JP3579174B2 - 微粒子径測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は微粒子径測定装置、特に被測定試料表面上の単一微粒子からの極微弱な散乱光を光電子増倍管により検出して、その直径をナノメータオーダで計測する微粒子径測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばアルゴンレーザを用いて光散乱法により、パターン未形成のシリコンウエハのような鏡面上に付着している単一微粒子を検知することにより、その直径をナノメータオーダで計測する微粒子径測定装置が周知である。
この微粒子径測定装置は、被測定試料表面上に収束レーザを照射して走査しながら、微粒子からのレイリー散乱光を光ファイバ等の集光器により光電子増倍管(PMT)に集光し、その強度変化より粒径を計測するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、微粒子からの散乱光強度は粒径の6乗に比例するため、粒径の測定範囲が10nmから100nm程度でも、散乱光強度は10−12〜10−7W程度まで変動し、光電子増倍管の出力電流が大きく変動する。
このため、光電子増倍管の出力電流が大きく変動しないように、加速電圧印加手段の陽極陰極間印加電圧を固定した場合、粒径の測定範囲は狭くなる。
しかも、光電子増倍管の定格出力電流は10μA程度と低いため、予測し得ない大強度の光が入射した場合、出力電流が過大に流れないように印加電圧を遮断する保護回路を設ける必要がある。
【0004】
特に、微粒子径計測装置のように、より小さい粒径を計測する装置においては、光電子増倍管に高電圧を印加するため、保護回路は必須である。このため、光電子増倍管を用いた極微弱光測定時には、計測法と装置に工夫を要し、また煩雑さも伴っていた。また、通常、保護回路による印加電圧の遮断は、計測の中断につながり、計測時間の増大と計測法の煩雑さを増すことになる。
【0005】
ところで、従来においては、光電子増倍管に印加電圧の遮断を行う保護回路を設けず、定格出力電流より大きい電流が流れるように、ブリーダ抵抗値を小さくすることが考えられる。
しかしながら、ブリーダ抵抗値を小さくすると、予測し得ない大強度の光が光電子増倍管に入射した場合、最終段加速電極または陽極を、大量の電子が加速された状態でたたくことにより、電極が劣化したり破損する恐れがある。
【0006】
これに対し、ブリーダ抵抗値を大きくすると、電圧降下により各加速電極間の加速電圧が均一化されず、ブリーダ電流値が変動するため、増倍率が変動する。このように、従来においては、ブリーダ抵抗値を大きくすると、入射光量に対する出力電流の直線関係を害するため、ブリーダ抵抗の値は100〜300KΩ程度の小抵抗とせざるを得ないのである。
また、光ファイバなどの集光器では、シリコンウエハからの散乱光を光電子増倍管に良好に集めることができず、測定が正確に行えなくなる恐れがある。
【0007】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は不意の過大入射光に対しても光電子増倍管を破損することなく、微粒子径を適切に計測し得る微粒子径測定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明にかかる微粒子径測定装置は、レーザ光照射手段と、走査手段と、集光手段と、光電子増倍管と、加速電圧印加手段と、記憶手段と、電圧変更手段と、入射光量対出力電流特性取得手段と、粒径情報取得手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記レーザ光照射手段は、被測定試料表面にレーザ光を照射する。
前記走査手段は、前記レーザ光照射手段からのレーザ光を被測定試料表面で1次元方向または2次元方向に走査し、これを同一の被測定試料について複数回行う。
前記集光手段は、被測定試料表面からのレイリー散乱光を集光する。
【0010】
前記光電子増倍管は、前記集光手段により集光されたレイリー散乱光の強度情報に対応した出力電流を得る。
前記加速電極印加手段は、前記光電子増倍管の出力電流が最大定格出力電流以下で飽和するように、ブリーダ抵抗値が高抵抗よりなる。
前記記憶手段は、前記光電子増倍管により得られた出力電流値を記憶する。
【0011】
前記電圧変更手段は、前記光電子増倍管の印加電圧を各回の走査終了時に順次変更する。
前記入射光量対出力電流特性取得手段は、被測定試料の測定前に前記光電子増倍管の入射光量対出力電流特性を得る。
前記粒径情報取得手段は、前記入射光量対出力電流特性取得手段により得られた入射光量対出力電流特性に基づき、前記記憶手段に記憶された出力電流値のうち、飽和値以下の出力電流値より被測定試料表面の微粒子の粒径を計測する。
【0012】
なお、前記光電子増倍管の出力電流が定格出力電流以下で飽和するように、少なくとも最終段加速電極近傍のブリーダ抵抗値を5〜100MΩとすることが好適である。
また、前記集光手段に楕円面集光器と放物面鏡を用い、被測定試料表面からの散乱光を前記楕円面鏡集光器により1点に集光し、さらに前記放物面鏡により光電子増倍管に集めることが好適である。
【0013】
【発明の実施形態】
本発明にかかる微粒子径測定装置は、前述したように光電子増倍管の印加電圧により測定範囲を分割し、さらに出力電流を定格電流以下で飽和させることにより、広い光量範囲を計測し得る。
しかも、不意の過大入射光に対しても光電子増倍管を破損することがない。
ここで、集光手段に楕円面集光器と放物面鏡を用い、被測定試料表面からの散乱光を楕円面鏡集光器により1点に集光し、さらに放物面鏡により光電子増倍管に集めることにより、被測定試料表面からの散乱光を光電子増倍管に効率的に集めることが可能となる。
以下、図面に基づき本発明の一実施態様について説明する。
【0014】
図1には本発明の一実施態様にかかる微粒子径測定装置の縦断面図が示されている。
なお、本実施態様においては、被測定試料にシリコンウエハ10を想定し、シリコンウエハ10に付着している微粒子12の粒径を計測する場合について説明する。
【0015】
同図に示す微粒子径測定装置14は、レーザ光照射手段16と、X−Yテーブル18と、ステッピングモータ20およびモータ制御手段(図示省略)よりなる走査手段と、楕円面鏡集光器22と放物面鏡24よりなる集光手段と、光電子増倍管(PMT26)と、加速電圧印加手段27と、制御手段28とを備える。
そして、レーザ光照射手段16は、X−Yテーブル上18に載置されたシリコンウエハ10表面に収束レーザ光Lを照射する。
【0016】
ステッピングモータ20は、X−Yテーブルを例えばX方向とY方向のうち、1方向に、またはX−Y方向(いずれの場合もシリコンウエハ10表面と平行方向)に駆動することにより、レーザ光照射手段16からのレーザ光Lによりシリコンウエハ10表面を1次元的または2次元的に走査させる。
楕円面集光器22はシリコンウエハ10からのレイリー散乱光を1点に集光し、さらに放物面鏡24により光電子増倍管26に集める。
【0017】
本実施態様においては、前述したように集光手段に楕円面集光器22と放物面鏡24を用いることにより、シリコンウエハ10からの散乱光を光電子増倍管26に効率的に集めることができる。
なお、本実施態様においては、シリコンウエハ10に収束レーザLを照射して走査しながら、微粒子12からの散乱光を楕円面鏡集光器22により1点に集光し、さらに放物面鏡24により光電子増倍管26に集めるが、正反射光は、楕円面鏡集光器22の外へ出す構造となっている。
【0018】
そして、光電子増倍管26は、放物面鏡24からの散乱光の強度情報に対応した電流を出力する。この光電子増倍管26は、窒素ガスが充填されるクーラ29内部に設置されており、このクーラ29により冷却される。それによって、光電子増倍管26に通電した際に生じる発熱を最小限に抑えることができるので、ノイズの発生を大幅に低減することができる。
ここで、光電子増倍管26の散乱光が入射する部分には、例えばガラス窓よりなる入射窓部31を設けることにより、空気中の水分が結露して光電子増倍管26の散乱光が入射する部分に直接に付着することを防ぐことができる。
【0019】
加速電極印加手段27は、光電子増倍管26の出力電流が最大定格出力電流以下で飽和するように、ブリーダ抵抗値が高抵抗よりなる。
すなわち、本実施態様においては、この光電子増倍管26の出力電流が定格出力電流以下で飽和するように、ブリーダ抵抗の全部または最終段加速電極近傍の一部の抵抗値を5〜100MΩの高抵抗とすることが好適である。
そして、光電子増倍管26により散乱光強度に対応した出力電流値が得られると、この光電子増倍管26の出力電流値より、制御手段28によりシリコンウエハ10に付着している微粒子12の粒径を計測する。
この制御手段28について、図2に基づき説明する。
【0020】
同図に示すように制御手段28は、CPUよりなるモータ制御手段29と、RAMよりなる記憶手段30と、CPUよりなる電圧変更手段32と、RAMよりなる入射光量対出力電流特性取得手段33と、CPUよりなる粒径情報取得手段34とを備える。
そして、モータ制御手段29は、レーザ光照射手段からのレーザ光Lがシリコンウエハ10表面上を1次元的にまたは2次元的に走査し、これを同一のシリコンウエハ10について複数回行うようにステッピングモータ20を制御する。
このモータ制御手段29は、レーザ光Lのシリコンウエハ10表面上におけるスポット位置をXY座標値として記憶手段30に入力する。
また、このモータ制御手段29は、各回の走査終了時、走査終了を知らせる信号を電圧変更手段32に入力する。
【0021】
記憶手段30は、光電子増倍管26の出力電流値をモータ制御手段29からのXY座標値と共に記憶する。
入射光量対出力電流特性取得手段33は、シリコンウエハ10の測定前に光電子増倍管26の入射光量対出力電流特性が記憶される。この光電子増倍管26の入射光量対出力電流特性については後述する。
電圧変更手段32は、各回の走査終了を知らせる信号がモータ制御手段29より入力されると、光電子増倍管26の印加電圧を変更する。
【0022】
粒径情報取得手段30は、入射光量対出力電流特性取得手段33に記憶された入射光量対出力電流特性に基づき、記憶手段30に記憶された出力電流値のうち、飽和値以下の出力電流値よりシリコンウエハ10表面上に付着している微粒子12の粒径を計測する。この粒径の計測工程については後述する。
【0023】
本発明にかかる微粒子径測定装置14は概略以上のように構成され、以下に本発明の特徴的部分について図3〜図13に基づき説明する。
まず、図3には微粒子径測定装置14の原理図が示されている。
ところで、直径が6μm程度に収束した出力1Wのレーザ光Lでも、直径がナノメータオーダの超微粒子12からの散乱光の強度は、ピコワット程度の極微弱光であるため単一光電子状態(SPE)にある。
このため、微粒子12からの散乱光強度に応じた光電子増倍管26の出力電圧は、離散化されたパルス列の形で検出される。
【0024】
本実施態様においては、粒径情報取得手段34が、この散乱光強度に比例したパルス列の信号を、CR回路(図示省略)により積分波形として取り出し、その波高値より粒径の計測を行っている。
すなわち、本実施態様は、微粒子にレーザ光Lを照射して次式により示されるレイリー光の強度Isを測定することにより、粒径情報取得手段34がその粒径を知るという原理に基づいている。
【0025】
【数1】
同図に示すように、走査レーザ光Lにより検知された超微粒子からの散乱光は極微弱光であるため、単一光電子状態(SPE)にある。
したがって、スポット内を通過する間、光電子増倍管の出力電圧は、同図(c)に示すように、各位置での光強度に応じたレートのパルス列の形で検出される。
【0026】
本実施態様においては、粒径情報取得手段34が、この散乱光強度に比例したパルス列信号を、同図(d)に示すように、CR回路(図示省略)により積分電圧波形として取り出し、その波高値より粒径の計測を行っている。
光電子増倍管26は、光電効果と2次電子放出を利用した微弱光検出器であり、その原理図を図4に示す。
【0027】
同図に示すように、光電子増倍管26の各加速電極(ダイノード)Dy0,Dy1…Dyn−1,Dyn間にそれぞれr0=r01+r0n、およびr1〜rnのブリーダ抵抗が接続され、陽極陰極間の陰極電圧をEbbとするとき、ブリーダ電流ibは、ib=Ebb/(r0+r1……+rn)として求められ、常にブリーダ抵抗r01,r02,r ,rn−1,rnに流れている。
【0028】
それによって、印加電圧Ebbが分圧されて、各ダイノードDy0,Dy1…Dyn−1,Dyn間に、v0〜vnの各電圧がそれぞれ加わり、光電子の加速電圧として作用する。通常、r0〜rnの各ブリーダ抵抗を等しくして、各ダイノード間Dy0,Dy1…Dyn−1,Dynの電圧を均一化している。入射光により光電面から放出された光電子は、各段のダイノードDy0,Dy1…Dyn−1,Dyn間で加速と衝突を繰り返し、その結果、最終段では2次電子の増倍により、106〜108倍の高い電流増倍率を得ている。
【0029】
光電子増倍管26がn段のダイノードDy0,Dy1…Dyn−1,Dynより構成される場合、入射光により光電面(陰極)から光電子が放出する確率を量子効率η、ブランク定数をh、光の速度をc、素電荷をe、光電子増倍管の増倍率をμ、入射光量をIsとすると、光電面から放出した光電子による電流i0は、
i0=ηe・(Isλ/hc) (1)
として求められる。
【0030】
したがって、光電子増倍管26により増倍されて陽極から流れる出力電流iPは、次式より求められる。
iP=μ・i0={(μηeλ)/hc)}・Is=K・Is (2)
ここで、K=(μηeλ)/hc)とおいたが、出力電流iPは入射光量Isに比例した関係で表される。
しかしながら、式(2)が成立するのは光電子増倍管26への入射光量が微小で、出力電流ipがブリーダ電流ibより十分小さい定常状態の場合である。
【0031】
すなわち、従来においては、入射光量の増大に伴い出力電流iPが増大して、iP<<ibの関係が保たれなくなると、ダイノードDy0,Dy1…Dyn−1,Dyn間電圧の均一化が崩れてしまい出力電流iPは飽和するが、式(2)ではこの非定常な飽和現象を明示することができない。また、実測する場合でも定格電流に制限されて飽和領域まで見極めるのは困難である。
【0032】
そこで、本発明者は、非定常な飽和領域まで出力電流iPを求める理論式の導出を試みた。
すなわち、同図に示す光電子増倍管26の回路において、入射光量の増大に伴い出力電流iPが増大してブリーダ電流ibの値に近づくと、各ダイノード間電圧の均一化が崩れてくる。特に後段のダイノードでは増大した光電子流により、ダイノード間のブリーダ抵抗に流れる電流が削減される。
このため、ダイノード間の加速電圧が減少して電流増倍率が低下することにより、光電子増倍管26の出力電流iPが飽和する。
【0033】
一般にib≧10iPの関係を保つことにより、入射光量対出力電流特性は飽和せずに直線関係を示すので、ブリーダ抵抗としては300KΩ程度のものが多く用いられている。
これに対し、ブリーダ抵抗値を大きくすると、ブリーダ電流ibが減少して出力電流iPとの差が縮まるため、ib>>10iPの関係が崩れやすく、飽和現象が小さな入射光量でも起こりやすくなる。
【0034】
すなわち、本実施態様のようにブリーダ抵抗値を大きくすると、光電子増倍管26の出力電流iPを定格電流以下で飽和させることができることになり、ブリーダ抵抗により飽和領域を制御することができることとなる。
したがって、この特性を利用すれば、入射光量と出力電流との関係が直線性を保つ範囲で極微弱光を検出することができる。これに対し、不意の過大入射光に対しては飽和特性により出力電流を抑制して、光電子増倍管26の保護回路の役割を果たすことが期待できる。
それによって、従来用いている印加電圧を遮断するような複雑な保護回路を不要とすることから、測定システムの簡素化、および印加電圧を変えることにより測定範囲領域の拡大を図ることができる。
【0035】
また、本実施態様においては、光電子増倍管26の回路解析を行い、入射光量に応じたブリーダ抵抗、電流およびダイノード間電圧の変動を考慮して、実測することが困難であった飽和領域を含む光量対出力電流特性を定量的に求める理論式の導出を図った。
すなわち、ダイノードがn段の光電子増倍管の等価回路を図5に示す。
【0036】
同図に示すように、任意のダイノード間のブリーダ抵抗rkに流れるブリーダ電流ibと、光電子流ikにより生じる加速電圧vkは次式で求められる。
ただし、入射光が微弱な場合はib>>ikとみなせるので、式(3)より通常vk=ib×rkとして求められる。
【0037】
また、光電面、陰極から放出した光電子による電流i0は前記式(1)で求められる。
そこで、第1段目以降のダイノード間を走行する光電子流により各ダイノード間に生じる電流をi1,i2……inとするとき、任意のk段目にて加速された光電子により生じる走行電流ikは、前段の走行電流および電位差によって決まる。 したがって、各ダイノードの2次電子放出比をδとすれば、
ik=δ・ik−1 (4)
として求められる。
【0038】
ここで、kは1,2,3,……,n、δは各ダイノード間の電位差vddに比例する値であるから、
δ=A・vddα (5)
と表すことができる。
ここで、Aは比例定数である。αはダイノードの形や形状で決まる定数であり、0.6〜0.8の間でほぼ一定値を示す。
【0039】
また、各ダイノード間に印加電圧Ebbがブリーダ抵抗により分圧されて均等電圧がvdd=Ebb/nずつ加わるとき、n段のダイノードより構成される光電子増倍管26の増倍率μは、
μ=β・δn=β・(An/nα・n)・Ebbα・n (6)
として得られる。
ここで、βはダイノードの光電子流の集光効率である。
【0040】
一方、定格陽極陰極間電圧をVdcとすれば、増倍率μは
μ=B・(Ebb/Vdc)α・n (7)
として求められる。
【0041】
ここで、Bは比例定数であり、各光電子増倍管26に固有のものであり、実験的に求められ、予め与えられるものである。
したがって、式(6)と式(7)より、比例定数Aの値は、
A=(B/β)1/n・nα・(1/Vdc)α=a・(1/Vdc)α (8)
として得られる。
【0042】
ここで、aはa=(B/β)i/n・nαとおいた。
そこで、式(8)を式(5)に代入すれば、2次電子の放出比δは、次式のように表せる。
したがって、上式を用いれば、式(4)は次式のように表される。
ik=a・{vk−1/Vdc}α・ik−1 (10)
【0043】
一方、ダイノード間の電圧vkは同図に示すように、後段のダイノード間では入射光量の増大により電流ikが増大してib>>ikなる関係が成立しなくなることを考慮する必要がある。
【0044】
したがって、任意のダイノード間電圧vjは、そのダイノード間に流れる電流をijとして、式(3)より、次式で求められる。
vj=(ib−ij)×rj (11)
ここで、jは0,1,2……nである。
そこで、印加電圧Ebbと各ダイノード間電圧の総和は等しいので、次式が成立する。
Ebb=v0+v1+…+vn (12)
そこで、式(12)に式(1),(10),(11)の関係を代入すれば、次式の関係式を得ることができる。
【0045】
【数2】
(13)
前述した式(10)〜式(13)を連立させて解くことにより、任意の入射光に対する光電子増倍管の出力電流iPを求めることがでる。それによって、光電子増倍管26における入射光対出力電流特性を得ることができ、これを入射光量対出力電流特性取得手段33に記憶させる。
しかしながら、電流ikは、ブリーダ電流ibと逆方向に流れるので、入射光の増大に伴うダイノード間の光電子流ikの増加は、式(3)または式(11)に示すように、加速電圧vkを低下させて増倍率が低下する。この現象は後段のダイノード間になるほど大きくなり、結果的にin(出力電流iP)が飽和することになる。
【0046】
しかしながら、式(3)で示す従来の理論式では、このような飽和現象を考慮していないため、この領域での出力電流を求めることはできなかったが、本実施態様において導出された式(13)の特性理論式では求めることができる。
したがって、飽和領域の出力電流を高い精度で求めるには、逐次変化するブリーダ電流ibを正確に知る必要があるものの、光電子増倍管26に対する飽和特性を含む入出力電流特性を求めることができる。
【0047】
ところで、前述した関係式を用いて、任意の入射光量に対する出力電流iPを求める場合、高次方程式になるため、解を求めるのに容易ではない。
そこで、本実施態様においては、前述した関係式の(10)から式(13)までを連立方程式として、例えば粒径情報取得手段34による数値シミュレーション法を用いて、光電子増倍管26の入射光に対する各出力電流iPの解を求めていくことが可能である。そして、これらの値より入出力電流特性の関係を得り、これを入射光量対出力電流特性取得手段33に記憶することが可能である。
この計算の手順を図6に基づき説明する。
【0048】
まず、粒径情報取得手段34は、印加電圧を全ブリーダ抵抗で割った値をブリーダ電流ibとし、つぎに前記式(10)と式(11)を用いて入射光量Isに対する各ダイノード間の電流i0,…,inと、電圧v0,…vnをそれぞれ求めながら、式(13)により各ダイノード間の電圧の総和を求める。
そして、この総和が設定許容範囲内で印加電圧に等しければ、粒径情報取得手段34は、そのときのブリーダ電流ibを用いて最終段での電流inを求めて光電子増倍管の出力電流iPとする。
しかしながら、これが印加電圧と等しくない場合、粒径情報取得手段34は、ブリーダ電流ibをμAオーダの微小量Δinずつ増減させながら計算を繰り返して最終段での電流inを求める。
【0049】
つぎに、ブリーダ抵抗の選定法について、図6に基づき説明する。
通常、ブリーダ抵抗は、入射光量対出力電流特性が広範囲にわたって直線関係が得られるように、300KΩ程度のものが用いられている。
【0050】
そこで、光電子増倍管における出力電流特性の飽和現象は、入射光の増大に伴い出力電力iPが増加し、ブリーダ電流ibと出力電流iPとの比が1に近づくときに生じると考えると、光電子増倍管の定格電流ir以下で飽和させるためのブリーダ抵抗rの値は、ダイノードの段数をn、また安全率をSjとすれば、
r=Ebb/ir×1/n×Sj (14)
として求められる。
【0051】
ここで、定格電流irを10μA、ダイノード段数nを10として、式(14)より求めたr=10MΩの高抵抗を用いて、各印加電圧Ebbに対する光電子増倍管の光量対出力電流特性を実測した結果を図7に示す。
なお、使用した光電子増倍管は、光電面の種類がマルチアルカリ、その口径は51mmのヘッドオン型のものである。
同図より明らかなように、この場合、印加電圧Ebbが約500V以下であれば、入射光の増大に関わらず出力電流が定格電流以下で飽和することができる。
本実施態様において導出された式(13)を用い、数値シミュレーションにより求めた光電子増倍管の出力電流特性の結果を図8〜図10に示す。
【0052】
各図より明らかなように、各印加電圧において、ブリーダ抵抗を高くするほど出力電流の飽和領域が低下することができる。
また、入射光量が微弱で、出力電流iPがブリーダ電流ibより十分小さく、光量対出力電流特性が直線関係を保つ範囲では、理論値が実測値によく合うことも理解される。
しかしながら、飽和領域では不安定な特性となっているが、これは飽和領域では各ダイノード間の加速電圧が均一化されず、ブリーダ電流の値も変動するが、適正なブリーダ電流ibを決めるのが困難であるため生じたものである。
【0053】
ここで、図8と図9に示される・印はブリーダ抵抗10MΩのときの実測値である。
また、図9に示すように、実測値が飽和領域でもやや増加傾向を示しているが、入射光Isの増大に伴う出力電流iP対ブリーダ電流ibの関係を実測した結果を図11に示す。
同図より明らかなように、印加電圧が低いほどibが小さいため、ib≧10iPの関係が崩れやすく、iPの増大に伴いibの変動が大きくなることが理解される。
このような実測値のibを用いて理論式より入出力特性を求めれば、より精度の高い特性図を得ることができる。
【0054】
この実測値ibを用いて求めた特性図を図12に示すが、同図より明らかなように、実測値によく一致した理論値が得られることが理解される。
しかしながら、煩雑な手間を要するブリーダ電流ibの実測値を用いなくても、前記式(13)を用いれば、出力電流特性の直線部、および従来の式(2)で示す特性式では見極めが不可能であった飽和領域への変移点を求めることができる。
また、さらに少し不安定な値をとるが、飽和領域も示すことができることが理解される。
【0055】
図13はブリーダ抵抗を10MΩの高抵抗とし、式(13)を用いた任意の印加電圧に対する光電子増倍管の入射光量対電流特性の数値シミュレーション結果である。
同図より明らかなように、印加電圧が800V程度以下であれば、本実施態様にかかる光電子増倍管の場合、最大定格電流以下で出力電流を飽和させることができる。
それによって、不意の過大入射光量に対しては、出力電流を抑制して光電子増倍管の保護を図ることができることが理解される。
【0056】
さらに、同図に示す特性図の上部には、光電子増倍管への入射光量Pを粒子からの散乱光Isとみなして、その強度に対する粒径の目盛を横軸に付加し、飽和領域を見極めた粒径対出力電流感度曲線が理論的に示されている。
同図より明らかなように、低い印加電圧Ebbを用いれば粒径測定の可能な範囲を広くとることができるので、例えば印加電圧Ebbが280V以下であれば10〜100nmの範囲を単一の印加電圧で測定することができる。
しかしながら、最小検出可能電流を10−10A程度とすると、有効な直線範囲は狭くなる。
そこで、本実施態様においては、10〜100nmを計測するには、目標粒子より直径が大きい粒子の有無を確認しながら、印加電圧Ebbを順次切り替えて増大させて複数の各直線範囲を利用して測定しているのである。
【0057】
しかしながら、過大電流に対して回路を遮断する従来の保護法では、過大光量の入射により計測の中断を伴うので、できるだけ低い印加電圧Ebbを用いることが多く、その結果ダイナミックレンジは狭いものとなっている。
これに対し、本実施態様の保護法を用いることにより、測定の中断もなく、また目標粒子以上のものを確認する煩雑さも要しない。
したがって、印加電圧Ebbを順次切り替えるだけで、広い粒子範囲を測定することができる。さらに測定法とシステムの簡素化を図ることができる。
【0058】
つぎに、本発明の特徴的部分である微粒子径の計測方法について、同図に基づき説明する。
まず、光電子増倍管26の印加電圧を電圧変更手段32により例えば215Vとした状態で、シリコンウエハ10表面上を走査して得られた光電子増倍管26の出力電流値よりこのシリコンウエハ10表面上に付着している微粒子を検知する。
【0059】
このように、比較的に低い電圧を光電子増倍管に印加した状態でシリコンウエハ表面上を走査することにより、比較的に大きい粒径の微粒子を検知することができる。
しかしながら、例えば215Vのように比較的に低い印加電圧では、比較的に大きい粒径の微粒子を検知することができるものの、比較的に小さい粒径の微粒子を検知することができない場合がある。
【0060】
そこで、本実施態様においては、印加電圧を例えば215Vとしたときの走査が終了したことを知らせる信号がモータ制御手段29により電圧変更手段32に入力されると、この電圧変更手段32は、光電子増倍管26の印加電圧を340Vに変更し、印加電圧が215Vのときと同様に、シリコンウエハ10表面上を走査する。そして、これをさらに例えば340−440−520−620−710−800−1000Vの印加電圧について行う。
このように印加電圧を順次高電圧側に変更し、前回の印加電圧が低い場合と同様に、シリコンウエハ表面上を走査すると、前回には検出することができなかった小さい粒径の微粒子を検出することができる。
ここで、不意の巨大粒子を検出したとしても、前述したように光電子増倍管26の出力電流を定格電流以下で飽和させることとしたので、光電子増倍管26の電極が劣化したり破損することはない。
【0061】
ところで、印加電圧を順次変更して同一のシリコンウエハ10表面上を複数回走査すると、前回検出された微粒子が再度検出される場合もあるが、出力電流値と共に、この微粒子のシリコンウエハ10上における座標値が記憶手段30に記憶されているので、前回検出された微粒子を新しい微粒子として誤認することがない。
【0062】
また、粒径情報取得手段34は、前述したように微粒子の粒径を計測することの他に、例えば同図に示す入射光量対出力電流特性図を作成し、これを入射光量対出力電流特性取得手段33に記憶することが可能である。
そして、粒径情報取得手段33は、この入射光量対出力電流特性取得手段33と記憶手段30に適宜アクセスすることにより、同図に示す各入射光量対出力電流特性グラフG215V,G280V…G1000Vに、あるXY座標値の微粒子の出力電流値iPを対応させる。
【0063】
ここで、この微粒子に関する出力電流値iP215Vが、例えば入射光量対出力電流特性グラフG215Vの直線部(例えばa215V)にあると、粒径情報取得手段33は、このグラフG215Vより粒径を計測する。
これに対し、この微粒子に関する出力電流値iP215VがグラフG215Vの飽和領域(例えばb215V)にあると、粒径情報取得手段34は、記憶手段30に再度アクセスすることにより、この微粒子について、例えば他の印加電圧1000Vに対する出力電流値iP1000Vを読み出し、この出力電流値iP1000Vが対応入射光量対出力特性グラフG1000Vの直線部(例えばa1000V)にあるかどうかを検索する。 そして、出力電流値iP1000Vが対応入射光量対出力電流特性グラフG1000Vの直線部(例えばa1000V)にあることを見つけるまでこれを繰り返し、対応入射光量対出力電流特性グラフを見つけると、このグラフより粒径を計測する。
【0064】
この計測方法によれば、突然の過大光入力に対しても光電子増倍管26の自己保護作用が得られる。また、光電子増倍管26に与える印加電圧を測定範囲により変えることにより、被測定試料表面上に付着している微粒子の粒径の分布が大きいときは、光電子増倍管の印加電圧を下げ、これが小さいときには印加電圧を上げると、広い光量範囲を計測することができる。
【0065】
なお、本発明の微粒子径測定装置としては、前記実施態様のものに限られるものではなく、種々の態様の変更が可能である。
例えば光電子増倍管の印加電圧を順次低電圧側に変更して微粒子径を計測することが可能であり、勿論、本実施態様と同等の効果を奏することができる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる微粒子径測定装置によれば、光電子増倍管の印加電圧により測定範囲を分割し、さらに過大入射光に対しては出力電流を定格電流以下で飽和させることとしたので、広い光量範囲を計測することができる。
しかも、不意の過大入射光に対しても光電子増倍管を破損することがない。 ここで、集光手段に楕円面集光器と放物面鏡を用い、被測定試料表面からの散乱光を楕円面鏡集光器により1点に集光し、さらに放物面鏡により光電子増倍管に集めることにより、被測定試料表面からの散乱光を光電子増倍管に効率的に集めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様にかかる微粒子径計測装置の概略構成の説明図である。
【図2】図1に示した装置の制御手段の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した装置の作用を示す説明図である。
【図4】図1に示した光電子増倍管の原理図である。
【図5】図3に示した光電子増倍管のダイノードがn段の等価回路図である。
【図6】図1に示した装置による入射光に対する各出力電流ipを求める計算の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図1に示した装置による各引加電圧Ebbに対する光電子増倍管の光量対出力電流特性を実測した結果の1例である。
【図8】図1に示した装置による光電子増倍管の出力電流特性の結果の1例である。
【図9】図1に示した装置による光電子増倍管の出力電流特性の結果の1例である。
【図10】図1に示した装置による光電子増倍管の出力電流特性の結果の1例である。
【図11】図1に示した装置による入射光Isの増大に伴う出力電流iP対ブリーダ電流ibの関係を実測した結果の1例である。
【図12】図1に示した装置による実測値ibを用いて求めた特性図である。
【図13】図1に示した装置による任意の印加電圧に対するPMTの入射光量対出力電流特性の出力特性のシミュレーション結果である。
【符号の説明】
10 シリコンウエハ(被測定試料)
12 微粒子
14 微粒子径測定装置
18 X−Yテーブル
20 ステッピングモータ
22 楕円面鏡集光器
24 放物面鏡
26 PMT(光電子増倍管)
28 制御手段
L レーザ光
Dy0〜Dyn ダイノード(加速電極)
r01〜rn ブリーダ抵抗
R 負荷抵抗
Dyn 最終段加速電極
Claims (3)
- 被測定試料表面にレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
前記レーザ光照射手段からのレーザ光を被測定試料表面で1次元方向または2次元方向に走査し、これを同一の被測定試料について複数回行う走査手段と、
被測定試料表面からのレイリー散乱光を集光する集光手段と、
前記集光手段により集光されたレイリー散乱光の強度情報に対応した出力電流を得る光電子増倍管と、
前記光電子増倍管の出力電流が最大定格出力電流以下で飽和するように、ブリーダ抵抗値が高抵抗よりなる加速電圧印加手段と、
前記光電子増倍管により得られた出力電流値を記憶する記憶手段と、
前記光電子増倍管の印加電圧を各回の走査終了時に順次変更する電圧変更手段と、
被測定試料の測定前に前記光電子増倍管の入射光量対出力電流特性を得る入射光量対出力電流特性取得手段と、
前記入射光量対出力電流特性取得手段により得られた入射光量対出力電流特性に基づき、前記記憶手段に記憶された出力電流値のうち、飽和値以下の出力電流値より被測定試料表面の微粒子の粒径を計測する粒径情報取得手段と、
を備えたことを特徴とする微粒子径測定装置。 - 請求項1記載の微粒子径測定装置において、前記光電子増倍管の出力電流が定格出力電流以下で飽和するように、少なくとも最終段加速電極近傍のブリーダ抵抗値を5〜100MΩとしたことを特徴とする微粒子径計測装置。
- 請求項1又は2記載の微粒子径測定装置において、前記集光手段に楕円面集光器と放物面鏡を用い、被測定試料表面からの散乱光を前記楕円面鏡集光器により1点に集光し、さらに前記放物面鏡により光電子増倍管に集めることを特徴とする微粒子径測定装置。
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