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JP2955657B2 - 赤潮プランクトンに特異的に感染して増殖・溶藻しうるウイルス、該ウイルスを利用する赤潮防除方法および赤潮防除剤、並びに該ウイルスの保存方法 - Google Patents
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JP2955657B2 - 赤潮プランクトンに特異的に感染して増殖・溶藻しうるウイルス、該ウイルスを利用する赤潮防除方法および赤潮防除剤、並びに該ウイルスの保存方法 - Google Patents

赤潮プランクトンに特異的に感染して増殖・溶藻しうるウイルス、該ウイルスを利用する赤潮防除方法および赤潮防除剤、並びに該ウイルスの保存方法

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JP2955657B2
JP2955657B2 JP10084622A JP8462298A JP2955657B2 JP 2955657 B2 JP2955657 B2 JP 2955657B2 JP 10084622 A JP10084622 A JP 10084622A JP 8462298 A JP8462298 A JP 8462298A JP 2955657 B2 JP2955657 B2 JP 2955657B2
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heterosigma
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red tide
culture
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  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、赤潮プランクトン
に特異的に感染して増殖しうるウイルス、該ウイルスを
利用する赤潮防除方法および赤潮防除剤、並びに該ウイ
ルスの保存方法に関し、より詳細には、ヘテロシグマ属
の藻類に特異的に感染して増殖しうるウイルス、該ウイ
ルスを利用する赤潮防除方法および赤潮防除剤、並びに
該ウイルスの保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】わが国の海面養殖業は、国内漁業生産額
全体の約1/4を占めている。この振興にあっては、とく
に養殖漁場の環境保全を図ることが不可欠であり、なか
でも深刻な被害を引き起こす赤潮に対しての有効な対策
の推進がきわめて重要である。こうした背景のもと、赤
潮被害を防除するためのさまざまな方策がこれまでに提
案されてきた。しかしながらそれらは、赤潮水域への粘
土散布(多孔質の粘土にプランクトンを物理的に吸着さ
せて沈める)や過酸化水素等の薬剤散布(プランクトン
を化学的に殺滅する)といった緊急避難的な方策であ
り、規模・コスト面での問題がある上、自然海域への人
為的異物投入による生態系への影響、すなわち安全性が
懸念されるためのものであったため、実用化には至らな
かった。したがって、赤潮が実際に発生した海域では、
養殖魚への餌止めをするとともに、生け簀を清澄な海域
に避難させることで急場を凌いでいるのが現状である。
このため規模・コスト・安全性の3つの面で実用に適う
赤潮防除技術の開発が望まれている。
【0003】ごく最近まで本研究の対象生物であるヘテ
ロシグマアカシオによる漁業被害は、他の赤潮原因種
(シャットネラ属,ギムノディニウム属など)による漁
業被害額がきわめて大きかったため相対的に軽度である
と考えられてきた。しかしながら近年、本種による赤潮
一件あたりの被害額は増大傾向にあり、1995年以降では
わが国の主要な赤潮被害の約50%がヘテロシグマによる
被害となるなど、本プランクトンの今後の挙動が注目さ
れている。また海外では、ニュージーランドのビッググ
ローリー湾の養殖サケに10億円以上の被害を与えるな
ど、養殖産業に対するヘテロシグマ赤潮の脅威は国際的
にも認識されているところである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、こ
のように、産業上注目すべき赤潮原因プランクトンであ
るヘテロシグマを対象生物とする、ウイルスを利用する
赤潮防除方法および赤潮防除剤を提供することを目的と
する。また、本発明は、ヘテロシグマ属を標的とするウ
イルスおよびその単離方法を提供することも目的とす
る。
【0005】さらに、本発明は、ヘテロシグマ属を標的
とするウイルスの保存方法を提供することを目的とす
る。また、本発明は、上記の方法で保存したウイルスの
再生方法を提供することも目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意努力した結果、ヘテロシグマアカシ
オに特異的に感染して増殖しうるウイルスの単離に成功
し、本発明を完成させるに至った。また、本発明者ら
は、ヘテロシグマアカシオウイルスを、ジメチルスルホ
オキシド存在下、液体窒素中で安定に保存する方法およ
びこの方法で保存したヘテロシグマアカシオウイルスを
再生する方法も見いだした。
【0007】すなわち、本発明は、ヘテロシグマ属の藻
類に特異的に感染して増殖しうるウイルスを提供する。
ヘテロシグマ属の藻類はヘテロシグマアカシオであると
よい。ヘテロシグマアカシオに特異的に感染して増殖し
うるウイルスは、尾部構造および外膜構造を欠き、粒径
202±6nmの正20面体であり、2本鎖DNAを持つウ
イルスであってもよい。また、本発明は、ヘテロシグマ
属の藻類に特異的に感染して増殖しうるウイルスに感染
しているヘテロシグマ属の藻類を含有する液体試料を孔
径0.2μm のフィルターで濾過し、得られた濾液をヘテ
ロシグマ属の藻類の培養液に接種して培養し、ヘテロシ
グマ属の藻類の溶藻が観察された培養液をヘテロシグマ
属の藻類の培養液で限界希釈することにより前記ウイル
スをクローニングする工程を含む、ヘテロシグマ属の藻
類に特異的に感染して増殖しうるウイルスの単離方法を
提供する。この単離方法においては、液体試料に紫外線
を照射する工程をさらに含んでもよい。紫外線の照射
は、ウイルスの単離操作のいずれの時期に行ってもよ
く、例えば、液体試料の濾過の前あるいは後に行うこと
ができる。さらに、本発明は、ヘテロシグマ属の藻類に
特異的に感染して増殖しうるウイルスを有効成分として
含む赤潮防除剤を提供する。さらにまた、本発明は、ヘ
テロシグマ属の藻類に特異的に感染して増殖しうるウイ
ルスを赤潮水域に散布することからなる赤潮防除方法も
提供する。
【0008】本発明は、また、ヘテロシグマ属の藻類に
特異的に感染して増殖しうるウイルスの保存方法であっ
て、該ウイルスを含有する液体をジメチルスルホキシド
の存在下で凍結させることを特徴とする前記の方法を提
供する。本発明の好ましい態様においては、ヘテロシグ
マ属の藻類に特異的に感染して増殖しうるウイルスを含
有する液体を、10〜20体積%の濃度のジメチルスル
ホキシドの存在下で、液体窒素中で凍結させる。本発明
の方法は、ヘテロシグマ属の藻類に特異的に感染して増
殖しうるウイルスの懸濁液を用意し、これをヘテロシグ
マ属の藻類の新鮮な培養液に接種し、溶藻が確認された
時点で、培養上清とジメチルスルホキシド含有培地とを
混合し、混合液を液体窒素中で凍結させる工程を含んで
もよい。その具体的な一例として、ヘテロシグマ属の藻
類の新鮮な培養液にその1/100〜1/50体積%の量のウイ
ルス懸濁液を接種し、溶藻が確認された時点で、培養上
清と20〜40体積%の濃度でジメチルスルホキシドを含む
SWM3培地とを等量ずつ混合し、混合液を−196℃の
液体窒素中で凍結させるとよい。
【0009】また、本発明は、上記の方法によって保存
した、ヘテロシグマ属の藻類に特異的に感染して増殖し
うるウイルスの再生方法も提供するが、ここで、凍結し
た該ウイルス含有液は解凍され、ヘテロシグマ属の藻類
の新鮮な培養液に接種される。この再生方法において
は、ヘテロシグマ属の藻類の新鮮な培養液にその1体積
%以下の量の解凍したウイルス含有液が接種されるとよ
い。本発明の方法で保存および再生されたウイルスは、
ヘテロシグマ属の藻類に対する感染性を保持している。
【0010】本明細書において、「赤潮」とは、プラン
クトンの急激な増殖に伴い水域の色が変化する現象を指
す。この用語は、水産生物の被害の有無に関わらず広く
用いられる。わが国の有害赤潮の原因となるプランクト
ンとしては、シャットネラ属、ギムノディニウム属、ヘ
テロシグマ属などがその代表例としてあげられる。ま
た、「ヘテロシグマ属の藻類」とはラフィド藻綱に属す
るもので、ヘテロシグマ属に属する種としてはヘテロシ
グマアカシオが知られている。
【0011】「ヘテロシグマアカシオ(Heterosigma ak
ashiwo) 」は、長径11〜25μmの偏平な楕円型をした2
本の鞭毛をもつ単細胞性の海産植物プランクトンであ
る。ヘテロシグマアカシオは、無性生殖で2分裂により
増殖する。有性生殖過程はまだ明らかにされていない
が、冬季はシスト(一種のタネに相当する細胞)を形成
し、海底泥中で休眠することが知られている。ヘテロシ
グマアカシオは、南北両半球の温帯域あるいは亜寒帯域
において発生する有害赤潮の原因種として知られる。わ
が国では5月〜7月にかけて各地の沿岸域で赤潮を形成
し、しばしば養殖魚への被害をもたらす。ヘテロシグマ
アカシオによる魚殺機構は十分には解明されていない
が、鰓の分泌異常や溶血性物質の影響によるものである
可能性が指摘されている。
【0012】さらに、「ウイルス」とは、感染した宿主
細胞内においてのみ増殖しうる感染性をもった球形また
は繊維状の微小構造体をいう。ウイルスは、二分裂で増
殖することはできず、宿主細胞の生合成系を利用するこ
とでのみ自己の複製を行うという点で、細菌とは全く異
なる。細菌の場合と比較して宿主特異性が著しく高いの
が特徴である。なお、「宿主特異性」とは、病原性寄生
生物(この場合はウイルス)が感染し増殖しうる宿主生
物の種類の範囲がどの程度限定されているかを表す用語
である。例えば、「宿主特異性が高い」あるいは「宿主
域が狭い」という表現は、感染できる生物の種類が少な
いことを意味する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本研究の対象生物であるヘテロシグマアカシオは、瀬戸
内海など内湾域に分布している有害赤潮プランクトンの
一種である。本種は、漁業被害をもたらすプランクトン
種として古くから注目されており、とくに近年大規模な
漁業被害を引き起こす傾向にある。
【0014】本発明のウイルスは、ヘテロシグマ属の藻
類に特異的に感染して増殖しうる。ヘテロシグマアカシ
オに特異的に感染して増殖しうるウイルス(HaV:ヘ
テロシグマアカシオウイルス)は、尾部構造および外膜
構造を欠き、粒径202±6nmの正20面体であり、2本
鎖DNAを持つ。実験では、このウイルスに感染したヘ
テロシグマアカシオ細胞は運動性を失い死滅したが、こ
のときおびただしい数の複製されたウイルスを放出し、
新たな(すなわち、未感染の)ヘテロシグマアカシオ細
胞の感染・死滅を誘発した。したがって、数百万〜数千
万個のヘテロシグマアカシオ細胞を含む培養液中に1個
のウイルスを加えるだけで、遅くとも約10日以内に培
養中のすべての細胞を完全に死滅させることが可能であ
る。また、本ウイルスの宿主特異性は高く、これまでの
ところ、ヘテロシグマアカシオ以外の植物プランクトン
に対する本ウイルスの影響は全く検出されていない。
【0015】本発明のウイルスは、以下のようにして単
離することができる。まず、ヘテロシグマ属の藻類に特
異的に感染して増殖しうるウイルスに感染しているヘテ
ロシグマ属の藻類を含有する海水などの液体試料を用意
し、これを約4℃の温度で保存しておく。ヘテロシグマ
属の藻類としては、ヘテロシグマアカシオが好ましい。
また、この液体試料に15Wの紫外線を0〜120秒間照
射するとよい。この操作はウイルスの殺藻活性を誘導す
るのに有効である。得られた液を孔径0.2μmのフィル
ターで濾過した後、濾液をヘテロシグマ属の藻類の培養
液に接種して、例えば、20℃、45μmol photons m
-2s-1、14時間明:10時間暗の条件下で1〜2日間培養
する。ヘテロシグマ属の藻類の培養液は、この藻類を予
めマイクロピペット法または限界希釈法によりクローニ
ングして、株化しておき、20℃で2nMのNa2SeO3含有
改変SWM3培地(Chen ら, 1969, J. Phycol 5:211-220; I
toh &Imai, 1987, Shuwa, Tokyo, p.122-130)にて14時
間:10時間の明暗のサイクルで5〜7日間、45μmol ph
otons m -2 s-1の白色蛍光灯の照射下で培養しておくこ
とにより調製できる。
【0016】次いで、ヘテロシグマ属の藻類の溶藻が観
察された培養液をヘテロシグマ属の藻類の培養液で限界
希釈することによりウイルスをクローニングする。ヘテ
ロシグマ属の藻類の培養液の調製法は上記のとおりであ
る。限界希釈は次のようにして行うとよい。まず、ヘテ
ロシグマ属の藻類の溶藻が観察された培養液の上清をと
り、ヘテロシグマ属の藻類の培養液で連続的に希釈する
ことによりその上清の10倍希釈列を作製し、これらを
例えば20℃、45μmol photons m-2s-1、14時間明:10時
間暗の条件下で7〜10日間培養する。培養後、ヘテロシ
グマ属の藻類の溶藻が観察された最も希釈度の高いもの
を選択して、その上清を用いて上記の操作を少なくとも
1回繰り返す。
【0017】最終の限界希釈の後、ヘテロシグマ属の藻
類の溶藻が観察された最も希釈度の高いものの上清をヘ
テロシグマ属の藻類の大量培養液(例えば、約25ml) に
接種して、例えば20℃、45μmol photons m-2s-1、14時
間明:10時間暗の条件下で3〜5日間培養する。ヘテロ
シグマ属の藻類の溶藻が観察された培養液は、0.2%ア
ジ化ナトリウムの添加後、4℃の暗所で保存するとよ
い。この培養液を孔径0.02μm のフィルターで濾過す
ることにより、フィルター上にウイルス粒子をとらえ、
これをDAPI(4',6'-diamidino-2-phenylindole)で染色し
て紫外線下で観察することができる。
【0018】本発明のウイルスは、室内実験系で(小規
模ではあるが)比較的安価に培養することが可能であ
る。本発明のウイルスを赤潮水域に散布することによ
り、赤潮を防除することができる。赤潮の防除にあたっ
ては、本発明のウイルスの培養液またはその上清をその
まま使用してもよいが、本発明のウイルスを活性成分と
して含む製剤を調製してこれを使用してもよい。
【0019】本発明の赤潮防除方法および赤潮防除剤
は、自然環境中にすでに存在している宿主特異性の高い
ウイルスを利用するので、生態系への負荷が小さな環境
修復技術として、その安全性に高い期待が寄せられる。
また、本発明の赤潮防除剤は、他の通常の薬剤と異な
り、ウイルス自体に自己複製能が備わっているため、少
量の投入で広範囲への赤潮制御が期待できる。次に、ヘ
テロシグマ属の藻類に特異的に感染して増殖しうるウイ
ルスを保存および再生する方法の具体的な手順の一例を
以下に記載する。
【0020】1.ヘテロシグマ属の藻類の培養液を調製
する。例えば、後述の実施例1に記載のようにして、ヘ
テロシグマ属の藻類の培養液を調製するとよい。
【0021】2.ヘテロシグマ属の藻類に特異的に感染
して増殖しうるウイルスの懸濁液を用意する。例えば、
後述の実施例2に記載のようにして、ウイルス懸濁液を
用意する。
【0022】3.新鮮なヘテロシグマ培養にウイルス懸
濁液を接種する。例えば、後述の実施例3に記載のよう
にして、2.で得られたウイルス懸濁液を新鮮なヘテロ
シグマ属の藻類の培養液に接種して培養する。培養液を
光学顕微鏡で観察して、溶藻を確認する。このとき球形
化した感染細胞が残存していても差し支えない。
【0023】4.溶藻が確認された時点で、培養上清と
20〜40体積%ジメチルスルホキシド(以下、「DMS
O」と記す。)を含むSWM3培地とを等量ずつ素速く
混合し、バイアル中に分注する。
【0024】5.バイアルを−196℃の液体窒素中にそ
のまま浸析し凍結させる。 6.そのままの状態でバイアルを液体窒素中で保存す
る。 7.必要時に、バイアルを取り出し、流水中で、米粒大
の氷塊が残る程度まで手早く解凍する。
【0025】8.解凍したウイルス含有液をヘテロシグ
マ属の藻類の新鮮な培養液に接種する。ただし、DMS
Oそのものの毒性がヘテロシグマ細胞に影響するのを防
ぐため、接種量は培養液の1体積%以下となるようにす
る。8.の培養液を培養すれば、ウイルスがヘテロシグ
マ属の藻類に感染し、溶藻が観察される。従って、上記
の方法で保存および再生したウイルスは、ヘテロシグマ
属の藻類に対する感染性を保持していることがわかる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明
の範囲はこれらの実施例により限定されるものではな
い。以下の実施例において、特にことわらない限り、%
の表示は体積%を示すものとする。
【0026】
【実施例】 〔実施例1〕 藻類の培養 実施例で用いるヘテロシグマアカシオおよび他の微細藻
類の株は、マイクロピペット法または限界希釈法により
クローニングして、株化しておいた。ヘテロシグマアカ
シオの株は20℃で、他の藻類の株は15または20℃
で、2nMのNa2SeO3含有改変SWM3培地(Chen ら, 1969,
J. Phycol 5:211-220; Itoh & Imai, 1987, Shuwa, Tok
yo, p.122-130)にて14時間:10時間の明暗のサイク
ルで約45μmol photons m -2 s-1の白色蛍光灯の照射
下で培養した。
【0027】〔実施例2〕 ウイルスの単離 1996年7月11日にヘテロシグマ赤潮の発生した日本の高
知県野見湾で採取した海水(1mlあたり35400 個のヘテ
ロシグマアカシオを含有していた。) を4℃に保ち、24
時間以内に実験室に運んだ。実験室における処理は、Br
atbakら((1996), J. Mar. Syst. 9:75-81) およびJacob
senら((1990), J. Phycol 32:923-927)の方法を改良し
たものである。採取した海水試料を50 mlずつペトリ皿
に入れ、それぞれ、0、30、60、90および120秒間紫外
線照射 (波長254nm 、東芝GK15)し、実施例1と同じ培
養方法で2日間20℃でインキュベートした。その後、各
試料を孔径0.2μm のNuclepore membraneフィルターで
濾過し、200 μl の各濾液をヘテロシグマアカシオGS95
の5mlの培養液に接種し、これを実施例1と同じ条件下
で培養した。細胞の溶藻の有無を調べるために、培養液
を毎日光学顕微鏡でチェックした。0、30および60秒間
紫外線照射した海水試料を接種したヘテロシグマアカシ
オGS95に溶藻が検出されたが、90および120秒間紫外線
照射した海水試料を接種したものには検出されなかっ
た。
【0028】ウイルスの単離は2回の限界希釈法により
行った(Suttle & Chen, 1993, Mar. Ecol. Prog. Ser.
92:99-109) 。細胞の溶藻が観察された各培養液の上清
をとり、ヘテロシグマアカシオGS95の細胞懸濁液150μl
で連続的に希釈することによりその上清の10倍希釈
列を作製した。各希釈を8個用意した。これらを培養し
た後、ヘテロシグマアカシオGS95の細胞の溶藻が観察さ
れた最も希釈度の高いものを選択して、その上清を用い
て上記の操作をもう一度繰り返した。このとき、2個以
上のウイルスが存在する危険率は0.0106以下であっ
た。最後に、2回目の限界希釈アッセイにおいてヘテロ
シグマアカシオGS95の細胞の溶藻が観察された最も希釈
度の高いものの上清をヘテロシグマアカシオGS95の50ml
の新鮮な培養液に接種して、培養した。ヘテロシグマア
カシオGS95の細胞の溶藻が観察された培養液を0.2%の
アジ化ナトリウムと合わせ、4℃の暗所で保存し、これ
を「最初のウイルス懸濁液」と仮に命名した。すべての
培養は実施例1と同様に行った。同時に、各希釈列にお
ける溶藻の証拠を示すウェル数に基づき、Nishihara ら
((1986), Eisei Kagaku 32:226-228) が開発したコンピ
ュータープログラムを用いて、各アッセイにおけるウイ
ルスの濃度を計算した。
【0029】ヘテロシグマアカシオGS95の細胞の溶藻体
を孔径0.02μm のフィルター(Anodisc 25, Whatman I
nternational Ltd.)で濾過することにより、フィルター
上にウイルス粒子をとらえ、これをDAPI(4',6'-diamidi
no-2-phenylindole)で染色して蛍光顕微鏡下で観察し
た。溶藻体はDAPIで染色された数多くの粒子を含有して
いるのが観察されたので、この粒子(すなわち、ウイル
ス)は二本鎖DNAを有していることが言える。このよ
うにして単離されたウイルスをヘテロシグマアカシオウ
イルス(HaV)と命名して、以下の実施例3および4に
使用した。また、このウイルス粒子は酢酸ウラニルでネ
ガティブ染色されることが透過型電子顕微鏡で観察され
た。
【0030】〔実施例3〕 ウイルスの宿主範囲 実施例2で得られた「最初のウイルス(HaV)懸濁液」
に、(1)無処理、(2)孔径0.2μm のフィルター
(DISMIC-25, Advantec)による濾過、(3)孔径0.1μ
m のフィルター(AnotopTM25, Anotec) による濾過、あ
るいは(4)100 ℃5分間の処理を施し、この懸濁液50
μl を対数増殖期の表1に挙げた藻類の株の1mlの培養
液にそれぞれ接種して培養した。培養液を光学顕微鏡で
観察した。10日後に溶藻しなかった株はそのウイルス
の宿主ではないとみなした。HaV感染に対する各種の藻
類の株の感受性を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】表1の結果から、HaVの感染性は種特異的
というより株特異的であることがわかるが、これはヘテ
ロシグマアカシオ株のウイルス感染における表現型の多
様性を示すものである。
【0033】〔実施例4〕 ヘテロシグマアカシオに対
するウイルスの作用 実施例2で得られた「最初のウイルス(HaV) 懸濁液」の
ストックに、(1)無処理、(2)孔径0.2μm のフィ
ルター(DISMIC-25, Advantec)による濾過、(3)孔径
0.1μm のフィルター(AnotopTM25, Anotec) による濾
過、あるいは(4)100 ℃5分間の処理を施し、各50μ
lを対数増殖期の表1に挙げた藻類の株の4mlの培養液
(3重)にそれぞれ接種した。蛍光光度計(Turner Des
igns) を用いて、ヘテロシグマアカシオの増殖をモニタ
ーした。溶藻後、各培養液中の細胞を原と千原の方法
((1982), Jap. J. Phycol. 30:47-56)に従って、透過型
電子顕微鏡で観察した。
【0034】培養時間とヘテロシグマ(ヘテロシグマア
カシオGS95 (図1のA)およびヘテロシグマアカシオUR94
(図1のB)) の増殖の関係を図1に示す。図1におい
て、縦軸は培養液中のクロロフィル蛍光相対値を表し、
横軸は培養時間(日)を表す。■は(1)無処理、●は
(2)孔径0.2μm のフィルター(DISMIC-25, Advante
c)による濾過、×は(3)孔径0.1μm のフィルター
(AnotopTM25, Anotec) による濾過、△は(4)100 ℃
5分間の処理を施した「最初のウイルス(HaV08) 懸濁
液」のストックを接種したヘテロシグマアカシオGS95ま
たはヘテロシグマアカシオUR94を表す。
【0035】(1)の無処理、あるいは(2)の孔径0.
2μm のフィルター(DISMIC-25, Advantec)による濾過
処理を施した「最初のウイルス(HaV) 懸濁液」のストッ
クを接種したヘテロシグマアカシオGS95およびヘテロシ
グマアカシオUR94に溶藻が生じた。これとは対照的に、
(3)の孔径0.1μm のフィルター(AnotopTM25, Anot
ec) による濾過、あるいは(4)の100 ℃5分間の処理
を施すことにより、殺藻性は失われた。このことは、ウ
イルスが100〜200 nm程度の大きさで、熱に不安定であ
ることを示している。
【0036】さらに、(1)の無処理、あるいは(2)
の孔径0.2μm のフィルター(DISMIC-25, Advantec)に
よる濾過処理を施した「最初のウイルス(HaV) 懸濁液」
のストックを接種したヘテロシグマアカシオUR94が溶藻
した培養液を透過型顕微鏡で観察したところ、ウイルス
が観察された。このウイルスは、直径202 ±6 nm (平均
±標準偏差) で、断面が五角形または六角形であり、こ
のことは、ウイルスが正二十面体であることを示してい
る。また、このウイルスは、キャプシドとは異なる電子
密度の高い非対称球形のコアを有し、尾部を欠いてい
た。
【0037】これとは対照的に、(3)の孔径0.1μm
のフィルター(AnotopTM25, Anotec) による濾過、ある
いは(4)の100 ℃5分間の処理を施した「最初のウイ
ルス(HaV) 懸濁液」のストックを接種したヘテロシグマ
アカシオUR94の培養液においては、ウイルスの複製は検
出されなかった。溶藻の前段階として、ヘテロシグマア
カシオの細胞は球形化し、運動性を失い底面に沈積した
後、崩壊に至った。これらの観察結果から、天然の赤潮
汚染で観察されるように、感染細胞が水の下層に沈むこ
とが示唆される。赤潮の最終段階でヘテロシグマアカシ
オ細胞の上への移動が停止することとウイルス感染によ
り生じる運動性の喪失とが関係していることは注目に値
する。
【0038】〔実施例5〕 他の赤潮海水からのHaVの
分離 1996年6月24日にヘテロシグマ赤潮の発生した日本の福
岡県豊前海で採取した海水につき、上記の実施例2〜4
の操作を行ったところ、同様の物理的・化学的性状をも
つヘテロシグマアカシオウイルス(HaV)が複数株得ら
れた。図2は、このうちの1株のネガティブ染色像であ
る。ウイルスの直径は約0.2 μm である。
【0039】〔実施例6〕本実施例においては光条件お
よび温度条件がHaVの感染能に与える影響を調べた。5
℃、10℃、15℃、20℃および25℃に設定したインキュベ
ータにあらかじめ限界希釈法(実施例2を参照)により
感染力価(感染能を持つウイルス粒子の濃度=1ml中に
何個存在しているかを示す値)を測定したHaV01懸濁液
を2本ずつ保存した。それぞれのうち1本はアルミホイ
ルにより遮光し(暗条件)、もう1本は14時間:10
時間の明暗サイクルで45μmol photons m-2 s-1の白色
蛍光灯を照射した(明条件)。このようにして各条件下
に置いたウイルス懸濁液の感染力価を、保存開始後18
日目、39日目および83日目にそれぞれ限界希釈法に
より測定し、その変化をグラフに示した(図3)。
【0040】その結果、光条件下(L)に置かれたすべ
ての試料と暗条件下(D)で15℃以上に置かれた試料
は、保存開始18日目の時点でその感染力価が検出限界
以下まで低下した。この結果は暗所冷蔵保存は該ウイル
スの感染性を短期間保持する上で有効であるが、長期の
保存には適さないということを示すものである。
【0041】〔実施例7〕ヘテロシグマアカシオウイル
スの冷凍保存法を検討するために以下の実験を行った。
あらかじめ限界希釈法により感染力価を測定したHaV懸
濁液に、SWM3培地、グリセロールもしくはジメチルス
ルホキシド(DMSO)を体積%で10%となるようにそれぞ
れ添加し、バイアルに分注後、-20(通常のフリーザ
ー)、-80(ディープフリーザー)、-196℃(液体窒素
中)において凍結した。この状態で14日間凍結した試
料を取り出し、流水中で米粒大の氷塊が残る程度まで解
凍した。さらにこれを十分に攪拌した後、限界希釈法に
よりそれぞれの感染力価を測定した結果を示したのが図
4である。図4のグラフの左に示した略号は、(-)がSWM
3添加区を、(G)がグリセロール添加区を、また(D)がDMS
O添加区をそれぞれ表す。感染力価が検出されたのは、-
196℃に保存したグリセロール添加区とDMSO添加区のみ
であり、DMSO添加区の感染力価の方がグリセロール添加
区のそれよりも約2オーダー高かった。その他の実験区
ではすべて感染力価が検出限界以下となった。これらの
結果は、10%DMSOを添加後、液体窒素中で凍結保存する
ことによりHaVの感染能の喪失を低減させることができ
るということを示している。
【0042】〔実施例8〕ヘテロシグマアカシオウイル
スの冷凍保存に際して感染能の喪失の度合いをもっとも
低減させるDMSO添加濃度を以下の方法で検討した。あら
かじめ限界希釈法により感染力価を測定したHaV懸濁液
に、DMSOを体積%で0、5、10、20、30%となるように
それぞれ添加し、バイアルに分注後、液体窒素中で凍結
した。この状態で14日間保存後、実施例8の方法に従
い解凍し、各保存条件下のHaV懸濁液の感染力価を限界
希釈法で測定した。その結果を示したのが図5である。
この結果、ヘテロシグマアカシオウイルス懸濁液に凍結
保護剤としてDMSOを終濃度10-20%となるように添加
し、液体窒素中で保存することにより、ヘテロシグマア
カシオウイルスをその感染性を保持した状態で保存でき
ることが明らかとなった。図6には終濃度10%のDMSOを
加えたHaV懸濁液の長期保存を行った際の感染力価の変
化を示した。これまでのところ、この条件で凍結保存す
ることで少なくとも109日間、高い感染性を維持させ
た状態で凍結保存が可能であることが明らかとなった。
このようにして再生させたHaVを人為的に赤潮状態まで
増殖させたヘテロシグマアカシオの培養に接種すること
により、茶色く濁った培養を約2日間で透明な状態にす
ることが可能であった(図7)。なお、上記の実施例6
〜8において用いたウイルス懸濁液およびヘテロシグマ
属の藻類の培養液は、それぞれ、実施例2および1に記
載の方法に従って、調製した。
【0043】
【発明の効果】本発明により、ヘテロシグマ属の藻類に
特異的に感染して増殖しうるウイルスが提供された。ま
た、本発明により、ヘテロシグマ属の藻類に特異的に感
染して増殖しうるウイルスの保存方法が提供された。さ
らに、本発明により、上記の方法で保存したウイルスの
再生方法が提供された。本発明のウイルスを用いること
により、赤潮を防除することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、培養時間とヘテロシグマ(ヘテロシグ
マアカシオGS95およびヘテロシグマアカシオUR94) の増
殖の関係を示す。
【図2】図2は、HaVのネガティブ染色像である。
【図3】図3は、光条件および温度条件がHaVの感染能
にあたえる影響を示す。
【図4】図4は、各種凍結保護剤を添加後に、-20, -8
0, -196℃で14日間凍結保存したHaV懸濁液の感染力価を
示す。
【図5】図5は、凍結保護剤としてDMSOを各濃度で添加
し-196℃で14日間凍結保存したHaV懸濁液の感染力価を
示す。
【図6】図6は、凍結保護剤として10%DMSOを添加し、
-196℃で凍結保存したHaV懸濁液の感染力価の経日的変
化を示す。
【図7】図7の写真のうち、左のフラスコは人為的に赤
潮状態まで増殖させたヘテロシグマアカシオ培養であ
り、右のフラスコはHaVを接種して2日後の死滅した状
態のヘテロシグマアカシオの培養である。

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヘテロシグマアカシオに特異的に感染し
    て増殖しうるウイルスであって、尾部構造および外膜構
    造を欠き、粒径202±6nmの正20面体であり、2本鎖
    DNAを持つウイルス。
  2. 【請求項2】 ヘテロシグマアカシオに特異的に感染し
    て増殖しうるウイルスであって、尾部構造および外膜構
    造を欠き、粒径202±6nmの正20面体であり、2本鎖
    DNAを持つウイルスに感染しているヘテロシグマ属の
    藻類を含有する液体試料を孔径0.2μm のフィルターで
    濾過し、得られた濾液をヘテロシグマ属の藻類の培養液
    に接種して培養し、ヘテロシグマ属の藻類の溶藻が観察
    された培養液をヘテロシグマ属の藻類の培養液で限界希
    釈することにより前記ウイルスをクローニングする工程
    を含む、ヘテロシグマアカシオに特異的に感染して増殖
    しうるウイルスであって、尾部構造および外膜構造を欠
    き、粒径202±6nmの正20面体であり、2本鎖DNA
    を持つウイルスの単離方法。
  3. 【請求項3】 液体試料に紫外線を照射する工程をさら
    に含む請求項2記載の単離方法。
  4. 【請求項4】 ヘテロシグマアカシオに特異的に感染し
    て増殖しうるウイルスであって、尾部構造および外膜構
    造を欠き、粒径202±6nmの正20面体であり、2本鎖
    DNAを持つウイルスを有効成分として含む赤潮防除
    剤。
  5. 【請求項5】 ヘテロシグマアカシオに特異的に感染し
    て増殖しうるウイルスであって、尾部構造および外膜構
    造を欠き、粒径202±6nmの正20面体であり、2本鎖
    DNAを持つウイルスを赤潮水域に散布することからな
    る赤潮防除方法。
  6. 【請求項6】 ヘテロシグマアカシオに特異的に感染し
    て増殖しうるウイルスであって、尾部構造および外膜構
    造を欠き、粒径202±6nmの正20面体であり、2本鎖
    DNAを持つウイルスの保存方法であって、該ウイルス
    を含有する液体をジメチルスルホキシドの存在下で凍結
    させることを特徴とする前記の方法。
  7. 【請求項7】 前記ウイルスを含有する液体を、10〜
    20体積%の濃度のジメチルスルホキシドの存在下で、
    液体窒素中で凍結させる請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記ウイルスの懸濁液を用意し、これを
    ヘテロシグマ属の藻類の新鮮な培養液に接種し、溶藻が
    確認された時点で、培養上清とジメチルスルホキシド含
    有培地とを混合し、混合液を液体窒素中で凍結させる工
    程を含む請求項6記載の方法。
  9. 【請求項9】 ヘテロシグマ属の藻類の新鮮な培養液に
    その1/100 〜1/50体積%の量の前記ウイルス懸濁液を接
    種し、溶藻が確認された時点で、培養上清と20〜40体積
    %の濃度でジメチルスルホキシドを含むSWM3培地と
    を等量ずつ混合し、混合液を−196℃の液体窒素中で凍
    結させる工程を含む請求項7または8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 請求項6の方法によって保存した、
    テロシグマアカシオに特異的に感染して増殖しうるウイ
    ルスであって、尾部構造および外膜構造を欠き、粒径20
    2±6nmの正20面体であり、2本鎖DNAを持つウイ
    ルスの再生方法であって、凍結した該ウイルス含有液を
    解凍し、ヘテロシグマ属の藻類の新鮮な培養液に接種す
    ることを特徴とする前記の方法。
  11. 【請求項11】 ヘテロシグマ属の藻類の新鮮な培養液
    にその1体積%以下の量の解凍したウイルス含有液を接
    種する請求項10記載の方法。
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