【五十八人目】 恋愛結婚が当たり前だと思っていた俺は政略結婚をさせられました
俺は、好きな人と色んな事を乗り越えた先に、結婚があるのだと思っている。
恋人になったからと、相手に対して態度を変える事もなく、いつまでも好きだと言い続けたい。
そして相手が俺を愛して俺も相手を愛して、結婚という形が生まれるんだと思っている。
それなのに俺は、明日から知らない女性と住むことになった。
住むだけでも驚きなのに、その相手と結婚をするんだ。
親が勝手に決めた、親の利益を考えての政略結婚だ。
俺の意見なんて無視だ。
俺が嫌だと思っているなら、相手もそうだと思う。
しかし婚姻届は勝手に出されていた。
知らない間に俺は結婚していた。
両親に政略結婚を何故したのか聞くと、家のお店の経営がうまくいっていなかったが、俺の結婚相手になった方の両親が、援助を申し出てくれたみたいだ。
その条件が、俺と相手の方の娘さんとの結婚だった。
俺には、恋人なんていなかったからそれは良かった。
俺は恋人いない歴が年齢と同じだ。
だから結婚なんてできないと思った両親は、勝手に決めたのかもしれない。
それでもヒドイ話だ。
◇
次の日。
俺は新居となるマンションを訪れた。
何階建てなのか分からないほど高い。
上を見ていると首が疲れそうだ。
聞いた部屋番号までエレベーターに乗る。
鍵を開けると広い玄関が現れた。
俺ってもしかして金持ちになったのか?
なんて思うほど玄関が広く廊下が長い。
奥の部屋のドアが遠い。
俺は奥の部屋のドアを目指した。
途中にドアがたくさんあったが、今は奥の部屋を目指した。
奥の部屋がリビングだと信じて。
奥の部屋を開けると、まず目に入ったのは、大きなガラス窓から見える綺麗な景色だった。
綺麗な景色は額縁に収められているように見えて、窓枠は木でできていて額縁のようなデザインだった。
俺は綺麗な景色に見惚れて動けなかった。
「そんなに綺麗な景色ですか?」
人の声に驚き、俺は声のする方を見る。
「あっ」
「私が今日から、あなたの妻になる者です。宜しくお願い致します」
彼女は綺麗にお辞儀をした。
お嬢様なのだろうか?
綺麗な白いワンピースがお似合いだ。
そして彼女は美人だった。
「あっ、俺が今日から君の夫になる者です。宜しくお願い致します」
俺も彼女の真似をするように挨拶をして、軽く頭を下げた。
「指輪はしていますか?」
「あっ、はい」
俺はそう言って、彼女に左手を見せると、彼女も左手を見せて嬉しそうに笑っていた。
どうしてそんなに嬉しいのだろうか?
初めて会ったのに。
「不思議そうな顔をしていますね?」
「えっ」
顔に出ていたのか?
俺って顔に出るタイプだったようだ。
言われた事がないから初めて知ったよ。
「あなたは覚えていないのですね?」
「えっ」
「私とあなたは、今日が初めてじゃないんですよ?」
「俺は君と会った事があるの?」
「はい。私が高校生の時です」
「そうなると俺は? 何歳?」
「大学生だと思います」
「大学かぁ。君に会った覚えがないんだけどなぁ?」
俺は大学時代を思い出す。
「あなたは私の顔色が悪いことに気付いて、電車の席を譲ってくれました」
「そんなことがあったんだね。席を譲るってのはよくあるから覚えていないよ」
「そうでしょうね。私は、あなたが何度も席を譲っているのを見ましたから」
「声を掛けてくれれば良かったのに」
「できません。だって私は社長令嬢なので、それを知ってあなたが離れていくと思ったら、声を掛けられませんでした。話し掛ければ、何か変わったのかもしれませんが、、、」
彼女は後悔しているように見えた。
「それで、俺との結婚を決めた訳?」
「はい。ダメですか?」
彼女は恥ずかしそうに俺を見つめて言った。
「結婚よりも先に、恋人になってからでも良かったんじゃないのかな?」
「それでは、あなたが誰かに取られてしまいます」
「俺なんか、誰も好きにはならないよ」
「あなたは、自分の魅力に気付いていないみたいですね。だから結婚をして、あなたの隣で毎日教えてあげますね」
「それなら今日の俺の魅力は何?」
「綺麗な景色を見て見惚れている所です。あなたまでその景色に溶け込んでいるみたいでした」
「それって俺の魅力なの?」
「魅力です。あんな景色を見ても、何とも思わない人だっていますから」
彼女は当たり前ですと付け加えて言った。
彼女からすれば、何でも魅力になるのかもしれない。
俺をずっと見ていたんだからね。
だったら俺もこれからは、彼女を見るよ。
隣で笑う彼女をね。
そして彼女のこともたくさん知っていこう。
俺達は今、始まったんだ。
他の人達より遅いスタートラインだ。
結婚からが始まりなんて、それもいいかもしれない。
俺と彼女なら。
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次のお話は、アロマキャンドルが主人公の机の上にあることから始まる物語。
主人公の彼は、それを新しいいじめだと思っていると、そのアロマキャンドルの持ち主は学校で有名な美少女だったのです。