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恋愛小説短編集~ハッピーエンドストーリー~ - 【九十九人目】 ライバル視するのは美少女の君だけ
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【九十九人目】 ライバル視するのは美少女の君だけ

ブックマーク登録や評価や感想をありがとうございます。

とても励みになっております。

 あいつからすれば、俺とあいつの関係はライバルだそうだ。

 俺はそんな風に思ったことはない。

 だって、俺があいつに勝てる要素なんてないからだ。


 あいつは明るくて、元気で、友達もたくさんいて、誰にでも好かれる存在だ。

 俺はその反対の目立たない、空気のような存在。


「あっ、やっと見つけた!」


 あいつは俺を見つけ、走って近づいてくる。

 俺は条件反射で逃げる。


「あっ、何で逃げるのよ?」

「だって追いかけてくるからだよ」

「私は女の子なのよ? あなたに追いつけるわけがないでしょう?」

「いやっ、でも君には仲間がたくさんいるから、俺はその仲間にいつも捕まるじゃん」

「だから私が追いつけないからよ」

「それは君が追いかけてくるからだろう?」

「あなたが逃げるからでしょう?」


 俺達はいつもこんな感じになる。

 あいつが追いかけて、俺は逃げる。

 俺が何故、逃げるのか。

 それは、あいつが嫌いだからではない。


 それはあいつが、、、

 美少女だからだ。

 俺は昔のトラウマで、美少女とは関わらないようにしている。


 だから、俺が彼女から逃げる理由は。

 彼女が嫌いではなく、苦手だからだ。

 そして、体が勝手に反応してしまう。


 そんな俺をライバル視している彼女は、何故か俺に勝負を挑む。

 それも子供みたいな勝負だ。


 一番最初にやった勝負は、鉄棒で逆上がりができるのかだった。

 逆上がりなんて高校生がするのか?

 俺はギリギリ逆上がりができた。

 しかし彼女は、何度やってもぶら下がるくらいしかできなかった。


 何度も挑戦する彼女に俺は、心の中で応援をしていた。

 手にマメを作って、それでも諦めない彼女に俺は言ったんだ。


「逆上がりの勝負はなかったことにするから他にないの? 君なら俺に勝てる要素はたくさんあるじゃん。友達の数や君を好きになる人の数。それに、君のその顔は誰にも勝てないよ」


 俺はそう言って彼女の勝ちだって言ってあげたのに、彼女は怒って言ったんだ。


「私はそんなことであなたに勝ちたいなんて思わないわ」

「ごめん。マメまで作って頑張っている君に失礼なことを言ったかな?」

「だからあなたには勝てないのよ」

「どういう意味?」

「逆上がりよ」


 彼女はそう言って鉄棒を持っている手を離した。

 そして彼女は、あなたの為にやめてあげるって言ったんだ。

 でも彼女の顔は諦めというよりは嬉しそうに笑っていたんだ。


 どうしてそんなに嬉しそうに笑っているのか聞きたかったけれど、彼女のマメの手当てが先だから、俺は彼女の手首を握って保健室へ走った。

 その時、彼女が言ったんだ。


「私は女の子なんだからもっとゆっくり走ってよ」

「俺は男の子だから怪我をした女の子が心配なんだ」

「私はそんなに弱くないわよ」

「男の子は女の子を大切にしたいんだよ」

「バカ。次は負けないんだからね」

「次があるの?」

「当たり前よ」


 それから彼女は俺に色んな勝負を挑んでいる。

 彼女は俺に勝ったことはない。

 もっと勝てる勝負はあるのに。

 彼女はいつも負ける。



「今日は何の勝負を挑んできたんだ?」


 俺が自分の席に座ると男友達が訊いてきた。


「今日は逃げ切ったよ」

「なんだよそれ? あんな可愛い美少女から逃げてきたのか?」

「当たり前だろう?」

「当たり前なのはお前だけだよ。そんなに美少女が怖いのか?」

「怖いんじゃないんだ。苦手なんだよ」

「またヒドイ目にあうのが怖いんだろう?」

「あの日は俺の人生最悪の出来事が起きたんだ。でもあの女の子を怖いなんて思ってないよ」

「強がりかよ」

「うるせぇよ」


 俺の人生最悪の出来事とは。

 それは俺がまだ小学生になる前の話だ。



 俺は小さな公園で女の子に出会ったんだ。

 可愛い美少女だった。


「今日は滑り台で遊ぼうよ」

「うん。僕が先に滑るから、その後に君が滑ってきてよ」

「うん。いいよ」


 そして俺が滑り台を先に滑って女の子が滑る。

 そんな風に遊んでいると、少し大きな男の子が俺達の間に無理やり割り込んできた。


「僕と彼女が遊んでいるから、君は彼女の後に滑ってくれる?」

「何で? 早く滑りたいんだよ」

「そっか、それなら先にどうぞ」


 俺は男の子に先を譲った。

 すると女の子が泣き出した。


「どうしたの?」

「だって私も早く滑りたかったもん」

「それなら先どうぞ」

「違うの。私達の後に、あの男の子じゃないの?」

「でも、あの男の子は順番を守りそうになかったから」

「嫌い」

「えっ」

「そんなあなたは嫌い」

「僕が悪いの?」

「嫌いよ」


 女の子はそう言ってお母さんの元へ戻っていった。

 俺は嫌いと言われたことがショックだった。

 可愛い美少女に言われたのもショックだった。


 それから公園へは行けず女の子とは会っていない。

 それでいい。

 女の子とは関わらないのが一番だ。

 だって嫌われたのだから。



「ねぇ待ってよ」

「それなら追いかけるのはやめてくれる?」

「逃げないなら追いかけないわよ」

「それなら君から先に止まってよ」

「分かったわよ」


 彼女は止まって俺を見ている。

 俺も距離をとって止まる。


「いつもは止まらないのに今日は素直だね」

「だって本当に止まって欲しかったの」

「どうしたの? いつもと違うみたいだね」

「うん」

「何かあったの?」

「こんなに離れているのに、いつもの私と違うのが分かるの?」

「うん。どこか元気がないよね?」

「あなたはいつも、、、見てくれているのね」


 彼女が遠くにいるからなのか途中、何を言っているのか分からなかった。


「何を見ているって? 聞こえなかったんだけど?」

「何でもな、、、」


 彼女は言葉の途中でフラついて座りこむ。


「どうしたの?」


 俺は急いで彼女に近寄る。

 彼女は少し顔を赤くして体調が悪そうだ。


「ごめん」

「どうして謝るんだよ?」

「だって心配かけたでしょう?」

「心配かけるのは仕方がないよ。君は、いつも頑張り過ぎるところがあるからね」

「本当、あなたはいつもそうなの」

「いつも?」

「うん、いつも」


 そして彼女を支えながら保健室へ行く。

 保健室の先生は、またあなた達なのなんて言っていたけど、俺は彼女が心配で先生の言葉に何も返さなかった。



 放課後に保健室へ行くと彼女は親が迎えに来て帰っていた。

 保健室の先生に彼女は大丈夫だったか聞くと、眠ったら少しはよくなったそうだ。



 次の日、彼女は学校を休んだ。

 いつも俺を追いかける彼女がいないと何故か寂しい。


「寂しいなって顔に書いてるぞ」

「はあ?」


 友達に言われて俺は誤魔化すように怒って言った。


「あんな美少女を好きにならないやつなんていないんだよ。お前も好きなんだろう?」

「好きだからって、彼女がいなくて寂しいと思うのは違うだろう?」

「それなら何?」

「いつもの賑わいがなくて寂しいんだよ」

「やっぱり寂しいんじゃん」

「いっ、いいんだよ。好きじゃないから」

「それなら嫌いなのか?」

「嫌いじゃない」

「それなら好き?」

「好きじゃない」

「どっちなんだよ?」


 俺は考える。

 だって本当に好きでも嫌いでもないんだ。

 彼女は俺にとって何?


「まあ、お前にとって彼女は必要な相手だろう? 毎日が彼女がいることによっていつも通りに進んでいくんだろう?」

「そうだな。彼女が俺を追いかけて、俺が彼女から逃げるのがいつも通りなんだ。それが俺の日常なんだ」

「お前がそうなら、彼女はどうなんだと思う?」

「えっ」

「一度、彼女に聞いてみれば?」

「それで俺が彼女をどう思っているのか分かるのか?」

「それは分からないが、まずは聞いてみることだな」

「そうだな」


 明日には彼女も学校に来るはず。

 その時に彼女は俺との日常をどう思っているのか。

 美少女は苦手だけど彼女は違う気がするんだ。

 彼女は俺を傷つけることはしない気がするんだ。



「今日は、俺が君に会いに来たよ」


 俺は昼休みに彼女の教室へ向かった。

 彼女は驚いていた。

 そして笑って言う。


「それなら私が逃げるわ」


 彼女は走って教室を出る。


「えっ、何でそうなるんだよ?」

「私の気持ちを知りなさいよね」

「はあ?」


 俺は彼女を追いかける。

 彼女を捕まえるのは簡単だけど何故か捕まえたくない。

 彼女との距離をとったまま屋上まで来た。

 彼女は屋上のフェンスを背にして俺の方を向く。


「もう、逃げられないよ」

「屋上なんかに来るからだろう?」

「屋上に来る前に、あなたは私を捕まえられたでしょう?」

「そんなことはないよ」

「やっぱりあなたには勝てないわ」

「君っていつも俺と何の勝負をしてんの? 本当はこんな追いかけっこや、ババ抜きや、カルタなんて、子供の遊びの勝負をしてるわけじゃないんだろう?」

「分かっていたの?」

「だって君はいつも、俺が負けない勝負ばかりしているからね」

「それにも気づいてたの?」


 彼女は驚きながら言った。

 そうなんだ。

 彼女が勝負を挑むものは全部、俺が勝てそうなものばかりだ。


 彼女は俺が勝てる勝負をしてるんだ。

 彼女は負けて当たり前の勝負をしてるんだ。

 そんな勝負をする必要はあるのか?


「教えてよ。君が本当にしたい勝負を」

「いいよ。それはあの日から始まったの」

「あの日? 鉄棒の勝負?」

「違うよ。滑り台だよ」

「滑り台?」

「そうだよ。あなたの優しさが見えたあの日よ」

「えっ、もしかしてあの女の子って君なの?」

「全然、気付いていなかったのね。私はすぐにあなただって気付いたのに」

「だって俺は美少女とは関わらないように、見ないようにしていたから」

「美少女? あなたは私のことを、そう思ってくれていたの?」

「まあ、そうだね」


 彼女が嬉しそうに笑って言ったから、俺は照れてしまい素っ気なく言ってしまった。


「あの日はごめんね」

「仕方がないよ。子供なんだからさ」

「でも、あなたは傷ついたでしょう?」

「まあね。でも俺も大人にならないといけないんだよ」

「それなら勝負よ」

「えっいきなり?」

「じゃんけんよ」

「そういえば、じゃんけんはしたことがないよな?」

「うん。じゃんけんはあなたが負ける可能性があったからね」

「俺が負けたらダメなわけ?」

「だって次がなくなっちゃうでしょう?」

「勝つまでの勝負だって思っていたの?」

「うん。あなたに関わる口実よ」


 そんな彼女の気持ちを聞いて、彼女がすごく可愛く見えた。

 見た目とか関係なくて。

 彼女の全てが可愛く感じたんだ。


「それなら俺が勝ったら俺の質問に答えてよ」

「いいよ。その代わり私が勝ったら勝負は終わりよ」

「えっ」

「じゃんけんぽいっ」


 俺はパーを出して彼女はチョキを出した。

 俺は負けた。

 彼女との勝負はこれで最後だ。


「私、昔からじゃんけんは強いの」

「そうみたいだね。俺の負けだよ」

「勝負は最後ね」

「そうだね。これで俺達も終わりなのかな?」

「あなたの質問は何だったの?」

「えっでも、じゃんけんで負けたし」

「今まで何度も勝ってるんだからその勝ちの分を使えば質問はできるでしょう?」

「それだとじゃんけんの意味がないんだけど?」

「いいの。それで質問は何なの?」

「まっ、いっか。俺の質問は君にとって俺はどんな存在なの?」

「簡単な質問ね」


 彼女はそう言って笑った。

 俺には難しい問題なのに、彼女はすぐに答えが出るようだ。


「答えは?」

「私の前で支えてくれなきゃいけない人よ」

「君の前?」

「うん。滑り台だよ」

「あっ、そういうことか。ということは俺が君の盾になるということ?」

「違うよ。一緒にいてくれなきゃいけない人。大切な人だよ」


 彼女の言葉を聞いて俺の疑問はなくなった。

 俺にとって彼女を好きでも嫌いでもない理由。

 それは彼女への気持ちが分からなかったからだ。


 俺は彼女が大切で守りたいんだ。

 そう思ったら答えが出た。

 俺は、、、。


「俺も君が大切で、君を守りたくて、君といつまでも一緒にいたいんだ。これからは前じゃなくて隣にいたい。大好きだよ」

「バカ。やっぱりあなたには勝てないわ」

「えっでも、じゃんけんでは勝ったじゃん」

「もう! そうじゃなくて、あなたの優しさには勝てないの」

「俺の優しさ?」

「あなたの優しさには私はいつも勝てないの。いつも負けちゃうの。私のことを思い出してくれなくても変わっていないあなたの優しさのせいで許しちゃうの」

「勝てないって、俺の優しさのせいで何でも許してしまうってことなんだね?」

「私はあなたに甘くなっちゃう」

「それならなんでも許してもらえる?」

「なんでもじゃないわよ」


 彼女はムッとした顔をして言った。


「浮気は許さないんだからね」

「俺は昔から君しか見えてないよ」

「私だって気付かなかったくせに?」

「だって女の子は見ないように、関わらないようにしていたからね」

「今は?」

「君だけだよ」

「私も」


 彼女が俺に近づいて、抱き付いてきた。

 やっぱりそんな彼女が可愛くて俺は頭を撫でた。


「子供じゃないわよ」


 彼女は拗ねながら俺を見上げた。

 そんな顔も可愛い彼女。

 そんな彼女はライバルじゃなくて俺の大切な人。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。


~次話予告~

靴ヒモが結べない主人公は家に帰り、いつも妹に結んでもらう。しかし、ある日から学校で靴ヒモを結んでもらうようになった。妹だと思っていたのに、妹ではないと聞いた。主人公の汚い靴のヒモを結んでくれるのは誰?

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[一言] やっぱり朝はやさしいハッピーエンドのお話がいいですね(*´∇`*) 朝、新着欄に更新があるのを見るとすぐに読めるように別タブで開き時間に余裕ができたタイミングで読みにきているのは秘密です(←…
[良い点] ヒロインが滑り台の子と同じで安心しました。 若いときはなぜか異性に対して素直になれずに強くぶつかってしまうことがありますよね。 恋の駆け引きとはまた違うのですが、この作品は両方がブレンドさ…
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