JP3566577B2 - 誘導電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,交流電動機を駆動するインバータの制御に関するもので,特に始動を滑らかにするものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術の1例を図2に示し,図2に基づいて従来の技術を説明する。
通常運転状態では,運転切換器7は通常運転制御器5を選択して,通常運転制御器5の出力の制御信号を電力変換器1に入力する。電力変換器1は入力した制御信号に基づいて誘導電動機4に電力を供給する。
【0003】
誘導電動機4に電力を供給し始めた直後の所定の微少期間t1は,運転切換器7は第1速度推定手段8を選択する。第1速度推定手段8は,誘導電動機4の入力電流が零または零に近い値の直流電流となるような制御信号を出力して,磁束演算手段6の出力の磁束ベクトルを入力して,前記微少期間t1の磁束ベクトルの軌跡である円弧の中心を求めて,円弧の中心角θを得て
ω0=θ/t1 ▲1▼
により誘導電動機4の回転角周波数ω0を求めて出力する。また第1速度推定手段8は,
φ0=f1−f0 ▲2▼
により誘導電動機4の残留磁束ベクトルφ0を求めて出力する。ここでf0は,円弧の中心の磁束ベクトルであり,f1は,前記微少期間t1の最終時点での磁束ベクトルである。
【0004】
誘導電動機4の回転角周波数ω0が0に近かったり,残留磁束が非常に小さい場合は,第1速度推定手段8において,磁束演算手段6の出力の磁束ベクトルは円弧状にならなかったり非常に小さな円弧になるので,回転角周波数ω0や残留磁束ベクトルφ0を求められない。その場合運転切換器7は,第1速度推定手段8を選択した後の所定の微少期間t2の間、第2速度推定手段9を選択する。第1速度推定手段8で回転角周波数ω0や残留磁束ベクトルφ0が求めることができた場合は運転切換器7は,通常運転制御器5を選択する。
【0005】
第2速度推定手段9は,前記誘導電動機の入力電流が所定の直流電流ベクトルix1となるようにして,第1速度推定手段8と同様に誘導電動機4の残留磁束ベクトルφ0を求めて出力する。また第2速度推定手段9は,
により残留磁束ベクトルφ0を求めて出力する。ここで,T2は誘導電動機4の2次時定数,Mは相互インダクタンス,jは虚数単位,expは指数関数である。誘導電動機4の回転角周波数ω0が0に近い場合は,第2速度推定手段9においても磁束演算手段6の出力の磁束ベクトルが円弧状にならないので,ω0を求めることができないが,その場合はω0=0およびφ0=0を出力する。
【0006】
運転切換器7は,第2速度推定手段9を選択した後は,通常運転制御器5を選択する。通常運転制御器5は,第1速度推定手段8または第2速度推定手段9で求められた誘導電動機4の回転角周波数ω0や残留磁束ベクトルφ0を回転角周波数や磁束の演算の初期値として使用して,誘導電動機4が所定の出力トルクや所定の速度状態となるような制御信号を出力する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
第1の問題を以下に示す。誘導電動機に直流電流ベクトルixを流した時の磁束ベクトルφは,
φ=φx+(φx0−φx)・exp(j・ω0・t−t/T2) ▲4▼
で表される。ここでtは経過時間,φx0は直流電流ベクトルixを流し始めたときの磁束,φxは
φx=M・ix/(1−j・ω0・T2) ▲5▼
である。▲4▼式より磁束ベクトルφは,半径φx0−φxの円弧を描き,その中心はφxとなることが分かる。
【0008】
従来の技術において,誘導電動機が回転している場合,第2速度推定手段9では回転角周波数ω0を求めることができるとしている。しかし,▲4▼式のφx0−φxが零に近い値の場合では,磁束ベクトルφの描く円の半径が非常に小さいことになり,その円の回転角を求めることができず,回転角周波数ω0を求めることができなくなる。すると第2速度推定手段9では,ω0=0として出力するので,通常運転制御器5においてω0は0でないにも関わらずω0=0として制御をすることになり,正常な制御ができなくなる。
【0009】
第2の問題を以下に示す。誘導電動機が回転している場合,第1速度推定手段8や第2速度推定手段9で用いる磁束演算手段6の出力の磁束ベクトルは円弧を描くとしているが,例えば誘導電動機の回転子のスロットがスキューされてないことにより空間高調波が大きい誘導電動機では,磁束ベクトルは前記空間高調波によって発生する高調波成分を含むようになり,磁束演算手段6の出力の磁束ベクトルは円弧に高調波が重畳されたようになる。すると円弧の中心および中心角を求める際の誤差が大きくなり,それによって求められる回転角周波数ω0や残留磁束ベクトルφ0に誤差を含むようになる。
【0010】
第3の問題を以下に示す。第2速度推定手段9において,残留磁束ベクトルφ0を▲3▼式によって求めているが,これは▲4▼式からφx0=0として導き出された式である。よって第2速度推定手段を開始した時に磁束が残っていてφx0が0でない場合は,残留磁束ベクトルφ0の計算を間違えてしまう。
【0011】
第4の問題を以下に示す。第1速度推定手段8の微少時間t1や第2速度推定手段9の微少時間t2が固定値の場合,磁束ベクトルの円弧の中心角θは回転角周波数ω0に比例して広がる。するとω0が非常に大きな場合は,θは180度を越えてしまうことがあり,最初の時点の磁束ベクトルと最後の時点の磁束ベクトルと円弧の中心の情報より中心角を求めている場合は,θの計算を間違う恐れがある。
本発明は上述した点に鑑みて創案されたもので、その目的とするところは、これらの課題を解消し、始動時における誘導電動機の回転角周波数や残留磁束ベクトルがより正確により確実に把握でき,通常運転制御におけるトルクや速度の制御への移行時に,過電流になったり急加減速などの過渡現象が生じなくなる誘導電動機の制御装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
つまり、その目的を達成するための手段は、
1.請求項1において、
前記第1の問題を解決するために,第2速度推定手段で速度が推定できなかった場合で,該第2速度推定手段の実行直後に,前記第2速度推定手段で流した電流と逆方向に直流電流を流すようにして他は前記第2速度推定手段と同じ方法で前記誘導電動機の回転角周波数と残留磁束ベクトルを推定する第3速度推定手段を具備する。
【0013】
2.請求項2において、
前記第2の問題を解決するために,前記第1,第2または第3の速度推定手段において,前記磁束演算手段の出力の磁束ベクトルの軌跡である円弧の中心を求める際に,円弧の最初から最後までの時間を3等分して,それぞれの時間領域における円弧の平均値を計算して3点を求めて,該3点を通る円の中心を求めて前記円弧の中心とすることを特徴とする。
【0014】
3.請求項3において、
前記第3の問題を解決するために,前記第2または第3速度推定手段において,該第2または第3速度推定手段で流す直流電流ベクトルをixとし,該第2または第3速度推定手段で得られた速度に相当する角周波数をω0とし,前記誘導電動機の2次時定数をT2,相互インダクタンスをMとし,虚数単位をjで表して,前記磁束演算手段の出力の磁束ベクトルの軌跡である円弧の中心のベクトルをf0とし,前記第2または第3速度推定手段の最後の時点での前記磁束演算手段の出力の磁束ベクトルをf1として,残留磁束ベクトルφ0を,
φ0=M・ix/(1−j・ω0・T2)+f1−f0 ▲6▼
により求める第2または第3速度推定手段を具備する。
【0015】
4.請求項4において、
前記第4の問題を解決するために,前記第1速度推定手段の微少時間t1,および前記第2または第3速度推定手段の微少時間t2を,所定の最大時間と,前記磁束演算手段の出力の磁束ベクトルの軌跡である円弧の中心角が所定の角度になる時間との短い方の時間とすることを特徴とする。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳述する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を図1のブロック図に示し,図1に基づいて説明する。なお、符号1〜9の説明は,従来技術で説明したので省く。
第2速度推定手段9において,回転角周波数ω0を求めることができなかった場合は,運転切換器7は,第2速度推定手段9を選択した後の所定の微少期間t2の間,第3速度推定手段10を選択する。
第3速度推定手段10は,前記誘導電動機の入力電流が所定の直流電流ベクトルix2となるようにして,第2速度推定手段9と同様に,誘導電動機4の回転角周波数ω0と残留磁束ベクトルφ0を求めて出力する。この場合流す直流電流ベクトルの向きは第2速度推定手段9の場合の逆とする。
つまりix2=−ix1の関係とする。第2速度推定手段9で回転角周波数を求めることができないのは,回転が停止している場合か▲4▼式のφx0−φxが零に近い値の場合のどちらかである。第3速度推定手段10においては,ix2=−ix1とすることにより,後者の場合を除くことができるので,回転角周波数を間違いなく求めることが可能となる。
【0017】
本実施例の第2速度推定手段9や第3速度推定手段10において,残留磁束ベクトルφ0は,▲3▼式の代わりに▲6▼式で求められる。ここで▲6▼式のixには,第2速度推定手段9の場合ix1を適用し,第3速度推定手段10の場合ix2を適用する。▲6▼式の第1項は▲4▼式の第1項を表しており,▲6▼式のf1−f0の項は▲4▼式の第2項のt=t2に相当するため,第2または第3速度推定手段を開始した時に磁束が残っていてφx0が0でなくても,▲6▼式では正確に残留磁束ベクトルφ0を求めることができる。
【0018】
本実施例の第1速度推定手段8や第2速度推定手段9や第3速度推定手段10の磁束ベクトル軌跡の円弧の中心を求める方法を図3に基づいて説明する。
微少期間t1またはt2を3等分してそれらを時間順に期間ta,tb,tcとする。期間taでの磁束軌跡の平均点をPaとし,他の2つの期間の磁束軌跡の平均点をそれぞれPb,Pcとして求める。これらPa,Pb,Pcの3点を通る円の中心を求める。Pa点からPc点までの円弧の中心角θxを求め,それを1.5倍して▲1▼式で用いるθとする。
【0019】
本実施例の第1速度推定手段8の微少期間t1および第2速度推定手段9や第3速度推定手段10の微少期間t2は,磁束演算手段6の出力の磁束ベクトルの軌跡である円弧の中心角が所定の角度例えば180度を越える時間とする。
つまり各速度推定手段において随時中心角を求めておき,その中心角が例えば180度を越えた時点で回転角周波数ω0や残留磁束ベクトルφ0を求めて,各速度推定手段を終了するようにする。なお円弧の中心角が所定の角度を越えていない場でも所定時間例えば20msecを経過していれば,回転角周波数ω0や残留磁束ベクトルφ0を求めて,各速度推定手段を終了するようにする。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば,始動時における誘導電動機の回転角周波数や残留磁束ベクトルがより正確により確実に把握できるため,通常運転制御におけるトルクや速度の制御への移行時に,過電流になったり急加減速などの過渡現象が生じなくなり,実用上、極めて有用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例を表すブロック図である。
【図2】従来の1例を表すブロック図である。
【図3】速度推定手段での磁束ベクトル軌跡の1例である。
【符号の説明】
1 電力変換器
2 電流ベクトル検出器
3 電圧ベクトル検出器
4 誘導電動機
5 通常運転制御器
6 磁束演算手段
7 運転切替器
8 第1速度推定手段
9 第2速度推定手段
10 第3速度推定手段
Claims (4)
- 誘導電動機の入力電圧ベクトルから一次抵抗と漏れインダクタンスによる電圧降下を除いたものを時間積分して磁束ベクトルを演算する磁束演算手段と,前記誘導電動機に電力を供給し始めた直後の所定の微少期間t1に,前記誘導電動機の入力電流が零または零に近い値の直流電流となるようにして,前記磁束演算手段の出力の磁束ベクトルの軌跡である円弧の中心を求めて前記誘導電動機の回転角周波数と残留磁束ベクトルを推定する第1速度推定手段と,前記第1速度推定手段で速度が推定できなかった場合で,該第1速度推定手段の実行直後の所定の微少期間t2に,前記誘導電動機の入力電流が所定の直流電流ベクトルとなるようにして,前記磁束演算手段の出力の磁束ベクトルの軌跡である円弧の中心を求めて前記誘導電動機の回転角周波数と残留磁束ベクトルを推定する第2速度推定手段とを具備した誘導電動機に電力を供給する電力変換器を制御する誘導電動機の制御装置において,
前記第2速度推定手段で速度が推定できなかった場合で,該第2速度推定手段の実行直後に,前記第2速度推定手段で流した電流と逆方向に直流電流を流すようにして他は前記第2速度推定手段と同じ方法で前記誘導電動機の回転角周波数と残留磁束ベクトルを推定する第3速度推定手段を具備することを特徴とする誘導電動機の制御装置。 - 前記第1,第2または第3の速度推定手段において,前記磁束演算手段の出力の磁束ベクトルの軌跡である円弧の中心を求める際に,円弧の最初から最後までの時間を3等分して,それぞれの時間領域における円弧の平均値を計算して3点を求め,該3点を通る円の中心を求めて前記円弧の中心とすることを特徴とする請求項1記載の誘導電動機の制御装置。
- 前記第2または第3速度推定手段において,該第2または第3速度推定手段で流す直流電流ベクトルをixとし,該第2または第3速度推定手段で得られた速度に相当する角周波数をω0とし,前記誘導電動機の2次時定数をT2,相互インダクタンスをMとし,虚数単位をjで表して,前記磁束演算手段の出力の磁束ベクトルの軌跡である円弧の中心のベクトルをf0とし,前記第2または第3速度推定手段の最後の時点での前記磁束演算手段の出力の磁束ベクトルをf1として,残留磁束ベクトルφ0を,
φ0=M・ix/(1−j・ω0・T2)+f1−f0
により求める第2または第3速度推定手段を具備することを特徴とする請求項1又は2記載の誘導電動機の制御装置。 - 前記第1速度推定手段の微少時間t1,および前記第2または第3速度推定手段の微少時間t2を,所定の最大時間と,前記磁束演算手段の出力の磁束ベクトルの軌跡である円弧の中心角が所定の角度になる時間との短い方の時間とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の誘導電動機の制御装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP09078499A JP3566577B2 (ja) | 1999-03-31 | 1999-03-31 | 誘導電動機の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP09078499A JP3566577B2 (ja) | 1999-03-31 | 1999-03-31 | 誘導電動機の制御装置 |
Publications (2)
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|---|---|
| JP2000287491A JP2000287491A (ja) | 2000-10-13 |
| JP3566577B2 true JP3566577B2 (ja) | 2004-09-15 |
Family
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Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP09078499A Expired - Lifetime JP3566577B2 (ja) | 1999-03-31 | 1999-03-31 | 誘導電動機の制御装置 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3566577B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP6021145B2 (ja) * | 2012-08-22 | 2016-11-09 | 東洋電機製造株式会社 | 誘導機制御装置 |
-
1999
- 1999-03-31 JP JP09078499A patent/JP3566577B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
| Publication number | Publication date |
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| JP2000287491A (ja) | 2000-10-13 |
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