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JP3549331B2 - バイナリーオプティックス - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高次横モードのレーザビームを、強度がガウシアン分布をなすビームに変換するためのバイナリーオプティックスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、レーザ発振器を用いてレーザ加工を行う方法としてはレーザ光を集束して照射する方法が用いられている。このような用途に用いられるレーザビームは、その光強度の空間分布を表す横モードがきれいなガウシアン分布を有するTEM00モードとなっていることが望ましく、このビームを例えばガラス基板の表面に刻まれた回折格子により集光するバイナリーオプティックスにより集光させて照射することとなる。
【0003】
ここで、バイナリーオプティックスは、その断面構造が光の波長オーダーの階段状となっており、進行する光の波面は階段の厚みの違いによりその進行方向が変えられる。即ち、光の透過長が隣の階段と異なるために、光の位相がずれ、光の干渉効果により回折して光路が曲げられる。階段の繰り返しピッチは光路長を一波長だけ違える幅として与えられる。例えばYAGレーザ光を集光する目的のバイナリーオプティックスはその階段構造として幅が数μm、厚さが1μm程度のものである。例えば同心円状のパターンからなるバイナリーオプティックス11は凸レンズのような単レンズの機能を有している。凸レンズ機能のバイナリーオプティクスは、入射した平行光線を一点につまり焦点に集めるように働く(例えば、G. J. Swanson et al., US Patent 4895790, (1990)参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記したレーザ発振器にあっては、特にレーザ出力が大きくなると、高次のモードで発振しやすく、中心にて2つに分割されたTEM10モードや4つに分割されたTEM11モード、更にマトリックス状の斑点模様の形状を有するTEMnmモードになり、ビームクォリティーが低下しがちである。このようなモードのレーザ光はうまく集束させることが困難であった。
【0005】
そこで、本出願人による特願平7−305090号明細書に記載されているように、上記したバイナリーオプティックスのピッチやパターンを光の横モードに応じて形成することで、所望のビーム形状に近い形状とすることができる。しかしながら、TEMnmモードでは互いに隣接するピークの電界振幅の符号が異なることから、その間の振幅0となる暗部を埋めることが困難であり、その改善が望まれていた。
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたもので、TEMnmモードのレーザビームを可及的にTEM00モードに近い強度分布、即ちきれいなガウシアン分布のレーザビームに変換することが可能な光学素子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、高次横モードのレーザビームを、強度がガウシアン分布をなすビームに変換するべく、前記ビームの光軸を中心として該光軸に直交する面に形成された回折格子よりなるバイナリーオプティックスに於て、前記ビームの各領域の位相をそのモード次数に応じて反転させて該各領域の位相が一致するように、当該バイナリーオプティックスの各領域の厚みを前記ビームの前記各領域に応じて変えたことを特徴とするバイナリーオプティックスを提供する。
ここで、ビームクォリティーファクターMはニアフィールドとファーフィールドとのビーム幅(ビームプロフィールの標準偏差σ、σ)の積に比例するものとして定義される。
【0008】
【数1】
Figure 0003549331
【0009】
ニアフィールドの電界振幅をE(x)とファーフィールドの分布P(s)とから、
【0010】
【数2】
Figure 0003549331
【数3】
Figure 0003549331
【0011】
ここで、伝播角θ(光軸とのなす角)、光の波長λを使って、
【数4】
Figure 0003549331
【0012】
ところが、P(s)はE(x/2π)のフーリエ変換であると考えられるから、
【数5】
Figure 0003549331
となる。
【0013】
具体的にガウシアンビームの場合、その電界振幅は、
【数6】
Figure 0003549331
となる。
【0014】
ニアフィールドでは、
【数7】
Figure 0003549331
となる。
【0015】
また、スポットサイズパラメータω(z)は、
【数8】
Figure 0003549331
【0016】
として与えられるから、ファーフィールドの分布P(s)は、
【数9】
Figure 0003549331
【0017】
となる。また、P(s)は、
【数10】
Figure 0003549331
【0018】
のフーリエ変換と考えられる。規格化定数を考えて、
【数11】
Figure 0003549331
【数12】
Figure 0003549331
【0019】
従って、
【数13】
Figure 0003549331
となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1に本発明が適用されたレーザ加工装置の要部構成を示す。例えば平均出力100Wのレーザ加工用のNd:YAGレーザの共振器1から出力された光は焦点距離の異なる2枚のレンズの組合せで構成されるビーム拡大器2を介して拡大され、平行光に変換された後、本発明のバイナリーオプティックス3に入射するようになっている。このレーザ光はビーム形状が円形をなし、その光軸がバイナリーオプティックス3の中心Oと一致するように入射するものとする。そして、ビーム変形された光は平行光にするためのバイナリーオプティックス4を介してビーム改質装置5にて平行光にし難い低質成分が除去され、公知のレーザ加工に用いられることとなる。
【0021】
ここで、共振器1内にはビームの横モードを固定するためのアパチャー部材10が設けられている。これは共振器1から出力されるビームの横モードをリングモード等時間的に変化するモードではなく固定された1つのTEMnmモードとするべく、固定するべきモードに応じた形状及び数の開口を設けた遮蔽部材である。本形態ではTEM01モードに固定するべく図2に示すように、共振器1のリヤミラー1aとアウトプットミラー1bとの間に楕円形の開口のアパチャー部材10を設けている。これ以外に、例えば図3に示すような光軸を中心とする4つの開口を有するアパチャー部材20によりTEM11モードに固定したり、図4に示すような光軸を中心とする12個の開口を有するアパチャー部材30によりTEM32モードに固定するなど、任意のTEMnmモードに固定できる。
【0022】
バイナリーオプティックス3、4は半導体微細加工技術を利用し、石英基板(直径50mm)にマスクをかけ露光した後、エッチングして図5(a)のV−V線について見た図5(b)に示すような断面形状に作製される。ここで、バイナリーオプティクス3は光軸Oを中心として左右の厚みが、一方の位相をπだけ遅らせる(または進ませる)分だけ異なっている。
【0023】
図6は本実施形態に於けるバイナリーオプティックス3による光路変換及び位相変換、バイナリーオプティックス4による平行光への変換の模式図を示す。上記したアパチャー部材10により共振器1内にてTEM01モードに固定されたレーザビームは、バイナリーオプティックス3に入射する時点では左右2つのピークを有し、その中心が暗い明暗パターンとなっている(A部)。その電界振幅は左右、即ちOを原点としてx>0とx<0とで符号が異なり、即ち位相がπだけずれている(B部)。
【0024】
このようなレーザビームがバイナリーオプティックス3に入射すると中心付近に集光するように回折を起こさせるばかりでなく、右半分または左半分のいずれか一方の位相をπだけシフトさせ電界振幅が同符号となるようにしてバイナリーオプティクス4で平行光に戻す。すると、その強度分布(C部)及び電界振幅(D部)は中央部にギャップがあることを除くとガウシアン分布に近いものになる。
【0025】
ここで、図6のC部に示すような強度分布はガウシアンビームが中央部のギャップの幅に相当する幅Dの線状遮蔽物を通過する問題に帰着する(図7)。これは幅Dのスリットによるフラウンホーファー回折と相補的な関係にあるので、バイナリーオプティックス4の中心から直線距離R、光軸から距離xの地点に於ける電界振幅E(x)は、
【0026】
【数14】
Figure 0003549331
【0027】
となる。つまり、ガウシアン分布から、幅Dのスリットから回折された成分を差し引いてやれば良い。ω=15mmのガウシアンビームが幅Dの線状遮蔽物を通過するとして計算し、任意のギャップの幅Dに対して、バイナリーオプティックス3からの距離Rの位置に於けるビームブロフィール(|E(X)|;−30mm≦x≦30mm)を図8〜図12に示す。これにより、出射光の中心を遮蔽することによる回折成分はバイナリーオプティックスから離れる(Rが大になる)に従い左右に散らばることがわかる。特にDが小さいほど早く散らばってしまうことがわかる。実際にはDが30〜50μm以下になるとガウシアン分布とほとんど違いのないビームプロフィールになる。
【0028】
上記した回折成分はバイナリーオプティックス4によって平行光とすることができないことから、図6のE部に示すようにファーフィールドではビームクォリティーの悪い成分が中心から離間した位置に発生する。この回折成分を除には、ビーム改質装置5を用いる。まず、バイナリーオプティックス4から入射した光をレンズ7で絞ってその焦点位置近傍にてアパチャー部材8に設けられた小径の開口8aを通す(図13)。このようにすると左右に散らばった回折成分は開口8aを通ることができない。そして、レンズ9をもって再び平行光に戻してやれば、ガウシアンモードに近いビームを取り出すことができる。このように、ニアフィールドでx=0において電界振幅は0なのでMの定義から本来のガウシアンモードに比べてビームクォリティーが劣ったビームでも、ビームクォリティーの悪い成分を空間に分離し、良質部分のみを残すことができる。
【0029】
一方、上記したように図3に示すような光軸を中心とする4つの開口を有するアパチャー部材20により共振器1から出力されるレーザビームをTEM11モードに固定した場合、バイナリーオプティックス3に代えて光軸Oを中心として左上及び右下の厚みと右上及び左下の厚みとが、一方の位相をπ/2だけ遅らせる(または進ませる)分だけ異なっているバイナリーオプティックス13を用いる。同様に最大出力が得られる高次モードTEMnmについてもそのモードに応じたバイナリーオプティックスを用いてガウシアンビームに近いビームに変換でき、その後上記同様に、ビームクォリティーの悪い部分を空間分離し、良い部分のみを残すことができる。
【0030】
尚、上記実施形態では各バイナリーオプティックスを透過型としたが、反射型とすることで軸線方向のスペース効率を向上することができる。また、上記実施形態では例えば高次モードTEMnmのビームをガウシアンビームに近いビームに変換したが、バイナリーオプティックス3、13のピッチ及びパターンを変えることで所望の形状であり、かつ所望の強度分布のレーザビームが得られる。
【0031】
【発明の効果】
かかる構造のバイナリーオプティックスは、ビームの各領域の位相をそのモード次数に応じて反転させて該各領域の位相が一致するように、その入射する領域の厚みをビームの各領域の元の位相に応じた厚みとすることで、溝はあるもののビーム全体の電界振幅の符号が一致する。すると、ある程度出力位置から離間した位置では利用容易な略ガウシアン分布のビームとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたレーザ加工装置の要部構成図。
【図2】図1の共振器の簡略構成を示す斜視図。
【図3】図1の共振器の別の実施形態に於ける簡略構成を示す斜視図。
【図4】図1の共振器の別の実施形態に於ける簡略構成を示す斜視図。
【図5】(a)は本発明によるバイナリーオプティックスの平面図、(b)は(a)のV−V線について見た断面図。
【図6】本発明によるバイナリーオプティックスによる光路変換及び位相変換、及びこれら変換後のビームの平行光への変換を示す模式図。
【図7】本発明によるバイナリーオプティックスを通過したTEM01モードのレーザビームの強度分布を説明するために模式化した説明図。
【図8】本発明によるバイナリーオプティックスを通過したTEM01モードのレーザビームの中心のギャップDを200μmとしたときのバイナリーオプティックスからの距離R=500(a)、300(b)、200(c)、100(d)、50mm(e)の位置に於けるビームブロフィール。
【図9】本発明によるバイナリーオプティックスを通過したTEM01モードのレーザビームの中心のギャップDを100μmとしたときのバイナリーオプティックスからの距離R=500(a)、300(b)、200(c)、100(d)、50mm(e)の位置に於けるビームブロフィール。
【図10】本発明によるバイナリーオプティックスを通過したTEM01モードのレーザビームの中心のギャップDを50μmとしたときのバイナリーオプティックスからの距離R=500(a)、300(b)、200(c)、100(d)、50mm(e)の位置に於けるビームブロフィール。
【図11】本発明によるバイナリーオプティックスを通過したTEM01モードのレーザビームの中心のギャップDを30μmとしたときのバイナリーオプティックスからの距離R=500(a)、300(b)、200(c)、100(d)、50mm(e)の位置に於けるビームブロフィール。
【図12】本発明によるバイナリーオプティックスを通過したTEM01モードのレーザビームの中心のギャップDを20μmとしたときのバイナリーオプティックスからの距離R=500(a)、300(b)、200(c)、100(d)、50mm(e)の位置に於けるビームブロフィール。
【図13】本発明が適用されたレーザ加工装置のビーム改質装置の構成を示す図。
【図14】(a)は本発明による別の実施形態に於けるバイナリーオプティックスの平面図、(b)は(a)のB−B線について見た断面図、(c)は(a)のC−C線について見た断面図。
【符号の説明】
1 共振器
1a リヤミラー
1b アウトプットミラー
2 ビーム拡大器
3、4 バイナリーオプティックス
5 ビーム改質装置
7 レンズ
8 アパチャー部材
8a 開口
9 レンズ
10 アパチャー部材
13 バイナリーオプティックス
20、30 アパチャー部材

Claims (1)

  1. 高次横モードのレーザビームを、強度がガウシアン分布をなすビームに変換するべく、前記ビームの光軸を中心として該光軸に直交する面に形成された回折格子よりなるバイナリーオプティックスに於て、
    前記ビームの各領域の位相をそのモード次数に応じて反転させて該各領域の位相が一致するように、当該バイナリーオプティックスの各領域の厚みを前記ビームの前記各領域の元の位相に応じて変えたことを特徴とするバイナリーオプティックス。
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