【八十九人目】 平凡が嫌な幼馴染みは、元恋人にざまぁをして学校のマドンナになった。そして、、、
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とても嬉しく思っております。
「平凡は嫌よ」
俺の幼馴染みは、俺の部屋に来て泣きながらそう言った。
俺が泣かせたのではない。
彼女は彼氏にフラれて泣いている。
「平凡の何が嫌なんだよ?」
「だって彼が、私といたら平凡過ぎてつまらないって言ったの」
「だから別れてくれって言われたのか?」
「そうよ」
「俺は平凡は好きだけどなぁ。平凡って変化がないからいつも通りってことだろう? 君とこんな風に話すことも平凡だろう?」
「それなのに、それがつまらないって彼は言ったのよ? だから私だって平凡じゃないって所を見せてあげるわ」
「おっ、もしかして見返してやるつもりなのか?」
「そうね、私をフッたことを後悔しても遅いんだからね」
「まあ、頑張れよ」
俺は彼女の言葉をなんとなく聞いていた。
見返すことなんてする必要はない。
彼女を傷つける男なんか彼女に相応しくないのだから。
◇
「おはよう」
それから一週間後、彼女が家から出てきて俺は驚いた。
いつものポニーテールは何処へ?
彼女はショートヘアーになっていた。
初めてのショートヘアーだ。
彼女はいつも長い髪だったからすごく新鮮だ。
「その髪型も似合うよ」
「あっ、ありがとう」
彼女は俺に褒められると思わなかったのだろう。
少し照れていた。
「最初があなたで良かったよ」
「何が?」
「あなたは私に嘘なんてつかないでしょう? だから褒めて貰ったことが本当に嬉しいのよ」
「誰が見ても褒めると思うよ。本当に似合っているからね」
「そんなに言われたら嘘っぽく聞こえるわよ」
そう彼女は言いながらも、頬は少し赤く染まっていた。
彼女と歩いていると視線が痛い。
彼女もそれに気付いているようだ。
何かソワソワ落ち着かない。
「どうしたんだよ?」
「何か見られているわよね?」
「そうかもな」
「気にならないの?」
「悪いことをしている訳じゃないのに、人の目なんか気にする必要はないだろう?」
「そうだけど恥ずかしいでしょう? ほらっ、また男の人がチラチラこっちを見てるよ」
彼女は困っているようだ。
仕方がない。
俺がどうにかすればいいんだろう?
「今日は、君の好きなあのお店に行こうか?」
「えっ、いいの? あんなに行きたくないって言っていたのに?」
「君がフラれた残念会でもしようか?」
「うん。でも、あんな可愛いお店に行ったら、フラれたことも忘れそうね」
彼女の好きなお店は、女の子が好きそうなピンク色でギラギラしていて、色んなスイーツが売っている。
彼女は俺と一緒に行きたいと前から言っていた。
「もう忘れてるよ?」
「えっ、何を?」
彼女は首を傾げて言った。
「人の目だよ」
「あっ」
「昔から君は単純なんだよ」
「昔からって、昔は子供なんだから仕方がないでしょう?」
「それなら今も子供ってことだよな?」
「ちっ、違うわよ。私はちゃんと大人になったんだからね」
彼女はそう言って俺に学生証を見せる。
「何で学生証なんだよ?」
「私は高校生よ。顔も大人でしょう?」
「なんだよそれ?」
俺は彼女の可愛い行動に笑ってしまった。
そんな俺を見て彼女は、頬を膨らませ怒っている。
そんな彼女の顔も、ショートヘアーになったからなのか新鮮に見えた。
その日の彼女は学校で大人気だった。
みんなが彼女に髪型が似合っていると言っていた。
彼女と一緒に歩いていると、すれ違う後輩や先輩などが彼女のことを、モデルやアイドルみたいだとコソコソと話をしていた。
彼女はそんなことは聞こえていないようだ。
ずっと俺に向かって嬉しそうに笑っていた。
その理由は、彼女の好きな可愛いお店の、メニューを思い出しながら俺に教えてくれていたからだ。
俺は昔から思っていた。
彼女はとてつもなく可愛いのだと。
知っているのは俺だけでいい。
彼女の魅力を知るのは俺だけで、、、。
◇
放課後、彼女と可愛いお店に向かう。
お店に着くと女性ばかりだった。
俺が彼女と中に入るとジロジロと見られた。
場違いな俺に視線が集まる。
「みんながあなたを見ているわね?」
彼女は少し苦笑いで言った。
「俺のことはいいから、楽しみなよ」
「それなら、テイクアウトメニューから選ぶわね?」
「テイクアウト? ここで食べないのか? せっかく可愛い机や可愛い壁紙があるのに?」
「あなたとココにこれただけでいいの。だから、あなたの部屋で食べようよ」
「それでいいのか?」
「いいの」
彼女はそう言って、ショーケースにあるスイーツを見ている。
気を使っているのは分かっている。
そんな優しい彼女も俺は好きなんだ。
俺は昔から彼女のことを好きなんだ。
彼女に好きな人ができても、彼女に恋人ができても。
ずっと好きなんだ。
「私は決めたけどあなたは何にするの?」
「君のオススメでいいよ」
「分かったわ。とっても美味しくて可愛いスイーツを選んであげるわね」
彼女は嬉しそうにそう言って、またショーケースの中を見ている。
そんな彼女の横顔を微笑ましく俺は見ていた。
「帰ってからのお楽しみにしてほしいから少しだけ外で待っててよ」
「分かったよ」
俺は彼女に俺の財布を渡して外で待った。
彼女の残念会をするつもりだから俺が払うと彼女には言った。
彼女は最初は自分で払うと言っていたが、仕方ないと言って俺の財布を受け取った。
中にいた時は女性の目が痛かったが、外に一歩出るだけでそれはなくなった。
何か疲れた。
「お待たせ」
彼女はそう言って出てきた。
それから二人で家へ帰る。
俺の部屋に入り、彼女は持って帰ったスイーツを机の上に置く。
「私は一番人気のピンクの鍵っていう名前のラズベリーチョコでできたお菓子だよ」
「何処が鍵な訳? ただのピンクの丸いボールみたいじゃん」
「この中に鍵があるのよ」
「それなら早く見せてくれよ」
「その前に、あなたのスイーツを見せるわよ」
彼女はそう言いながら、俺に四角の白い箱のような物を見せた。
「箱?」
「これは、、、名前は知らなくていいよ。ホワイトチョコでできた四角いお菓子よ」
「これも君のと同じなのか?」
「そうだよ。このお菓子は二番目に人気なの」
「食べていい?」
「待って、ちゃんと中身を見てね」
「中身?」
俺は真ん中にフォークを入れ半分に割った。
ホワイトチョコでできた四角の箱は半分に割れた後、中からピンクのマカロンやピンクのマシュマロ、星形のクッキーやハート形のチョコが出てきた。
「色んなお菓子が出てきたけど?」
「何が出てきたの?」
俺は中にあった物を全て彼女に教えた。
「君のそのピンクの丸いドームにもお菓子が入っている訳?」
「この中には鍵が入っているの」
「鍵ってなんだよ?」
「あなたは知らなくていいの」
「なんだよ」
「あなたは平凡でいいんでしょう? 変化がなくていつも通りがいいんでしょう?」
「それと鍵の話と関係がある訳?」
「あるよ」
彼女は鍵を見せてはくれなかった。
彼女はそのお菓子は食べずに他に買ったケーキを食べていた。
鍵は気になったが、彼女と話をしていたら鍵のことなんて忘れていた。
◇
それから、彼女は髪型を変えてからどんどん綺麗になっていった。
元恋人を見返す為だったことが、他の男子達も彼女の魅力に気付き出した。
俺しか知らない彼女の魅力をみんなが知っていく。
「なぁ、元恋人は何も言ってこないんだろう? もう、見返すのはやめたら?」
「えっ」
俺は彼女と下校中に歩きながら言った。
だって俺しか知らない彼女の魅力を、もう知られたくないから。
俺の言葉に彼女は驚いている。
「元の君に戻ってもいいんじゃないのかな?」
「それって、あなたは今の私が嫌いなの?」
「そんなことはないよ。最初に僕が君の髪型を似合っているって言ったじゃん」
「でも、それならどうして前の私に戻ってなんて言うの?」
「君が無理なんてしていないならいいんだよ」
「私の為なの?」
「そうだよ。前の君は、毎日楽しそうにしていたからね」
「今は違うの?」
彼女は少し落ち込みながら言った。
「だって人に見られるのは嫌がっていたじゃん?」
「嫌だったけど、あなたが隣にいれば忘れられたよ?」
「でも、俺はいつまでも君の隣にはいられないよ」
「どうして?」
「君の元恋人が、また君に告白をしてくるかもしれないじゃん?」
「してきたよ」
「えっ」
「彼は私に告白をしてきたよ」
彼女の言葉に俺は落ち込んでしまったが、すぐに彼女にバレないように無表情を作る。
「それでどうした訳?」
「断ったわよ」
「どうして? だって君は、彼の為に髪を切って綺麗になったんじゃないのかよ?」
「私って綺麗になったの?」
「あっ」
俺は綺麗と言ったことを後悔した。
彼女に俺の気持ちがバレてしまうからだ。
「やっぱりあなたに言われると嬉しいよ」
「それは良かったよ。でもどうして元恋人の告白を断ったんだよ?」
「それなら簡潔に言うわね」
彼女はそう言って俺を見つめた。
「私はやっぱりあなたが好きなのよ」
「やっぱり?」
「気になる所はそこなの?」
彼女はクスクスと笑っていた。
「えっ、あっ、だって、俺も」
「ちょっと落ち着いてよ」
「無理だって。君みたいに可愛くて綺麗なマドンナに言われたら嬉しくて焦るよ」
「マドンナ? 私が?」
「そう。君はこの学校のマドンナになっているんだよ?」
「そんなの知らないよ。私はいつも通り平凡にしていただけだよ?」
「平凡?」
「そうだよ。あなたは平凡が好きなんでしょう?」
「まあ、何も変わらないことが一番良いからね」
「私も平凡がいいの。あなたの隣でずっと一緒にいられる、それだけでいいの。だからあなたは?」
彼女はそう言って、俺に真剣な眼差しを向けた。
「俺は前も言ったけど、君とこんな風に話すことも好きだよ。それは君だからなんだ」
「嬉しい。鍵が私の気持ちを教えてくれたのよ」
「鍵?」
「この前、可愛いお菓子を食べたでしょう?」
「この前の、鍵って名前のピンクの丸いお菓子だろう?」
「そうよ。あの時食べたあなたのお菓子の名前はボックスよ」
「そのまんまじゃん」
「そうね。でも、あのお菓子が人気な理由は、あのお菓子で相性が分かるからなの」
「相性?」
「そうよ。私の鍵の中にも同じお菓子が入っていたの。その同じお菓子で一番最初に食べた物が同じだと二人の相性は良いってことなのよ」
彼女の話を聞いて、一番最初に食べた物を思い出す。
最初に食べた物は、一番大きいマカロンだ。
「あなたはマカロンを食べたわ。私はあなたから中身を聞いて、すぐにあなたはマカロンを先に食べるって思ったわ」
「何で分かるんだよ?」
「だってあなたは、いつも大きい物を先に選ぶ癖があるでしょう? 私の荷物も大きい物を持ってくれて、ペットショップでは一番大きい犬を見て可愛いって言っていたし、小学生の時なんて給食のパンを一番大きい物を先に選んでいたわよね?」
「大きい方がお得じゃん」
「そうね、でも知ってるよ。あなたが大きい物を選ぶ本当の理由を」
「えっ」
彼女が知っている訳がない。
だって俺は、彼女に言ったことはないから。
俺が大きい物を選ぶ本当の理由なんて。
「私の為でしょう?」
「なっ、何で?」
「だって大きな荷物は重いだろうし、大きな犬は飼い主を守ってくれそうだし、大きなパンはいつも大きいから誰かと分けられるでしょう?」
「気付いていたのか?」
「あのお菓子を食べて気付いたのよ。あなたはあのお菓子の中で一番大きなマカロンを、先に私に食べるのか訊いたでしょう? マカロンを分けることは難しいから、私に全部をあげようとしたんでしょう?」
彼女には全てお見通しのようだ。
「そうだよ。君には悲しい顔をしてほしくないからね」
「えっ、私がいつ悲しい顔をしたの?」
「それは、俺達がまだ小学生になって間もない頃、君は言ったんだ。どうして俺の方が身長が大きいのかってね」
「そんなこと言ったかなぁ?」
「俺が君の代わりに、虫とり網で蝶を捕まえた時に言ったんだ。その時、俺は君の為に大きい物を何でも先に取って分けてあげようって思ったんだ。小学生の俺はそれが君の為だと思っていたんだ」
「小学生のあなた? それなら高校生のあなたはどう思っているの?」
彼女は不安そうな顔で俺に訊いた。
「そんなの変わらないよ。俺はこれからも、君の為に大きい物を何でも先に取って分けてあげるよ」
俺の言葉を聞いて彼女は嬉しそうに笑った。
その顔が俺は見たかったんだ。
「私、やっぱり平凡は嫌よ」
「なっ、何でだよ?」
「だって平凡は今のままでしょう? 私は変わりたいもの。今のこの関係を変えたいの!」
「それって幼馴染みじゃなくなるってことだよな?」
「そう、私はあなたの恋人になりたいの。ダメかな?」
彼女はそう言って俺に首を傾げて言った。
そんな彼女が可愛くて、俺は彼女を抱き締めていた。
「あなたが私より大きくて良かったわ。ずっと私を守ってくれるでしょう?」
彼女は俺の腕の中でそう言った。
「そうだね、君は俺の恋人だからね」
俺はそう言って彼女をギュッと抱き締めた。
「早く帰ろうよ? 人の目が気になっちゃうからね」
「何で? 悪いことはしていないから、気にすることはないよ」
「だから、前も言ったけど恥ずかしいのよ」
「それなら早く帰ろうか? ほらっ」
俺はそう彼女に言って、手を彼女の前に差し出す。
彼女はうんと頷いて俺と手を繋ぐ。
当たり前のように手は恋人繋ぎで。
平凡が嫌な幼馴染みは元恋人にざまぁをして学校のマドンナになった。そして、、、俺の恋人になった。
読んで頂き誠にありがとうございます。
楽しく読んで頂けたら幸いです。
次のお話は、顔も名前も知らない彼女と電話を楽しむ主人公の物語。
ある日、彼女とケンカをしてしまい音信不通になってしまう。
彼女のことをほとんど知らない主人公が、彼女を見つけ出す方法とは?