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JP3352913B2 - アルミニウム又はアルミニウム合金材溶接用ミグワイヤ - Google Patents
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JP3352913B2 - アルミニウム又はアルミニウム合金材溶接用ミグワイヤ - Google Patents

アルミニウム又はアルミニウム合金材溶接用ミグワイヤ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアルミニウム又はア
ルミニウム合金材の溶接に使用されるミグワイヤに関
し、特に、ワイヤ送給性及びアーク安定性を向上させる
ことができるアルミニウム又はアルミニウム合金材溶接
用ミグワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム又はアルミニウム合金材を
ミグ溶接する場合、良好な溶接部を得るためには、耐ブ
ローホール性及びワイヤの送給性を改善する必要があ
る。
【0003】即ち、アルミニウム又はアルミニウム合金
は、液相と固相との水素溶解度の差が大きいので、特
に、その溶接部においてブローホールが発生しやすい。
そこで、アルミニウム又はアルミニウム合金ワイヤに存
在する水素量を低減すると、耐ブローホール性を向上さ
せることができることは公知であり、例えば、ワイヤ内
における水素の存在位置を適切に規定したワイヤが開示
されている(特開平6−246480号公報)。
【0004】このように、耐ブローホール性について
は、ワイヤ内における水素の存在位置を把握して、ワイ
ヤの製造工程を調整することにより、ブローホールの発
生頻度を減少させることができる。
【0005】一方、実際の溶接現場においては、厳しい
送給系を有する半自動溶接及び多関接ロボットを使用し
て溶接が実施されているため、近時、このような厳しい
送給系においても、溶接時にワイヤを定速送給すること
ができる方法を得ることが重要な課題となっている。こ
れは、ワイヤの送給不良が生じた場合、安定した溶接部
を形成することができず、融合不良及びビード蛇行を生
じるからである。そこで、水素原子を保有しない送給潤
滑油であるポリエーテルのフッ素誘導体をワイヤ表面に
付着させることにより、送給性の改善を図ったワイヤが
提案されている(特開平6−114590号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
6−114590号公報に記載されたワイヤを使用して
も、近時の溶接ロボットの普及によって送給系が厳しく
なっているので、安定したアークを継続して得ることは
困難である。
【0007】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、ワイヤ送給性及びアークの安定性を共に向
上させることができるアルミニウム又はアルミニウム合
金材溶接用ミグワイヤを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係るアルミニウ
ム又はアルミニウム合金材用ミグワイヤは、常温で液体
のポリエーテルのフッ素誘導体が、直径が50乃至20
0μmの液滴状態で、20乃至80(個/mm2)の付
着密度でワイヤ表面に付着していることを特徴とする。
【0009】このポリエーテルのフッ素誘導体の直径は
100乃至150μmであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】本願発明者等は、厳しい送給系に
おいてもワイヤ送給性を向上させることができるワイヤ
をを得るために、ワイヤ表面へのポリエーテルのフッ素
誘導体の付着量を増減させて、その適切な付着量の範囲
を検討した。以下、ポリエーテルのフッ素誘導体をフッ
素油という。
【0011】図1は横軸にワイヤ表面におけるフッ素油
の付着量をとり、付着量の変化によるワイヤの送給性及
びアーク安定性の影響を示すグラフ図である。図1にお
いて、実線1はワイヤの送給性を示し、ワイヤ表面にお
けるフッ素油の付着量が少ないほど、厳しい送給系にお
いて送給不良が発生する。一方、実線2はアークの安定
性を示し、ワイヤ表面におけるフッ素油の付着量が多い
ほど、アークが不安定となる。従って、図1に示すよう
に、付着量を調整するのみでは、ワイヤの送給性とアー
ク安定性との両方を向上させることはできず、フッ素油
のワイヤ表面への付着量の適切な範囲を見い出すことは
できなかった。
【0012】ところで、ワイヤ表面におけるフッ素油の
付着量が少ない場合にワイヤの送給性が低下するのは、
溶接用コンジットチューブとワイヤとの接触による摩擦
抵抗が増大するからである。従って、フッ素油の付着量
が少ないと、厳しい送給系においてワイヤが円滑に送給
されない。また、フッ素油の付着量が多い場合には、ワ
イヤは円滑に送給されるが、ワイヤ表面に厚い絶縁皮膜
が形成されているので、通電チップとワイヤ間の給電が
妨げられ、これにより、アークが不安定になる。
【0013】そこで、本願発明者等は、ワイヤ送給性と
アーク安定性との双方を向上させることができるワイヤ
を得るために、種々検討を行った。先ず、ワイヤ表面に
おけるフッ素油の付着量と付着形態との関係について調
査した。図2はフェルトを使用した塗布方法によってフ
ッ素油をワイヤ表面に付着させた場合のワイヤ表面を赤
外分光法によって分析した結果を示す図である。これ
は、フロン等の希釈液によって希釈されたフッ素油の溶
液をフェルトにしみ込ませて、このフェルトをワイヤ表
面に擦り付けることによってフッ素油をワイヤ表面に塗
布する方法である(実開平3−116274号公報)。
【0014】また、図3は回転型静電霧化塗布方法によ
ってフッ素油をワイヤ表面に付着させた場合のワイヤ表
面を赤外分光法によって分析した結果を示す図である。
この回転型静電霧化塗布方法とは、塗布する溶液を高電
圧が印加されたベルカップ内に供給し、このベルカップ
を回転させることにより塗装粒子(フッ素油)を霧化さ
せると共に帯電させて、対極にある被塗装物(ワイヤ)
に塗装粒子を塗布する方法である(特許2578556
号)。
【0015】なお、図2及び3においては、X軸に波
数、Y軸にワイヤ表面の所定位置からの距離をとって、
Z軸に吸光度をとっている。また、本実施例において
は、吸光度の測定には、パーキンエルマ社製の顕微FT
−IR(顕微フーリエ変換赤外分光)装置を使用した。
【0016】フッ素油を赤外分光法によって分析する
と、通常、1000〜1300cm-1の領域に吸収ピー
クが現れる。図2においては、測定位置に拘わらず、こ
の領域に不均一な強度で吸収ピークが存在している。こ
のように、従来の塗布方法によってフッ素油をワイヤ表
面に塗布すると、ワイヤ表面の全領域がフッ素油によっ
て不均一に被覆されたものとなる。なお、その付着量の
差は、ワイヤ表面上に存在するフッ素油の膜厚により評
価することができる。
【0017】一方、図3においては、ある位置にのみフ
ッ素油を示すピークが現れている。即ち、回転型静電霧
化塗布方法によってフッ素油をワイヤ表面に付着させる
と、図2に示す付着形態と異なったものとなり、フッ素
油が存在する領域と全く存在しない領域とが形成され
る。これにより、本願発明者等は、アークの安定性とワ
イヤの送給性との双方を向上させる方法として、ワイヤ
表面へのフッ素油の付着形態の適正化に着目した。
【0018】そこで、本願発明者等は、前提条件とし
て、フッ素油のワイヤ表面への全付着量を一定にして、
その付着形態のみを変化させるために、種々の塗布方法
を検討した。その結果、塗布方法によっては付着形態を
変化させることが可能であることを見い出した。また、
種々の形態でフッ素油を表面に付着させたワイヤについ
て、溶接作業性を評価した結果、ワイヤ表面に付着する
フッ素油の付着形態を適切に規制すると、溶接作業性、
即ち、アーク安定性及びワイヤ送給性を共に向上させる
ことができることを見い出した。
【0019】図4(a)は優れた溶接作業性を得ること
ができるワイヤ表面におけるフッ素油の付着形態を示す
断面図であり、(b)は従来のワイヤ表面におけるフッ
素油の付着形態を示す断面図である。図4(a)に示す
ように、優れた溶接作業性を有するワイヤ11aの表面
には、フッ素油12aが液滴状態で付着している。即
ち、このフッ素油12aは、ワイヤ11aの表面全面を
覆っているものではなく、ワイヤ表面に所望の密度で点
在している。
【0020】一方、図4(b)に示すように、従来のワ
イヤ11bの表面には、前述の如く、フッ素油12bが
表面の全領域に不均一に存在している。
【0021】このように、本発明は、ワイヤ表面にフッ
素油を液滴状態で付着させ、その付着密度を適切に規制
することによって、溶接作業性の向上を図るものであ
る。ワイヤ表面におけるフッ素油の付着形態を上述の如
く調整するためには、フッ素油の塗布方法を適切に選択
すればよく、例えば、回転型静電霧化塗布法を使用する
と、所望の付着形態でフッ素油をワイヤ表面に塗布する
ことができる。
【0022】以下、本発明に係るアルミニウム又はアル
ミニウム合金材溶接用ミグワイヤについて、その表面に
存在する液滴状フッ素油の直径及び付着密度の数値限定
理由について説明する。
【0023】液滴状フッ素油の直径:50乃至200μ
ワイヤ表面にフッ素油を所定量塗布する場合に、液滴状
としたフッ素油の直径が50μm未満であるか、又はそ
の直径が200μmを超えると、ワイヤ表面は塗布した
フッ素油によって均一に覆われるので、ワイヤ表面にお
けるフッ素油の付着形態は、従来の塗布方法で塗布した
場合と同等となる。その結果、ワイヤの送給性とアーク
安定性との双方を向上させることが困難になる。従っ
て、液滴状フッ素油の直径は50乃至200μmとす
る。なお、好ましくは、このフッ素油の直径は100乃
至150μmとする。
【0024】液滴状フッ素油の付着密度:20乃至80
(個/mm2 液滴状フッ素油の直径と同様に、この付着密度が20
(個/mm2)未満であるか、又は80(個/mm2)を
超えると、ワイヤ表面におけるフッ素油の付着形態は、
従来の塗布方法で塗布した場合と同等となる。その結
果、ワイヤの送給性とアーク安定性との双方を向上させ
ることが困難になる。従って、液滴状フッ素油の付着密
度は20乃至80(個/mm2)とする。
【0025】ワイヤ表面にフッ素油を付着させる方法と
して、回転型静電霧化塗布方法を使用する場合は、回転
型静電霧化塗布装置のベルカップに印加する電圧、ベル
カップの回転数及びフッ素油の供給量を調整すると、液
滴状フッ素油の直径及び付着密度を上述の如く規制する
ことができる。
【0026】例えば、ベルカップに印加する電圧を高く
すると、液滴状フッ素油の付着密度を高くすることがで
きる。従って、通常、電圧を2〜3000V乃至数万V
とすることが好ましく、電圧をこれ以上高くしても、ワ
イヤ表面への液滴状フッ素油の付着密度を高くする効果
は少なくなる。また、ベルカップの回転数が高いほど、
液滴状フッ素油の直径は小さくなるので、通常、4〜5
000回転乃至2〜3万回転とすることが好ましい。回
転数を3万回転以上に高くすることもできるが、この場
合、回転部の機械的磨耗が著しく大きくなるので好まし
くない。
【0027】更に、ベルカップの回転数を一定とした場
合には、フッ素油の供給量が多いほど、液滴状フッ素油
の直径は大きくなる。これらの他に、液滴状フッ素油の
直径及び付着密度に影響を与える因子としては、ベルカ
ップの形状、塗布装置のブースの形状、塗布装置のブー
ス内の気流の形態及びベルカップとワイヤとの位置関係
がある。従って、これらの因子を適切に調整することに
より、液滴状フッ素油の直径及び付着密度を制御するこ
とができる。
【0028】なお、本発明においては、回転型静電霧化
塗布方法の他に、スプレー方式の静電塗布によっても、
ワイヤ表面に所望の直径及び付着密度で液滴状フッ素油
を付着させることができる。更に、霧化ノズルを使用し
てフッ素油を付着させる方法、高電圧を印加した針先か
らフッ素油を滴下させて、フッ素油を静電霧化させて塗
布する方法等を使用することもできる。特に、回転型静
電霧化塗布方法を使用すると、ワイヤに対してのフッ素
油の入り込み性(着きまわり性)、即ち、ワイヤ表面の
種々の領域におけるフッ素油の付着密度の均一性をより
一層向上させることができる。
【0029】なお、本発明において、ワイヤ表面に付着
させるフッ素油の存在形態及び付着密度は、光学顕微鏡
観察により評価することができる。また、そのフッ素油
の成分同定は、前記顕微FT−IR装置により行うこと
ができる。
【0030】
【実施例】以下、本発明に係るアルミニウム又はアルミ
ニウム合金材溶接用ミグワイヤの実施例についてその比
較例と比較して具体的に説明する。
【0031】先ず、直径が1.6mmであるワイヤ素材
(JIS Z3232 A5356WY)を準備し、回転型静電霧化塗布
装置を使用して、ワイヤ素材の表面にフッ素油(ポリエ
ーテルのフッ素誘導体)を塗布することによりミグワイ
ヤを作製した。本実施例においては、回転型静電霧化塗
布装置の電圧、回転数及びポリエーテルのフッ素誘導体
供給量を制御することによって、ワイヤ表面に付着させ
る液滴状フッ素油の直径及び付着密度を変化させた。
【0032】次に、これらのワイヤを使用して、ビード
オンプレート法によって連続して5分間溶接を実施する
ことにより、アーク安定性及びワイヤ送給性を評価する
溶接試験を行った。但し、MIG溶接の条件としては、
水冷ストレートトーチを使用し、ワイヤ突き出し長さを
15mmとした。また、溶接電流を250A、電圧を3
0Vとした。
【0033】液滴状フッ素油の直径及び付着密度並びに
アーク安定性、ワイヤ送給性の評価結果を下記表1に示
す。但し、下記表1中におけるアーク安定性及びワイヤ
送給性の評価結果欄において、◎は極めて良好、○は良
好であることを示し、△はやや不良、×は不良であるこ
とを示す。
【0034】
【表1】
【0035】上記表1に示すように、実施例No.1乃
至6は液滴状のフッ素油の直径及び付着密度が適切に規
制されているので、アーク安定性及びワイヤ送給性が優
れたものとなった。特に、実施例No.1乃至4は、液
滴状のフッ素油の直径が本発明に規定する好ましい範囲
内であるので、アーク安定性及びワイヤ送給性がより一
層優れたものとなった。
【0036】一方、比較例No.7は従来のワイヤであ
り、ワイヤ表面の全面にフッ素油が存在しているので、
実施例と比較して、アーク安定性及びワイヤ送給性が若
干低下した。比較例No.8は液滴状フッ素油の直径は
本発明の範囲内であるが、その付着密度が本発明範囲の
下限未満であるので、ワイヤ送給性が低下した。比較例
No.9は液滴状フッ素油の付着密度は本発明の範囲内
であるが、その直径が本発明範囲の上限を超えているの
で、アーク安定性が低下した。
【0037】比較例No.10は液滴状フッ素油の直径
は本発明の範囲内であるが、その付着密度が本発明範囲
の上限を超えているので、アーク安定性が低下した。比
較例No.11は液滴状フッ素油の付着密度は本発明の
範囲内であるが、その直径が本発明範囲の下限未満であ
るので、ワイヤ送給性が低下した。
【0038】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
アルミニウム又はアルミニウム合金材溶接用ミグワイヤ
の表面に、常温で液体のポリエーテルのフッ素誘導体を
液滴状態で付着させており、その直径及び付着密度を適
切に規定しているので、このワイヤの送給性を高めるこ
とができると共に、溶接時におけるアーク安定性を向上
させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】横軸にワイヤ表面におけるフッ素油の付着量を
とり、付着量の変化によるワイヤの送給性及びアーク安
定性の影響を示すグラフ図である。
【図2】フェルトを使用した塗布方法によってフッ素油
をワイヤ表面に付着させた場合のワイヤ表面を赤外分光
法によって分析した結果を示す図である。
【図3】回転型静電霧化塗布方法によってフッ素油をワ
イヤ表面に付着させた場合のワイヤ表面を赤外分光法に
よって分析した結果を示す図である。
【図4】(a)は優れた溶接作業性を得ることができる
ワイヤ表面におけるフッ素油の付着形態を示す断面図で
あり、(b)は従来のワイヤ表面におけるフッ素油の付
着形態を示す断面図である。
【符号の説明】
11a、11b;ワイヤ 12a、12b;フッ素油
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−277877(JP,A) 特開 平6−114590(JP,A) 特開 平6−106129(JP,A) 特開 平3−66495(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/02 B23K 35/36 B23K 35/40

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 常温で液体のポリエーテルのフッ素誘導
    体が、直径が50乃至200μmの液滴状態で、20乃
    至80(個/mm2)の付着密度でワイヤ表面に付着し
    ていることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム
    合金材溶接用ミグワイヤ。
  2. 【請求項2】 前記ポリエーテルのフッ素誘導体の直径
    は100乃至150μmであることを特徴とする請求項
    1に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金材溶接用
    ミグワイヤ。
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