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JP2793403B2 - 化学物質の認識法及び認識情報記憶法並びに化学物質センシングシステム - Google Patents
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JP2793403B2 - 化学物質の認識法及び認識情報記憶法並びに化学物質センシングシステム - Google Patents

化学物質の認識法及び認識情報記憶法並びに化学物質センシングシステム

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JP2793403B2
JP2793403B2 JP4004255A JP425592A JP2793403B2 JP 2793403 B2 JP2793403 B2 JP 2793403B2 JP 4004255 A JP4004255 A JP 4004255A JP 425592 A JP425592 A JP 425592A JP 2793403 B2 JP2793403 B2 JP 2793403B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、多種多様な化学物質
を認識し得る、生物の味覚・嗅覚を模倣した化学物質の
認識法、該認識を行なう際に用いる照合用の情報の記憶
法並びに、これら認識法及び記憶法の実施に好適な化学
物質センシングシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、味及び匂いは多種多様な化学物
質の複雑かつ総合的な組み合わせに由来し生じる。そし
て、生物はこのような味や匂いを味覚や嗅覚によって認
識する。しかし、味覚や嗅覚がどのような機構なのかは
未だ不明な点が多い。ただ、味や匂いを認識する際に、
生物の受容細胞の応答はそれぞれの化学物質に対して非
特異的であるが、それぞれの化学物質に関する情報が多
くの情報量をもつ神経インパルスの発振パターンに変換
され、これが脳でパターン認識されると考えられてい
る。
【0003】一方、味や匂いを人工的に認識したいとい
う要望は、食品工業、化粧品工業、環境計測分野などを
はじめとする各分野で極めて高い。そこで、従来からこ
の種の認識方法に関する研究がなされていた。
【0004】その一つの方法として、化学物質に関する
情報を電気伝導度などのアナログ量に変換しこれに基づ
き化学物質を認識しようとする方法があった。
【0005】また、他の方法として、例えば文献(信学
技報MBE88−78,p.41)に開示されているよ
うに、水晶振動子センサアレイとニューラルネットワー
クとを用い、味や匂いを認識しようとする方法があっ
た。この方法は、水晶振動子に予め吸着膜を塗布して構
成した水晶振動子センサに化学物質が吸着するとこの水
晶振動子の振動数が変化することを利用したもので、化
学物質に関する情報を水晶振動子の振動数の変化に変換
しニューラルネットワークによりパターン認識しようと
するものであった。このため、この方法は味覚・嗅覚に
かなり類似した認識方法といえた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の方法の
うちの、化学物質に関する情報を電気伝導度などのアナ
ログ量に変換するという前者の方法では、多種多様な化
学物質を認識するためにそれぞれの化学物質に特異的に
応答する多数の受容部が必要になるという問題点があっ
た。
【0007】また、受容部として水晶振動子センサアレ
イを用いる方法の場合、水晶振動子に塗布した吸着膜に
物理的に吸着しない化学物質は認識できないので認識可
能な化学物質に限界があった。さらに、単に水晶振動子
の振動数変化のみを認識情報としているので情報量が少
ないという問題点があった。さらに、前者の技術同様
に、多種多様な化学物質を認識するためにはそれらの化
学物質に応答する数多くの受容部(例えば吸着膜の種類
を違えた複数の水晶振動子センサ)が必要になり認識装
置の構成を複雑にするという問題点、また場合によって
は適当な吸着膜がない等の理由により認識が困難という
問題点があった。
【0008】この出願はこのような点に鑑みなされたも
のであり、従ってこの出願の第一発明の目的は味や匂い
を従来よりも味覚・嗅覚に類似の方法で認識できる認識
法を提供することにある。また、この出願の第二発明の
目的は第一発明の認識法で認識のために用いる照合用の
情報の記憶法を提供することにある。また、この出願の
第三発明の目的は第一及び第二発明各々の実施に好適な
センシングシステムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】この目的の達成を図るた
め、この出願に係る発明者は、種々の研究を重ねた。そ
して、(a).フリーマンがウサギの嗅球(脳の中の匂
い情報の処理を行なう部分)において得た知見(文献a
(「バイオロジカル サイバネチック(Biological Cyd
ernetics)」,Springer-Verlag(1987),p.139-150 )に
開示のもの)と、(b).ある種の脂質を多孔質膜に吸
着させた人工膜(興奮性人工膜)ではある条件下で電気
的なカオス発振が生じ然も発振パターンは種々の化学物
質に応答し変化することが発振の相関次元を計算するこ
とにより明らかになる(Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.28,No.8
(1989),p.1507-1512) という事実と、に着目した。ここ
で、フリーマンが得た知見とは、ウサギの嗅球に慢性的
に電極を埋め込み、さまざまな匂い刺激に対するこの嗅
球の集合的な活動電位を測定したところ、初めてかいだ
匂いに対しての活動電位はカオスとなるが、ウサギに様
々な匂いをかがせ覚えさせた後にこの匂いを再度このウ
サギにかがせると、活動電位はリミットサイクル(周期
軌道)になるというものである。すなわち、異なる匂い
は異なる振幅や周期をもつリミットサイクルに対応する
という知見である。
【0010】
【0011】さらに、この出願に係る発明者の研究によ
れば、興奮性人工膜に直流電流を印加することに加えさ
らに交流電流を印加しこの交流電流の振幅及び周波数を
適正化するとこの興奮性人工膜でのカオス発振に周期性
が見られるようになりカオス発振のアトラクターの複雑
性は低下しリミットサイクルに近づくことが分かった。
このような現象は非線形振動子の引き込み現象として知
られているが、興奮性人工膜においても確認できた訳で
ある。また、カオス発振をリミットサイクルに変化させ
得る交流電流の振幅及び周波数が各化学物質によって固
有になることも分かった。
【0012】そこで、この出願の第一発明によれば、直
流電流に交流電流を重畳した電流を印加した状態の興奮
性人工膜で化学物質に起因し生じるカオス発振に基づい
て化学物質を認識する方法において、前記カオス発振を
リミットサイクルに変化させる前記交流電流の振幅、周
波数及び該リミットサイクル状態でのアトラクターの形
状の少なくとも1つの情報を、化学物質ごとに予め求め
て記憶しておく。そして、この記憶させた情報に対応す
る情報を認識対象の化学物質について求める。そして、
該求めた情報を前記記憶してある情報と照合することに
より、前記認識対象の化学物質を認識する。
【0013】また、この出願の第二発明の化学物質の認
識情報記憶法によれば、直流電流に交流電流を重畳した
電流を印加した状態の興奮性人工膜で化学物質に起因し
生じるカオス発振に基づいて化学物質を認識するための
照合用の情報として、前記カオス発振をリミットサイク
ルに変化させる前記交流電流の振幅、周波数及び該リミ
ットサイクル状態でのアトラクターの形状の少なくとも
1つの情報を、予め記憶しておくことを特徴とする。
【0014】
【0015】また、この出願の第三発明の化学物質セン
シングシステムによれば、電気的なカオス発振を生じる
興奮性人工膜から成る受容部と、該興奮性人工膜に、直
流電流に交流電流を重畳した電流を印加するための電流
源と、前記電流を印加した状態の興奮性人工膜で化学物
質に起因し生じるカオス発振をリミットサイクルに変化
させる前記交流電流の振幅、周波数及び該リミットサイ
クル状態でのアトラクターの形状の少なくとも1つを測
定する情報処理部であって、該測定した情報を記憶する
記憶部及び、該記憶部に記憶した情報と該情報に対応す
る認識対象の化学物質についての情報とを照合して該化
学物質を認識する認識部を有した情報処理部とを具えた
ことを特徴とする。
【0016】
【0017】
【作用】この第一発明の構成によれば、以下のような作
用が得られる。直流電流に交流電流を重畳した電流を印
加した興奮性人工膜で化学物質に起因して生じるカオス
発振をリミットサイクルに変化させる前記交流電流の振
幅、周波数および該リミットサイクル状態でのアトラク
ター形状は、いずれも、リミットサイクル状態ではない
単なるカオス発振の状態での振幅、周波数およびアトラ
クターの形状に比べて、化学物質に固有な値および形状
になる。そのため、リミットサイクル状態ではない単な
るカオス発振のアトラクタの形状では違いが見い出せな
い化学物質であっても、リミットサイクル状態の交流信
号の振幅、周波数およびアトラクターの形状の少なくと
も1つに着目すると、別々の化学物質として識別でき
る。また、前記振幅、周波数およびアトラクターの形状
のうちの2以上の情報を用いればより精密な識別ができ
る。また、前記振幅および又は周波数を用いて化学物質
を識別する場合は、アトラクターの形状を用いる場合に
比べて、記憶部のメモリ容量の低減を図ることができ、
また、記憶部により多量の化学物質についての参照用情
報を記憶させることもできる。
【0018】また、この第二発明の構成によれば、第一
発明の実施に当たっての参照用の認識情報を適正に記憶
させることができる。
【0019】また、この出願の第三発明の構成によれ
ば、第一及び第二発明の工業的な実施を容易にする。
【0020】
【実施例】以下、図面を参照してこの出願の各発明の実
施例について併せて説明する。なお、説明に用いる各図
はこの発明が理解できる程度に各構成成分の寸法、形状
及び配置関係を概略的に示してある。また、以下の説明
中の使用材料及び使用材料の濃度、実験中での電圧値、
電流値、時間などの数値的条件はこの発明の範囲内の一
例にすぎない。
【0021】1.興奮性人工膜の作製 第一〜第三発明各々に関係する興奮性人工膜は、この実
施例では、下記(1)式で示される合成脂質ジオレイル
ホスフェート(以下、「DOPH」と略称することもあ
る。)を多孔質膜に吸着させることにより作製する。具
体的には、ベンゼンにDOPHを所定量溶解させたDO
PH−ベンゼン溶液中に、孔径5μmの孔を多数有する
ミリポアフィルタ(ミリポア社製のフィルタ)を浸漬
し、その後、この溶液からミリポアフィルタを取り出し
ベンゼンを蒸発させることにより、興奮性人工膜を作製
する。なお、ミリポアフィルタへのDOPHの吸着量
は、当該興奮性人工膜で自励発振が生じ易いような量に
する。
【0022】
【化1】
【0023】2.センシングシステムの説明 また、第一発明及び第二発明の実施に好適な第三発明に
係る化学物質のセンシングシステムとして、この実施例
では以下に説明するようなシステムを用意する。図1は
その説明に供するブロック図である。
【0024】この実施例のセンシングシステムは、第1
〜第4の槽11〜14と、直流電流源15a及び交流電
流源15bを有する電流源と、情報処理部16と、XY
レコーダ17とを具えている。
【0025】第1の槽11及び第2の槽12各々の一部
には、この場合直径5mmの穴部11a,12aがそれ
ぞれ形成してある。これら第1及び第2の槽11、12
の穴部形成面間に、上述のように作製した興奮性人工膜
21を挟むことにより当該興奮性人工膜21がこのシス
テムにセットされる。なお、これら第1の槽11及び第
2の槽12各々の中には興奮性人工膜21でカオス発振
が生じ易いような電解質溶液を入れる。この実施例では
両槽11,12中に1mM濃度のKCl水溶液をそれぞ
れ入れてある。これらKCl水溶液は両槽11,12の
穴部11a,12aにて興奮性人工膜21にそれぞれ接
する。
【0026】また、第3の槽13は第1の槽11と塩橋
(ソルトブリッジ:Salt Bridge )18aを介し接続さ
れた構成としてあり、第4の槽14は第2の槽12と塩
橋18bを介し接続された構成としてある。そして、こ
れら第3及び第4の槽13,14各々には、飽和電解質
溶液この場合3M濃度のKCl水溶液をそれぞれ入れて
ある。
【0027】また、電流源15は興奮性人工膜21に直
流電流及び交流電流の一方又は双方を印加するためのも
ので、この場合直流電流のみ、交流電流のみ或いは直流
電流に交流電流を重畳させた電流(これも交流電流と考
えられるが以下、「重畳電流」と称することもある。)
のいずれかを必要に応じ任意に印加できる構成としてあ
る。なお、電流源15からの興奮性人工膜21への電流
の印加は、電流源15の一方の出力端子に接続されかつ
第3の槽13に浸漬されている一方の電流印加用電極1
9a(例えば、Ag−AgCl電極)と、電流源15の
他方の出力端子に接続されかつ第4の槽に浸漬されてい
る他方の電流印加用電極19b(例えば、Ag−AgC
l電極)とにより行なう構成としてある。
【0028】また、この実施例の情報処理部16は、興
奮性人工膜21で生じるカオス発振のアトラクターの形
状、該カオス発振をリミットサイクルとし得る交流電流
の振幅及び周波数をそれぞれ測定し記憶するもので、さ
らに、化学物質の認識を行なうための照合用の情報とし
て、(1).興奮性人工膜21に直流電流を印加したと
きのカオス発振でのアトラクターの形状、(2).興奮
性人工膜21に交流電流(重畳電流も含む)を印加した
ときカオス発振をリミットサイクルとし得る交流電流の
振幅、(3).この交流電流の周波数、及び(4).該
リミットサイクル状態でのアトラクターの形状の4つの
情報のうちの少なくとも1つの情報を記憶する記憶部
(図示を省略)と、該記憶部に格納された情報及びセン
シング時に測定した対応する情報を照合して化学物質を
認識する認識部(図示を省略)とを具えたものとしてあ
る。なお、興奮性人工膜21で生じる電気的なカオス発
振の情報処理部16への入力は、この場合、第3の槽1
3中に浸漬された測定用電極20a(例えば、Ag−A
gCl電極)と、第4の槽14中に浸漬された測定用電
極20b(例えば、Ag−AgCl電極)とで検出され
る電位変化をアンプ20cを介し取り込むことにより行
なっている。
【0029】このような情報処理部16は、例えばA/
D変換回路、サンプリング回路、比較回路、メモリなど
の従来公知の電気回路技術を用い構成できるが、コンピ
ユータで構成するのが簡易であり好適である。
【0030】このように構成された図1に示した化学物
質センシングシステムでは、第1の槽11及び第2の槽
12中に既知の化学物質を添加することによりこの化学
物質に起因する興奮性人工膜21のカオス発振を生じさ
せることができ、かつ、このカオス発振のアトラクター
の形状に基づく参照用の情報を情報処理部16の図示し
ない記憶部に格納できる。また、第1の槽11及び第2
の槽12中に未知の化学物質を添加することによりこの
化学物質に起因する興奮性人工膜21のカオス発振を生
じさせることができ、かつ、このカオス発振のアトラク
ターの形状に基づく情報を得ることができさらにこの情
報と上記参照用の情報とを照合することによりこの未知
の化学物質の認識を行なうことができる(詳細は後述す
る。)。
【0031】なお、第3及び第4の槽13、14を設け
ることなく第1の槽11に電極19a及び20aをそれ
ぞれ浸漬し、第2の槽12に電極19b,20bをそれ
ぞれ浸漬するようにしても原理的には化学物質の認識な
どを行なうことができる。
【0032】3.化学物質の認識 次に、化学物質の認識などの実施例について説明する。
【0033】図1に示したシステムの電流源15を用い
0.5μAの直流電流に振幅が0.2μAで周波数が
0.5Hzの交流電流を重畳した電流を興奮性人工膜2
1に印加する。そして、このような電流印加条件におい
て測定用電極20a,20bで観測される電位を時間経
過に沿って情報処理部16に取り込みまたXYレコーダ
17により記録する。その結果、図2に示すように電位
変動する発振波形がXYレコーダ17に記録された。
【0034】次に、このようにして得られた発振波形で
の、人工膜21に印加した重畳電流が極大値この場合は
0.1+0.5=0.6μAとなる時刻から2秒間分の
電位を各極大値対応時刻毎に順次にサンプリングしこれ
ら値をローレンツプロット(n番目のサンプリング電位
n をX座標にとりn+1番目のサンプリング電位V
n+1 をY座標にとって順次両者をプロットしたもの。例
えば文献:生物物理,Vol.23,No.6,p.2
3(1983)に詳しい。)することにより、化学物質
無添加状態での興奮性人工膜21でのカオス発振のアト
ラクターを得る。このアトラクターは、図3に示すよう
なものとなった。
【0035】次に、第1の槽11及び第2の槽12それ
ぞれに、化学物質としてA社製のコーヒーを所定量添加
する。そして、この際の興奮性人工膜21で生じるカオ
ス発振を情報処理部16によって取り込む。次に、ここ
で得られた発振波形(図2のようなもの。ただし、コー
ヒ添加により波形は図2と異なる。)から上述の化学物
質無添加のときの手順と同様にしてローレンツプロット
を行ない、A社製のコーヒーに起因し興奮性人工膜21
で生じるカオス発振のアトラクターを得る。このアトラ
クターは、図4に示すようなものとなった。
【0036】また、第1の槽11及び第2の槽12それ
ぞれに添加する化学物質を、オレンジ味、アップル味ま
たB社製のコーヒーとした場合それぞれでのアトラクタ
を上述の手順によりそれぞれ得る。オレンジ味に起因す
るアトラクター、アップル味に起因するアトラクターを
図5と図6とにそれぞれ示す。
【0037】図3〜図6に示した結果から明らかなよう
に興奮性人工膜21の化学物質に起因する発振のアトラ
クターの形状は、化学物質の種類(無添加の場合も含
む)即ち味の種類によって異なることが分かる。このた
め、種々の味に起因する発振のアトラクターの形状を情
報処理部16の記憶部(図示せず)に参照用情報として
予め記憶させておきこれに未知の化学物質(ある味を示
す物質)から得たアトラクタを照合することによりこの
化学物質(この味物質)の認識が可能なことが理解でき
る。しかしながら、類似した味例えば上述の例ではA社
製のコーヒー及びB社製のコーヒーについては、上述の
重畳電流条件でのカオス発振のアトラクターの形状は互
いに類似していたため、このままでは両者の識別はでき
なかった。
【0038】そこで、次に、第1の槽11及び第2の槽
12にA社製のコーヒーを添加した場合及びB社製のコ
ーヒーを添加した場合各々で興奮性人工膜21に印加す
る重畳電流のうちの交流電流の振幅及び周波数を種々に
変え、各交流電流条件でのアトラクターをそれぞれ調
べ、アトラクター形状がリミットサイクルに最も近づく
交流電流の振幅及び周波数を測定する。このようにして
見いだしたリミットサイクルに近いアトラクタを、A社
製のコーヒーのものについては図7に、B社製のコーヒ
ーのものについては図8にそれぞれ示した。
【0039】図7及び図8を比較することで明らかなよ
うに、リミットサイクルに近いアトラクター同士を認識
情報として使用すると、両者のアトラクタの形状は大き
く異なるので、味が類似のA社製コーヒー及びB社製コ
ーヒーの識別が可能になることが分かる。また、リミッ
トサイクルに近いアトラクターが得られる当該交流電流
は、A社製のコーヒー添加の場合は振幅が0.075μ
Aで周波数が0.8Hzのものであり、B社製のコーヒ
ー添加の場合は振幅が0.085μAで周波数が0.7
Hzのものというように、両者でわずかではあるが異な
っているので、これら交流電流と上記リミットサイクル
の形状とを認識情報とすることによりさらに精密な識別
ができる。
【0040】また、かなり異なった味同士では、アトラ
クターをリミットサイクルに近づける交流電流の振幅及
び周波数が各味毎にかなり違うことが分かった。例え
ば、A社製のコーヒーを添加した場合の当該交流電流は
上述のように振幅が0.075μAで周波数が0.8H
zのものとなり、オレンジ味を添加した場合は振幅が
0.06μAで周波数が0.4Hzのものとなり、アッ
プル味を添加した場合は振幅が0.14μAで周波数が
1.5Hzのものというように、互いに異なるものとな
った。従って、かなり異なった味同士では、アトラクタ
ーをリミットサイクルに近づける交流電流の振幅及び周
波数のみを認識情報として用いても各味(各化学物質)
の識別が可能なことが理解できる。このように交流電流
の振幅や周波数により化学物質を認識する構成では情報
処理部16に記憶させておく参照用情報が交流電流の振
幅及び周波数のみで良くなるので、アトラクタ形状を用
いる場合に比べメモリ容量の低減が図れ、また、多量の
化学物質の情報を記憶させることもできるので有用であ
る。
【0041】上述においては、この出願の各発明の実施
例について説明したがこれら発明は上述の実施例に限ら
れない。
【0042】例えば上述の実施例ではカオス発振のアト
ラクターをローレンツプロットにより得ていたが、この
発明の目的を達成し得る方法であればアトラクターは他
の方法で得ても良い。
【0043】また、上述の興奮性人工膜の構成は単なる
一例にすぎず用いる脂質や多孔質膜さらに人工膜の作製
方法は他の好適な材料及び方法に変更できる。
【0044】
【発明の効果】上述した説明からも明らかなように、こ
の出願の第一発明によれば、直流電流に交流電流を重畳
した電流を印加した状態の興奮性人工膜で化学物質に起
因し生じるカオス発振に基づいて化学物質を認識する方
法において、前記カオス発振をリミットサイクルに変化
させる前記交流電流の振幅、周波数及び該リミットサイ
クル状態でのアトラクターの形状の少なくとも1つの情
報を求め、該情報を予め求めて種々の化学物質について
の情報と照合して、化学物質を認識する。これら振幅、
周波数およびアトラクターの形状は、いずれも、リミッ
トサイクル状態ではない単なるカオス発振の状態での振
幅、周波数およびアトラクターの形状に比べて、化学物
質に固有な値および形状になる。そのため、従来より、
味覚・嗅覚に類似の方法で化学物質を認識できる。ま
た、前記振幅、周波数およびアトラクターの形状のうち
の2以上の情報を用いて化学物質を識別する場合、より
精密に化学物質を識別できる。また、前記振幅及び又は
周波数を用いて化学物質を識別する場合、アトラクター
の形状を用いる場合に比べて、記憶部のメモリ容量の低
減が図れ、また、より多量の化学物質の情報を記憶部に
記憶させることができる。
【0045】また、この出願の第二発明の認識情報記憶
法によれば、第一発明の実施に当たっての参照用の認識
情報を適正に記憶させることができる。
【0046】また、この出願の第三発明の化学物質セン
シングシステムによれば、第一及び第二発明の工業的な
実施を容易にする。
【0047】
【図面の簡単な説明】
【図1】第一〜第三発明の実施に用いたセンシングシス
テムの説明図である。
【図2】興奮性人工膜のカオス発振のアトラクターを得
る手順の説明図である。
【図3】実施例の説明に供する図であり、化学物質無添
加の場合のアトラクタを示した図である。
【図4】実施例の説明に供する図であり、A社製コーヒ
ー添加の場合のアトラクタを示した図である。
【図5】実施例の説明に供する図であり、オレンジ味添
加の場合のアトラクタを示した図である。
【図6】実施例の説明に供する図であり、アップル味添
加の場合のアトラクタを示した図である。
【図7】実施例の説明に供する図であり、A社製コーヒ
ー添加の場合のアトラクタのリミットサイクルを示した
図である。
【図8】実施例の説明に供する図であり、B社製コーヒ
ー添加の場合のアトラクタのリミットサイクルを示した
図である。
【符号の説明】
11:第1の槽(例えば1mMKCl水溶液在中) 11a:穴部 12:第2の槽(例えば1mMKCl水溶液在中) 12a:穴部 13:第3の槽(例えば3MKCl水溶液在中) 14:第4の槽(例えば3MKCl水溶液在中) 15:電流源 15a:直流電流源 15b:交流電流源 16:情報処理部 17:XYレコーダ 18a,18b:塩橋(ソルトブリッジ) 19a,19b:電流印加用電極(例えばAg−AgC
l電極) 20a,20b:測定用電極(例えばAg−AgCl電
極) 21:興奮性人工膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 海部 勝晶 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (72)発明者 加藤 雅一 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−216445(JP,A) 才田好則ほか「興奮性人工脂質膜にお けるカオス」電子情報通信学会技術報告 VOL.91,370(1991)P13−20 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 27/00 G01N 27/416 JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直流電流に交流電流を重畳した電流を印
    加した状態の興奮性人工膜で化学物質に起因し生じるカ
    オス発振に基づいて化学物質を認識する方法において、 前記カオス発振をリミットサイクルに変化させる前記交
    流電流の振幅、周波数及び該リミットサイクル状態での
    アトラクターの形状の少なくとも1つの情報を、化学物
    質ごとに予め求めて記憶しておき、 該記憶させた情報に対応する情報を認識対象の化学物質
    について求め、該求めた情報を前記記憶してある情報と
    照合することにより、前記認識対象の化学物質を認識す
    ることを特徴とする化学物質の認識法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の化学物質の認識法にお
    いて、 前記記憶しておく情報を、前記交流電流の振幅、周波数
    およびアトラクターの形状の少なくとも2つの情報とす
    ることを特徴とする化学物質の認識方法。
  3. 【請求項3】 直流電流に交流電流を重畳した電流を印
    加した状態の興奮性人工膜で化学物質に起因し生じるカ
    オス発振に基づいて化学物質を認識するための照合用の
    情報として、 前記カオス発振をリミットサイクルに変化させる前記交
    流電流の振幅、周波数及び該リミットサイクル状態での
    アトラクターの形状の少なくとも1つの情報を、予め記
    憶しておくことを特徴とする化学物質の認識情報記憶
    法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の化学物質の認識情報記
    憶法において、 前記記憶しておく情報を、前記交流電流の振幅、周波数
    およびアトラクターの形状の少なくとも2つの情報とす
    ることを特徴とする化学物質の認識情報記憶法。
  5. 【請求項5】 電気的なカオス発振を生じる興奮性人工
    膜から成る受容部と、 該興奮性人工膜に、直流電流に交流電流を重畳した電流
    を印加するための電流源と、 前記電流を印加した状態の興奮性人工膜で化学物質に起
    因し生じるカオス発振をリミットサイクルに変化させる
    前記交流電流の振幅、周波数及び該リミットサイクル状
    態でのアトラクターの形状の少なくとも1つを測定する
    情報処理部であって、 該測定した情報を記憶する記憶部及び、該記憶部に記憶
    した情報と該情報に対応する認識対象の化学物質につい
    ての情報とを照合して該化学物質を認識する認識部を有
    した情報処理部とを具えたことを特徴とする化学物質セ
    ンシングシステム。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の化学物質センシングシ
    ステムにおいて、 前記測定する情報を、前記交流電流の振幅、周波数及び
    該リミットサイクル状態でのアトラクターの形状の少な
    くとも2つとすることを特徴とする化学物質センシング
    システム。
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