JP3583296B2 - 液晶表示装置およびその駆動方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、双安定性を有する液晶表示装置およびその駆動方法に関する。
【0002】
【従来技術】
高速応答性を有する液晶の動作モードとして、双安定性を有するBTN(BIStable Twisted Nematic、双安定ねじれネマティング)方式に関する提案が、特公平1−51818、特開平6−230751、特開平8−101371、特開平8−313878等においてなされている。BTN方式は高速応答で高品位な液晶表示の可能性を有する方式であるが、前記特公平1−51818においては、スイッチング原理が記載されでいるのみで実際の表示装置の駆動に関する記載が全く無い。また、後3者においては、単純マトリクス駆動方式による表示装置の駆動に関しての提案がなされているが、表示特性に対する温度の影響とその影響についての補償の手段等に関しては全く言及していない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高速応答性を有し、正常に動作する温度範囲が広い、高品位な双安定性を有するBTN液晶表示装置および該液晶表示装置を使用した駆動方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、配向処理の方向が略平行であって、基板との界面での液晶分子の傾きが上下基板で略平行となるように配向処理が施された一対の透明電極基板間に、液晶層厚の1倍から3倍の自然ねじれピッチを有する、誘電異方性が正であるカイラルネマティック液晶層を挟持し、該液晶層に電圧を印加してフレデリクス転移を生じさせた後の緩和状態として、厚み方向への液晶分子のねじれ角が略360゜である第一の配向状態と、液晶分子のねじれ角が略0゜である第二の配向状態の2つの準安定状態を有するように構成され、かつ前記液晶層にフレデリクス転移を生じさせてリセット状態にするためのリセット電圧を印加し、その後2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための選択電圧を印加し、さらに該選択された準安定状態を維持するための電圧を印加することができ、前記2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための2つの選択電圧がそれぞれが可変である電圧パルスである液晶表示装置であって、前記カイラルネマティック液晶の動粘性率が20℃で17mm 2 /s以下のものであることを特徴とする液晶表示装置および該液晶表示装置を使用した駆動方法を提供することにより、前記課題を解決することができた。
【0005】
以下、本発明を図面に基づいて具体的に説明する。
ただし、本発明は以下の図面のものに限定されない。
図1に、本発明にかかるBTN(双安定ねじれネマティック)方式の液晶表示素子の一構成例およびその動作を示す。下基板11と上基板12間に液晶層30が挟持されている。21と22は液晶層に電圧を印加するための透明電極、31と32は液晶を配向させるための配向膜である。41と42は偏光板である。ここで用いる液晶層は、液晶層厚の約1倍から3倍の自然ピッチを有する誘電異方性が正のカイラルネマティック液晶である。
【0006】
前記カイラルネマティック液晶層は配向処理が施された配向膜によって液晶は基板面からわずかに傾斜した方向に配向させられる。この傾斜角は約2゜から30゜程度が好ましい。傾斜角が前記範囲より小さい場合には双安定動作が不安定になり良好なスイッチングが行えなくなる。また、傾斜角が前記範囲より大きすぎる場合には、表示特性の視野角依存性が大きくなるという問題を生ずる。この図の構成では、初期状態において上下基板界面での液晶の傾きが逆となるように構成されている。
【0007】
液晶の自然ねじれピッチpは液晶層厚dの約1倍から3倍の間に設定される。液晶層の複屈折と厚みの積Δndは観察光の波長の略1/2、具体的には、0.20μm〜0.35μm、好ましくは0.22μmから0.30μmmの範囲であるように構成される。また、一方の偏光板はその光透過軸が、基板界面での液晶の配向方向と略45゜(35゜〜55゜)の角度を成すように配設され、もう一方の偏光板はその光透過軸が他方の偏光板の光透過軸と基板界面での液晶の配向方向を基準として対称になるように配設される。
【0008】
まず、BTNのスイッチング動作について説明する。駆動波形としては、フレデリクス転移を生じさせるための電圧パルス(以下、リセットパルスとも呼ふ)と、それに続く、2つの準安定状態のうちの一方を選択するための電圧パルス(以下、2ndパルスと呼ぶ)が印加される。リセットパルスは、初期状態から2つの準安定状態のうちの少なくとも一方に変化させるのに要する電圧しきい値(Vth)以上の電圧パルスであり、2ndパルスは、2つの準安定状態の間の臨界値(Vc)を基準として選択される電圧パルスである。
【0009】
2ndパルス電圧が臨界値以下の場合、リセット状態(液晶分子の配列はホメオトロピック状態)からの急激な緩和により生じるバックフローのため、液晶分子は初期状態(略180゜ねじれ)からさらに180゜多くねじれた、つまり略360゜ねじれの準安定状態(以下、Tの準安定状態と呼ぶ)になり、ここに示した一般的な素子構成および偏光板の配置ては暗状態になる。
【0010】
一方、2ndパルスの波高値がしきい値以上の場合は、前記バックフローが抑制されるため、液晶分子はねじれが初期状態より180゜小さい、つまり略0゜の準安定状態(以下、Uの準安定状態と呼ふ)になり、ここに示した一般的な素子構成および偏光板の配置では明状態になる。
【0011】
各印加波形とそれに対する光学的応答を図2に示す。図2aは単極性パルス波形で2ndパルス電圧が臨界値以下の場合、図2bは交流パルス波形で2ndパルス電圧が臨界値以下の場合、図2cは単極性パルス波形で2ndパルス電圧が臨界値以上の場合、図2dは交流パルス波形で2ndパルス電圧が臨界値以上の場合をそれぞれ示す。前記リセットパルスおよび2ndパルスは交流パルスでも良いし、単極性パルスでもよい。たたし単極性パルスの場合は液晶層に電荷が蓄積しないように周期的にその極性を変えて印加したり、表示パネルを構成する走査電極1本あるいは数本ごとに極性を変えて印加する必要かある。
【0012】
次に、フレデリクス転移後に選択される準安定状態の駆動波形条件およびd/p(液晶層厚/液晶の自然ねじれピッチ)依存について説明する。
図3に、フレデリクス転移後に選択される準安定状態に関する、d/pと2ndパルス波高値の関係をモデル的に示した。
リセットパルス条件および2ndパルス幅を固定した場合、フレデリクス転移後に選択される準安定状態は、d/pおよび印加する2ndパルスの波形条件に大きく依存する。d/pについては、あるd/p値を境界としてd/pが大きい方の領域でTの準安定状態、d/pが小さい方の領域でUの準安定状態となり、その境界d/p値は2ndパルスの波高値によって図3のような変化を示す。したがって図3で液晶セルのd/p値が前記d/p境界値を示すラインとの交点を臨界値として、2ndパルス波高値をその臨界値よりも大きい電圧にすればU状態、臨界値よりも小さい電圧にすればT状態が得られ、2つの準安定状態を任意に選択することができる。
【0013】
また、U状態、T状態両者の準安定状態を選択するための2ndパルス波高値をそれぞれ図3のようにV2nd(U)、V2nd(T)とした場合、d/pマージン(U状態、T状態の選択が可能なd/p範囲)は図中の矢印で示した範囲になり、V2nd(U)−V2nd(T)が大きいほとd/pマージンが大きくなり、セルギャップ(液晶層厚)のバラッキ許容範囲の点で有利になる。しかしなから走査電極と信号電極とで形成される画素をマルチプレクス駆動する場合には非選択時に少なくとも〔V2nd(U)−V2nd(T)〕/2の電圧が印加されることになり、これがある程度以上に大きくなるとU状態、T状態の選択が良好にできなくなったり、得られる表示状態の透過率特性に悪影響が及び、表示品質を損なうことになるので、V2nd(U)−V2nd(T)をむやみに大きくすることはできす、したがってd/pマージンもある程度制限されてしまう。
【0014】
また表示容量が大きくなり、それによって走査電極数が多くなると2ndパルスの幅を小さくする(印加時間を短くする)必要が生じるが、2ndパルスの幅を小さくするほど図3に示したU状態、T状態の境界を示すラインの縦軸方向の変化が小さくなり、したがってd/pマージンは減少する方向に変化する。
このように本方式においては、特に表示容量を大きくする場合、d/pマージン(U状態、T状態の選択が可能なd/p範囲)の大きさががなり制約されてじまう。
【0015】
以上のことは、使用環境の温度の変化を特に考慮しない、一定の温度(例えば室温)における場合であるが、図3のU状態、T状態の境界を示すラインは温度が変化すると縦軸方向にンフトするような変化を示し、前記境界を示すラインは温度を低下させるとd/pが大きい方向にシフトし、温度を上昇させるとd/pが小さい方向にシフトする傾向があるため、d/pマージンが比較的小さい条件においては、温度変化によりU状態、T状態の選択が良好にできなくなり、正常に動作する温度範囲が狭くなるという不都合がさらに生じてしまう。図4に、固定した波形条件におけるU状態、T状態の選択が可能なd/p絶対値範囲の温度による変化の傾向をモデル的に示す。
【0016】
本発明の特徴の一つは、前記問題点を解決するために、前記2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための2つの2ndパルス波高値を、固定せすに可変としたことにある。
【0017】
前述したように、U状態、T状態の境界d/p値は、2ndパルス波高値によって図3のような変化を示し、2ndパルス波高値を増大させると前記境界d/p値はd/pが大きい方向に変化し、逆に2ndパルス波高値を減少させると前記境界d/p値はd/pが小さい方向に変化する。したがって、2つの2ndパルス波高値〔V2nd(U)およびV2nd(T)〕の設定を調整することによって、U状態、T状態の任意な選択が可能であるd/p値の範囲を、環境温度による両状態の境界d/p値の変化に追従させ、正常に動作する温度範囲を拡大することが可能となる。
【0018】
具体的には、温度の上昇(前記U状態、T状態の境界d/p値が減少する)に対しては、2つの2ndパルス波高値〔V2nd(U)およびV2nd(T)〕を増大させ、逆に温度の下降(前記U状態、T状態の境界d/p値が増大する)に対しては、2つの2ndパルス波高値〔V2nd(U)およびV2nd(T)〕を減少させて調整すれば良い。このようにすることにより、選択期間に選択した準安定状態を環境温度に対応して維持できる。
【0019】
また、本発明の液晶表示装置は、走査電極群と信号電極群とで形成される画素マルチプレクス駆動することにより、表示容量が大きく、かつ環境温度の変化に対応して正常に動作する(U状態、T状態の選択が環境の温度の変化に対応して正常に行われる)液晶表示装置を得ることができる。
【0020】
前述のように、走査電極群と信号電極群とで形成される画素マルチプレクス駆動する場合、非選択時に少なくとも〔V2nd(U)−V2nd(T)〕/2の電圧が印加されるが、この〔V2nd(U)−V2nd(T)〕が、初期状態から2つの準安定状態の内の少なくとも一方に変化させるに要する電圧しきい値(Vth)の2倍よりもよりも大きいと画素部の液晶層は常にリセット状態になってしまい、U状態、T状態の選択が正常に行われなくなるので、V2nd(U)−V2nd(T)がVthの2倍よりも小さいことが必要である。
【0021】
さらに、非選択電圧が2つの準安定状態間の臨界値(Vc)よりも小さいこと、すなわち、V2nd(U)−V2nd(T)が臨界値(Vc)の2倍よりも小さい電圧パルスであることが好ましい。このようにすることにより、選択期間に選択した準安定状態を非選択期間に安定に維持することができる。
【0022】
本発明者らは、d/pマージン(U状態、T状態の選択が可能なd/p範囲)は用いる液晶材料の動粘性率と密接な関係があり、液晶材料の動粘性率が小さいほどd/pマージンが大きく、逆に動粘性率が大きいとd/pマージンが小さくなってしまうことを見い出した。これはリセットパルス印加期間中における液晶分子のリセット状態への変化速度に関係し、液晶材料の動粘性率が小さいほと、リセットパルス印加終了時点における分子の配向状態がより完全なホメオトロピック状態に近くなるために、リセットパルスに引き続いて起こるバックフローも大きくなり、V2nd(T)とV2nd(U)を印加した場合のそれそれのバックフローの大きさ(リセット状態がらの緩和速度)の差が大きくなり、結果としてd/pマージンが大きくなるものと考えられる。
本発明者ら前記知見に基づき種々の液晶材料を用いた実験から、20℃において、動粘性率が概ね17mm2/s以下のときに良好なd/pマージンが得られることを見い出した。
【0023】
また、本発明の液晶表示装置においては、液晶層に封入された液晶晶材料は0℃において、動粘性率が40mm2/s以下のものが好ましいことを見出した。前述したようにd/pマージン(U状態、T状態の選択が可能なd/p範囲)は用いる液晶材料の動粘性率と密接な関係があり、常温(室温)20℃において、動粘性率が概ね17mm2/s以下のときに良好なd/pマージンが得られるが、液晶材料の動粘性率は温度依存性を有し、温度が低下すると動粘性率が増大するため、低温においてはd/pマージンが減少したり、U状態、T状態の選択が可能なd/p範囲の中心値がシフトしてしまう傾向がある。
【0024】
そこで、本発明者等は液晶材料の動粘性率の温度依存性に着目した、種々の液晶材料を用いた実験をさらに行った結果から、少なくとも0℃以上の環境温度範囲において、20℃における動粘性率が概ね17mm2/s以下、かつ0℃における動粘性率が概ね40mm2/s以下のときに、温度の低下によるd/pマージンの減少およびU状態、T状態の選択が可能なd/p絶対値の範囲の変化が比較的小さく、正常に動作する(U状態、T状態の選択が正常に行われる)温度範囲をかなり広くすることができる、ことを見出した。
【0025】
前述したようにd/pマージン(U状態、T状態の選択が可能なd/p範囲)は用いる液晶材料の動粘性率と密接な関係があるが、その他、d/pマージンは誘電異方性(Δε)とも密接な関係があり、誘電異方性(Δε)はある程度大きい方がd/pマージンも大きく、逆に誘電異方性(Δε)が小さいとd/pマージンも小さくなる傾向があり、本発明者等は種々の液晶材料を用いた実験から、本発明の液晶表示装置の液晶層に封入された液晶材料の誘電異方性(Δε)が約3.0以上のときに良好なd/pマージンが得られることも見い出した。
【0026】
本発明の液晶表示装置には、2つの2ndパルス波高値(2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための選択電圧を任意の値に調整する機構を設けることが好ましい。ノート型やラップトップタイプの、パソコンおよびワートプロセッサー等を始めとして、液晶表示パネルを搭載した機器では、各表示方式において画像補正用の調整つまみ等が設けられ、使用者が使用環境に応して随時画像を補正することができるようにしたものがあるが、本発明に係るBTN方式の液晶表示装置においても同様に、その機器の使用者が2ndパルス波高値を任意に調整する機構を設けることにより、U状態、T状態の境界d/p値と2ndパルス条件の関係が温度によって変化しても、その変化に追従してU状態、T状態の任意な選択が可能であるように2つの2ndパルス波高値が調整可能となるので、BTN方式の液晶表示装置においても広い温度範囲において良好な表示性能を維持する駆動方法が可能となる。
【0027】
前記2つの2ndパルス波高値の調整は、それそれ独立した調整つまみ等て行なわれてもよいし、1つの調整つまみ等によって2つの2ndパルス波高値が連動して変化することにより行なわれてもよい。また後者の場合、2つの2ndパルス波高値の関係は、両者の差が常に一定になるように設定されてもよいし、または、d/pマージンがなるべく大きく確保されるように、温度により両者の差が変化するように設定されてもよい。
【0028】
さらに、本発明の液晶表示装置には、温度センサーを設け、液晶表示素子がおかれた環境の温度に対応して、2つの2ndパルス波高値を自動調整する機構を設けてもよい。例えば、前記2つの2ndパルス波高値を自動調整する機構としては、使用する液晶材料やセルギャップおよびd/p等のセルパラメータの設定条件における、図3に示したようなU状態、T状態の境界d/p値と2ndパルス条件の関係についての温度依存性を予め把握し、温度による前記境界d/p値の変化が生じても、U状態、T状態の任意な選択が可能であるような2つの2ndパルス波高値〔V2nd(U)およひV2nd(T)〕をその温度に対してプログラミングしたプログラムを有し、かつ温度センサーにより液晶表示素子がおかれた環境の温度を計測した結果と前記プログラムを利用して、その環境の温度に対応した2つの2ndパルスの一方が入力信号に従って印加できる機構が挙げられる。
前記のような機構を採用することで、液晶表示装置を搭載した機器の使用者が特別な画像調整走査を何等行なわなくても、BTN方式の液晶表示装置においても広い温度範囲において良好な表示性能を維持する駆動方法が可能となる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、本発明の液晶表示装置およびその駆動方法を具体的に説明する。
【0030】
実施例1
透明電極を有するガラス基板にポリイミドの配向膜(日本合成コム製AL−3046)を形成し、ラビングによる配向処理を行なった。同様の処理を行なった別の基板と前記基板を配向処理面が対向し、かつ配向処理方向が180゜異なる(反平行となる)ように、基板の両端に設置した2枚の厚みが異なるポリマーフィルムスペーサーを介して重ね合わせた後、基板問の空隙に液晶を封入し、セルギャップが連続的に変化する楔型の液晶セルを作製した。液晶としては、メルク製のネマティック液晶ZLI−1557(Δn=0.1147)に右回りねじれを誘起するメルク製のカイラル剤S−811を添加してねじれピッチ(p)を3.7μmに調整した(この場合、ねじれピッチ(p)の温度依存は例えば0〜40℃問で2%程度と無視できるほとに小さい)。この液晶セルを挟むように2枚の偏光板を配設した。一方の偏光板はその透過軸が基板(とちらの基板でも同じ)の配向処理の方向と45゜の角度を成すように配置し、他方の偏光板はその透過軸が、基板の配向処理方向に対して先の偏光板の透過軸と対称になるように配置した。
【0031】
この液晶セルに、種々の環境温度下で、WR(リセットパルス幅):2msec、W2nd(2ndパルス幅):125μsec、VR(リセットパルス波高値)25vが共通であり、V2nd(2ndパルス波高値)が2.0vと4.0vで異なる2種類の駆動波形をフレーム周波数50Hzでそれそれ印加し、U状態とT状態の境界の位置のセルギャップとねじれピッチ(p)から、この2種の波形によってU状態、T状態の選択が可能になるd/p範囲についての温度依存性を調べたところ、該U状態、T状態の選択が可能になるd/p範囲は温度によりかなり変化してしまうことがわかった。その結果を図5に示す。
【0032】
次に環境温度を0℃および40℃に固定して、上述の2種の駆動波形条件のうちのV2ndを、V2nd(U)とV2nd(T)の差を2vに保ちながら種々変えて、U状態、T状態の選択が可能になるd/p範囲のV2nd依存性を調べたところ、いずれの温度においてもV2ndにより、該U状態およびT状態の選択が可能になるd/p範囲を例えば20℃における該d/p範囲にほぼ一致させることが可能であり、該温度範囲においてはV2ndによって該U状態およびT状態の選択が可能になるd/p範囲をほほ−定に調整することが可能であることがわかった。0℃および40℃における結果をそれぞれ図6および図7に示す。
【0033】
実施例2〜21および比較例1〜2
実施例1で作製した液晶セルの作製過程とほぼ同様であるが、スペーサとしてポリマーフィルムスペーサではなく、均一粒径のシリカビーススペーサを用い、セルギャップ2.1μmの一定ギャップセルを作製した。封入した液晶材料等も実施例1と同様である。この液晶セルの走査電極に走査波形を印加し、信号電極に信号波形を印加し、走査電極と信号電極とで形成されるマトリクス状に配列した画素をマルチプレクス駆動した。波形条件としては、WR(リセットパルス幅):2msec、VR(リセットパルス波高値):25v、W2nd(2ndパルス幅):125μsec、V2nd(T):2vとし、種々のV2nd(U)において、V2nd(U)とV2nd(T)の差の1/2(非選択時に液晶層に印加される電圧パルス波高値)と選択された準安定状態の維持安定性の関係を調へた。その結果を表1に示す。予め調べたこの系におけるVcおよびVthはそれそれ3.0vおよび11.0vであった。V2nd(U)とV2nd(T)の差の1/2(非選択電圧)がVth以上になると液晶層は常にリセット状態になってしまい、U状態、T状態の選択が正常に行われなくなった。また非選択電圧がVcより小さい場合に選択された準安定状態の維持安定性が最も良好になった。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
実施例22〜26および比較例3〜8
実施例1で作製した液晶セルの作製過程とほほ同様であり、動粘性率が異なる種々の液晶材料をそれそれ封入して楔型液晶セルを作製し、20℃において、WR:2msec、W2nd:125μsec、VR:25vが共通であり、V2ndが2.0vと4.0vで異なる2種類の駆動波形をフレーム周波数50Hzでそれぞれ印加し、U状態とT状態の境界の位置のセルギヤップとねじれピッチ(p)から、この2種の波形によるd/pマージン(U状態、T状態の選択が可能になるd/p範囲)を求めた。その結果を表2に示す。20℃における液晶材料の動粘性率が17mm2/s以下の場合には大きなd/pマージンが得られたが、動粘性率が17より大きい場合にはd/pマージンは比較的小さいものであった。
【0038】
【表4】
【0039】
実施例27〜31および比較例9〜11
実施例1で作製した液晶セルの作製過程とほほ同様であり、20℃における液晶材料の動粘性率が17mm2/s以下であり、0℃における動粘性率が異なる種々の液晶材料をそれそれ封入して楔型液晶セルを作製し、20℃および0℃において、WR:2msec、W2nd:125μsec、VR:25vが共通であり、V2ndが2.0vと4.0vで異なる2種類の駆動波形をフレーム周波数50Hzでそれぞれ印加し、U状態とT状態の境界の位置のセルギヤップとねじれピッチ(p)から、この2種の波形によるd/pマージン(U状態、T状態の選択が可能になるd/p範囲)をを求め、20℃→0℃の変化による、d/pマージンの減少量と、U状態、T状態の選択が可能になるd/p範囲中心値のシフト量を調へた。その結果を表3に示す。0℃における動粘性率が40mm2/s以下の場合に低温化によるd/pマージンの減少量と、U状態、T状態の選択が可能になるd/p範囲中心値のシフト量がともに小さいことがわかった。
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
実施例32〜36および比較例12〜14
実施例1で作製した液晶セルの作製過程とほほ同様であり、Δεが異なる種々の液晶材料をそれぞれ封入して楔型液晶セルを作製し、20℃において、WR:2msec、W2nd:125μsec、VR:25vが共通であり、V2ndが2.0vと4.0vで異なる2種類の駆動波形をフレーム周波数50Hzでそれぞれ印加し、U状態とT状態の境界の位置のセルギヤップとねじれピッチ(p)から、この2種の波形によるd/pマージン(U状態、T状態の選択が可能になるd/p範囲)を求めた。その結果を表4に示す。Δεとが概ね3.0以上の場合は比較的大きなd/pマーシンが得られるが、3.0より小さい場合には得られるd/pマージンが小さいことがわかった。
【0043】
【表7】
【0044】
実施例37
実施例2で作製した液晶セルの作製過程と同様にして、走査電極と信号電極による画素がマトリクス状に配列した液晶パネルを作製し、概ね図8に示すような構成の液晶表示装置を作製した。この装置には、装置の使用者が駆動波形におけるV2nd(U)およびV2nd(T)の2つのV2ndのうちのV2nd(T)を任意の値に調整できるような回路および調整ツマミ(可変抵抗:A)と、V2nd(U)とV2nd(T)の差を調節する調整ツマミ(可変抵抗B)を設けた。駆動波形の基本設定条件は、WR:2msec、W2nd:125μsec、VR:25vとし、またV2nd(U)とV2nd(T)の差を2vに設定した。
【0045】
まず20℃において、画像調整用信号を入力してU状態、T状態の選択が適切に行われるように調整ツマミでV2nd(T)を調整した。このときのV2nd(T)は2.0vてあり、したがってV2nd(U)は4.0vであった。次に表示装置が置かれた環境温度を40℃にして1時間静置したところ、U状態の選択が良好に行われていないことが確認されたが、V2nd(T)の調整ツマミでV2ndを増大させる方向に調整したところ、U状態、T状態の選択が適切に行われるようになった。そのときのV2nd(T)を調べたところ2.8vであり、したがってV2nd(U)は4.8vであった。次に表示装置が置かれた環境温度を0℃にして1時間静置したところ、T状態の選択が全く行われす、常にU状態が選択されていることが確認されたが、V2nd(T)の調整ツマミでV2ndを減少させる方向に調整したところ、U状態、T状態の選択が適切に行われるようになった。そのときのV2nd(T)を調べたところ0.7vであり、したがってV2nd(U)は2.7vであった。
【0046】
実施例38
実施例37の液晶表示装置に、さらに液晶パネルの温度を計測する温度センサー、および計測された温度に応じてV2nd(U)およびV2nd(T)を予めプログラミングされた値にするための回路(C)を設け、図9にしめすような構成の液晶表示装置を作製した。駆動波形の基本的設定条件は、WR:2msec、W2nd:125μsec、VR:25vとした。V2ndについては、同様の材料およびセルパラメータの系についての前述の実施例における、U状態、T状態の選択が可能になるd/p範囲の、温度依存およびV2nd依存のデータ、さらに図10に示す、選択される準安定状態に関するd/pと2ndパルス波高値の関係のデータを用いて、計測された各温度に対する適切なV2nd(U)およびV2nd(T)をプログラミングした。この液晶表示装置が置かれた環境温度を0℃から40℃の範囲内で変化させながら、画像調整用信号を入力してU状態、T状態の選択が適切に行われるかどうかを調べたところ、該温度範囲内では常に良好なU状態、T状態の選択が行われることが確認できた。
【0047】
実施例39
実施例38で用いた液晶表示装置の液晶表示パネルを、画素に対応するように一方の基板にマトリクス状にR、G、Bのカラーフィルタを形成して作製した液晶表示パネルとした。駆動波形に関する設定はすべて実施例38と同様にした。この液晶表示装置が置かれた環境温度を0℃から40℃の範囲内で変化させながら、画像調整用信号を入力してU状態、T状態の選択が適切に行われるかとうかを調へたところ、該温度範囲内では常に良好なU状態、T状態の選択が行われ、良好なカラー表示が行われることを確認した。
【0048】
以下、本発明の実施態様を示す。
1.配向処理の方向が略平行であって、基板との界面での液晶分子の傾きが上下基板で略平行となるように配向処理が施された一対の透明電極基板間に、液晶層厚の1倍から3倍の自然ねじれピッチを有する、誘電異方性が正であるカイラルネマティック液晶を挟持し、電圧を印加してフレデリクス転移を生じさせた後の緩和状態として、厚み方向への液晶分子のねじれ角が略360゜である第一の配向状態と、液晶分子のねじれ角が略0゜である第二の配向状態の2つの準安定状態を有するように構成され、かつ前記液晶層にフレデリクス転移を生じさせてリセット状態にするためのリセット電圧を印加し、その後2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための選択電圧を印加し、さらに該選択された準安定状態を維持するための電圧を印加することができる液晶表示装置において、前記2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための2つの選択電圧がそれぞれが可変である電圧パルスであることを特徴とする液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
2.2つの準安定状態のいずれか一方を選択するためにそれぞれが可変である2つの選択電圧が、温度の上昇(前記U状態、T状態の境界d/p値が減少する)に対しては、2つの2ndパルス波高値〔V2nd(U)およびV2n(V)〕を増大させ、逆に温度の下降(前記U状態、T状態の境界d/p値が増大する)に対しては、2つの2ndパルス波高値〔V2nd(U)およびV2nd(V)〕を減少させて調整するものである前記1の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
【0049】
3.一対の透明電極基板にはそれそれ走査電極群、信号電極群が配置され、それらの群によって構成される画素がマルチプレクス駆動されることを特徴とする前記1〜2の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
4.非選択電圧が、初期状態から2つの準安定状態の内の少なくとも一方に変化させるに要する電圧しきい値(Vth)よりも小さいこと、すなわち、V2nd(U)−V2nd(T)がVthの2倍よりも小さい前記1〜3の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
5.非選択電圧が2つの準安定状態間の臨界値(Vc)よりも小さいこと、すなわち、V2nd(U)−V2nd(T)が臨界値(Vc)の2倍よりも小さい電圧パルスである前記1〜4の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
【0050】
6.液晶層に封入された液晶晶材料が動粘性率が20℃で17mm2/s以下のものである前記1〜5の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
7.液晶層に封入された液晶晶材料が、0℃において、動粘性率が40mm2/s以下のものである前記6の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
8.液晶層に封入された液晶材料が、誘電異方性(Δε)が3.0以上の液晶材料である前記1〜7の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
【0051】
9.2つの2ndパルス波高値(2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための選択電圧)を任意の値に調整する機構を有する請求項1〜8のいずれかに記載の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
10.2つの2ndパルス波高値の調整は、それそれ独立した調整つまみ等て行なわれてもよい前記9の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
11.2つの2ndパルス波高値の調整は1つの調整つまみ等によって2つの2ndパルス波高値が連動して変化することにより行なわれる前記9の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
【0052】
12.温度センサーを設け、液晶表示素子がおかれた環境の温度に対応して、2つの2ndパルス波高値を自動調整する機構を設けた前記1〜11の液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
13.2つの2ndパルス波高値を自動調整する機構が、使用する液晶材料やセルキヤップおよびd/p等のセルパラメータの設定条件における、図3に示したようなU状態、T状態の境界d/p値と2ndパルス条件の関係についての温度依存性を予め把握し、温度による前記境界d/p値の変化が生じても、U状態、T状態の任意な選択が可能であるような2つの2ndパルス波高値〔V2nd(U)およひV2nd(T)〕をその温度に対してプログラミングしたプログラムを有し、かつ温度センサーにより液晶表示素子がおかれた環境の温度を計測した結果と前記プログラムを利用して、その環境の温度に対応した2つの2ndパルスの一方が入力信号に従って印加されるような機構である液晶表示装置および該液晶表示装置を用いた駆動方法。
【0053】
【効果】
1.U状態、T状態の任意な選択が可能であるd/p範囲を、環境温度による両状態の境界d/p値の変化に追従させ、正常に動作する温度範囲を拡大することが可能な液晶表示装置およびその駆動方法が得られる。
2.表示容量が大きくかつ正常に動作する(U状態、T状態の選択が正常に行われる)温度範囲が広い表示装置およびその駆動方法が得られる。
3.選択期間に選択した準安定状態の確実な維持を可能とする液晶表示装置およびその駆動方法が得られる。
4.選択期間における準安定状態の確実な選択を可能とする液晶表示装置およびその駆動方法が得られる。
【0054】
5.使用環境温度の中心となる常温(室温)付近でのd/pマージン(U状態、T状態の選択が可能なd/p範囲)の拡大を可能とする液晶表示装置およびその駆動方法が得られる。
6.温度の低下によるd/pマージンの減少およびU状態、T状態の選択が可能なd/p絶対値の範囲の変化が比較的小さく、かつ正常に動作する(U状態、T状態の選択が正常に行われる)温度範囲の拡大を可能とする液晶表示装置およびその駆動方法が得られる。
7.d/pマージン(U状態、T状態の選択が可能なd/p範囲)の拡大を可能とする液晶表示装置およびその駆動方法が得られる。
【0055】
8.TN方式の液晶表示装置においても広い温度範囲において良好な表示性能を維持する液晶表示装置およびその駆動方法が得られる。
9.液晶表示装置あるいは液晶表示装置を搭載した機器の使用者が、特別な画像調整操作を何等行なわなくても、BTN方式の液晶表示装置においても広い温度範囲において良好な表示性能を維持する液晶表示装置およびその駆動方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるBTN(双安定ねじれネマティック)方式の液晶表示素子の一構成例を示す模式断面図である。
【図2】各印加波形とそれに対する光学的応答を示す図である。
図2aは単極性パルス波形で2ndパルス電圧が臨界値以下の場合
図2bは交流パルス波形で2ndパルス電圧が臨界値以下の場合
図2cは単極性パルス波形で2ndパルス電圧が臨界値以上の場合
図2dは交流パルス波形で2ndパルス電圧が臨界値以上の場合
【図3】フレデリクス転移後に選択される準安定状態に関する、d/pと2ndパルス波高値の関係をモデル的に示した図である。
【図4】固定した波形条件におけるU状態、T状態の選択が可能なd/p絶対値範囲の温度による変化の傾向をモデル的に示す図である。
【図5】U状態およびT状態の選択可能なd/p範囲の温度依存を示す図である。
【図6】0℃におけるU状態およびT状態の選択可能なd/p範囲の温度依存を示す図である。
【図7】40℃におけるU状態およびT状態の選択可能なd/p範囲の温度依存を示す図である。
【図8】実施例37の液晶表示装置の構成を示す図である。
【図9】実施例38の液晶表示装置構成を示す図である。
【図10】実施例38の液晶表示装置の駆動に用いる、選択される準安定状態に関するd/pと2ndパルス波高値の関係のデータを示す図である。
【符号の説明】
11 下基板
12 上基板
21 液晶層に電圧を印加するための透明電極
22 液晶層に電圧を印加するための透明電極
31 液晶を配向させるためための配向膜
32 液晶を配向させるためための配向膜
41 透明電極
42 透明電極
d 液晶層厚
p 液晶のねじれピッチ
Claims (8)
- 配向処理の方向が略平行であって、基板との界面での液晶分子の傾きが上下基板で略平行となるように配向処理が施された一対の透明電極基板間に、液晶層厚の1倍から3倍の自然ねじれピッチを有する、誘電異方性が正であるカイラルネマティック液晶層を挟持し、該液晶層に電圧を印加してフレデリクス転移を生じさせた後の緩和状態として、厚み方向への液晶分子のねじれ角が略360゜である第一の配向状態と、液晶分子のねじれ角が略0゜である第二の配向状態の2つの準安定状態を有するように構成され、かつ前記液晶層にフレデリクス転移を生じさせてリセット状態にするためのリセット電圧を印加し、その後2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための選択電圧を印加し、さらに該選択された準安定状態を維持するための電圧を印加することができ、前記2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための2つの選択電圧がそれぞれが可変である電圧パルスである液晶表示装置であって、前記カイラルネマティック液晶の動粘性率が20℃で17mm 2 /s以下のものであることを特徴とする液晶表示装置。
- カイラルネマティック液晶の動粘性率が0℃で40mm2/s以下のものである請求項1記載の液晶表示装置。
- カイラルネマティック液晶の誘電異方性(Δε)が3.0以上である請求項1または2記載の液晶表示装置。
- 一対の透明電極基板にはそれそれ走査電極群、信号電極群が配置され、それらの群によって構成される画素がマルチプレクス駆動される請求項1〜3いずれか記載の液晶表示装置。
- 非選択電圧が、初期状態から2つの準安定状態の内の少なくとも一方に変化させるに要する電圧しきい値(Vth)の2倍よりも小さい請求項1〜4いずれか記載の液晶表示装置。
- 2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための2つの選択電圧の差が、2つの準安定状態間の臨界値(Vc)よりも小さい電圧パルスである請求項1〜5いずれか記載の液晶表示装置。
- 2つの2ndパルス波高値(2つの準安定状態のいずれか一方を選択するための選択電圧を任意の値に調整する機構を有する請求項1〜6いずれか記載の液晶表示装置。
- 請求項1〜7いずれか記載の液晶表示装置を用いることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
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