JP3570628B2 - 印刷機用ポンプ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、印刷機において、プランジャーをモーターによって回転させながら軸方向に往復させ、インキング装置にインキを供給する印刷機用ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術におけるオフセット印刷機用ポンプとしては、例えば、特許第2864447号公報に、可変速モーターを用いて主穴内のプランジャーを1回転させながら1往復させる作動を繰り返し、インキをインキング装置に供給する印刷機用ポンプが開示されている。
【0003】
その印刷機用ポンプは、図8に示すように、ブロック部111と中空体部112が結合された本体101、ブロック部111の貫通穴113に嵌入装着され、外端がブロック部111の外側面から突出し、内端が中空体部112の中空部112a内に達したシリンダー102、シリンダー102の主穴120に回転可能且つ軸中心線方向に往復動可能に嵌入され、基端部が中空体部112の中空部112a内に突出したプランジャー103、出力軸140が中空体部112の中空部112a内に突出するように外側壁部112bに取り付けられた可変速モータ104、並びに中空体部112の中空部112a内において出力軸140とプランジャー103とを連結し、可変速モーター104の回転をプランジャー103の回転及び軸中心線方向の往復動に変えて伝達する伝動機構105から構成されている。
【0004】
シリンダー102が嵌入装着されるブロック部111の貫通穴113は、中空体部112側からブロック部111の外側面に向って傾斜角をもって下り勾配に形成されており、従って、シリンダー102も同じ下り勾配となっている。そして、シリンダー102は、主穴120の外端開口部がプラグで閉塞され、外端側から適宜の距離には吸入穴121と吐出穴122とがその中心を共有するように上下直径方向に貫通している。即ち、吸入穴121と吐出穴122とは180度相違した位相で主穴120に開口している。
【0005】
主穴120に回転可能且つ軸中心線方向に往復動可能に嵌入されたプランジャー103の基端部側は、中空体部112の中空部112a内に突出し、主穴120内の先端側は、先端面から回転中心線方向に所定寸法だけ弓形断面部分が切除された切欠き部131が形成されている。
即ち、切欠き部131の長さは、後述のようにプランジャー103が最も主穴120の奥にまで入り込んだとき、切欠き部131の尾端が吸入穴121と吐出穴122よりも主穴120の開口側になるような長さである。
【0006】
切欠き部131は、プランジャー103が往復動してシリンダー102に最も入り込んだときに、切欠き部131の尾端が、主穴120における吐出穴122及び吸入穴121の開口位置よりも主穴120の開口側に位置し、切欠き部131の円筒面がシリンダー102の吐出穴122及び吸入穴121を同時に閉塞できるようにように、且つ、プランジャー103の先端が、主穴120における吸入穴121及び吐出穴122の開口位置よりも主穴120のプラグ側に位置し、切欠き部131により位相が半回転相違する2個所で吸入穴121と吐出穴122とを同時に閉塞し、他の回転位相ではいずれか一方の穴のみを開放するように形成されている。
【0007】
そして、プランジャー103の回転中心線と出力軸140の回転中心線とは、ねじれの位置にあり、出力軸140の先端部とプランジャー103の基端部とは伝動機構105により連結されている。
又、ブロック部111には、シリンダー102の吸入穴121に通じる流体通路114と吐出穴122に通じるように流体通路115とが形成されている。
【0008】
ブロツク部111に形成された流体通路114は、図示しないインキ供給源に接続され、流体通路115は、印刷機のインキング装置に接続されている。そして、シリンダー102の主穴120には、吸入穴121を介して適宜な圧力を与えられたインキが供給され、主穴120からは吐出穴122を介して適宜な圧力を与えられたインキがインキング装置に送り出されるようになっている。
【0009】
可変速モーター104の出力軸140とプランジャー103とを連結する伝動機構105は、中空部112aに突出したプランジャー103の基端部に半径方向に突出して設けられた連結部材151と、出力軸140に取り付けられ、出力軸140の回転中心線とは偏心して出力軸140の回転中心線方向に突出した突出部をもつアーム150とから構成され、アーム150の突出部先端には、球面軸受152が取り付けられており、その内輪穴にはプランジャー103に取り付けられた連結部材151の先端部がその軸中心線方向に変位可能に嵌入されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来の技術における印刷機用ポンプには、次のような問題点がある。
上記の従来の技術のポンプは、可変速モーター104(以下、モーターという)の出力軸140の回転中心線がプランジャー103の回転中心線と所定の交差角で交わるように設けられているので、例えば、モーター104の出力軸140が1回転するとき、その2分の1である180度回転するとプランジヤー103が180度回転すると共に、主穴120の開口部側に移動しインキを吸入する。
【0011】
続いて、出力軸140が残りの180度回転すると、プランジャー103が続いて次の180度回転すると共に、主穴120の閉塞側に移動しインキを吐出する。即ち、モーター104の出力軸140の角変位量とプランジャー103のインキ吸入に要する角変位量とが全く同じとなっており、プランジヤー103の作動周期における吸入行程と吐出行程とに占める出力軸140の角変位量の割合は、等分の割合であるので、インキの吸入と吐出とは、等分の割合で間欠的に行われるようになっている。
【0012】
そのため、印刷中の紙面がインキを必要としているにも拘わらず、プランジャー103がインキの吸入行程にあるときは、インキング装置へのインキの供給は止まる。プランジャー103が吐出行程に切り替わると、吸入時に不足する量を補充すべく加算された量として吐出時にまとめて吐出されることになる。
【0013】
従って、一時的に多量のインキがインキング装置へ周期的に纏めて供給されるので、プランジヤー103が吐出行程に切り替わる前と後とではインキング装置によって版面に供給されるインキの量が大きく変化してしまい、そのことが印刷紙面にインキの濃淡を生じせしめ、印刷品質の低下をもたらしていた。
【0014】
また、印刷紙面構成によっては多くのインキ量が要求されることがある。このようなときには、ポンプは、吐出作動を通常より多く行い、短時間にインキを多量に吐出させる必要がある。従って、吐出経路内に通常よりも多量のインキが送り込まれて吐出経路内の圧力が高くなり、それに伴ってインキの吐出圧力が上昇する傾向となる。
【0015】
即ち、吐出時に、高い圧力が主穴内やインキ吐出経路内に発生し、この高い圧力によって主穴120とプランジヤー103との微小な隙間からインキが漏出し易く、この漏出したインキが中空部112aに突出したプランジヤー103の外部周囲や伝動機構などに絡みついて固着し、ポンプの作動不良が起こり易くなり、ポンプを頻繁に解体し清掃しなければならないという保守管理が必要である。
【0016】
更に、前記の吐出圧力の上昇やインキの固着が負荷を増大させる傾向にあるので、少しでもこれに対応できるように、モーターは比較的大きなトルク容量のものが必要となってポンプの小型化を阻み、他方では電力消費や発熱が比較的大きなものとなってエネルギーの浪費ともなっている。
【0017】
この発明は、上記従来の技術がもつ問題点を一挙に解消することを課題としており、印刷紙面のインキ濃度むらを解消して印刷品質の向上を図り、インキの吐出圧力の上昇を抑えてインキ漏出をなくし保守管理の容易化を図り、更に、ボンプの小型化及び省エネルギー化が図り得る印刷機用ポンプを提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この発明の印刷機用ポンプは、一端側が閉塞され、内面の互いに位相が相違する位置に吸入穴と吐出穴とが開口した主穴がシリンダーに形成され、ある回転位相では吸入穴と吐出穴とを同時に閉塞し、その他の回転位相では吸入穴又は吐出穴のいずれか一方を閉塞するようにプランジャーが主穴に回転可能且つ軸方向に往復動可能に嵌入され、プランジャーがモーターによって駆動され回転しながら軸方向に往復することによってインキが供給される印刷機用ポンプである。
【0019】
印刷機用ポンプには、出力軸の回転中心線がプランジャーの回転中心線に対しねじれの位置にあるように、且つ出力軸がシリンダーの開口側のプランジャーの基端部との間に空間を置いて対向するように取り付けられたモーターが具備されていると共に、プランジャーの基端部に固定されると共に該プランジャーの回転中心線から偏心した位置でモーターの出力軸側に突出した突出部を有し、且つ該突出部に球面軸受が設けられたアーム、及びモーターの出力軸に一端側が固定され他端側が出力軸の回転中心線から離隔するよう突出し、前記球面軸受の内輪穴に回転中心線方向に変位可能に嵌入された連結部材からなる伝動機構、又はモーターの出力軸に固定されると共に該出力軸の回転中心線から偏心した位置でプランジャー側に突出した突出部を有し、且つ該突出部に球面軸受が設けられたアーム、及びプランジャーの基端部に一端側が固定され他端側がプランジャーの回転中心線から離隔するよう突出し、前記球面軸受の内輪穴に回転中心線方向に変位可能に嵌入された連結部材からなる伝動機構が具備されていている。
【0020】
そして、1回転するプランジヤーの周面によって、吐出穴を閉塞しつつ主穴の開口部側へ移動する吸入行程と吸入穴を閉塞しつつ主穴の閉塞側へ移動する吐出行程とからなるプランジャーの作動周期において、等速で1回転する出力軸の吸入行程における角変位量の割合を、吐出行程における角変位量の割合より小さくすることによって、吸入行程を速く、且つ吐出行程を遅く作動させる。それにより、インキの吸入が速やかに行われる一方、インキの吐出はゆっくりと略一様に行われる。
【0021】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態における印刷機用ポンプPを図面に従って説明する。
図1に示すように、印刷機用ポンプPは、ブロック部11と中空体部12とが結合された本体1、ブロック部11の貫通穴13に嵌入装着され、外端がブロック部11の外側面から突出し、内端が中空体部12の中空部12a内に達したシリンダー2、シリンダー2の主穴20に回転可能且つ回転中心線方向に往復動可能に嵌入され、基端部が中空体部12の中空部12a内に突出したプランジャー3、出力軸40が中空体部12の中空部12a内に突出するように外側壁部12bに取り付けられたモーター4、並びに中空体部12の中空部12a内において出力軸40とプランジャー3とを連結し、モーター4の回転をプランジャー3の回転及び軸中心線方向の往復動に変えて伝達する伝動機構5から構成されている。
【0022】
シリンダー2が嵌入装着されるブロック部11の貫通穴13は、水平位置の中空体部12側からブロック部11の外側面に向って傾斜角θで下り勾配に形成されており、従って、シリンダー2も同じ下り勾配となっている。
【0023】
そして、主穴20においては、外端開口がプラグで閉塞され、外端側から適宜の距離には吸入穴21と吐出穴22とがその中心を共有するようにシリンダ穴20の上下直径方向に貫通している。即ち、吸入穴21と吐出穴22とは180度相違した位相で主穴20に開口し、吸入穴21と吐出穴22との中心線及び主穴20の中心線を含む平面が、後述する第2仮想平面C2と一致する。
【0024】
主穴20に回転可能且つ軸方向に往復動可能に嵌入されたプランジャー3の基端部は、中空体部12の中空部12a内に突出し、主穴20内に嵌入されている先端部は、端面から軸方向に適宜寸法だけ弓形断面部分が切除された切欠き部31となっている。
即ち、切欠き部31の長さは、後述のようにプランジャー3が最も主穴20の奥にまで入り込んだとき、切欠き部31の尾端が吸入穴21と吐出穴22よりも主穴20の開口側になるような長さである。
【0025】
切欠き部31は、プランジャー3が後に説明するように往復動してシリンダー2に最も入り込んだときに、切欠き部31の尾端が、主穴20における吐出穴22及び吸入穴21の開口位置よりも主穴20の開口側に位置し、切欠き部31の平面部が後に説明する第2仮想平面C2と平行であるときに、プランジャー3の円筒面が吐出穴22及び吸入穴21を同時に閉塞できるようにように、且つ、プランジャー3の先端が、主穴20における吸入穴21及び吐出穴22の開口位置よりも主穴20のプラグ側に位置し、切欠き部31により位相が半回転相違する2個所で吸入穴21と吐出穴22とを同時に閉塞し、他の回転位相ではいずれか一方の穴のみを開放するように形成されている。
【0026】
シリンダー2とモータ4とは、出力軸40の回転中心線CL1とプランジャー3の回転中心線CL2とが図2に示す関係になるように設けられている。
回転中心線CL1を含む第1仮想平面C1と回転中心線CL2を含む第2仮想平面C2とは距離e(以下、偏心量eという)をあけて平行であり、既述のように中空体部12側からブロック部11の外側面に向って傾斜角θで下り勾配の主穴20に嵌入されたプランジャー3の回転中心線CL2は、水平の回転中心線CL1に対し、交差角θで立体交差している。
【0027】
即ち、第1仮想平面C1と第2仮想平面C2において、第1仮想平面C1と第2仮想平面C2のいずれか一方を両仮想平面C1、C2の共通垂線にそって偏心量eだけ移動し他方に重ね合わせたときに、出力軸40の回転中心線CL1とプランジャー3の回転中心線CL2とが交差角θ(以下、ねじれの位置における交差角θとする)で交わる。そして、モーター4の出力軸40とプランジャー3とは、伝動機構5により連結されている。
【0028】
又、ブロック部11には、シリンダ2の吸入穴21に通じる流体通路14と吐出穴22に通じる流体通路15とが形成されている。
ブロック部11に形成された流体通路14は、図示しないインキ供給源に接続され、流体通路15は、印刷機のインキング装置に接続されている。
【0029】
そして、吸入孔21が開放され、吐出孔22が閉塞された回転位相にあるプランジャー3の基端部が中空部12内に突出するように移動すると、シリンダー2の主穴20には、吸入穴21を介してインキが供給され、吸入孔21が閉塞され、吐出孔22が開放された回転位相にあるプランジャー3の先端が主穴20の奥に入り込むように移動すると、主穴20からは吐出穴22を介してインキがインキング装置に送り出されるようになっている。
【0030】
モーター4の出力軸40とプランジャー3とを連結する伝動機構5について述べる。
伝動機構5は、出力軸40とプランジャー3との夫々に選択的に取り付けられ、更に互に回転可能且つ回転中心線方向に変位可能に結合されたアーム50と連結部材51とから構成されている。
【0031】
アーム50は、基端部にボス部をもつ半径アーム部50aと先端部に球面軸受52をもつ軸線アーム部50bとから形成された略L字状体であり、連結部材51は、基部にボス部をもつ丸棒体である。そして、連結部材51の先端は、軸線が球面軸受52の内輪の外周球面をなす球の中心(以下、作用点Qという)を通る内輪穴に軸線方向に変位可能に嵌入されている。
【0032】
この発明の実施の第1形態における印刷機用ポンプPにおいては、図1及び図4に示すように、中空部12a内に突出したプランジヤー3の基端部にアーム50のボス部が嵌入装着され、中空部12a内に突出したモーター4の出力軸40の先端部に連結部材51のボス部が嵌入装着されている。即ち、アーム50の軸線アーム部50bは、プランジヤー3の回転中心から偏心した位置でプランジヤー3と平行に突出し、連結部材51は、出力軸40から半径方向に突出している。
【0033】
そして、プランジヤー3の回転中心線CL2と作用点Qとの距離、即ち半径アーム部50aの実質アーム長をbとし、前記偏心量eは、半径アーム部50aの実質アーム長bよりも小さい範囲の適宜な値に予め設定されている(図3参照)。
【0034】
又、図2及び図4に示すように、モータ4が駆動され、出力軸40に取り付けられた連結部材51が旋回したときに、連結部材51の軸中心線CL3が描く第3仮想平面C3は、出力軸40の回転中心線CL1を基準として交差角θで傾斜するプランジャー3の回転中心線CL2及び前記出力軸40の回転中心線CL1に共通する垂線Lを含むように設けられている。
【0035】
以上記載の構成によれば、出力軸40の回転により連結部材51が回転中心線CL1回りに旋回すると、作用点Qは、図5に示すように、回転中心線CL2方向に変位しながら図5に示すように、仮想平面C3で楕円Dを描いて回転する。この作用点Qの回転における変位の回転中心線CL2成分は、Sとなり、プランジヤー3は、作用点Qの回転に基づいてアーム50を介して回転中心線CL2に沿って行程Sの往復動をする。
【0036】
プランジヤー3が主穴20の閉塞側に移動し、最終点に達し、インキの吐出行程が終了したときの作用点Qの位置を、吐出行程終了点(又は、吸入行程開始点)Q1とし、又、プランジヤー3が主穴20の開口部側に移動し、最終点に達し、インキの吸入行程が終了したときの作用点Qの位置を、吸入行程終了点(又は、吐出行程開始点)Q2とすれば、図3乃至図5に示すように、球面軸受52の位置が吐出行程終了点Q1又は吸入行程終了点Q2にあるとき、球面軸受52の内輪穴に嵌入されている連結部材51の軸中心線CL3は、前記第1仮想平面C1と第3仮想平面C3とが交わって形成される直線に対し、それぞれαだけ角変位したように位置する。
【0037】
従って、モーター4の出力軸40の図5における反時計回りの回転によって伝動機構5を介しプランジャー3が1回転し、且つ1往復するとき、吐出行程終了点Q1から吸入行程終了点Q2に角変位する吸入行程では、連結部材51の軸中心線CL3の角変位量は、180度−2αとなり、又、吸入行程終了点Q2から吐出行程終了点Q1へ角変位する吐出行程では、前記軸中心線CL3の角変位量は、180度+2αとなる。
【0038】
結局、第3仮想平面C3の楕円Dの内側において、偏心量eを予め適宜に設定することによって、プランジヤー3の作動周期に占める出力軸40の吸入行程側と吐出行程側との割合を、吸入行程側を小さくしてプランジャー3を速く作動させ、吐出行程側を大きくして遅く作動させるように構成することができる。
【0039】
この発明の実施の第2形態における印刷機用ポンプPにおいては、図7に示すように、実施の第1形態とは逆に、中空部12a内に突出したプランジヤー3の基端部に連結部材51のボス部が嵌入装着され、中空部12a内に突出したモーター4の出力軸40の先端部にアーム50のボス部が嵌入装着されている。
【0040】
即ち、図7に示した実施の第2形態は、前述の図4に示した第1の実施の形態における伝動機構5において出力軸40に取り付けられた連結部材51とプランジャー3の基端部に取り付けられたアーム50とを入れ替えたような関係の構成としており、これらの部分を除けば構成及び後述する作動については、実施の第1形態と略同様なので、詳細な説明は省略する。
【0041】
次に、この発明の実施の第1形態における印刷機用ポンプPの作動を図3、図4、図5及び図6に従って説明する。
図1及び図4において、プランジヤー3が主穴20の開口側に突出するように後退してアーム50の球面軸受52の内輪の外周球面をなす球の中心、即ち作用点Qが吸入行程終了点Q2にあるとき、モータ軸40が回転中心線CL1を中心に矢印方向に回転すると、プランジヤー3がその回転中心線CL2を中心に回転しながら主穴20の閉塞側に移動し、インキが吐出される。
【0042】
そして、吐出行程にあったプランジャー3がその吐出行程の終了と同時にプランジヤー3の切欠き部31によつて開口していた吐出穴22をプランジヤー3の周面が閉塞すると共に球面軸受52が吐出行程終了点Q1に至る。
吐出行程終了点Q1を通過すると吸入行程に入る。吸入行程では、プランジャー3によって閉塞されていた吐出穴22及び吸入穴21のうち、吸入穴21が、回転するプランジヤー3の切欠き部31によって開口し、インキが吸入され始める。
【0043】
プランジヤー3は、引き続き回転しながら、その基端部を開口側の中空部12a内に突出するように移動し、インキを吸入する。吸入行程の終了と同時に、切欠き部31によって開口していた吸入穴21をプランジヤー3の周面が閉塞すると共に球面軸受52が吸入行程終了点Q2に至る。
【0044】
前記吐出行程又は吸入行程において、図3に示すように、プランジャー3の回転中心線CL2に対し、出力軸40の回転中心線CL1がねじれの位置にあって、偏心量eを与えられて偏心しているので、アーム50の吸入行程終了点Q2又は吐出行程終了点Q1にある球面軸受52の内輪の中心線方向に移動可能に嵌入されている連結部材51の軸中心線CL3は、第1仮想平面C1と第3仮想平面C3とが交わって形成される直線に対して、それぞれαの角度をなし球面軸受52に接続される(図5参照)。
【0045】
よって、連結部材51が吸入行程である180度の角変位をプランジャー3に与えるときは、出力軸40の角変位量は180度−2αとなり、一方、吐出行程である180度の角変位をプランジャー3に与えるときは、出力軸40の角変位量は180度+2αとなる。
【0046】
即ち、モーター4が一様に回転しているときは、出力軸40に取り付けられている連結部材51が一様に角変位するので、プランジャー3の作動周期における吐出行程の占める割合が大きくなり、時間を掛けてゆっくりと吐出が行われる一方、プランジャー3の作動周期における吸入行程の占める割合は小さくなり、速やかに吸入が完了されるようになる。
【0047】
前記連結部材51の一様な角変位に連動して回転するプランジャー3の角変位について、更に図5及び図6を参照し具体的に説明する。
ここで、図6は、図4に示す伝動機構5が図5におけるような関係で作動したときのプランジャー3の作動周期と、軸方向に作動するプランジャー3の変位の関係を出力軸40の角変位を基準として示した説明図である。横軸は出力軸の角変位を度で表示し、縦軸はプランジャーの変位をパーセントで表示したものである。
【0048】
前記吐出行程終了点Q1、即ち吸入行程開始点から、前記吸入行程終了点Q2へ至る過程、即ち吸入行程では、出力軸40が180度−2αだけ角変位する間に、出力軸40に固定された連結部材51によって伝動されるアーム50は、180度だけ角変位し、吸入行程が終了するようになっている。この吸入行程におけるプランジャー3の角変位量である作用点Qの角変位量は、連結部材51によって出力軸40の角変位量よりも多くなる。
【0049】
即ち、回転する出力軸40に取り付けられた連結部材51によって角変位する作用点Qは、吸入行程の中間部に至る間に連結部材51を軸中心線CL3と平行に移動し、出力軸40の回転中心から徐々に遠ざかるようにして比較的遠いところで作用を受けるので、そのときの出力軸40の角変位に対して比較的大きな角変位がプランジャー3に与えられる。
【0050】
吸入行程では、作用点Qが吐出行程終了点Q1、即ち吸入行程開始点を通過すると、プランジャー3が開口側へ突出するように作動してインキが吸入され、吸入行程の中間部で作動速度が最大となり、その後、作用点Qは吸入行程終了点Q2に至る。
【0051】
他方、吸入行程終了点Q2、即ち吐出行程開始点から、吐出行程終了点Q1へ至る過程、即ち吐出行程では、出力軸40が180度十2αだけ角変位する間に、出力軸40に固定された連結部材51によって伝動されるアーム50は、180度だけ角変位し、吐出行程が終了するようになっている。この吐出行程におけるプランジャー3の角変位量でもある作用点Qの角変位量は、連結部材51によって出力軸40の角変位量よりも小さくなる。
【0052】
吸入行程終了点Q2及び吐出行程終了点Q1付近における作用点Qの角変位は、略連結部材51の角変位と近似しているが、その位置を外れると中間部に向けて角変位が少なくなり、吐出行程の中問部の広い範囲にわたって角変位が極めて変化の少ない状態で続くようになる。
【0053】
前記作用点Qは、吐出行程の前半において連結部材51を軸中心線CL3と平行に移動し、出力軸40の回転中心へ徐々に近づき、出力軸40の比較的回転中心に近いところで連結部材51によって伝動されるので、作用点Qの変位がゆっくりとした状態で推移(図6参照)する。このため吐出行程におけるプランジャー3の作動、図6に描かれる変位曲線が示すように、変化の少ない略一様な速度でゆっくりと変位し略均一にインキを吐出するようになる。
【0054】
そして、吐出行程におけるこの中間部の広い範囲では、図5及び図6に示すように、プランジャー3の回転中心線CL2に対し、出力軸40の回転中心線CL1が偏心量eだけ距離を隔てていることにより、モーター4によって一様に回転している連結部材51が、その角変位中心に近い部分で作用点Qを駆動するようになり、吐出時に生じる比較的大きな負荷に対し有効、且つ大きなトルクをプランジャー3に作用させ得るので、出力トルクの小さなモーター4の使用が可能となる。
【0055】
又、図5に示すように、連結部材51が吐出行程終了点Q1から吸入行程終了点Q2へ向けて角変位するとき、吐出行程終了点Q1から吸入行程終了点Q2への中間点までは、作用点Qが、連結部材51の角変位中心から遠のくように変位するので、作用点Qが楕円D上を移動する周速度が速くなってアーム50の角変位が急速に行われ、吸入行程にあるプランジャー3は、急速に移動速度を増しつつ中間点で移動速度が最大となる。前記中間点を通過するとその傾向が反対となり、プランジャー3は、急速に移動速度を減じつつ吸入行程終了点Q2で移動速度が0となる。
【0056】
他方、連結部材51によって伝動され角変位する球面軸受52の前記作用点Qは、吸入行程終了点Q2を通過すると、吐出行程終了点Q1へ向けて角変位を続ける。
そして、その中間点までは、作用点Qが連結部材51の角変位中心へ接近するようにその位置を変えていくので、作用点Qの周速度が遅くなり、アーム50の角変位は減少し、吐出行程にあるプランジャー3の移動速度がゆっくりとなる。その上、中間点での作用点Qの周速度は最低となって、プランジャー3の移動速度が遅いまま吐出行程の略全行程にわたって比較的ゆっくりとプランジャー3が移動することになる。
【0057】
即ち、この発明の実施の形態における印刷機用ポンプの伝動機構5の作用は、出力軸40の回転中心線CL1とプランジャー3の回転中心線CL2とが偏心量eを隔ててねじれの位置にあることによって、プランジヤー3によるインキの吸入行程に占める出力軸40の角変位の割合を、吐出行程に占める出力軸40の角変位の割合より少なくさせ得るので、速やかにインキを吸入させることができる一方、吐出行程に占める出力軸40の角変位量の割合を吸入行程に占める出力軸40の角変位量の割合より多くさせ得るので、ゆっくりとインキを吐出させることができるものである。
【0058】
次に、この発明の実施の第1形態における具体的な1つの実施例を示す。吐出行程に対する吸入行程の比率が0.5、即ち、出力軸40の角変位を基準として吸入行程を120度、吐出行程を240度とする場合について、その関係を図2、図3、図4及び図5を参照して説明する。
【0059】
交差角をθ、偏心量をe、アーム50の腕の長さをb、プランジヤー3が移動する全ストロークsの2分の1をs/2、出力軸40の中心から吐出行程終了点Q1までの距離をaとし、0くeくbとするとき、a=b/cosθ、s/2=b×tanθ、e=a×tanα=b×tanα/cosθの関係が成立する。
【0060】
ここで、例えば具体的に、b=20ミリメートル、θ=15度、α=30度としたとき、e=20×tan30°/cos15°=11.95ミリメートル、s=2×20×tan15°=10.72ミリメートル、a=20/cos15°=20.71ミリメートルとなり、これらの値に設定すれば、吐出行程が、吸入行程に対し2倍の時間を掛けてゆっくりと行わせることができるとともに、この吐出行程では、略一定な吐出量を維持しながらインキを吐出させることができる。
【0061】
なお、この発明の実施の第1形態及び第2形態における印刷機用ポンプのモーター4は、可変速モーターであり、このモーター4の回転速度を適宜に変更することによって、プランジャー3の作動周期が変更され吐出量を適宜に変更することが可能であるが、この吐出量の変更を、モーター4の回転速度の変更によって行わずに、一定回転速度のモーター4を用い、モーター4の出力軸40の回転中心線CL1とプランジヤ一3の回転中心線CL2との交差角θを適宜に変更することが可能な機構(図示しない)に構成することにより、プランジャー3のストロークを変更して吐出量を変更するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0062】
更に、この発明の実施の第1形態及び第2形態における印刷機用ポンプは、1つのポンプPとして説明してきたが、オフセット印刷機において通常使用される複数のポンプPを連ねるように構成されている印刷機用ポンプにおいても、この発明が適用されることはいうまでもない。
【0063】
【発明の効果】
この発明によれば、モーターの出力軸の回転中心線をプランジヤーの回転中心線に対しねじれの位置にあるように設けることによって、前記出力軸が1回転する間に伝動機構を介してインキの吸入及び吐出が行われるように1回転1往復するプランジャーの作動周期において、吸入行程側に占める出力軸の角変位の割合が、吐出側に占める出力軸の角変位の割合より小さく作動させることによって、インキの吸入が速やかに行われる一方、インキの吐出はゆっくりと略一様に行われるようになり、以下のような効果が得られる。
【0064】
▲1▼吸入行程では、インキング装置ヘインキ供給されない時期が短くなる反面、吐出行程では、インキング装置ヘインキ供給される時期が長くなり、且つ略一様にインキを吐出させることが可能となったので、印刷紙面の濃度むらが解消でき、印刷品質を向上させることができる。
【0065】
▲2▼吐出行程では、吸入行程に比べゆっくりとプランジヤーを作動させ得るので、インキの吐出圧力が従来のポンプに比較して低く抑えられ、シリンダーとプランジャーとの隙間からのインキ漏出がなくなり、プランジャーの外部周囲や伝動機構へのインキの固着やそれによる作動不良が解消し、故障や清掃の頻度が減少し保守管理が極めて容易となる。
【0066】
▲3▼インキの吐出圧力が低く抑えられ、且つインキが漏出せず固着することがないので、プランジャーの作動トルクが小さくて済むことから、モーターの小型化と省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態を示す部分断面斜視説明図である。
【図2】図1におけるモーターの出力軸とプランジヤーの各回転中心線がねじれの位置にあることを3つの平面を仮想することによって示した説明図である。
【図3】図1においてY矢視による印刷機用ポンプの伝動機構であるアームと連結部材を真横に倒して示し、且つ前記モーターの出力軸の回転中心線とプランジャーの回転中心線とが所定の間隔をもって離隔している関係を示す部分断面説明図である。
【図4】図1のX矢視による出力軸、プランジヤー及び伝動機構の関係を示す部分断面説明図である。
【図5】図4のZ−Z矢視による前記モーターの出力軸に取り付けられ、角変位する連結部材とそれによって駆動されるプランジャーに取り付けられたアームの回転作動説明図である。
【図6】図4に示す伝動機構が図5におけるような関係で作動したときの出力軸とプランジャーとの作動周期と、軸方向に移動するプランジャーの変位の関係を出力軸の角変位を基準として示した説明図である。
【図7】この発明の実施の第2形態における印刷機械用ポンプの出力軸、プランジャー及び伝動機構の関係を示す図4と同様な部分断面説明図である。
【図8】従来の技術のポンプの部分断面斜視説明図である。
【符号の説明】
P 印刷機用ポンプ
1 本体
11 ブロック部
12 中空体部
12a 中空部
12b 外側壁部
13 貫通穴
14、15 流体通路
2 シリンダー
20 主穴
21 吸入穴
22 吐出穴
3 プランジャー
31 切欠き部
4 モーター(可変速モーター)
40 出力軸
5 伝動機構
50 アーム
50a 半径アーム部
50b 軸線アーム部
51 連結部材
52 球面軸受
CL1 (出力軸の)回転中心線
CL2 (プランジャーの)回転中心線
CL3 (連結部材の)軸中心線
C1 第1仮想平面
C2 第2仮想平面
C3 第3仮想平面
D 楕円
L 垂線
Q 作用点
Q1 吐出行程終了点(吸入行程開始点)
Q2 吸入行程終了点(吐出行程開始点)
【発明の属する技術分野】
この発明は、印刷機において、プランジャーをモーターによって回転させながら軸方向に往復させ、インキング装置にインキを供給する印刷機用ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術におけるオフセット印刷機用ポンプとしては、例えば、特許第2864447号公報に、可変速モーターを用いて主穴内のプランジャーを1回転させながら1往復させる作動を繰り返し、インキをインキング装置に供給する印刷機用ポンプが開示されている。
【0003】
その印刷機用ポンプは、図8に示すように、ブロック部111と中空体部112が結合された本体101、ブロック部111の貫通穴113に嵌入装着され、外端がブロック部111の外側面から突出し、内端が中空体部112の中空部112a内に達したシリンダー102、シリンダー102の主穴120に回転可能且つ軸中心線方向に往復動可能に嵌入され、基端部が中空体部112の中空部112a内に突出したプランジャー103、出力軸140が中空体部112の中空部112a内に突出するように外側壁部112bに取り付けられた可変速モータ104、並びに中空体部112の中空部112a内において出力軸140とプランジャー103とを連結し、可変速モーター104の回転をプランジャー103の回転及び軸中心線方向の往復動に変えて伝達する伝動機構105から構成されている。
【0004】
シリンダー102が嵌入装着されるブロック部111の貫通穴113は、中空体部112側からブロック部111の外側面に向って傾斜角をもって下り勾配に形成されており、従って、シリンダー102も同じ下り勾配となっている。そして、シリンダー102は、主穴120の外端開口部がプラグで閉塞され、外端側から適宜の距離には吸入穴121と吐出穴122とがその中心を共有するように上下直径方向に貫通している。即ち、吸入穴121と吐出穴122とは180度相違した位相で主穴120に開口している。
【0005】
主穴120に回転可能且つ軸中心線方向に往復動可能に嵌入されたプランジャー103の基端部側は、中空体部112の中空部112a内に突出し、主穴120内の先端側は、先端面から回転中心線方向に所定寸法だけ弓形断面部分が切除された切欠き部131が形成されている。
即ち、切欠き部131の長さは、後述のようにプランジャー103が最も主穴120の奥にまで入り込んだとき、切欠き部131の尾端が吸入穴121と吐出穴122よりも主穴120の開口側になるような長さである。
【0006】
切欠き部131は、プランジャー103が往復動してシリンダー102に最も入り込んだときに、切欠き部131の尾端が、主穴120における吐出穴122及び吸入穴121の開口位置よりも主穴120の開口側に位置し、切欠き部131の円筒面がシリンダー102の吐出穴122及び吸入穴121を同時に閉塞できるようにように、且つ、プランジャー103の先端が、主穴120における吸入穴121及び吐出穴122の開口位置よりも主穴120のプラグ側に位置し、切欠き部131により位相が半回転相違する2個所で吸入穴121と吐出穴122とを同時に閉塞し、他の回転位相ではいずれか一方の穴のみを開放するように形成されている。
【0007】
そして、プランジャー103の回転中心線と出力軸140の回転中心線とは、ねじれの位置にあり、出力軸140の先端部とプランジャー103の基端部とは伝動機構105により連結されている。
又、ブロック部111には、シリンダー102の吸入穴121に通じる流体通路114と吐出穴122に通じるように流体通路115とが形成されている。
【0008】
ブロツク部111に形成された流体通路114は、図示しないインキ供給源に接続され、流体通路115は、印刷機のインキング装置に接続されている。そして、シリンダー102の主穴120には、吸入穴121を介して適宜な圧力を与えられたインキが供給され、主穴120からは吐出穴122を介して適宜な圧力を与えられたインキがインキング装置に送り出されるようになっている。
【0009】
可変速モーター104の出力軸140とプランジャー103とを連結する伝動機構105は、中空部112aに突出したプランジャー103の基端部に半径方向に突出して設けられた連結部材151と、出力軸140に取り付けられ、出力軸140の回転中心線とは偏心して出力軸140の回転中心線方向に突出した突出部をもつアーム150とから構成され、アーム150の突出部先端には、球面軸受152が取り付けられており、その内輪穴にはプランジャー103に取り付けられた連結部材151の先端部がその軸中心線方向に変位可能に嵌入されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来の技術における印刷機用ポンプには、次のような問題点がある。
上記の従来の技術のポンプは、可変速モーター104(以下、モーターという)の出力軸140の回転中心線がプランジャー103の回転中心線と所定の交差角で交わるように設けられているので、例えば、モーター104の出力軸140が1回転するとき、その2分の1である180度回転するとプランジヤー103が180度回転すると共に、主穴120の開口部側に移動しインキを吸入する。
【0011】
続いて、出力軸140が残りの180度回転すると、プランジャー103が続いて次の180度回転すると共に、主穴120の閉塞側に移動しインキを吐出する。即ち、モーター104の出力軸140の角変位量とプランジャー103のインキ吸入に要する角変位量とが全く同じとなっており、プランジヤー103の作動周期における吸入行程と吐出行程とに占める出力軸140の角変位量の割合は、等分の割合であるので、インキの吸入と吐出とは、等分の割合で間欠的に行われるようになっている。
【0012】
そのため、印刷中の紙面がインキを必要としているにも拘わらず、プランジャー103がインキの吸入行程にあるときは、インキング装置へのインキの供給は止まる。プランジャー103が吐出行程に切り替わると、吸入時に不足する量を補充すべく加算された量として吐出時にまとめて吐出されることになる。
【0013】
従って、一時的に多量のインキがインキング装置へ周期的に纏めて供給されるので、プランジヤー103が吐出行程に切り替わる前と後とではインキング装置によって版面に供給されるインキの量が大きく変化してしまい、そのことが印刷紙面にインキの濃淡を生じせしめ、印刷品質の低下をもたらしていた。
【0014】
また、印刷紙面構成によっては多くのインキ量が要求されることがある。このようなときには、ポンプは、吐出作動を通常より多く行い、短時間にインキを多量に吐出させる必要がある。従って、吐出経路内に通常よりも多量のインキが送り込まれて吐出経路内の圧力が高くなり、それに伴ってインキの吐出圧力が上昇する傾向となる。
【0015】
即ち、吐出時に、高い圧力が主穴内やインキ吐出経路内に発生し、この高い圧力によって主穴120とプランジヤー103との微小な隙間からインキが漏出し易く、この漏出したインキが中空部112aに突出したプランジヤー103の外部周囲や伝動機構などに絡みついて固着し、ポンプの作動不良が起こり易くなり、ポンプを頻繁に解体し清掃しなければならないという保守管理が必要である。
【0016】
更に、前記の吐出圧力の上昇やインキの固着が負荷を増大させる傾向にあるので、少しでもこれに対応できるように、モーターは比較的大きなトルク容量のものが必要となってポンプの小型化を阻み、他方では電力消費や発熱が比較的大きなものとなってエネルギーの浪費ともなっている。
【0017】
この発明は、上記従来の技術がもつ問題点を一挙に解消することを課題としており、印刷紙面のインキ濃度むらを解消して印刷品質の向上を図り、インキの吐出圧力の上昇を抑えてインキ漏出をなくし保守管理の容易化を図り、更に、ボンプの小型化及び省エネルギー化が図り得る印刷機用ポンプを提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この発明の印刷機用ポンプは、一端側が閉塞され、内面の互いに位相が相違する位置に吸入穴と吐出穴とが開口した主穴がシリンダーに形成され、ある回転位相では吸入穴と吐出穴とを同時に閉塞し、その他の回転位相では吸入穴又は吐出穴のいずれか一方を閉塞するようにプランジャーが主穴に回転可能且つ軸方向に往復動可能に嵌入され、プランジャーがモーターによって駆動され回転しながら軸方向に往復することによってインキが供給される印刷機用ポンプである。
【0019】
印刷機用ポンプには、出力軸の回転中心線がプランジャーの回転中心線に対しねじれの位置にあるように、且つ出力軸がシリンダーの開口側のプランジャーの基端部との間に空間を置いて対向するように取り付けられたモーターが具備されていると共に、プランジャーの基端部に固定されると共に該プランジャーの回転中心線から偏心した位置でモーターの出力軸側に突出した突出部を有し、且つ該突出部に球面軸受が設けられたアーム、及びモーターの出力軸に一端側が固定され他端側が出力軸の回転中心線から離隔するよう突出し、前記球面軸受の内輪穴に回転中心線方向に変位可能に嵌入された連結部材からなる伝動機構、又はモーターの出力軸に固定されると共に該出力軸の回転中心線から偏心した位置でプランジャー側に突出した突出部を有し、且つ該突出部に球面軸受が設けられたアーム、及びプランジャーの基端部に一端側が固定され他端側がプランジャーの回転中心線から離隔するよう突出し、前記球面軸受の内輪穴に回転中心線方向に変位可能に嵌入された連結部材からなる伝動機構が具備されていている。
【0020】
そして、1回転するプランジヤーの周面によって、吐出穴を閉塞しつつ主穴の開口部側へ移動する吸入行程と吸入穴を閉塞しつつ主穴の閉塞側へ移動する吐出行程とからなるプランジャーの作動周期において、等速で1回転する出力軸の吸入行程における角変位量の割合を、吐出行程における角変位量の割合より小さくすることによって、吸入行程を速く、且つ吐出行程を遅く作動させる。それにより、インキの吸入が速やかに行われる一方、インキの吐出はゆっくりと略一様に行われる。
【0021】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態における印刷機用ポンプPを図面に従って説明する。
図1に示すように、印刷機用ポンプPは、ブロック部11と中空体部12とが結合された本体1、ブロック部11の貫通穴13に嵌入装着され、外端がブロック部11の外側面から突出し、内端が中空体部12の中空部12a内に達したシリンダー2、シリンダー2の主穴20に回転可能且つ回転中心線方向に往復動可能に嵌入され、基端部が中空体部12の中空部12a内に突出したプランジャー3、出力軸40が中空体部12の中空部12a内に突出するように外側壁部12bに取り付けられたモーター4、並びに中空体部12の中空部12a内において出力軸40とプランジャー3とを連結し、モーター4の回転をプランジャー3の回転及び軸中心線方向の往復動に変えて伝達する伝動機構5から構成されている。
【0022】
シリンダー2が嵌入装着されるブロック部11の貫通穴13は、水平位置の中空体部12側からブロック部11の外側面に向って傾斜角θで下り勾配に形成されており、従って、シリンダー2も同じ下り勾配となっている。
【0023】
そして、主穴20においては、外端開口がプラグで閉塞され、外端側から適宜の距離には吸入穴21と吐出穴22とがその中心を共有するようにシリンダ穴20の上下直径方向に貫通している。即ち、吸入穴21と吐出穴22とは180度相違した位相で主穴20に開口し、吸入穴21と吐出穴22との中心線及び主穴20の中心線を含む平面が、後述する第2仮想平面C2と一致する。
【0024】
主穴20に回転可能且つ軸方向に往復動可能に嵌入されたプランジャー3の基端部は、中空体部12の中空部12a内に突出し、主穴20内に嵌入されている先端部は、端面から軸方向に適宜寸法だけ弓形断面部分が切除された切欠き部31となっている。
即ち、切欠き部31の長さは、後述のようにプランジャー3が最も主穴20の奥にまで入り込んだとき、切欠き部31の尾端が吸入穴21と吐出穴22よりも主穴20の開口側になるような長さである。
【0025】
切欠き部31は、プランジャー3が後に説明するように往復動してシリンダー2に最も入り込んだときに、切欠き部31の尾端が、主穴20における吐出穴22及び吸入穴21の開口位置よりも主穴20の開口側に位置し、切欠き部31の平面部が後に説明する第2仮想平面C2と平行であるときに、プランジャー3の円筒面が吐出穴22及び吸入穴21を同時に閉塞できるようにように、且つ、プランジャー3の先端が、主穴20における吸入穴21及び吐出穴22の開口位置よりも主穴20のプラグ側に位置し、切欠き部31により位相が半回転相違する2個所で吸入穴21と吐出穴22とを同時に閉塞し、他の回転位相ではいずれか一方の穴のみを開放するように形成されている。
【0026】
シリンダー2とモータ4とは、出力軸40の回転中心線CL1とプランジャー3の回転中心線CL2とが図2に示す関係になるように設けられている。
回転中心線CL1を含む第1仮想平面C1と回転中心線CL2を含む第2仮想平面C2とは距離e(以下、偏心量eという)をあけて平行であり、既述のように中空体部12側からブロック部11の外側面に向って傾斜角θで下り勾配の主穴20に嵌入されたプランジャー3の回転中心線CL2は、水平の回転中心線CL1に対し、交差角θで立体交差している。
【0027】
即ち、第1仮想平面C1と第2仮想平面C2において、第1仮想平面C1と第2仮想平面C2のいずれか一方を両仮想平面C1、C2の共通垂線にそって偏心量eだけ移動し他方に重ね合わせたときに、出力軸40の回転中心線CL1とプランジャー3の回転中心線CL2とが交差角θ(以下、ねじれの位置における交差角θとする)で交わる。そして、モーター4の出力軸40とプランジャー3とは、伝動機構5により連結されている。
【0028】
又、ブロック部11には、シリンダ2の吸入穴21に通じる流体通路14と吐出穴22に通じる流体通路15とが形成されている。
ブロック部11に形成された流体通路14は、図示しないインキ供給源に接続され、流体通路15は、印刷機のインキング装置に接続されている。
【0029】
そして、吸入孔21が開放され、吐出孔22が閉塞された回転位相にあるプランジャー3の基端部が中空部12内に突出するように移動すると、シリンダー2の主穴20には、吸入穴21を介してインキが供給され、吸入孔21が閉塞され、吐出孔22が開放された回転位相にあるプランジャー3の先端が主穴20の奥に入り込むように移動すると、主穴20からは吐出穴22を介してインキがインキング装置に送り出されるようになっている。
【0030】
モーター4の出力軸40とプランジャー3とを連結する伝動機構5について述べる。
伝動機構5は、出力軸40とプランジャー3との夫々に選択的に取り付けられ、更に互に回転可能且つ回転中心線方向に変位可能に結合されたアーム50と連結部材51とから構成されている。
【0031】
アーム50は、基端部にボス部をもつ半径アーム部50aと先端部に球面軸受52をもつ軸線アーム部50bとから形成された略L字状体であり、連結部材51は、基部にボス部をもつ丸棒体である。そして、連結部材51の先端は、軸線が球面軸受52の内輪の外周球面をなす球の中心(以下、作用点Qという)を通る内輪穴に軸線方向に変位可能に嵌入されている。
【0032】
この発明の実施の第1形態における印刷機用ポンプPにおいては、図1及び図4に示すように、中空部12a内に突出したプランジヤー3の基端部にアーム50のボス部が嵌入装着され、中空部12a内に突出したモーター4の出力軸40の先端部に連結部材51のボス部が嵌入装着されている。即ち、アーム50の軸線アーム部50bは、プランジヤー3の回転中心から偏心した位置でプランジヤー3と平行に突出し、連結部材51は、出力軸40から半径方向に突出している。
【0033】
そして、プランジヤー3の回転中心線CL2と作用点Qとの距離、即ち半径アーム部50aの実質アーム長をbとし、前記偏心量eは、半径アーム部50aの実質アーム長bよりも小さい範囲の適宜な値に予め設定されている(図3参照)。
【0034】
又、図2及び図4に示すように、モータ4が駆動され、出力軸40に取り付けられた連結部材51が旋回したときに、連結部材51の軸中心線CL3が描く第3仮想平面C3は、出力軸40の回転中心線CL1を基準として交差角θで傾斜するプランジャー3の回転中心線CL2及び前記出力軸40の回転中心線CL1に共通する垂線Lを含むように設けられている。
【0035】
以上記載の構成によれば、出力軸40の回転により連結部材51が回転中心線CL1回りに旋回すると、作用点Qは、図5に示すように、回転中心線CL2方向に変位しながら図5に示すように、仮想平面C3で楕円Dを描いて回転する。この作用点Qの回転における変位の回転中心線CL2成分は、Sとなり、プランジヤー3は、作用点Qの回転に基づいてアーム50を介して回転中心線CL2に沿って行程Sの往復動をする。
【0036】
プランジヤー3が主穴20の閉塞側に移動し、最終点に達し、インキの吐出行程が終了したときの作用点Qの位置を、吐出行程終了点(又は、吸入行程開始点)Q1とし、又、プランジヤー3が主穴20の開口部側に移動し、最終点に達し、インキの吸入行程が終了したときの作用点Qの位置を、吸入行程終了点(又は、吐出行程開始点)Q2とすれば、図3乃至図5に示すように、球面軸受52の位置が吐出行程終了点Q1又は吸入行程終了点Q2にあるとき、球面軸受52の内輪穴に嵌入されている連結部材51の軸中心線CL3は、前記第1仮想平面C1と第3仮想平面C3とが交わって形成される直線に対し、それぞれαだけ角変位したように位置する。
【0037】
従って、モーター4の出力軸40の図5における反時計回りの回転によって伝動機構5を介しプランジャー3が1回転し、且つ1往復するとき、吐出行程終了点Q1から吸入行程終了点Q2に角変位する吸入行程では、連結部材51の軸中心線CL3の角変位量は、180度−2αとなり、又、吸入行程終了点Q2から吐出行程終了点Q1へ角変位する吐出行程では、前記軸中心線CL3の角変位量は、180度+2αとなる。
【0038】
結局、第3仮想平面C3の楕円Dの内側において、偏心量eを予め適宜に設定することによって、プランジヤー3の作動周期に占める出力軸40の吸入行程側と吐出行程側との割合を、吸入行程側を小さくしてプランジャー3を速く作動させ、吐出行程側を大きくして遅く作動させるように構成することができる。
【0039】
この発明の実施の第2形態における印刷機用ポンプPにおいては、図7に示すように、実施の第1形態とは逆に、中空部12a内に突出したプランジヤー3の基端部に連結部材51のボス部が嵌入装着され、中空部12a内に突出したモーター4の出力軸40の先端部にアーム50のボス部が嵌入装着されている。
【0040】
即ち、図7に示した実施の第2形態は、前述の図4に示した第1の実施の形態における伝動機構5において出力軸40に取り付けられた連結部材51とプランジャー3の基端部に取り付けられたアーム50とを入れ替えたような関係の構成としており、これらの部分を除けば構成及び後述する作動については、実施の第1形態と略同様なので、詳細な説明は省略する。
【0041】
次に、この発明の実施の第1形態における印刷機用ポンプPの作動を図3、図4、図5及び図6に従って説明する。
図1及び図4において、プランジヤー3が主穴20の開口側に突出するように後退してアーム50の球面軸受52の内輪の外周球面をなす球の中心、即ち作用点Qが吸入行程終了点Q2にあるとき、モータ軸40が回転中心線CL1を中心に矢印方向に回転すると、プランジヤー3がその回転中心線CL2を中心に回転しながら主穴20の閉塞側に移動し、インキが吐出される。
【0042】
そして、吐出行程にあったプランジャー3がその吐出行程の終了と同時にプランジヤー3の切欠き部31によつて開口していた吐出穴22をプランジヤー3の周面が閉塞すると共に球面軸受52が吐出行程終了点Q1に至る。
吐出行程終了点Q1を通過すると吸入行程に入る。吸入行程では、プランジャー3によって閉塞されていた吐出穴22及び吸入穴21のうち、吸入穴21が、回転するプランジヤー3の切欠き部31によって開口し、インキが吸入され始める。
【0043】
プランジヤー3は、引き続き回転しながら、その基端部を開口側の中空部12a内に突出するように移動し、インキを吸入する。吸入行程の終了と同時に、切欠き部31によって開口していた吸入穴21をプランジヤー3の周面が閉塞すると共に球面軸受52が吸入行程終了点Q2に至る。
【0044】
前記吐出行程又は吸入行程において、図3に示すように、プランジャー3の回転中心線CL2に対し、出力軸40の回転中心線CL1がねじれの位置にあって、偏心量eを与えられて偏心しているので、アーム50の吸入行程終了点Q2又は吐出行程終了点Q1にある球面軸受52の内輪の中心線方向に移動可能に嵌入されている連結部材51の軸中心線CL3は、第1仮想平面C1と第3仮想平面C3とが交わって形成される直線に対して、それぞれαの角度をなし球面軸受52に接続される(図5参照)。
【0045】
よって、連結部材51が吸入行程である180度の角変位をプランジャー3に与えるときは、出力軸40の角変位量は180度−2αとなり、一方、吐出行程である180度の角変位をプランジャー3に与えるときは、出力軸40の角変位量は180度+2αとなる。
【0046】
即ち、モーター4が一様に回転しているときは、出力軸40に取り付けられている連結部材51が一様に角変位するので、プランジャー3の作動周期における吐出行程の占める割合が大きくなり、時間を掛けてゆっくりと吐出が行われる一方、プランジャー3の作動周期における吸入行程の占める割合は小さくなり、速やかに吸入が完了されるようになる。
【0047】
前記連結部材51の一様な角変位に連動して回転するプランジャー3の角変位について、更に図5及び図6を参照し具体的に説明する。
ここで、図6は、図4に示す伝動機構5が図5におけるような関係で作動したときのプランジャー3の作動周期と、軸方向に作動するプランジャー3の変位の関係を出力軸40の角変位を基準として示した説明図である。横軸は出力軸の角変位を度で表示し、縦軸はプランジャーの変位をパーセントで表示したものである。
【0048】
前記吐出行程終了点Q1、即ち吸入行程開始点から、前記吸入行程終了点Q2へ至る過程、即ち吸入行程では、出力軸40が180度−2αだけ角変位する間に、出力軸40に固定された連結部材51によって伝動されるアーム50は、180度だけ角変位し、吸入行程が終了するようになっている。この吸入行程におけるプランジャー3の角変位量である作用点Qの角変位量は、連結部材51によって出力軸40の角変位量よりも多くなる。
【0049】
即ち、回転する出力軸40に取り付けられた連結部材51によって角変位する作用点Qは、吸入行程の中間部に至る間に連結部材51を軸中心線CL3と平行に移動し、出力軸40の回転中心から徐々に遠ざかるようにして比較的遠いところで作用を受けるので、そのときの出力軸40の角変位に対して比較的大きな角変位がプランジャー3に与えられる。
【0050】
吸入行程では、作用点Qが吐出行程終了点Q1、即ち吸入行程開始点を通過すると、プランジャー3が開口側へ突出するように作動してインキが吸入され、吸入行程の中間部で作動速度が最大となり、その後、作用点Qは吸入行程終了点Q2に至る。
【0051】
他方、吸入行程終了点Q2、即ち吐出行程開始点から、吐出行程終了点Q1へ至る過程、即ち吐出行程では、出力軸40が180度十2αだけ角変位する間に、出力軸40に固定された連結部材51によって伝動されるアーム50は、180度だけ角変位し、吐出行程が終了するようになっている。この吐出行程におけるプランジャー3の角変位量でもある作用点Qの角変位量は、連結部材51によって出力軸40の角変位量よりも小さくなる。
【0052】
吸入行程終了点Q2及び吐出行程終了点Q1付近における作用点Qの角変位は、略連結部材51の角変位と近似しているが、その位置を外れると中間部に向けて角変位が少なくなり、吐出行程の中問部の広い範囲にわたって角変位が極めて変化の少ない状態で続くようになる。
【0053】
前記作用点Qは、吐出行程の前半において連結部材51を軸中心線CL3と平行に移動し、出力軸40の回転中心へ徐々に近づき、出力軸40の比較的回転中心に近いところで連結部材51によって伝動されるので、作用点Qの変位がゆっくりとした状態で推移(図6参照)する。このため吐出行程におけるプランジャー3の作動、図6に描かれる変位曲線が示すように、変化の少ない略一様な速度でゆっくりと変位し略均一にインキを吐出するようになる。
【0054】
そして、吐出行程におけるこの中間部の広い範囲では、図5及び図6に示すように、プランジャー3の回転中心線CL2に対し、出力軸40の回転中心線CL1が偏心量eだけ距離を隔てていることにより、モーター4によって一様に回転している連結部材51が、その角変位中心に近い部分で作用点Qを駆動するようになり、吐出時に生じる比較的大きな負荷に対し有効、且つ大きなトルクをプランジャー3に作用させ得るので、出力トルクの小さなモーター4の使用が可能となる。
【0055】
又、図5に示すように、連結部材51が吐出行程終了点Q1から吸入行程終了点Q2へ向けて角変位するとき、吐出行程終了点Q1から吸入行程終了点Q2への中間点までは、作用点Qが、連結部材51の角変位中心から遠のくように変位するので、作用点Qが楕円D上を移動する周速度が速くなってアーム50の角変位が急速に行われ、吸入行程にあるプランジャー3は、急速に移動速度を増しつつ中間点で移動速度が最大となる。前記中間点を通過するとその傾向が反対となり、プランジャー3は、急速に移動速度を減じつつ吸入行程終了点Q2で移動速度が0となる。
【0056】
他方、連結部材51によって伝動され角変位する球面軸受52の前記作用点Qは、吸入行程終了点Q2を通過すると、吐出行程終了点Q1へ向けて角変位を続ける。
そして、その中間点までは、作用点Qが連結部材51の角変位中心へ接近するようにその位置を変えていくので、作用点Qの周速度が遅くなり、アーム50の角変位は減少し、吐出行程にあるプランジャー3の移動速度がゆっくりとなる。その上、中間点での作用点Qの周速度は最低となって、プランジャー3の移動速度が遅いまま吐出行程の略全行程にわたって比較的ゆっくりとプランジャー3が移動することになる。
【0057】
即ち、この発明の実施の形態における印刷機用ポンプの伝動機構5の作用は、出力軸40の回転中心線CL1とプランジャー3の回転中心線CL2とが偏心量eを隔ててねじれの位置にあることによって、プランジヤー3によるインキの吸入行程に占める出力軸40の角変位の割合を、吐出行程に占める出力軸40の角変位の割合より少なくさせ得るので、速やかにインキを吸入させることができる一方、吐出行程に占める出力軸40の角変位量の割合を吸入行程に占める出力軸40の角変位量の割合より多くさせ得るので、ゆっくりとインキを吐出させることができるものである。
【0058】
次に、この発明の実施の第1形態における具体的な1つの実施例を示す。吐出行程に対する吸入行程の比率が0.5、即ち、出力軸40の角変位を基準として吸入行程を120度、吐出行程を240度とする場合について、その関係を図2、図3、図4及び図5を参照して説明する。
【0059】
交差角をθ、偏心量をe、アーム50の腕の長さをb、プランジヤー3が移動する全ストロークsの2分の1をs/2、出力軸40の中心から吐出行程終了点Q1までの距離をaとし、0くeくbとするとき、a=b/cosθ、s/2=b×tanθ、e=a×tanα=b×tanα/cosθの関係が成立する。
【0060】
ここで、例えば具体的に、b=20ミリメートル、θ=15度、α=30度としたとき、e=20×tan30°/cos15°=11.95ミリメートル、s=2×20×tan15°=10.72ミリメートル、a=20/cos15°=20.71ミリメートルとなり、これらの値に設定すれば、吐出行程が、吸入行程に対し2倍の時間を掛けてゆっくりと行わせることができるとともに、この吐出行程では、略一定な吐出量を維持しながらインキを吐出させることができる。
【0061】
なお、この発明の実施の第1形態及び第2形態における印刷機用ポンプのモーター4は、可変速モーターであり、このモーター4の回転速度を適宜に変更することによって、プランジャー3の作動周期が変更され吐出量を適宜に変更することが可能であるが、この吐出量の変更を、モーター4の回転速度の変更によって行わずに、一定回転速度のモーター4を用い、モーター4の出力軸40の回転中心線CL1とプランジヤ一3の回転中心線CL2との交差角θを適宜に変更することが可能な機構(図示しない)に構成することにより、プランジャー3のストロークを変更して吐出量を変更するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0062】
更に、この発明の実施の第1形態及び第2形態における印刷機用ポンプは、1つのポンプPとして説明してきたが、オフセット印刷機において通常使用される複数のポンプPを連ねるように構成されている印刷機用ポンプにおいても、この発明が適用されることはいうまでもない。
【0063】
【発明の効果】
この発明によれば、モーターの出力軸の回転中心線をプランジヤーの回転中心線に対しねじれの位置にあるように設けることによって、前記出力軸が1回転する間に伝動機構を介してインキの吸入及び吐出が行われるように1回転1往復するプランジャーの作動周期において、吸入行程側に占める出力軸の角変位の割合が、吐出側に占める出力軸の角変位の割合より小さく作動させることによって、インキの吸入が速やかに行われる一方、インキの吐出はゆっくりと略一様に行われるようになり、以下のような効果が得られる。
【0064】
▲1▼吸入行程では、インキング装置ヘインキ供給されない時期が短くなる反面、吐出行程では、インキング装置ヘインキ供給される時期が長くなり、且つ略一様にインキを吐出させることが可能となったので、印刷紙面の濃度むらが解消でき、印刷品質を向上させることができる。
【0065】
▲2▼吐出行程では、吸入行程に比べゆっくりとプランジヤーを作動させ得るので、インキの吐出圧力が従来のポンプに比較して低く抑えられ、シリンダーとプランジャーとの隙間からのインキ漏出がなくなり、プランジャーの外部周囲や伝動機構へのインキの固着やそれによる作動不良が解消し、故障や清掃の頻度が減少し保守管理が極めて容易となる。
【0066】
▲3▼インキの吐出圧力が低く抑えられ、且つインキが漏出せず固着することがないので、プランジャーの作動トルクが小さくて済むことから、モーターの小型化と省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態を示す部分断面斜視説明図である。
【図2】図1におけるモーターの出力軸とプランジヤーの各回転中心線がねじれの位置にあることを3つの平面を仮想することによって示した説明図である。
【図3】図1においてY矢視による印刷機用ポンプの伝動機構であるアームと連結部材を真横に倒して示し、且つ前記モーターの出力軸の回転中心線とプランジャーの回転中心線とが所定の間隔をもって離隔している関係を示す部分断面説明図である。
【図4】図1のX矢視による出力軸、プランジヤー及び伝動機構の関係を示す部分断面説明図である。
【図5】図4のZ−Z矢視による前記モーターの出力軸に取り付けられ、角変位する連結部材とそれによって駆動されるプランジャーに取り付けられたアームの回転作動説明図である。
【図6】図4に示す伝動機構が図5におけるような関係で作動したときの出力軸とプランジャーとの作動周期と、軸方向に移動するプランジャーの変位の関係を出力軸の角変位を基準として示した説明図である。
【図7】この発明の実施の第2形態における印刷機械用ポンプの出力軸、プランジャー及び伝動機構の関係を示す図4と同様な部分断面説明図である。
【図8】従来の技術のポンプの部分断面斜視説明図である。
【符号の説明】
P 印刷機用ポンプ
1 本体
11 ブロック部
12 中空体部
12a 中空部
12b 外側壁部
13 貫通穴
14、15 流体通路
2 シリンダー
20 主穴
21 吸入穴
22 吐出穴
3 プランジャー
31 切欠き部
4 モーター(可変速モーター)
40 出力軸
5 伝動機構
50 アーム
50a 半径アーム部
50b 軸線アーム部
51 連結部材
52 球面軸受
CL1 (出力軸の)回転中心線
CL2 (プランジャーの)回転中心線
CL3 (連結部材の)軸中心線
C1 第1仮想平面
C2 第2仮想平面
C3 第3仮想平面
D 楕円
L 垂線
Q 作用点
Q1 吐出行程終了点(吸入行程開始点)
Q2 吸入行程終了点(吐出行程開始点)
Claims (2)
- 一端側が閉塞され、内面の互いに位相が相違する位置に吸入穴と吐出穴とが開口した主穴がシリンダーに形成され、ある回転位相では吸入穴と吐出穴とを同時に閉塞し、その他の回転位相では吸入穴又は吐出穴のいずれか一方を閉塞するようにプランジャーが主穴に回転可能且つ軸方向に往復動可能に嵌入され、プランジャーがモーターによって駆動され回転しながら軸方向に往復することによってインキが供給される印刷機用ポンプにおいて、
出力軸の回転中心線がプランジャーの回転中心線に対しねじれの位置にあるように、且つ出力軸がシリンダーの開口側のプランジャーの基端部との間に空間を置いて対向するように取り付けられたモーターと、
プランジャーの基端部に固定されると共に該プランジャーの回転中心線から偏心した位置でモーターの出力軸側に突出した突出部を有し、且つ該突出部に球面軸受が設けられたアーム、及びモーターの出力軸に一端側が固定され他端側が出力軸の回転中心線から離隔するよう突出し、前記球面軸受の内輪穴に軸中心線方向に変位可能に嵌入された連結部材からなる伝動機構と
を具備し、
1回転するプランジヤーの周面によって、吐出穴を閉塞しつつ主穴の開口部側へ移動する吸入行程と吸入穴を閉塞しつつ主穴の閉塞側へ移動する吐出行程とからなるプランジャーの作動周期において、等速で1回転する出力軸の吸入行程における角変位量の割合を、吐出行程における角変位量の割合より小さくすることによって、吸入行程を速く、且つ吐出行程を遅く作動させることを特徴とする印刷機用ポンプ。 - 一端側が閉塞され、内面の互いに位相が相違する位置に吸入穴と吐出穴とが開口した主穴がシリンダーに形成され、ある回転位相では吸入穴と吐出穴とを同時に閉塞し、その他の回転位相では吸入穴又は吐出穴のいずれか一方を閉塞するようにプランジャーが主穴に回転可能且つ軸方向に往復動可能に嵌入され、プランジャーがモーターによって駆動され回転しながら軸方向に往復することによってインキが供給される印刷機用ポンプにおいて、
出力軸の回転中心線がプランジャーの回転中心線に対しねじれの位置にあるように、且つ出力軸が主穴の開口側のプランジャーの基端部とのの間に空間を置いて対向するように取り付けられたモーターと、
モーターの出力軸に固定されると共に該出力軸の回転中心線から偏心した位置でプランジャー側に突出した突出部を有し、且つ該突出部に球面軸受が設けられたアーム、及びプランジャーの基端部に一端側が固定され他端側がプランジャーの回転中心線から離隔するよう突出し、前記球面軸受の内輪穴に軸中心線方向に変位可能に嵌入された連結部材からなる伝動機構と
を具備し、
1回転するプランジヤーの周面によって、吐出穴を閉塞しつつ主穴の開口部側へ移動する吸入行程と吸入穴を閉塞しつつ主穴の閉塞側へ移動する吐出行程とからなるプランジャーの作動周期において、等速で1回転する出力軸の吸入行程における角変位量の割合を、吐出行程における角変位量の割合より小さくすることによって、吸入行程を速く、且つ吐出行程を遅く作動させることを特徴とする印刷機用ポンプ。
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