JP2010540792A - 低クリープ、高強度uhmwpe繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、高い引張強さと良好なクリープ速度を有するゲル紡糸超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維の製造方法であって、前記方法に使用されるUHMWPEが、炭素原子千個当たり0.1〜1.3個のメチル側基;および0.08〜0.6個のメチル末端基を含み;かつ総延伸比(DRoverall=DRfluid×DRgel×DRsolid)が7000以上(但し、流体延伸比DRfluid=DRsp×DRag(式中、DRspは紡糸孔における延伸比、DRagはエアギャップにおける延伸比である)が100以上である)である方法に関する。本発明は、さらに、それによって製造されたゲル紡糸UHMWPE繊維に関する。本発明のゲル紡糸UHMWPE繊維は、引張強さが4GPa以上で、かつ70℃、荷重600MPaで測定されるクリープ速度が6×10−7sec−1以下である。それによって製造されたゲル紡糸UHMWPE繊維は様々な用途に有用であり、本発明は、特に、前記UHMWPE繊維を含むロープ、医療用具、複合製品および防弾製品に関する。
Description
本発明は、高い引張強さと良好なクリープ速度を有するゲル紡糸超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維の製造方法、および、そのような方法により製造されたゲル紡糸UHMWPE繊維に関する。その方法により製造されたゲル紡糸UHMWPE繊維は様々な用途に有用であり、本発明は、特に、前記UHMWPE繊維を含むロープ、医療用具、複合製品および防弾製品に関する。
高い引張強さと良好な耐クリープ性を有するゲル紡糸UHMWPE繊維の製造方法は、例えば、欧州特許第1,699,954号明細書により知られている。この方法は、
a)デカリン中、135℃における固有粘度が5dl/g以上であるUHMWPEを溶媒に溶解した溶液を調製する工程;
b)工程a)の溶液を複数の紡糸孔を有するスピナレットからエアギャップへ紡糸して、流体フィラメントを形成する工程;
c)流体フィラメントを冷却して、溶媒含有ゲルフィラメントを形成する工程;および
d)固体フィラメントの延伸前および/または延伸中に、溶媒の少なくとも一部をゲルフィラメントから除去して、固体フィラメントを形成する工程
を含む。
a)デカリン中、135℃における固有粘度が5dl/g以上であるUHMWPEを溶媒に溶解した溶液を調製する工程;
b)工程a)の溶液を複数の紡糸孔を有するスピナレットからエアギャップへ紡糸して、流体フィラメントを形成する工程;
c)流体フィラメントを冷却して、溶媒含有ゲルフィラメントを形成する工程;および
d)固体フィラメントの延伸前および/または延伸中に、溶媒の少なくとも一部をゲルフィラメントから除去して、固体フィラメントを形成する工程
を含む。
特に、欧州特許第1,699,954号明細書の方法では、炭素原子千個当たりのC1〜C4の短いアルキル側基、好ましくはメチル基の炭素原子千個当たりの含有量が3個以下であるUHMWPEを使用している。得られたUHMWPE繊維は、70℃、荷重600MPaで測定されるクリープ速度が1×10−6sec−1と低く、かつ引張強さが4.1GPaに達している。
高分岐UHMWPE、すなわち、例えばエチル、プロピルのようなメチル分岐より長い分岐を有するか、前記分岐を多量に有するか、またはそれらの組み合わせを有するUHMWPEを使用するゲル紡糸法により、UHMWPE繊維のクリープ速度を低下させ得ることもまた知られている。しかしながら、前記高分岐ポリエチレンは、紡糸UHMWPE繊維の延伸特性を損ない、したがって、引張特性に劣る繊維が製造される。
他方、低分岐UHMWPE、すなわち、分岐の数が少ないか、または、例えばメチル分岐のように短い分岐を意味する、より直線的な構造を有するポリエチレンを使用することによって、引張特性の良好な繊維を製造し得ることが知られている。しかしながら、これらの繊維はクリープ特性が不良である。
したがって、クリープ特性および引張特性は両立する特性ではないため、低クリープ速度で、かつ高引張強さのUHMWPE繊維を得ることは、当業者にとって決して容易なことではない。
したがって、本発明の目的は、高引張強さと低クリープ速度の組み合わせ、すなわち、従来のいかなるUHMWPE繊維も満たさなかった組み合わせを有するUHMWPE繊維、およびその製造方法に対するニーズに応えることにある。
本発明の目的は、UHMWPEが炭素原子千個当たり0.1〜1.3個のメチル側基、および0.08〜0.6個のメチル末端基を含み、かつ総延伸比(DRoverall=DRfluid×DRgel×DRsolid)が7000以上(但し、流体延伸比DRfluid=DRsp×DRag(式中、DRspは紡糸孔における延伸比、DRagはエアギャップにおける延伸比である)が100以上である)であることを特徴とするゲル紡糸UHMWPE繊維の製造方法により達成された。
ここでは、メチル末端基は、UHMWPE鎖の末端、およびUHMWPE鎖の長鎖分岐(LCB)の末端に対応するメチル基であると理解される。ここでは、LCBは、エチル基より長い分岐、例えば、プロピル、ブチル、ヘキシル、およびこれらより長い分岐であると理解される。
驚いたことに、本発明者らは、本発明のゲル紡糸法により、これまでに得られているいかなるUHMWPE繊維よりも優れたクリープ速度と引張強さの組み合わせを有する、新規なUHMWPE繊維が得られることを見出した。
また、驚いたことに、公知のゲル紡糸法で製造されたUHMWPE繊維、または、最新技術の中でこれまでに報告されているUHMWPE繊維に適用されたDRoverallに比べて、本発明の方法では、破断させずにより大きな総延伸比(DRoverall)を紡糸繊維に適用できることが観察された。ここでは、DRoverallは、流体繊維、ゲル繊維および固体繊維に適用される延伸比の乗算、すなわち、DRoverall=DRfluid×DRgel×DRsolidであると理解される。
本発明のUHMWPE繊維に適用されるDRoverallは、8000以上であることが好ましい。より好ましくは10,000以上、より一層好ましくは12,000以上、より一層好ましくは14,000以上、より一層好ましくは16,000以上、より一層好ましくは18,000以上、より一層好ましくは19,000以上、特に好ましくは20,000以上である。
本発明の方法において、このような高いDRoverallを適用することの利点は、クリープ速度および/または引張強さがさらに向上した、極めて優れたUHMWPE繊維が得られたことである。
本発明の方法の別の利点は、本発明のUHMWPE繊維を延伸するのにより高い延伸速度を使用でき、これにより生産量を高め、かつ生産時間を短縮することができ、その結果として、本発明の方法が経済性の点でより魅力的なものとなることである。ここでは、延伸速度は、延伸比を、その延伸比を達成するのに必要な時間(秒)で割ったものであると理解される。
前記UHMWPEは、炭素原子千個当たり、0.3〜1.3個のメチル側基を含むことが好ましい。より好ましくは0.5〜1.2個のメチル側基、より一層好ましくは0.7〜1.1個のメチル側基、特に好ましくは0.7〜0.9個のメチル側基である。前記UHMWPEは、炭素原子千個当たり、0.1〜0.6個のメチル末端基を含むことがより好ましい。より一層好ましくは0.1〜0.4個のメチル末端基、さらにより一層好ましくは0.1〜0.3個のメチル末端基、特に好ましくは0.2〜0.3個のメチル末端基である。
炭素原子千個当たりのメチル側基の数と炭素原子千個当たりのメチル末端基の数を加えて得られる炭素原子千個当たりの全メチル基数は、2.1個であることが好ましい。より好ましくは1.9個以下、より一層好ましくは1.7個以下、さらにより一層好ましくは1.5個以下、特に好ましくは1.3個以下である。前記全メチル基数は、好ましくは0.7個以下、より好ましくは0.8個以下、より一層好ましくは0.9個以下、特に好ましくは1.0個以下である。
驚いたことに、炭素原子千個当たり上記の全メチル基数を有するUHMWPEを使用する本発明の方法により得られるUHMWPE繊維では、引張強さおよびクリープ速度の組み合わせ、特にクリープ速度がさらに改善されることがわかった。
本発明の方法において使用されるポリエチレンは超高分子量である。すなわち、UHMWPEは、デカリン溶液中、135℃で測定される固有粘度(IV)が、5dl/g以上、好ましくは10dl/g以上、より好ましくは15dl/g以上、特に好ましくは21dl/gである。IVは、好ましくは40dl/g以下、より好ましくは30dl/g以下、より一層好ましくは25dl/g以下である。
UHMWPE溶液は、3質量%以上の濃度に調製することが好ましい。より好ましくは5質量%以上、より一層好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。UHMWPE溶液は、30質量%以下の濃度を有することが好ましい。より好ましくは25質量%以下、より一層好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。加工性を向上させるためには、ポリエチレンのモル質量が大きいほど低濃度とすることが好ましい。IVが15〜25dl/gの範囲のUHMWPEでは、濃度は3〜15質量%が好ましい。
UHMWPE溶液の調製には、UHMWPEのゲル紡糸に適した任意の公知の溶媒を使用することができる。適した溶媒としては、例えば、オクタン、ノナン、デカンおよびパラフィン(これらの異性体を含む)などの脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素;石油留分;鉱油;ケロセン;トルエン、キシレンおよびナフタレン(これらの水素化誘導体、例えば、デカリンおよびテトラリンなどを含む)などの芳香族炭化水素;モノクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、例えば、モノクロロベンゼン;並びに、カリーン(careen)、フルオリン、カンフェン、メンタン、ジペンテン、ナフタレン、アセナフタレン、メチルシクロペンタジエン、トリシクロデカン、1,2,4,5−テトラメチル−1,4−シクロヘキサジエン、フルオレノン、ナフチンダン(naphtindane)、テトラメチル−p−ベンゾジキノン、エチルフオレン、フルオランテンおよびナフテノンなどのシクロアルカンまたはシクロアルケンなどが挙げられる。また、上に挙げた溶媒の組み合わせを、UHMWPEのゲル紡糸に使用してもよく、簡単にするために、そのような溶媒の組み合わせも溶媒と呼ぶ。好ましい実施態様において、選択された溶媒は、パラフィンオイルなどの室温で不揮発性のものである。本発明の方法は、例えばデカリン、テトラリンおよびケロセン級の、室温で比較的揮発性の高い溶媒に特に有利であることもわかった。最も好ましい実施態様において選択された溶媒はデカリンである。
本発明においては、UHMWPE溶液は、前記溶液を複数の紡糸孔を有するスピナレットを通して紡糸することにより流体フィラメントに成形される。ここで使用されるとき、用語「流体フィラメント」は、前記UHMWPE溶液の調製に使用した溶媒にUHMWPEが溶解した溶液を含む流体様フィラメントをいう。前記流体フィラメントはUHMWPE溶液をスピナレットを通して押出すことにより得られる。押出された流体フィラメント中のUHMWPEの濃度は、押出し前のUHMWPE溶液の濃度と同じか、またはほぼ同じである。ここでは、複数の紡糸孔を有するスピナレットは、好ましくは10個以上、より好ましくは50個以上、より一層好ましくは100個以上、さらにより一層好ましくは300個以上、特に好ましくは500個以上の紡糸孔を有するスピナレットであると理解される。スピナレットは紡糸孔が5000個以下であることが好ましい。より好ましくは3000個以下、特に好ましくは1000個以下である。
紡糸温度は150℃〜250℃であることが好ましく、紡糸溶媒の沸点未満を選択することがより好ましい。例えば、紡糸溶媒としてデカリンを使用するならば、紡糸温度は、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下であり、かつ好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、特に好ましくは125℃以上である。パラフィンの場合は、紡糸温度は、好ましくは220℃未満、より好ましくは130℃〜195℃である。
好ましい実施態様では、スピナレットの各紡糸孔は、少なくとも1つの絞り部を含む形状を有している。ここでは、絞り部は、紡糸孔中で延伸比DRspが達成されるよう、8〜75°の範囲の円錐角で、直径がD0からDnへと漸減する部分であると理解される。紡糸孔は、さらに、長さ/直径比Ln/Dnが50以下の、直径が一定の部分を少なくとも1つ、絞り部の下流側に含んでいることが好ましい。Ln/Dnは、より好ましくは40以下、より一層好ましくは25以下、特に好ましくは10以下であり、そして好ましくは1つ以上、より好ましくは3つ以上、特に好ましくは5つ以上である。Lnは、一定の直径Dnを有する部分の長さである。好ましくは、比D0/Dnは、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、より一層好ましくは10以上、さらにより一層好ましくは15以上、特に好ましくは20以上である。円錐角は、好ましくは10°以上、より好ましくは12°以上、より一層好ましくは15°以上である。円錐角は、好ましくは60°以下、より好ましくは50°以下、より一層好ましくは45°以下である。
紡糸孔の直径は、ここでは、有効直径、すなわち、非円形または不規則な形状の紡糸孔では、紡糸孔の外側境界間の最大距離を意味する。ここでは、円錐角は、紡糸孔の絞り部において、反対側の壁面の接線間の最大角度を意味する。例えば、円錐形、またはテーパーが付けられた絞り部では、接線間の円錐角は一定であるが、所謂、ラッパ形の絞り部では、接線間の円錐角は直径の減少と共に減少する。ワイングラス形の絞り部では、接線間の角度は最大値を通過する。
紡糸孔の延伸比DRspは、絞り部の最初の断面と最後の断面における溶液の流速の比で表され、これは、それぞれの断面積の比に等しい。円錐台の形状を有する絞り部の場合には、DRspは最初と最後の直径の2乗の比、すなわち、(D0/Dn)2に等しい。
D0およびDnは、DRspが5以上となるように選択することが好ましい。より好ましくは10以上、より一層好ましくは15以上、特に好ましくは20以上である。
UHMWPE溶液をスピナレットを通して紡糸することにより形成された流体フィラメントは、エアギャップに、次いで冷却ゾーンに押出され、そこから第1駆動ローラに引き取られる。第1駆動ローラの角速度を、前記ローラの表面速度がスピナレットから出てくるUHMWPE溶液の流速を超えるように選択することにより、5以上の延伸比DRagで流体フィラメントをエアギャップへ延伸することが好ましい。エアギャップにおける延伸比DRagは、より好ましくは10以上、より一層好ましくは15以上、さらにより一層好ましくは20以上、さらにより一層好ましくは25以上、さらにより一層好ましくは30以上、さらにより一層好ましくは35以上、特に好ましくは40以上である。
本発明の方法においては、DRspおよびDRagは、流体UHMWPEフィラメントのトータル延伸比DRfluid=DRsp×DRagが100以上となるよう選択される。好ましい実施態様では、DRspおよびDRagは、DRfluidが200以上、より好ましくは300以上、より一層好ましくは400以上、特に好ましくは500以上となるよう選択される。驚いたことに、本発明の方法の流体UHMWPEフィラメントに、破断の発生率を同レベルに維持しながら、これまで可能であった値より大きいDRfluidを適用できることがわかった。
したがって、最新の技術の中で従来適用されている値と同じ大きさのDRfluidを流体UHMWPEフィラメントに適用した場合、流体フィラメントの破断は減少した。
エアギャップの長さは、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、より一層好ましくは5mm以上、さらにより一層好ましくは10mm以上、さらにより一層好ましくは15mm以上、さらにより一層好ましくは25mm以上、さらにより一層好ましくは35mm以上、さらにより一層好ましくは25mm以上、さらにより一層好ましくは45mm以上、特に好ましくは55mm以上である。エアギャップの長さは、好ましくは200mm以下、より好ましくは175mm以下、より一層好ましくは150mm以下、さらにより一層好ましくは125mm以下、さらにより一層好ましくは105mm以下、さらにより一層好ましくは95mm以下、特に好ましくは75mm以下である。
エアギャップを出た流体フィラメントを冷却(クエンチングとしても知られている)して、溶媒含有ゲルフィラメントを形成する工程は、ガスフロー中および/または液体冷却槽中で行うことができる。冷却槽には、UHMWPEに対して非溶媒である冷却液を使用することが好ましく、UHMWPE溶液の調製に使用した溶媒と混和しない冷却液がより好ましい。冷却液は、少なくとも流体フィラメントが冷却槽に入る位置では、フィラメントに対して実質的に垂直に流れることが好ましい。これには、延伸条件をより良好に設定し、制御できるという利点がある。
エアギャップは、ガス冷却の場合、流体フィラメントが溶媒含有ゲルフィラメントへと転換されるまでに流体フィラメントが移動する長さ、またはスピナレット面と液体冷却槽中の冷却液表面との距離を意味する。エアギャップと呼ばれているが、その雰囲気は、例えば、窒素もしくはアルゴンのような不活性ガスのフローの結果として、あるいは、フィラメントから溶剤が蒸発する結果として、またはそれらの組み合わせの結果として、空気と異なるものであってもよい。
ここで使用されるとき、用語「ゲルフィラメント」は、冷却時に、紡糸溶媒で膨潤した連続UHMWPEネットワークを発達させるフィラメントを指す。流体フィラメントからゲルフィラメントへの転換および連続UHMWPEネットワーク形成に対する指標の一つは、半透明のUHMWPEフィラメントから実質的に不透明のフィラメント、すなわちゲルフィラメントへ移行する冷却時のフィラメントの透明度の変化である。
流体フィラメントの冷却温度は、100℃以下が好ましい。より好ましくは80℃以下、特に好ましくは60℃以下である。流体フィラメントの冷却温度は、1℃以上が好ましい。より好ましくは5℃以上、より一層好ましくは10℃以上、特に好ましくは15℃以上である。
好ましい実施態様では、溶媒含有ゲルフィラメントは、少なくとも1回の延伸工程で、1.05以上、より好ましくは1.5以上、より一層好ましくは3以上、さらにより一層好ましくは6以上、特に好ましくは10以上の延伸比DRgelで延伸される。ゲルフィラメントの延伸温度は、好ましくは10℃〜140℃、より好ましくは30℃〜130℃、より一層好ましくは50℃〜130℃、さらにより一層好ましくは80℃〜130℃、特に好ましくは100℃〜120℃である。
ゲルフィラメントの形成に続いて、前記ゲルフィラメントは溶媒除去工程に供され、ゲルフィラメントから紡糸溶媒の少なくとも一部が除去され、固体フィラメントが形成される。除去工程後に固体フィラメント中に残存している残留紡糸溶媒(以下、残留溶媒という)の量は、大きく変動し得るものであるが、好ましくは、UHMWPE溶液中の初期溶媒量の15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
溶媒除去工程は、公知の方法、例えば、UHMWPE溶液の調製に比較的揮発性が高い紡糸溶媒、例えばデカリンが使用されたときは蒸発により、また、例えばパラフィンが使用されたときは抽出液の使用により、あるいは、その両方法の組み合わせにより実施することができる。適切な抽出液は、UHMWPEゲル繊維のUHMWPEネットワーク構造に大きな変化を引き起こすことがない液体であり、例えば、エタノール、エーテル、アセトン、シクロヘキサノン、2−メチルペンタノン、n−ヘキサン、ジクロロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジエチルエーテルおよびジオキサン、またはこれらの混合物である。リサイクルのために抽出液から紡糸溶媒を分離することができるような抽出液を選択することが好ましい。
本発明の方法は、前記溶媒の除去中および/または除去後に固体フィラメントを延伸する工程をさらに含む。好ましくは、固体フィラメントの延伸は、少なくとも1回の延伸工程で、好ましくは4以上の延伸比DRsolidで行うことが好ましい。DRsolidは、より好ましくは7以上、より一層好ましくは10以上、さらにより一層好ましくは15以上、さらにより一層好ましくは20以上、さらにより一層好ましくは30以上、特に好ましくは40以上である。固体フィラメントの延伸は、2工程以上で行うことがより好ましい。より一層好ましくは3工程以上である。各延伸工程は、好ましくはフィラメントが破断せずに所望の延伸比が達成されるように選択される異なる温度で行われることが好ましい。固体フィラメントの延伸が2工程以上で実施される場合、DRsolidは、個々の各固体延伸工程で達成された延伸比を乗じることにより計算される。
各固体延伸工程は、駆動ローラを備える延伸炉に固体フィラメントを、少なくとも長さ10mに亘って、炉内の滞留時間が10分以下となるよう、連続的に通過させ、その間に延伸させることにより実施することがより好ましい。炉中における延伸は、熟練工であれば、フィラメントを支持する駆動ローラの速度を調節することによって容易に行うことができる。固体フィラメントは炉内に長さ50メートル以上に亘って通過させることが好ましい。より好ましくは100メートル以上であり、特に好ましくは200メートル以上である。固体フィラメントの炉内における滞留時間は、好ましくは5分以下、より好ましくは3.5分以下、より一層好ましくは2.5分以下、さらにより一層好ましくは2分以下、さらにより一層好ましくは1.5分以下、特に好ましくは1分以下である。前記炉内の温度は、好ましくは120〜155℃の間で上昇プロファイルとしてもよい。
ここでは、滞留時間は、炉内にある固体フィラメントのある断面が、炉に入った瞬間から出るまでに要した時間と理解される。驚いたことに、本発明の方法におけるUHMWPEフィラメントでは、同じ延伸比を得るのに、これまで可能であった時間よりも短い滞留時間で済むことがわかった。したがって、本発明の方法の効率は、ポリエチレン繊維の公知の製造方法の効率に比べて良好となった。
好ましい実施態様では、約120〜約155℃の上昇プロファイルを有する温度で、少なくとも1回の延伸工程が行われる。
本発明の方法は、また、場合により、本発明のUHMWPE繊維から残留紡糸溶媒を除去する工程を含んでもよい。前記工程は固体延伸工程の後に行うことが好ましい。好ましい実施態様では、本発明のUHMWPE繊維に残存している残留紡糸溶媒は、前記繊維を、好ましくは148℃以下、より好ましくは145℃以下、特に好ましくは135℃以下の温度の真空炉に置くことによって除去する。炉の温度は50℃以上に保持することが好ましい。より好ましくは70℃以上、特に好ましくは90℃以上である。残留紡糸溶媒の除去は、繊維をピンと張った状態で、すなわち、繊維が緩むのを防止しながら行うことがより好ましい。
本発明のUHMWPE繊維は、溶媒除去工程の終わりの時点で含有する紡糸溶媒の量が、800ppm未満であることが好ましい。前記紡糸溶媒量は、より好ましくは600ppm未満、より一層好ましくは300ppm未満、特に好ましくは100ppm未満である。
本発明は、さらに、引張強さが4GPa以上で、かつ70℃、荷重600MPaで測定されるクリープ速度が6×10−7sec−1であるゲル紡糸UHMWPE繊維に関する。本発明のUHMWPE繊維のクリープ速度は、より好ましくは4×10−7sec−1以下、より一層好ましくは2×10−7sec−1以下、特に好ましくは10−7sec−1以下である。前記UHMWPEの引張強さは、好ましくは4.5GPa以上、より好ましくは5GPa以上、特に好ましくは5.5GPa以上である。
UHMWPE繊維は、例えば、上記のゲル紡糸法により得ることができる。UHMWPE繊維は上記の方法で得ることが好ましいが、他の製造方法でも実行可能である。
高いテナシティと良好な耐クリープ性を有するゲル紡糸UHMWPE繊維は、例えば、欧州特許第1,699,954号明細書、欧州特許第0,205,960B1号明細書、欧州特許第0,269,151号明細書、特開平5−70274号公報、米国特許第5,115,067号明細書および米国特許第5,246,657号明細書により知られている。上記引用文献で報告されている繊維の引張強さおよびクリープ速度値と、前記引用文献に記載されているクリープ速度測定条件の概要を表1に示す。言及した表には、さらに、引用文献に記載された測定手法により、同一の温度および荷重条件で測定した本発明のUHMWPE繊維のクリープ速度と引張強さ(実施例1)も含まれる。その言及した表から明らかなように、引用文献の繊維はいずれも、本発明のUHMWPE繊維が有する高強度および低クリープの組み合わせを有していない。
本発明のUHMWPE繊維は、100GPa以上の弾性率を有していることが好ましい。より好ましくは130GPa以上、より一層好ましくは160GPa以上、さらにより一層好ましくは190GPa以上、特に好ましくは220GPa以上である。理論に基づくものではないが、本発明者らは、本発明のUHMWPE繊維がより高いDRoverallを許容し得たことが弾性率の増大に寄与したものと考えている。
本発明は、また、本発明のUHMWPE繊維を含有するヤーンに関する。
好ましい実施態様では、本発明のUHMWPE繊維は、炭素原子千個当たり0.1〜1.3個の、より好ましくは0.3〜1.3個の、より一層好ましくは0.5〜1.2個の、さらにより一層好ましくは0.7〜1.1個の、特に好ましくは0.7〜0.9個のメチル側基を有するUHMWPEを含む。前記UHMWPEは、より好ましくは、炭素原子千個当たり0.08〜0.6個の、より一層好ましくは0.1〜0.6個の、さらにより一層好ましくは0.1〜0.4個の、さらにより一層好ましくは0.1〜0.3個の、特に好ましくは0.2〜0.3個のメチル末端基を有する。
本発明のUHMWPE繊維は、炭素原子千個当たりのメチル側基の数と炭素原子千個当たりのメチル末端基の数を加えて得られる炭素原子千個当たりの全メチル基数が、2.1個以下であるUHMWPEを含むことが好ましい。より好ましくは1.9個以下、より一層好ましくは1.7個以下、さらにより一層好ましくは1.5個以下、特に好ましくは1.3個以下である。前記全数は、好ましくは0.7個以上、より好ましくは0.8個以上、より一層好ましくは0.9個以上、特に好ましくは1.0個以上である。
ここでは、繊維は、伸長体、すなわち、横方向の寸法よりはるかに大きな長さを有する物体であると理解される。ここで使用されるとき、繊維には、規則的または不規則的な断面を有し、かつ連続および/または不連続な長さを有する複数のフィラメントも含まれる。本発明においては、ヤーンは、連続および/または不連続の繊維を含む伸長体であると理解される。本発明のヤーンは、撚られたヤーンであっても、編まれたヤーンであってもよい。
本発明のUHMWPE繊維は、ロープ、索具など、好ましくは、例えば牽引、海上および沖合い作業のような過酷な作業用に設計されたロープに使用するのに興味深い材料となる特性を有している。過酷な作業としては、さらに、操錨作業、重量容器の固定、掘削リグおよび採油プラットフォームの固定などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明のUHMWPE繊維は、UHMWPE繊維が静的張力を受けるような用途で使用することが特に好ましい。ここでは、静的張力は、張力が一定レベルである(例えば、この繊維を含むロープに錘が拘束されずにぶら下がっている)か、または変動する(例えば、熱膨張または水の波動を受ける場合)かにかかわらず、使用中の繊維が常時、または略常時、張力を受けていることを意味する。静的張力を受けて使用される非常に好ましい例としては、例えば、多くの医療分野での用途(例えば、ケーブルおよび縫合糸)、固定用ロープおよび張力強化のための要素が挙げられる。本繊維の低クリープ性により、これらやこれらに類似した用途におけるシステムパフォーマンスが大幅に改善されるからである。
したがって、本発明は、本発明のUHMWPE繊維を含むロープに関する。ロープの製造に使用された繊維の全質量の50質量%以上が、本発明のUHMWPE繊維からなることが好ましい。より好ましくは75質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上である。ロープが本発明のUHMWPE繊維からなることが特に好ましい。
本発明のロープにおいて、繊維の残りの質量パーセントは、例えば、金属、ガラス、カーボン、ナイロン、ポリエステル、アラミド、別タイプのポリオレフィンなどのような、繊維の製造に適した他の材料で製造された繊維または繊維の組み合わせを含むことができる。
本発明は、さらに、本発明のUHMWPE繊維を含む複合製品に関する。
好ましい実施態様では、複合製品は、本発明のUHMWPE繊維を含む少なくとも1つの単層を含有する。単層という用語は、繊維の層、すなわち、1つの面を形成している繊維を意味する。
別の好ましい実施態様では、単層は単向性の単層である。単向性単層という用語は、単一の方向に配向している繊維の層、すなわち、本質的に平行に配向して1つの面を形成している繊維を意味する。
さらに別の好ましい実施態様では、複合製品は、複数の単向性単層を含む多層複合製品であり、各単層における繊維の方向は、隣接する単層における繊維の方向に対して、ある一定の角度、回転していることが好ましい。角度は、好ましくは30°以上、より好ましくは45°以上、より一層好ましくは75°以上であり、特に好ましくは、角度は約90°である。
単層は、UHMWPE繊維を結合するためのバインダー物質をさらに含んでいてもよい。バインダー物質は、様々な手法で使用することができる。例えば、フィルムとして、横断的に結合するストリップまたは繊維として(単向性繊維に対して横断的に)、あるいは、繊維をマトリックスに、例えばマトリックス物質の溶液または分散液を使用して、繊維をマトリックスに含浸および/または埋め込むことによって使用することができる。バインダー物質の量は、層の質量に対して、好ましくは30質量%未満、より好ましくは20未満、特に好ましくは15質量%未満である。単層は、少量の補助成分をさらに含んでいてもよく、また、上に列挙したもののような繊維の製造に適した材料から製造された他の繊維を含んでいてもよい。単層中の強化用繊維は本発明のUHMWPE繊維からなることが好ましい。
多層複合製品は、弾動用途、例えば防弾チョッキ、ヘルメット、硬質および軟質の遮断板、車の装甲板などに非常に有用であることが立証された。したがって、本発明はまた、本発明のUHMWPE繊維を含む、上に列挙したような防弾製品に関する。
残留溶媒量が少ない、すなわち、800ppm未満、好ましくは100ppm未満の本発明のUHMWPE繊維は、また、医療用具、例えば縫合糸、医療用ケーブル、インプラント、外科用修復製品などとしての使用に適している。
したがって、本発明は、さらに、本発明のUHMWPE繊維を含む医療用具、特に外科用修復製品、なかでも特に縫合糸および医療用ケーブルに関する。
本発明の縫合糸および医療用ケーブルの利点は、それらの優れた引張特性、さらにそれらの低いクリープ速度により、これらの製品が人体内で良好な機械特性を維持したことである。
本発明のUHMWPE繊維のフィラメントの数と太さは、繊維を使用する用途に応じて大幅に変えることができる。例えば、海上または沖合い作業で使用する過酷な作業用のロープの場合、好ましくは1500dtex以上、より好ましくは2000dtex以上、特に好ましくは2500dtex以上である繊維が使用される。繊維を医療用具として使用する場合、それらのタイターは、好ましくは1500dtex以下、より好ましくは1000dtex以下、特に好ましくは500dtex以下である。
上述したような機械特性の優れた組み合わせを有する本発明のUHMWPE繊維は、また、釣り糸および魚網、接地網、積荷用ネットおよびカーテン、凧糸、デンタルフロス、テニスラケットの糸、キャンバス(例えば、テント用キャンバス)、不織布および他のタイプの織物、ウェビング、電池セパレータ、キャパシタ、圧力容器、ホース、自動車用機器、動力伝達用ベルト、ビル建設用材料、耐切・耐刺製品および耐切開製品、保護手袋、スキーなどの複合スポーツ用品、ヘルメット、カヤック、カヌー、自転車およびボートのハルおよびスパー、スピーカー用コーン、高性能電気絶縁材、レードームなどの他の用途にも適していることが観察された。したがって、本発明は、また、本発明のUHMWPE繊維を含む、上に列挙した用途に関する。
本発明は、また、炭素原子千個当たり0.1〜1.3個のメチル側基および0.08〜0.6個のメチル末端基を有するだけでなく、上述した実施態様およびUHMWPEの好ましい下位の範囲を有するUHMWPEの、UHMWPE繊維を製造するための紡糸プロセスにおける使用に関する。一つの実施態様では、紡糸工程は溶融紡糸工程であり、その場合、UHMWPE繊維はUHMWPEの溶融物から紡糸される。紡糸プロセスは、UHMWPEの溶解に適した溶媒に溶解したUHMWPEの溶液からUHMWPE繊維を紡糸するゲル紡糸プロセスであることが好ましい。ゲル紡糸プロセスは本発明のプロセスであることが特に好ましい。
以下、図面を説明する。
を示す。
以下の実施例および比較実験により本発明をさらに説明する。
[方法]
・IV:固有粘度は、PTC−179法(エルキュール社(Hercules Inc.)レビュー、1982年4月29日)に準拠し、デカリン中、135℃で(溶解時間16時間、酸化防止剤としてDBPCを2g/l−溶液の量で添加)、異なる濃度で測定した粘度を濃度ゼロに外挿することによって決定する。
・Dtex:繊維のタイター(dtex)は、100mの繊維を秤量することにより測定した。繊維のdtexは、ミリグラム表示の重さを10で割ることにより計算した。
・側鎖:UHMWPEに含まれる炭素原子千個当たりのメチル側基およびメチル末端基の量は、プロトン1H液体NMR(以下、簡単のためにl−NMRとする)により以下のように測定した。
a)3〜5mgのUHMWPEを、800mgの1,1’,2,2’−テトラクロロエタン−d2(TCE)溶液(TCE1グラム当たり0.04mgの2,6−ジ−tert−ブチル−パラクレゾール(DBPC)を含有)に加えた。TCEの純度は>99.5%であり、DBPCの純度は>99%であった。
b)UHMWPE溶液を標準の5mmNMRチューブに入れた後、炉中、140℃〜150℃の温度に加熱し、UHMWPEが解けるまで攪拌した。
c)5mmのインバースプローブヘッドを使用し、以下のようにセットアップしたハイフィールド(≧400MHz)NMRスペクトロメータにより、130℃でNMRスペクトルを記録した:試料回転数10〜15Hz、観測核―1H、ロック核―2H、パルス角90°、緩和遅延30sec、スキャン回数は1000にセット、掃引幅20ppm、NMRスペクトルのデジタル分解能0.5未満、得られたスペクトルの全点数64kおよび線幅の増大0.3Hz。図1は、実施例1のUHMWPEのNMRスペクトル(100)を示す。
d)記録した、信号強度(任意単位)対ケミカルシフト(ppm)(以下、スペクトル1)の較正を、TCEに対応するピークを5.91ppmにセットすることにより行った(図1に示さず)。TCEピークは容易に識別することができ、前記ピークは前記スペクトル1の5.5〜6.5のppm範囲で最も高い。
e)較正後、メチル側基数の決定に使用されるほぼ同じ強度の2つのピーク(二重項)は、0.8〜0.9ppmのppm範囲で最も高い。図1では、第1ピーク(101)は、約0.85ppmに位置し、第2ピーク(102)は約0.86ppmに位置する。
f)メチル末端基数の決定に使用される3つのピークは、同一ppm範囲で2番目に高く、第2ピークの後方、ppm範囲が増加する側に位置する。図1では、前記3つのピーク、すなわち(201)、(202)および(203)は、それぞれ約0.87ppm(201)、約0.89ppm(202)、および約0.90ppm(203)に位置する。
g)ACD/Labsにより作成された標準ACDソフトウエアを使用してピークのデコンボリューションを行った。
h)デコンボリューションしたピークの面積(A1methyl side groups(以下、A1)およびA2methyl end groups(以下、A2))の正確な測定を、同一のソフトウエアを用いて計算した。これは、メチル側基の数、すなわちA1=A1first peak+A1second peakと、メチル末端基の数、すなわちA2=A2first peak+A2second peak+A2third peakを測定するために使用される。図1では、A1first peak、A1second peak、A2first peak、A2second peakおよびA2third peakに、それぞれ(301)、(302)、(401)、(402)および(403)のマークが付されている。
i)炭素原子千個当たりのメチル側基およびメチル末端基の数は次のように計算した。
式中、A3はUHMWPE主鎖中のCH2基によるピーク面積であって、スペクトル1全体の中で最も高いピークであり、1.2〜1.4のppm範囲に位置する(図1に示さず)。
・引張特性:引張強さおよび引張弾性率は、ASTM D885Mに規定されているように定義され、マルチフィラメントヤーンについて、公称500mmの繊維ゲージ長、50%/minのクロスヘッド速度および「Fibre Grip D5618C」タイプのInstron2714クランプを使用して測定される。弾性率は、測定された応力−歪曲線に基づいて、0.3〜1%の間の歪の傾きとして測定される。弾性率と強度の計算では、測定した張力を、10メートルの繊維を評量して測定したタイターで除し、密度を0.97g/cm3と仮定してGPa単位の値を計算する。
・クリープ測定
図2に模式的に示した装置により、長さ約1500mmで、約504dtexのタイターを有し、かつ64本のフィラメントからなる、撚られていないヤーン試料、すなわち、実質的に平行なフィラメントを有するヤーンについて、クリープ試験を実施した。
ヤーンの各端をクランプの軸の周りに数回巻き付けた後、ヤーンの自由端をヤーン本体に結ぶことによって、ヤーン試料を2つのクランプ(101)および(102)の間に滑らないように固定した。クランプ間のヤーン(200)の最終長さは約180mmであった。
固定したヤーン試料を、70℃の温度に温度調節したチャンバー(500)に入れ、一方のクランプをチャンバーの天井(501)に、他方のクランプを3162gのカウンターウエイト(300)に取り付け、ヤーンに600MPaの荷重をかけた。クランプ(101)の位置およびクランプ(102)の位置は、センチメートルで区切られ、mmで再分割された目盛り(600)上で、インジケータ(1011)および(1021)により読み取ることができる。
ヤーンを前記チャンバー内に設置するとき、全く摩擦のない状態で実験を行えるように、クランプの間のヤーン部分が装置の部品に接触しないよう特別の注意を払った。
ヤーンに緩みが生じず、かつヤーンに初期荷重がかからない初期位置へカウンターウエイトを持ち上げるために、カウンターの下にあるジャッキ(400)を使用した。カウンターウエイトの初期位置は、ヤーン(200)の長さと、(600)で測定された(101)と(102)の間の距離とが等しくなる位置である。
その後、ジャッキを下げて、全荷重600MPaで10秒間ヤーンに予備荷重を加え、その後、ジャッキを再び初期位置まで上昇させて荷重を除去した。その後、予備荷重時間の10倍の時間、すなわち100秒間、ヤーンを荷重を加えない状態に置いた。
予備荷重の手順後、再び全荷重を加えた。ヤーンの時間的な伸びを、インジケータ(1021)の位置を読み取ることにより、目盛り(600)上で追跡した。前記インジケータが1mm進むのに要する時間を、ヤーンが破断するまで1mmの伸び毎に記録した。
ある時刻tにおけるヤーンの伸びεi[mm単位]は、ここでは、時刻tでのクランプ間のヤーンの長さ、すなわちL(t)と、クランプ間のヤーンの初期長さ(200)L0との差であると理解される。したがって:
εi(t)[mm単位]=L(t)−L0
ヤーンの伸び[パーセント単位]は:
である。
クリープ速度[1/s単位]は、時間1刻み当たりのヤーンの長さの変化と定義され、式(2):
によって算出した。
式中、εiおよびεi−1は、それぞれ時点iおよびその前の時点i−1における伸び率[%単位]であり、tiおよびti−1は、ヤーンの伸び率がそれぞれεiおよびεi−1に達するのに要する時間(秒単位)である。その後、クリープ速度を、パーセント単位の伸び率に対して、図3のように対数目盛上にプロットした。すなわち
である。図3の曲線の極小値を、試験したヤーンに固有のクリープ速度値として以下で使用した。
・IV:固有粘度は、PTC−179法(エルキュール社(Hercules Inc.)レビュー、1982年4月29日)に準拠し、デカリン中、135℃で(溶解時間16時間、酸化防止剤としてDBPCを2g/l−溶液の量で添加)、異なる濃度で測定した粘度を濃度ゼロに外挿することによって決定する。
・Dtex:繊維のタイター(dtex)は、100mの繊維を秤量することにより測定した。繊維のdtexは、ミリグラム表示の重さを10で割ることにより計算した。
・側鎖:UHMWPEに含まれる炭素原子千個当たりのメチル側基およびメチル末端基の量は、プロトン1H液体NMR(以下、簡単のためにl−NMRとする)により以下のように測定した。
a)3〜5mgのUHMWPEを、800mgの1,1’,2,2’−テトラクロロエタン−d2(TCE)溶液(TCE1グラム当たり0.04mgの2,6−ジ−tert−ブチル−パラクレゾール(DBPC)を含有)に加えた。TCEの純度は>99.5%であり、DBPCの純度は>99%であった。
b)UHMWPE溶液を標準の5mmNMRチューブに入れた後、炉中、140℃〜150℃の温度に加熱し、UHMWPEが解けるまで攪拌した。
c)5mmのインバースプローブヘッドを使用し、以下のようにセットアップしたハイフィールド(≧400MHz)NMRスペクトロメータにより、130℃でNMRスペクトルを記録した:試料回転数10〜15Hz、観測核―1H、ロック核―2H、パルス角90°、緩和遅延30sec、スキャン回数は1000にセット、掃引幅20ppm、NMRスペクトルのデジタル分解能0.5未満、得られたスペクトルの全点数64kおよび線幅の増大0.3Hz。図1は、実施例1のUHMWPEのNMRスペクトル(100)を示す。
d)記録した、信号強度(任意単位)対ケミカルシフト(ppm)(以下、スペクトル1)の較正を、TCEに対応するピークを5.91ppmにセットすることにより行った(図1に示さず)。TCEピークは容易に識別することができ、前記ピークは前記スペクトル1の5.5〜6.5のppm範囲で最も高い。
e)較正後、メチル側基数の決定に使用されるほぼ同じ強度の2つのピーク(二重項)は、0.8〜0.9ppmのppm範囲で最も高い。図1では、第1ピーク(101)は、約0.85ppmに位置し、第2ピーク(102)は約0.86ppmに位置する。
f)メチル末端基数の決定に使用される3つのピークは、同一ppm範囲で2番目に高く、第2ピークの後方、ppm範囲が増加する側に位置する。図1では、前記3つのピーク、すなわち(201)、(202)および(203)は、それぞれ約0.87ppm(201)、約0.89ppm(202)、および約0.90ppm(203)に位置する。
g)ACD/Labsにより作成された標準ACDソフトウエアを使用してピークのデコンボリューションを行った。
h)デコンボリューションしたピークの面積(A1methyl side groups(以下、A1)およびA2methyl end groups(以下、A2))の正確な測定を、同一のソフトウエアを用いて計算した。これは、メチル側基の数、すなわちA1=A1first peak+A1second peakと、メチル末端基の数、すなわちA2=A2first peak+A2second peak+A2third peakを測定するために使用される。図1では、A1first peak、A1second peak、A2first peak、A2second peakおよびA2third peakに、それぞれ(301)、(302)、(401)、(402)および(403)のマークが付されている。
i)炭素原子千個当たりのメチル側基およびメチル末端基の数は次のように計算した。
式中、A3はUHMWPE主鎖中のCH2基によるピーク面積であって、スペクトル1全体の中で最も高いピークであり、1.2〜1.4のppm範囲に位置する(図1に示さず)。
・引張特性:引張強さおよび引張弾性率は、ASTM D885Mに規定されているように定義され、マルチフィラメントヤーンについて、公称500mmの繊維ゲージ長、50%/minのクロスヘッド速度および「Fibre Grip D5618C」タイプのInstron2714クランプを使用して測定される。弾性率は、測定された応力−歪曲線に基づいて、0.3〜1%の間の歪の傾きとして測定される。弾性率と強度の計算では、測定した張力を、10メートルの繊維を評量して測定したタイターで除し、密度を0.97g/cm3と仮定してGPa単位の値を計算する。
・クリープ測定
図2に模式的に示した装置により、長さ約1500mmで、約504dtexのタイターを有し、かつ64本のフィラメントからなる、撚られていないヤーン試料、すなわち、実質的に平行なフィラメントを有するヤーンについて、クリープ試験を実施した。
ヤーンの各端をクランプの軸の周りに数回巻き付けた後、ヤーンの自由端をヤーン本体に結ぶことによって、ヤーン試料を2つのクランプ(101)および(102)の間に滑らないように固定した。クランプ間のヤーン(200)の最終長さは約180mmであった。
固定したヤーン試料を、70℃の温度に温度調節したチャンバー(500)に入れ、一方のクランプをチャンバーの天井(501)に、他方のクランプを3162gのカウンターウエイト(300)に取り付け、ヤーンに600MPaの荷重をかけた。クランプ(101)の位置およびクランプ(102)の位置は、センチメートルで区切られ、mmで再分割された目盛り(600)上で、インジケータ(1011)および(1021)により読み取ることができる。
ヤーンを前記チャンバー内に設置するとき、全く摩擦のない状態で実験を行えるように、クランプの間のヤーン部分が装置の部品に接触しないよう特別の注意を払った。
ヤーンに緩みが生じず、かつヤーンに初期荷重がかからない初期位置へカウンターウエイトを持ち上げるために、カウンターの下にあるジャッキ(400)を使用した。カウンターウエイトの初期位置は、ヤーン(200)の長さと、(600)で測定された(101)と(102)の間の距離とが等しくなる位置である。
その後、ジャッキを下げて、全荷重600MPaで10秒間ヤーンに予備荷重を加え、その後、ジャッキを再び初期位置まで上昇させて荷重を除去した。その後、予備荷重時間の10倍の時間、すなわち100秒間、ヤーンを荷重を加えない状態に置いた。
予備荷重の手順後、再び全荷重を加えた。ヤーンの時間的な伸びを、インジケータ(1021)の位置を読み取ることにより、目盛り(600)上で追跡した。前記インジケータが1mm進むのに要する時間を、ヤーンが破断するまで1mmの伸び毎に記録した。
ある時刻tにおけるヤーンの伸びεi[mm単位]は、ここでは、時刻tでのクランプ間のヤーンの長さ、すなわちL(t)と、クランプ間のヤーンの初期長さ(200)L0との差であると理解される。したがって:
εi(t)[mm単位]=L(t)−L0
ヤーンの伸び[パーセント単位]は:
である。
クリープ速度[1/s単位]は、時間1刻み当たりのヤーンの長さの変化と定義され、式(2):
によって算出した。
式中、εiおよびεi−1は、それぞれ時点iおよびその前の時点i−1における伸び率[%単位]であり、tiおよびti−1は、ヤーンの伸び率がそれぞれεiおよびεi−1に達するのに要する時間(秒単位)である。その後、クリープ速度を、パーセント単位の伸び率に対して、図3のように対数目盛上にプロットした。すなわち
である。図3の曲線の極小値を、試験したヤーンに固有のクリープ速度値として以下で使用した。
[比較例1]
UHMWPEの5質量%デカリン溶液を調製した。デカリン溶液で、135℃で測定された前記UHMWPEのIVは15dl/gであった。このUHMWPEの炭素原子千個当たりの全メチル基数は約1.6個で、そのうち1.4個はメチル側基であり、0.2個はメチル末端基であった。
UHMWPEの5質量%デカリン溶液を調製した。デカリン溶液で、135℃で測定された前記UHMWPEのIVは15dl/gであった。このUHMWPEの炭素原子千個当たりの全メチル基数は約1.6個で、そのうち1.4個はメチル側基であり、0.2個はメチル末端基であった。
ギアーポンプを具備した25mmの2軸スクリュー押出機により、180℃の温度設定で、紡糸孔数nが390個のスピナレットから、デカリンおよび水の蒸気も含む空気雰囲気中へ、孔1個当たり約1.5g/minの速度で、UHMWPE溶液を押出した。
紡糸孔は円形断面を有し、60°の円錐角で3.5mmの初期直径から1mmへと漸減し、その後、一定直径の部分が10のL/Dで続くものであって、スピナレットのこの固有の形状により12.25のスピナレット延伸比DRspが得られた。
紡糸孔は円形断面を有し、60°の円錐角で3.5mmの初期直径から1mmへと漸減し、その後、一定直径の部分が10のL/Dで続くものであって、スピナレットのこの固有の形状により12.25のスピナレット延伸比DRspが得られた。
流体繊維は、スピナレットから25mmのエアギャップおよび水槽に入り、そこで、流体UHMWPEフィラメントのトータル延伸比DRfluidが約245となるような速度で巻き取られた。
流体繊維を水槽で冷却してゲル繊維を形成した。この水槽は約40℃に維持し、槽に入る繊維に対して垂直な水フローを約50リットル/時の流量で供給した。水槽から、温度90℃の炉へとゲル繊維を送り、溶媒を蒸発させて固体繊維を形成させた。
炉内で、約25.3の延伸比を適用して固体繊維を延伸した。その過程で大部分のデカリンが蒸発した。
トータル延伸比DRoverall(=DRfluid×DRgel×Drsolid)は、245×1×25.3=6199であった。
トータル延伸比DRoverall(=DRfluid×DRgel×Drsolid)は、245×1×25.3=6199であった。
[実施例1]
炭素原子千個当たりの全メチル基が約1.3個で、そのうち0.9個がメチル側基であり、0.3個がメチル末端基であるUHMWPEを使用して比較実験を繰り返した。
トータル延伸比DRoverall(=DRfluid×DRgel×Drsolid)は、277×1×26.8=7424であった。
炭素原子千個当たりの全メチル基が約1.3個で、そのうち0.9個がメチル側基であり、0.3個がメチル末端基であるUHMWPEを使用して比較実験を繰り返した。
トータル延伸比DRoverall(=DRfluid×DRgel×Drsolid)は、277×1×26.8=7424であった。
[実施例2]
流体延伸比を345、固体繊維に適用する延伸比を26として実施例1を繰り返した。比較実験と同一のスピナレット形状を使用した。
流体延伸比を345、固体繊維に適用する延伸比を26として実施例1を繰り返した。比較実験と同一のスピナレット形状を使用した。
[実施例3]
流体延伸比を350、固体繊維に適用する延伸比を33として実施例1を繰り返した。比較実験と同一のスピナレット形状を使用した。
流体延伸比を350、固体繊維に適用する延伸比を33として実施例1を繰り返した。比較実験と同一のスピナレット形状を使用した。
[実施例4]
流体延伸比を544、固体繊維に適用する延伸比を36として実施例1を繰り返した。スピナレットは、60°の円錐角で3.5mmの初期直径から0.8mmへと漸減し、その後、一定直径の部分が10のL/Dで続く紡糸孔を有するものとした。紡糸孔のこの固有の形状により19.1のスピナレット延伸比DRspが得られた。
流体延伸比を544、固体繊維に適用する延伸比を36として実施例1を繰り返した。スピナレットは、60°の円錐角で3.5mmの初期直径から0.8mmへと漸減し、その後、一定直径の部分が10のL/Dで続く紡糸孔を有するものとした。紡糸孔のこの固有の形状により19.1のスピナレット延伸比DRspが得られた。
比較例および実施例の繊維特性、すなわち、クリープ速度、引張強さおよび弾性率を表2にまとめる。前記表から、DRoverallを増加させることにより、強度およびクリープに関して良好な機械的特性を有する繊維を製造できることがわかる。前記表は、さらに、本発明の方法において、上で規定したようなUHMWPEを使用することにより、公知のポリエチレンから製造された繊維と比較して機械的特性が向上した繊維が得られることを示している。
Claims (13)
- 高いテナシティと良好な耐クリープ性を有するゲル紡糸UHMWPE繊維の製造方法であって、その方法は、
a.デカリン中、135℃における固有粘度が5dl/g以上であるUHMWPEを溶媒に溶解した溶液を調製する工程;
b.工程a)の溶液を複数の紡糸孔を有するスピナレットからエアギャップへ紡糸して、流体フィラメントを形成する工程;
c.前記流体フィラメントを冷却して、溶媒含有ゲルフィラメントを形成する工程;および
d.固体フィラメントの延伸前および/または延伸中に、残存している溶媒の少なくとも一部を前記ゲルフィラメントから除去して、固体フィラメントを形成する工程
を含み、
前記UHMWPEが炭素原子千個当たり0.1〜1.3個のメチル側基;および0.08〜0.6個のメチル末端基を含み、かつ総延伸比(DRoverall=DRfluid×DRgel×DRsolid)が7000以上(但し、流体延伸比DRfluid=DRsp×DRag(式中、DRspは紡糸孔における延伸比、DRagはエアギャップにおける延伸比である)が100以上である)であることを特徴とする方法。 - DRoverall=DRfluid×DRgel×DRsolidが8000以上である請求項1に記載の方法。
- DRfluid=DRsp×DRagが200以上である請求項1または2に記載の方法。
- 少なくとも1回の工程で、4以上の固体延伸比DRsolidで、前記固体フィラメントが延伸される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 引張強さが4GPa以上で、かつ70℃、荷重600MPaで測定されるクリープ速度が6×10−7sec−1以下であるゲル紡糸UHMWPE繊維。
- クリープ速度が4×10−7sec−1以下である請求項5に記載の繊維。
- 引張強さが4.5GPa以上である請求項5または6に記載の繊維。
- 請求項5〜7のいずれか一項に記載の繊維を含むロープ。
- 請求項5〜7のいずれか一項に記載の繊維を含む複合製品。
- 請求項5〜7のいずれか一項に記載の繊維を含む医療用具。
- 前記医療用具が縫合糸または医療用ケーブルである請求項10に記載の医療用具。
- 炭素原子千個当たり0.1〜1.3個のメチル側基;および0.08〜0.6個のメチル末端基を含むUHMWPEの、紡糸プロセスにおける、好ましくは溶融紡糸プロセスまたはゲル紡糸プロセスにおける、特に好ましくはゲル紡糸プロセスにおける使用。
- 前記繊維が静的張力を受ける用途における、請求項5〜7のいずれか一項に記載の繊維の使用。
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