JP3551006B2 - 光ファイバ用多孔質母材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光ファイバ用多孔質母材の製造方法に関するものであり、さらに詳しくはガラス微粒子合成用バーナを用いて火炎加水分解反応によりガラス微粒子を生成させ、これを堆積して多孔質ガラス母材を製造する方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ用母材の製法の一つとしてVAD法(気相軸付法)がある。これは図2に示すようにガラス微粒子合成用バーナ(以下、単に「バーナ」と略記する場合もある)2(2′)から燃焼用ガス及びガラス原料ガスを混合噴出し、形成される火炎3(3′)中でガラス原料を火炎加水分解又は酸化反応させることによりガラス微粒子を生成させ、該ガラス微粒子を回転する出発材6の先端に堆積させつつ、該堆積体(多孔質体)の成長に合わせ出発材6を前記バーナ2(2′)とは相対的に移動することにより、多孔質ガラス母材1を形成してゆく製法である。図2にはバーナを2本用いた例を示したが、バーナの数は1本だけ或いは2本以上でもよい。
得られた多孔質ガラス母材(多孔質母材)を電気炉中で加熱して透明ガラス化し、光ファイバ用ガラス母材とし、これを線引きして光ファイバを得る。
【0003】
従来VAD法においては一般に、バーナ2(2′)に投入されるガラス原料として例えばSiCl4 等が、また燃焼用ガスとしてはH2 ,炭化水素系ガス等の燃料ガス及びO2 又は空気等の助燃性ガス等が用いられる。ガラス微粒子(SiO2 )生成は下記(I) 式の反応によって行われる。
【化1】
SiCl4 +2H2 O → SiO2 + 4HCl (I)
生成されたガラス微粒子はすべてが多孔質ガラス母材1として堆積するわけではなく、その一部はマッフル4内に浮遊し、これらの浮遊ガラス微粒子はマッフル4の内壁に付着して付着層を形成する。付着層がある程度厚くなるとここから付着ガラス微粒子が剥がれて落下し、飛散した粒子が多孔質ガラス母材1の表面に付着することがある。この場合には、バーナ2(2′)の火炎3(3′)中で合成されたガラス微粒子とは付着の仕方が異なるため、透明ガラス化時に気泡を生じる原因となりやすい。
【0004】
この問題を解決する手段として、特開昭62−162642号公報及び特開昭63−123831号公報には、ガスの加熱器及びマッフルへの噴出口を付加し、高温に加熱されたガスをバーナ及び多孔質ガラス母材の外周にマッフル内壁に沿わせて流すことにより、マッフル内壁近傍でのガスの滞留を防ぎ、マッフルへのガラス微粒子の付着を防ぐと同時に、マッフル内にガスの流れを作り、ガラス微粒子の浮遊を抑制する方法が提案されている。
【0005】
ところで、ガラス微粒子を合成しているバーナ自体についても、ガラス微粒子の付着と混入の問題がある。すなわち、ガラス微粒子合成用バーナの先端から燃焼ガスとガラス原料ガスを混合噴射するが、その混合噴射したものの一部は該バーナの径方向に拡散し、該バーナの出口付近の先端にガラス微粒子として付着する。また、該バーナの出口付近で外気の巻き込みによりガラス微粒子を内部に混入させてしまうことがある。さらに、上記各公報記載の方法でガラス微粒子浮遊を抑制して合成していても、母材合成停止のタイミングによってはガラス微粒子がガラス微粒子合成用バーナ内に混入してしまうことがある。
【0006】
前記のようにガラス微粒子合成用バーナ内に付着又は混入したガラス微粒子をそのままにしておくと、次回の母材合成中に混入していたガラス微粒子が該バーナ内から飛びだし多孔質ガラス母材表面に付着し、この場合も火炎中で合成され直ちに堆積したガラス微粒子とは付着の仕方が異なるため、透明ガラス化時にやはり気泡生成の原因となる。さらに付着していたガラス微粒子が燃焼用ガスの熱により該バーナ内で透明ガラス化してしまい、該バーナ自体が使用不可となる場合すらある。そこで、母材合成停止後にガラス微粒子合成用バーナ内に付着又は混入したガラス微粒子を掃除機等で吸引して取り除くことにより清浄化している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記各号公報に提案されるマッフル内壁へのガラス微粒子の付着を防ぎ、ガス流れによりガラス微粒子の浮遊を抑制する方法はそれなりの効果を得られたが、ガラス微粒子の付着に起因すると考えられる気泡存在(残留)の問題はまだ完全には解決されてはいない。
本発明者らは、この問題につきさらに検討を続けた結果、マッフル内からのガラス微粒子のみならず、前記のように清掃した後のガラス微粒子合成用バーナ内に依然としてガラス微粒子が残存しており、これが合成開始後に多孔質ガラス母材に付着し気泡残留の原因となっているのではないかと考えついた。
すなわち、母材合成停止時にマッフル内壁や前記バーナ出口の先端から付着ガラス微粒子が自然に剥がれ落ちて該バーナ内に落ち込んだり、非常に慎重に清掃しても作業中に付着ガラス微粒子を吸引し損ない該バーナ内に落下したりする可能性がある。このように落下したガラス微粒子が例えば配管との接続部分近傍等のバーナ深部に混入してしまうと、吸引により除去することは非常に困難である。また、該バーナ出口近傍に、その深部に存在するに異物を吸引除去できるほどの圧力差を設けることは、該バーナ出口近傍の厚さ約1mm程度のガラスを破損する危険性が大きい。この問題を回避するには、毎回新しいバーナを用いて例えばガラス母材を合成すればよいわけであるが、製造コストが非常に高くなってしまう。
そこで、本発明はガラス微粒子合成用バーナ内へのガラス微粒子の混入や付着をなくすことにより透明化後の母材内の気泡存在を解消できる光ファイバ用多孔質母材の製造方法を提供することを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する手段として本発明は、
(1)気体のガラス原料及び燃焼用ガスを含む混合ガスをガラス微粒子合成用バーナから噴出させて形成される火炎中で前記ガラス原料を火炎加水分解反応及び/又は酸化反応させることにより生成するガラス微粒子を、回転する出発材又は心棒の周囲に堆積させて光ファイバ用多孔質母材を製造する方法において、前記ガラス微粒子合成用バーナ内に不活性ガスを風速25m/s以上で流した後に前記ガラス微粒子の堆積を開始することを特徴とする光ファイバ用多孔質母材の製造方法、
(2)前記不活性ガスが大気圧以上に加圧されたものであることを特徴とする前記(1) 記載の光ファイバ用多孔質母材の製造方法、及び
(3)前記不活性ガスの加圧は前記ガラス微粒子合成用バーナに接続された加圧器によることを特徴とする前記(2) 記載の光ファイバ用多孔質母材の製造方法、
を提供する。
また本発明の特に好ましい実施の態様として、前記ガラス微粒子合成用バーナ内での不活性ガスの風速を25〜50m/sとすること、前記不活性ガスを前記ガラス微粒子合成用バーナ内に流す際に、該バーナが設置されているマッフルからの排気管内を0.1kPa程度の減圧にしておくことが挙げられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、多孔質ガラス母材合成の前(ガラス微粒子の堆積開始前)に、当該多孔質ガラス母材の合成に用いるガラス微粒子合成用バーナ内に不活性ガスを導入し、該バーナ内での風速が25m/s以上となるように流す。前記バーナ内に混入あるいは付着していたガラス微粒子や異物等を伴って該バーナ先端から噴出した不活性ガスはマッフルの排気管から排出され、従来は清浄化が困難であった深部に混入したガラス微粒子や異物を簡単に取り除くものである。また、清掃中や清掃後に前記バーナ内に混入したガラス微粒子や異物であっても合成直前に本発明を適用することにより簡単に清浄化できる。
【0010】
本発明において,ガラス微粒子合成用バーナ内での不活性ガスの風速は25m/s以上とするが、特に好ましくは25〜50m/secとする。この理由は、25m/s未満では前記バーナ内に混入したガラス微粒子を十分に除去することができず、一方、50m/sを超えると図1に示す配管8とバーナ2の接続部やバーナ2の本体に過剰な負担がかかり、破損等の恐れがある。
不活性ガスを風速25m/s以上で流す具体的手段としては、加圧した不活性ガスを流し、この加圧の程度により風速を調整する方法が挙げられる。
本発明に用いる不活性ガスとしては、ガラス微粒子合成用バーナに影響を与えないものであって、得られた多孔質母材を最終的に光ファイバとしたときに伝送損失を増加させる要因となる金属粉、ダスト等を含まないものであれば何れでもよく、例えばN2 ,Ar,He 等が挙げられる。
【0011】
図1を参照して本発明を具体的に説明する。本発明において多孔質ガラス母材1そのものの合成は従来と同様である。すなわち、マッフル4内にてガラス微粒子合成用バーナ2(2′)にガラス原料ガス、必要であればドーパントガス、燃料ガス、助燃性ガス及び不活性ガス等の混合ガスを流す。該ガラス微粒子合成用バーナ2(2)に形成される火炎3(3′)中で前記ガラス原料ガス等が火炎加水分解反応及び/又は酸化反応することによりガラス微粒子が合成され、出発材6に堆積して多孔質ガラス母材1が形成される。一方、マッフル4内のガスは排気管5により排気される。
本発明においてはこの多孔質ガラス母材1の合成開始前に、ガラス微粒子合成用バーナ2内での風速25m/s以上となるように加圧器7で加圧された不活性ガスをバルブ9及び配管8を経由して該バーナ2内に一気に流し、該バーナ2の内部を清浄化する。図示は省略したがガラス微粒子合成用バーナ2′についても同様に行なう。
【0012】
なお、前記の「一気に流し」とは、加圧している配管8のバルブ9を瞬時に開き、バルブ9の開放状態を約5秒間維持して不活性ガスを流した後に該バルブ9を閉じるという方法である。更に好ましくは、一旦バルブ9を開放した後に該バルブ9を閉じて配管8内を加圧した後、再びバルブ9を瞬時に開放して約5秒間程度不活性ガスを一気に流すという操作を何回か行なう。操作回数はガラス微粒子合成用バーナ内部の汚れ程度に応じて適宜に設定できる。
【0013】
また、このとき排気管5内は0.1kPa程度の減圧とすることが好ましい。この理由はガラス微粒子合成用バーナ2(2′)から噴き出したガラス微粒子等がマッフル4内で浮遊することを防ぎ、またマッフル4内近辺からの異物等がこの不活性ガス流れとともに排気管5へ排出され、ガラス微粒子合成用バーナ2(2′)及びマッフル4内の清浄化をより達成できるからである。
【0014】
図1ではガラス微粒子合成用バーナ2及び同バーナ2′の2本のバーナを用いて多孔質母材1を合成する例を示しているが、ガラス微粒子合成に用いるバーナの数は1本、あるいは2本以上でもよく、図1と同様に行ない前記本発明の効果を得ることができる。
なお、以上の説明はVAD法を代表例にして行ったが、本発明はVAD法に限定されるものではなく、例えばOVD法等、バーナを用いたガラス微粒子生成による多孔質母材の製法であれば、いずれの方法においてもバーナの清浄化に適用して上記したと同様の効果を得られると考えられる。
【0015】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
〔実施例1〕
図1に示した構成に従い、本発明による光ファイバ用多孔質ガラス母材を作成した。各ガラス微粒子合成用バーナ2及び2′のサイズは、φ50mm×500mmである。合成開始に先立ち、不活性ガスとしてN2 を用い、これを加圧器7で6kg/cm2 (588399Pa)に加圧しておき、次にバルブ9を瞬時に開き約5秒間開放した後閉じ、約20秒間加圧し更に5秒間で一気に流すという作業を3回繰り返した。このバルブ開放の時に、不活性ガスは配管8を経由し、ガラス微粒子合成用バーナ2及び2′へと一気に流れる。このときの各ガラス微粒子合成用バーナ2及び2′内における不活性ガス風速は25m/sであった。また、排気管側は0.1kPaの減圧とした。
この後、ガラス微粒子合成用バーナ2にはガラス原料としてSiCl4 0.2リットル/分、GeCl4 0.1リットル/分、H2 20リットル/分、O2 30リットル/分及びAr10リットル/分を、ガラス微粒子合成用バーナ2′にはSiCl4 3リットル/分、H2 70リットル/分、O2 70リットル/分及びAr20リットル/分をそれぞれ投入した。
この条件により多孔質ガラス母材1(サイズ:φ150mm×800mm)を10本製造し、得られたガラス母材をそれぞれ電気炉で加熱透明化したところ、母材中の気泡発生は0.2個/本と少なく、良好な母材を得ることができた。
【0016】
〔比較例1〕
図2の構成で、合成開始前に加圧された不活性ガスを各ガラス微粒子合成用バーナ2及び2′内に流さなかった他は実施例1と同条件で、実施例1と同サイズの多孔質ガラス母材を10本製造した。得られた各多孔質ガラス母材を実施例1と同条件で加熱透明化したところ、透明ガラス母材中の気泡の残存は3.5個/本と多数の気泡残存が見られた。
【0017】
上記実施例1及び比較例1の結果から、本発明は従来法に比し、ガラス微粒子合成用バーナ内に混入した浮遊ガラス微粒子をバーナ深部のものまで除去できて、その後の透明ガラス母材中の気泡残存を大幅に低減できることがわかる。
【0018】
【発明の効果】
以上説明のように、本発明はガラス微粒子合成用バーナ内への付着,混入に由来するガラス微粒子の多孔質ガラス母材への付着をなくし、その後に加熱透明化してガラス母材としたものにおける気泡残留(存在)を大幅に低減できる。
また本発明は、装置,工程ともに簡単であり、多孔質母材合成直前でも実施できること、このように清浄化してガラス微粒子合成用バーナを用いることにより該バーナ自体の寿命も延長できて、同じガラス微粒子合成用バーナを何度も多孔質母材の合成に使用できることから、光ファイバ製造コスト低減に大いに有効である。
以上のように、本発明は気泡残存を大幅に低減した優れた品質の光ファイバ用多孔質母材を経済的に製造できるという、産業上有利なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を説明するための概略断面図である。
【図2】従来法の概略説明図である。
【符号の説明】
1 多孔質ガラス母材、 2及び2′ ガラス微粒子合成用バーナ、
3及び3′ 火炎、 4 マッフル、 5 排気管、
6 出発材、 7 加圧器、 8 配管、
9 バルブ。
Claims (3)
- 気体のガラス原料及び燃焼用ガスを含む混合ガスをガラス微粒子合成用バーナから噴出させて形成される火炎中で前記ガラス原料を火炎加水分解反応及び/又は酸化反応させることにより生成するガラス微粒子を、回転する出発材又は心棒の周囲に堆積させて光ファイバ用多孔質母材を製造する方法において、前記ガラス微粒子合成用バーナ内に不活性ガスを風速25m/s以上で流した後に前記ガラス微粒子の堆積を開始することを特徴とする光ファイバ用多孔質母材の製造方法。
- 前記不活性ガスが大気圧以上に加圧されたものであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ用多孔質母材の製造方法。
- 前記不活性ガスの加圧は前記ガラス微粒子合成用バーナに接続された加圧器によることを特徴とする請求項2記載の光ファイバ用多孔質母材の製造方法。
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