JP3548476B2 - 走査光学系 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、レーザープリンタ等の光走査ユニットに用いられる走査光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査光学系は、レーザー光源からの光束をポリゴンミラー等の偏向器により偏向、走査させ、fθレンズのような走査レンズを介して感光体ドラム等の走査対象面上にスポットとして結像させる。感光体ドラム上のスポットは、ポリゴンミラーの回転に伴って主走査方向に走査し、この際レーザー光をオンオフ変調することにより走査対象面上に静電潜像を形成する。
【0003】
このような走査光学系において、半導体レーザーの発光波長のばらつきによる描画性能の変化を抑えるためには、光学系の倍率色収差を小さく抑える必要がある。一般に、色収差は分散の異なる複数の材質のレンズを組み合わせることにより補正されるが、このような構成ではレンズ数が多くなり、かつ、使用できる材料が制限されるという問題がある。
【0004】
そこで、屈折型の走査レンズと回折レンズとを組み合わせることにより、倍率色収差を補正する技術が従来から知られている。例えば特開平11−095145号公報に開示される光学系は、ポリゴンミラーとfθレンズとの間に回折面が形成された補正素子を有し、これによりfθレンズの倍率色収差を補正している。また、この公報には、ポリゴンミラーを回転ノイズ防止用のカバーで覆う場合に、補正素子をそのカバーガラスとして兼用できることが指摘されている。
【0005】
なお、上記の公報のように光源からポリゴンミラーに入射する光束の中心軸と走査レンズの光軸とが同一の平面内で所定の角度をなす光学系では、ポリゴンミラーをカバーで覆う場合に、光源からポリゴンミラーへの入射光束を透過させる部分と、ポリゴンミラーからの反射光を走査レンズ側へ透過させる部分とにカバーガラスを設ける必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の公報に開示される走査光学系では、補正素子をカバーガラスとして兼用する場合、補正素子がfθレンズの光軸に対して垂直に配置されているため、これとは別個に光源とポリゴンミラーとの間にもカバーガラスを設けなければならず、かつ、補正素子の表面での不要な反射光がゴースト光として走査対象面に達しやすいという問題がある。
【0007】
一方、補正素子であるカバーガラスをfθレンズの光軸に対して傾ければ、2つの透過部分を単一のカバーガラスで覆うことはできるが、この場合には、補正素子がfθレンズの光軸に対して垂直な場合と比較して、倍率色収差によるスポットのズレ量が大きくなる。
【0008】
この発明は、上述した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、走査レンズの倍率色収差補正用の回折面をポリゴンカバーのカバーガラス上に設けた場合にも、カバーガラスの枚数を増やすことなく、ゴースト光の影響を抑え、倍率色収差によるスポットのズレ量を小さく抑えることが可能な走査光学系の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる走査光学系は、上記の目的を達成させるため、光源から発する光束を回転駆動される偏向器により偏向させ、走査レンズにより走査対象面上に結像させる構成において、偏向器と走査対象面との間の光路中に、所定の基準点に対して主走査方向において対称に形成された回折面を有して走査レンズの色収差を補正する回折素子を配置し、この回折素子を、基準点における法線が主走査方向において走査レンズの光軸に対して傾くように、かつ、基準点が主走査方向において走査レンズの光軸に対して偏心するように設定したことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、回折素子を走査レンズの光軸に対して傾けて配置した場合にも、基準点を適宜偏心させることにより、倍率色収差の分布を平均化し、その最大値を小さくすることが可能である。
【0011】
回折素子は、基準点の近傍ではパワーを持たない巨視的にほぼ平面状の素子として構成することができる。また、回折素子は、偏向器と走査レンズとの間に配置することができる。この場合、回折素子は、基準点における法線が走査レンズの光軸に対して垂直な状態を基準として、一方の端部が偏向器に対して近接し、他方の端部が偏向器から離れるよう傾けられ、回折面は、基準点を走査レンズの光軸に対して偏向器から離れる端部の方向に偏心させることが望ましい。
【0012】
光源から偏向器に入射する光束の中心軸と走査レンズの光軸とが同一の平面内で所定の角度をなす場合、すなわち、走査レンズの光軸を境として、一方側の走査範囲外から光束が偏向器に入射する場合、例えば、回折素子の光源側の端部が偏向器に対して近接するよう傾けられているとすると、回折面は、光源から離れる方向に偏心して配置される。反対に、回折素子の光源側の端部が偏向器から離れるよう傾けられているとすると、回折面は、光源に対して近接する方向に偏心して配置される。
【0013】
回折素子の基準位置からの傾斜角度をθ(単位:degree)、偏心量をS(単位:mm)とし、回折素子の光源側の端部が偏向器に近接するよう傾斜するときにθが正の値をとり、回折面が光源から離れるときにSが正の値をとるとすると、上記の回折素子の傾きと回折面の偏心量とは以下の関係を満たすことが望ましい。すなわち、θ>0の場合には以下の条件(1)、θ<0の場合には以下の条件(2)を満たすことが望ましい。
0<S<0.7|θ| …(1)
−0.7|θ|<S<0 …(2)
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる走査光学系の実施形態を説明する。実施形態の光学系は、レーザープリンターのレーザー走査ユニットに使用され、入力される描画信号にしたがってON/OFF変調されたレーザー光を感光体ドラム等の走査対象面上で走査させ、静電潜像を形成する走査光学系である。この明細書では、走査対象面上でスポットが走査する方向を主走査方向、これに直交する方向を副走査方向と定義し、各光学素子の形状、パワーの方向性は、走査対象面上での方向を基準に説明することとする。
【0015】
実施形態にかかる走査光学系は、主走査方向の平面図である図1に示されるように、光源である半導体レーザー10から発した発散光をコリメートレンズ11により平行光束とし、副走査方向に正のパワーを有するシリンドリカルレンズ12を介して偏向器であるポリゴンミラー14に入射させる。ポリゴンミラー14の反射面14aで反射、偏向されたレーザー光は、fθレンズ20、および補正用レンズ30を介して収束され、走査対象面40上に主走査方向に走査するスポットを形成する。
【0016】
シリンドリカルレンズ12は、コリメートレンズ11側のレンズ面が副走査方向にのみ正のパワーを持つシリンダー面、ポリゴンミラー14側のレンズ面が平面として構成されている。シリンドリカルレンズ12のパワーは、シリンドリカルレンズ12により形成される線像がポリゴンミラー14の反射面14aの近傍に位置するよう定められている。
【0017】
ポリゴンミラー14の周囲には、図1に破線で示すようにノイズ防止用のカバー15が取り付けられており、このカバー15のカバーガラスとして回折素子16が取り付けられている。回折素子16は、ポリゴンミラー14側の面16aが平坦面であり、fθレンズ20側の面16bの一部にfθレンズ20の倍率色収差を補正するための回折面が基準点Aを中心として回転対称に形成されている。
【0018】
実施形態の走査光学系は、半導体レーザー10からポリゴンミラー14に入射する光束の中心軸Ax0とfθレンズ20の光軸Ax1とが同一の平面内(主走査平面内)で所定の角度をなして交差するため、カバー15には半導体レーザー10からポリゴンミラー14への入射光束を透過させる部分と、ポリゴンミラー14からの反射光をfθレンズ20側へ透過させる部分とにカバーガラスを設ける必要がある。
【0019】
実施形態の回折素子16は、基準点Aにおける法線Ax2がfθレンズ20の光軸Ax1に対して傾くように、かつ、回折素子16の半導体レーザー10側の端部がポリゴンミラー14に対して近接する方向(図中時計回り方向)に傾くよう配置されており、これにより1枚の回折素子16で上記の2つの光路がカバーされている。また、回折素子16は、その基準点Aが光軸Ax1に対して図中左側、半導体レーザー10から離れる方向に所定量シフトして配置されている。
【0020】
ポリゴンミラー14で反射された光束は、主走査方向にはほぼ平行光として、副走査方向には発散光としてfθレンズ20に入射する。fθレンズ20は、ポリゴンミラー14側から第1レンズ21と第2レンズ22とが配列して構成されている。第1レンズ21と第2レンズ22とは、いずれも光軸回りに回転対称なレンズ面のみから構成されるレンズであり、fθレンズ20は全体として正のパワーを有している。
【0021】
補正用レンズ30は、走査対象面40側に近接して配置された像面湾曲補正用の長尺のレンズであり、そのfθレンズ20側のレンズ面は、副走査方向の実効的な屈折力が中心から周辺に向けて漸減するアナモフィック面であり、副走査方向に強い正のパワーを有する。補正用レンズ30を透過した光束は、主走査、副走査の両方向に関して収束光となり、走査対象面40上にビームスポットを形成する。
【0022】
次に、図2〜図4に基づき、回折素子16の形状及び配置について説明する。図2は、回折素子16をfθレンズ20側から見た正面図、図3は図2のIII−III線に沿う断面図、図4は回折素子16の配置を示す説明図である。
【0023】
回折素子16は、図2及び図3に示されるように、その長手方向の一方側が半導体レーザー10からの光束を透過させる非回折領域R1、他方側がポリゴンミラー14からの反射光を透過させる回折領域R2として形成されている。回折素子16のポリゴンミラー14側の面16aは全領域が段差のない連続面であり、ほぼ平面である。また、fθレンズ20側の面16bは、非回折領域R1が平面、回折領域R2が回折面として形成されている。
【0024】
回折面は、所定の基準点に対して主走査方向において対称に形成されており、この例では、図2に示すように基準点Aを中心とする同心円状の輪帯の一部として形成されている。なお、図2〜図4では、理解を容易にするため輪帯の数を実際より少なく、かつ、輪帯間の段差を実際より誇張して示している。輪帯は、図2に示されるように、基準点Aにおける法線Ax2に対して垂直な平面であり、階段状に基準点A上が最も低く(ポリゴンミラー14に近く)、周辺に向けて徐々に高く(ポリゴンミラー14から遠く)なるよう加工されており、回折面は全体として凹面である。なお、回折素子16は、基準点Aの近傍ではパワーを持たず、かつ、その巨視的な全体形状は、実際には図1に示されるように平面状である。
【0025】
実施形態の回折素子16は、図4(C)に示すように配置されている。図4(A)は前述した従来例と等価な配置である。図4(A)のように回折素子16がfθレンズ20の光軸Ax1に対して垂直に、かつ、基準点Aが光軸Ax1に一致するよう配置されている場合には、fθレンズ20の倍率色収差を良好に補正することができるが、カバーガラスとして用いる場合には、回折素子16とは別個に半導体レーザー10からの光束を入射させるカバーガラスが必要となり、かつ、ゴーストの影響を受けやすい。
【0026】
図4(A)に示す状態から矢印θで示すように、回折素子16を図中時計回りに回転させ、図4(B)に示すように配置したとする。この場合には、半導体レーザー10からの光束と、ポリゴンミラー14からの反射光とを1枚の回折素子16により透過させることができる。しかしながら、回折素子16は、図4(A)の状態を基準とすると図中下側となる一方の端部がポリゴンミラー14に対して近接し、他方の端部がポリゴンミラー14から離れるよう傾けられているため、fθレンズ20の光軸Ax1より図中上側の部分では同一の偏向角の光束が、図4(A)の状態より基準点Aから離れた輪帯に入射し、反対に光軸Ax1より図中下側の部分では図4(A)の状態より基準点Aに近い輪帯に入射する。回折素子16の倍率色収差の補正効果は基準点Aから離れるにしたがって大きくなるため、光軸より上側の部分では補正過剰、下側の部分では補正不足となる。
【0027】
図4(B)に示す状態から矢印Sに示すように回折素子16を図中上側にスライドさせて図4(C)に示す位置に設定する。これにより、基準点Aはfθレンズ20の光軸Ax1に対し、ポリゴンミラー14から離れる端部の方向、すなわち図中上側に偏心することとなる。このように基準点Aを偏心させることにより、回折素子16を傾けたことにより発生する倍率色収差を平均化することができ、色収差による走査対象面40上でのスポット位置のズレ量の最大値を小さくすることができる。
【0028】
回折素子16の基準位置からの傾斜角度をθ(単位:degree)、偏心量をS(単位:mm)とし、回折素子16の半導体レーザー10側の端部がポリゴンミラー14に近接するよう傾斜するときにθが正の値をとり、回折面が半導体レーザー10から離れるときにSが正の値をとるとする。図1、図4の場合、θ>0となり、この場合には以下の条件(1)を満たすことが望ましい。
0<S<0.7|θ| …(1)
【0029】
なお、回折素子16を、図4(C)とは反対に、その半導体レーザー10側の端部がポリゴンミラー14から離れる方向(図中反時計回り方向)に傾くよう配置することもできる。この場合、θ<0となり、以下の条件(2)を満たすことが望ましい。
−0.7|θ|<S<0 …(2)
この場合には、実施形態のようにカバーガラスの兼用という利点なくなるが、ゴースト光の影響を抑えることは可能である。
【0030】
次に、上述した走査光学系の具体的な数値例を示し、この数値例において図4のように回折素子16の設定状態を変えた場合の収差変化につき併せて説明する。
実施例の説明の前に、回折面の表現形式について説明する。回折面の形状は、光軸からの距離hにおける光軸と回折面との交点での接平面からのサグ量SAG(h)で表すことができ、かつ、そのサグ量SAG(h)は以下の式(1)で表される。
SAG(h)=X(h)+S(h) …(1)
ここで、X(h)は回折面の巨視的形状(ベースカーブ)で、以下のように表される。
X(h)=h2/[r[1+√(1−(κ+1)h2/r2)]]+A4h4+A6h6+A8h8+A10h10…(2)
上式中、rは光軸上の曲率半径、κは円錐係数、A4,A6,A8,A10はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。
【0031】
一方、回折面が持つべき光路長付加量Δφ(h)は、n次(偶数次)の光路差関数係数をPnとして、以下の式により求められる。
Δφ(h)=P2h2+P4 h4+P6 h6+P8 h8+P10h10 …(3)
式(1)中のS(h)は、この光路長付加量Δφ(h)に基づいて以下の式(4)により求められる値であり、巨視形状X(h)に付加されるサグ量を表す。
S(h)=[|MOD(Δφ(h)+C,−1)|−C]λ/[n−1] …(4)
ここで、MOD(X、Y)はXをYで割った剰余を与える関数、Cは輪帯の境界位置の位相を設定する定数であり、0から1の任意の値をとる(以下の実施例では、C=0.5)。
また、回折レンズ面の各輪帯の番号Nは、光軸上の領域を0として、以下の式(5)により表される。INT(X)は、Xの整数部分を与える関数である。
N=INT(|Δφ(h)/λ+C|) …(5)
【0032】
表1は、実施例の走査光学系におけるシリンドリカルレンズ12より走査対象面40側の構成を示す。表中の記号fは走査光学系の主走査方向の焦点距離、ryは各光学素子の主走査方向の曲率半径、rzは副走査方向の曲率半径(回転対称面の場合には省略)、dは面間の光軸上の距離、nは波長780nmでの屈折率である。
【0033】
表中、第1面及び第2面がシリンドリカルレンズ12、第3面がポリゴンミラー14のミラー面、第4面及び第5面が回折素子16、第6面及び第7面がfθレンズ20の第1レンズ21、第8面及び第9面が第2レンズ22、第10面及び第11面が補正用レンズ30を示す。回折素子16は、基準点Aにおける法線Ax2がfθレンズ20の光軸Ax1に対して半導体レーザー10が配置された側に10度傾くように、かつ、基準点Aが、fθレンズ20の光軸Ax1に対して半導体レーザー10が配置された側とは反対側に2.5mmシフトするように配置されている。
【0034】
【表1】
【0035】
第4面、第6面、第7面は、回転対称な非球面であり、その形状は上記の式(2)で表される。これらの非球面の円錐係数、非球面係数は以下の表2に示される。
【0036】
【表2】
【0037】
第5面は回折面である。回折面は、回転対称な非球面をベースカーブとして、所定の光路差関数で表される回折レンズ構造を形成することにより構成されている。回折面のベースカーブを規定する円錐係数、非球面係数、回折レンズ構造を規定する光路差関数の係数は、以下の表3に示されている。なお、回折面の回折成分の設計波長780nmでの焦点距離は1150.95mmである。
【0038】
【表3】
【0039】
第8面は平面、第9面及び第11面は球面である。第10面は、光軸から離れた位置での副走査方向の曲率半径が主走査方向の断面形状とは無関係に設定された回転軸を持たない非球面であり、主走査方向の断面形状は前記の式(2)、主走査方向の各位置hにおける副走査方向の曲率半径rz(h)は、光軸上での副走査方向の曲率半径をrz0として、以下の式(6)により求められる。
1/rz(h)=(1/rz0)+B1h+B2h2+B3h3+B4h4+B5h5+B6h6+B7h7+B8h8 …(6)
第11面を規定する各係数は、以下の表4に示される。
【0040】
【表4】
【0041】
図5〜図7は、上記の実施例にかかる走査光学系における回折素子16の配置に応じた倍率色収差を示す。各グラフは、設計波長である780nmのレーザー光により走査対象面上に形成されるスポット位置を基準として、770nmのレーザー光により走査対象面上に形成されるスポットの主走査方向のズレを像高(主走査方向の走査位置)に応じてプロットしたものである。各図の横軸は倍率色収差量(単位:mm)、縦軸は像高(単位:mm)を示している。像高は、光軸上を0とし、半導体レーザー10が設けられている側をマイナス、反対側をプラスとして符号を付している。
【0042】
回折素子16が設けられていない場合には、図5(A)に示すように、倍率色収差はプラス像高からマイナス像高にかけて単調に増加する。これを補正するために、図4(A)に示したように回折素子16を光軸Ax1に対して垂直に配置すると、図5(B)に示すように、倍率色収差は小さくなる。
【0043】
ここで、図4(B)に示すように基準点Aを光軸Ax1に一致させたまま回折素子16を10度回転させると、倍率色収差は図6(A)に示すような弓形となる。この状態では、軸上での収差はゼロになるものの、周辺部での収差量がかなり大きくなる。図5(A)と比較すると、プラス像高では補正過剰、マイナス像高では補正不足となっていることが理解できる。
【0044】
図6(B)は、実施例の配置における収差を示す。図4(C)に示すように基準点Aを光軸Ax1に対して偏心させることにより、倍率色収差の発生量が各像高で平均化され、収差曲線の形状は図6(A)と同様でありながら、収差の最大値は1/2程度に低減される。このとき、移動量Sを+5.0mmとすることにより、図7に示すように、走査範囲の端部で収差をなくし、書き始めと書き終わりの位置を揃えることも可能である。
【0045】
上記のように、波長が基準波長より短い場合には、倍率色収差は図5に示すような右下がりの曲線となり、回折素子16を図中時計回り(θ>0)に回転させた場合には図6(A)に示すような両端がプラス側に位置する弓形の曲線となり、光源から離れる方向(S>0)に偏心させると、図6(B)に示すように曲線全体がマイナス側にシフトして倍率色収差を平均化することができる。これに対して、波長が基準波長より長い場合には、倍率色収差は図5とは反対に右上がりの曲線となり、回折素子16を図中時計回り(θ>0)に回転させると、両端がマイナス側に位置する弓形の曲線となりる。ここで、上記と同様回折素子16を半導体レーザー10から離れる方向(S>0)に偏心させると、曲線全体がプラス側にシフトして倍率色収差を平均化することができる。
【0046】
一方、回折素子16を図中反時計回り(θ<0)に回転させると、波長と倍率色収差の曲線との関係は上記と逆になる。すなわち、波長が基準波長より短い場合には両端がマイナス側に位置する弓形の曲線、基準波長より長い場合には両端がプラス側に位置する弓形の曲線になる。ここで、回折素子16を半導体レーザー10に近接する方向(S<0)に偏心させると、基準波長より短い場合には曲線全体がプラス側、基準波長より長い場合には曲線全体がマイナス側にシフトし、倍率色収差を平均化することができる。
【0047】
すなわち、回折素子16の傾斜の方向と回折面の偏心の方向とは、使用波長が基準波長に対していずれの方向にずれるかには関係なく、一義的に決定されることとなる。なお、シフト量は、前記の条件(1)、(2)の範囲内で、許容する波長のズレ量やレンズの色収差補正の度合いにより変化する。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、走査レンズの倍率色収差を補正するための回折素子が、光軸に対して主走査方向に傾いて配置されている場合にも、倍率色収差の分布を平均化し、その最大値を小さくすることかできる。したがって、ポリゴンカバーのカバーガラスを回折素子として兼用する場合にも、カバーガラスの枚数を増やすことなくゴースト光の影響を抑え、倍率色収差によるスポットのズレ量を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態にかかる走査光学系の主走査方向の説明図。
【図2】図1の走査光学系に用いられる回折素子の正面図。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図。
【図4】(A)は従来例と等価な回折素子の配置、(B)は回折素子を回転させた場合、(C)は実施形態の配置を示す説明図。
【図5】(A)は回折素子が設けられていない場合、 (B)は回折素子が図4(A)の状態で配置されている場合の倍率色収差をそれぞれ示すグラフ。
【図6】(A)は回折素子が図4(B)の状態で配置されている場合、 (B)は回折素子が図4(C)の状態で配置されている場合の倍率色収差をそれぞれ示すグラフ。
【図7】回折素子の移動量を調整した場合の倍率色収差を示すグラフ。
【符号の説明】
10 半導体レーザー
14 ポリゴンミラー
16 回折素子
A 基準点
20 fθレンズ
30 補正用レンズ
40 走査対象面
Claims (7)
- 光源から発する光束を回転駆動される偏向器により偏向させ、走査レンズにより走査対象面上に結像させる走査光学系において、
前記偏向器と前記走査対象面との間の光路中に、所定の基準点に対して主走査方向において対称に形成された回折面を有して前記走査レンズの色収差を補正する回折素子が配置され、該回折素子は、前記基準点における法線が主走査方向において前記走査レンズの光軸に対して傾くように、かつ、前記基準点が主走査方向において前記走査レンズの光軸に対して偏心するように設定されていることを特徴とする走査光学系。 - 前記回折素子は、前記基準点の近傍ではパワーを持たない巨視的にほぼ平面状の素子であることを特徴とする請求項1に記載の走査光学系。
- 前記回折素子は、前記偏向器と前記走査レンズとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の走査光学系。
- 前記回折素子は、前記基準点における法線が前記走査レンズの光軸に対して垂直な状態を基準として、一方の端部が前記偏向器に対して近接し、他方の端部が前記偏向器から離れるよう傾けられ、前記回折面は、前記基準点を前記走査レンズの光軸に対して前記偏向器から離れる端部の方向に偏心させて配置されていることを特徴とする請求項3に記載の走査光学系。
- 前記光源から前記偏向器に入射する光束の中心軸と前記走査レンズの光軸とが同一の平面内で所定の角度をなし、前記回折素子は、前記光源側の端部が前記偏向器に対して近接するよう傾けられ、前記回折面は、前記光源から離れる方向に偏心して配置されていることを特徴とする請求項4に記載の走査光学系。
- 前記光源から前記偏向器に入射する光束の中心軸と前記走査レンズの光軸とが同一の平面内で所定の角度をなし、前記回折素子は、前記光源側の端部が前記偏向器から離れるよう傾けられ、前記回折面は、前記光源に対して近接する方向に偏心して配置されていることを特徴とする請求項4に記載の走査光学系。
- 前記回折素子の基準位置からの傾斜角度をθ(単位:degree)、偏心量をS(単位:mm)とし、前記回折素子の前記光源側の端部が前記偏向器に近接するよう傾斜するときにθが正の値をとり、前記回折面が前記光源から離れるときにSが正の値をとるとして、θ>0の場合には以下の条件(1)、θ<0の場合には以下の条件(2)を満たすことを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の走査光学系。
0<S<0.7|θ| …(1)
−0.7|θ|<S<0 …(2)
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