと、俺はドキッとした。
俺に言っている訳じゃないのに、勝手に脈が速くなる。
もし、彼女に俺のことが好きって言われたら、俺の心臓はどうなるのだろう。
◇◇
「今日は友達と遊んで帰るから、君は先に帰ってていいよ」
ある日、俺は彼女といつも学校から家まで一緒に帰っているのに、友達に誘われて遊びに行くことにした。
「ダメよ。あなたとは離れないわ」
「いつも離れてるじゃん。クラスも違うし、部活も違う。それに休み時間だって一緒に過ごさないじゃん」
「だから一緒に帰るのは私とだけなのよ」
「俺だって友達と遊びたいときはあるんだよ」
「ダメなの。あなたは私と一緒に帰るの」
彼女はどうしても意見を曲げない。
「俺って君の何?」
「それは、いなくなっては困る人よ」
「それって一人じゃ寂しいってことなのかよ?」
「そうよ」
「それって俺じゃなくてもいいじゃん」
「そっそれは、、、」
「君も友達と帰ればいいじゃん」
俺はそう言って彼女に背を向けて歩く。
彼女がダメだと言っても、俺は彼女の恋人でもないし、彼女の御機嫌とりをする為にここにいる訳でもない。
友達と遊んで家へと帰って、何となく彼女の部屋を見ると、灯りがついていない。
彼女はまだ帰っていないのだろうか?
ご飯を食べた後、自分の部屋へ戻り、彼女の部屋を見てもまだ、灯りはついていない。
彼女のことが心配になった。
「おいっ、入るぞ」
俺の部屋に誰かが勝手に入ってきた。
「姉貴がウザイんだけど、兄貴だろう? 原因は」
俺の部屋に入ってきたのは彼女の弟だ。
彼女の弟とは仲が良く、俺を兄貴のように慕ってくれる。
「ウザイってどんな風にウザイんだよ?」
「俺から離れないし、俺の心配ばかりするんだよ」
「そんなの昔からだろう?」
「俺が小さい頃はそうだったけど、今は兄貴だろう?」
「俺? そうか?」
「気付いていなかったのか?」
「だって、あいつが側にいるのは当たり前だったからな」
「それなら姉貴の側にいてやってくれ」
「そうだな」
弟に言われて気付いたよ。
俺って彼女が側にいるのが当たり前だったんだな。
それから彼女の部屋へ向かった。
彼女は弟からウザイと言われ、落ち込んで部屋にいるようだ。
「俺だけど、入ってもいいか?」
「ダメ。だってあなたもウザイって言うんでしょう?」
「俺は言わないよ。今まで言ったことは無いだろう?」
「そうだけど、思っているでしょう?」
「思わないよ。だから開けてくれるか?」
すると彼女が、ドアを開けて俺に入っていいよと言ってくれた。
彼女の部屋へ入ると、暗かった。
「灯りをつけるぞ」
「ダメ。このまま話そうよ」
「分かった。それで? どうして弟に嫌われるようなことをしたんだよ?」
「だってあなたが私を一人にするからよ」
「一人って、学校から家までの距離だろう?」
「一人が怖かったの。あの日のように、あなたもなってしまったら、私は立ち直れないわ」
彼女は不安そうに俺を見る。
「あの日って弟のこと?」
「うん。あの日の私は弟に嫉妬していたの。だからお母さんには弟は部屋にいると嘘をついて、弟にはお母さんが迎えに来るまで、公園で待つように言ったの」
「それでどうなったんだよ」
「弟は寒い冬に公園でお母さんを待ってたの。お母さんに弟がいないことがバレて、弟を迎えに言ったけど、弟は寒くて震えていたわ。そして次の日、熱を出したの」
彼女は本当に反省しているようだ。
「その話は小さい頃の話なんだから、気にしなくていいと思うけどな? 弟も気にしているようには見えないよ」
「私は、もう嘘は二度と言わないわ」
「それなら俺のことは好きか?」
「好きよ」
彼女の好きという言葉に、俺の心臓は壊れそうな程に速くなる。
こんなにドキドキするなんて、俺は彼女のことが好きなんだ。
「幼馴染みとしては好きか?」
「うん。好きよ」
「友達としては好きか?」
「うん。好きよ」
「男としては好きか?」
「うん? 好きよ?」
彼女に男として好きなのか聞くと、首を傾げて言った。
「それなら恋人としては好きか?」
「えっ」
彼女は驚くだけで何も答えない。
どんなに正直な彼女でも、恋愛のことになると正直にはなれないんだと思う。
俺を傷つけないように、言葉を選んでいるんだと思う。
だから何も答えないんだ。
「ごめん。困らせたよね? 嘘がつけない君だから、今は頭の中で俺のことをどうすれば傷つけないのか、考えているよね?」
「そんなことはないよ」
「さっきのことは忘れてよ。俺は君の友達でいいんだ」
「嘘はつきたくないわ」
「うん。知ってるよ」
「でも、あなたには知られたくないの」
「何を?」
「あなたへの気持ちを」
暗闇で目が慣れた俺は、彼女がうつむいて言ったのが見えた。
「それはもう、分かっているから。言わなくていいよ。どんな言葉を聞いても俺は傷つくからね」
「好きって言っても?」
「えっ」
「私はあなたのことが好きよ」
「それは友達としてでしょう?」
「違うよ」
「それなら幼馴染みとしてってことかな?」
「違うよ」
「待ってよ。君は嘘なんてつかないよね?」
「うん。嘘は絶対につかないよ」
「それなら俺を恋人として好きなの?」
「うん。大好きだよ」
彼女は笑顔で俺に言った。
「嘘じゃないよね?」
「嘘じゃないよ。嘘はつけないからね」
「だから黙るんだね?」
「うん。私の気持ちをあなたに知られたくなかったの」
「それって嘘をつくつもりだったのか?」
「どんなに頭の中で嘘を考えても、言葉にはできなかったよ」
「ごめん。俺のせいで、君に嘘をつかせるところだったね」
「でも、あなたが私に嘘をつかせることはないよね?」
「そうだね。もう君の気持ちは知っているからね」
「ねぇ、頭を撫でてよ」
「うん」
俺は彼女の頭を撫でる。
彼女は嬉しそうに笑っていた。
「大好きだ」
俺は可愛い笑顔の彼女に知ってほしくて言った。
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次のお話は、いつでも笑顔の同級生の美少女が、主人公の彼にはいつもとは違う笑顔を見せる物語です。
その意味を知った時、二人の関係が変わっていく。