コンパクトEVながら4WD設定があるレアな存在…スズキ「eビターラ」、開発者が語る特徴
【BEVソリューション本部 BEV B・C商品統括部 第1カーラインチーフエンジニア 大前陽平氏】
電気自動車(EV)の洗練さや先進性、ワクワク感を併せ持つスポーツ多目的車(SUV)を目指した。パワートレーン(駆動装置)は高効率な電動駆動装置「eアクスル」と安心・安全で長寿命なリン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーで構成する。
コンパクトなEVながら4輪駆動(4WD)設定があるレアな存在だ。内燃機関(ICE)車で培った技術をつぎ込み、電動4WDシステム「オールグリップ―e」を開発した。前後に2個のeアクスルを配置し、緻密に制御することで悪路でも力強く安定した走りを実現できる。
EV専用に新開発したプラットフォーム(車台)「ハーテクト―e」により、床下に搭載する駆動用バッテリーを最大化し必要十分な航続距離を確保した。広い室内空間を実現するレイアウトながら最小回転半径を5・2メートルに抑えた。日本の道路環境に適したコンパクトな車両サイズや取り回しの良さ、低重心とボディー剛性の強さによる優れた操縦安定性が特徴だ。
EVが苦手とする冬場に対応するため各種対策を盛り込んだ。効率的に乗員を温め、エアコンによる消費電力を低減するため、シートヒーターとステアリングヒーターを全グレードに設定。暖房にはヒートポンプシステムを採用してバッテリーの消費を低減した。寒冷時に急速充電時間を短くするため走行中に電池を温める「寒冷時バッテリー昇温機能」なども装備した。
3種類のドライブモードを用意した。「ノーマル」は走りと電費のバランスに優れ、「エコ」は緩やかに加速し、エアコンの消費電力を抑えることで航続距離を延ばせる。「スポーツ」はアクセルの反応速度を高め、機敏でパワフルなドライビングを楽しめる。どのモードもEVらしさを感じてもらえるよう作り込んだ。最新の予防安全・運転支援機能を搭載した。
高価なEVの中でも価格を抑え、顧客が買い求めやすくした。当初からとがった仕様にはせず、できるだけ顧客の手に取ってもらえるようにしたい思いがあった。「チームスズキ」で地道に部品単位でコストを見直し、実現することができた。
1月16日に国内で発売となった。2025年9月に受注を開始して以来、力強い外装や高級感のある内装が好評を得ている。車のサイズや航続距離、価格などちょうど良いバランスだと思う。今までEVを避けていた顧客にも乗ってもらえば納得してもらえる。良さを伝えていきたい。
【記者の目/「らしさ」発揮し主役の1台】
「『スズキといえばこのくらいの価格』という声を参考にした」と大前陽平氏は明かす。EVで後発だが手頃な価格を打ち出し、国の補助金で実質300万円を切るのは強み。「受注は想定以上で納車を少し待ってもらっている」(グローバル営業統括部)状況だ。新型EVの投入が相次ぎ競争は激化するが「らしさ」を発揮し主役の1台に躍り出る。(編集委員・村上毅)
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