JP3563372B2 - 固体高分子型燃料電池用電極構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池に用いられる電極構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石油資源が枯渇化する一方、化石燃料の消費による地球温暖化等の環境問題が深刻化しており、二酸化炭素の発生を伴わないクリーンな電動機用電力源として燃料電池が注目されて広範に開発されると共に、一部では実用化され始めている。前記燃料電池を自動車等に搭載する場合には、高電圧と大電流とが得やすいことから、高分子電解質膜を用いる固体高分子型燃料電池が好適に用いられる。
【0003】
前記固体高分子型燃料電池に用いる電極構造体として、白金等の触媒がカーボンブラック等の触媒担体に担持されイオン導伝性高分子バインダーにより一体化されることにより形成されている一対の電極触媒層を備え、両電極触媒層の間にイオン導伝可能な高分子電解質膜を挟持すると共に、各電極触媒層の上に、拡散層を積層したものが知られている。前記電極構造体は、さらに各電極触媒層の上に、ガス通路を兼ねたセパレータを積層することにより、固体高分子型燃料電池を構成する。
【0004】
前記固体高分子型燃料電池では、一方の電極触媒層を燃料極として前記拡散層を介して水素、メタノール等の還元性ガスを導入すると共に、他方の電極触媒層を酸素極として前記拡散層を介して空気、酸素等の酸化性ガスを導入する。このようにすると、燃料極側では、前記電極触媒層に含まれる触媒の作用により、前記還元性ガスからプロトンが生成し、前記プロトンは前記高分子電解質膜を介して、前記酸素極側の電極触媒層に移動する。そして、前記プロトンは、前記酸素極側の電極触媒層で、前記電極触媒層に含まれる触媒の作用により、該酸素極に導入される前記酸化性ガスと反応して水を生成する。従って、前記燃料極と酸素極とを導線により接続することにより電流を取り出すことができる。
【0005】
従来、前記電極構造体では、前記高分子電解質膜としてパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(例えば、デュポン社製ナフィオン(商品名))が広く利用されている。前記パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物は、スルホン化されていることにより優れたプロトン導伝性を備えると共に、フッ素樹脂としての耐薬品性とを併せ備えているが、非常に高価であるとの問題がある。
【0006】
そこで、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物に代わる廉価なイオン導伝性材料を用いて、固体高分子型燃料電池用電極構造体を構成することが検討されている。
【0007】
前記廉価なイオン導伝性材料として、例えば、ポリエーテルケトンやポリベンゾイミダゾールをスルホン化したものがある。しかし、前記イオン導伝性材料はいずれもイオン導電性、機械的強度に劣るという問題がある。
【0008】
一方、米国特許第5403675号明細書には、前記廉価なイオン導伝性材料として、剛直ポリフェニレンをスルホン化したものが提案されている。前記明細書記載の剛直ポリフェニレンのスルホン化物は、フェニレン連鎖を備える芳香族化合物を重合して得られるポリマーを主成分として、該ポリマーをスルホン化したものであり、イオン導電性に優れている。
【0009】
しかしながら、前記剛直ポリフェニレンのスルホン化物は靱性が低く、該剛直ポリフェニレンのスルホン化物を高分子電解質膜として電極構造体を構成したときに該高分子電解質膜が割れやすくなるという不都合がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、靱性に優れた高分子電解質膜を備え製造容易であると共に、優れた発電性能を備える固体高分子型燃料電池用電極構造体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明者らは種々検討を重ねた結果、特定の分子構造を備える共重合体のスルホン化物により前記高分子電解質膜を構成すると共に、該スルホン化物を溶媒に溶解した溶液から成膜して乾燥する際に、乾燥後に所定の範囲の溶媒を残存させることにより、優れた靱性を備える高分子電解質膜が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
そこで、本発明の固体高分子型燃料電池用電極構造体は、一対の電極触媒層と、両電極触媒層に挟持された高分子電解質膜とを備える固体高分子型燃料電池用電極構造体において、前記高分子電解質膜は一般式(1)で表される第1の繰返し単位と、一般式(2)で表される第2の繰返し単位との共重合体のスルホン化物を溶媒に溶解した溶液から成膜、乾燥してなり、乾燥後に前記溶媒を3〜12重量%の範囲で含むことを特徴とする。
【0013】
【化3】
【0014】
前記高分子電解質膜を構成するスルホン化物は、一般式(1)で表される第1の繰返し単位と、一般式(2)で表される第2の繰返し単位との共重合体をスルホン化して得られる。尚、本明細書において、前記電子吸引性基とは、−CO−、−CONH−、−(CF2)p−(pは1〜10の整数)、−C(CF3)2−、−COO−、−SO−、−SO2−等のハメット置換基常数がフェニル基のメタ位では0.06以上、フェニル基のパラ位では0.01以上の値となる2価の基をいう。また、本明細書において、前記電子供与性基とは、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−等の2価の基をいう。
【0015】
ここで、前記スルホン化は、電子吸引性基が結合していないベンゼン環、換言すれば電子供与性基のみが結合しているベンゼン環に対して起きる。従って、一般式(1)で表される第1の繰返し単位と、一般式(2)で表される第2の繰返し単位との共重合体をスルホン化すると、第1の繰返し単位の主鎖となるベンゼン環と、第2の繰返し単位の各ベンゼン環とにはスルホン酸基が導入されず、第1の繰返し単位の側鎖のベンゼン環にスルホン酸基が導入されることになる。そこで、前記共重合体では、第1の繰返し単位と第2の繰返し単位とのモル比を調整することにより、導入されるスルホン酸基の量を制御して、イオン導伝性と靱性とに優れた高分子電解質膜を得ることができる。
【0016】
前記第1の繰返し単位に用いるモノマーとして、具体的には、次式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0017】
【化4】
【0018】
また、前記第1の繰返し単位に用いるモノマーとして、具体的には、次式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、次式(5)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕スルホン等を挙げることができる。
【0019】
【化5】
【0020】
前記高分子電解質膜は、前記共重合体のスルホン化物を溶媒に溶解した溶液からキャスト法等により成膜し、乾燥することにより作成される。このとき、前記高分子電解質膜は、乾燥後に前記溶媒を3〜15重量%の範囲で含むことにより特に優れた靱性を得ることができる。
【0021】
前記高分子電解質膜は、乾燥後の前記溶媒の含有量が3重量%未満であるときには十分な靱性が得られず、15重量%を超えると十分な発電性能が得られない。
【0022】
前記溶媒は、優れた発電性能を備える電極構造体を得るために、N−メチルピロリドンが適している。
【0023】
本発明の電極構造体において、前記高分子電解質膜を構成する共重合体は、導入されるスルホン酸基の量を制御して、イオン導伝性と靱性とを好ましい範囲とするために、前記第1の繰返し単位10〜80モル%と、前記第2の繰返し単位90〜20モル%とからなることが好ましい。前記第1の繰返し単位が10モル%未満で、前記第2の繰返し単位が90モル%を超えると、前記共重合体に導入されるスルホン酸基の量が少なく、十分なイオン導伝性が得られないことがある。また、前記第1の繰返し単位が80モル%を超え、前記第2の繰返し単位が20モル%未満であると、前記共重合体に導入されるスルホン酸基の量が多くなり、十分な靱性が得られないことがある。
【0024】
また、本発明の電極構造体において、前記高分子電解質膜を構成する共重合体は、イオン導伝性と靱性とを好ましい範囲とするために、スルホン酸基を0.5〜3.0ミリグラム当量/gの範囲で含有することが好ましい。前記共重合体が含有するスルホン酸基の量が0.5ミリグラム当量/g未満では十分なイオン導伝性が得られないことがあり、3.0ミリグラム当量/gを超えると十分な靱性が得られないことがある。
【0025】
本発明の電極構造体は、一方の面に酸化性ガスを供給すると共に、他方の面に還元性ガスを供給することにより発電する固体高分子型燃料電池を構成することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の電極構造体の構成を示す説明的断面図であり、図2は本実施形態の電極構造体に用いる高分子電解質膜の初期イオン導伝率と該高分子電解質膜が含有する溶媒の量との関係を示すグラフ、図3は本実施形態の電極構造体に用いる高分子電解質膜のイオン導伝率保持率と該高分子電解質膜が含有する溶媒の量との関係を示すグラフ、図4は本実施形態の電極構造体に用いる高分子電解質膜の靱性と該高分子電解質膜が含有する溶媒の量との関係を示すグラフである。
【0027】
本実施形態の電極構造体は、図1示のように、一対の電極触媒層1,1と、両電極触媒層1,1に挟持された高分子電解質膜2と、各電極触媒層1,1の上に積層された拡散層3,3とからなる。
【0028】
前記電極構造体は、次のようにして製造することができる。
【0029】
まず、次式(3)で示される2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノンと、次式(4)で示される2,2−ビス〔4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを、50:50の重合比で重合させて次式(6)の共重合体を得る。
【0030】
【化6】
【0031】
前記共重合体は、ポリマー分子量がポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万の範囲にあることが好ましい。前記ポリマー分子量が1万未満では高分子電解質膜として好適な機械的強度が得られないことがあり、100万を超えると後述のように成膜のために溶媒に溶解する際に溶解性が低くなったり、溶液の粘度が高くなり、取り扱いが難しくなる。
【0032】
次に、前記共重合体に濃硫酸を加えてスルホン化し、例えば、イオン交換容量が2.3meq/gのスルホン化物を得る。次に、前記共重合体のスルホン化物を、N−メチルピロリドンに溶解して高分子電解質溶液とし、該高分子電解質溶液からキャスト法により成膜し、オーブンにて乾燥することにより、例えば、乾燥膜厚50μmの高分子電解質膜2を作成する。
【0033】
次に、カーボンブラック(ファーネスブラック)に白金粒子を所定の重量比(例えば、カーボンブラック:白金=1:1)で担持させ、触媒粒子を作成する。次に、イオン導伝性バインダー溶液(例えば、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(デュポン社製ナフィオン(商品名))に、前記触媒粒子を所定の重量比(例えば、イオン導伝性バインダー:触媒粒子=8:5)で均一に分散させ、触媒ペーストを調製する。
【0034】
次に、カーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子とを所定の重量比(例えば、カーボンブラック:PTFE粒子=4:6)で混合し、得られた混合物をエチレングリコール等の溶媒に均一に分散させたスラリーをカーボンペーパーの片面に塗布、乾燥させて下地層とし、該下地層とカーボンペーパーとからなる拡散層3を2つ作成する。
【0035】
次に、各拡散層3上に、前記触媒ペーストを、白金含有量が所定の量(例えば、0.5mg/cm2)となるようにスクリーン印刷し、乾燥させることにより電極触媒層1とし、電極触媒層1と拡散層3とからなる一対の電極を作成する。前記乾燥は、例えば60℃で10分間の乾燥を行い、次いで120℃で60分間の減圧乾燥を行う。
【0036】
次に、高分子電解質膜2を前記電極の電極触媒層1側で挟持し、ホットプレスを行って図1示の電極構造体を得た。前記ホットプレスは、例えば80℃、5MPaで2分間の一次ホットプレスを行い、次いで160℃、4MPaで1分間の二次ホットプレスを行う。
【0037】
また、図1示の電極構造体は、拡散層3,3の上にさらにガス通路を兼ねるセパレータを積層することにより、固体高分子型燃料電池を構成することができる。
【0038】
次に、前記高分子電解質膜2の乾燥後の溶媒の含有量を0〜30重量%の範囲で変量して、9種の高分子電解質膜2(乾燥膜厚50μm)を作成し、各高分子電解質膜2の初期イオン導伝率、イオン導伝率の保持率、靱性を測定した。
【0039】
前記初期イオン導伝率は、前記高分子電解質膜2を2枚の白金電極で挟持し、温度85℃、相対湿度90%の条件下、交流2端子法(周波数10kHz)で測定した。結果を図2に示す。
【0040】
また、前記イオン導伝率保持率は、前記初期イオン導伝率測定後、60日間放置した前記高分子電解質膜2について、前記初期イオン導伝率と同一の方法によりイオン導伝率を測定し、該イオン導伝率の前記初期イオン導伝率に対する百分率として算出した。結果を図3に示す。
【0041】
また、前記靱性は、前記高分子電解質膜2をJIS7号ダンベルに加工し、チャック間距離20mm、クロスヘッドスピード50ミリ/分、温度25℃、相対湿度50%の条件下、引張り破断伸びとして測定した。結果を図4に示す。
【0042】
図2及び図3から、前記高分子電解質膜2は、乾燥後の溶媒の含有量が15重量%を超えると、初期イオン導伝率、イオン導伝率保持率が急激に低下することが明らかであり、乾燥後の溶媒の含有量が3%未満では十分な引張り破断伸びが得られず、靱性が低いことが明らかである。
【0043】
従って、本実施形態の電極構造体は、前記高分子電解質膜2の乾燥後の溶媒の含有量を3〜15重量%の範囲とすることにより、前記イオン導伝率を備える高分子電解質膜2のために優れた発電性能が得られることが明らかであり、前記引張り破断伸び(靱性)を備える高分子電解質膜2のために容易に製造できることが明らかである。
【0044】
次に、比較のために、前記共重合体のスルホン化物を、N−メチルピロリドンに替えてジメチルアセトアミドに溶解して高分子電解質溶液とし、該高分子電解質溶液からキャスト法により成膜した以外は、前記実施形態と全く同一にして、乾燥膜厚50μm、乾燥後の溶媒の含有量が5重量%である高分子電解質膜を作成した。前記高分子電解質膜(比較例)について、前記実施形態と全く同一の方法により、初期イオン導伝率、イオン導伝率保持率、靱性を測定した。結果を、前記実施形態における乾燥後の溶媒の含有量が5重量%である高分子電解質膜2(実施例)と共に、表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から明らかなように、前記共重合体のスルホン化物をN−メチルピロリドンに溶解した高分子電解質溶液から成膜した前記高分子電解質膜(実施例)は、前記共重合体のスルホン化物をジメチルアセトアミドに溶解した高分子電解質溶液から成膜した前記高分子電解質膜(比較例)に対して、初期イオン導伝率と、引張り破断伸び(靱性)とはほぼ同等であるが、イオン導伝率保持率が格段に優れている。従って、前記実施例の高分子電解質膜を用いることにより、優れた発電性能を備える電極構造体を得ることができることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電極構造体の構成を示す説明的断面図。
【図2】本発明の電極構造体に用いる高分子電解質膜の初期イオン導伝率該高分子電解質膜が含有する溶媒の量との関係を示すグラフ。
【図3】本発明の電極構造体に用いる高分子電解質膜のイオン導伝率保持率と該高分子電解質膜が含有する溶媒の量との関係を示すグラフ。
【図4】本発明の電極構造体に用いる高分子電解質膜の靱性と該高分子電解質膜が含有する溶媒の量との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1…電極触媒層、 2…高分子電解質膜。
Claims (5)
- 前記溶媒は、N−メチルピロリドンであることを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電池用電極構造体。
- 前記共重合体は、前記第1の繰返し単位10〜80モル%と、前記第2の繰返し単位90〜20モル%とからなることを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電池用電極構造体。
- 前記共重合体は、スルホン酸基を0.5〜3.0ミリグラム当量/gの範囲で含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の固体高分子型燃料電池用電極構造体。
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