JP3492282B2 - 溶接熱影響部靱性に優れた溶接構造用鋼 - Google Patents
溶接熱影響部靱性に優れた溶接構造用鋼Info
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Description
した継手部においても、破壊靱性値であるCTOD(Cr
ip Tip Openning displacement) が高い特徴を有する高
強度溶接用構造鋼に関するものであり、例えば、海上で
使用される船舶や、北海道の寒冷地を除いた一般地域で
建造される建築物や橋梁等の鋼構造物等の設計温度が0
℃である鋼構造物に適用できる。
ようとするニーズが高まっている。脆性破壊を防止する
ためには、鋼材及びその溶接部において高い破壊靱性値
を確保する必要がある。破壊靱性値として、CTOD値
が広く用いられており、海洋構造物や重要建築物には、
溶接継手部のCTOD値を保証させようとする施工主や
設計者の要求があるが、溶接部のCTOD値は特に大き
くばらつくために、CTOD値を保証することは極めて
難しい。一方、従来からシャルピー試験によるVノッチ
シャルピー衝撃試験での吸収エネルギーが靱性の尺度と
して広く用いられてきた。溶接部の靱性を確保するため
には、鋼材側から様々な対策が提案されてきた。そのう
ち最も広く用いられているのは、例えば、特公昭55−
26164号公報などの、鋼中に微細なTi窒化物(以
下TiNと呼ぶ)を分散させることによって、HAZ
(溶接熱影響部:Heat Affected Zon
e)のオーステナイト粒の成長を抑え、靱性を向上させ
る方法である。また、特開平3−264614号公報
の、TiNとMnSとの複合析出物をHAZのフェライ
ト生成核として活用し、HAZ靱性を向上させる方法が
提案されている。HAZの中で、溶接金属との境界部
(以下、溶接ボンド部と呼ぶ)の靱性が最も低いのは周
知であるが、これは、最高到達温度が1400℃を超え
る溶接ボンド部ではオーステナイト粒の粒成長が著し
く、そのために溶接ボンド部の組織が粗くなるためであ
り、TiNの分散によりオーステナイト粒の成長を抑制
し、最終的なボンド組織を微細化することにより靱性を
改善する、というのがTiN活用の基本的な考え方であ
る。
よりシャルピー試験によるHAZ靱性を向上させる技術
はいくつか提案されてきた。しかしながら、シャルピー
試験で高い吸収エネルギーが得られた溶接継手部でも、
CTOD試験を行うと0.05mm以下といった低値が
発生することが多く、特に高強度鋼においてはCTOD
値を保証することは困難であった。設計温度において必
要なCTOD値は、破壊防止設計の考え方により0.0
5mm以上であったり、0.1mm以上であったりと様
々であるが、破壊靱性値が0.05mm以下のCTOD
値の場合には、使用される鋼材の板厚程度の溶接欠陥
(例えば20〜30mm)等が存在すれば降伏点の1/
2〜2/3程度の設計応力下でも脆性破壊する危険性が
あり、危険物を低温貯蔵するような構造物では重大な問
題をまねく可能性がある。0.1mm以上のCTOD値
が保証でき、非破壊検査により板厚サイズ以上の欠陥の
存在を否定できれば、設計応力下、あるいは設計応力の
1.2倍程度の応力が負荷された場合でも脆性破壊を生
ずることはないと考えられる。本発明はかかる事情に鑑
みてなされたもので、0.1mm以上のCTOD値を0
℃において保証しうる溶接熱影響部靱性に優れた溶接構
造用鋼を提供することを目的とする。
係る溶接熱影響部靱性に優れた溶接構造用鋼は、質量%
で、C:0.07〜0.20%、Si:0.10〜0.
50%、Mn:0.80〜2.0%、P:0.025%
以下、S:0.025%以下、Al:0.001〜0.
06%、Ti:0.002〜0.02%、N:0.00
3%以下の成分を有し、残部が鉄及び不回避的不純物か
らなると共に、Ti/Nが1.0〜6.0を満足する鋼
材で、しかも、溶接前の前記鋼材中に粒径0.01〜
0.1μmのTiNが5×105 〜5×106 個/mm
2 存在する。ここで、更に前記TiNのうち、粒径が1
μm以上のTiNが10個/cm2 以下とするのが好ま
しい。これにより、大入溶接下でのTiNによるピンニ
ング効果、固溶Ti、固溶N、TiC析出効果、更にT
iNの粗大化効果を配慮しつつ、CTOD試験において
も高いCTOD値を確保しうる溶接構造用鋼の最適領域
を定義できる。ここで、前記TiNのうち、粒径0.0
1〜0.05μmのTiNを4×106個/mm2 以下
にすることが好ましい。これにより、溶接した後、Ti
Nが溶解して消滅することによる、母材中の固溶Ti、
固溶Nの量の増大を抑制し、かつ脆性破壊の発生起点と
なる粗大TiNの存在を抑制することにより溶接熱影響
部での高CTOD値を保証しうる溶接用構造用鋼とする
ものである。
0.1μmのTiNを5×104 個/mm2 以上にする
ことが好ましい。これにより、大入溶接下においても溶
け残ることが可能で、しかもピンニング効果を発揮でき
るTiN量となるため、溶接熱影響部靱性に優れた溶接
構造用鋼とすることができる。更に、質量%でNを0.
002%以下にすることが好ましい。これにより、固溶
Nを大幅に低減することができる。
1.0%以下、Ni:1.5%以下、Nb:0.05%
以下、V:0.1%以下、Cr:0.6%以下、Mo:
0.6%以下、B:0.0002〜0.003%、C
a:0.0002〜0.003%、Mg:0.0002
〜0.005%、REM:0.001〜0.05%の1
種又は2種以上の成分を有することが好ましい。ここ
で、Cu、Ni、Nb、V、Cr、Mo及びBの添加に
より、母材強度の向上や、低温靱性・溶接性を向上させ
ることができる。また、Ca、Mg、REMの添加によ
り、鋼材中の脱酸を有効に行うことができる。なお、鋼
材中に粒径0.01〜0.1μmのTiNを5×105
〜5×106 個/mm2 存在するようにするには、鋳造
後の鋳片を冷却段階で900〜1300℃の間で10分
間以上保持すればよいが、更に、この範囲で、温度、保
持時間を調整することによりTiNの粒径、個数を調整
する。
Ti/N比を有する鋼板に、溶接ボンド部の熱影響を再
現する熱サイクルを付与し、組織及び靱性を広範囲に調
査した。特に、従来検討されてきていない母材中のTi
Nの粒径、及び個数について詳細に検討した。
つ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発
明の理解に供する。本発明の一実施の形態に係る溶接熱
影響部靱性に優れた溶接構造用鋼を製造するために、以
下に示すような種々の試験を行った。図1は、0.12
%C−0.2%Si−1.3%Mn系をベースとして、
Ti、Nを添加した鋼板を実験室溶製し、更に、それに
入熱100kJ/cm相当の熱サイクルを付与した後と
前の、熱サイクル付与前後それぞれのTiNの粒径の分
布図である。なお、TiNは、透過電子顕微鏡により観
察し、粒径は画像処理により円相当径として算出した。
この場合、溶接ボンド部の熱影響を再現する熱サイクル
としては、溶接ボンド部の最高到達温度は1400℃と
し、溶接入熱の影響は、実測データを基に、加熱温度、
最高温度での保持時間、冷却速度を制御することにより
達成した。図より、TiNの粒径は、溶接入熱の影響を
受けていない母材で0.04μmをピークとして0.0
1〜0.11μm、溶接ボンド部で0.13μmをピー
クとして0.05〜0.15μmの範囲にそれぞれ分布
している。つまり、母材に存在するTiNの粒径は、
0.01〜0.11μmの範囲に分布していることが分
かる。以上のことより、大入溶接下におけるTiNの状
態は、TiNの粒径0.05μmを境として、0.05
μmより小さいものは母材中に溶解して固溶し、大きい
ものは逆に粗大化すると考えられる。
Z靱性にどのような影響を及ぼすのかを明確にするた
め、本発明者らは溶接ボンド部の熱影響を再現する熱サ
イクル試験を種々の鋼板に付与し、溶接入熱ごとにそれ
に相当する一定の溶接履歴を受けた鋼板の組織及びその
靱性を調査し、鋼板の成分であるTiNの粒径、個数及
びN量と溶接入熱の影響を検討した。
を取り出し、−20℃に冷却した後、Vノッチシャルピ
ー試験を実施した結果を示す。図2は、0.10%C−
0.2%Si−1.3%Mn系をベースとして、Ti、
Nを添加した鋼板を実験室溶製し、それに入熱100k
J/cm相当の熱サイクルを付与したものを試験片とし
て用い、その試験片の衝撃吸収エネルギー値(vE−2
0℃(J))と、熱サイクルを付与する前の試験片中に
存在する粒径0.01〜0.1μmのTiN個数との関
係を調べた結果図である。なお、この試験では、衝撃吸
収エネルギー値が高いほど、靱性が優れていることを示
している。
0.01〜0.1μmのTiNの個数を透過電子顕微鏡
を用いて定量化した結果、TiNの個数が5×105 〜
5×10 6 個/mm2 の範囲では、衝撃吸収エネルギー
値が100〜260Jと高い数値を示した。しかし、T
iNの個数が5×105 個/mm2 未満のときは衝撃吸
収エネルギー値が低下し、また、5×106 個/mm2
より多いときも低下する。即ち、TiNの個数が5×1
05 個/mm2 未満のとき、大入熱溶接の熱サイクル下
では、母材中に存在するTiNが、鋼中にTi、Nとし
て固溶するため、母材の結晶粒成長を抑制するための十
分なTiN量を確保できなくなっている。その結果、T
iNのピン止め効果が発揮できず、母材中の結晶粒が大
きくなり、靱性を低下させている。一方、5×106 個
/mm2 より多いとき、これは、大入熱溶接の熱サイク
ル下では、母材中に存在するTiNが、Ti、Nとして
固溶する量が多くなり過ぎること、また、熱サイクルに
より母材中に粗大化したTiNが増加することが衝撃吸
収エネルギー低下の原因になると考えられる。粗大化し
たTiNは破壊の起点となり、衝撃吸収エネルギー値を
低くすると考えられる。よって、溶接前の鋼材中に存在
する粒径0.01〜0.1μmのTiN個数を5×10
5 〜5×106 個/mm2 にすることで、溶接ボンド部
靱性に優れた高CTOD保証低温用鋼とすることが可能
となる。
Nの粒径分布の比較より得られた0.05μm以下のT
iNに注目してプロットした図を、図3に示す。なお図
3は、図2で使用した0.01〜0.1μmのTiN個
数が5×105 〜5×106 個/mm2 である試験片を
用い、その試験片の衝撃吸収エネルギー値と、熱サイク
ル前の試験片中に存在する粒径0.01〜0.05μm
のTiN個数との関係を調査した。熱サイクル前の試験
片中に存在する粒径0.01〜0.05μmのTiNの
個数を透過電子顕微鏡を用いて定量化した結果、TiN
の個数が4×10 6 個/mm2 以下の範囲では、衝撃吸
収エネルギー値が150〜260Jと高い数値を示し
た。しかし、TiNの個数が4×106 個/mm2 より
多いときは衝撃吸収エネルギー値は低下する。これは、
粒径0.01〜0.05μmのTiNが、熱サイクルに
より、母材中に、TiとNとして固溶したことが原因に
なっていると考えられる。よって、粒径0.01〜0.
05μmのように小粒径のものは、少ない方が好ましい
ため、4×106 個/mm2 以下と規定した。
クル前の試験片中に存在する粒径0.07〜0.1μm
のTiNの個数との関係を調べた結果である。熱サイク
ル前の試験片中に存在する粒径0.07〜0.1μmの
TiNの個数を透過電子顕微鏡を用いて定量化した結
果、TiNの個数が5×104 個/mm2 以上の範囲で
は、衝撃吸収エネルギー値が235〜255Jと高い数
値を示した。しかし、TiNの個数が5×104 個/m
m2 より少ないときは衝撃吸収エネルギー値は低下す
る。大入熱溶接の溶接ボンド部で安定に溶け残るTiN
の粒径は、0.07μm以上である。つまり、TiN
で、粒径0.07〜0.1μmのものは、溶接のピーク
温度1400℃以上の大入熱溶接下で溶け残るため、粒
径0.07〜0.1μmのTiNの個数を5×104 個
/mm2 以上にすることで、溶接ボンド部靱性に優れた
溶接構造用鋼とすることが可能となる。
1.3%Mn系をベースとし、Ti、Nを添加した鋼板
を実験室溶製し、更に入熱150kJ/cm相当の熱サ
イクルを付与したものから採取した試験片の衝撃吸収エ
ネルギー値と、熱サイクル前の試験片中に存在するN量
との関係を調べた結果である。図より、衝撃吸収エネル
ギーは、N量0.003%の所を境として大きく変化し
ている。つまり、N量を0.003%以下に限定するこ
とで、より好ましくは0.002%以下に限定すること
で、N量を低下させ、その結果、母材中に固溶するNが
低減でき、溶接ボンド部靱性に優れた溶接構造用鋼高と
することが可能となる。
用いてCTOD試験を実施した。試験温度は、0℃で実
施した。各温度において、破面を観察し、脆性破壊発生
起点を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、粗大な
TiNが脆性破壊の発生起点となっていることが判明し
た。この起点となっているTiNのサイズを円相当径で
整理した結果、2μm程度のTiNが存在すると、破壊
の起点となりうることが分かった。き裂先端にこれらの
粗大なTiNが存在していると脆性破壊を発生するわけ
であり、CTOD値のバラツキはこの粗大なTiNがC
TOD試験片の疲労き裂先端に存在するか否かの存在確
率に大きく依存することを確認した。疲労き裂先端近傍
の組織を詳細に調査した結果、1.0μm未満のサイズ
のTiNが存在していても、脆性破壊の核になっていな
いことを究明し、1.0μm以上の粗大なTiNの存在
を抑制すれば高いCTOD値の得られることを知見し
た。本発明の粗大TiNの許容サイズと存在確率(個
数)を明確にするため、1.0μm以上のサイズのTi
Nの個数と、0℃の限界CTOD値の関係を図6に示
す。粒径0.01〜0.1μmのTiNが5×105 〜
5×106 個/mm2 存在している場合(本発明範囲)
のデータが系列1のデータであり、この場合、粒径1.
0μm以上のTiNの個数が10個/cm2 以下であれ
ば安定して0.1mm以上の限界CTOD値が得られて
いる。一方、粒径0.01〜0.1μmのTiNが本発
明範囲外である場合(系列2のデータ)には、たとえ粒
径1.0μm以上のTiNの個数が10個/cm2 以下
であっても、0.1mm以上の限界CTOD値は得るこ
とができない。したがって、0℃の使用温度では、1.
0μm以下のTiNの存在確率を低減することが望まし
い。本発明の粗大TiNの許容サイズと存在確率(個
数)は上記検討結果に基づき決定されたものである。
用鋼の化学成分(質量%)を前記のように限定した理由
について述べる。Cは、強度を向上するのに最も有効な
元素であるが、C量が高いとセメンタイト相分率が高く
なったり、溶接部において島状マルテンサイトが生成し
やすくなり、脆性破壊を発生させる核(以降、脆性破壊
発生核と称する)となる可能性が増大する。したがって
0.20%を超える過剰な添加は好ましくないが、一
方、Cが0.07%未満になると構造用鋼としての強度
確保が困難になるので、下限は0.07%とする。Si
は、強度向上元素として有効であり安価な溶鋼の脱酸元
素としても有用であるが、0.50%を超えると溶接部
において島状マルテンサイトの生成を助長させる。ま
た、0.10%未満では強度の向上効果が不十分でTi
やAl等の高価な脱酸元素を多用する必要があるため
に、0.10〜0.50%に限定する。Mnは、Cの含
有量を抑制しつつ強度を向上する有用な元素である。C
を0.20%以下に抑制しているため、強度確保の観点
から、Mnの必要下限を0.80%とする。一方、2.
0%超のMnの添加は、不必要に強度上昇を招き、母材
靱性・溶接性を阻害するため、0.80〜2.0%に限
定する。
下に限定した。なお、不純物としてのPは、できるだけ
低いほど好ましいが、経済性も考慮する場合は、溶接性
の点から0.015%以下が好ましい。Sは、母材靱性
の観点から0.025%以下に限定した。なお、不純物
としてのSは、できるだけ低いほど好ましいが、経済性
も考慮する場合は溶接性・加工性の点から0.008%
以下が好ましい。Alは、Si同様に脱酸上必要な元素
であり、下限を0.001%とし、0.06%を超える
過度の添加はHAZ靱性を損なうために、0.001〜
0.06%に限定した。
させるため、0.002%以上、かつTi/N比で1.
0以上、6.0以下の範囲で添加する。ただし、0.0
2%を超えて添加すると、本発明の眼目である極低N化
によるHAZ靱性改善効果を低下させ、更に高いTiは
TiNを粗大化させる駆動力となるので、0.002〜
0.02%とした。Nは、本発明中、最も重要な元素で
ある。高いN量は、粗大なTiNを生成させる一つの原
因となり、かつ固溶N量も増大させるので、特に溶接部
において高いCTOD値を確保することは困難となる。
そこで、Nを0.003%以下に抑えることがHAZ部
での高CTOD特性を向上させる本発明の眼目である。
また、HAZ靱性とCTOD特性をより向上させるた
め、添加量は0.002%以下が好ましい。
であるが、母材強度の向上や低温靱性・溶接性の改善を
目的とした低炭素等量化のために、要求される品質特
性、又は鋼材の大きさ・鋼板厚に応じて本発明で規定す
る合金元素(Cu、Ni、Nb、V、Cr、Mo、B)
を強度・低温靱性・溶接性を向上する観点から、1種又
は2種以上を添加しても本発明の効果は何ら損なわれる
ことはない。Cuは、鋼材の強度、靱性を向上させるた
めに有効であるが、1.0%を超えるとHAZ靱性を低
下させることから、1.0%を上限とする。Niは、鋼
材の強度、靱性を向上させるために有効であるが、Ni
量の増加は製造コストを上昇させるので、1.5%を上
限とする。
母材の強度を向上させる有功な元素であるが、過剰な添
加は粗大なNbCN析出物を生成せしめ、脆性破壊の発
生核となることがあるので、0.05%を上限とした。
V、Cr、Moについても同様な効果を有することか
ら、それぞれ0.1%、0.6%、0.6%を上限とし
た。Bは、HAZ靱性に有害な粒界フェライトの粗大
化、フェライトサイドプレートの成長抑制から有効であ
るが、過剰な添加は不必要に焼き入れ性を増大させ、特
にショートアークを行った鋼板表面の硬度を著しく高
め、場合によっては割れを生じさせることもあるので、
0.0002%〜0.003%とした。更に、Alに加
えて、Ca、Mg、REMの脱酸元素を1種又は2種以
上添加しても本発明の効果は何ら損なわれる事はない。
ただし過剰な添加は粗大な酸化物生成の原因となり、粗
大な酸化物や介在物が脆性破壊の発生核となる可能性も
あるので、それぞれ0.0002〜0.003%、0.
0002〜0.005%、0.001〜0.05%とし
た。
を述べる。たとえNを極低化しても、Nがフリーの状態
で鋼中に固溶するのは、HAZ靱性の観点から好ましく
なく、少なくともTi/N質量比で1.0以上必要であ
るが、一方、Ti過剰な状態が過ぎると、フリーのTi
がHAZ靱性に有害であるので、Ti/N比が6.0以
下であることが必要である。
した。A1、B1、C〜Hが本発明鋼であり、A2、B
2、J〜Rが比較鋼である。成分的には、A1とA2及
びJ、B1とB2及びK、CとL、DとM、EとN、F
とP、GとQ、HとRがほぼ一致しており、本発明鋼の
Ti量は、いずれも0.002〜0.02%、N量はい
ずれも0.003%以下、特にA1、B1、C〜E及び
Hは0.002%以下、またTi/N比は1.0〜6.
0の範囲である。これに対し、比較鋼A2、B2は、発
明鋼A1、B1と全く同じ化学成分、成分量を有してい
る。また、比較鋼JはTiが添加なし、N量は本発明の
範囲外、比較鋼K、M、PはN量が本発明の範囲を外れ
ている。特に、比較鋼NはVが本発明の範囲を超えてお
り、比較鋼LはCaが範囲を超えている。また比較鋼
L、QのTi/N比は、それぞれ9.38と7.60と
本発明の範囲を超えている。
は、本発明鋼A1、B1、C〜Hにおいて、粒径0.0
1〜0.1μm:5×105 〜5×106 個/mm2 、
粒径0.01〜0.05μm:4×106 個/mm2 以
下、粒径0.07〜0.1μm:5×104 個/mm2
以上の範囲を満足している。これに対し、比較鋼JはT
iが添加なしであるためTiNは観察されず、比較鋼A
2、B2、K、M、P、Rは粒径0.01〜0.1μ
m:5×105 〜5×106 個/mm2 の範囲を外れ、
比較鋼A2、K、M、N、Pは粒径0.01〜0.05
μm:4×106 個/mm2 以下の範囲を超え、比較鋼
A2、Rは粒径0.07〜0.1μm:5×104 個/
mm2 以上の範囲を下回っている。また、比較鋼B2、
M〜Rは粒径1μm以上:10個/cm2 以下の範囲を
超えている。なお、比較鋼A2、B2は鋳造後の鋳片の
冷却条件が、A1、B1と異なっている。
件、及びHAZ靱性評価、CTODの結果を示す。本発
明鋼、及び比較鋼は、いずれも転炉溶製し、連続鋳造に
て280mm厚鋳片に鋳造後、加熱圧延にて表4に示す
所定の板厚に仕上げた。試作した鋼板は、それぞれ表4
に示す溶接法にて1パス溶接を行い、溶接ボンド部の靱
性を評価した。すなわち溶接法としては、フラックスバ
ッキング溶接(FB)、エレクトロガス溶接(EG)、
エレクトロスラグ溶接(ES)を用い、それぞれ()内
に示す適切な溶接入熱にて溶接を行った。また、溶接ボ
ンド部靱性はシャルピー試験により評価した。評価温度
は表4に示すとおりで、それぞれの鋼板成分で要求され
る典型的な温度を採用した。シャルピー試験の繰返し数
は3(N=3)である。
較を行う。鋼A1と鋼Jとの結果を比較すると、Ti含
有の差、極低N量の効果は明白であり、溶接入熱の高い
フラックスバッキング溶接において、HAZ靱性の差は
極めて顕著に現れる。鋼B1と鋼Kとを比較すると、フ
ラックスバッキング溶接、エレクトロガス溶接、いずれ
の溶接においても鋼B1のHAZ靱性が優れている。特
に、入熱の高いエレクトロガス溶接を実施したときの、
衝撃吸収エネルギーの最小値の差は大きい。同様の比較
は鋼Dと鋼M、鋼Eと鋼Nでも見られる。また、鋼Cと
鋼Lとの比較では、鋼CのHAZ靱性が非常に良好なの
に対し、鋼Lでは、Ti量が多いのでTi/N比の適正
範囲の逸脱、及び高Ca量によりHAZ靱性が大幅に低
下している。同様に、鋼Gと鋼Qとの比較でも、鋼Qの
Ti量が多いのでTi/N比の適正範囲の逸脱が、HA
Z靱性の低下に大きく影響している。
いて発明鋼と比較鋼との比較を行う。鋼A1と鋼Jとの
結果を比較すると、Ti含有の差、極低Nの効果は明白
である。鋼A1においては、各粒径におけるTiNの個
数が、規定範囲に納まっている。一方、鋼Jは、母材中
にTiNの結晶が存在しない。この結果、HAZ靱性及
びCTOD値の差は極めて顕著に現れている。鋼Eと鋼
Nとを比較すると、鋼Nは、粒径0.01〜0.05μ
mのTiNの個数が規定範囲を逸脱しているため、HA
Z靱性及びCTOD値が低下している。同様の比較は鋼
Fと鋼P、鋼B2と鋼K、鋼Dと鋼Mでも見られる。ま
た、鋼M、N、P、Q、Rは、1μm以上の粒径を有す
るTiNが所定の個数以上であり、それぞれの試験温度
において充分なCTOD値が得られていない。更に、鋼
K、M、P、Rは粒径0.01〜0.1μmの個数が、
鋼Rは粒径0.07〜0.1μmの個数が規定範囲を逸
脱していることから、HAZ靱性及びCTOD値が大幅
に異なっている。
造後の鋳片の冷却条件が異なることでTiNの個数が異
なる発明鋼A1、B1と比較鋼A2、B2との比較を行
う。このように、鋳造後の鋳片を冷却段階で900〜1
300℃で10分間以上保持し、この範囲で、温度、保
持時間を調整できなければ、比較鋼A2のように、Ti
Nの個数が、規定範囲を逸脱し、HAZ靱性及びCTO
D値を大きく低下させることが分かる。また、1200
〜1300℃程度の高温で60分以上保持すると、Ti
Nの粗大化現象が生じ、比較鋼B2のように1μm以上
のTiNの個数が増加してしまうので、高いCTOD値
を得ることはできなくなる。つまり、本発明において
は、各粒径におけるTiNの個数を規定範囲に納めるこ
とが重要となるが、それには、化学成分、成分量及び鋳
造後の鋳片適正な温度、保持時間が重要な要因となる。
あり、母材中のNを、N:0.003%以下と低減し、
Ti/N比を1.0〜6.0に保ちながらTiを添加
し、溶接前の鋼材中に粒径0.01〜0.1μmのTi
Nを5×105 〜5×106 個/mm2 存在させ、かつ
1μm以上の粗大TiNの存在を抑制することにより、
溶接HAZ靱性、とりわけ大入熱の溶接ボンド部靱性を
安定かつ向上させ、CTOD値を保証することが可能と
なった。本発明により、近年の鋼構造物の大型化に伴う
使用鋼材の厚手化、建造コストの削減、建造の高能率化
の点から進められる溶接大入熱化に伴う溶接部靱性確保
が可能となり、産業界が享受可能な経済的利益は多大な
ものがあると考えられる。
優れた溶接構造用鋼においては、Nを0.003%以下
にすることで固溶Nを低減し、Ti/N比を1.0〜
6.0にすることで、Ti過剰、及びN過剰を抑制し、
更に、TiNの粒子の粒径、及び個数を規定すること
で、大入溶接下でのTiNによるピンニング効果、固溶
Ti、固溶N、TiC析出効果、更に脆性破壊の発生核
となる粗大なTiNの排除を配慮した、溶接熱影響部靱
性に優れた溶接構造用鋼を製造できる。特に、大入熱溶
接を適用した溶接継手部においてでも、0℃において
0.1mm以上の限界CTOD値を安定して確保できる
ので、海上や陸上等、設計温度が0℃で使用される、脆
性破壊の発生を抑制する必要のある重要鋼構造物の鋼材
として使用できるものである。
のグラフである。
のTiN個数の影響を示したグラフである。
mのTiN個数の影響を示したグラフである。
のTiN個数の影響を示したグラフである。
である。
接部の限界CTOD値の関係を示したグラフである。
Claims (6)
- 【請求項1】 質量%で、C:0.07〜0.20%、
Si:0.10〜0.50%、Mn:0.80〜2.0
%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、A
l:0.001〜0.06%、Ti:0.002〜0.
02%、N:0.003%以下の成分を有し、残部が鉄
及び不回避的不純物からなると共に、Ti/Nが1.0
〜6.0を満足する鋼材で、しかも、溶接前の前記鋼材
中に粒径0.01〜0.1μmのTiNが5×105 〜
5×106 個/mm2 存在することを特徴とする溶接熱
影響部靱性に優れた溶接構造用鋼。 - 【請求項2】 請求項1記載の溶接熱影響部靱性に優れ
た溶接構造用鋼において、前記TiNのうち、粒径が1
μm以上のTiNが10個/cm2 以下であることを特
徴とする溶接熱影響部靱性に優れた溶接構造用鋼。 - 【請求項3】 請求項1又は2記載の溶接熱影響部靱性
に優れた溶接構造用鋼において、前記TiNのうち、粒
径0.01〜0.05μmのTiNが4×106個/m
m2 以下存在することを特徴とする溶接熱影響部靱性に
優れた溶接構造用鋼。 - 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶
接熱影響部靱性に優れた溶接構造用鋼において、前記T
iNのうち、粒径0.07〜0.1μmのTiNが5×
104 個/mm2 以上存在することを特徴とする溶接熱
影響部靱性に優れた溶接構造用鋼。 - 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶
接熱影響部靱性に優れた溶接構造用鋼において、質量%
でN:0.002%以下の成分を有することを特徴とす
る溶接熱影響部靱性に優れた溶接構造用鋼。 - 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶
接熱影響部靱性に優れた溶接構造用鋼において、質量%
でCu:1.0%以下、Ni:1.5%以下、Nb:
0.05%以下、V:0.1%以下、Cr:0.6%以
下、Mo:0.6%以下、B:0.0002〜0.00
3%、Ca:0.0002〜0.003%、Mg:0.
0002〜0.005%、REM:0.001〜0.0
5%の1種又は2種以上の成分を有することを特徴とす
る溶接熱影響部靱性に優れた溶接構造用鋼。
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