JP3555766B2 - アポトーシス誘発剤 - Google Patents
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Description
本発明は、医薬品として利用可能なアポトーシス誘発剤、制がん剤及び発がん予防剤に関する。また、本発明はアポトーシス機構解明、アポトーシス誘発阻害剤スクリーニング等に有用なアポトーシス誘発方法を提供する。更に本発明により純化されたフコース硫酸含有多糖及びその分解物が提供され、フコース硫酸含有多糖分解物の製造や、構造究明に有用なフコース硫酸含有多糖分解酵素が提供される。
従来の技術
近年、細胞組織の死に関し、アポトーシス(apoptosis、アポプトーシスともいう;自爆死あるいは細胞自滅)と言う様式が注目されている。
このアポトーシスは、病理的細胞死である壊死と異なり、細胞自身の遺伝子に最初から組込まれている死であると考えられている。すなわち何らかの外部的又は内部的要因が引き金となってアポトーシスをプログラムする遺伝子が活性化され、この遺伝子を元にプログラム死遺伝子タンパク質が生合成され、生成したプログラム死タンパク質により細胞自体が分解され、死に至ると考えられている。
このようなアポトーシスを所望の組織、細胞で発現せしめることができれば、不要若しくは病原細胞を自然の形で生体から排除することが可能となり、極めて意義深いものである。
発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、アポトーシスを誘発する作用を有する安全性の高い化合物を開発し、該化合物を含有するアポトーシス誘発剤、制がん剤、発がん予防剤、及び該化合物を有効成分として使用するアポトーシス誘発方法を提供することにある。また本発明の化合物の分解物の製造に有用な該化合物分解酵素を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明はアポトーシス誘発剤に関し、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有することを特徴とする。
本発明の第2の発明はアポトーシス誘発方法に関し、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を有効成分として使用することを特徴とする。
本発明の第3の発明は制がん剤に関し、本発明の第5又は第6の発明のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有することを特徴とする。
本発明の第4の発明は発がん予防剤に関し、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有することを特徴とする。
本発明の第5の発明は下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖に関する。
(1)構成糖:ウロン酸を含有する。
(2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化し、少なくとも下記式(I)、(II)、(III)で表される化合物より選択される一種以上の化合物が生成する。
本発明の第6の発明は下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖に関する。
(1)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。
(2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコダイン分解酵素により実質上低分子化されない。
本発明の第7の発明は本発明の第5の発明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、フコース硫酸含有多糖混合物を塩類の存在下、酸性多糖凝集能のある薬剤で処理し、沈殿物を除去する工程を包含することを特徴とする。
本発明の第8の発明は本発明の第5の発明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、フコース硫酸含有多糖混合物を、2価の陽イオンの混在下に陰イオン交換樹脂で処理して目的の多糖を採取する工程を包含することを特徴とする。
本発明の第9の発明は本発明の第5の発明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、本発明の第5の発明のフコース硫酸含有多糖を製造する再に、共存する着色性物質を多糖性の物質あるいは陰イオン交換基を有する物質を用いて除去する工程を包含することを特徴とする。
本発明の第10の発明は本発明の第6の発明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、フコース硫酸含有多糖混合物を、ウロン酸を含むフコース硫酸含有多糖を分解する能力を有する分解酵素、又は該分解酵素をもつ微生物で処理して目的の多糖を採取する工程を包含することを特徴とする。
本発明の第11の発明は本発明の第6の発明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、フコース硫酸含有多糖混合物を、塩類の存在下、酸性多糖凝集能のある薬剤で目的の多糖を沈殿させる工程を包含することを特徴とする。
本発明の第12の発明は本発明の第6の発明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、フコース硫酸含有多糖混合物を、2価の陽イオンの混在下に陰イオン交換樹脂で処理して目的の多糖を採取する工程を包含することを特徴とする。
本発明の第13の発明は本発明の第6の発明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、本発明の第6の発明のフコース硫酸含有多糖を製造する際に、共存する着色性物質を多糖性の物質あるいは陰イオン交換基を有する物質を用いて除去する工程を包含することを特徴とする。
本発明の第14の発明はフコース硫酸含有多糖混合物の製造方法に関し、海藻から本発明の第7、8、10、11又は12の発明に使用するフコース硫酸含有多糖混合物を抽出する際に、酢酸イオンとカルシウムイオンを共存させることを特徴とする。
本発明の第15の発明は下記の理化学的性質を有することを特徴とするエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素に関する。
(i)作用:下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖に作用して、該フコース硫酸含有多糖を低分子化させる。
(a):構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。
(b)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により実質上低分子化されない。
下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖に作用しない。
(c)構成糖:ウロン酸を含有する。
(d)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化し、少なくとも下記式(I)、(II)、(III)で表される化合物より選択される一種以上の化合物が生成する。
(ii)至適pH:本酵素の至適pHは7〜8付近にある。
(iii)至適温度:本酵素の至適温度は30〜35℃付近である。
本発明の第16の発明はカルシウム源と本発明の第15の発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を含有する酵素組成物に関する。
本発明の第17の発明は本発明の第15の発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の製造方法に関し、本発明の第15の発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素生産能を有するアルテロモナス属細菌を培養し、その培養物から該酵素を採取することを特徴とする。
本発明の第18の発明はフコース硫酸含有多糖の低分子化物に関し、本発明の第15の発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を本発明の第6の発明のフコース硫酸含有多糖に作用させて取得してなるものであることを特徴とする。
本発明者らは様々な純化されたフコース硫酸含有多糖やその分解物を得ることに成功し、次いでそれらの生物活性を検討し、それらの物質ががん細胞に対してアポトーシスを誘発させること及び強い制がん作用を示すことを見出した。またフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物が強い発がん抑制作用を示すことを見い出した。更に本発明の分解物の調製に有用なフコース硫酸含有多糖分解酵素の単離に成功し、本発明を完成させた。
【図面の簡単な説明】
図1はフコース硫酸含有多糖の沈殿形成率を示したものである。
図2はセファクリルS−500を用いたゲルろ過法により測定したフコース硫酸含有多糖−Uの分子量分布を示したものである。
図3はフコース硫酸含有多糖−UのIRスペクトルを示したものである。
4フコース硫酸含有多糖−Uの1H−NMRスペクトルを示したものである。
図5は糖化合物(a)のピリジル−(2)−アミノ化糖化合物(PA−a)をL−カラムにより分離したときの溶出パターンを示したものである。
図6は糖化合物(b)のピリジル−(2)−アミノ化糖化合物(PA−b)をL−カラムにより分離したときの溶出パターンを示したものである。
図7は糖化合物(c)のピリジル−(2)−アミノ化糖化合物(PA−c)をL−カラムにより分離したときの溶出パターンを示したものである。
図8は糖化合物(a)のマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示したものである。
図9は糖化合物(b)のマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示したものである。
図10は糖化合物(c)のマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示したものである。
図11は糖化合物(a)のマスマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示したものである。
図12は糖化合物(b)のマスマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示したものである。
図13は糖化合物(c)のマスマス分析(ネガティブ測定)により得られた結果を示したものである。
図14は糖化合物(a)の1H−NMRスペクトルを示したものである。
図15は糖化合物(b)の1H−NMRスペクトルを示したものである。
図16は糖化合物(c)の1H−NMRスペクトルを示したものである。
図17はセファクリスS−500を用いたゲルろ過法により測定したフコース硫酸含有多糖−Fの分子量分布を示したものである。
図18はフコース硫酸含有多糖−FのIRスペクトルを示したものである。
図19はフコース硫酸含有多糖−Fの1H−NMRスペクトルを示したものである。
図20は本発明により得られるエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素のpHと相対活性の関係を示すグラフである。
図21は本発明により得られるエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の温度と相対活性の関係を示すグラフである。
図22はセルロファインGCL−300を用いたゲルろ過法により測定した、フコース硫酸含有多糖−Fを本発明により得られるエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素により分解する前後の分子量分布を示したものである。
図23は本発明により得られるエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の反応液中のカルシウムイオン濃度と相対活性の関係を示すグラフである。
図24は実施例19−(6)においてセルロファインGCL−300を用いたゲルろ過法により測定した、フコース硫酸含有多糖−Fを本発明により得られるエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素により分解したものの分子量分布を示したものである。
図25はフコース硫酸含有多糖−Fを本発明により得られるエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素により分解したもののIRスペクトルを示したものである。
図26はフコース硫酸含有多糖−Fを本発明により得られるエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素により分解したものの1H−NMRスペクトルを示したものである。
図27はHL−60細胞の培養液に実施例1、15、及び18で得られたフコース硫酸含有多糖を1mg/mlとなるように添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示したものである。
図28はMOLT−3細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、実施例15及び17で得られたフコース硫酸含有多糖、及びデキストラン硫酸を添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示したものである。
図29はHCT 116細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4、実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖、及びヘパリン及びデキストラン硫酸を添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示したものである。
図30はHCT 116細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示したものである。
図31はAGS細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示したものである。
図32はSW480細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示したものである。
図33はWiDr細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF−Fd−4及び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖を添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示したものである。
図34はWiDr細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示したものである。
発明の実施の形態
以下、本発明に関して具体的に説明する。
本発明に使用されるフコース硫酸含有多糖は特に限定されるものではなく例えばヒバマタ由来の物、ガゴメ昆布由来の物、マ昆布由来の物、ワカメ由来の物その他すべての褐藻植物由来の物を使用することができる。また、ナマコも体壁にフコース硫酸含有多糖を持っていることが知られているが、本発明にはナマコ由来のフコース硫酸含有多糖も使用することができる。また本発明にはフコース硫酸含有多糖の分解物も使用することができる。フコース硫酸含有多糖の分解方法としては酸処理等の化学的に分解する方法、超音波処理など物理的に分解する方法、あるいは酵素的に分解する方法等が挙げられる。
本発明者らは、上記のような様々なフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物をがん細胞の培養液に添加したところ添加後1日から数日で癌細胞がアポトーシスを起こすのを見出した。また、正常細胞に対しては毒性を示さないことも確認した。
本発明において、フコース硫酸含有多糖とは、分子中にフコース硫酸を含有する多糖であり、特に限定はないが、例えば褐藻植物、ナマコ等に含有されている〔左右田徳郎監修、江上不二夫編集、共立出版株式会社、昭和30年12月15日発刊、多糖類化学、第319頁、第321頁〕。なお褐藻植物由来のフコース硫酸含有多糖はフコイダン、フコイジン、フカンと通称され、いくつかの分子種があることが知られているがこれらは総称的にフコイダンと呼ばれることが多い。例えば、市販シグマ社製のフコイダンを13種もの分子種に分けたという報告があり〔カーボハイドレート リサーチ(Carbohydrate Research)、第255巻、第213〜224頁(1994)〕、その中にはフコースを主成分とする一群と、ウロン酸を数%含み構成糖にフコースやマンノースを多く含む一群の分子種がある。その生物活性についてはマクロファージ活性増強、癌転移抑制、抗凝血等様々なものが報告されているが、フコース硫酸含有多糖には分子種があるため活性の本体がどの分子種にあるかを調べるためにはフコース硫酸含有多糖を分離精製して調べる必要があった。フコース硫酸含有多糖には、ウロン酸を実質的に含まず構成糖の主成分がフコースのものと、ウロン酸を数%含み構成糖にフコースやマンノースを含むもの等がある。以下、本明細書においてはウロン酸を実質的に含まない方をフコース硫酸含有多糖−Fとし、ウロン酸を含むフコース硫酸含有多糖をフコース硫酸含有多糖−Uとし、両者の混合物をフコース硫酸含有多糖混合物と記載する。
これまでに知られているフコース硫酸含有多糖−Fやフコース硫酸含有多糖−Uを分離する方法は分子量分画や陰イオン交換樹脂による分離であり、その分離は不充分なため薬品や機能性食品として大量調製が困難なものであった。
また、フコース硫酸含有多糖から着色性物質を完全に除去することは困難なことが知られており、市販のフコイダン等にも着色性物質が含まれている。通常この着色性物質はポリフェノールが重合したものであり極めて反応性が強く様々な酵素反応を阻害したり細胞の生育を阻害したり、また、例えば接した樹脂や樹脂性の容器等に不可逆的に吸着することがある。そのためフコース硫酸含有多糖の生物活性を正確に調べるため、また、容器や樹脂等の汚染を防ぐためにはフコース硫酸含有多糖から反応性の強い着色性物質を除去する必要があった。
また、褐藻類あるいは褐藻類のアルコール洗浄残渣等からフコース硫酸含有多糖混合物を抽出する際に可溶性の酢酸バリウムや塩化バリウムや塩化カルシウムを使用するとアルギン酸の混入を抑えることができるため、後の精製が有利であることが知られているが、可溶性のバリウム塩は廃液の処理などが容易ではなく、また塩化カルシウムは海藻と混合するとpHが変動するため非分解性のフコース硫酸含有多糖を得るにはpH調整が必要である。このpH調整の際に海藻粉末が粘性を帯びて凝集することがあるため、その後の抽出効率が低下したり固液分離とりわけろ過が困難となることがある。
すなわち、現在フコース硫酸含有多糖の産業上の有用性が期待されているにも関わらず、分子種的に分別が充分なフコース硫酸含有多糖−Fやフコース硫酸含有多糖−Uの市販品もなく、またその効率的な製造方法に関する報告もない。更には市販のフコース硫酸含有多糖には上記のように反応性の強い着色性物質が含まれている。
フコース硫酸含有多糖には様々な活性があるが、前述のごとくその分別調製が困難であるためいまだに実質上純化されたフコース硫酸含有多糖−Fやフコース硫酸含有多糖−Uは得られていなかった。
しかしながら本発明により、実質上純化されたフコース硫酸含有多糖−U、その簡便な抽出方法及びフコース硫酸含有多糖−Uの製造方法が提供された。また本発明により、通常、フコース硫酸含有多糖から除去困難で酵素反応阻害や樹脂の汚染等をもたらす反応性の強い着色性物質を除去したフコース硫酸含有多糖−Uが提供された。
更に本発明により、実質上純化されたフコース硫酸含有多糖−F、その簡便な抽出方法及びフコース硫酸含有多糖−Fの製造方法が提供された。
また本発明により、通常、フコース硫酸含有多糖から除去困難で酵素反応阻害や樹脂の汚染等をもたらす反応性の強い着色性物質を除去したフコース硫酸含有多糖−Fが提供された。
本発明に使用するフコース硫酸含有多糖としては、褐藻植物、ナマコ等のフコース硫酸含有多糖含有物を、例えばそのまま乾燥、粉砕して用いても良く、またフコース硫酸含有多糖含有物よりのフコース硫酸含有多糖抽出液、該抽出液よりの精製物を使用しても良い。フコース硫酸含有多糖抽出液の調製方法、抽出液からの精製方法は公知の方法で行えばよく、特に限定はない。
また、本発明に使用する、フコース硫酸含有多糖分解物とは、フコース硫酸含有多糖を酵素化学的方法、化学的方法、物理学的方法で分解して得られるものであり、公知の酵素化学的方法、化学的方法、物理学的方法を使用することができる。
また、本発明に使用するフコース硫酸含有多糖、フコース硫酸含有多糖分解物とはその薬学的に許容される塩を包含する。
フコース硫酸含有多糖を含有する褐藻植物としては、例えば、山田幸雄序、瀬川宗吉著、保育社、昭和52年発刊の原色日本海藻図鑑、第22〜52頁に記載の褐藻植物があり、例えば、ヒバマタ(Fucus evanescens)、ガゴメ昆布(Kjellmaniella crassifolia)、マ昆布(Laminaria japonica)、ワカメ(Undaria pinnatifida)等を使用し、フコース硫酸含有多糖を調製することができる。
フコース硫酸含有多糖を含有するナマコとしては、例えば、特開平4−91027号公報記載のナマコがあり、例えばマナマコ(Stichopus japonicus)、ニセクロナマコ(Holothuria leucospilota)等を使用することができ、該公報記載の方法にて、フコース硫酸含有多糖を調製することができる。
フコース硫酸含有多糖は硫酸基を分子中に有しており、該基は種々の塩基と反応し塩を形成する。これらのフコース硫酸含有多糖、それらの分解物は塩になった状態が安定であり、通常ナトリウム及び/又はカリウム等の塩の形態で単離される。これらの物質の塩はダウエックス50W等の陽イオン交換樹脂で処理することによって遊離のフコース硫酸含有多糖、遊離のそれらの分解物に導くことが可能である。また、これらは、更に必要に応じ公知慣用の塩交換を行い、所望の種々の塩に交換することができる。フコース硫酸含有多糖、それらの分解物の塩としては、薬学的に許容される塩が用いられ、例えばカリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩、ピリジニウム等の有機塩基との塩、及びアンモニウム塩等が挙げられる。
フコース硫酸含有多糖を含有する褐藻植物、ナマコ等は乾燥後、粉砕処理を行うことにより、フコース硫酸含有多糖含有粉体を調製することができる。
フコース硫酸含有多糖含有粉体から熱水抽出、希酸抽出を行うことによってフコース硫酸含有多糖抽出液を調製することができる。
フコース硫酸含有多糖含有物からの抽出温度、時間としては0〜200℃、1〜360分の範囲から目的に応じ選択すれば良いが、通常10〜150℃、5〜240分、好適には50〜130℃、10〜180分の範囲より選択して行うのが良い。
フコース硫酸含有多糖含有率を高めるための抽出物精製手段としては、塩化カルシウム、酢酸バリウム等を用いたフコース硫酸含有多糖の分画方法、塩化セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤を用いたフコース硫酸含有多糖の分画方法、塩類の存在下で酸性多糖凝集剤を用いるフコース硫酸含有多糖の分画方法、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー等があり、必要に応じこれらを組合せて、精製を行うことができる。
フコース硫酸含有多糖の分解方法としては、フコース硫酸含有多糖分解酵素を使用する方法、酸分解を行う方法、超音波処理を行う方法等フコース硫酸含有多糖分解方法として公知の方法を使用することができ、分解物の精製は上記方法にて行えばよい。
通常、褐藻類には複数種のフコース硫酸含有多糖が存在するが、本発明に使用される褐藻類の種類は特に限定されるものではなく、例えばヒバマタ由来のもの、カゴメ昆布由来のもの、マ昆布由来のもの、ワカメ由来のもの、その他すべての褐藻類由来のものを使用することができる。
フコース硫酸含有多糖の製造にはまず、褐藻類の水系溶媒による抽出液を得る。
また、抽出に供する海藻は生海藻でも良いが、抽出液を得る前に褐藻を乾燥したり、乾燥粉末にしたり、60〜100%のアルコールやアセトン等で洗浄したり、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタルアルデヒド、アンモニア等を含む水溶液に浸しておけばフコース硫酸含有多糖への着色性物質の混入が大幅に減少するため有利である。
また、褐藻類あるいは褐藻類のアルコール洗浄残渣等からフコース硫酸含有多糖を抽出する際に可溶性の酢酸バリウム、塩化バリウム、又は塩化カルシウムを使用するとアルギン酸の混入を抑えることができるため後の精製が有利であるが上述した理由により抽出の際には、1mM〜1M程度の酢酸カルシウム溶液で50〜130℃で抽出するのが好ましい。
海藻が厚手で粉末(粒子)が大きい場合、最初から0.2M以上の酢酸カルシウムを用いると抽出効率が悪くなることがあるので、まず水で抽出したものに、酢酸カルシウムを加えて、生じるアルギン酸の沈殿を除去すれば良い。
しかしながらフコース硫酸含有多糖をアルギン酸と同時に抽出したい場合や、抽出時ある程度分解したものを得たい場合等では溶媒及び抽出条件は特に限定されるものではなく、水あるいは、食塩、塩化マグネシウム等の様々な濃度の中性塩類水溶液、クエン酸、リン酸、塩酸等様々な濃度の酸性水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の様々な濃度のアルカリ性水溶液が使用でき、緩衝剤や防腐剤を加えても良い。抽出液のpHや抽出温度、抽出時間なども特に限定されないが、一般にフコース硫酸含有多糖は酸やアルカリに対して弱いため、酸性溶液やアルカリ性溶液を使用する場合低分子化が進行し易い。加熱温度、時間、pH等を調整することにより、任意の分解物を調製することができ、例えばゲルろ過処理、分子量分画膜処理等により、分解物の平均分子量、分子量分布等を調整することができる。
すなわち本発明のフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fの分子量及び糖組成はフコース硫酸含有多糖の原料の収穫期、該原料の乾燥方法、該原料の保存方法により異なり、またフコース硫酸含有多糖の抽出時の加熱条件、pH条件等により異なる。例えば酸によりフコース硫酸含有多糖は加水分解され、アルカリ条件下ではウロン酸のβ−脱離により、低分子化が進行する。従って本明細書に記載したフコース硫酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖−Fの分子量、分子量分布はその1例にすぎず、フコース硫酸含有多糖の処理条件により、その分子量、分子量分布は容易に変化させ得る。例えば、弱アルカリ性で100℃、1時間加熱し、脱塩に際し、ポアサイズ300の分子ふるい膜を使用すれば、分子量分布1000から1万程度のフコース硫酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖−Fが調製でき、使用する条件によって任意の分子量、分子量分布の本発明のフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fを調製できる。
前記の褐藻類の抽出液からアルギン酸や中性糖等を除くためには、例えば0.2〜0.6Mの濃度の食塩などの塩類の存在下、これ以上沈殿が生じなくなるまで塩化セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤を加え、沈殿を集めれば良い。
必要に応じてこの沈殿を0.2〜0.6Mの濃度の食塩などの塩類溶液で洗浄後、沈殿中の塩化セチルピリジニウムを食塩飽和アルコールで洗い落とし、フコース硫酸含有多糖混合物を得る。こうして得られたフコース硫酸含有多糖混合物から色素を除くために、この沈殿を溶解後陰イオン交換樹脂や多糖性の樹脂で処理したり限外ろ過等を行ってもよい。また脱塩後凍結乾燥すれば乾燥標品を得ることもできる。
本発明者らは0.6〜3Mの1種類又は2種類以上の塩類の存在下で本発明のフコース硫酸含有多糖−Fと本発明のフコース硫酸含有多糖−Uが酸性多糖凝集剤に対して全く異なる挙動を示すことを見出した。
例えば本発明の方法を用いて、フコース硫酸含有多糖混合物の水溶液から本発明のフコース硫酸含有多糖−Uを分離することができる。
まずフコース硫酸含有多糖混合物の水溶液に1種又は2種以上の塩類を添加しその総濃度を0.6〜2Mとする。添加する塩類は例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム等で特に限定されるものではない。
通常本発明のフコース硫酸含有多糖−Fと本発明のフコース硫酸含有多糖−Uを分離する場合1.5M程度の塩濃度で目的は達成できる(後記する図1の説明参照)。例えば上記塩類の塩濃度を1.5Mに調整した後塩化セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤をこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加するとフコース硫酸含有多糖−Fが沈殿を形成するので、沈殿を除去すると本発明のフコース硫酸含有多糖−Uの溶液が得られる。必要に応じてこの溶液を濃縮後、4倍量のエタノールなどで溶液中のフコース硫酸含有多糖−Uを沈殿させ、沈殿中の塩化セチルピリジニウムを食塩飽和アルコールで洗い落とし、本発明のフコース硫酸含有多糖−Uを得る。こうして得られたフコース硫酸含有多糖−Uから色素を除くために、この沈殿を溶解後限外ろ過等を行っても良い。また脱塩後凍結乾燥すれば乾燥標品を得ることもできる。また、工程中防腐剤などを添加してもよい。
次に本発明のフコース硫酸含有多糖−Fのみを効率的に製造したい場合は、塩化セチルピリジニウム等で凝集させる際に、0.2〜0.6Mの塩濃度ではなく、例えば2Mの塩濃度にすれば沈殿は本発明のフコース硫酸含有多糖−Fのみを含む。
本発明者らは、フコース硫酸含有多糖を陰イオン交換樹脂で精製する際に2価の陽イオンが共存すると単位樹脂量当りに吸着するフコース硫酸含有多糖量が増加し、フコース硫酸含有多糖の分離が良くなることも見出した。すなわち、本発明の方法を用いて本発明のフコース硫酸含有多糖−Uを製造する際には、まずフコース硫酸含有多糖混合物に2価の陽イオン源となる薬品を好ましくは1mM以上添加する。次に、陰イオン交換樹脂を2価の陽イオンを好ましくは1mM以上含む液で平衡化し、上記フコース硫酸含有多糖混合物を吸着させる。この陰イオン交換樹脂を平衡化した液で充分洗浄後、例えば塩化ナトリウムのグラジエントによりフコース硫酸含有多糖を溶出させる。本方法を用いる場合、添加する2価陽イオンの濃度は1mM以上ならばよいが、本発明のフコース硫酸含有多糖−Uをカラムに吸着させる目的の時は0.5M未満が望ましい。また本方法に用いる2価の陽イオン源となる薬品はカルシウム塩やバリウム塩が特にその効果が優れているが、特に限定されるものではなく、硫酸マグネシウム、塩化マンガン等も使用することができる。
また、褐藻類から通常の方法でフコース硫酸含有多糖混合物を製造すると上述のように反応性の強い着色性物質が混入し、それらが接する樹脂や樹脂性容器を汚染したり、酵素反応や細胞生育を阻害したりする。この着色性物質は多糖性の物質あるいは陰イオン交換基を有する物質に結合あるいは吸着させれば容易に除去できることを見出した。すなわち、フコース硫酸含有多糖を含む溶液に例えば、セルロファイン、GCL−2000(生化学工業社製)や、セファクリルS−500、セファデッスクG−200、セファロースCL−2B(共にファルマシア社製)等の多糖性の樹脂あるいは、DEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)、DEAE−セファロースFF、DEAE−セファデックスA−50、QAE−セファデックスA−50、DEAE−セファセル(共にファルマシア社製)、TSK−ゲルDEAE−トヨパール650、TSK−ゲルDEAEトヨパール550(トーソー社製)、アンバーライト系の陰イオン交換樹脂(オルガノ社販売)キトパール系の陰イオン交換樹脂(富士紡績社製)等の陰イオン交換基を有する物質を添加かくはん後除去したり、あるいはこれらを充てんしたカラムにフコース硫酸含有多糖を含む溶液を通過させればこの反応性の強い着色性物質は容易に除去できる。但し、陰イオン交換樹脂の場合フコース硫酸含有多糖も結合し得るので、着色性物質を吸着させる時に塩濃度を2M程度にしておくことが好ましい。
本発明のフコース硫酸含有多糖−Uは例えば実施例6に記載のように調製することができる。以下、このフコース硫酸含有多糖−Uの理化学的性質を示すが、本発明のフコース硫酸含有多糖−Uはこの例に限定されるものではない。
本発明のフコース硫酸含有多糖−U、及び実施例8で得た本発明のフコース硫酸含有多糖−Fの各塩化ナトリウム濃度における、過剰量の塩化セチルピリジニウム存在下における沈殿形成性を図1に示す。
図1の縦軸は沈殿形成率(%)を示し、横軸は塩化ナトリウム濃度(M)を示す。図中、実線及び白丸は本発明のフコース硫酸含有多糖−Uの各塩化ナトリウム濃度での沈殿形成率を示し、図中、点線及び白三角は本発明のフコース硫酸含有多糖−Fの各塩化ナトリウム濃度(M)での沈殿形成率を示す。
沈殿形成率の測定は、溶液温度37℃にて、以下のように行った。
本発明のフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fをそれぞれ2%の濃度で水及び4Mの塩化ナトリウムに溶解し、これらを様々な割合で混合することにより様々な濃度の塩化ナトリウムに溶解したフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−F溶液を各125μlずつ調製した。次に、塩化セチルピリジニウムを2.5%の濃度で水及び4Mの塩化ナトリウムに溶解し、それらを混合することにより様々な濃度の塩化ナトリウムに溶解した1.25%の塩化セチルピリジニウム溶液を調製した。
水に溶解している2%の本発明のフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fを1.25%の塩化セチルピリジニウムで完全に沈殿させるには容量で3.2倍必要であった。そこで、各濃度の塩化ナトリウムに溶解した2%のフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fの各125μlに対して各々の濃度の塩化ナトリウムに溶解した塩化セチルピリジニウム溶液を400μl添加後、充分かくはんし、30分放置後、遠心分離し上清中の糖含量をフェノール−硫酸法〔アナリティカル ケミストリー(Analytical Chemistry)、第28巻、第350頁(1956)〕により測定し、各塩化ナトリウム濃度下での各フコース硫酸含有多糖の沈殿形成率を算出した。
得られた本発明のフコース硫酸含有多糖−Uの分子量をセファクリルS−500を用いたゲルろ過法により求めたところ、約19万を中心とした分子量分布を示した(図2参照)。なお、図2において、縦軸はフェノール−硫酸法により測定した試料中の糖含量を480nmの吸光度で示し、横軸はフラクション ナンバーを示す。
なお、ゲルろ過の条件を下記に示す。
カラムサイズ:3.08×162.5cm
溶媒:0.2Mの塩化ナトリウムと10%のエタノールを含む10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)
流速;1.5ml/分
サンプル濃度:0.25%
サンプル液量:20ml
分子量標準物質:Shodex STANDARD P−82(昭和電工社製)
次に、得られた本発明のフコース硫酸含有多糖−Uの成分を分析した。
まず、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第175巻、第595頁(1948)の記載に従いフコース量を定量した。
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Uの乾燥標品を1規定の塩酸に0.5%の濃度で溶解し、110℃で2時間処理し、構成単糖に加水分解した。次に、グライコタッグ(GlycoTAG)及びグライコタッグ リージェント キット(GlycoTAG Reagent Kit)(共に宝酒造社製)を用いて加水分解して得られた単糖の還元性末端をピリジル−(2)−アミノ化(PA化)し、HPLCにより構成糖の比率を調べた。なお、HPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:パルパックタイプA(4.6mm×150mm:宝酒造社製)
溶離液:700mMホウ酸緩衝液(pH9.0):アセトニトリル=9:1
検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて励起波長310nm、蛍光波長380nmで検出
流速:0.3ml/分
カラム温度:65℃
次に、アナリティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、第4巻、第330頁(1962)の記載に従いウロン酸量を定量した。
次に、バイオケミカル ジャーナル(Biochemical Journal)、第84巻、第106頁(1962)の記載に従い硫酸含量を定量した。
以上の結果、得られたフコース硫酸含有多糖−Uの構成糖はフコース、マンノース、ガラクトース、グルコース、ラムノース、キシロース、ウロン酸であった。その他の中性糖は実質的に含有されていなかった。また、主要成分のフコース:マンノース:ガラクトース:ウロン酸:硫酸基はモル比で約10:7:4:5:20であった。
次に、フコース硫酸含有多糖−Uのカルシウム塩のIRスペクトルをフーリェ変換赤外分光光度計JIR−DIAMOND20(日本電子社製)により測定したところ図3に示すスペクトルが得られた。なお、図3において縦軸は透過率(%)、横軸は波数(cm-1)を示す。
次に、本発明のフコース硫酸含有多糖−Uのカルシウム塩のNMRスペクトルを500MHzの核磁気共鳴装置JNM−α500型核磁気共鳴装置(日本電子社製)により測定したところ図4に示すスペクトルが得られた。
図4中、縦軸はシグナルの強度、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。なお、1H−NMRでの化学シフト値はHODの化学シフト値を4.65ppmとして表した。
1H−NMR(D2O)
δ5.27(マンノースの1位のH)、5.07(フコースの1位のH)、4.49(フコースの3位のH)、4.37(グルクロン酸の1位のH)、4.04(フコースの4位のH)、3.82(フコースの2位のH)、3.54(グルクロン酸の3位のH)、3.28(グルクロン酸の2位のH)、1.09(フコースの5位のCH3のH)
この本発明のフコース硫酸含有多糖−Uの凍結乾燥物の比旋光度を高速・高感度旋光計SEPA−300(堀場製作所製)により測定したところ、−53.6度であった。
本発明者らは、以下に述べるごとく得られた本発明のフコース硫酸含有多糖−Uの構造を決定した。
フコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を有する分解酵素によるフコース硫酸含有多糖−Uの分解及び分解物の精製
精製したフコース硫酸含有多糖−Uに下記のエンド型フコイダン分解酵素を作用させ分解物の精製を行った。
すなわち、1%のフコース硫酸含有多糖−U溶液16mlと、50mMのリン酸緩衝液(pH8.0)12mlと4Mの塩化ナトリウム4mlと32mU/mlのエンド型フコイダン分解酵素溶液8mlを混合し、25℃で48時間反応させた。反応の進行と共に230nmの吸光度が増加することを確認し、本酵素によりフコース硫酸含有多糖−Uが分解されていることが判明した。この反応液をマイクロアシライザーG3(旭化成社製)により脱塩後、DEAE−セファロースFFにより3つの画分(a)、(b)、及び(c)に分離精製した。
なお、上記のエンド型フコイダン分解酵素は以下の方法により調製される。
該エンド型フコイダン分解酵素の生産に用いる菌株としては、該エンド型フコイダン分解酵素生産能を有する菌株であればいかなる菌株でもよいが、具体例としては例えば、フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082株(FERM BP−5402)が挙げられる。
本菌株は青森県の海水中より本発明者らが新たに検索して得た菌株で、その菌学的性質は次の通りである。
1.フラボバクテリウム sp.SA−0082株
a.形態的性質
(1)本菌は短かん菌である。
幅 0.8〜1.0μm
長さ 1.0〜1.2μm
(2)胞子の有無 なし
(3)グラム染色性 陰性
b.生理的性質
(1)生育の温度範囲
37℃以下で生育できる。好適な生育温度は15〜28℃である。
(2)酸素に対する態度 好気性
(3)カタラーゼ 陽性
(4)オキシダーゼ 陽性
(5)ウレアーゼ 弱陽性
(6)酸の生成
D−グルコース 陽性
ラクトース 陽性
マルトース 陽性
D−マンニトール 陽性
スクロース 陰性
トレハロース 陰性
(7)加水分解
デンプン 陰性
ゼラチン 陽性
カゼイン 陰性
エスクリン 陽性
(8)硝酸塩の還元 陰性
(9)インドールの生成 陰性
(10)硫化水素の生成 陰性
(11)ミルクの凝固 陰性
(12)ナトリウムの要求性 陽性
(13)塩類要求性
0%食塩培地での生育 陰性
1%食塩培地での生育 陰性
海水培地での生育 陽性
(14)キノン系 メナキノン6
(15)菌体内DNAのGC含量 32%
(16)OF−テスト O
(17)集落の色調 黄色系
(18)運動性 なし
(19)滑走性 なし
本菌株は、バージーズ マニュアル オブ システィマティック バクテリオロジー(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)、第1巻(1984)、及びバージーズ マニュアル オブ ディターミネイティブ バクテリオロジー(Bergey's Manual of Determinative Bacteriology)、第9巻(1994)に記載のフラボバクテリウム アクアタイル(Flavobacterium aquatile)、及びフラボバクテリウム メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)の類縁細菌と考えられるが、前者とはスクロースを資化して酸を形成しない点、カゼインを分解できない点、エスクリンを分解できる点、ゼラチンを液化できる点、ウレアーゼが陽性である点が異なり、後者とはカゼインが分解できない点、37℃での生育が遅い点が異なる。そこで本菌株をフラボバクテリウムに属する細菌と同定し、フラボバクテリウムsp.SA−0082と命名した。
なお、上記菌株はFlavobacterium sp.SA−0082と表示され、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所[日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305)]に平成7年3月29日よりFERM P−14872として寄託され、前記通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−5402(国際寄託への移管請求日:平成8年2月15日)として寄託されている。
本菌株の培地に加える栄養源は使用する菌株が利用し、エンド型フコイダン分解酵素を生産するものであればよく、炭素源としてはたとえばフコイダン、海藻粉末、アルギン酸、フコース、グルコース、マンニトール、グリセロール、サッカロース、マルトース、ラクトース、デンプン等が利用でき、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、カザミノ酸、コーンスティープリカー、肉エキス、脱脂大豆、硫安、塩化アンモニウム等が適当である。その他にナトリウム塩、リン酸塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩等の無機質、及び金属塩類を加えてもよい。
本エンド型フコイダン分解酵素の生産菌を培養するに当り、生産量は培養条件により変動するが、一般に培養温度は、15℃〜30℃、培地のpHは5〜9がよく、5〜72時間の通気かくはん培養で本エンド型フコイダン分解酵素の生産量は最高に達する。培養条件は使用する菌株、培地組成等に応じ、本エンド型フコイダン分解酵素の生産量が最大になるように設定するのは当然のことである。
本エンド型フコイダン分解酵素は菌体中にも培養物上清中にも存在する。
上記のフラボバクテリウムsp.SA−0082株を適当な培地で培養し、その菌体を集め、通常用いられる細胞破壊手段、例えば、超音波処理などで菌体を破砕すると無細胞抽出液が得られる。
次いで、この抽出液から通常用いられる精製手段により精製酵素標品を得ることができる。例えば、塩析、イオン交換カラムクロマト、疎水結合カラムクロマト、ゲルろ過等により精製を行い、他のフコイダン分解酵素を含まない純化された本エンド型フコイダン分解酵素を得ることができる。
また、上述の培養液から菌体を除去した培養液上清中にも本酵素(菌体外酵素)が大量に存在するので、菌体内酵素と同様の精製手段により精製することができる。
エンド型フコイダン分解酵素の精製例を示す。
フラボバクテリウムsp.SA−0082(FERM BP−5402)をグルコース0.25%、ペプトン1.0%、酵母エキス0.05%を含む人工海水(ジャマリンラボラトリー製)pH7.5からなる培地600mlを分注して殺菌した(120℃、20分)2リットルの三角フラスコに接種し、24℃で24時間培養して種培養液とした。グルコース0.25%、ペプトン1.0%、酵母エキス0.05%、及び消泡剤(信越化学工業製KM70)0.01%を含む人工海水(ジャマリンラボラトリー製)pH7.5からなる培地20リットルを30リットル容のジャーファーメンターに入れ120℃で20分殺菌した。冷却後、上記の種培養液600mlを接種し、24℃で24時間、毎分10リットルの通気量と毎分125回転のかくはん速度の条件で培養した。培養終了後、培養液を遠心分離して菌体を得た。
この菌体を、200mMの食塩を含む20mMの酢酸−リン酸緩衝液(pH7.5)に懸濁し、超音波破砕後、遠心分離して菌体抽出液を得た。この菌体抽出液中の本エンド型フコイダン分解酵素の活性を測定したところ、培地1ml中に5mUの活性が検出された。
本抽出液に、終濃度が90%飽和となるように硫酸アンモニウムを加え、かくはん溶解後遠心分離し、沈殿を上記菌体抽出液と同じ緩衝液に懸濁して、50mMの食塩を含む20mMの酢酸−リン酸緩衝液(pH7.5)で充分透析した。透析により生じた沈殿を遠心分離により除去後、あらかじめ50mMの食塩を含む20mMの酢酸−リン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したDEAE−セファロースFFのカラムに吸着させ、吸着物を同緩衝液にて充分洗浄後、50mMから600mMの食塩のグラジエントにより溶出させ、活性画分を集めた。次にこの活性画分に終濃度が4Mとなるように食塩を加え、あらかじめ4Mの食塩を含む20mMのリン酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したフェニルセファロースCL−4Bのカラムに吸着させ、吸着物を同緩衝液で充分洗浄後、4Mから1Mの食塩のグラジエントにより溶出させ、活性画分を集めた。次にこの活性画分を限外ろ過器で濃縮後、あらかじめ50mM食塩を含む10mMリン酸緩衝液で平衡化したセファクリルS−300でゲルろ過を行い活性画分を集めた。この酵素の分子量をセファクリルS−300の保持時間から求めたところ約46万であった。次にこの活性画分を250mMの食塩を含む10mMのリン酸緩衝液(pH7)で透析した。この酵素液を、あらかじめ250mMの食塩を含む10mMのリン酸緩衝液(pH7)で平衡化したモノ(Mono)Q HR5/5のカラムに吸着させ、吸着物を同緩衝液で充分洗浄後、250mMから450mMの食塩のグラジエントにより溶出させ、活性画分を集め、精製酵素を得た。以上の精製工程を表1に示す。
本酵素の活性測定は下記の様に行う。
2.5%のガゴメ昆布由来のフコイダン溶液50μlと、10μlの本酵素と、60μlの667mM塩化ナトリウムを含む83mMリン酸緩衝液pH7.5を混合し、37℃、3時間反応させた後、反応液105μlと水2mlを混合かくはんし、その230nmにおける吸光度(AT)を測定する。対照として、本酵素の代りに、本酵素を溶解している上記緩衝液のみを用いて同様の条件により反応させたもの及びフコイダン溶液の代りに水のみを用いて反応を行ったものを用意し、それぞれ同様に吸光度を測定する(AB1及びAB2)。
1単位の酵素は、上記反応系において1分間に1μmolのマンノースとウロン酸の間のグリコシド結合を脱離的に切断する酵素量とする。切断された結合の定量は、脱離反応の際に生じた不飽和ウロン酸のミリモル分子吸光係数を5.5として計算し行う。なお、酵素の活性は下記式により求める。
2.105:吸光度を測定するサンプルの液量(ml)
120:酵素反応液の液量(μl)
5.5:不飽和ウロン酸の230nmにおけるミリモル分子吸光係数(/mM)
105:希釈に用いる反応液の液量(μl)
0.01:酵素液量(ml)
180:反応時間(分)
タンパク質の定量は、酵素液の280nmの吸光度を測定することにより行う。その際1mg/mlのタンパク質溶液の吸光度を1.0として計算する。
なお基質のガゴメ昆布由来のフコイダンは次の様に調製した。
乾燥ガゴメ昆布を自由粉砕機M−2型(奈良機械製作所製)により粉砕し、10倍量の85%メタノール中で70℃、2時間処理後、ろ過し、残渣を10倍量のメタノール中で70℃、2時間処理し、ろ過する。残渣に20倍量の水を加え、100℃、3時間処理しろ過により抽出液を得る。抽出液の塩濃度を400mMの塩化ナトリウム溶液と同じにした後、セチルピリジニウムクロリドをこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し、遠心分離する。その沈殿を、エタノールで充分洗浄し、セチルピリジニウムクロリドが完全に除去できたら、限外ろ過器(ろ過膜の排除分子量10万)(アミコン社製)により脱塩及び低分子除去を行い、この際生じた沈殿を遠心分離により除去する。この上清を凍結乾燥して精製ガゴメ昆布フコイダンを得る。
酵素反応生成物の構造解析
上記のエンド型フコイダン分解酵素は、フコース硫酸含有多糖−U中に存在するD−マンノースとD−グルクロン酸の間のα1→4結合を脱離的に分解する酵素であり、得られたフコース硫酸含有多糖−Uに作用させると下記式(I)、(II)、及び(III)の構造を有するオリゴ糖が生成した。
以下、詳細に説明する。
上記のDEAE−セファロースFFで分離精製した3つの画分(a)、(b)、及び(c)をそれぞれ一部だけグライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて還元性末端を、ピリジル−(2)−アミノ化(PA化)し、各PA化糖(PA−a)、(PA−b)、及び(PA−c)を得た。(PA−a)、(PA−b)、及び(PA−c)をHPLCにより分析した。
なお、HPLCの条件は下記によった。
(ア)分子量分画カラムを用いたHPLC分析
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:SHODEX SB−803(4.6×250mm)(昭和電工社製)
溶離液:0.2M塩化ナトリウム:ジメチルスルホキシド=9:1
検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出
流速:1ml/分
カラム温度:50℃
(イ)逆相カラムを用いたHPLC分析
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:L−カラム(4.6×250mm)〔(財)化学薬品検査協会〕
溶離液:50mM酢酸−トリエチルアミン(pH5.5)
検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出
流速:1ml/分
カラム温度:40℃
図5、6、及び7には各々ピリジル−(2)−アミノ化糖化合物(PA−a)、(PA−b)、及び(PA−c)のHPLCの各溶出パターンを示し、図において縦軸は相対蛍光強度、横軸は保持時間(分)を示す。
下記に式(I)、式(II)、及び式(III)で表される化合物、すなわち(a)、(b)、及び(c)の物性を示す。
図8に(a)の、図9に(b)の、図10に(c)のマスのスペクトルを示し、図11に(a)の、図12に(b)の、図13に(c)のマスマスのスペクトルを示し、各図において縦軸は相対強度(%)、横軸はm/z値を示す。
更に図14は(a)の、図15は(b)の、図16は(c)の1H−NHRスペクトルを示し、各図において縦軸はシグナルの強度、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。
なお、1H−NHRでの化学シフト値はHODの化学シフト値を4.65ppmとして表した。
(a)の物性
分子量 564
MS m/z 563〔M−H+〕−
MS/MS m/z 97〔HSO4〕−、157〔不飽和D−グルクロン酸−H2O−H+〕−、175〔不飽和D−グルクロン酸−H+〕−、225〔L−フコース硫酸−H2O−H+〕−、243〔L−フコース硫酸−H+〕−、319〔不飽和D−グルクロン酸とD−マンノースが結合したもの−H2O−H+〕−、405〔M−不飽和D−グルクロン酸−H+〕−、483〔M−SO3−H+〕−
1H−NHR(D2O)
δ5.78(1H,d,J=3.7Hz,4″−H)、5.26(1H,d,J=1.2Hz,1−H)、5.12(1H,d,J=4.0Hz,1′−H)、5.03(1H,d,J=6.1Hz,1″−H)、4.47(1H,d−d,J=3.4,10.4Hz,3′−H)、4.21(1H,br−s,2−H)、4.12(1H,m,5′−H)、4.10(1H,d−d,J=3.7,5.8Hz,3″−H)、4.03(1H,d,J=3.4Hz,4′−H)、3.86(1H,m,3−H)、3.83(1H,d−d,J=4.0,10.4Hz,2′−H)、3.72(1H,m,4−H)、3.72(1H,m,5−H)、3.70(2H,m,5−CH2のH2)、3.65(1H,d−d,J=5.8,6.1Hz,2″−H)、1.08(3H,d,J=6.7Hz,5′−CH3のH3)
糖組成 L−フコース:不飽和D−グルクロン酸:D−マンノース=1:1:1(各1分子)
硫酸塩 1分子(L−フコースの3位)
なお、1H−NMRにおけるピークの帰属の番号は下記式(IV)の通りである。
(b)の物性
分子量 724
MS m/z 723〔M−H+〕−、361〔M−2H+〕2-
MS/MS m/z 97〔HSO4〕−、175〔不飽和D−グルクロン酸−H+〕−、243〔L−フコース硫酸−H+〕−、321〔M−SO3−2H+〕-2、405〔M−不飽和D−グルクロン酸−2SO3−H+〕−、417(M−L−フコース−2SO3−H+〕−
1H−NMR(D2O)
δ5.66(1H,d,J=3.4Hz,4″−H)、5.27(1H,d,J=7.3Hz,1″−H)、5.22(1H,d,J=1.8Hz,′−H)、5.21(1H,d,J=3.7Hz,1′−H)、4.50(1H,d,J=3.1Hz,4′−H)、4.32(1H,q,J=6.7Hz,5′−H)、4.27(1H,d−d,J=3.7,10.4Hz,2′−H)、4.21(1H,d−d,J=3.4,6.7Hz,3″−H)、4.18(1H,d−d,J=1.8,11.0Hz,5−CHのH)、4.15(1H,br−s,2−H)、4.10(1H,d−d,J=5.8,11.0Hz、5−CHのH)、3.99(1H,d−d,J=3.1,10.4Hz,3′−H)、3.90(1H,m,5−H)、3.81(1H,m,3−H)、3.82(1H,m,4−H)3.54(1H,br−t,J=7.3Hz,2″−H)、1.11(3H,d,J=6.7Hz,5′−CH3のH3)
糖組成 L−フコース:不飽和D−グルクロン酸:D−マンノース=1:1:1(各1分子)
硫酸塩 3分子(L−フコースの2位と4位及びD−マンノースの6位)
なお、1H−NMRにおけるピークの帰属の番号は下記式(V)の通りである。
(c)の物性
分子量 1128
MS m/z 1127〔M−H+〕−
MS/MS m/z 97〔HSO4〕−、175〔不飽和D−グルクロン酸−H+〕−、225〔L−フコース硫酸−H2O−H+〕−、243〔L−フコース硫酸−H+〕−、371〔M−不飽和D−グルクロン酸−L−フコース−SO3−2H+〕2-、405〔硫酸化L−フコースとD−マンノースが結合したもの−H+〕−、721〔M−D−マンノース−L−フコース−SO3−H2O−H+〕−
1H−NMR(D2O)
δ5.69(1H,d,J=3.7Hz,(4)″−H)、5.34(1H,s,(1)−H)、5.16(1H,s,1−H)、5.10(1H,d,J=4.0z,(1)′−H)、5.50(1H,d,J=3.7Hz,1′−H)、4.93(1H,d,J=6.4Hz,(1)″−H)、4.50(1H,d−d,J=3.4,10.7Hz,3′−H)、4.47(1H,d−d,J=3.4,10.4Hz,(3)′−H)、4.39(1H,d,J=7.9Hz,1″−H)、4.33(1H,br−s,(2)−H)、4.14(1H,m,2−H)、4.12(1H,m,(3)″−H)、4.12(1H,m,5′−H)、4.12(1H,m,(5)′−H)、4.04(1H,m,4′−H)、4.03(1H,m,(4)′−H)、3.85(1H,m,2′−H)、3.85(1H,m,(2)′−H)、3.82(1H,m,3−H)、3.82(1H,m,(3)−H)、3.73(1H,m,4−H)、3.73(1H,m,5−H)、3.73(1H,m,(4)−H)、3.70(2H,m,5−CH2のH2)、3.70(2H,m,(5)−CH2のH2)、3.67(1H,m,5″−H)、3.62(1H,m,4″−H)、3.62(1H,m,(2)″−H)、3.62(1H,m,(5)−H)、3.51(1H,t,J=8.9Hz,3″−H)、3.28(1H,t,J=7.9Hz,2″−H)、1.09(3H,d,J=6.7Hz,(5)′−CH3のH3)、1.07(1H,d,J=6.7Hz,5′−CH3のH3)
糖組成 L−フコース:不飽和D−グルクロン酸:D−グルクロン酸:D−マンノース=2:1:1:2(L−フコースとD−マンノース各2分子と不飽和D−グルクロン酸とD−グルクロン酸各1分子)
硫酸塩 2分子(各L−フコースの3位)
なお、1H−NMRにおけるピークの帰属の番号は下記式(VI)の通りである。
得られたフコース硫酸含有多糖−Uに上記エンド型フコイダン分解酵素を作用させると反応の進行と共に脱離反応が起こって230nmの吸光度が増加するが、脱離反応の生成物となる不飽和ヘキスロン酸基が主要反応生成物のすべてにあることから得られたフコース硫酸含有多糖−Uの分子内にヘキスロン酸とマンノースが交互に結合した糖鎖の存在が示唆された。得られたフコース硫酸含有多糖−Uの構成糖の多くはフコースであるためフコース硫酸含有多糖−Uは一般の多糖により酸に分解され易い。一方、ヘキスロン酸やマンノースの結合は比較的酸に強いことが知られている。本発明者らはガゴメ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物の分子内に存在するヘキスロン酸とマンノースが交互に結合している糖鎖中のヘキスロン酸の種類を明らかにするためにカーボハイドレート リサーチ、第125巻、第283〜290頁(1984)の方法を参考にして、まずフコース硫酸含有多糖混合物を0.3Mのシュウ酸に溶解し100℃、3時間処理したものを分子量分画し、分子量が3000以上の画分を集め、更に陰イオン交換樹脂により吸着分を集めた。この物質を凍結乾燥後4Nの塩酸で酸加水分解し、pH8に調整後、PA化し、HPLCによりウロン酸の分析を行った。なおHPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:パルパックタイプN(4.6mm×250mm)(宝酒造社製)
溶離液:200mM酢酸−トリエチルアミン緩衝液(pH7.3):アセトニトリル=25:75
検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出
流速:0.8ml/分
カラム温度:40℃
なお、PA化ヘキスロン酸の標準物質はグルクロン酸はシグマ社製、ガラクツロン酸は和光純薬社製、イズロン酸はシグマ社製の4−メチルウンベリフェリルα−L−イズロニドを加水分解したもの、マンヌロン酸及びグルロン酸はアクタ・ケミカ・スカンヂナヴィカ(Acta Chemica Scandinavica)、第15巻、第1397〜1398頁(1961)記載の方法に従い、和光純薬社製のアルギン酸を加水分解後陰イオン交換樹脂で分離したものをPA化することにより得た。
この結果、上記フコース硫酸含有多糖混合物の糖鎖中に含まれるヘキスロン酸はグルクロン酸のみであることが判明した。
更に上記糖類の加水分解物中のグルクロン酸を陰イオン交換樹脂によりD−マンノースと分離し凍結乾燥後その比旋光度を測定したところ右旋性でありグルクロン酸はD−グルクロン酸であることが判明した。
また、ガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖混合物をあらかじめ上記のエンド型フコイダン分解酵素で処理したものについても上記と同様にシュウ酸で酸加水分解したが、D−グルクロン酸とD−マンノースが交互に結合したポリマーは検出されなかった。このことから、上記のエンド型フコイダン分解酵素が脱離反応により切断するフコース硫酸含有多糖の骨格構造はD−グルクロン酸とD−マンノースが交互に結合した構造を持つことが判明した。
更に、D−グルクロン酸とD−マンノースのそれぞれの結合位置とグリコシド結合のアノメリック配置を調べるため、シュウ酸分解により得られたポリマーをNMR分析した。
ポリマーのNMRの測定結果を以下に示す。但し、1H−NMRでの化学シフト値はトリエチルアミンのメチル基の化学シフト値を1.13ppmに、13C−NMRではトリエチルアミンのメチル基の化学シフト値を9.32ppmとして表した。
1H−NMR(D2O)
δ5.25(1H,br−s,1−H)、4.32(1H,d,J=7.6Hz,1′−H)、4.00(1H,br−s,2−H)、3.71(1H,m,5′−H)、3.69(1H,m,5−CHのH)、3.68(1H,m,3−H)、3.63(1H,m,5−CHのH)、3.63(1H,m,4′−H)、3.57(1H,m,4−H)、3.54(1H,m,3′−H)、3.53(1H,m,5−H)、3.25(1H,t,J=8.5Hz,2′−H)
13C−NMR(D2O)
δ175.3(5′−COOHのC)、102.5(1′−C)、99.6(1−C)、78.5(2−C)、77.9(4′−C)、77.0(3′−C)、76.7(5′−C)、73.9(5−C)、73.7(2′−C)、70.6(3−C)、67.4(4−C)、61.0(5−CH2OHのC)
なお、ピークの帰属の番号は下記式(VII)の通りである:
D−グルクロン酸の1位の立体配置はそのビシナル結合定数が7.6Hzであることからβ−D−グルクロン酸であると決定した。
また、マンノースの1位の立体配置はその化学シフト値から5.25ppmであることからα−D−マンノースであると決定した。
構成糖の結合様式は1H検出異種核検出法であるHMBC法を用いて行った。1H−NMRの帰属にはDQF−COSY法及びHOHAHA法を、13C−NMRの帰属にはHSQC法を用いた。
HMBCスペクトルにより1−Hと4′−Cの間及び4′−Hと1−Cの間、1′−Hと2−Cの間及び2−Hと1′−Cの間にそれぞれクロスピークが認められた。このことからD−グルクロン酸はβ結合でD−マンノースの2位に、D−マンノースはα結合でD−グルクロン酸の4位にそれぞれ結合していることが明らかとなった。
上記の結果を考え併せると、(a)は、還元末端残基であるD−マンノースに不飽和D−グルクロン酸と、硫酸基が結合したL−フコースが結合した構造を持つこと、(b)は硫酸基が結合した還元末端残基であるD−マンノースに不飽和D−グルクロン酸と、2個の硫酸基が結合したL−フコースが結合した構造を持つこと、(c)は還元末端残基であるD−マンノースにD−グルクロン酸と、硫酸基が結合したL−フコースが結合し、そのD−グルクロン酸にD−マンノースが結合し、更にそのD−マンノースに不飽和D−グルクロン酸と、硫酸基が結合したL−フコースが結合した構造を持つことが判明した。
以上、得られたフコース硫酸含有多糖−Uは、D−グルクロン酸とD−マンノースが交互に結合した構造を持ち、少なくとも1つ以上のD−マンノースにL−フコースが結合している構造を有する。
また、下記一般式(VIII)で表される部分構造を有する(但し、式中の少なくとも1つのアルコール性水酸基は硫酸エステル化しており、またnは1以上の整数を表す)。
本発明により、本発明のフコース硫酸含有多糖−Fと分離され、純化されたフコース硫酸含有多糖−Uが提供される。本発明のフコース硫酸含有多糖ーUは構成糖としてウロン酸を含有し、フラボバクテリウム sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化し、少なくとも上記式(I)、(II)、(III)で表される化合物より選択される1種以上の化合物が生成する。その分子量、分子量分布、糖組成は本発明のフコース硫酸含有多糖−Uをなんら限定するものではなく、任意の分子量、分子量分布のフコース硫酸含有多糖−Uを調製することができ、糖組成等の理化学的性質が明確なフコース硫酸含有多糖を提供することができる。
本発明のフコース硫酸含有多糖−Uはフコース硫酸含有多糖−Fの有する強い抗凝血活性を有さず、抗凝血活性を実質上示さないフコース硫酸含有多糖が提供される。本発明のフコース硫酸含有多糖−Uは純化されたフコース硫酸含有多糖として制がん剤、抗転移剤、発がん予防剤等に使用でき、また抗フコース硫酸含有多糖抗体の抗原としても有用である。更にこのフコース硫酸含有多糖−Uより、上記式(I)、(II)、(III)等の構造を有するオリゴ糖が製造でき、これらの新規化合物の製造にも有用である。
次に本発明のフコース硫酸含有多糖−F及びその製造方法について記載する。
本発明の方法を用いて本発明のフコース硫酸含有多糖−Fを製造する際にはフコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を有する分解酵素をフコース硫酸含有多糖混合物に作用させればよく、酵素反応が終了後低分子化したフコース硫酸含有多糖−Uを限外ろ過などで除去すればよい。上記分解酵素はフコース硫酸含有多糖−Uを選択的に分解できる酵素であればいかなる酵素でもよいが、具体例としては例えば、フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082株(FERM BP−5402)が生産する上記のエンド型フコイダン分解酵素が挙げられる。
本酵素を作用させる場合は酵素反応が有利に進むように基質濃度や温度、pH等を設定すればよいが、基質濃度は通常0.1から10%程度、温度は20から40℃付近、pHは6から9付近が望ましい。
また、フコース硫酸含有多糖混合物を培地に添加し、フコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を有する分解酵素生産能を有する微生物をその培地で培養し、培養後の培地から精製してもよい。使用する微生物はフコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を有する分解酵素を生産する微生物であればいかなる微生物でもよいが、具体的には上記記載のフラボバクテリウム sp.SA−0082株(FERM BP−5402)又はフコイダノバクター マリナス(Fucoidanobacter marinus)SI−0098株(FERM BP−5403)が挙げられる。
培地に加える栄養源は使用する菌株が利用し、該分解酵素を生産するものであればよく、炭素源としては例えばフコイダン、海藻粉末、アルギン酸、フコース、グルコース、マンニトール、グリセロール、サッカロース、マルトース、ラクトース、デンプン等が利用でき、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、カザミノ酸、コーンスティープリカー、肉エキス、脱脂大豆、硫安、塩化アンモニウム等が適当である。その他にナトリウム塩、リン酸塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩等の無機質、及び金属塩類を加えてもよい。
また、培養条件は使用する菌株、培地組成等に応じ、フコース硫酸含有多糖−Uの分解活性が最大になるように設定するのはもちろんのことであるが、一般に培養温度は15〜30℃、培地のpHは5〜9で、5〜72時間の通気かくはん培養を行えばよい。培養終了後、低分子化したフコース硫酸含有多糖−Uや培地中のフコース硫酸含有多糖−F以外の成分は限外ろ過などで除去すればよい。
なお、上記のフコイダノバクター マリナスSI−0098株は、青森県の海水中より本発明者らが新たに検索して得た菌株で、その菌学的性質は次の通りである。
1.フコイダノバクター マリナス SI−0098
a.形態的性質
(1)本菌は双球菌(短かん菌)である。
幅 0.5〜0.7μm
長さ 0.5〜0.7μm
(2)胞子の有無 なし
(3)グラム染色性 陰性
b.生理的性質
(1)生育の温度範囲
37℃以下で生育できる。好適な生育温度は15〜28℃である。
(2)酸素に対する態度 好気性
(3)カタラーゼ 陽性
(4)オキシダーゼ 陰性
(5)ウレアーゼ 陰性
(6)加水分解
デンプン 陽性
ゼラチン 陰性
カゼイン 陰性
エスクリン 陽性
(7)硝酸塩の還元 陰性
(8)インドールの生成 陰性
(9)硫化水素の生成 陽性
(10)ミルクの凝固 陰性
(11)ナトリウムの要求性 陽性
(12)塩類要求性
0%食塩培地での生育 陰性
1%食塩培地での生育 陰性
海水培地での生育 陽性
(13)キノン系 メナキノン7
(14)菌体内DNAのGC含量 61%
(15)細胞壁のジアミノピメリン酸 陰性
(16)グリコリル試験 陰性
(17)ヒドロキシ脂肪酸の存在 陽性
(18)OF−テスト O
(19)集落の色調 特徴的な集落色素を生成せず
(20)運動性 あり
(21)滑走性 なし
(22)鞭毛 極単毛
本菌株は、バージーズ マニュアル オブ ディターミネイティブ バクテリオロジー、第9巻(1994)に記載の基本分類によればグループ4(グラム陰性好気性かん菌及び球菌)に分類される。しかしながら本菌株は、電子伝達鎖にメナキノン7を有し、GC含量が61%の点でグループ4に属する菌と大いに異なる。基本的にグラム陰性細菌は電子伝達鎖にユビキノンを有し、グラム陽性細菌はメナキノンを有している。
グラム陰性細菌であるフラボバクテリウム属及びシトファーガ(Cytophaga)属は例外的に電子伝達鎖にメナキノンを有しているが、これらの属に属する細菌のGC含量は、土壌細菌であるシトファーガ アーベンシコラ(Cytophaga arvensicola)が43〜46%、海洋細菌であるシトファーガ ジフルエンス(Cytophaga diffluens)、シトファーガ ファーメンタンス(Cytophaga fermentans)、シトファーガ マリーナ(Cytophaga marina)、及びシトファーガ ウリギノーサ(Cytophags uliginosa)が42%であり、本菌株の性質とは全く異なる。更に、本菌株と既同定株の16SrDNA配列の相同性を比較したところ、最も相同性の高い既同定株ベルコミクロビウム スピノサム(Verrucomicrobium spinosum)においてもその相同性は、76.6%であった。16SrDNA配列の相同性が90%以下の場合、両細菌の属が異なることは一般に広く知られていることから、本発明者らは、本菌株は既存の属に属さない新属の細菌であると断定し、よって本菌株をフコイダノバクター マリナス SI−0098と命名した。
なお、上記菌株はFucoidanobacter marinus SA−0098と表示され、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所[日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305)]に平成7年3月29日よりFERM P−14873として寄託され、前記通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−5403(国際寄託への移管請求日:平成8年2月15日)として寄託されている。
本発明者らは前述のように0.6〜3Mの1種類又は2種類以上の塩類の存在下で本発明のフコース硫酸含有多糖−Fとフコース硫酸含有多糖−Uが酸性多糖凝集剤に対して全く異なる挙動を示すことも見出した。
例えば本発明の方法を用いて、フコース硫酸含有多糖混合物の水溶液から本発明のフコース硫酸含有多糖−Fを分離することができる。
まずフコース硫酸含有多糖混合物の水溶液に1種又は2種以上の塩類を添加しその総濃度を0.6〜3Mとする。添加する塩類は例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム等で特に限定されるものではない。こうして塩濃度を調整した後塩化セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤をこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し、沈殿を集めると本発明のフコース硫酸含有多糖−Fが得られる。
しかし上記塩濃度を2M超にすると本発明のフコース硫酸含有多糖−Fが塩化セチルピリジニウムにより沈殿を形成しにくくなるので注意を要する。本発明のフコース硫酸含有多糖−Fとフコース硫酸含有多糖−Uを分離する目的では通常1.5M程度の塩濃度で目的は達成できる(図1の説明参照)。
次に必要に応じてこの沈殿を洗浄後、沈殿中の塩化セチルピリジニウムを食塩飽和アルコールで洗い落とし、本発明のフコース硫酸含有多糖−Fを得る。こうして得られた本発明のフコース硫酸含有多糖−Fから色素を除くために、この沈殿を溶解後限外ろ過等を行っても良い。また脱塩後凍結乾燥すれば乾燥標品を得ることもできる。また、工程中防腐剤などを添加してもよい。
本発明者らは、前述の様にフコース硫酸含有多糖を陰イオン交換樹脂で精製する際に2価の陽イオンが共存すると単位樹脂量当りに吸着するフコース硫酸含有多糖量が増加し、フコース硫酸含有多糖の分離が良くなることも見出している。すなわち、本発明の方法を用いて本発明のフコース硫酸含有多糖−Fを製造する際には、まずフコース硫酸含有多糖混合物に2価の陽イオン源となる薬品を好ましくは1mM以上添加する。次に、陰イオン交換樹脂を2価の陽イオンを好ましくは1mM以上含む液で平衡化し、上記フコース硫酸含有多糖混合物を吸着させる。この陰イオン交換樹脂を平衡化した液で充分洗浄後、例えば塩化ナトリウムのグラジェントによりフコース硫酸含有多糖−Fを溶出させる。本方法を用いる場合、添加する2価陽イオンの濃度は1mM以上ならばよい。また本方法に用いる二価の陽イオン源となる薬品はカルシウム塩やバリウム塩が特にその効果が優れているが、特に限定されるものではなく、硫酸マグネシウム、塩化マンガン等も使用することができる。
本発明のフコース硫酸含有多糖−Fは例えば実施例8に記載のように得ることができる。以下、このフコース硫酸含有多糖の理化学的性質を示すが、本発明のフコース硫酸含有多糖−Fはこの例に限定されるものでは無い。
得られたフコース硫酸含有多糖−Fの分子量をセファクリスS−500を用いたゲルろ過法により求めたところ、約19万を中心とした分子量分布を示した(図17参照)。なお、図17において、縦軸はフェノール−硫酸法により測定した試料中の糖含量を480nmの吸光度で示し、横軸はフラクション ナンバーを示す。
また、ゲルろ過の条件を下記に示す。
カラムサイズ:3.08×162.5cm
溶媒:0.2Mの塩化ナトリウムと10%のエタノールを含む10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)
流速:1.5ml/分
サンプル濃度:0.25%
サンプル液量:20ml
分子量標準物質:Shodex STANDARD P−82(昭和電工社製)
次に、得られた本発明のフコース硫酸含有多糖−Fの成分を分析した。
まず、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第175巻、第595頁(1948)の記載に従いフコース量を定量した。
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Fの乾燥標品を1規定の塩酸に0.5%の濃度で溶解し、110℃で2時間処理し、構成単糖に加水分解した。次に、グライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて加水分解して得られた単糖の還元性末端をピリジル−(2)−アミノ化(PA化)し、HPLCにより構成糖の比率を調べた。なお、HPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所)
カラム:パルパックタイプA(4.6mm×150mm)
溶離液:700mMホウ酸緩衝液(pH9.0):アセトニトリル=9:1
検出:蛍光検出器F−1150(日立製作所製)にて励起波長310nm、蛍光波長380nmで検出。
流速:0.3ml/分
カラム温度:65℃
次に、アナリティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、第4巻、第330頁(1962)の記載に従いウロン酸量を定量した。
次に、バイオケミカル ジャーナル(Biochemical Journal)、第84巻、第106頁(1962)の記載に従い硫酸含量を定量した。
以上の結果、得られたフコース硫酸含有多糖−Fの構成糖はフコース、ガラクトースで、そのモル比は約10:1であった。ウロン酸及びその他の中性糖は実質的に含有されていなかった。また、フコースと硫酸基のモル比は約1:2であった。
1%のフコイダン−F溶液16mlと、50mMのリン酸緩衝液(pH8.0)12mlと4Mの塩化ナトリウム4mlと32mU/mlの前出のフラボバクテリウムsp.SA−0082(FERM BP−5402)由来のエンド型フコイダン分解酵素溶液8mlを混合し、25℃で48時間反応させた。反応による分解物の生成は認められず、その低分子化も認められなかった。
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Fのカルシウム塩のIRスペクトルをフーリェ変換赤外分光光度計JIR−DIAMOND20(日本電子社製)により測定したところ図18に示すスペクトルが得られた。なお、図18において縦軸は透過率(%)、横軸は波数(cm-1)を示す。
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Fのナトリウム塩のNMRスペクトルを500MHzの核磁気共鳴装置JNM−α500型核磁気共鳴装置(日本電子社製)により測定したところ、図19に示すスペクトルが得られた。
図19中、縦軸はシグナルの強度、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。なお、1H−NMRでの化学シフト値はHODの化学シフト値を4.65ppmとして表した。
1H−NMR(D2O)
5.30(フコースの1位のH)、1.19(フコースの5位のCH3のH)
次に、得られたフコース硫酸含有多糖−Fの凍結乾燥物の比旋光度を高速・高感度旋光計SEPA−300(堀場製作所製)により測定したところ、−135度であった。
本発明により、本発明のフコース硫酸含有多糖−Uと分離され、純化されたフコース硫酸含有多糖−Fが提供される。本発明のフコース硫酸含有多糖−Fは構成糖としてウロン酸を実質的に含有せず、フラボバクテリウムsp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化されない。その分子量、分子量分布、糖組成は本発明のフコース硫酸含有多糖−Fをなんら限定するものではなく、任意の分子量、分子量分布のフコース硫酸含有多糖−Fを調製することができ、糖組成、還元末端等の理化学的性質が明確で、硫酸化度が極めて高いフコース硫酸含有多糖−Fを提供することができる。
本発明のフコース硫酸含有多糖−Fは、実質上抗凝血活性を有さないフコース硫酸含有多糖−Uと分離しているため、強い抗凝血活性を有しており、該フコース硫酸含有多糖−F及び/又はその分解物は純化されたフコース硫酸含有多糖として抗凝血剤に使用でき、また抗フコース硫酸含有多糖抗体の抗原としても有用である。
本発明のフコース硫酸含有多糖、その分解物をがん細胞の培養液に1μg/ml以上の濃度で添加すれば、添加後1日から数日で癌細胞はアポトーシスを起こす。すなわち、本発明のフコース硫酸含有多糖、その分解物は強いアポトーシス誘発作用を有する。なお、これらの物質は正常細胞にはアポトーシスを誘発せず、毒性も示さない。特に、食用褐藻植物、ナマコ由来のフコース硫酸含有多糖、その分解物は安全性が高い。
本発明のアポトーシス誘発剤を製剤化するには、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を有効成分とし、これを公知の医薬用担体と組合せればよい。一般的には、本発明のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を薬学的に許容できる液状又は固体状の担体と配合し、かつ必要に応じて溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤とすることができる。またこれを使用前に適当な担体を添加することにより液状となし得る乾燥品とすることができる。
本発明のアポトーシス誘発剤は、経口剤、あるいは注射剤、点滴用剤等の非経口剤のいずれによっても投与することができる。
医薬用担体は、上記投与形態及び剤型に応じて選択することができ、経口剤の場合は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が利用される。また経口剤の調製に当っては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を配合することもできる。これらの具体例としては、以下に示す物が挙げられる。
(結合剤)デンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロール、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール。
(崩壊剤)デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース。
(界面活性剤)ラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80。
(潤沢剤)タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコール。
(流動性促進剤)軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム。
また、経口用の液剤としては、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤とすることができ、これらの各種剤型には矯味、矯臭剤、着色材を配合してもよい。
一方、非経口剤の場合は、常法に従い本発明の有効成分であるフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等に溶解ないし懸濁させ、必要に応じ、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を加えることにより調製される。
本発明のアポトーシス誘発剤は、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与される。投与方法も特に限定はなく、内用、外用及び注射によることができる。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与し得、外用剤には座剤等も包含される。
本発明のアポトーシス誘発剤の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的及びこれに適用される患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日当り1〜1000mg、好ましくは10〜200mgである。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で充分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
制がん作用を有する、本発明のフコース硫酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖−F及び/又はその分解物を有効成分とし、これを公知の医薬用担体と組合せ製剤化すれば制がん剤を製造することができる。制がん剤の製造は上記方法に準じ行うことができる。一般的には、本発明のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を薬学的に許容できる液状又は固体状の担体と配合し、かつ必要に応じて溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤であることができる。またこれを使用前に適当な担体の添加によって液状となし得る乾燥品とすることができる。
制がん剤としては、経口剤や、注射剤、点滴用剤等の非経口剤のいずれによっても投与することができる。
医薬用担体は、上記投与形態及び剤型に応じて選択することができ、上記アポトーシス誘発剤に準じ使用すれば良い。
制がん剤としては、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与される。投与方法も特に限定はなく、内用、外用及び注射によることができる。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与し得、外用剤には座剤等も包含される。
制がん剤としての投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的及びこれに適用される患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日当り1〜1000mg、好ましくは10〜200mgである。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で充分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。本発明の薬剤はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
発がん抑制作用を有する、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を有効成分とし、これを公知の医薬用担体と組合せ製剤化すれば発がん予防剤を製造することができる。発がん予防剤の製造は上記方法に準じ行うことができる。一般的には、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を薬学的に許容できる液状又は固体状の担体と配合し、かつ必要に応じて溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤とすることができる。またこれを使用前に適当な担体の添加によって液状となし得る乾燥品とすることができる。
発がん予防剤としては、経口剤や、注射剤、点滴用剤等の非経口剤のいずれによっても投与することができる。
医薬用担体は、上記投与形態及び剤型に応じて選択することができ、上記アポトーシス誘発剤に準じ使用すれば良い。
発がん予防剤としては、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与される。投与方法も特に限定はなく、内用、外用及び注射によることができる。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与し得、外用剤には座剤等も包含される。
発がん予防剤としての投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的及びこれに適用される患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日当り1〜1000mg、好ましくは10〜200mgである。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で充分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。本発明の薬剤はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
本発明のフコース硫酸含有多糖、その分解物は天然由来物質であり、マウスに経口投与を行っても毒性は認められない。
本発明の薬剤は感染症、免疫機能の低下又は昂進あるいはがん疾患、ウイルス性疾患等の治療剤として用いることが期待される。発がん予防剤として健康保持に使用することができる。また本発明のアポトーシス誘発方法は生体防御機構、免疫機能あるいはがん、ウイルス性疾患等との関係の研究、アポトーシス誘発阻害剤の開発等に有用である。特に、食用褐藻植物、食用ナマコから、本発明のフコース硫酸含有多糖、その分解物を調製すれば、これらは食品として長い歴史を有するものであり、これらから調製したフコース硫酸含有多糖、その分解物は、経口投与の場合において、極めて安全性の高いものである。
次にフコース硫酸含有多糖は極めて分子量が大きな硫酸化多糖であり、そのまま医薬品として用いるより、抗原性、均一性、抗凝血活性などの改善のため、フコース硫酸含有多糖をある程度分解することが必要とされているが、本発明により、フコース硫酸含有多糖−Fのみを選択的に分解する酵素、該酵素を作用させて得られるフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物が提供された。
本発明に使用される菌株としては、アルテロモナス(Alteromonas)属細菌に属し、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素生産能を有する菌株であればいかなる菌株でもよい。また、該エンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素生産能を有する菌株の具体例としては、例えば、アルテロモナスsp.SN−1009株が挙げられる。該菌株由来のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素をフコース硫酸含有多糖に作用させれば、本発明のフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物を得ることができる。
本菌株は青森県の海水中より本発明者らが新たに検索して得た菌株で、その菌学的性質は次の通りである。
a.形態的性質
(1)本菌は短かん菌である。
幅 約1μm
長さ 約2μm
(2)胞子の有無 なし
(3)グラム染色性 陰性
b.生理的性質
(1)生育の温度範囲
好適な生育温度は15−30℃である。4℃あるいは40℃では生育できない。
(2)酸素に対する態度 好気性
(3)カタラーゼ 陽性
(4)オキシダーゼ 陽性
(5)リパーゼ 陽性
(6)資化性
グルコース 陽性
マンノース 陰性
スクロース 陽性
ラクトース 陰性
セロビオース 陽性
メリビオース 陰性
マンニトール 陽性
グリセリン 陽性
メタノール 陰性
DL−リンゴ酸 陰性
コハク酸 陰性
フマル酸 陰性
クエン酸 陰性
サリシン 陰性
(7)加水分解
デンプン 陰性
ゼラチン 陽性
(8)硝酸塩の還元 陰性
(9)脱室反応 陰性
(10)アルギン酸の分解 陽性
(11)β−ヒドロキシ酪酸の利用 陰性
(12)ポリヒドロキシ酪酸の蓄積 陰性
(13)ナトリウムの要求性 陽性
(14)塩類要求性
0%食塩培地での生育 陰性
1%食塩培地での生育 陰性
海水培地での生育 陽性
(15)キノン系 ユビキノン8
(16)菌体内DNAのGC含量 36%
(17)OF−テスト O
(18)集落の色調 特徴的色素を生成せず
(19)発光性 陰性
(20)運動性 陽性
(21)鞭毛 極単毛
本菌株は、バージーズ マニュアル オブ システィマティック バクテリオロジー、第1巻、第343〜352頁(1984)、及びバージーズ マニュアル オブ ディターミネイティブ バクテリオロジー、第9巻 第75頁、第132〜133頁(1994)に記載されているアルテロモナス属細胞と同定した。しかしながら、本細菌の生理的性状は文献に記載されているいずれの菌種とも一致せずGC含量も低い値であった。そこで、本菌株をアルテロモナスsp.SN−1009と命名した。
なお上記菌株はAlteromonas sp.SN−1009と表示され、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所[日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305)]に平成8年2月13日よりFERM P−15436として寄託され、前記通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−5747(国際寄託への移管請求日:平成8年11月15日)として寄託されている。
本発明に使用する菌株の培地に加える栄養源は使用する菌株が利用し、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を生産するものであればよく、炭素源としては例えばフコース硫酸含有多糖、海藻粉末、アルギン酸、フコース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、グリセロール、サッカロース、マルトース等が利用でき、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、カザミノ酸、コーンスティープリカー、肉エキス、脱脂大豆、硫安、塩化アンモニウム等が適当である。その他にナトリウム塩、リン酸塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩等の無機質、及び金属塩類を加えてもよい。
また本菌株は上記栄養源を含んだ海水あるいは人工海水中で非常に良く生育する。
本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の生産菌を培養するに当り、生産量は培養条件により変動するが、一般に培養温度は、15℃〜30℃、培地のpHは6〜9がよく、5〜72時間の通気かくはん培養で本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の生産量は最高に達する。
培養条件は使用する菌株、培地組成等に応じ、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の生産量が最大になるように設定するのは当然のことである。
本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素は菌体中にも培養物上清中にも存在する。
上記のアルテロモナス sp.SN−1009を適当な培地で培養し、その菌体を集め、通常用いられる細胞破壊手段、例えば、超音波処理などで菌体を破砕すると無細胞抽出液が得られる。
次いで、この抽出液から通常用いられる精製手段により精製酵素標品を得ることができる。例えば、塩析、イオン交換カラムクロマト、疎水結合カラムクロマト、ゲルろ過等により精製を行い、他のフコイダン分解酵素を含まない純化された本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を得ることができる。
また、上述の培養液から菌体を除去した培養液上清中にも本酵素が大量に存在するので、菌体内酵素と同様の精製手段により精製することができる。
本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の化学的及び理化学的性質は次の通りである。
(i)作用:下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖、すなわちフコース硫酸含有多糖−Fに作用して、該フコース硫酸含有多糖−Fを低分子化させる。
(a)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。
(b)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により実質上低分子化されない。
下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖、すなわちフコース硫酸含有多糖−Uに作用しない。
(c)構成糖:ウロン酸を含有する。
(d)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化し、少なくとも下記式(I)、(II)、(III)より選択される少なくとも一種以上の化合物が生成する。
(ii)至適pH:本酵素の至適pHは7〜8付近である(図20)。
すなわち図20は本酵素のpHと相対活性の関係を表すグラフであり、縦軸は相対活性(%)、横軸はpHを示す。実線は、還元性末端をPA化したフコース硫酸含有多糖−F(PA−FF)を基質に用いた曲線であり、点線は下記(v)−(2)記載のフコース硫酸含有多糖−Fを基質に用いた場合の曲線である。
(iii)至適温度:本酵素の至適温度は30〜35℃付近である(図21)。
すなわち図21は、本酵素の温度と相対活性の関係を表すグラフであり、縦軸は相対活性(%)、横軸は温度(℃)を示す。実線は、還元性末端をPA化したフコース硫酸含有多糖−F(PA−FF)を基質に用いた場合の曲線であり、点線は下記(v)−(2)記載のフコース硫酸含有多糖−Fを基質に用いた場合の曲線である。
(iv)分子量:本酵素の分子量を、セファクリル(Sephacryl)S−200(ファルマシア社製)を用いたゲルろ過法により求めたところ、約10万であった。
(v)酵素活性の測定方法:
本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素活性の測定は次のようにして行った。
まず、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の基質となるフコース硫酸含有多糖−F、及びPA−FFを下記(1)から(3)の工程により調製した。
(1)カゴメ昆布フコース硫酸含有多糖混合物の調製
乾燥ガゴメ昆布2Kgを自由粉砕機M−2型(奈良機械製作所製)により粉砕し、4.5倍量の80%エタノール中で80℃、2時間処理後、ろ過した。残渣に対し、上記80%エタノール抽出、ろ過という工程をさらに3回繰り返し、エタノール洗浄残渣1870gを得た。残渣に36リットルの水を加え、100℃、2時間処理し、ろ過により抽出液を得た。抽出液の塩濃度を400mMの塩化ナトリウム溶液と同じにした後、5%のセチルピリジニウムクロリドをこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し、遠心分離した。その沈殿を、80%のエタノールで繰り返し洗浄し、セチルピリジニウムクロリドを完全に除去した後、3リットルの2M塩化ナトリウムに溶解し、不溶物を遠心分離で除去し、2Mの塩化ナトリウムで平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800を懸濁し、かくはん後ろ過し、樹脂を除いた。このろ液を、2Mの塩化ナトリウムで平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800のカラムにかけ、通過画分を限外ろ過器(ろ過膜の排除分子量10万)により脱塩及び低分子除去を行い、この際生じた沈殿を遠心分離により除去した。この上清を凍結乾燥して精製ガゴメ昆布フコース硫酸含有多糖混合物82.2gを得た。
(2)フコース硫酸含有多糖−Fの調製
上記のガゴメ昆布由来フコース硫酸含有多糖混合物6gを600mlの0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH6.0)に溶解後、あらかじめ0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH6.0)で平衡化した3600mlのDEAE−セファロースFFのカラムにかけ、0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH6.0)で充分カラムを洗浄後、0〜2Mの塩化ナトリウムのグラジエントで溶出した。
塩化ナトリウム濃度が0.75M以上で溶出してくるフコース硫酸含有多糖−F画分を集め、排除分子量10万の限外ろ過膜を装着した限外ろ過器で濃縮脱塩後凍結乾燥し、フコース硫酸含有多糖−Fの凍結乾燥標品を、3.3g得た。
(3)PA−FFの調製
上記のフコース硫酸含有多糖−Fの凍結乾燥標品12mgを水480μlに溶解し、12μlずつ36本に分注後、凍結乾燥しグライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて還元性末端を、PA化し、PA−FFを得た。得られたPA−FFを、15mlの10%のメタノールを含む10mMの酢酸アンモニウム溶液に溶解し、セルロファインGCL−300のカラム(40x900mm)によりゲルろ過し、高分子画分を集めた。得られた高分子画分をポアサイズ3500の透析膜を用いて充分透析して脱塩し、次にエバポレーターにより5mlに濃縮して本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素の基質用PA−FFとした。
また、こうして得られたPA−FFを、市販のピリジル−(2)−アミノ化フコース(宝酒造社製)の蛍光強度(励起波長320nm、蛍光波長400nm)と比較することにより定量したところ約40nmolであった。
上記(1)及び(2)の工程により得られたフコース硫酸含有多糖−Fを用いて本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の活性を測定するときは下記の要領で行った。
すなわち、2.5%のフコース硫酸含有多糖−F溶液12μlと、6μlの1M塩化カルシウム溶液と12μlの1M塩化ナトリウム溶液と、72μlの50mMの酢酸とイミダゾールとトリス−塩酸を含む緩衝液(pH7.5)と、18μlの本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖−F分解酵素とを混合し、30℃、3時間反応させた後、反応液を100℃、10分間処理し、遠心分離後、100μlをHPLCにより分析し、低分子化の程度を測定した。
対照として、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の代りに、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を溶解している緩衝液を用いて同様の条件により反応させたもの及びフコース硫酸含有多糖−F溶液の代りに水を用いて反応を行ったものを用意し、それぞれ同様にHPLCにより分析した。
1単位の酵素は、上記反応系において1分間に1μmolのフコース硫酸含有多糖−Fのフコシル結合を切断する酵素量とする。切断されたフコシル結合の定量は下記式により求めた。
(12×2.5)/100:反応系中に添加したフコース硫酸含有多糖−F(mg)
MF:基質フコース硫酸含有多糖−Fの平均分子量
M:反応生成物の平均分子量
(MF/M)−1:1分子のフコース硫酸含有多糖−Fが酵素により切断された数
180:反応時間(分)
0.01:酵素液量(ml)
0.12:反応液総量(ml)
なお、HPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:OHpak KB−804(8mm×300mm)(昭和電工社製)
溶離液:5mMのアジ化ナトリウム、25mMの塩化カルシウム、及び50mMの塩化ナトリウムを含む25mMのイミダゾール緩衝液(pH8)
検出:視差屈折率検出器(Shodex RI−71、昭和電工社製)
流速:1ml/分
カラム温度:25℃
反応生成物の平均分子量の測定のために、市販の分子量既知のプルラン(STANDARD P−82、昭和電工社製)を上記のHPLC分析と同条件で分析し、プルランの分子量とOHpak KB−804の保持時間との関係を曲線に表し、上記酵素反応生成物の分子量測定のための標準曲線とした。
上記(1)〜(3)の工程により得られたPA−FFを用いて本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の活性を測定するときは下記の要領で行った。
すなわち、8pmol/μlのPA−FF溶液2μlと、5μlの1M塩化カルシウム溶液と10μlの1M塩化ナトリウム溶液と、23μlの水と、50μlの50mMの酢酸とイミダゾールとトリス−塩酸を含む緩衝液(pH8.2)と、10μlの本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素とを混合し、30℃、3時間反応させた後、反応液を100℃、10分間処理し、遠心分離後、80μlをHPLCにより分析し、低分子化の程度を測定した。
対照として、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の代りに、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を溶解している緩衝液を用いて同様の条件により反応させたもの及びPA−FF溶液の代りに水を用いて反応を行ったものを用意し、それぞれ同様にHPLCにより分析した。
1単位の酵素は、上記反応系において1分間に1μmolのフコース硫酸含有多糖のフコシル結合を切断する酵素量とする。切断されたフコシル結合の定量は下記式により求めた。
16x10-6:反応系中に添加したPA−FF(μmol)
MF:基質PA−FFの平均分子量
M:反応生成移の平均分子量
(MF/M)−1:1分子のフコース硫酸含有多糖−Fが酵素により切断された数
180:反応時間(分)
0.01:酵素液量(ml)
なお、HPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:OHpak SB−803(8mm×300mm)(昭和電工社製)
溶離液:5mMのアジ化ナトリウム及び10%のジメチルスルホキシドを含む200mMの塩化ナトリウム溶液
検出:蛍光検出器F−1150(日立製作所製)にて励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出。
流速:1ml/分
カラム温度:50℃
反応生成物の平均分子量の測定のために、市販の分子量既知のプルラン(STANDARD P−82、昭和電工社製)をグライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて還元性末端を、PA化し、様々な分子量のPA化プルランを得た。得られた様々な分子量のPA化プルランを上記のHPLC分析と同条件で分析し、プルランの分子量とOHpak SB−803の保持時間との関係を曲線に表し、上記酵素反応生成物の分子量測定のための標準曲線とした。
タンパク質の定量は、酵素液の280nmの吸光度を測定することにより行った。その際1mg/mlのタンパク質溶液の吸光度を1.0として計算した。
本発明者らは、以下に述べるように、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の作用機作を決定した。
(1)エンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素によるフコース硫酸含有多糖−Fの分解及び分解物の調製
精製したガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖−Fに本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を作用させ、分解物の調製を行った。
まず、フコース硫酸含有多糖分解酵素の生産を行った。すなわち、アルテロモナスsp.SN−1009(FERM BP−5747)を、グルコース0.25%、ペプトン1.0%、酵母エキス0.05%を含む人工海水(ジャマリンラボラトリー社製)pH8.2からなる培地600mlを分注して殺菌した(120℃、20分)2リットルの三角フラスコに接種し、25℃で26時間培養して種培養液とした。ペプトン1.0%、酵母エキス0.02%、前記のガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖0.2%、及び消泡剤(信越化学工業社製KM70)0.01%を含む人工海水pH8.0からなる培地20リットルを30リットル容のジャーファーメンターに入れて120℃で20分殺菌した。冷却後、上記の種培養液600mlを接種し、24℃で24時間、毎分10リットルの通気量と毎分250回転のかくはん速度の条件で培養した。培養終了後、培養液を遠心分離して菌体及び培養上清を得た。得られた培養上清を、分画分子量1万の限外ろ過器により濃縮後85%飽和硫安塩析し、生じた沈殿を遠心分離により集め、10分の1濃度の人工海水を含む20mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)に対して充分透析し、600mlの粗酵素を得た。
こうして得られた粗酵素のうち40mlと、人工海水44mlと、前記のフコース硫酸含有多糖−F510mgと水36mlを混合し、pHを8に調整し、25℃で48時間反応後、セルロファインGCL−300によりゲルろ過を行い、4画分に分け、分子量の大きな方から順に、F−Fd−1(分子量25000超)、F−Fd−2(分子量25000〜12000超)、F−Fd−3(分子量12000〜6500超)、及びF−Fd−4(分子量6500以下)とした。これらの4画分を脱塩後凍結乾燥し、乾燥品をそれぞれ170mg、270mg、300mg、及び340mg得た。
フコース硫酸含有多糖−Fの酵素分解物、すなわち低分子化物のセルロファインGCL−300によるゲルろ過の結果を図22に示す。図22において縦軸は480nmの吸光度(フェノール硫酸法による発色量)、横軸はフラクションナンバーを示し、1フラクション10mlである。カラムボリュームは1075mlであり、溶出液は10%のエタノールを含む0.2Mの酢酸アンモニムウ溶液である。
図22中、白丸印はフコース硫酸含有多糖−Fの酵素分解物を、黒三角印は酵素分解前のフコース硫酸含有多糖−Fをそれぞれゲルろ過した結果を表す。
上記セルロファインGCL−300の結果から、本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素の反応生成物の分子量分布は約1000〜3万程度であることが判明した。
(2)酵素反応生成物の還元末端糖及び中性糖組成の分析
上記のF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4の一部をグライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて還元性末端をPA化し、得られた各PA化糖(PA−F−Fd−1)、(PA−F−Fd−2)、(PA−F−Fd−3)、及び(PA−F−Fd−4)を4規定の塩酸、100℃、3時間処理により加水分解し、HPLCにより還元末端糖を調べた。
なお、HPLCの条件は下記によった。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:パルパックタイプA(4.6mm×150mm)(宝酒造社製)
溶離液:700mMほう酸緩衝液(pH9):アセトニトリル=9:1
検出:蛍光検出器F−1150(日立製作所製)にて励起波長310nm、蛍光波長380nmで検出。
流速:0.3ml/分
カラム温度:65℃
この結果、(PA−F−Fd−1)、(PA−F−Fd−2)、(PA−F−Fd−3)、及び(PA−F−Fd−4)の還元末端糖は総てフコースであった。
また、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4の中性糖組成を下記の方法により測定した。なお、基質に用いたフコース硫酸含有多糖−Fを硫酸加水分解後グライコタッグ及びグライコタッグ リージェント キットを用いて構成糖の還元性末端をPA化し、上記の酵素反応生成物の還元性末端を分析したときと同じHPLC条件で分析したところ、フコースとガラクトースのみしか検出されず、それらの立体配位はそれぞれL及びDであったので生成物に関してもL−フコースとD−ガラクトースのみを測定した。
すなわち、構成糖の一つであるD−ガラクトースの含量を調べるためにF−キット 乳糖/ガラストース(ベーリンガーマンハイムヤマノウチ社製)を用い、説明書に従ってD−ガラクトースのみを測定できる反応系を構築し、別に4規定の塩酸で100℃、2時間加水分解したF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4を中和後この反応系で測定した。
更にもう一方の構成糖であるL−フコースを定量するために、クリニカル ケミストリー(Clinical Chemistry)、第36巻、第474〜476頁(1990)記載の方法に従って、別に4規定の塩酸で100℃、2時間加水分解したF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4を中和後この反応系で測定した。
以上の結果L−フコースとD−ガラクトースの比率はF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4それぞれおよそ100:44、100:27、100:5、及び100:1であった。
以上の結果をまとめると、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素は、フコース硫酸含有多糖−Fに作用してフコシル結合を加水分解し、分子量約1000〜3万程度の低分子化物を生成し、その低分子化物は分子量が大きいほどガラクトース含量が高いことが判明した。なお、低分子化物の還元性末端はすべてL−フコースであった。
次に、本酵素の基質特異性を調べるためにフコース硫酸含有多糖−Uに本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素を作用させた。
すなわち、2.5%のフコース硫酸含有多糖−U溶液12μlと、6μlの1M塩化カルシウム溶液と12μlの1M塩化ナトリウム溶液と、72μlの50mMのイミダゾール緩衝液(pH7.5)と、18μlの本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素(1.6mU/ml)とを混合し、30℃、3時間反応させた後、反応液を100℃、10分間処理し、遠心分離後、100μlをHPLCにより分析し、低分子化の程度を測定した。
対照として、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の代わりに、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を溶解している緩衝液を用いて同様の条件により反応させたものを用意し、同様にHPLCにより分析した。
なお、HPLCの条件は次の通りである。
装置:L−6200型(日立製作所製)
カラム:OHpak KB−804(8mm×300mm)(昭和電工社製)
溶離液:5mMのアジ化ナトリウム、25mMの塩化カルシウム、及び50mMの塩化ナトリウムを含む25mMのイミダゾール緩衝液(pH8)
検出:視差屈折率検出器(Shodex RI−71、昭和電工社製)
流速:1ml/分
カラム温度:25℃
その結果、本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素は、フコース硫酸含有多糖−Uを全く低分子化しなかった。
既述のように、本発明は、上記した本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素と、カルシウム源とを含有する酵素組成物に関する。
使用可能なカルシウム源としては、固形組成物においては、例えば塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウムのようなカルシウム塩、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、あるいはそれらの水和物などが挙げられる。他方、水、アルコール等の溶媒中に溶解、懸濁、乳化させた液状組成物においては、カルシウム源は、前記したような単体であっても、あるいは溶解などによりイオン化した状態のものであってもよい。
これらカルシウム源は、当該酵素を賦活又は安定化するのが有効である。
したがって、上記酵素組成物は上記したカルシウム源の作用効果を阻害しない範囲で、用途に応じて常用の添加剤を含有していてもよい。
本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素をフコース硫酸含有多糖−F含有物に作用させることによって、フコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物を調製することができる。フコース硫酸含有多糖−F含有物としては、例えばフコース硫酸含有多糖−F精製品でもよく、また前述フコース硫酸含有多糖混合物でもよく、更に褐藻類海藻の水性溶媒抽出物でもよい。フコース硫酸含有多糖−F含有物の溶解は通常の方法で行えばよく、溶解液中のフコース硫酸含有多糖濃度はその最高溶解濃度でもよいが、通常はその操作性、酵素力価を考慮して選定すればよい。
フコース硫酸含有多糖−F溶解液としては水、緩衝液等より目的に応じて選択すればよい。溶解液のpHは通常中性で、酵素反応は通常30℃付近で行う。酵素量、反応時間などを調整することによって、低分子化物の分子量を調整することができる。
次に低分子化物を分子量分画することによって、更に均一な分子量分布のフコース硫酸含有多糖−F低分子化物を調製することができる。分子量分画は通常よく使用されている方法を適用することができ、例えばゲルろ過法や分子量分画膜を使用すればよい。低分子化物は、必要に応じて更にイオン交換樹脂処理、活性炭処理などの精製操作を行ってもよく、必要に応じて脱塩処理、無菌処理を行い、凍結乾燥することによって、本発明の低分子化物の乾燥品を調製することもできる。
実施例
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。なお、実施例における%は重量%を意味する。
実施例1
ガゴメ昆布を充分乾燥後、乾燥物2kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リットルの80%エタノールに懸濁し80℃、2時間処理した。処理後ろ紙によりろ過し残渣を得た。この残渣に対して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返しエタノール洗浄残渣を得た。この残渣を40リットルの水に懸濁後、95℃、2時間処理し、ろ過した。残渣を熱水で洗浄し、ガゴメ昆布のフコース硫酸含有多糖を含む抽出液36リットルを得た。得られた抽出液1.8リットルを凍結乾燥し、フコース硫酸含有多糖標品15.4gを得た。次に残りの抽出液に0.4Mとなるように食塩を加え、更に5%の塩化セチルピリジニウムをそれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し遠心分離により沈殿を集めた。この沈殿を3リットルの0.4M食塩水に懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後沈殿に1リットルの4M食塩水を添加し、よくかくはん後エタノールを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し、遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩水3リットルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ、非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖混合物の重量は76gであった。
実施例2
マ昆布を充分乾燥後、乾燥物2kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リットルの80%エタノールに懸濁し、80℃、2時間処理した。処理後ろ紙によりろ過し、残渣を得た。この残渣に対して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返し、エタノール洗浄残渣を得た。この残渣を40リットルの水に懸濁液、95℃、2時間処理し、ろ過した。残渣を熱水で洗浄し、マ昆布のフコース硫酸含有多糖を含む抽出液36リットルを得た。得られた抽出液に0.4Mとなるように食塩を加え、更に5%の塩化セチルピリジニウムをそれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し、遠心分離により沈殿を集めた。この沈殿を3リットルの0.3M食塩水に懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後沈殿に1リットルの4M食塩水を添加し、よくかくはん後エタノールを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し、遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩水3リットルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ、非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖混合物の重量は52gであった。
実施例3
マ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物の抽出
マ昆布を充分乾燥後、2kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リットルの80%エタノールに懸濁し80℃、2時間処理した。処理後ろ紙によりろ過し残渣を得た。この残渣に対して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返しエタノール洗浄残渣を得た。この残渣を36リットルの0.2M酢酸カルシウム溶液に懸濁後、95℃、2時間処理し、ろ過した。残渣を4リットルの0.2M酢酸カルシウム溶液で洗浄し、マ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物の抽出液36リットルを得た。
実施例4
マ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物の調製
実施例3で得られたろ液に、5%の塩化セチルピリジニウムを、それ以上沈殿が生じなくなるまで添加し遠心分離により沈殿を集めた。この沈殿を3リットルの0.3M食塩水に懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後沈殿に1リットルの4M食塩水を添加しよくかくはん後エタノールを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩水3リットルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖混合物の重量は52gであった。また、このフコース硫酸含有多糖混合物は多糖性の樹脂に吸着する着色性物質を含まなかった。
実施例5
実施例4記載のフコース硫酸含有多糖混合物の凍結乾燥物を1gずつ4つ秤量し、それぞれ水、0.2Mの塩化ナトリウム、0.2Mの塩化カルシウム、0.2Mの塩化マグネシウムに溶解した。次に、500mlのDEAE−セファロースFFのカラムを4本用意し、内2本を0.2Mの塩化ナトリウム、1本を0.2Mの塩化カルシウム、1本を0.2Mの塩化マウネシウムでそれぞれ平衡化した。0.2Mの塩化ナトリウムで平衡化したカラムの一方をカラムの10倍量の水で洗浄した。水、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムにそれぞれ溶解したフコース硫酸含有多糖混合物をそれぞれ水、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムでそれぞれ平衡化したDEAE−セファロースFFのカラムにかけ、それぞれを平衡化に用いた溶液で充分に洗浄し、次に、0から4Mの塩化ナトリウムのグラジエントで溶出させた。この結果、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを用いた系のみカラムにかけたフコース硫酸含有多糖混合物の総量がカラムに吸着した。水及び食塩で平衡化したカラムには0.4g相当のフコース硫酸含有多糖しか吸着しなかった。
また、いずれのカラムにおいても、本発明のフコース硫酸含有多糖−Fとフコース硫酸含有多糖−Uは実質的に分離された。
実施例6
ガゴメ昆布を充分乾燥後、2kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リットルの80%エタノールに懸濁し80℃、2時間処理した。処理後ろ紙によりろ過し残渣を得た。この残渣に対して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返しエタノール洗浄残渣を得た。この残渣を36リットルの0.2M酢酸カルシウム溶液に懸濁液、95℃、2時間処理し、ろ過した。残渣を4リットルの0.2M酢酸カルシウム溶液で洗浄し、ガゴメ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物抽出液36リットルを得た。
このろ液を排除分子量10万の限外ろ過膜を装着した限外ろ過器により2リットルに濃縮し、次に、終濃度が1.5Mとなるように食塩を添加し5%の塩化セチルピリジニウムをこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加した。生じた沈殿を遠心分離により除去した。得られた上清を限外ろ過により1リットルに濃縮し、4リットルのエタノールを添加し、生じた沈殿を遠心分離により集めた。この沈殿に100mlの4M食塩水を添加しよくかくはん後エタノールを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩水2リットルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した50mlのDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥したフコース硫酸含有多糖−Uの重量は15gであった。また、この本発明のフコース硫酸含有多糖−Uは多糖性の樹脂に吸着する着色性物質を含まなかった。
またこのフコース硫酸含有多糖−Uは、前記エンド型フコイダン分解酵素を作用させると上記式(1)、(II)、及び(III)で表されるオリゴ糖を生じた。
実施例7
ガゴメ昆布を充分乾燥後、2kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リットルの80%エタノールに懸濁し80℃、2時間処理した。処理後ろ紙によりろ過し残渣を得た。この残渣に対して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返しエタノール洗浄残渣を得た。この残渣を36リットルの0.2M酢酸カルシウム溶液に懸濁後、95℃、2時間処理し、ろ過した。残渣を4リットルの0.2M酢酸カルシウム溶液で洗浄し、ガゴメ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物抽出液36リットルを得た。得られたろ液に5%の塩化セチルピリジニウムをそれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し遠心分離により沈殿を集めた。この沈殿を3リットルの0.4M食塩水に懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後沈殿に1リットルの4M食塩水を添加しよくかくはん後エタノールを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸光度を0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩水3リットルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した100mlのDEAE−セルロファイA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖混合物の重量は90gであった。また、このフコース硫酸含有多糖混合物は多糖性の樹脂に吸着する着色性物質を含まなかった。このフコース硫酸含有多糖混合物の凍結乾燥物を7g秤量し、0.2Mの塩化カルシウムに溶解した。次に、4000mlのDEAE−セファロースFFのカラムを0.2Mの塩化カルシウムで平衡化した。0.2Mの塩化カルシウムに溶解したフコース硫酸含有多糖混合物をDEAE−セファロースFFのカラムにかけ、0.2Mの塩化カルシウムで充分洗浄し、次に、0〜4Mの塩化ナトリウムのグラジエントで溶出させた。溶出画分の内塩化ナトリウム濃度が0.05〜0.8Mの画分を集め透析により脱塩後凍結乾燥し、実質的にフコース硫酸含有多糖−Fと分離されたフコース硫酸含有多糖−Uを2.1g得た。
また、上記溶出画分の内塩化ナトリウム濃度が0.9〜1.5Mの画分を集め透析により脱塩後凍結乾燥し、実質的にフコース硫酸含有多糖−Uと分離されたフコース硫酸含有多糖−Fを4.7g得た。
実施例8
フコース硫酸含有多糖−Fの製造
実施例7で得られたフコース硫酸含有多糖混合物を1.2g秤量し、1.5Mの塩化ナトリウム溶液に終濃度0.2%となるように溶解し、1.25%の塩化セチルピリジニウムの1.5M塩化ナトリウム溶液をこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加した。生じた沈殿を遠心分離により集め、この沈殿を500mlの1.5M食塩水に懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後沈殿に1リットルの4M食塩水を添加しよくかくはん後エタノールを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩水500mlに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した1mlのDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖−Fの重量は710mgであった。また、このフコース硫酸含有多糖−Fは多糖性の樹脂に吸着する着色性物質を含まなかった。またこのフコース硫酸含有多糖−Fはウロン酸を含まずフコースを構成糖の主成分とする本発明のフコース硫酸含有多糖−Fであった。
実施例9
フコース硫酸含有多糖−Fの酵素的精製方法
実施例7で得られたフコース硫酸含有多糖混合物を10g秤量し、500mlの人工海水に溶解後、前記フラボバクテリウム sp.SA−0082(FERM BP−5402)由来のエンド型フコイダン分解酵素を5U添加し25℃、50時間反応させた。反応液を排除分子量10万以下のホロファィバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、低分子性物質を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖−Fの重量は6gであった。また、このフコース硫酸含有多糖−Fは多糖性の樹脂に吸着する着色性物質を含まなかった。またこのフコース硫酸含有多糖−Fはウロン酸を含まず、フコースを構成糖の主成分とする本発明のフコース硫酸含有多糖−Fであることが判明した。
実施例10
フコース硫酸含有多糖−Fの培養的精製方法
実施例7で得られたフコース硫酸含有多糖混合物を60g秤量し、20リットルの人工海水に溶解後ペプトン200gと酵母エキス4gを加え、30リットルのジャーファーメンターに入れ滅菌後、前記フラボバクテリウム sp.SA−0082株(FERM BP−5402)を植菌して25℃、24時間培養した。培養液を遠心分離し菌体を除去後、排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、低分子性物質を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖−Fの重量は36gであった。また、このフコース硫酸含有多糖−Fは多糖性の樹脂に吸着する着色性物質を含まなかった。またこのフコース硫酸含有多糖−Fはウロン酸を含まずフコースを構成糖の主成分とする本発明のフコース硫酸含有多糖−Fであることが判明した。
実施例11
実施例7記載のフコース硫酸含有多糖混合物の凍結乾燥物を1gずつ4つ秤量し、それぞれ水、0.2Mの塩化ナトリウム、0.2Mの塩化カルシウム、0.2Mの塩化マグネシウムに溶解した。次に、500mlのDEAE−セファロースFFのカラムを4本用意し、内2本を0.2Mの塩化ナトリウム、1本を0.2Mの塩化カルシウム、1本を0.2Mの塩化マグネシウムでそれぞれ平衡化した。0.2Mの塩化ナトリウムで平衡化したカラムの一方をカラムの10倍量の水で洗浄した。水、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムにそれぞれ溶解したフコース硫酸含有多糖混合物をそれぞれ水、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムでそれぞれ平衡化したDEAE−セファロースFFのカラムにかけ、それぞれを平衡化に用いた溶液で充分洗浄し、次に、0から4Mの塩化ナトリウムのグラジェントで溶出させた。この結果、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを用いた系のみカラムにかけたフコース硫酸含有多糖混合物の総量がカラムに吸着した。水及び食塩で平衡化したカラムには0.4g相当のフコース硫酸含有多糖しか吸着しなかった。
また、いずれのカラムにおいても、フコース硫酸含有多糖−Fとフコース硫酸含有多糖−Uは実質的に分離された。
実施例12
実施例1記載のフコース硫酸含有多糖混合物を7g秤量し、800mlの0.2Mの塩化カルシウムに溶解した。次に、4リットルのDEAE−セファロースFFのカラムを0.2Mの塩化カルシウムで平衡化し、上記フコース硫酸含有多糖溶液を全量カラムにかけ、8リットルの0.2M塩化カルシウム溶液で洗浄後、0から4Mの塩化ナトリウムのグラジエントで溶出させた。溶出画分の内ウロン酸が検出される画分(塩化ナトリウム濃度約0.9M以下:フコース硫酸含有多糖−U)、ウロン酸が検出されない画分(塩化ナトリウム濃度約1.2M付近:フコース硫酸含有多糖−F)のそれぞれを脱塩後凍結乾燥し、乾燥品をそれぞれ1.4g及び4.8g得た。
実施例13
実施例1で得られるフコース硫酸含有多糖混合物に、フラボバクテリウム sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するエンド型フコイダン分解酵素を作用させると下記の構造を有するオリゴ糖を生成する。
本発明者らは、下記の酵素反応を行い、上記オリゴ糖を得た。
すなわち、2.5%の実施例1のフコース硫酸含有多糖混合物溶液80mlと、50mMのリン酸緩衝液(pH7.5)60mlと4Mの塩化ナトリウム20mlと32mU/mlのエンド型フコイダン分解酵素溶液40mlを混合し、25℃で48時間反応させた。
反応液をセルロファインGCL−300(生化学工業社製)のカラムにより分子量分画し、分子量2000以下の画分を集めた。この画分をマイクロアシライザーG3により脱塩後、DEAE−セファロースFFにより3つの画分を分離し、再度脱塩後、凍結乾燥した。こうして上記各式(I)、(II)、(III)のオリゴ糖をそれぞれ250mg、310mg、52mg得た。
実施例14
実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物10gを0.2Mのクエン酸500mlに溶解し、pHを2.9に調整後、100℃で3時間処理した。この加水分解物に1Mの酢酸カルシウム溶液を150ml添加し、生じた沈殿を遠心分離により除去後セルロファインGCL−25によるゲルろ過で分子量分画し(分子量5000以上、5000〜3000超、3000〜2000超、2000〜1000超、1000〜500超、500以下)、分子量の大きい方から順に、GFd−Oli−1、GFd−Oli−2、GFd−Oli−3、GFd−Oli−4、GFd−Oli−5、及びGFd−Oli−6とした。これらの6画分を脱塩後凍結乾燥し、乾燥品をそれぞれ2.3g、1.7g、0.88g、1.8g、1.4g、及び0.72g得た。
実施例15
実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物を60g秤量し、20リットルの人工海水に溶解後ペプトン200gと酵母エキス4gを加え30リットル容のジャーファーメンターに入れ滅菌後、フラボバクテリウム sp.SA−0082(FERM BP−5402)を植菌し25℃、24時間培養した。培養液を遠心分離し、菌体を除去後、排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、低分子性物質を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖−Fの重量は36gであった。
実施例16
マナマコを5kg解体し、内臓を除去し、体壁を集めた。体壁湿重量200g当り500mlのアセトンを加え、ホモジナイザーで処理後ろ過し、残渣をこれ以上着色物質がなくなるまでアセトンで洗浄した。この残渣を吸引乾燥し140gの乾燥物を得た。この乾燥物に0.4Mの食塩水2.8リットルを加え、100℃で1時間処理後、ろ過し、残渣を0.4Mの食塩水で充分洗浄し、抽出液3.7リットルを得た。この抽出液に5%のセチルピリジニウムクロリドをこれ以上沈殿が生じなくなるまで加え、生じた沈殿を遠心分離で集めた。この沈殿を0.4Mの食塩水に懸濁後再度遠心分離し、得られた沈殿に1リットルの4M食塩水を添加し、ホモジナイザーで処理後、かくはんしながら4リットルのエタノールを添加し、1時間かくはん後、ろ過し、沈殿を得た。この沈殿に対して、80%エタノールに懸濁後ろ過という工程を上清の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。得られた沈殿を2リットルの2M食塩水に懸濁し、不溶物を遠心分離により除去した。上清を排除分子量3万の膜を備えた限外ろ過装置により限外ろ過し、完全に脱塩後、凍結乾燥し3.7gのフコース硫酸含有多糖を得た。
実施例17
ヒバマタ(Fucus vesiculosus)を充分乾燥後、乾燥物2kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リットルの80%エタノールに懸濁し、80℃、2時間処理した。処理後ろ紙によりろ過し、残渣を得た。この残渣に対して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返しエタノール洗浄残渣を得た。この残渣を40リットルの水に懸濁後、100℃、2時間処理し、ろ過した。ろ液に0.5Mとなるように塩化ナトリウムを加え、更に5%の塩化セチルピリジニウムをそれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し、遠心分離により沈殿を集めた。この沈殿を3リットルの0.4M塩化ナトリウムに懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後沈殿に250gの塩化ナトリウムを加え、3リットルのエタノール中に懸濁し、遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し、遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの塩化ナトリウム3リットルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの塩化ナトリウムで平衡化したDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び塩化ナトリウムを完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖の重量は92gであった。
実施例18
わかめ(Undaria pinnatifida)を充分乾燥後、2kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リットルのエタノールに懸濁し、75℃、1時間処理した。処理後ろ紙によりろ過し、残渣を得た。この残渣に対して80%のエタノールを9リットル添加、かくはんし、80℃、1時間処理後、ろ紙によりろ過し、残渣を得た。この残渣に対して、上記80%エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返し、エタノール洗浄残渣1908gを得た。この残渣のうち684gを9リットルの0.2M酢酸カルシウムに懸濁後、95℃、1時間処理し、24時間静置後その上清を得た。上清を除去した沈殿に9リットルの0.2M酢酸カルシウムを添加かくはんし、1時間静置後上清を得、上記上清と合せた。こうして得られた上清をろ紙でろ過後、排除分子量10,000のホロファイバーを備えた限外ろ過装置により限外ろ過し、350mlに濃縮した。濃縮液を遠心分離し、沈殿を除去後、2mMの塩化ナトリウムを添加しながら限外ろ過し、完全に酢酸カルシウムを除去後、凍結乾燥し、凍結乾燥物3.2gを得た。凍結乾燥物中のフコース硫酸含有多糖の重量は3.1gであった。
実施例19
(1)ガゴメ昆布フコース硫酸含有多糖混合物の調製
乾燥ガゴメ昆布2Kgを自由粉砕機M−2型(奈良機械製作所製)により粉砕し、4.5倍量の80%エタノール中で80℃、2時間処理後、ろ過した。残渣に対し、上記80%エタノール抽出、ろ過という工程を更に3回繰り返し、エタノール洗浄残渣1870gを得た。残渣に36リットルの水を加え、100℃、2時間処理し、ろ過により抽出液を得た。抽出液の塩濃度を400mMの塩化ナトリウム溶液と同じにした後、5%のセチルピリジルクロリドをこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し、遠心分離した。その沈殿を、80%のエタノールで繰り返し洗浄し、セチルピリジニウムクロリドを完全に除去した後、3リットルの2M塩化ナトリウムに溶解し、不溶物を遠心分離で除去し、2Mの塩化ナトリウムで平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800を懸濁し、かくはん後ろ過し、樹脂を除いた。このろ液を、2Mの塩化ナトリウムで平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA−800のカラムにかけ、通過画分を限外ろ過器(ろ過膜の排除分子量10万)により脱塩及び低分子除去を行い、この際生じた沈殿を遠心分離により除去した。上清を凍結乾燥して精製ガゴメ昆布フコース硫酸含有多糖混合物82.2gを得た。
(2)フコース硫酸含有多糖−Fの調製
上記のガゴメ昆布由来フコース硫酸含有多糖混合物6gを600mlの0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH6.0)に溶解後、あらかじめ0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH6.0)で平衡化した3600mlのDEAE−セファロースFFのカラムにかけ、0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH6.0)で充分カラムを洗浄後、0〜2Mの塩化ナトリウムのグラジエントで溶出した。塩化ナトリウム濃度が0.75M以上で溶出してくるフコース硫酸含有多糖−F画分を集め、排除分子量10万の限外ろ過膜を装着した限外ろ過器で濃縮脱塩後凍結乾燥し、フコース硫酸含有多糖−Fの凍結乾燥標品を3.3g得た。
(3)エンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の調製
アルテロモナス sp.SN−1009(FERM BP−5747)を、グルコース0.25%、ペプトン1.0%、酵母エキス0.05%を含む人工海水(ジャマリンラボラトリー社製)pH8.2からなる培地600mlを分注して殺菌した(120℃、20分)2リットルの三角フラスコに接種し、25℃で25時間培養して種培養液とした。ペプトン200g、酵母エキス4g、及び消泡剤(信越化学工業社製KM70)4mlを含む人工海水pH8.0からなる培地18リットルを30リットル容のジャーファーメンターに入れて120℃で20分殺菌した。冷却後、別に120℃、15分殺菌した2リットルの人工海水に溶解した20gの実施例8の方法を用いて調製したガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖−F及び上記の種培養液600mlを接種し、24℃で20時間、毎分10リットルの通気量と毎分250回転のかくはん速度の条件で培養した。培養終了後、培養液を遠心分離して菌体及び培養上清を得た。
培養上清中の本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素の活性をフコース硫酸含有多糖−Fを基質に用いて測定したところ、5mU/ml・培養液であった。
得られた培養上清を、分画分子量1万の限外ろ過器により濃縮後、生じた沈殿を遠心分離により除去し、85%飽和硫安塩析し、生じた沈殿を遠心分離により集め、10分の1濃度の人工海水(ジャマリンS)を含む20mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)に対して充分透析し、400mlの粗酵素を得た。
得られた粗酵素液を、あらかじめ5mMのアジ化ナトリウム及び10分の1濃度の人工海水(ジャマリンS)を含む20mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)で平衡化したDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社製)のカラムに吸着させ、吸着物を同緩衝液にて充分洗浄後、同緩衝液中に100mM、200mM、300mM、400mM、及び600mMの塩化ナトリウムを含む溶液で溶出し、活性画分を集めた。
得られた部分精製酵素の活性はフコース硫酸含有多糖−Fを基質に用いて測定したところ、10200mU(10.2U)であった。なお、他のフコース硫酸含有多糖分解酵素の混入は認められなかった。
得られた部分精製酵素の一部をあらかじめ10分の1濃度の人工海水(ジャマリンS)及び5mMのアジ化ナトリウムを含む10mMのトリス−塩酸酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したセファクリル S−200でゲルろ過を行い、その分子量を求めたところ約10万であった。
(4)上記実施例で得た部分精製酵素及びPA−FFをそれぞれ酵素源及び基質として本酵素の活性に及ぼすカルシウム濃度の検討を行った。
酵素反応に用いる緩衝液には50mMの酢酸、イミダゾール、及びトリス−塩酸を含むpH7の緩衝液を用いた。また、反応液には終濃度400mMの塩化ナトリウムを溶存させた。
反応液中の塩化カルシウム濃度を0〜100mMまで変化させ、酵素活性を測定したところ、図23に示すような結果が得られた。なお、図23において、縦軸は相対活性(%)、横軸は反応液中カルシウム濃度(mM)を示す。
この結果、本酵素はカルシウム塩の存在下著しく活性が高められることが判明した。
(5)本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を下記6種類の緩衝液で透析しながら5℃で20時間保持した後、残存活性を測定した。
1. 20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)
2. 5mMアジ化ナトリウムを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)
3. 5mMアジ化ナトリウム及び50mM塩化ナトリウムを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)
4. 5mMアジ化ナトリウム及び500mM塩化ナトリウムを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)
5. 5mMアジ化ナトリウム、50mM塩化ナトリウム、及び10mM塩化カルシウムを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)
6. 5mMアジ化ナトリウム及び10分の1濃度の人工海水(ジャマリンS)を含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.2)
以上の結果、1、2、及び3の緩衝液で透析した本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素は失活し、4、5、及び6の緩衝液で透析した本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素は活性が保持された。
このことから本酵素は500mMの塩化ナトリウムの存在下あるいは10mMのカルシウムイオンの存在下で安定化されることが判明した。
(6)上記実施例で調製したフコース硫酸含有多糖−Fを5g秤量し、471mlの50mMイミダゾール緩衝液(pH8)、12.5mlの4M塩化ナトリウム、6.25mlの4M塩化カルシウム、及び実施例19−(3)で得られた本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素の部分精製品10ml(6mU相当)を混合し、25℃で120時間反応させたところフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物が得られた。
得られた低分子化物のIR及びNMRの分析結果はそれぞれ図25及び図26に示すとおりであった。また、セルロファインGCL−300でゲルろ過したところ、図24に示す結果が得られた。すなわち、本物質は分子量1000〜3000にわたって分布するものである。
また、本物質の硫酸含量はSO4(分子量96)として46%であり、中性糖組成はフコース:ガラクトース=100:4であった。
なお、図24〜図26における縦軸及び横軸は、それぞれ図2〜図4と同義である。
実施例20
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)にて37℃で培養したヒト前骨髄性白血病細胞HL−60(ATCC CRL−1964)をASF104培地(味の素社製)にて5×105個/9mlとなるように懸濁した。この懸濁液9mlを4つ用意し、それぞれの懸濁液に対し、実施例1、12、及び15で得られたフコース硫酸含有多糖の生理食塩水溶液(5mg/ml)のフィルター処理液〔ポアサイズ0.20μmのセルロースアセテート膜(コーニング社製)でろ過したもの(以下フィルター処理はこの条件で行った)〕を1ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で40時間培養した。培養した細胞を遠心分離により上清と分離した。得らてた細胞を10mMのエチレンジアミンテトラアセテート及び0.5%のナトリウムラウロイルサルコシネートを含む50mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.8)20μlにて懸濁し、10mg/mlのリボヌクレアーゼA(シグマ社製)を1μl添加して50℃、30分間処理した後、10mg/mlのプロティネースKを1μl添加して50℃、1時間処理した。処理後の細胞をサンプルとして、2%のアガロースゲルを用いて100Vの定電圧の下で電気泳動を行った。このゲルをエチジウムブロミド溶液に30分間浸した後、トランスイルミネータを用いてゲル中のDNAの状態を確認したところ、アポトーシスに特有のDNAラダーが確認された。更に確認のためアポトーシスを誘発する試薬として知られているアクチノマイシンDの10μg/ml溶液を上記のフコース硫酸含有多糖の代りに用いて同様に操作したところ、培養20時間で、フコース硫酸含有多糖の場合と同じDNAラダーが確認できた。
この結果より、HL−60細胞は実施例1、12、及び15で得られたフコース硫酸含有多糖によりアポトーシスを誘発されることが明らかとなった。
HL−60(ATCC CCL−240)を用い、実施例1、12、及び15で得られた各フコース硫酸含有多糖溶液〔5mg/mlとなるように120mMの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液(pH7.2)に溶解し、121℃、20分間オートクレーブ処理したもの〕のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例21
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)にて37℃で培養したヒト前骨髄性白血病細胞HL−60(ATCC CCL−240)をASF104培地(味の素社製)にて5×105個/9mlとなるように懸濁した。この懸濁液9mlに対し、実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖の生理食塩水溶液(5mg/ml)のフィルター処理液を1ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で20時間培養した。培養した細胞を遠心分離により上清と分離した。得られた細胞を「アポトーシス実験プロトコール」(秀潤社、田沼靖一監修、第93〜95頁、1995年)に従ってギムザ染色した。すなわち得られた細胞をカルノア固定液(酢酸:メタノール=1:3)を用いてスライドグラス上に固定し、ギムザ色素(メルク社製)を用いて染色し、光学顕微鏡により観察したところアポトーシス特有の核の断片化が観察された。この結果よりHL−60細胞は実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖によりアポトーシスを起こすことが明らかとなった。
実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖溶液〔5mg/mlとなるように120mMの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液(pH7.2)に溶解し、121℃、20分間オートクレーブ処理したもの〕のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例22
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)にて37℃で培養したヒト前骨髄性白血病細胞HL−60(ATCC CCL−240)をASF104培地(味の素社製)にて5×105コ/4.5mlとなるように懸濁した。この懸濁液4.5mlを4つ用意し、それぞれの懸濁液に対し、実施例1、15、及び18で得られた各フコース硫酸含有多糖溶液〔10mg/mlとなるように120mMの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液(pH7.2)に溶解し、121℃、20分間オートクレーブ処理したもの〕及び120mMの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液を0.5ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養し、培養開始後24時間及び40時間後に細胞数をトリパンブルー染色法で計測した。
この結果を図27に示す。図27はHL−60細胞の培養液に実施例1、15、及び18で得られたフコース硫酸含有多糖を1mg/mlとなるように添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培養時間(時間)、縦軸は培養液中の生細胞数(×105コ/5ml)を示す。図27中、培地に添加したフコース硫酸含有多糖の種類は、□印が無添加(対照)、+印が実施例1、・印が実施例15、×印が実施例18で得られたフコース硫酸含有多糖であることを示す。
また、この時死細胞は細胞の縮小及び断片化等アポトーシスに特有の形態を示した。すなわちこれらの結果から、HL−60細胞は実施例1、15、及び18で得られたフコース硫酸含有多糖によりアポトーシスを誘発され細胞増殖を著しく抑制されることが判明した。
実施例1、15、及び18で得られた各フコース硫酸含有多糖溶液〔10mg/mlとなるように120mMの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液(pH7.2)に溶解し、フィルター処理したもの〕のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例23
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)9mlにヒト急性リンパ芽球性白血病細胞MOLT−3(ATCC CRL−1552)を5×105個/9mlとなるように懸濁した。この懸濁液9mlを5つ用意し、それぞれに実施例1、2、12、及び16で得られたフコース硫酸含有多糖の生理食塩水溶液(5mg/ml)のフィルター処理液を1ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で60時間培養した。培養した細胞を遠心分離により上清と分離した。得られた細胞を10mMのエチレンジアミンテトラアセテート及び0.5%のナトリウムラウロイルサルコシネートを含む50mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.8)20μlにて懸濁し、10mg/mlのリボヌクレアーゼA(シグマ社製)を1μl添加して50℃、30分間処理した後、10mg/mlのプロティネースKを1μl添加して50℃、1時間処理した。処理後の細胞をサンプルとして、2%のアガロースゲルを用いて100Vの定電圧の下で電気泳動を行った。このゲルをエチジウムブロミド溶液に30分間浸した後、トランスイルミネータを用いてゲル中のDNAの状態を確認したところ、アポトーシスに特有のDNAラダーが確認された。更に確認のためアポトーシスを誘発する試薬として知られているアクチノマイシンDの10μg/ml溶液を上記のフコース硫酸含有多糖の代りに用いて同様に操作したところ、培養20時間で、フコース硫酸含有多糖の場合と同じDNAラダーが確認できた。
この結果より実施例1、2、12、及び16で得られたフコース硫酸含有多糖はMOLT−3細胞に対してアポトーシスを誘発することが判明した。
実施例1、2、12及び16で得られた各フコース硫酸含有多糖溶液〔5mg/mlとなるようにPBS(8gの塩化ナトリウム、0.2gの塩化カリウム、2.9gのリン酸水素二ナトリウム12水和物、及び0.2gのリン酸二水素カリウムを1リットルの水に溶解したもの)に溶解し、121℃、20分間オートクレーブ処理したもの〕のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例24
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)にて37℃で培養したヒト急性リンパ芽球性白血病細胞MOLT−3(ATCC CRL−1552)をRPMI1640培地にて5×103コ/mlとなるように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸濁液に対し、0.5mg/mlとなるようにPBSに溶解後ろ過滅菌した実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、実施例15及び17で得られたフコース硫酸含有多糖、及びデキストラン硫酸(分子量50万、和光純薬社製)の溶液をそれぞれ0.2mlずつ添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照としてPBSのみを同量添加し、同様に培養した。培養開始2日、4日、6日、8日後の生細胞数をトリパンブルー染色法により計測した。
この結果を図28に示す。すなわち図28はMOLT−3細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、実施例15及び17で得られたフコース硫酸含有多糖、及びデキストラン硫酸を0.5mg/mlとなるように添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培養時間(日)、縦軸は培養液中の生細胞数(×104コ/2ml)を示す。図28中、培地に添加した硫酸化多糖の種類は、○印が無添加(対照)、●印が実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、□印が実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖、△印が実施例17で得られたフコース硫酸含有多糖、■印が実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖であることを示す。デキストラン硫酸は実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖の場合と実質的に同じ曲線を示した。
また、この時死細胞は細胞の縮小及び断片化等アポトーシスに特有の形態を示した。すなわちこれらの結果から、MOLT−3細胞は実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、実施例15及び17で得られたフコース硫酸含有多糖、及びデキストラン硫酸によりアポトーシスを誘発され細胞増殖を著しく抑制されることが判明した。
実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、実施例15及び17で得られたフコース硫酸含有多糖、及びデキストラン硫酸(分子量50万、和光純薬社製)の各溶液(0.5mg/mlとなるようにPBSに溶解後、121℃、20分間オートクレーブ処理したもの)のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例25
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)にて37℃で培養したヒト前骨髄性白血病細胞HL−60(ATCC CCL−240)をASF104培地(味の素社製)にて5×104個/900μlとなるように懸濁した。この懸濁液900μlを9つ用意し、それぞれの懸濁液に対し、生理食塩水、及び実施例1で得たフコース硫酸含有多糖標品、F−Fd−1〜F−Fd−4、及び実施例13で得られた3種のフコース硫酸含有オリゴ糖の各生理食塩水溶液(10mg/ml)フィルター処理液を100μl添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で40時間培養した。培養した細胞を顕微鏡で観察し、増殖の程度及び細胞の形態を調べた。
この結果、フコース硫酸含有多糖標品、F−Fd−1〜F−Fd−4及び3種のフコース硫酸含有オリゴ糖を添加したHL−60細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。また、生理食塩水を添加したHL−60細胞は細胞数が約4倍に増加したが、フコース硫酸含有多糖標品、F−Fd−1〜F−Fd−4及び3種のフコース硫酸含有オリゴ糖を添加したHL−60細胞は細胞数が全く増加しないものから10分の1以下になるものまでが見られ、これらフコース硫酸含有多糖標品、F−Fd−1〜F−Fd−4及び3種のフコース硫酸含有オリゴ糖のアポトーシス誘発作用によりHL−60細胞の増殖が抑えられることが判明した。
更に確認のためアポトーシスを誘発する試薬として知られているアクチノマイシンDの10μg/ml溶液を上記のフコース硫酸含有オリゴ糖の代りに用いて同様に操作したところ、培養20時間で、フコース硫酸含有オリゴ糖の場合と同じように、細胞の縮小及び細胞断片化がみられた。この結果より、HL−60細胞は実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、F−Fd−1〜F−Fd−及び実施例13で得られたフコース硫酸含有オリゴ糖によりアポトーシスを誘発されることが明らかとなった。
実施例1で得たフコース硫酸含有多糖標品、F−Fd−1〜F−Fd−4及び実施例13で得られた3種のフコース硫酸含有オリゴ糖の各溶液〔10mg/mlとなるように120mMの塩化ナトリウムを含む30mMヘペス緩衝液(pH7)に溶解し、121℃、20分間オートクレーブ処理したもの〕のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例26
肺癌細胞A−549(ATCC CCL−185)、SV40形質転換した肺細胞WI−38VA13(ATCC CCL−75.1)、及び肺癌細胞Hep G2(ATCC HB−8065)をそれぞれ104個/1.8mlとなるよう、56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むRPMI1640培地に懸濁した。この懸濁液を1.8mlずつ分注し、それぞれの懸濁液に対し、各癌細胞毎に生理食塩水、及び実施例1及び15で得られたフコース硫酸含有多糖、及び実施例14で得られた6種のフコース硫酸含有オリゴ糖の各生理食塩水溶液(1mg/ml)のフィルター処理液を200μl添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で6日間培養した。培養した細胞を顕微鏡で観察し、増殖の程度及び細胞の形態を調べた。
この結果実施例1及び15で得られたフコース硫酸含有多糖、及び実施例14で得られた6種のフコース硫酸含有オリゴ糖のうち分子量2000以上の3画分を添加した肺癌細胞A−549、SV40形質転換した肺細胞WI−38VA13、及び肺癌細胞Hep G2はすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。また、生理食塩水を添加した各癌細胞は著しく細胞数が増加したが、実施例1及び15で得られたフコース硫酸含有多糖、及び実施例14で得られた6種のフコース硫酸含有オリゴ糖のうち分子量2000以上の3画分を添加した各種癌細胞は細胞数が減少し、これらのフコース硫酸含有多糖及びオリゴ糖のアポトーシス誘発作用により各種癌細胞の増殖が抑えられることが判明した。
実施例1及び15で得られたフコース硫酸含有多糖、及び実施例14で得られた6種のフコース硫酸含有オリゴ糖の各PBS溶液(1mg/ml)の121℃、20分間オートクレーブ処理物のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例27
結腸癌細胞HCT 116(ATCC CCL−247)、及び胃癌細胞AGS(ATCC CRL−1739)をそれぞれ104個/1.8mlとなるよう、56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むMcCoy's5a培地(ギブコ社製)、Ham's F12培地(ギブコ社製)にそれぞれ懸濁した。この懸濁液を1.8mlずつ分注し、それぞれの懸濁液に対し、各癌細胞毎に生理食塩水、及び実施例1、12、及び15で得られたフコース硫酸含有多糖及びF−Fd−1〜F−Fd−4の4種のフコース硫酸含有オリゴ糖の各生理食塩水溶液(10mg/ml)のフィルター処理液を200μl添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で48時間培養した。培養した細胞を顕微鏡で観察し、増殖の程度及び細胞の形態を調べた。
この結果実施例1、12、及び15で得られたフコース硫酸含有多糖及びF−Fd−1〜F−Fd−4の4種のフコース硫酸含有オリゴ糖を添加した結腸癌細胞HCT 116及び胃癌細胞AGSはすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。また、生理食塩水を添加した各種癌細胞は著しく細胞数が増加したが、実施例1、12、及び15で得られたフコース硫酸含有多糖及びF−Fd−1〜F−Fd−4の4種のフコース硫酸含有オリゴ糖を添加した各種癌細胞は細胞数が減少し、これらのフコース硫酸含有多糖及びオリゴ糖のアポトーシス誘発作用により各種癌細胞の増殖が抑えられることが判明した。
実施例1、12、及び15で得られたフコース硫酸含有多糖及びF−Fd−1〜F−Fd−4の4種のフコース硫酸含有オリゴ糖の各PBS溶液(10mg/ml)の121℃、20分間オートクレーブ処理液のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例28
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むMcCoy's5a培地(ギブコ社製)にて37℃で培養したヒト結腸癌細胞HCT 116をMcCoy's5a培地にて5×103コ/mlとなるように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸濁液に対し、PBSに溶解させた10mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、フコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、フコース硫酸含有多糖−U、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4、実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖の各溶液、及びPBSに溶解させた5mg/mlのヘパリン(和光純薬社製)及びデキストラン硫酸(分子量50万、和光純薬社製)を121℃、20分間オートクレーブ処理したものを0.2ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照としてPBSのみを同量添加し、同様に培養した。培養開始1日、2日、3日、4日後の生細胞数を「組織培養の技術」(第2版)(朝倉出版、日本組織培養学会編、1990年))記載の方法(第26〜28頁)に従って計測した。すなわち、血球計算板上のトリパンブルー染色による方法で計測した。
得られた結果を図29に示す。すなち図29はHCT 116細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4、実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖を1mg/ml、及びヘパリン及びデキストラン硫酸を0.5mg/mlとなるように添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培養時間(日)、縦軸は培養液中の生細胞数(×104コ/2ml)を示す。図29中、培地に添加したフコース硫酸含有多糖あるいはオリゴ糖の種類は、○印が無添加(対照)、●印が実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、■印が実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物である。実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4、及び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖は実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物の場合と実質的に同じ曲線を示した。またヘパリン及びデキストラン硫酸は実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の場合と実質的に同じ曲線を示した。
この結果PBSを添加したHCT 116細胞は著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、フコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、フコース硫酸含有多糖−U、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4、実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖、ヘパリン、及びデキストラン硫酸を添加したHCT 116細胞は細胞数がほとんど増加しないか、あるいは減少した。
また、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、フコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、フコース硫酸含有多糖−U、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4、実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖、ヘパリン、及びデキストラン硫酸を添加したHCT 116細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。
すなわち、これらのフコース硫酸含有多糖及びオリゴ糖、ヘパリン、及びデキストラン硫酸のアポトーシス誘発作用によりHCT 116細胞の増殖が抑制されることが判明した。
PBSに溶解させた10mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、フコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、フコース硫酸含有多糖−U、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4、実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖の各溶液のフィルター処理液、及びPBSに溶解させた5mg/mlのヘパリン、及びデキストラン硫酸の各フィルター処理液のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例29
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むMcCoy's5a培地(ギブコ社製)にて37℃で培養したヒト結腸癌細胞HCT 116をMcCoy's5a培地にて5×103コ/mlとなるように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸濁液に対し、PBSに溶解させた20mg/ml、30mg/ml、及び50mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶液を121℃、20分間オートクレーブ処理したものを0.2ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照としてPBSのみを同量添加し、同様に培養した。培養開始後経時的に生細胞数を「組織培養の技術」(第2版)(朝倉出版、日本組織培養学会編、1990年)記載の方法(第26〜28頁)に従って計測した。すなわち、血球計算板上のトリパンブルー染色による方法で計測した。
得られた結果を図30に示す。すなわち図30はHCT 116細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培養時間(時間)、縦軸は培養液中の生細胞数(×104コ/2ml)を示す。図30中、培地へのフコース硫酸含有多糖標品の添加量は、○印が無添加(対照)、●印が2mg/ml、■印が3mg/ml、黒三角印が5mg/mlである。
この結果PBSを添加したHCT 116細胞は著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を添加したHCT 116細胞は細胞数が減少した。
また、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を添加したHCT 116細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。
すなわち、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品は少なくとも2mg/mlの濃度でHCT 116細胞に対してアポトーシス誘発作用を持ち、細胞の増殖を抑制できることが判明した。
PBSに溶解させた20mg/ml、30mg/ml、及び50mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶液のフィルター処理液のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例30
56℃、30分間処理した後胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むHam's F12培地(ギブコ社製)にて37℃で培養したヒト胃癌細胞AGSをHam's F12培地にて5×103コ/mlとなるように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸濁液に対し、PBSに溶解させた20mg/ml、30mg/ml、及び50mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶液を121℃、20分間オートクレーブ処理したものを0.2ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照としてPBSのみを同量添加し同様に培養した。培養開始後経時的に後細胞数を「組織培養の技術」(第2版)(朝倉出版、日本組織培養学会編、1990年)記載の方法(第26〜28頁)に従って計測した。すなわち、血球計算板上のトリパンブルー染色による方法で計測した。
得られた結果を図31に示す。すなわち図31はAGS細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培養時間(時間)、縦軸は培養液中の生細胞数(×104コ/2ml)を示す。図31中、培地へのフコース硫酸含有多糖標品の添加量は、○印が無添加(対照)、●印が2mg/ml、■印が3mg/ml、黒三角印が5mg/mlである。
この結果PBSを添加したAGS細胞は著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を終濃度で3mg/ml以上添加したAGS細胞は細胞数が減少し、2mg/mlを添加したものも著しく細胞の増殖が抑制された。
また、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を添加したAGS細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。
すなわち、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品は少なくとも2mg/mlの濃度でAGS細胞に対してアポトーシス誘発作用を持ち、細胞の増殖を抑制できることが判明した。
PBSに溶解させた20mg/ml、30mg/ml、及び50mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶液のフィルター処理液のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例31
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むL−15培地(ギブコ社製)にて37℃で培養したヒト結腸癌細胞SW480(ATCC CCL−228)をL−15培地にて5×103コ/mlとなるように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸濁液に対し、PBSに溶解させた10mg/ml、30mg/ml、及び50mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶液を121℃、20分間オートクレーブ処理したものを0.2ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照としてPBSのみを同量添加し、同様に培養した。培養開始後経時的に生細胞数を「組織培養の技術」(第2版)(朝倉出版、日本組織培養学会編、1990年)記載の方法(第26〜28頁)に従って計測した。すなわち、血球計算板上のトリパンブルー染色による方法で計測した。
得られた結果を図32に示す。すなわち図32はSW480細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培養時間(時間)、縦軸は培養液中の生細胞数(×104コ/2ml)を示す。図32中、培地へのフコース硫酸含有多糖標品の添加量は、○印が無添加(対照)、●印が1mg/ml、■印が3mg/ml、黒三角印が5mg/mlである。
この結果PBSを添加したSW480細胞は著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を終濃度で3mg/ml以上添加したSW480細胞は細胞数が減少し、1mg/mlを添加したものも著しく細胞の増殖が抑制された。
また、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を添加したSW480細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。
すなわち、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品は少なくとも1mg/mlの濃度でSW480細胞に対してアポトーシス誘発作用を持ち、細胞の増殖を抑制できることが判明した。
PBSに溶解させた10mg/ml、30mg/ml、及び50mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶液のフィルター処理液のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例32
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%及びNEAA(大日本製薬社製)を1%含むDMEM培地(大日本製薬社製)にて37℃で培養したヒト結腸癌細胞WiDr(ATCC CCL−218)を上記培地にて5×103コ/mlとなるように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸濁液に対し、PBSに溶解させた10mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF−Fd−4、及び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖の各溶液を121℃、20分間オートクレーブ処理したものを0.2ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照としてPBSのみを同量添加し、同様に培養した。培養開始後経時的に生細胞数を「組織培養の技術」(第2版)(朝倉出版、日本組織培養学会編、1990年)記載の方法(第26〜28頁)に従って計測した。すなわち、血球計算板上のトリパンブルー染色による方法で計測した。
得られた結果を図33に示す。すなわち図33はWiDr細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF−Fd−4及び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖を1mg/mlとなるように添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培養時間(時間)、縦軸は培養液中の生細胞数(×104コ/2ml)を示す。図33中、培地に添加したフコース硫酸含有多糖の種類は、○印が無添加(対照)、■印が実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、●印が実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖である。F−Fd−3及びF−Fd−4は実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖の場合と実質的に同じ曲線を示した。
この結果PBSを添加したWiDr細胞は著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF−Fd−4、及び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖を添加したWiDr細胞は細胞数が減少した。
また、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF−Fd−4、及び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖を添加したWiDr細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。
すなわち、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF−Fd−4、及び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖はWiDr細胞に対してアポトーシス誘発作用を持ち、細胞の増殖を抑制できることが判明した。
PBSに溶解させた10mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF−Fd−4、及び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖の溶液のフィルター処理液のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例33
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%及びNEAA(大日本製薬社製)を1%含むDMEM培地(大日本製薬社製)にて37℃で培養したヒト結腸癌細胞WiDr(ATCC CCL−218)を上記培地にて5×103コ/mlとなるように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸濁液に対し、PBSに溶解させた10mg/ml、30mg/ml、及び50mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶液を121℃、20分間オートクレーブ処理したものを0.2ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照としてPBSのみを同量添加し、同様に培養した。培養開始後経時的に生細胞数を「組織培養の技術」(第2版)(朝倉出版、日本組織培養学会編、1990年)記載の方法(第26〜28頁)に従って計測した。すなわち、血球計算板上のトリパンブルー染色による方法で計測した。
得られた結果を図34に示す。すなわち図34はWiDr細胞の培養液に実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培養時間(時間)、縦軸は培養液中の生細胞数(×104コ/2ml)を示す。図34中、培地へのフコース硫酸含有多糖標品の添加量は、○印が無添加(対照)、●印が1mg/ml、■印が3mg/ml、黒三角印が5mg/mlである。
この結果PBSを添加したWiDr細胞は著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を終濃度で3mg/ml以上添加したWiDr細胞は細胞数が減少し、1mg/mlを添加したものも著しく細胞の増殖が抑制された。
また、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を添加したWiDr細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。
すなわち、実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品は少なくとも1mg/mlの濃度でWiDr細胞に対してアポトーシス誘発作用を持ち、細胞の増殖を抑制できることが判明した。
PBSに溶解させた10mg/ml、30mg/ml、及び50mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶液のフィルター処理液のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
実施例34
56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)にて37℃で培養したヒト前骨髄性白血病細胞HL−60(ATCC CCL−240)をASF104培地(味の素社製)にて5×104コ/900μlとなるように懸濁し、FALCON社製6ウェルプレート上の各ウェルに4.5mlずつ分注した。それぞれの懸濁液に対し、実施例19−(6)記載のフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物を凍結乾燥したものを10mg/mlとなるように120mMの塩化ナトリウムを含む30mMヘペス緩衝液(pH7)に溶解し、フィルターろ過処理したものを0.5ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照として上記緩衝液のみを同量添加し、同様に培養した。培養開始22時間後と46時間後の生細胞数を組織培養の技術(第2版)(朝倉出版、日本組織培養学会編)記載の方法(第26〜28頁)に従って計測した。すなわち、血球計算板上のトリパンブルー染色による方法で計測した。
この結果HL−60細胞は上記のフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物を凍結乾燥したものによりアポトーシスを誘発され、細胞増殖速度が抑制されることが判明した。
実施例35
ヒト前骨髄性白血病細胞HL−60を、56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社製)を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)に5×104個/900μlとなるように懸濁した。この懸濁液を6つ用意し、それぞれの懸濁液に対し、120mMの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液(pH7)及び同緩衝液に10mg/mlで溶解させた実施例19−(2)記載のフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4のフィルター処理液をそれぞれ100μl添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で46時間培養した。
培養開始後22時間及び46時間に培養液中の生細胞数を測定した。
また、ヒト前骨髄性白血病細胞HL−60を、ASF104培地(味の素社製)に5×104個/900μlとなるように懸濁した。この懸濁液を6つ用意し、それぞれの懸濁液に対し、120mMの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液(pH7)及び同緩衝液に10mg/mlで溶解させたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4のフィルター処理液をそれぞれ100μl添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で40時間培養した。
培養開始後16時間及び40時間に培養液中の生細胞数を測定した。
また、上記2種類の培養を行った細胞を顕微鏡で観察し、増殖の程度及び細胞の形態を調べた。
この結果、ASF104培地で培養した細胞においては、フコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4を添加した細胞が総て細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈し、生細胞数はほとんど増加がみられなかったあるいはほぼ完全に死滅していた。緩衝液のみ添加した培地において細胞数は約3倍に増加していた。一方、RPMI1640培地で培養した細胞においてはF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4を添加した細胞のみが総て細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈し、細胞はほとんど死滅していた。緩衝液のみ添加した培地において細胞数は約3倍に増加し、フコース硫酸含有多糖−Fを添加した培地において細胞数は約2.5倍に増加していた。
以上の結果から、フコース硫酸含有多糖−Fは無血清培地で癌細胞に対して強いアポトーシス誘発作用を持つが、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−4は、無血清培地でも血清培地でも非常に強いアポトーシス誘発作用を持つことが判明した。
更に確認のため、ヒト前骨髄性白血病細胞HL−60を、56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社製)を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)に5×104個/900μlとなるように懸濁した。この懸濁液9mlを2本用意し、それぞれに、120mMの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液(pH7)及び同緩衝液に10mg/mlで溶解させたF−Fd−4のフィルター処理液をそれぞれ1ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で16時間培養した。培養した細胞を遠心分離により上清と分離した。
得られた細胞を10mMのエチレンジアミンテトラアセテート及び0.5%のナトリウムラウロイルサルコシネートを含む50mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.8)20μlにて懸濁し、10mg/mlリボヌクレアーゼA(シグマ社製)を1μl添加して50℃、30分間処理した後、10mg/mlのプロテイネースKを1μl添加して50℃、30分間処理した。処理後の細胞をサンプルとして、2%のアガロースゲルを用いて100Vの定電圧の下で電気泳動を行った。このゲルをエチジウムブロミド溶液に30分間浸した後、トランスイルミネーターを用いてゲル中のDNAの状態を確認したところ、アポトーシスに特有のDNAラダーが確認された。さらに確認のためアポトーシスを誘発する試薬として知られているアクチノマイシンDを上記のF−Fd−4の代わりに用いて同様に操作したところ、F−Fd−4の場合と同じDNAラダーが確認できた。
すなわち、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖−F−分解酵素によりフコース硫酸含有多糖−Fを分解するとがん細胞に対するアポトーシス誘発作用が強くなることが判明した。
実施例36
21才女性及び32才男性の健常人静脈血を採血し、1リットル当りグルコースを100mg、CaCl2・2H2Oを0.74mg、MgCl2を19.92mg、KClを40.26mg、NaClを7371mg、トリス−塩酸を1756.5mgを含む液で2倍希釈後、リンパ球分離溶液(大日本製薬販売)をあらかじめ希釈血液の2倍容量を入れた遠心分離管の中に静かに重層し、18〜20℃、400gで30分間遠心分離した。遠心後、リンパ球分離溶液の上層のリンパ球画分を集めた。
こうして得られた健常リンパ球を1.9×105個ずつ24ウェルのプレートに添加し、1.8mlの10%牛胎児血清(56℃、30分処理後のもの)を含むRPMI−1640の培地に0.2mlの5mg/mlの上記各実施例で得られたフコース硫酸含有多糖、その分解物を1種類ずつ加えた培地を加え37℃で培養した。コントロールとしてはフコース硫酸含有多糖溶液の代りに生理食塩水を添加した。培養開始後、顕微鏡で各ウェルの細胞の形態変化及び生細胞数を測定した。この結果、各種フコース硫酸含有多糖、その分解物を加えたウェルもコントロールのウェルも細胞形態に差がなく、また生細胞数の差もほとんど無く、13日目にはどちらの細胞もほとんど死滅した。この結果より、フコース硫酸含有多糖、その分解物は癌細胞に対して強くアポトーシスを誘発させる濃度においても健常細胞に毒性を示さないことが判明した。
実施例37
フコース硫酸含有多糖−Uの固形がんに対する制がん作用
マウス固形がんMethA(4×106cells/マウス)を8週齢の雌性BALB/cマウス(体重約20g)の腹部に皮下注射した。その後、引き続いて同じ箇所に10日間実施齢6記載のフコース硫酸含有多糖−U(100mg/kg/day)を皮下注射した。一方コントロール群には生理的食塩水を同様に皮下注射した。2週間後にマウス腹部に形成されたがん組織を摘出して、その重量を測定した。結果を表2に示す。すなわち、コントロール群では平均癌重量は1.25gであったのに対し、フコース硫酸含有多糖−U投与群では0.28gであり、有意(コントロール群に対しp<0.01)な制がん作用を示した。抑制率は77.6%であった。
実施例38
フコース硫酸含有多糖の発がん予防作用
(1)6週令のSpragure−Dawleyラット(雄)19匹に、7.4mg/kgのアゾキシメタン(ナカライテスク社製)を背部皮下投与し、以降1週間に1回、10週目まで背部皮下投与した。なお投与時は、アゾキシメタンを0.9%の塩化ナトリウムを含むpH6.5の0.1Mリン酸緩衝液に溶解し、毎回100μlとなるように溶液の濃度を調整した。
上記19匹中5匹に対しては最初のアゾキシメタン投与と同時に連日、実施例1の記載に準じ調製した、ガゴメ昆布熱水抽出液70mlを30週目まで飲料水として経口投与した。この熱水抽出液は2mg/mlのフコース硫酸含有多糖混合物を含有し、140mg/kgのフコース硫酸含有多糖混合物が連日経口投与された。
なお上記19匹中14匹に対してはフコース硫酸含有多糖は投与せず、水道水を飲料水として与え、対照群とした。
30週目までに対照群の外耳巣がん発生が14匹中14匹見られたのに対し、フコース硫酸含有多糖混合物投与群は5匹中1匹であり、顕著な発がん抑制作用が認められた。
なお30週目までに対照群は3匹死亡したが、フコース硫酸含有多糖混合物投与群は全匹生存した。また30週目の対照群の平均体重が716gであるのに対し、フコース硫酸含有多糖混合物投与群の平均体重は817gであった。一方アゾキシメタン非投与のラット群(5匹)の平均体重は788gであり、フコース硫酸含有多糖混合物投与群の体重増加はアゾキシメタン非投与のラット群と同等であった。
次に、対照群の4匹を選抜し、30週目より連日、上記ガゴメ昆布熱水抽出液40ml(フコース硫酸含有多糖混合物80mg)を飲料水として経口投与した。36週目において、4匹中2匹の外耳巣がんが顕著に退縮し、フコース硫酸含有多糖の制がん作用が認められた。
以上フコース硫酸含有多糖の経口投与により、化学発がん剤による発がん予防作用、化学発がん剤による体重増加抑制の防止作用、更にはがん組織の退縮が認められた。
実施例39 注射剤
実施例1で製造したフコース硫酸含有多糖混合物を注射用蒸留水に溶解し5%溶液とした。この溶液を凍結乾燥用バイアル瓶1バイアル中に、フコース硫酸含有多糖として50mg充てんし、凍結乾燥を行った。別に溶解液として生理食塩水2mlを添加した。
実施例40 注射剤
下記処方に従い注射剤を調製した。
フコース硫酸含有多糖−U[実施例12] 40mg
生理食塩水 適量
1アンプル当り 2ml
同様に実施例12記載のフコース硫酸含有多糖−Fを使用し注射剤を調製した。
実施例41 錠剤
下記処方に従い錠剤を調製した。
フコース硫酸含有多糖標品(実施例1) 10mg
コーンスターチ 65mg
カルボキシメチルセルロース 20mg
ポリビニルピロリドン 3mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
1錠当り 100mg
実施例42 注射剤
F−Fd−1を注射用蒸留水に溶解し5%溶液とした。この溶液を凍結乾燥用バイアル瓶1バイアル中に、フコース硫酸含有多糖として50mg充てんし、凍結乾燥を行った。別に溶解液として生理食塩水2mlを添加した。
実施例43 注射剤
下記処方に従い注射剤を調製した。
実施例19−(6)で得られたフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物の凍結乾燥物 40mg
生理食塩水 適量
1アンプル当り 2ml
実施例44 錠剤
下記処方に従い錠剤を調製した。
実施例19−(6)で得られたフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物の凍結乾燥物 10mg
コーンスターチ 65mg
カルボキシメチルセルロース 20mg
ポリビニルピロリドン 3mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
1錠当り 100mg
発明の効果
本発明により不要若しくは病原細胞に対してアポトーシス誘発作用を有し、がん等の異常増殖細胞疾患や、ウイルス性疾患において、病変細胞にアポトーシスを誘発させ、該疾患の予防、治療に有効な薬剤が提供される。とりわけ大腸がん、胃がん等消化器系のがんの場合、本発明の薬剤を経口投与することによりがん細胞にアポトーシスを起こさせることができるため、天然食品由来のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を有効成分とする本発明の薬剤は非常に消化器系がんに適した制がん剤である。またその発がん予防効果により、化学発がん剤等による発がんも予防できる。本発明の薬剤は、食用の褐藻植物、食用のナマコ等、食用物質を原料として安価に大量に供給可能であり、且つ安全性が高い点においても優れている。また、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有する食品又は飲料を日常的に摂取することにより、健康を維持、増強することができる。また、本発明により簡便なアポトーシス誘発方法が提供され、本発明の方法を使用することにより、アポトーシス機構解明の研究、アポトーシス誘発阻害剤の開発等を行うことができる。
また本発明により、フコース硫酸含有多糖−Fを実質的に含まず、反応性の強い着色性物質を除去した糖鎖工学、医学等の分野で有用な本発明のフコース硫酸含有多糖−U及びその分解物が提供され、その効率的な製造方法も提供された。
更に本発明により、フレース硫酸含有多糖−Uを実質的に含まず、反応性の強い着色性物質を除去した糖鎖工学、医学等の分野で有用な、本発明のフコース硫酸含有多糖−F及びその分解物が提供され、その効率的な製造方法も提供された。
本発明により、フコース硫酸含有多糖−Fの構造解析や分解、フコース硫酸含有多糖−Fの生物活性の検索に有用なフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物の製造に用いることができるエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素、その製造方法、及びがん細胞に対するアポトーシス誘発作用が強いフコース硫酸含有多糖−Fの該酵素による低分子化物が提供された。
また、本発明によりこれまで安定的に製造されなかった本発明のエンド型コース硫酸含有多糖−F分解酵素を、カルシウムイオンの存在下極めて安定的に製造することができるようになった。さらに、本発明により、カルシウムイオンの存在下本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を極めて効率よく働かせることが可能となった。
Claims (13)
- フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有することを特徴とするアポトーシス誘発剤。
- フコース硫酸含有多糖が下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖である請求項1記載のアポトーシス誘発剤。
(1)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。
(2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコダイン分解酵素により実質上低分子化されない。 - 分解物が請求項2記載のフコース硫酸含有多糖の分解物である請求項1記載のアポトーシス誘発剤。
- 分解物が請求項3記載のフコース硫酸含有多糖にアルテロモナスsp.SN−1009(FERM BP−5747)が生産する下記の理化学的性質を有するエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を作用させ得られる分解物である請求項1記載のアポトーシス誘発剤。
(i)作用:下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖に作用して、該フコース硫酸含有多糖を低分子化させる。
(a)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。
(b)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により実質上低分子化されない。
下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖に作用しない。
(c)構成糖:ウロン酸を含有する。
(d)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.SA−0082(FERM BP−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化し、少なくとも下記式(I)、(II)、(III)で表される化合物より選択される一種以上の化合物が生成する。
(ii)至適pH:本酵素の至適pHは7〜8付近にある。
(iii)至適温度:本酵素の至適温度は30〜35℃付近である。 - 分解物が分子量分画されたものである請求項6記載のアポトーシス誘発剤。
- 分解物がフコース硫酸含有多糖にフラボバクテリウムsp.SA−0082(FERM BP−5402)が生産するエンド型フコイダン分解酵素を作用させ得られるポアサイズ10万の限外ろ過膜で排除されない分解物である請求項1記載のアポトーシス誘発剤。
- 分解物がフコース硫酸含有多糖の存在下でフラボバクテリウムsp.SA−0082(FERM BP−5402)を培養し、得られる培養液から分画されるポアサイズ10万の限外ろ過膜で排除されない分解物である請求項1記載のアポトーシス誘発剤。
- 分解物がフコース硫酸含有多糖を酸分解し得られた分解物である請求項1記載のアポトーシス誘発剤。
- 分解物が分子量分画されたものである請求項10記載のアポトーシス誘発剤。
- フコース硫酸含有多糖がガゴメ昆布、マ昆布、ヒバマタ、ワカメ、マナマコのいずれか由来のフコース硫酸含有多糖である請求項1記載のアポトーシス誘発剤。
- フコース硫酸含有多糖がガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖である請求項12記載のアポトーシス誘発剤。
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