JP3577178B2 - ポリエステルシートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルシートの製造方法に関するものであり、詳しくは、押出機としてベント式二軸押出機を使用した製造方法であって、特定の条件下に溶融押出しを行うことにより、実質的に未乾燥の原料ポリエステルを使用した場合や溶融押出量が高められた大スケールの場合であっても溶融押出後のポリエステルの固有粘度の低下が極めて少ないポリエステルシートの製造方法に関するものである。なお、本明細書において、固有粘度をIVと略記する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルは、その優れた化学的、物理的性質のため、フイルム、ボトル、繊維、その他の各種成型品の原料として広く使用されている。特に、ポリエチレンテレフタレートに代表される二軸配向ポリエステルフイルムは、その優れた機械的特性、電気的特性、耐薬品性、寸法安定性などの点から、情報記録材料、コンデンサー、包装、製版、電気電絶、写真フイルム等の多くの分野において、基材として使用されている。
【0003】
二軸配向ポリエステルフイルムは、押出成形されたポリエステルシートを延伸することにより製造される。ポリエステルシートの成形は、キャスティングドラム表面にポリエステルの溶融シートを押し出して冷却固化して行われるが、例えば特開平6−91635号公報には、押出機(成形機)として、ベント式二軸押出機の使用が提案されている。ベント式二軸押出機は、減圧作用による脱気のためのベント孔を備えた押出機であり、上記の公開公報においては、滑り性の付与されたポリエステルフイルムを製造するため、ポリエステルと無機粒子および/または有機粒子のスラリーとの混合にベント式二軸押出機が利用されている。
【0004】
ところで、ベント式二軸押出機の脱気効率は、一定の押出量に対しスクリュー回転数の高い方が良好であると言える。すなわち、一定の押出量に対し、スクリュー回転数を増大させるとスクリュー表面に存在するポリエステルの表面を強制的に更新することが出来、その分、溶融ポリエステルからの脱気効率が増大することになる。そして、その結果、ポリエステルのIVの保持率が改善される。
【0005】
しかしながら、本発明者によるスクリュー回転数と脱気効率の関係の検討結果、一定の押出量に対し、スクリュー回転数を増大させていくとIV保持率が改善される現象に引き続き、IV保持率が低下する現象が見い出された。斯かる現象は、押出機のシリンダーの内径(直径)Dが150(mm)以上である大型のベント式二軸押出機の場合に顕著である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、押出機としてベント式二軸押出機を使用したポリエステルシートの製造方法であって、ベント式二軸押出機における脱気効率を高めて加水分解によるポリエステルのIV低下を最小限に抑制し得る様に改良されたポリエステルシートの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するため、前記のIV保持率低現象の原因を解明を目指し、押出機から排出される溶融ポリエステルの樹脂温度を測定した結果、スクリュー回転数の増大と共に樹脂温度が上昇する現象を見出した。そして、更に検討を重ねた結果、ある領域からIV保持率が低下する原因は、樹脂温度の上昇により加水分解が促進されることにあるとの知見を得た。
【0008】
本発明は、上記の知見を基に完成されたものであり、その要旨は、キャスティングドラム表面にポリエステルシートを溶融押出しするポリエステルシートの製造方法において、押出機としてシリンダーの内径(直径)Dが140(mm)以上のベント式二軸押出機を使用し、単位時間当たりの押出量Q(kg/hr.)とスクリュー回転数N(rpm)とが次の式(I)を満足する条件下に溶融押出しを行うことを特徴とするポリエステルシートの製造方法に存する。
【0009】
【数2】
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の製造方法で好適に使用されるベント式二軸押出機の一例の側面説明図であり、図中、(1)は成形機(押出機)、(2)は加熱シリンダー、(3)はスクリュー、(4)は押出口、(6)はベント孔、(8)は逆ネジ、(9)はポリマー投入口、Mはスクリューの駆動装置を表す。
【0011】
本発明の特徴は、押出機のシリンダーの内径(直径)をD(mm)とした際、単位時間当たりの押出量Q(kg/hr.)とスクリュー回転数N(rpm)とが次の式(I)、好ましくは次の(II) 式、更に好ましくは次の(III) 式を満足する条件下に溶融押出しを行う点にある。斯かる条件を満足することにより、スクリューの剪断作用による過度の発熱を抑制しつつ脱気効率を高め、ポリエステルのIV低下を防止することが出来る。
【0012】
【数3】
【0013】
次の(IV)式に示す条件では、回転数が押出量に対して高すぎるため、スクリューの剪断による発熱が過多となりIV保持率が悪化する傾向がある。また、次の(V)式に示す条件では、回転数が押出量に対して低すぎるため、減圧下での溶融樹脂表面の更新度が低下して十分な脱気が行えずにIV保持率が悪化する傾向がある。
【0014】
【数4】
【0015】
本発明においては、原料として、異なる嵩密度を有する2種以上のポリエステルを使用することも出来る。具体的には、原料の一部に再生ポリエステルを使用することが出来る。ところで、再生ポリエステルの中でもフイルムの端部を小片に粉砕した所謂フラフは、嵩密度が0.01〜0.60の範囲であり、スクリューに上手く噛み込まずに供給口へ滞留すると言う問題がある。しかも、上記の様に嵩密度の低い材料の場合は、スクリューの輸送部でペレットとの輸送効率が異なる故に押出機先端での圧力変動が大きくなり、その結果、押出量の変動も増大する。従って、上記の様な嵩密度の低いフラフは、フラフ専用のチップ製造ラインで使用するのが困難である。
【0016】
しかしながら、本発明によれば、少なくとも一方のポリエステルの嵩密度が0.01〜0.60であって、異なる嵩密度を有する2種以上のポリエステルであっても何ら問題なく溶融押出しを行うことが出来る。すなわち、本発明によれば、押出機先端の圧力変動は±5kg/cm2以下となり、しかも、ベント部でのポリマーの表面積が増大するため、脱気能率が向上し、特にIV保持率が向上し、溶融押出後のIV低下が10%以下となる。
【0017】
本発明の前述の条件は、嵩密度の最も小さいポリエステルのIVが他のポリエステルのIVよりも小さい場合に特に効果的である。その際の嵩密度は好ましくは0.6以下である。嵩密度が0.6より大きい場合は、IV保持率の改善効果が乏しくなる。逆に、嵩密度が0.01未満の場合は、当該ポリエステルの容積が増大するため、十分な原料供給量を確保するのが困難となり、また、供給配管中で原料閉塞などの問題が発生し易くなる。嵩密度が0.01〜0.60のポリエステルの配合量は、全ポリエステルに対し、通常60%以下、好ましくは55%以下、更に好ましくは50%以下である。
【0018】
ベント式二軸押出機に供給されるポリエステルのIVは、任意に選択し得るが、通常0.40〜1.10以下、好ましくは、0.50〜1.00である。ポリエステルのIVが0.40より小さい場合は、成型品の力学強度が不足する。逆に、ポリエステルのIVが1.10を超える場合は、IV低下率が増大する。ベント式二軸押出機から押し出されるポリエステルのIVの低下は、通常10%以下であるが、好ましくは9%以下、更に好ましくは8%以下である。
【0019】
本発明においてポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とから成るポリエステルを指し、特に、繰り返し単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位または1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート単位を有するポリエステルが好適である。なお、ポリエステルは他の第三成分が共重合されていてもよい。
【0020】
上記の芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシエトキシ安息香酸等)等が挙げられ。一方、上記のグリコール成分としては、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール以外に、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、ポリエステルに後述の無機粒子および/または有機粒子のスラリーを混合するか否かに拘らず、ポリエステルとしては、乾燥ポリエステルを敢えて使用する必要がない。勿論、乾燥されたポリエステルを使用することは何ら問題が無く、例えば、含水率が50ppm以下に乾燥されたポリエステルを使用してもポリエステルの性質が悪化することはない。
【0022】
本発明においては、滑り性の付与されたポリエステルフイルムを製造するため、ポリエステルに無機粒子および/または有機粒子のスラリーを混合することが出来る。無機粒子としては、例えば、酸化シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、フッ化リチウム、カオリンの他、酸化鉄などの無機顔料が例示され、有機粒子としては、ジビニルベンゼン重合体、スチレン・ジビニルベンゼンの共重合体、各種イオン交換樹脂の他、アントラキノン等の有機顔料が例示される。液状スラリーとして供給出来る粒子であればその種類は特に限定されない。
【0023】
本発明においてスラリーの媒体としては、水やエチレングリコール等が好ましく使用される。ポリエステルが溶融する際に気化し、または、ベント部の減圧作用で気化し、ポリエステルのIVの低下を引き起こさない液体であれば、その種類は特に限定されない。また、無機粒子および有機粒子の媒体中への分散方法としては、超音波や剪断応力を利用した公知の方法を採用することが出来る。
【0024】
本発明において、ポリエステルに無機粒子および/または有機粒子のスラリーを混合する場合、別途に添加ノズルを設けず、ポリマー投入口(9)からスラリーの添加を行うのが好ましい。供給されたポリエステルとスラリーは、加熱シリンダー(2)中においてスクリュー(3)により押出口(4)に向かって移送される。その間、スラリーは、加熱シリンダー(2)からの熱と剪断作用によって発生する熱とを受熱して気化する。その結果、加熱シリンダー(2)中の圧力が増大する。そして、スラリーの媒体は、ポリエステルが逆ネジ(8)部に到達し半溶融状態となる迄の間に気化してポリマー投入口(9)から排出される。気化した媒体の周囲への拡散が問題となる場合は、気化した媒体の吸引排出装置を設ければよい。
【0025】
ポリエステルは、逆ネジ(8)部からベント孔(6)部に移送され、ベント孔(6)の減圧作用により脱気される。ポリエステルは、ベント孔(6)で脱気処理された後、押出口(4)から押し出されるが、必要に応じ、押出口(4)とベント孔(6)との間に更にベント孔を設けてもよい。また、通常の押出機で行われている様に、加熱シリンダー(2)の温度を調整することにより、押し出されるポリエステル組成物の温度を適性に保持することが出来る。
【0026】
また、加熱シリンダー(2)のスラリー供給部の温度は、通常200℃以下、好ましくはスラリーの媒体の沸点以下、更に好ましくは媒体の沸点よりも10℃以上低い温度とされる。しかしながら、スラリーの供給開始時点からの媒体の気化を有効に行うため、加熱シリンダー(2)のスラリー供給部の温度の下限は、通常60℃程度にする必要がある。
【0027】
本発明においては、スラリーの媒体の気化が原料供給口に供給された時点から開始されるため、ポリエステルの可塑化前、すなわち、逆ネジ(8)に至る前までに実質的完全に媒体を除去することが可能となる。そのため、スラリーの媒体として好適な水を使用することが出来、また、ポリエステルに対する割合として10重量%までの水を使用することが出来る。水の割合が10重量%を超える場合は、ポリマー投入口(9)から除去される水蒸気の量が多くなり過ぎて新たなポリエステル及びスラリーの供給が困難となる。
【0028】
本発明において、ポリエステルは、上記の様にスラリーの媒体が除去された後にベント孔(6)部に移送される。そして、実質的に未乾燥のポリエステルを使用した場合、当該ポリエステルの内部の水分は、ベント孔(6)からの減圧作用によって脱気される。水分の脱気効率を高めるため、ベント孔(6)の減圧度は、通常40mmHg以下、好ましくは30mmHg以下、更に好ましくは10mmHg以下とされる。
【0029】
本発明においては、キャスティングドラム表面にポリエステルシートを溶融押出しする際、キャスティングドラムに対するポリエステルシートの密着性を高めるため、静電密着法、エアナイフ法、2つのロールでニップするニップロール法などを適宜採用することが出来る。
【0030】
本発明によれば、前述の通り、実質的に乾燥または未乾燥の何れのポリエステルをも使用することが出来るが、実質的に未乾燥のポリエステルを使用してもIV低下が少ないと言う本発明の効果は顕著である。
【0031】
すなわち、従来より、加水分解によって生じるIV低下に基づいて発生する延伸工程の破断などの問題を解決するため、溶融時のIV低下を10%未満に抑制する必要があるとの観点から、溶融前のポリエステルは、含水率が50ppm以下となるまで乾燥する必要があるとされている。ところが、斯かる乾燥は、例えば、80℃で3時間の条件を必要とし、しかも、乾燥後のポリエステルは、放冷後に溶融押出しされるため、乾燥工程の加熱エネルギーの大部分は、溶融押出工程に利用されることなく失われる。従って、本発明において、実質的に未乾燥のポリエステルを使用し得る効果は、生産効率のみならず、省エネルギー化の観点から、その工業的価値は顕著である。
【0032】
また、実質的に未乾燥のポリエステルを使用する場合は、フイルム製造工程から排出されるスリットフイルム等の再生ポリエステルも同様に乾燥することなく適当に粉砕した後に直接に未乾燥の新規ポリエステルと共に溶融押出を行うことが出来る。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中、単に「%」とあるのは「重量%」を意味する。
【0034】
(1)ポリエステルのIV〔η〕(dl/g):
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および粒子を除去したポリエステル1gに対し、フェノ−ル/テトラクロロエタン:50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0035】
(2)ポリエステルの含水率:
水分測定装置(三菱化学製微量水分測定装置「CA−06」)で測定した。
【0036】
(3)ポリエステルの嵩密度:
JIS K6722に準拠し、嵩比重測定器を使用し、単位体積V当たりの重量Wとして求めた。
【0037】
(4)ポリエステルのIV保持率:
IV低下が大であるとフイルムの実用強度が低下したり、二軸延伸時にフイルムが破断して生産の連続性が得られなくなる等の問題が生じるため、IV保持率の評価を行った。評価は、IV低下が8%未満の場合を◎、8〜10%の場合を○、10%を超える場合を×として行った。
【0038】
(5)総合評価:
押出量が2(t/hr.)未満でIV保持率が10%以下と良好な場合を○、押出量が2(t/hr.)以上においてIV保持率が10%以下と良好な場合を◎、その他の場合を実用上不適として×とした。また、その他、何らかの問題で溶融押出が出来なかった場合、原料の計量から配合までの時間が二軸押出機を使用した場合の2倍以上を要した場合、シート状に溶融押出したものの、その後の延伸時にフイルムの破断が多発した場合、押出機の先端圧変動が±5Kg/cm2以上となる場合などを不適として×とした。
【0039】
実施例1〜4:
IVが0.650(dl/g)、含水率が0.2%、嵩密度が0.7の実質的に未乾燥なポリエステルを原料とし、表2に示す条件下、ベント式二軸押出機で溶融押出し、ポリエステルのIV低下の程度から総合評価を行った。結果を纏めて表1に示す。
【0040】
比較例1:
IVが0.650(dl/g)、含水率が0.2%、嵩密度が0.7の実質的に未乾燥なポリエステルを原料とし、表2に示す条件下、ベント式二軸押出機で溶融押出し、ポリエステルのIV低下の程度から総合評価を行った。結果を纏めて表1に示す。IV低下が大きくポリエステルシートの製造法として採用不可能であった。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、ベント式二軸押出機における脱気効率を高めて加水分解によるポリエステルのIV低下を最小限に抑制し得る様に改良されたポリエステルシートの製造方法が提供され、本発明の工業的価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法で好適に使用されるベント式二軸押出機の一例の側面説明図
【符号の説明】
1:ベント式二軸押出機
2:加熱シリンダー
3:スクリュー
4:押出口
6:ベント孔
8:逆ネジ
9:ポリマー投入口
M:スクリューの駆動装置
Claims (4)
- キャスティングドラム表面にポリエステルシートを溶融押出しするポリエステルシートの製造方法において、押出機としてシリンダーの内径(直径)Dが140(mm)以上のベント式二軸押出機を使用し、単位時間当たりの押出量Q(kg/hr.)とスクリュー回転数N(rpm)とが次の式(I)を満足する条件下に溶融押出しを行うことを特徴とするポリエステルシートの製造方法。
- 押出機のシリンダーの内径(直径)Dが150(mm)以上である請求項1に記載の製造方法。
- 実質的に未乾燥の原料ポリエステルを使用する請求項1又は2に記載の製造方法。
- 溶融押出後のポリエステルの固有粘度の低下が10%以下である請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
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