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JP3573305B2 - コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材、コンクリート構造物の補修・補強方法及びその補修・補強構造 - Google Patents
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JP3573305B2 - コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材、コンクリート構造物の補修・補強方法及びその補修・補強構造 - Google Patents

コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材、コンクリート構造物の補修・補強方法及びその補修・補強構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既存のコンクリート構造物を繊維強化樹脂で補修・補強する際に使用されるコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材、該コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材を用いたコンクリート構造物の補修・補強方法並びにコンクリート構造物の補修・補強構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
既存のコンクリート構造物は、長年にわたる使用とともに老朽・劣化したり、高速道路や一般道路における高架部分の床版、橋脚では、交通量の激増、車両の大型化に伴い、設計当時の安全率を超え、補強を必要とする箇所が急増している。一方、一般のコンクリート構造物においても、長年の使用による老朽・劣化や、地震の罹災によって強度が低下し、補強・補修を必要とする例が増えている。
【0003】
旧来このような構造物の強化には補強材料として鉄板が使用されていたが、鉄板は大重量であり取り付け時の作業性が劣る、躯体の複雑形状に鉄板が追従できないため、鉄板取り付け後に、鉄板と躯体との間にグラウトを充填しなくてはならない等の問題があった。
【0004】
このような問題を解決するべく、近年、強化繊維シートに樹脂を含浸させたいわゆるプリプレグを補強材料として用いる補強・補修方法や、それを硬化成型してなるFRPを補強材料として用いる補修・補強方法が提案されており、補強材料の軽量化や施工性の向上に寄与している。
【0005】
従来、繊維強化樹脂材によるコンクリート構造物への適用方法には、
(1)強化繊維シートにマトリックス樹脂成分を含浸した後、該樹脂成分を硬化、成型して製造された、いわゆるFRPをコンクリート構造物に接着する方法(例えば、特開昭63−35967号公報参照)、或いは、
(2)強化繊維シートにマトリックス樹脂成分を含浸させ、この樹脂成分の硬化を抑制することにより硬化していない状態(未硬化状態、半硬化状態)のプリプレグとし、これをコンクリート構造物に接着させ、次いでマトリックス樹脂を硬化させる方法(例えば、特開平3−224966号公報、特開昭63−35967号公報、特開平7−34677号公報参照)、或いは、
(3)施工現場にて接着剤層を介して支持体に接着された強化繊維シートにマトリックス樹脂を含浸させてコンクリート構造物に接着及び樹脂を硬化させる方法(例えば、特開平3−222734号公報参照)、或いは、
(4)強化繊維の織物シートをコンクリート構造物の要補強箇所に巻き付けて、それに室温硬化型のマトリックス樹脂を含浸して、硬化させる方法、
等が知られている。
【0006】
一方、FRPの強度や、プリプレグの性能をより向上させるために、一方向性繊維シートを一枚以上積層してなる強化繊維シートをFRPや、プリプレグに使用することが行われている。一方向性繊維シートはスクリムクロス、ガラスクロス、離型紙、ナイロンフィルム等の支持体シート上に担持された状態で保存されているが、シート状態が乱れやすく、その取扱い性が悪い。このため、一方向性繊維シートをコンクリート構造物に適用する場合には、前記(2)及び(3)で説明したように予めプリプレグ化して、得られたプリプレグをコンクリート構造物に適用する方法が採用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記(1)のFRPを用いる方法は、予め工場で成型されたFRPが使用されるため、コンクリート構造物の要補強部の表面構造に追従した形状、強度にすることが困難であるという不都合や、コンクリート構造物の形状によって施工が複雑になったりしていた。
【0008】
前記(2)及び(3)のプリプレグを用いる方法では、プリプレグ中にはマトリックス樹脂成分が、8〜40重量%、通常、30〜40重量%含まれているので、樹脂を含浸していない強化繊維シートに比べて重量が大きく、現場で施工する場合の作業性が悪いという問題を有する。特に、梁や天井に施工するごとき、施工作業が上向きで行うことを要求される場合には、その重量の大きさは作業員に大きな負担となる。
【0009】
また、プリプレグを用いる方法では、プリプレグ中にマトリックス樹脂が含まれているために、マトリックス樹脂を含浸していない強化繊維シートに比べて、ドレープ性が悪く、そのために、プリプレグシートをコンクリート構造物の形状に追従させることが困難であり、特に、コンクリート等の欠落した所謂不陸部分にプリプレグを追従させて貼るには、プリプレグのドレープ性を更に向上させる必要のあることなどの問題点も指摘されている。また、躯体とプリプレグの間にエアを噛みやすく、エア抜きに時間が掛かる等の欠点がある。
【0010】
前記特開平7−34677号公報には、このようなエアの噛み込み、ドレープ性不十分といった問題の改善対策として、樹脂含有量が15重量%以下(好ましくは、8〜12重量%)のプリプレグが提案されているが、マトリックス樹脂含有量を少なくすると、プリプレグを離型シートから剥がす際や所定寸法に裁断する際に強化繊維がバラバラになっり形状安定性が悪くなるという、取扱性の面で新たな問題が生じている。さらに、このような、樹脂含有量が15重量%以下(好ましくは、8〜12重量%)のプリプレグでも、マトリックス樹脂を完全に排除したものではないので、一般のプリプレグ同様に、プリプレグ中に含まれるマトリックス樹脂は半硬化状態の樹脂となっているため、高温時には柔らかく、夏期には接着効果が乏しくなって強化繊維シートが支持体シートから脱落したり、一方、寒冷時には硬くなり、ドレープ性に欠け、コンクリート構造物にフィットさせにくいといった温度依存性が高いために生ずる問題がある。
【0011】
更に、プリプレグは、一般的に樹脂成分中に硬化剤を含み、経時的に樹脂の硬化が進み、このため保存期間(可使時間)に制限がある。この対策として、高温硬化の硬化剤を使用する対策が採られるが、やはり、樹脂の硬化の進行は避けがたい問題になっている。
【0012】
また、高温硬化の硬化剤を使用したプリプレグ及び硬化剤を含まないプリプレグを使用する場合も、共に硬化剤を後から付与する方法が採られ、この硬化剤を後から付与する方法では、硬化剤成分を有機溶剤に溶解させたものが塗布されるが、この場合は、施工現場で有機溶剤が蒸発し作業環境を悪化させるという問題を伴う。
【0013】
前記(4)の強化繊維の織物シートを用いる方法では、強化繊維自体が織物であるため、経糸と緯糸の交差部分が存在するので、強化繊維である経糸にクリンプが入り、直線性を確保できず、このような織物シートにマトリックス樹脂を含浸して硬化させたものは強度が弱くなるという問題がある。特に、コンクリート構造物の梁や柱等においては、強度が要求されるため、強化繊維シート自体にも強度の高いものが要求される。なお、所謂ノンクリンプ織物の使用も考えられるが、ノンクリンプ織物においても、貼付する躯体の形状に合わせてカットした際、織物端部が徐々に解れ取扱性が悪化する。また、緯糸の打込み本数が多すぎると、織糸交点での樹脂含浸性が損なわれ、一方少なすぎると施工時に強化繊維がズレて強化繊維の直線性が保てない、取扱性が悪化するといった問題が生じやすい。
【0014】
そこで本発明の目的は、既存のコンクリート構造物を繊維強化樹脂で補強する際に使用されるコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維において、強化繊維の直線性に優れ、コンクリート構造物に高強度を与えることができ、マトリックス樹脂を含有する場合に生起する保存時間(可使時間)が短くなるといった問題がなく、その施工時において軽量であり且つドレープ性に優れ、コンクリート躯体との間にエアの噛み込みがなく、不陸部分にも追従することができ、施工時の環境によっても温度依存性がなく、作業性に優れたコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、コンクリート構造物の表面で熱硬化性樹脂をコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維に含浸させるのに、その含浸を容易に行うことができ、しかも、含浸の際に強化繊維自体が損傷を受けず、且つ強化繊維の平行性が乱れず、既存コンクリート構造物への現場での適用に好適なコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維を提供することにある。
【0016】
また別の本発明の目的は、このようなコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維を使用した、コンクリート構造物の補修・補強方法及びその補修・補強構造を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記した問題点を解決するために、本発明のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材は、一方向に引き揃えられた強化繊維に熱可塑性樹脂バインダー溶液が適用されることにより、バインダー樹脂量0.1〜15重量%の熱可塑性樹脂バインダーにより一方向に引き揃えられた強化繊維が局所的に結合されて、シート状を保持しているコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材であって、前記熱可塑性樹脂バインダー溶液の適用方法が、熱可塑性樹脂バインダー溶液に一方向に引き揃えられた強化繊維を浸漬する方法、熱可塑性樹脂バインダー溶液を一方向に引き揃えられた強化繊維に噴射する方法、及び熱可塑性樹脂バインダー溶液内に設けた回転ローラのバインダー溶液面より浮上した部分に一方向に引き揃えられた強化繊維を転写により部分接触させる方法から選ばれた方法であることを特徴とする。
【0018】
本発明のコンクリート構造物の補修・補強方法は、(1)コンクリート構造物の面に、20℃における粘度が10〜100ポイズに調整されている、接着剤或いは接着性を有するマトリックス樹脂を塗布し、(2)請求項1、2、3、4又は5記載のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材を前記接着剤或いは接着性を有するマトリックス樹脂の塗布面に配設し、(3)該コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材にマトリックス樹脂を塗布し、或いは塗布しないでそのまま、該コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材を圧着させることにより、下層の接着剤或いはマトリックス樹脂を湧き上げて該コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材に含まれる気泡を追い出しつつ、該コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材中に接着剤或いはマトリックス樹脂を含浸させ、次いで硬化させることを特徴とする。
【0019】
本発明のコンクリート構造物の補修・補強構造は、前記本発明のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材が、コンクリート構造物表面に所定枚数積層され、熱硬化性樹脂のマトリックスによってコンクリート躯体と一体化されて固着していることを特徴とする。
【0020】
本明細書中において、「コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材」は、以下、「一方向強化繊維材」と略す。
【0021】
本発明の一方向強化繊維材は、上記したように一方向に引き揃えられた強化繊維が、0.1〜15重量%の熱可塑性樹脂バインダーにより局所的に結合されたシートであり、マトリックス樹脂を含んでいない。そして、該一方向強化繊維材を用いた本発明のコンクリート構造物の補修・補強方法によれば、一方向強化繊維材をコンクリート構造物に配設するときにはマトリックス樹脂を含浸していない状態のものを使用するので、その重量は、マトリックス樹脂を含浸しているものに比べ軽量であり、作業性に優れる。しかも、マトリックス樹脂が含浸されていないのでドレープ性に優れ、コンクリート躯体と一方向強化繊維材の間にエアを噛み込むことがなく、コンクリート構造物の表面の複雑な形状にも追従させて貼着することができる。
【0022】
本発明の一方向強化繊維材は、マトリックス樹脂を施工現場において含浸させるため、一方向強化繊維材の保存性は特に考慮する必要がない。
【0023】
【発明の実施の形態】
強化繊維
本発明の一方向強化繊維材において使用可能な強化繊維の種類は、炭素繊維、硝子繊維、アラミド繊維などの有機もしくは無機繊維の単独又は2種以上の組合せである。コンクリート構造物に高強度を与える上で、特に、好ましくは炭素繊維が使用され、炭素繊維としてはアクリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらの炭素繊維は、樹脂等の親和性を増すために表面処理による表面が活性化されたものが好ましい。
【0024】
強化繊維を2種以上使用する場合には、例えば、炭素繊維を主体として一定間隔、例えば、5cm間隔でガラス繊維を配することで、現場でシートを裁断する際の目安とすることができる。また、ガラス繊維は樹脂を含浸させると透明になるため、強化繊維シートへの樹脂含浸性を確認することにも使用できる。また、炭素繊維とアラミド繊維を組み合わせたり、破断伸度の異なる炭素繊維を組み合わせて使用することで、繊維破断を一度に起こさないようにし、コンクリート構造物のタフネスを向上させることも可能である。
【0025】
熱可塑性樹脂バインダー
本発明の一方向強化繊維材における、一方向強化繊維材を局所的に結合するための熱可塑性樹脂バインダーは、例えば、ナイロン樹脂を原料として、アミドCONHの水素をメトキシメチル基CHOCH で置換したアルコール可溶性ナイロン樹脂や水溶性ナイロン等の変性ナイロン樹脂や、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は柔軟性が優れている。特に、一方向強化繊維材に柔軟性を付与するためには前記変性ナイロン樹脂が好ましい。このような変性ナイロン樹脂としてアルコール可溶性ナイロン樹脂及び水溶性ナイロン樹脂は、例えば帝国化学産業(株)より、「トレジン」という商標で市販されている。
【0026】
前記ポリカーボネート樹脂は、例えば、三菱ガス化学株式会社より「ユーピロン」、帝人化成株式会社より「パンライト」、出光石油化学株式会社より「出光ポリカーボネート」、日本ジーイープラスチック株式会社より「ゼノイ」、バイエルジャパン株式会社より「マクロロン」等の商標で市販されているものが使用できる。
【0027】
ポリエーテルイミド樹脂は、例えば、日本ジーイープラスチック株式会社より「ウルテム」という商標で市販されているものが使用できる。
【0028】
ポリエーテルスルホン樹脂は、例えば、三井東圧化学株式会社等から市販されているものが使用できる。
【0029】
下式(1)で示されるバインダー樹脂量は、0.1〜15重量%の範囲であることが好ましい。その理由は、バインダー樹脂量が0.1重量%未満では、強化繊維がシート形状を保持できず、このような強化繊維は、コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材として用いることはできない。また、バインダー樹脂量が15重量%を超えると、強化繊維間に存在する間隙の大部分乃至全てがバインダー樹脂により充填されるようになる。そのような強化繊維をコンクリート構造物に配設後にマトリックス樹脂を含浸しようとしても、そのマトリックス樹脂の強化繊維への含浸が不十分になるからである。
【0030】
【数1】
Figure 0003573305
【0031】
熱可塑性樹脂バインダーの強化繊維への付与手段は、溶剤に溶解した熱可塑性樹脂バインダー溶液に一方向に引き揃えられた強化繊維を浸漬する方法、熱可塑性樹脂バインダー溶液を一方向に引き揃えられた強化繊維に噴射する方法、熱可塑性樹脂バインダー溶液内に設けた回転ローラのバインダー溶液面より浮上した部分に一方向に引き揃えられた強化繊維を転写(部分接触)させる方法等が適用できる。
【0032】
前記浸漬方法は、例えば、一方向強化繊維を所定濃度に調整した熱可塑性樹脂バインダー溶液が入ったバインダー浴に浸漬し、熱可塑性樹脂バインダー溶液の溶剤の沸点以上で、かつ、熱可塑性樹脂バインダーの融点または流動点を超えない範囲に温度コントロールされた乾燥機に導入する。そして、乾燥機で溶剤を除去し、ドレープ性を有する本発明の一方向強化繊維材を得る。
【0033】
なお、バインダー樹脂の融点又は流動点を超える温度で前記浸漬処理を行うと、特にバインダー樹脂の含量が高い場合にはドレープ性がなくなってしまい、コンクリート構造物の形状に追従できなくなるという問題を生ずるので避けなければならない。
【0034】
前記浸漬方法の場合、一方向強化繊維の毛羽立ちを防ぐため、弛まない程度の張力下で行うのがよい。熱可塑性樹脂バインダー溶液をより強化繊維間に効率的に付与するためには、少なくとも、一つのガイドバーを通過することが好ましい。浸漬時間は、バインダー樹脂の付着量によって調整され、通常は、5〜60秒間分散液に浸漬することによって行われる。
【0035】
前記噴射方法による場合、一方向強化繊維が通過する出入口を除いて、基本的に密封型の部屋を通過中に、密閉型の内部に設けられた少なくとも一つ以上の噴射口から熱可塑性樹脂バインダー溶液をスプレー状に噴射し、該一方向強化繊維に吹きつけることにより付与を行うことができる。該一方向強化繊維への噴射時間は、熱可塑性樹脂バインダー溶液の付着量によって調整され、通常は、5〜60秒間となるように噴射速度、熱可塑性樹脂バインダー溶液の濃度、ライン速度等をコントロールする。密封型の部屋の噴射領域にはガイドバー等の進行を妨げるものはなく、該一方向強化繊維はこの領域をほぼ直線的に通過する。
【0036】
前記転写方法による場合、一方向強化繊維を、熱可塑性樹脂バインダー溶液中に浸漬されている少なくとも一つ以上の回転ローラーにおける熱可塑性樹脂バインダー溶液面より突出した回転ローラー上部において、接触させつつ通過させる。ローラーの回転により樹脂溶液をテイクアップし、該一方向強化繊維がローラーと接触している間に、熱可塑性樹脂バインダーの転写による付与を行うことができる。ローラーと一方向強化繊維との接触時間は、熱可塑性樹脂バインダーの付着量によって調整され、通常は、5〜60秒間となるように熱可塑性樹脂バインダー溶液の濃度、ローラー、ライン速度等をコントロールする。
【0037】
以上の熱可塑性樹脂バインダーの一方向強化繊維への各付与方法によれば、一方向強化繊維に付与するバインダー樹脂量の調整を比較的容易に達成できる。
【0038】
このようにして熱可塑性樹脂バインダーが付与された一方向強化繊維を、熱可塑性樹脂バインダー溶液の溶剤の沸点以上、且つ熱可塑性樹脂バインダーの融点又は流動点を超えない温度にて乾燥して溶剤を除去することにより、本発明のドレープ性を有し、且つ保形性の付与された一方向強化繊維材を得る。乾燥温度が熱可塑性樹脂バインダーの融点又は流動点以上の場合には、熱可塑性樹脂バインダーが溶融し、一方向強化繊維中に膜状となってマトリックス層を形成し、得られた一方向強化繊維材中には、強化繊維間の隙間が減少乃至無くなり、そのために、マトリックス樹脂の含浸が行われなくなり、強化繊維間中に含有されている気泡等も排除できなくなり、且つ一方向強化繊維材のドレープ性も損なわれることになるので、上記温度での乾燥は避けなければならない。
【0039】
熱可塑性樹脂バインダーの溶剤は熱可塑性樹脂バインダーの種類により選定されるが、水、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類、含窒素化合物類またはこれらの混合液を挙げることができる。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂は、いずれも塩化メチレン等の塩素系溶剤または塩化メチレンにN,N−ジメチルホルムアミドあるいはN−メチル2−ピロリドン等を混合した混合溶剤に溶解してバインダー樹脂液として使用できる。
【0040】
本発明の一方向強化繊維材とは、強化繊維/強化繊維間をバインダー樹脂が局所的に結合しているため、全体としてはシート形状を保持しており、かつ、ドレープ性を有している。また、非粘着性であるため、取扱性の温度依存性がなく、作業性も良好である。さらに、強化繊維の支持体が不要であるため、軽量性も優れている。
【0041】
本発明の一方向強化繊維材の目付の下限は、通常、50g/m以上、特に200g/m以上とするのが、積層工程を減少させる観点から好ましく、一方、目付の上限は、目付が大きくなるとマトリックス樹脂の含浸性が劣る等の理由で、800g/mを超えない方が良い。
【0042】
本発明の一方向強化繊維材のコンクリート構造物面への施工は、コンクリート構造物の面に予め通常の下地処理を施した後、接着剤或いは接着性を有するマトリックス樹脂を塗布し、一方向強化繊維材を配設し、この一方向強化繊維材の繊維層の厚さと樹脂量に応じ、さらにマトリックス樹脂を塗布し、或いはそのままで、ローラー等の圧着具により、一方向強化繊維材を押さえつけて、下層に塗布されている接着剤やマトリックス樹脂を湧き上げるようにし、一方向強化繊維材の繊維層に含まれる空気等の気泡を追い出しつつ、繊維層に接着剤を充分に含浸させる。この際適用される接着剤は、接着性を有するならばマトリックス樹脂と同一成分であってもよく、或いは、マトリックス樹脂と親和性を有し、マトリックス樹脂を兼ねるものが好ましい。
【0043】
本発明の一方向強化繊維材を、コンクリート構造物面上に多重積層する場合は、各層ごとに、マトリックス樹脂の塗布と一方向強化繊維材の配置を行い、ローラー等の圧着具による樹脂含浸をその都度行うのが良い。
【0044】
図1はコンクリート構造物に本発明の一方向強化繊維材を適用した場合の補修・補強構造の断面を示す。1はコンクリート構造物であり、コンクリート構造物1の梁部分に、一方向強化繊維材2が貼着された状態を示している。
【0045】
本発明の一方向強化繊維材に含浸される接着剤およびマトリックス樹脂は、例えば、エポキシなどの樹脂成分と硬化剤よりなる熱硬化性樹脂では、20〜40℃で、数日以内に硬化するような組み合わせを選定するのが望ましい。
【0046】
また、一方向強化繊維材への含浸性を考慮し、樹脂粘度が200ポイズ以下(20℃)、特に好ましくは10〜100ポイズ(20℃)に調整されていることが好ましい。但し、施工現場の環境を損なうことがないよう、有機溶剤等による粘度調整は避けるべきである。
【0047】
接着剤およびマトリックス樹脂の種類は特に制限されないが、冬季の5℃から60℃程度までの広い温度範囲で施工でき、コンクリート躯体が比較的湿潤状態でも硬化不良を起こさず、コンクリート躯体との接着性に優れる等の特長から、好ましくは、建設分野で実績のあるエポキシ樹脂が挙げられる。本発明において好ましく用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0048】
エポキシ樹脂の反応性希釈剤として、n−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートから選ばれた少なくとも1種が併用でき、無溶剤で適度の粘度に調整するのに有効である。
【0049】
エポキシ樹脂の硬化剤及び硬化促進剤としては、通常エポキシ樹脂に用いられている種類のものが適用できる。マトリックス樹脂がエポキシ樹脂で反応性希釈剤がフェニルグリシジルエーテルの場合、例えばポリアミドアミン、アミドアミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族ポリアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族ポリアミン、メンセンジアミン等の脂環族ポリアミン、変性ポリアミン、ベンジルメチルアミン等の第三アミン、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、ポリメルカプタン類、ポリチオール類、三フッ化ホウ素アミン錯体等を例示できる。
【0050】
硬化剤及び硬化促進剤の選択は、マトリックス樹脂の硬化温度が10〜40℃程度の常温で硬化する様に選定するのが、硬化時に特に加熱装置を必要としないので、現場施工において好ましく、上記に列挙した硬化剤及び硬化促進剤はこの基準に合致する。
【0051】
【実施例】
〔実施例1〜3及び比較例1、2〕
アルコール可溶性のナイロン樹脂トレジンF30(商品名、帝国化学産業(株)製)をメタノールに溶解してバインダー浴を作製した。このバインダー浴に炭素繊維HTA(商品名、東邦レーヨン(株)製、引張強度380kgf/mm,引張弾性率24,000kgf/mm)を通し、100℃で乾燥して、繊維目付300g/mの一方向強化繊維を得た。なお、バインダー浴濃度は、バインダー樹脂量%が0.1%(実施例1)、5%(実施例2)、15%(実施例3)、0.05%(比較例1)、20%(比較例2)になるように調整した。
【0052】
得られた一方向強化繊維材のドレープ性を天然繊維や合成繊維の風合いを測定する風合メーターを用いて評価した。その結果を下記の表1に示す。
【0053】
マトリックス樹脂としてエピコート825(商品名、油化シェルエポキシ(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用い、硬化剤として2E4MZ(商品名、四国化成工業(株)製の2−エチル−4−メチルイミダゾール)を10phr混合し、熱硬化性マトリックス樹脂を作製した(粘度:40ポイズ、25℃)。そのゲルタイムは40℃で15時間であった。
【0054】
コンクリート材として、長さ80mm、幅80mm、厚さ50mmの試験体を用意し、このコンクリート材に前記の熱硬化性マトリックス樹脂を約200g/m塗布した。この上に前記一方向強化繊維材を配置し、ハンドローラーにて押圧転動を繰り返し、下面より樹脂を湧き出させ、繊維層に含浸させた。更にこの一方向強化繊維材の上表面に前記熱硬化性マトリックス樹脂を約200g/m塗布し、含浸・硬化させた。次いで、25℃の雰囲気で7日間静置し、マトリックス樹脂を硬化させた後、建研式付着性試験機を用いて付着性試験を行った。その結果を下記の表1に示す。
【0055】
コンクリート材への曲げ補強効果は、JIS A 1132に準拠して作製した長さ400mm、幅10mm、厚さ10mmの曲げ試験体で評価した。一方向強化繊維材の貼付方法は前記付着性試験の場合と同様である。試験体作製後、25℃の雰囲気で7日間静置し、マトリックス樹脂を硬化させた後、JIS A1106に準拠して曲げ試験を行った。その結果を下記の表1に示す。
【0056】
【表1】
Figure 0003573305
【0057】
前記表1によれば、本実施例1、2、3と比較例1、2を対比すると明らかなようにバインダー樹脂量が0.1〜15重量%となる系は良好な特性を示している。
【0058】
〔実施例4〜7〕
バインダー樹脂として水溶性ナイロン(トレジンFS−350:商品名、帝国化学産業(株)製、溶剤:水、実施例4)、ポリカーボネート(パンライト L1300W:帝人化成(株)製、溶剤:塩化メチレンとN,N−ジメチルホルムアミド混合溶媒、実施例5)、ポリエーテルイミド(Ultem 1000:日本ジーイープラスチック(株)製、溶剤:塩化メチレン、実施例6)、ポリエーテルスルホン(PES 5003:三井東圧化学(株)製、溶剤:塩化メチレンとN−メチル2−ピロリドンの混合溶媒、実施例7)を用い、前記実施例2と同様にして一方向強化繊維材を得た。
【0059】
熱硬化性マトリックス樹脂及び評価方法は前記実施例1,2又は3と同様に行った。下記の表2に本実施例4、5、6、7で使用した一方向強化繊維材の特性、樹脂の特性、並びに一方向強化繊維材を貼付したコンクリート試験体の曲げ試験結果、付着性試験結果を示す。
【0060】
【表2】
Figure 0003573305
【0061】
前記表2によれば、本実施例4、5、6、7から明らかなように、熱可塑性樹脂バインダーとして水溶性ナイロン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンを用いた系は良好な特性を示している。
【0062】
【発明の効果】
本発明のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材は、マトリックス樹脂を含有しないので、通常のプリプレグを使用した場合におけるコンクリート躯体への貼付時のエア噛込みや不陸部分に追従できないドレープ性不足などの問題を解決することができ、また保存時間(可使時間)が短くなるといった問題がなく、その施工時において軽量であり、且つ施工時の環境によっても温度依存性が小さく、作業性に優れる。
【0063】
本発明のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材は、強化繊維/強化繊維間をバインダー樹脂が局所的に結合しているため、強化繊維がバラバラになることがなく、樹脂含有率の低いプリプレグや強化繊維を支持体シート上に接着して支持した強化繊維シートに見られるような形態安定性不足による取扱性の不都合がなく、樹脂を含浸する際にローラー等の圧着具を用いて行っても、圧着具による毛羽立ちが無い。
【0064】
本発明のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材は、強化繊維/強化繊維間をバインダー樹脂が局所的に結合しているため、コンクリート躯体の形状に合わせてカットしても、端部が解れるといった問題が生じない。また、強化繊維の直線性が確保できるので、強度が高い。
【0065】
また、本発明のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材は、強化繊維/強化繊維間をバインダー樹脂が局所的に結合しているため、樹脂の含浸性に優れ、且つ強化繊維層に含まれる気泡がマトリックス樹脂成分の含浸時、下面からの樹脂の湧き出現象によって追い出され、気泡の減少した強度の高いコンクリート構造物の補修・補強構造を提供することができる。このため、現場施工時の作業性に優れ、コンクリート構造物の梁、柱及び床版(スラブ)等の補修・補強に好適である。
【0066】
本発明のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材は前記のように含浸性が良いので、マトリックス樹脂を含まない本発明の軽量なコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材を、コンクリート構造物に接着した後に、マトリックス樹脂の含浸工程を行うことが可能となったので、接着時の作業性が大幅に向上する。
【0067】
熱硬化性の樹脂成分を含む、従来タイプのコンクリート構造物補修・補強用強化繊維シートは、樹脂成分と硬化剤成分とを個別に供給することが要求されていたが、本発明のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材を使用する場合は、硬化剤成分を含むマトリックス樹脂成分を同時に含浸することができ、施工が簡素化される。
【0068】
本発明のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材は、マトリックス樹脂を含有しない状態でコンクリート構造物面に直接接着しているので、既にマトリックス樹脂を含有しているプリプレグを利用した場合に比べ高い剥離強度を有し、したがって、コンクリート構造物への補修・補強効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンクリート構造物に本発明の一方向強化繊維材を適用した場合の補修・補強構造の断面を示す。
【符号の説明】
1 コンクリート構造物
2 一方向強化繊維材

Claims (8)

  1. 一方向に引き揃えられた強化繊維に熱可塑性樹脂バインダー溶液が適用されることにより、バインダー樹脂量0.1〜15重量%の熱可塑性樹脂バインダーにより一方向に引き揃えられた強化繊維が局所的に結合されて、シート状を保持しているコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材であって、
    前記熱可塑性樹脂バインダー溶液の適用方法が、熱可塑性樹脂バインダー溶液に一方向に引き揃えられた強化繊維を浸漬する方法、熱可塑性樹脂バインダー溶液を一方向に引き揃えられた強化繊維に噴射する方法、及び熱可塑性樹脂バインダー溶液内に設けた回転ローラのバインダー溶液面より浮上した部分に一方向に引き揃えられた強化繊維を転写により部分接触させる方法から選ばれた方法であることを特徴とするコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材。
  2. 前記強化繊維が炭素繊維である請求項1のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材。
  3. 熱溶融を避けた手段で熱可塑性樹脂バインダーにより一方向に引き揃えられた強化繊維が結合されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材。
  4. 前記熱可塑性樹脂バインダーが変性ナイロン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンから選ばれた1種又は2種以上である請求項1、2又は3に記載のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材。
  5. 前記変性ナイロンがアルコール可溶性ナイロンまたは水溶性ナイロンである請求項4記載のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材。
  6. (1)コンクリート構造物の面に、20℃における粘度が10〜100ポイズに調整されている、接着剤或いは接着性を有するマトリックス樹脂を塗布し、
    (2)請求項1、2、3、4又は5記載のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材を前記接着剤或いは接着性を有するマトリックス樹脂の塗布面に配設し、
    (3)該コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材にマトリックス樹脂を塗布し、或いは塗布しないでそのまま、該コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材を圧着させることにより、下層の接着剤或いはマトリックス樹脂を湧き上げて該コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材に含まれる気泡を追い出しつつ、該コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材中に接着剤或いはマトリックス樹脂を含浸させ、次いで硬化させることを特徴とするコンクリート構造物の補修・補強方法。
  7. 請求項記載のコンクリート構造物の補修・補強方法において、マトリックス樹脂の塗布、コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材の配設、及びコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材の圧着からなる工程を、複数回繰り返すことを特徴とするコンクリート構造物の補修・補強方法。
  8. 請求項1、2、3、4又は5記載のコンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材が、コンクリート構造物表面に所定枚数積層され、熱硬化性樹脂のマトリックスによってコンクリート躯体と一体化されていることを特徴とするコンクリート構造物の補修・補強構造。
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