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JP3547780B2 - 高強度、高弾性率ポリプロピレン繊維 - Google Patents
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高強度、高弾性率ポリプロピレン繊維 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高強度、高弾性率ポリプロピレン繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂複合材料、セメント複合材料等の補強用繊維としては、アラミド繊維、高強力ポリエチレン繊維等の有機高分子系補強用繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ウィスカー繊維等の無機系補強用繊維がある。このうち有機高分子系補強用繊維は、無機系補強用繊維に比べて、低密度であり、複合材料の軽量化が可能である点において優れている。ポリプロピレン繊維も、ポリエチレン繊維と共に汎用素材として知られ、またポリエチレン繊維に比べ耐熱性に優れていることから、高強度、高弾性率とするならば、有機高分子系補強用繊維として用い得る繊維である。
【0003】
高強度、高弾性率ポリプロピレン繊維については、例えば、ジャーナル アプライド ポリマー サイエンス(Journal Applied Polymer Science)Vol.28、P.179〜189(1983)に、ポリプロピレンを、ノズルから溶融押し出し適切なドラフト比で巻取りながら冷却し高配向結晶性の未延伸糸とし、この未延伸糸を熱延伸してラメラ結晶内の分子鎖の折りたたみを解きほぐし分子鎖が繊維軸方向に伸長された繊維とすることにより、引張り強度0.76GPa(ギガパスカル)及び引張り弾性率17.2GPaのポリプロピレン繊維が得られることが報告されている。
【0004】
しかしながら、ポリプロピレン繊維は、複合材料におけるマトリックスとの接着性が一般に不良であり、接着性を改良する方法として代表的なものとして次の▲1▼〜▲5▼が提案されている。
▲1▼ポリプロピレンに石膏針状結晶繊維を混ぜ、溶融紡糸、延伸し繊維表面に石膏を突き出させる。(特公昭57−8790号公報)
▲2▼マトリックスとして補強用繊維より低融点のポリマーを使用し、マトリックスを補強用繊維に熱融着させる。(特公平4−4148号公報)
▲3▼溶媒を用いて紡糸し、紡糸繊維中の溶媒を蒸発させて繊維表面にボイドを形成し延伸でボイドを引き延ばして縦長状の溝をつくる。(特開昭60−174646号公報)
▲4▼補強用繊維をエポキシ基或いはカルボン酸基含有ポリオレフィンで表面処理する。(特開昭60−174646号公報)
▲5▼補強用繊維表面をプラズマ処理或いはコロナ放電処理して繊維表面に凹凸をつくる。(特開昭57−177032号、特開昭60−146078号、特公昭
53−794号、特公昭58−5314号各公報)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、これらの方法では、次のような問題点がある。即ち、▲1▼では熱延伸時に糸切れを起こし易い、▲2▼では接着力が不十分で良好な機械特性が得られにくい、▲3▼では残存溶媒により良好な機械特性が得られにくい、▲4▼ではマトリックスが限定される、▲5▼では強度低下により十分な機械強度が得られにくい。
本発明の目的は、かかる問題点を解決し、ポリプロピレンの溶融紡糸、熱延伸により、複合材料におけるマトリックスとの接着性に優れた高強度、高弾性率ポリプロピレン繊維を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、繊維表面に平均孔径0.05〜2μm、開孔率20〜90%の多数の微孔が存在する中空部のない中実繊維であって、5〜11%の破断伸度、0.5〜0.8GPaの引張り強度及び5〜6GPaの引張り弾性率を有する繊維直径1〜500μmの高強度、高弾性率ポリプロピレン繊維、にある。
【0007】
本発明のポリプロピレン繊維は、その繊維表面に多数の微孔が存在し、形成されている微孔の平均孔径は、0.05〜2μmである。孔径が0.05μm未満では、マトリックスとの接着性が不十分であり、2μmを超えると、繊維の強度低下を生じる。また、微孔は、繊維表面において開孔して存在し、開孔した微孔のアンカー効果によりマトリックスと本発明のポリプロピレン繊維とは、強固に接着する。かかる接着性を確保するためには、繊維表面での微孔の開孔率、即ち繊維単位表面積に対する微孔部分の占める総表面積の割合は、20〜90%、好ましくは25〜80%である必要がある。開孔率が20%未満では、マトリックスとの接着性が不十分であり、90%を超えると、繊維の強度維持が不十分となる。
【0008】
微孔の形態は、特に限定はないが、繊維軸方向に伸びた楕円形またはスリット状であることがマトリックスとの接着性の点で好ましい。
【0009】
本発明のポリプロピレン繊維においては、微孔は、また繊維内部に存在してもよく、微孔の分布は、繊維の機械的強度を確保する上から、繊維が中空部のない中実繊維である場合は、微孔が、繊維表面から0.2〜5μm、好ましくは0.2〜2μmの深さで、かつ繊維断面における中心部の微孔の存在しない非多孔質部と微孔の存在する多孔質部の比が、図1で示すように繊維半径rに対する非多孔質部半径rの比で60〜99.92%の範囲の表層領域に分布して存在することにより繊維の機械的強度が確保される。
【0011】
本発明のポリプロピレン繊維は、5%以上、11%以下の破断伸度、0.5GPa以上、0.8GPa以下の引張り強度、及び5GPa以上、6GPa以下の引張り弾性率を有し、補強用繊維として有用でかつ有効な機械的特性を有する。
【0012】
本発明のポリプロピレン繊維の形態は、補強用繊維として適用するのに有効な直径として1〜500μm、好ましくは3〜400μmの範囲の中空部のない中実繊維とする以外は、特に限定はなく、また断面形状も円形のみならず円形以外の形状であってもよい。
【0013】
本発明のポリプロピレン繊維を製造する方法を以下説明する。
ポリプロピレン繊維を製造するに用いるアイソタクティクポリプロピレンは、そのメルトフローインデックス(MI値)が0.05〜30の範囲にある必要がある。MI値が0.05未満であると、溶融粘度が高すぎて繊維を得る際に安定して紡糸することが困難であり、30を超えると、溶融粘度が低く冷却不足を生じ、安定な紡糸が困難である。なお、MI値は、JIS K7210に準じ温度190℃でのノズル通過量(単位g/10min、荷重2.169Kg)をもって表す。
【0014】
また、アイソタクティクポリプロピレンは、タクティシティが96%以上であることが好ましい。ここでタクティシティとは、側鎖メチル基の配列の度合いを示す物理量であり、n−ヘプタン不溶分についてマクロモリキュール(Macromolecules)Vol.6,P.925(1973)及び同Vol.8、P.687(1975)の記載の方法に準じて測定した値である。
【0015】
アイソタクティクとは、この側鎖メチル基が同一方向に配列したものであり、タクティシティが高いほどポリマーの結晶性は高くなる。タクティシティが96%よりも小さいポリマーを用いた場合、延伸後の繊維の表面には微孔が形成されない。タクティシティ96%以上は、結晶化度では50%以上に対応する。ポリマー ハンドブック(Polymer Handbook)ウイリィ、ニューヨーク、1975、P.V−23による結晶部密度0.936g/cm、非晶部密度0.850g/cmを用いると、結晶化度50%以上は、平均密度0.890g/cmに対応する。本発明でのポリプロピレンの密度とは、この平均密度を示し、0.890g/cm以上であることが必要である。
【0016】
本発明においては、かかる特定のポリプロピレンを中実繊維製造用のノズルを用いて溶融紡糸し、高配向結晶性の未延伸繊維を用意する。
【0017】
本発明のポリプロピレン繊維を安定に得るためには、紡糸温度は、ポリマーの融点より30〜80℃高い温度に設定することが望ましい。この温度範囲より低温で紡糸した場合は、ポリマーの溶融が不完全となりメルトフラクチャーが起こり易く、延伸工程での安定性が低下し、またこの温度範囲より高温で紡糸した場合は、延伸での微孔の形成が困難である。
【0018】
ノズルより吐出されたポリマーは、紡糸ドラフト比200〜2000で引き取り、未延伸繊維とされる。引き取りの際、紡糸ドラフト比が200未満では、高配向の未延伸繊維が得られず、延伸しても微孔の形成は困難であり、紡糸ドラフト比が2000を超えると、300%以上の総延伸量を得ることが可能な未延伸繊維が得られない。
【0019】
得られた未延伸繊維は、ラメラ結晶の結晶面が繊維軸に垂直であり、ラメラ結晶が高度に配向積層した構造の繊維となる。このラメラ構造の配向積層構造をより完全なものとするためには、未延伸繊維を120〜160℃、好ましくは140〜155℃で3分以上のアニール処理ともいわれる熱処理を施すことが有効な手段である。
【0020】
本発明においては、前述のように用意された未延伸繊維を次のいずれかの方法で延伸することができる。
(イ)冷延伸を行い、引き続き熱延伸を行う。
(ロ)冷延伸を行うことなく、熱延伸のみを行う。
【0021】
(イ)の方法における冷延伸では、結晶構造を破壊しミクロクレーズを発生させる。結晶ラメラ中の分子鎖の熱振動による結晶緩和を起こさせることなく、ミクロクレーズを発生させるためには、冷延伸における温度は、40℃以下とすることが望ましい。冷延伸は、延伸量で1〜100%に延伸することが好ましい。かかる冷延伸を行った後、熱延伸を行う。熱延伸は、120〜160℃で行うことが望ましく、熱延伸における温度が120℃未満では、孔径が0.05μm未満となり、かつ開孔率が20%未満となり、目的とする微孔が形成されず、160℃を超えると、繊維が透明化し、望ましい微孔の形成が困難となる。熱延伸は、1段のみで行っても2段以上の多段で行ってもよいが、総ての段でそれぞれ変形速度が1分あたり30%を超える、好ましくは35%を超えるように設定する。変形速度が1分あたり30%以下では、繊維表面から5μmを超える深い領域まで開孔し繊維の強度低下が生ずる。
【0022】
(ロ)の方法においては、熱延伸は、(イ)の方法におけると同様、熱延伸温度120〜160℃で行うことが望ましく、2段以上の多段で行うが、各段でそれぞれ変形速度が1分あたり30%を超えるように設定し、好ましくは、1段目は、変形速度が1分あたり30%を超え、2段目以降は、変形速度が1分あたり35%を超えるよう設定する。なお、本発明における熱延伸時の変形速度とは、延伸区間における延伸量(%)を繊維が延伸区間を通過する時間で除して求めた値である。
【0023】
本発明においては、総延伸量は、冷延伸を行う場合を含め、300%以上、好ましくは500%以上とすることが微孔の形成上必要である。しかしながら、総延伸量の増大に伴い破断伸度が低下することから、破断伸度を5%以上となすためには、総延伸量の上限は、約1000%である。
【0024】
熱延伸された繊維は、ほぼ形態の安定性が確保されたものであり、必ずしも多数の微孔の存在構造の固定を目的とする熱セットを必要とはしないが、必要に応じて、熱延伸温度と同じ温度領域で、応力緊張下で定長若しくは収縮させつつ熱セットを行う。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0026】
(実施例1)
タクティシティ98.8%、MI値8のアイソタクティクポリプロピレンを、プランジャー型押出機に装着した孔径5mmの紡糸ノズルより紡糸温度230℃で吐出し、100cmのエアーギャップ下、25℃の空気中で、紡糸ドラフト比200で巻取り未延伸繊維を得た。この未延伸繊維を145℃の加熱空気中で8時間熱処理した。次いで室温で初期長さに対して40%冷延伸した後、140℃に加熱した5個の加熱ボックス中で各段の熱延伸時の変形速度を1分あたり50%とし、5段の延伸で総延伸量300%に延伸した。
【0027】
引き続き150℃に加熱した加熱ボックス中で定長で1分間熱セットし、延伸繊維を得た。得られた繊維は、直径が41μmで、繊維表面に水銀圧入法での測定による最小孔径0.5μm、最大孔径0.7μm、平均孔径0.6μmの微孔が、開孔率40%で存在し、繊維断面での電子顕微鏡観察によると繊維表面から1.5μmの層まで微孔が分布しており、非多孔質部半径r/繊維半径rは0.93であった。また、この繊維は、破断伸度が10%、引張り強度が0.7GPa、引張り弾性率が6GPaであった。
【0028】
(実施例2)
実施例1で得た未延伸繊維を室温で初期長さに対して40%冷延伸した後、140℃に加熱した11個の加熱ボックス中で各段の熱延伸時の変形速度を1分あたり32%とし、11段の延伸で総延伸量300%に延伸して、延伸繊維を得た。得られた繊維は、直径が45μmで、繊維表面に水銀圧入法での測定による平均孔径0.4μmの微孔が、開孔率40%で存在し、繊維断面での電子顕微鏡観察によると繊維断面全体に微孔が分布しており、繊維断面積に対する微孔総断面積の比は40%であった。また、この繊維は、破断伸度が10%、引張り強度が0.8GPa、引張り弾性率が6GPaであった。
【0029】
(実施例3)
実施例1において、未延伸繊維を、熱処理後に、冷延伸しない以外は、実施例1と同様にして延伸繊維を得た。得られた繊維は、直径が45μmで、繊維表面に水銀圧入法での測定による最小孔径0.2μm、最大孔径1μm、平均孔径0.6μmの微孔が、開孔率40%で存在し、繊維断面での電子顕微鏡観察によると繊維表面から1.5μmの層まで微孔が分布しており、r/rは0.93であった。また、この繊維は、破断伸度が11%、引張り強度が0.8GPa、引張り弾性率が6GPaであった。
【0032】
実施例4
実施例1で得た未延伸繊維を室温で初期長さに対して100%冷延伸した後、140℃に加熱した11個の加熱ボックス中で各段の熱延伸時の変形速度を1分あたり60%とし、11段の延伸で総延伸量300%に延伸して、延伸繊維を得た。得られた繊維は、直径が30μmで、繊維表面に水銀圧入法での測定による平均孔径0.06μmの微孔が、開孔率45%で存在し、繊維断面での電子顕微鏡観察によると繊維断面全体に微孔が分布しており、繊維断面積に対する微孔総断面積の比は50%であった。また、この繊維は、破断伸度が10%、引張り強度が0.8GPa、引張り弾性率が6GPaであった。
【0033】
(比較例1)
実施例1で得た未延伸繊維を室温で初期長さに対して100%冷延伸した後、140℃に加熱した11個の加熱ボックス中で各段の熱延伸時の変形速度を1分あたり5%とし、11段の延伸で総延伸量500%に延伸する以外は、実施例1と同様にして、延伸繊維を得た。得られた繊維は、直径が40μmで、繊維表面に水銀圧入法での測定による最小孔径0.01μm、最大孔径0.03μm、平均孔径0.02μmの微細孔が、開孔率85%で存在し、繊維断面での電子顕微鏡観察によると繊維断面全体に微細孔が分布し、繊維断面積に対する微細孔総面積の比が95%であった。また、この繊維は、破断伸度が10%、引張り強度が0.0058GPa、引張り弾性率が0.058GPaであった。
【0034】
【発明の効果】
本発明のポリプロピレン繊維は、繊維表面に開孔した多数の微孔が存在し、本来の低比重に加え多孔質であることから、軽量でありながら、高強度、高弾性率を有する繊維であり、樹脂複合材料、セメント複合材料等の複合材料の樹脂、セメント等の広範囲のマトリックスとの接着性に優れた補強用繊維として極めて有用なるものであり、また高い破断伸度を有することから複合材料への瞬間的衝撃に対しても繊維の損傷が少なく、補強用繊維としての機能維持性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリプロピレン繊維の例の拡大模式断面図である。
【符号の説明】
1 微孔
2 非多孔質部
非多孔質部半径
繊維半径

Claims (1)

  1. 繊維表面に平均孔径0.05〜2μm、開孔率20〜90%の多数の微孔が存在する中空部のない中実繊維であって、5〜11%の破断伸度、0.5〜0.8GPaの引張り強度及び5〜6GPaの引張り弾性率を有する繊維直径1〜500μmの高強度、高弾性率ポリプロピレン繊維。
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