JP3567301B2 - 耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents
耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビルや倉庫、家屋などの建材として用いられる金属製シャッター部材用の鋼板であって、特に腐食性の厳しい環境において使用されるステンレス鋼製のシャッター部材用鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
建材用の金属製シャッター部材には亜鉛めっき鋼板を原板とする塗装鋼板が従来から最も一般的に用いられているが、耐食性の観点からステンレス鋼も一部使用されている。シャッター部材用のステンレス鋼には、これまで、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼が適用されてきた。その理由としては「加工性」の確保が挙げられる。
【0003】
建材用のシャッターは、図1に示すように、主としてスラット(1),座板(2),およびガイドレール(3)からなり、これら各部材は端部に曲げ加工部を有している。このうちスラット部材および座板部材は、シャッターの巻上げ・巻下げが可能なように、部材幅方向端部に形成された曲げ加工部によって互いに連結される。図2にスラット部材の断面形状の一例を示す。巻上げ・巻下げのスムーズな動作を確保し、かつ落下などの事故防止のために、スラット部材の曲げ加工部には高い寸法精度を有する複雑な形状が要求される。このため一般には軟質で比較的加工の容易な普通鋼の亜鉛めっき鋼板が用いられるが、ステンレス鋼を使用する場合にはフェライト系ステンレス鋼よりも伸びが大きく加工性に優れているオーステナイト系ステンレス鋼が使用されてきた。
【0004】
また、スラット部材等はロール成形によって製造されるが、その成形時や、使用時の巻上げ・巻下げ時における擦れによって疵が生じるやすいために、ステンレス鋼の表面仕上を、疵が目立ちにくいHL(ヘアライン)仕上にしたり、塗装を行うなどの対策が取られている(例えば特開平7−26858号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に屋根・外装用途でステンレス鋼を使用する場合には、単に腐食による穴開きが生じないといった機能面での性能だけでなく、発銹による見映えの低下が少ないという意匠面での性能も重要視される。ところが、建材用シャッターは開閉動作によって疵付きによる不動態皮膜の破壊が生じることがあり、取り付けられる場所は軒下部のように雨によって海塩粒子が洗い流され難い場所であることが多い。さらにシャッターは、夜間は露出され海塩粒子の飛来とともに結露による湿潤環境に曝され、なおかつ昼間は巻上げによって収められているため乾燥するまでに長時間を要する場合もあるなど、金属の腐食が助長されやすい状態で使用されるのが通常である。従って、海岸近傍など特に厳しい腐食環境で使用されるステンレス鋼製シャッター部材には、非常に高レベルの耐候性を有するステンレス鋼素材の適用が要求される。
【0006】
しかし、SUS304レベルのオーステナイト系ステンレス鋼は、従来から屋根・外装などの建材用途において使用されているが、海岸地区など海塩粒子が飛散する環境下で使用した場合には顕著な発銹が認められることがある。また、ステンレス鋼の表面に塗装を行った場合においてもシャッター開閉時の擦れによって塗膜の破壊が生じることがあり、素地が露出した場合には塗膜と素地の界面において隙間腐食が起こり、より顕著な腐食に至る場合もある。
【0007】
オーステナイト系ステンレス鋼においても高Cr(高Mo)系の材料を使用すれば発銹そのものは改善することができる。しかし、オーステナイト系ステンレス鋼はフェライト系ステンレス鋼に比べて加工硬化が大きいため、耐候性を十分に確保できるレベルまで合金元素を添加したオーステナイト系ステンレス鋼ではかなり強度が上昇し、ロール成形ができない(例えばミルパワーが不足する)といった問題が生じる。
【0008】
また、表面肌をHL仕上とすることは表面の疵を目立ちにくくするうえで非常に有効な手段であるが、欠点もある。すなわち、HL仕上はステンレス鋼表面の不動態皮膜を不安定にするため、2B仕上など他の一般的な仕上材に比べ耐食性が劣化しやすい。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消すべく、▲1▼海岸地区での使用に耐え得る非常に高い耐候性を有し、▲2▼既存設備によるロール成形が可能であり、▲3▼シャッター使用時等に発生する疵が目立ちにくい、という性質を同時に具備する、従来存しなかったシャッター部材用ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、建材用シャッター部材に加工される鋼板であって、以下の構成を特徴とする耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板によって達成される。
【0011】
すなわち請求項1の発明は、Cr含有量とMo含有量の総和が18重量%以上27重量%未満であるフェライト系ステンレス鋼からなり、冷間圧延(調質圧延を含む)によって形成されたRz≧2μmの凹凸を表面に有し、かつ、引張強さが600N/mm2以下であることを特徴としたものである。
請求項2の発明は、請求項1のフェライト系ステンレス鋼として、Cr:16〜26重量%,Mo:0.5〜6重量%,Nb:0〜1.0重量%(無添加の場合を含む)を含有し、Cr含有量とMo含有量の総和が22重量%以上27重量%未満となるものを用いたものである。また請求項3の発明は、請求項1のフェライト系ステンレス鋼として、Cr:16〜26重量%,Mo:0.5〜6重量%,Nb:0〜1.0重量%(無添加の場合を含む)を含有し、さらにTi:0.05〜0.5重量%またはAl:0.03〜0.3重量%の1種以上を含有し、Cr含有量とMo含有量の総和が22重量%以上27重量%未満となるものを用いたものである。
【0012】
以上は凹凸形成手段を冷間圧延(調質圧延を含む)に限るものであるが、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%以上の場合にはそのような規制は必ずしも必要ではない。そこで請求項4の発明は、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%以上であるフェライト系ステンレス鋼からなり、Rz≧2μmの凹凸を表面に有し、かつ、引張強さが600N/mm2以下であることを特徴としたものである。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、凹凸形成手段を特に冷間圧延(調質圧延を含む),研磨,またはショットブラストに限定したものである。
請求項6の発明は、請求項4または請求項5のフェライト系ステンレス鋼として、Cr:24.5〜32重量%,Mo:1.0〜2.5重量%,Nb:0〜0.5重量%(無添加の場合を含む)を含有し、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%以上となるものを用いたものである。また請求項7の発明は、請求項4または請求項5のフェライト系ステンレス鋼として、Cr:24.5〜32重量%,Mo:1.0〜2.5重量%,Nb:0〜0.5重量%(無添加の場合を含む)を含有し、さらにTi:0.05〜0.5重量%またはAl:0.03〜0.3重量%の1種以上を含有し、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%以上となるものを用いたものである。
【0013】
なお、本発明でいう「耐疵付き性」とは鋼材表面に付いた疵の目立ちにくさを意味する。RzはJIS B 0601に規定される十点平均粗さを意味する。表面に凹凸を形成させるための冷間圧延は、調質圧延機等のワークロール表面の凹凸形状を板表面に転写するものであり、その代表的な表面仕上としてはダル仕上やエンボス仕上が挙げられる。また研磨による代表的な表面仕上としてはHL仕上が挙げられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、種々の金属組織,成分組成,材料特性を有するステンレス鋼を用いて、耐候性,ロール成形性,耐力・引張強さ,耐疵付き性を評価した。その実験方法は次のとおりである。
【0015】
供試材は、表1に示す化学成分値を有するステンレス鋼(フェライト系,オーステナイト系,および二相系)を使用した。材料の板厚は重量シャッターとして用いられる1.6mm厚とした。表面仕上は、特に記述のないものはダル仕上(表面粗さRz:約4〜6μm)とし、一部、HL,2D,2B,BA,鏡面(バフ),およびエンボス仕上も用いた。
【0016】
【表1】
【0017】
耐候性は、山口県徳山市の海岸から約5mに位置する場所での大気暴露試験(2年間)によって評価した。板素材を屋根型形状に加工したものを暴露し、屋根面を想定した部位および軒下面を想定した部位の評価ができるようにした。発銹の程度は、JIS Z 2371の「附属書 レイティングナンバ法」に規定されるレイティングナンバ(以下「RN」と表示する)で表した。RN10が元の状態から全く変化していない場合(発銹皆無)であり、RN値が小さくなるほど発銹が多いことを意味する。ステンレス鋼では通常RN2のレベルまでしか下がらない。一般的にRN6以上になると実用的に良好であると言える。
【0018】
ロール成形性は、実際にロール成形加工を実施してスラット部材を作成し、現行のSUS304部材との成形性の違いで評価した。すなわち、現行のSUS304部材とほぼ同一条件でそのまま成形できた場合を○、材料のスプリングバックが大きい等で、大幅なロール調整が必要であった場合を△、ロール調整を行っても所定の形状が得られなかった場合を×として表した。
【0019】
耐力・引張強さは、JIS Z 2201に規定される13B号引張試験片(圧延方向)を切り出し、JIS Z 2241に規定される引張試験を実施して求めた。耐力は0.2%オフセット耐力で表した。
【0020】
耐疵付き性は、前記ロール成形試験を実施した後のサンプル表面を目視観察し、直近で観察しても疵の存在が認識できない場合を○、直近では疵が認められるが約5m離れると認識できない場合を△、約5m離れた位置からでも疵の存在が認識できる場合を×として表した。
これらの実験結果は、表2および表3にまとめて示した。
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
以下、実験結果に基づき、本発明を特定するための事項について説明する。
【0024】
〔フェライト系ステンレス鋼〕
フェライト系ステンレス鋼は、前述のようにオーステナイト系ステンレス鋼と比べ一般に延性は劣る。しかし反面、加工硬化は大きくないため、高Cr(高Mo)化を図った場合においてはむしろフェライト系ステンレス鋼の方がロール成形に有利であると言える。
また、汎用鋼種どうしを比較した場合、フェライト系ステンレス鋼の代表鋼種SUS430は、オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種SUS304と比べ、耐食性も劣る場合が多い。しかし、高Cr(高Mo)化を図った場合の耐候性(耐発銹性)に関して言えば、後述の図3からわかるように、フェライト系ステンレス鋼の方がより少ないCr量・Mo量で顕著な耐候性向上効果を示すことが確認された。そこで本発明では高Cr(高Mo)化を図る場合にロール成形性と耐候性の点で有利なフェライト系ステンレス鋼を採用することとした。
【0025】
〔(Cr+Mo)量〕
ステンレス鋼の耐食性を改善するためにはCr量の増加やMoの添加が有効であることは知られており、一般には孔食指数Cr+3Moなどで整理されている。つまり、MoはCrの約3倍の腐食抑制作用があると言われている。しかし、耐候性のように表面皮膜の強さに大きく依存する耐食性においては、不動態皮膜を構成するCrの作用が大きく、一般的な孔食指数Cr+3Moでは適切に評価できないことが多い。そこで、本発明者らは高Crフェライト系ステンレス鋼の耐候性をより明確に評価するための改良型の孔食指数を求めるべく種々の実験を行い、その結果、Cr+MoがRN値とバラツキの少ない良い対応を示すことを突き止めた。
【0026】
図3に、フェライト系ステンレス鋼とオーステナイト系ステンレス鋼について、屋根面での耐候性に及ぼす(Cr+Mo)量の影響を示す。Cr+Moが特に約18〜25%の範囲において、フェライト系ステンレス鋼の耐候性はオーステナイト系ステンレス鋼より顕著に向上していることがわかる。これは、フェライト系ステンレス鋼ではオーステナイト系ステンレス鋼に比べてより強固な不動態皮膜が形成しているためであると考えられる。
【0027】
図4に、フェライト系ステンレス鋼の耐候性に及ぼす(Cr+Mo)量の影響について、屋根面と軒下面を比較して示す。この図から、軒下面の方が屋根面より腐食環境が厳しいことがわかる。また、いずれの部位においてもCr+MoでRN値を整理すると、RN値の変化に対するCr量およびMo量の影響が非常に明瞭に把握できることがわかる。つまり、Cr量・Mo量の増加に伴ってRN値が急変するいわば臨界点を捕らえることができる点で、Cr+Moという指標は高Crフェライト系ステンレス鋼の耐候性を評価するうえで非常に意義深いと言える。具体的には、Cr+Moが約18%以上になると屋根面の耐候性が顕著に向上し、RN6のレベルに達する。また、Cr+Moが22%以上で軒下面での耐候性も急激に改善され、RN6のレベルに達する。これらの結果から、本発明では(Cr+Mo)量が18重量%以上のフェライト系ステンレス鋼を素材として用いることが必要であり、軒下面での使用を考慮すると(Cr+Mo)量は22重量%以上とすることが望ましい。さらにRN8を越える非常に良好な耐候性が要求されるシャッター部材用としては(Cr+Mo)量は27重量%以上とすることが望ましい。なお、後述するとおり、冷間圧延(調質圧延を含む)以外の手段で表面凹凸を形成させる場合には(Cr+Mo)量は27重量%以上を必要とする。
【0028】
〔表面粗さRz〕
表3には、表1のF4鋼およびF5鋼を用いて種々の表面仕上および表面粗さとした場合おける耐疵付き性および耐候性を示した。耐疵付き性が良好であると判断されたのはRz≧2μmのものに限られていた。2D,2B,BA,鏡面の各表面仕上ではRz≧2μmとすることは極めて困難であり、これらの仕上においては良好な耐疵付き性は得られない。一方、耐候性は2D,2B,BA,鏡面の各仕上はもとより、冷間圧延のワークロールによって凹凸を形成させたダル仕上およびエンボス仕上においても良好に維持できることが確認された。ただしCr+Moが27%未満であるF4鋼ではHL仕上において耐候性が劣化していた。これに対し、Cr+Moが27%以上であるF5鋼ではHL仕上やショットブラスト仕上など、冷間圧延以外の手段でRz≧2μmとした場合にも良好な耐候性を有することがわかった。
したがって本発明では、耐疵付き性の観点からRzが2μm以上の凹凸を表面に形成させることとし、Cr+Moが27%未満の場合には耐候性の観点からその凹凸を形成させる手段として冷間圧延(調質圧延を含む)による方法を用いたものに限定した。また、Rzが大きくなりすぎると圧延ロールの加工等の設備上の困難が生じるため、例えばダル仕上ではRz≦10μm,エンボス仕上ではRz≦30μm,研磨仕上ではRz≦5μm,ショットブラスト仕上ではRz≦30μmとすることが好ましい。
なお、特に意匠性を重要視するシャッター部材に適用する場合は、Rzが4μm以上の凹凸を表面に形成させることが望ましい。また、特にエンボス圧延前に板の形状修正を行って予め板の平坦度を高めておくと、より柄に均一性のある良好な意匠性が得られる。
【0029】
〔引張強さ〕
シャッター部材は複雑形状かつ高い寸法精度の曲げ加工部分を必要とするので、素材鋼板の強度が高すぎると成形加工(一般的にはロール成形)が非常に難しくなる。高Cr(高Mo)化を図る場合、前述のようにフェライト系ステンレス鋼は加工硬化が比較的小さい点で、オーステナイト系ステンレス鋼よりも成形加工に有利であると言える。例えば表2の結果を見ると、オーステナイト系ステンレス鋼ではA3鋼(Cr+Moは約22%)が一応の形状が得られる上限に近い成分である。これに対しフェライト系ステンレス鋼ではF5鋼・F6鋼(Cr+Moは30%以上)においてもロール成型が可能であることがわかる。しかし、高合金化することは固溶強化により素材自体の強度を増大させることにもなるので、フェライト系ステンレス鋼といえども加工性の面での適用限界がある。本発明者らが素材強度とロール成形性との関連性を調査した結果、成形加工前における素材鋼板の引張強さが600N/mm2を超えると、現在一般的に使用されているシャッター製造設備におけるロール成形ラインを利用して良好な形状のシャッター部材を製造することは困難になることがわかった(表2参照)。現状のラインが利用できなければシャッター部材の普及に直ちに寄与することは難しい。そこで、本発明では鋼板の引張強さを600N/mm2以下と定めた。
【0030】
〔合金元素〕
次に、各合金元素の作用について説明する。なお、本発明で規定したCr,Mo,Nb,Ti,Al以外の元素についても望ましい範囲を説明する。
【0031】
C,Nは、いずれもステンレス鋼に不可避的に含まれる元素である。C,N含有量を低減すると軟質になり、加工性が向上するとともに炭窒化物の生成が少なくなる。また、C,N含有量の低減に伴って溶接性および溶接部の耐食性も向上する。したがって、C,N含有量はそれぞれ0.05重量%以下に制限することが望ましい。
【0032】
Siは、溶接部の高温割れや溶接部の靱性に対して有害な元素である。また、ステンレス鋼を硬質にするのでSi含有量は低い方が好ましい。このため、Si含有量は1.0重量%以下に制限するのが望ましい。
Mnは、ステンレス鋼中に微量に存在するSと結合して可溶性硫化物MnSを形成することにより、耐候性を低下させる有害な元素である。このため、Mn含有量は1.0重量%以下に制限することが望ましい。
【0033】
Pは、母材および溶接部の靭性を損なうのでP含有量は低い方が好ましい。しかし、ステンレス鋼などの含Cr鋼を工業的に脱Pすることは困難であり、P含有量を極度に低下させることは製造コストの上昇を招く。したがって、P含有量の上限は0.04重量%とすることが望ましい。
Sは、耐候性および溶接部の高温割れに悪影響をおよぼす有害な元素であるため、S含有量は低い方が好ましい。S含有量は0.01重量%以下に制限することが望ましい。
【0034】
Niは、フェライト系ステンレス鋼の靭性改善に有効な元素である。しかし、多量のNi添加はコスト高の原因になるばかりでなく、硬さ上昇の原因にもなる。本発明においては、通常のフェライト系ステンレス鋼で不可避的不純物として混入される程度の0.6%をNi含有量の上限とすることが望ましい。
【0035】
Crは、ステンレス鋼の耐食性を高める主要元素であり、耐候性,耐孔食性,耐隙間腐食性,その他一般的耐食性を著しく向上させる。シャッター部材に適用する場合、耐食性改善に及ぼすCrの作用は16重量%未満では不十分であり、20重量%以上の含有が好ましい。しかし、Cr含有量が35重量%を越えると著しい脆化が生じ、薄板製造,製品加工などの際に困難を伴う。品質・歩留りを安定的に製造するためには32重量%以下とすることが好ましい。なお、先に述べたとおり本発明では(Cr+Mo)量を一定以上とすることによって耐候性を飛躍的に高めており、Cr+Moを27%以上とすると非常に高い耐候性が得られる。ただし後述するようにMoを2.5重量%以下に抑えることが好ましいので、その場合にはCr含有量を24.5重量%以上にすればCr+Moを27%以上にできる。したがって、Cr含有量は16〜35重量%にすることが必要であるが、20〜32重量%とすることが好ましく、さらにMo含有量2.5重量%以下の条件でCr+Moを27%以上にするためにCr含有量は24.5〜32重量%とすることが一層望ましい。
【0036】
Moは、Crとともに鋼の耐候性を高めるために有効な元素であり、その効果はCrが増すにつれて大きくなる。またMoは溶液中に解けてモリブデン酸イオンとなり、仮に腐食が発生した場合も腐食の進行を抑制するインヒビターとして作用する。このようなMoの作用は0.5重量%以上の含有により顕著となり、1.0重量%以上とするのがより効果的である。ただし6重量%を越えて含有させると鋼を硬質にし、靭性の低下を生じるため薄板製造,製品加工などが難しくなる。製造性の面からはMo含有量の上限を2.5重量%とすることが好ましい。したがって、Mo含有量は0.5〜6重量%に規定するが、1.0〜2.5重量%とすることが望ましい。
【0037】
Nbは、本発明で対象とするC量レベルのフェライト系ステンレス鋼で問題となる粒界腐食を防止するのに有効な元素であるが、1重量%を超えて含有させると溶接部の靭性を阻害する。またNbは、Tiに比べて耐孔食性向上の効果は小さいが、表面疵発生の原因となりにくいという特長がある。Nbを添加する場合は1.0重量%以下の含有量にすることが望ましい。
【0038】
Tiは、C,Nを固定して粒界腐食を防止する効果とともに、Sを固定してMnSの生成による耐孔食性の低下を防ぐ効果もある。しかしTi含有量が多すぎるとクラスター状の介在物TiNを生成し、素材の表面疵発生の原因となったり、溶接部の靭性不良を招いたりする。したがってTiを添加する場合は、耐食性の面から0.05重量%以上、表面性状の面から0.5重量%以下の範囲とすることが望ましい。
【0039】
Cuは、亜硫酸ガス腐食環境下における耐候性を改善する元素であり、高濃度の亜硫酸ガス腐食環境下で使用される建材に適用する場合には非常に有効である。ただし、多量の添加は固溶強化により材料を硬質にし、加工性を低下させる。したがって、Cuを添加する場合は含有量の上限を0.5重量%以下とすることが望ましい。
【0040】
Alは、酸洗後の皮膜を改質し、耐食性を向上させる上で有効な元素である。また特にTiと複合添加すると加熱時に優先的にAlの酸化皮膜を形成してCrの酸化損失を防止するので再不動態化能の低下を抑制することができる。Al量が0.03重量%未満ではAl酸化皮膜が形成されにくく、また、0.3重量%を超えるとTiと同様、介在物の生成により表面清浄を低下させる。したがって、Alを添加する場合は0.03〜0.3重量%の含有量とすることが望ましい。
なお、Nb,Ti,Alを複合添加するとロール成形性を改善する効果が生ずる。このことは、F5鋼(Nb,Ti,Al複合添加)とF6鋼(Nb,Al添加,Ti無添加)のロール成形性の差によって確かめられている(表2参照)。
【0041】
【実施例】
表1に示したF4鋼およびF5鋼、ならびにA1鋼(SUS304)を用いて実際にスラット部材を製作し、大気暴露試験を行った。
これらの供試材は通常の操業ラインで製造したものである。すなわち、電気炉・転炉で溶製し、連続鋳造し、熱間圧延で3.5〜4.5mm厚の熱延鋼帯とし、1050℃で熱処理したのち酸洗し、冷間圧延で1.6mm厚の冷延鋼帯とし、さらに焼鈍・酸洗を行った。その後、F4鋼およびF5鋼スキンパス圧延機により表面をダル仕上とし、一方A1鋼はHL仕上とした。その際、F4鋼はRz1.8μm(比較例)、F5鋼はRz4.3μm(発明例)のダル目を付けた。またA1鋼はRz2.1μmのヘアライン肌とした。その後、所定の幅にスリットし、ロール成形により同一条件でスラット部材に成形した。
【0042】
F4鋼,F5鋼とも従来材であるA1鋼と同様にほぼ良好な形状が得られており、既存設備でのロール成型は十分に可能であることが確かめられた。加工後の表面にはいずれも若干の加工疵が付いていることが確認された。ただし、ダル仕上の表面粗さがRz4.3μmであるF5鋼では、Rz1.8μmであるF4鋼と比べ、表面疵が格段に目立ちにくく、A1鋼のHL仕上と比較しても同等以上に良好な外観を呈していた。
【0043】
各サンプルを2枚ずつ実際のシャッターと同様に連結させて、海岸から約5mの位置にある暴露試験場(前述)に軒下面を想定してセットした。
6か月経過後の外観を観察した結果、SUS304であるA1鋼はほぼ全面的に発銹していた。これに対し、22%Cr系のF4鋼では若干の「しみ」が認められる程度、30%Cr系のF5鋼に至っては暴露試験前とほとんど同様の外観を呈しており、非常に優秀な耐候性を有していた。
【0044】
これら各サンプルにおける発銹の程度、および疵の目立ちにくさの程度については、暴露試験場で撮影したサンプル外観のカラー写真によっても明瞭に識別することができた。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、高Cr(高Mo)化を図るうえで耐候性向上効果およびロール成形性確保の点で有利なフェライト系ステンレス鋼を採用するとともに、冷間圧延によって表面に適度な凹凸を付与することによって、高Cr(高Mo)鋼自体が本来有している高い耐候性を維持したまま疵が目立ちにくい表面肌を有し、かつ既存設備を用いて建材用シャッター部材に成形加工できるシャッター部材用鋼板の提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】建材用シャッターの主要部材の構成を模式的に表した要部斜視図。
【図2】建材用金属製シャッターのスラット部材の断面図。
【図3】フェライト系ステンレス鋼とオーステナイト系ステンレス鋼について、屋根面を想定した大気暴露試験後のRN(レイティング・ナンバ)に及ぼす(Cr+Mo)量の影響を表したグラフ。
【図4】フェライト系ステンレス鋼の大気暴露試験後のRN(レイティング・ナンバ)に及ぼす(Cr+Mo)量の影響について、屋根面を想定した場合と軒下面を想定した場合を比較して表したグラフ。
【符号の説明】
1 スラット
2 座板
3 ガイドレール
Claims (7)
- 建材用シャッター部材に加工される鋼板であって、Cr含有量とMo含有量の総和が18重量%以上27重量%未満であるフェライト系ステンレス鋼からなり、冷間圧延によって形成されたRz≧2μmの凹凸を表面に有し、かつ、引張強さが600N/mm2以下である耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板。
- フェライト系ステンレス鋼は、Cr:16〜26重量%,Mo:0.5〜6重量%,Nb:0〜1.0重量%(無添加の場合を含む)を含有し、Cr含有量とMo含有量の総和が22重量%以上27重量%未満となるものである、請求項1に記載の耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板。
- フェライト系ステンレス鋼は、Cr:16〜26重量%,Mo:0.5〜6重量%,Nb:0〜1.0重量%(無添加の場合を含む)を含有し、さらにTi:0.05〜0.5重量%またはAl:0.03〜0.3重量%の1種以上を含有し、Cr含有量とMo含有量の総和が22重量%以上27重量%未満となるものである、請求項1に記載の耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板。
- 建材用シャッター部材に加工される鋼板であって、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%以上であるフェライト系ステンレス鋼からなり、Rz≧2μmの凹凸を表面に有し、かつ、引張強さが600N/mm2以下である耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板。
- 建材用シャッター部材に加工される鋼板であって、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%以上であるフェライト系ステンレス鋼からなり、冷間圧延,研磨,またはショットブラストによって形成されたRz≧2μmの凹凸を表面に有し、かつ、引張強さが600N/mm2以下である耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板。
- フェライト系ステンレス鋼は、Cr:24.5〜32重量%,Mo:1.0〜2.5重量%,Nb:0〜0.5重量%(無添加の場合を含む)を含有し、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%以上となるものである、請求項4または請求項5に記載の耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板。
- フェライト系ステンレス鋼は、Cr:24.5〜32重量%,Mo:1.0〜2.5重量%,Nb:0〜0.5重量%(無添加の場合を含む)を含有し、さらにTi:0.05〜0.5重量%またはAl:0.03〜0.3重量%の1種以上を含有し、Cr含有量とMo含有量の総和が27重量%以上となるものである、請求項4または請求項5に記載の耐候性および耐疵付き性に優れたシャッター部材用フェライト系ステンレス鋼板。
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