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JP3583587B2 - 塩化ビニル系繊維、及びその製造法 - Google Patents
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JP3583587B2 - 塩化ビニル系繊維、及びその製造法 - Google Patents

塩化ビニル系繊維、及びその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、かつら、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘアー、アクセサリーヘアーなどの頭髪装飾用に用いられる人工毛髪、或いはドールヘアー等の人形用頭髪などとして使用される塩化ビニル系繊維およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系樹脂を紡糸して繊維状にしてなる塩化ビニル系繊維は、その優れた強度、伸度、カール保持性、スタイル性などの故に、頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維として、あるいはドールヘアーなどの人形用頭髪繊維として多量に使用されている。
【0003】
従来、一般的には、頭髪装飾用などの人工毛髪用繊維として、細繊度(断面積が小さく、細い繊維)の繊維を工業的に製造するには、塩化ビニル系樹脂に対する溶媒を使用する湿式紡糸法、または乾式紡糸法によって、細い繊度の塩化ビニル系繊維を製造する方法が工業的に実施されている。しかしながら、これらの方法は、溶媒を使用するが故に脱溶媒工程を必要とし、過大な設備投資が必要であり、その設備の維持管理にも多数の人手を必要とするという問題点がある。また、溶媒に対する溶解性を向上するべく、アクリロニトリルなどのコモノマーを共重合する為、繊維の初期着色性に弱点があり、乾燥工程での熱によって黄色味の強い毛髪になり易いという問題点、あるいは繊維のカール保持性が充分でないなどの問題点がある。
【0004】
一方、溶媒を使用しない紡糸方法として、溶融紡糸法が知られているが、この方法にて、人毛に類似した半艶表面(艶の評価については、実施例に評価基準を示した。)、手触り触感性に優れた細繊度の繊維を製造するには、1ケの断面積が小さいノズル孔(0.5mm以下)からストランドを溶融・流出せしめ、紡糸ドラフト比を出来得る限り小さくする(Dr比:25以下)のが好ましい。逆に、大きな断面積のノズル孔から溶融・流出させて、細繊度の塩化ビニル繊維とすると、必然的に紡糸ドラフト比を大きくする必要があり、溶融紡糸時に、未延伸糸が極端に引き伸ばされることから、繊維(延伸糸)表面が平滑になり、光沢が出てきて、サラサラ触感がなくなり、人工毛髪用繊維としては品質的に不十分な繊維となる傾向がある。
【0005】
しかしながら、1ケの断面積がより小さいノズル孔から流出させる場合は、ノズルにかかる圧力が高くなり、押出機の設計圧力をオーバーしてしまうという問題が発生しやすく、あるいは、その圧力を定格以下とするべく、押出量を低くすると、溶融紡糸生産性が低下するという問題、あるいは溶融粘度を低くする為に、溶融紡糸温度を高く設定すると、熱分解を起こしたり、ロングラン性が劣る結果となるという問題もあった。そのため、これらの問題を解決する為に組成物の見掛けの溶融粘度を低下するべく、カドミウムや鉛を使用するCd−Pb系の熱安定剤、滑剤を使用する技術が従来技術として実施されている。
【0006】
しかしながら、これらの配合剤は毒性が高く、製造上問題があるばかりでなく、頭髪装飾用として皮膚に触れる為、安全衛生上の問題がある。また、該頭髪装飾用品などが廃棄される場合、一般ゴミに混入して、環境を汚染するという問題もある。また、これらの配合剤を使用すると、ノズル圧力の問題、溶融紡糸生産性の問題などを解決できるものの、初期着色が大きく、黄色味の強い毛髪になる傾向があった。そこで、これらCd−Pb系熱安定剤を主とした配合系の問題点を解決するべく、錫系熱安定剤あるいはCa−Zn系熱安定剤などを使用する方法などが提案されているが、ノズル圧力と溶融紡糸生産性とのバランスのレベルアップという観点では十分な解決には到っていない。例えば、特公昭51−2109号公報では、塩素化塩化ビニル樹脂とメチルメタクリレート系樹脂を使用することにより、曳糸性を向上するという提案があるが、ノズル圧力が高くなる為、溶融粘度を低下するべく、ノズル温度を200℃という高い温度に設定している。その為、繊維表面が平滑になり、光沢が発生し、人毛に類似した半艶表面からかけ離れたものになるばかりでなく、サラサラとした触感がなくなり、毛髪用繊維として品質的に不十分なものになるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、錫系熱安定剤などを使用した際に発生する「ノズル圧力が高くなる」という溶融紡糸上の課題ならびに「半艶表面性、手触り触感に劣る」という繊維品質上の課題等の従来技術の問題点を解決する為になされたものである。すなわち、本発明の第1の目的は、従来公知のCd−Pb系の熱安定剤、滑剤を使用しなくとも、1ケのノズル断面積が小さいノズル孔から溶融紡糸する際の問題点を解決し、ノズル圧力と溶融紡糸生産性を高度にバランスした細繊度の塩化ビニル系樹脂繊維の製造法を提供することにあり、また第2の目的は、従来公知のCd−Pb系の熱安定剤、滑剤を使用しなくても、初期着色性を大幅に改善しつつ、人毛に極めて類似した半艶表面、触感、柔軟性を保持し、また優れた強度、伸度、収縮性を保持した細繊度の塩化ビニル系繊維を提供することにある。さらに、第3の目的は、従来公知の錫系安定剤を使用した塩化ビニル系樹脂繊維の品質課題であるプラチック的触感、キラキラ感のある表面性、ゴワゴワとした指巻き触感、熱収縮性などが改善され、安全に、かつ安定的に生産できる細繊度の塩化ビニル系樹脂繊維の製造法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決する為の手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく組成物の配合系などについて鋭意研究を重ねた結果、塩化ビニル系樹脂及び/または塩素化塩化ビニル系樹脂からなる塩化ビニル系混合物に熱安定剤、滑剤ならびにノズル圧力低下剤としてフタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂から選択される1種または2種以上の可塑剤及び/樹脂を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いることで、人毛に極めて類似した塩化ビニル系繊維を高い生産性を維持しながら得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、粘度平均重合度が850〜1700の塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、熱安定剤、滑剤、ならびに、ノズル圧力低下剤としてフタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤から選択される1種または2種以上の可塑剤を1〜8重量部、および/または粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂を5〜35重量部配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物からなることを特徴とする塩化ビニル繊維である。
【0010】
前記ノズル圧力低下剤は、フタル酸系、トリメリット酸系、ピロメリット酸系、ポリエステル系から選択される1種または2種以上の可塑剤であって、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、1〜8重量部配合して用いるのが好ましく、また、粘度平均重合度400〜850の塩化ビニル系樹脂であって、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、5〜35重量部配合して用いるのがより好ましく、塩化ビニル系混合物100重量部に対してフタル酸系可塑剤を1〜5重量部および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂を5〜15重量部配合して用いる場合がさらに好ましい。
【0011】
一方、本発明の製造法は、粘度平均重合度が850〜1700の塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、熱安定剤、滑剤、ならびに、ノズル圧力低下剤としてフタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂から選択される1種または2種以上の可塑剤及び/または樹脂を配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸することを特徴とする塩化ビニル系繊維の製造法であり、前記ノズル圧力低下剤は、フタル酸系、トリメリット酸系、ピロメリット酸系、ポリエステル系から選択される1種または2種以上の可塑剤であって、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、1〜8重量部配合して用いるのが好ましい。また、粘度平均重合度400〜850の塩化ビニル系樹脂であって、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、5〜35重量部配合して用いるのがより好ましく、塩化ビニル系混合物100重量部に対してフタル酸系可塑剤を1〜5重量部および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂を5〜15重量部配合して用いるのがさらに好ましい。
【0012】
また、溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm以下のノズル孔から溶融・流出せしめることができる。
また、前記溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm以下のノズル孔から溶融・流出せしめ、300デニール以下の未延伸糸を製造し、次いで、この未延伸糸に延伸処理、熱処理を施して、100デニール以下の繊維とすることもできる。
【0013】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を使用することにより、溶融紡糸する際の樹脂温度を195℃以下という比較的低い温度条件下で、ノズル圧力を押出機の設計圧力である500Kg/cm以下とし、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm以下のノズル孔から、6.0Kg/Hrs以上の押出量で溶融紡糸することが可能となり、優れた強伸度、収縮性を保持し、人毛に極めて類似した半艶表面性、手触り触感性を備えた細繊度の塩化ビニル系樹脂繊維を製造することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう粘度平均重合度が850〜1700の塩化ビニル系樹脂とは、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂または従来公知の各種のコポリマー樹脂からなるものであり、特に限定されるものではない。該コポリマー樹脂としては、従来公知のコポリマー樹脂を使用でき、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニルコポリマー樹脂など塩化ビニルとビニルエステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシルコポリマー樹脂など塩化ビニルとアクリル酸エステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピレンコポリマー樹脂など塩化ビニルとオレフィン類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリロニトルコポリマー樹脂などが代表的に例示される。特に好ましくは、塩化ビニル単独樹脂、エチレン−塩化ビニルコポリマー樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー樹脂である。
【0015】
該コポリマー樹脂に於いて、コモノマーの含有量は特に限定されず、成形加工性、糸特性などの要求品質に応じて決めることができる。特に、コモノマーの含有量は、2〜30%であることが好ましい。
本発明に使用する塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度は、850〜1700であることが好ましく、850未満であると、繊維の特性、特にカール保持性などが不十分になりやすく好ましくない。逆に、1700を越えると、溶融粘度が高くなる為、ノズル圧力が高くなり、押出量を低く抑える必要があり好ましくない。これら成形加工性と繊維特性とのバランスから、塩化ビニル単独樹脂を使用する場合は、粘度平均重合度が850〜1450の範囲が特に好ましく、コポリマーを使用する場合は、コモノマーの含有量にも依存するが、おおよそ粘度平均重合度は、1000〜1700の範囲が特に好ましい。
【0016】
また塩化ビニル系樹脂は、乳化重合、塊状重合または懸濁重合などによって製造したものを使用できるが、繊維の初期着色性などを勘案して、懸濁重合によって製造したものを使用するのが好ましい。
本発明でいう塩素化塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニル系樹脂を原料とし、これに塩素を付加反応せしめ、塩素含有量を58〜72%に高めたものであり、本発明に於いては、主たる目的として、繊維の表面性、手触り触感をコントロールし、熱収縮率を低下せしめる為に使用する。
【0017】
本発明に使用する塩素化塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度(原料塩化ビニル系樹脂の粘度平均重合度)は、300〜1100であることが好ましい。該粘度平均重合度が300未満であると、繊維の熱収縮率を低下せしめることが不十分となる傾向がある。逆に、該粘度平均重合度が、1100を越えると、溶融粘度が高くなり、紡糸時のノズル圧力が高くなり、押出量を低く抑える必要があるばかりでなく、溶融紡糸時の糸の破断(糸切れ)の頻度が著しくなり、安定操業が困難となる傾向がある。特に好ましくは、粘度平均重合度は、500〜900のものが好ましい。
【0018】
該塩素化塩化ビニル系樹脂の原料となる塩化ビニル系樹脂は、前述の塩化ビニル系樹脂と同様であるが、塩化ビニルホモポリマー樹脂またはエチレン−塩化ビニルコポリマー樹脂を原料として使用している場合が特に好ましい。
本発明に使用する塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量は、58〜72%であることが好ましい。該塩素含有量が、58%未満であると、繊維の熱収縮率を低下せしめることが不十分となる傾向がある。逆に、該塩素含有量が、72%を越えると溶融粘度が高くなり、紡糸時のノズル圧力が高くなり、押出量を低く抑える必要があるばかりでなく、溶融紡糸時の糸切れ頻度が著しくなり、安定操業が困難となる傾向がある。
【0019】
本発明に於いては、塩化ビニル系樹脂と塩素化塩化ビニル系樹脂の使用比率は(塩化ビニル系樹脂/塩素化塩化ビニル系樹脂)=(100〜60重量%/0〜40重量%)の塩化ビニル系混合物とすることが好ましい。前記塩化ビニル系樹脂の比率が60重量%未満となると、塩素化塩化ビニル系樹脂が過剰となり、溶融粘度が高くなり、溶融紡糸時のノズル圧力が高くなるため、安全操業が困難になる傾向があり好ましくない。尚、塩化ビニル系樹脂の比率が高い場合には熱収縮率の高い繊維になる傾向があり、目的に応じて、使用比率は適宜調整するのが好ましいが、特に(塩化ビニル系樹脂/塩素化塩化ビニル系樹脂)=(90〜75重量%/10〜25重量%)の塩化ビニル系混合物とするのが好ましい。
【0020】
本発明でいうノズル圧力低下剤とは、溶融紡糸時のノズル圧力を低下せしめるのみならず、繊維の表面の均一性をレベルアップして、平滑性を向上出来るものを含むものである。該ノズル圧力低下剤としては、フタル酸系、トリメリット酸系、ピロメリット酸系、ポリエステル系から選択される1種または2種以上の可塑剤が好ましい。エポキシ系可塑剤、アジピン酸系可塑剤、シトロン酸系可塑剤などは、繊維の初期着色性が劣ったり、ブリードして繊維表面に「ベトツキ感」がでてきて好ましくない。
【0021】
該可塑剤の添加量は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、1〜8重量部が好ましい。該添加量が1重量部未満であると、ノズル圧力低下効果が小さく、好ましくない。逆に、8重量部を越えると、繊維の熱収縮率が高くなるばかりでなく、溶融紡糸時に可塑剤ミストの発生が著しくなる傾向があり好ましくない。これら溶融紡糸時の挙動、繊維の熱収縮率などの品質とのバランスから、特に好ましい可塑剤はイソノニルフタレート、ウンデシルフタレートなどのフタル酸系可塑剤、トリオクチルトリメリテートなどのトリメリット酸系可塑剤、テトラオクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系可塑剤などが望ましい。
【0022】
また、ノズル圧力低下剤としては粘度平均重合度が、400〜850の塩化ビニル系樹脂が、より好ましく、該塩化ビニル系樹脂は従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂または従来公知の各種のコポリマー樹脂を用いることができ、特に限定されるものではない。該樹脂を使用することで、表面凹凸の均一性をレベルアップして、繊維表面の平滑性を向上することができる。
【0023】
該樹脂の粘度平均重合度が400未満であると、繊維の熱収縮率が高くなる傾向があり、また溶融紡糸時の塩ビ系混合物のゲル化・溶融状態が不均一となり、糸切れ頻度が多くなる傾向があり好ましくない。逆に、該樹脂の粘度平均重合度が850を越えると、ノズル圧力低下効果がなく好ましくない。
該樹脂の添加量は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、5〜35重量部使用するのが好ましい。使用量が5重量部未満であるとノズル圧力低下効果が小さく、35重量部を越えると繊維の熱収縮率が高くなり好ましくない。
【0024】
特に好ましくは、粘度平均重合度が600〜850の塩化ビニルホモポリマーまたはエチレン−塩化ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合樹脂のうち1種以上の樹脂を5〜15重量部使用するのが良い。
さらに、ノズル圧力低下剤としては、塩ビ系混合物100重量部に対して、フタル酸系可塑剤を1〜5重量部および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂を5〜15重量部併用すると溶融紡糸性能、繊維品質、生産性などが高度にバランスされた範囲となる。
【0025】
本発明でいう熱安定剤とは、従来公知の熱安定剤を用いることができる。例えば、金属石鹸系熱安定剤、錫系熱安定剤、Ca−Zn系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、ゼオライト系熱安定剤などの熱安定剤から1種または2種以上の熱安定剤を選択し、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.5〜5.0重量部使用するのが好ましい。該熱安定剤は、成形時の熱分解、ロングラン性、繊維の色調を改良する効果があるが、特に好ましくは、紡糸時のノズル目脂(ノズル周囲のスケール等をいう)発生量の比較的少ない錫系熱安定剤が良く、中でもメルカプト錫系熱安定剤、マレエート錫系熱安定剤、ラウレート錫系熱安定剤から、1種または2種以上を使用するのが特に好ましい。例えば、ジメチルスズメルカプト、ジブチルスズメルカプト、ジオクチルスズメルカプトなどのメルカプト錫系熱安定剤、ジメチルスズマレエート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマーなどのマレエート錫系熱安定剤、ジメチルラウレート、スズジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレートなどのラウレート錫系熱安定剤が例示される。
【0026】
該熱安定剤の使用量が、0.5重量部未満となると、成形時の熱分解防止効果が少なくなり好ましくない。逆に5.0重量部を越えると、紡糸時のノズル目脂発生が多くなり好ましくない。
繊維の初期着色を抑制し、顔料を含まないナチュラル組成物の白色度を高める為には、メルカプト錫系熱安定剤を塩ビ系混合物100重量部に対して、少なくとも0.1〜1.4重量部使用し、他の熱安定剤と併用するのが特に好ましい。
【0027】
本発明でいう滑剤とは、従来公知の滑剤を用いることができ、例えば、金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス系滑剤から選択される1種または2種以上の滑剤を塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5.0重量部使用するのが好ましい。
【0028】
該滑剤は、組成物の溶融状態、ならびに組成物と金属面との接着状態を制御する効果があり、繊維の表面状態、触感、糸切れ頻度、ノズル目脂発生頻度、ノズル圧力などに影響する。
比較的サラサラとした触感を得る為に、金属石鹸系滑剤を使用するのが好ましい。特に、衛生上の観点から、カドミウム石鹸以外の金属石鹸が好ましい。例えば、Na,Mg,Al,Ca,Baなどのステアレート、ラウレート、パルミテート、オレエートなどの金属石鹸が例示される。特に好ましくは、該金属石鹸系滑剤を0.5〜2.0重量部使用するのが良い。
【0029】
ノズル目脂発生頻度を低下し、ノズル圧力を低く抑える為には、ポリエチレン系滑剤を使用するのが好ましく、従来公知のポリエチレン系滑剤を使用できるが、特に平均分子量が1500〜4000であり、密度が0.91〜0.97の非酸化タイプまたはごくわずかに極性を附加したタイプのポリエチレン系滑剤が好ましい。特に好ましくは、該ポリエチレン系滑剤を0.1〜1.3重量部使用するのが良い。
【0030】
また、主として組成物の溶融状態を制御する為には、高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール系滑剤、高級アルコール系滑剤、モンタン酸ワックス系滑剤が好ましい。高級脂肪酸系滑剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸またはこれらの混合物などが例示される。ペンタエリスリトール系滑剤としては、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと高級脂肪酸とのモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルまたはこれらの混合物などが例示される。高級アルコール系滑剤としては、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどが例示される。さらに、モンタン酸ワックス系滑剤としては、モンタン酸とステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールとのエステル類が例示される。
【0031】
本発明に於いて、該滑剤系の特に好ましい使用量の範囲は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、カドミウム石鹸を含有しない金属石鹸系滑剤を0.5〜3.0重量部、ポリエチレン系滑剤を0.1〜1.8重量部、ペンタエリスリトール系滑剤を0.2〜1.0重量部併用するのが特に好ましい。
本発明に於いては、他に目的に応じて、塩化ビニル系組成物に使用される公知の配合剤、例えば、加工助剤、強化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、、帯電防止剤、充填剤、難燃剤、顔料などを使用することができる。また、場合によっては、発泡剤、架橋剤、粘着性付与剤、親水性付与剤、導電性付与剤、香料など特殊な配合剤を使用することもできる。
【0032】
前記加工助剤としては、公知のものを使用できる。例えば、メチルメタクリレートを主成分とするアクリル系加工助剤、または熱可塑性ポリエステルを主成分とするポエステル系加工助剤などを使用できる。該加工助剤の使用量としては、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜12重量部程度が好ましい。また、これらの加工助剤は、単独でも使用できるし、2種以上を併用しても良い。
【0033】
本発明に使用できる充填剤としては、公知のものを使用できる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、クレーなどを使用できる。該充填剤の使用量としては、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、0.2〜5重量部程度が好ましい。また、これらの充填剤は、単独でも使用できるし、2種以上を併用しても良い。
【0034】
本発明に使用する塩化ビニル系樹脂組成物は、従来公知の混合機、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダーなどを使用して混合してなるパウダーコンパウンド、またはこれを溶融混合してなるペレットコンパウンドとして使用することができる。
該パウダーコンパウンドの製造は、従来公知の通常の条件で製造でき、ホットブレンドでもコールドブレンドでも良い。特に好ましくは、組成物中の揮発分を減少する為に、ブレンド時のカット温度を105〜155℃迄上げてなるホットブレンドを使用するのが良い。
【0035】
該ペレットコンパウンドは、通常の塩化ビニル系ペレットコンパウンドの製造と同様にして製造できる。例えば、単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機、同方向2軸押出機、コニーダー、プラネタリーギアー押出機、ロール混練り機などの混練り機を使用して、ペレットコンパウンドとすることができる。該ペレットコンパウンドを製造する際の条件は、特に限定はされないが樹脂温度を185℃以下になる様に設定することが特に好ましい。
【0036】
また、該ペレットコンパウンド中に混入し得る掃除用具の金属片などの異物を取り除く為に、目開きの細かいステンレスメッシュなどを混練り機内に設置したり、コールドカットの際、混入し得る「切り粉」などを除去する手段を取ったり、ホットカットを行うなどの方法は自在に可能であるが、特に好ましくは、「切り粉」混入の少ないホットカット法を使用するのが好ましい。
【0037】
本発明に於いて、塩化ビニル系樹脂組成物を繊維状の未延伸糸にする際には、従来公知の押出機を使用できる。例えば、単軸押出機、異方向2軸押出機、コニカル2軸押出機などを使用できるが、例えば口径が35〜85mmφ程度の単軸押出機、または口径が35〜50mmφ程度のコニカル押出機を使用するのが好ましい。口径が大き過ぎると、押出量が多くなり、ノズル圧力が過大になったり、未延伸糸の流出速度が早過ぎて、巻取りが困難になる傾向があり好ましくない。
【0038】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸するに場合に於いては、1ケのノズル孔の断面積が、0.5mm以下のノズルをダイ先端部に取り付けて溶融紡糸を行なうのが好ましい。該断面積が0.5mmを越えるノズルを使用すると、未延伸糸の繊度が太くなり、細繊度の繊維を得る為には、延伸処理の際、延伸倍率を大きくする必要がある。その為、延伸処理を施した後の細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる。また、繊維の触感が、ザラザラとしたり、キラキラ感がでたり、あるいはプラスチック的な滑り触感になる傾向があり好まくない。
【0039】
更に、未延伸糸の繊度を300デニール以下にすることで、延伸後の繊維の艶を半艶〜七部艶状態にすることが可能となる。該未延伸糸の繊度が300デニールを越えると、細繊度の繊維を得る為には、延伸処理の際に延伸倍率を大きくする必要がある。そのため、延伸処理を施した後の細繊度の繊維(延伸糸)に光沢が出て、半艶〜七部艶状態を維持することが困難となる。また、プラスチック的な滑り触感になる傾向がある。
【0040】
前記溶融紡糸で得られた未延伸糸に公知の方法で延伸処理・熱処理を施して、100デニール以下の細繊度の繊維とすることができる。頭髪装飾用の繊維としては、25〜100デニールの範囲が特に好ましい。また、人形用頭髪の繊維としては、10〜65デニールの範囲が特に好ましい。延伸処理条件としては、延伸処理温度70〜150℃の雰囲気下で、延伸倍率は、200〜450%程度延伸することが特に好ましい。延伸処理温度が70℃未満であると繊維の強度が低くなると共に、糸切れを発生し易く、150℃を越えると繊維の触感がプラスチック的な滑り触感になる傾向があり好ましくない。また、延伸倍率が200%未満であると繊維の強度発現が不十分となりやすく、450%を越えると延伸処理時に、糸切れを発生し易く好ましくない。
【0041】
さらに、延伸処理を施した繊維に熱処理を施して、2〜75%の緩和率で繊維を緩和処理することにより熱収縮率を低下させることができる、また、繊維表面の凹凸を整えて、人毛に類似した触感、半艶〜七部艶表面とする為にも該緩和処理が好ましい。該緩和率の範囲を外れると人工毛髪用繊維として、あるいはドールヘアー用繊維として、品質が低下する傾向があり好ましくない。該熱処理は、延伸処理と連動して実施することもできるし、切り離して実施することもできる。熱処理温度条件としては、雰囲気温度80〜150℃の雰囲気下で実施することが特に好ましい。また本発明に於いては、従来公知の溶融紡糸に関わる技術、例えば、各種ノズル断面形状に関わる技術、加熱筒に関わる技術、延伸処理に関わる技術、熱処理に関わる技術などは、自在に組み合わせて使用することが可能である。
【0042】
【実施例】
次に、実施例をあげて、本発明のさらに詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の適用限界を明らかにする為に例示するものに過ぎず、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
尚、表中の組成物等は、次のように略記する。
塩化ビニル樹脂:「PVC」、塩素化塩化ビニル系樹脂:「CPVC」、粘度平均重合度:「M」、また表2、4〜5における、組成物での配合剤の数値は、PVCとCPVCの合計=100重量部に対する各配合剤の重量部を表すものである。
【0043】
[実験1〜5(可塑剤添加量の効果)]
塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、可塑剤(ジイソノニルフタレート)の添加量を変更しながら、表2に示す配合剤をそれぞれ計量して20Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら、内容物の温度が125℃になる迄、攪拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら攪拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却して、塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。
【0044】
該パウダーコンパウンドを表1(紡糸条件1)に示す条件にて、溶融紡糸実験に供した。
【0045】
【表1】
Figure 0003583587
【0046】
溶融紡糸実験は、定常状態になってから、スクリュー回転数と押出量の関係を求め、押出量が7.5Kg/Hrsになる様にスクリュー回転数を決定した。ノズル圧力、ダイ圧計をノズル部に設置して測定した。鉛直方向にノズルから溶融・流出したストランドを加熱紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的に加熱溶解し、ノズル直下約3mの位置に設置した引取機にて、未延伸糸を一定速度で巻き取った。この際、該未延伸糸の繊度が約168デニール程度になる様に引取速度を調節した。
【0047】
この未延伸糸を製造する段階で、糸切れの発生状況を目視観察し、次の様に評価した。
[溶融紡糸時の糸切れ発生状況]
◎: 全く糸切れが発生しない
○:1時間に3回以内発生する
△:1時間に4〜15回発生する
またこの未延伸糸の着色状態を目視観察にて、次の様に評価した。
【0048】
[未延伸糸の着色状態]
◎:乳白色で黄色味がない
○:乳白色であるが、わずかに黄色味がある
△:かなり強い黄色味がある
該未延伸糸を延伸・熱処理機に導入し、延伸処理、次いで、熱緩和処理を行い、延伸糸を製造した。この際、熱緩和処理は、30%緩和に固定し、延伸処理は最終の延伸糸の繊度が68デニールになる様に延伸倍率を若干調整した。
この延伸・熱処理時に発生する糸切れの発生状況を目視観察し、次の様に評価した。
【0049】
[延伸・熱処理時の糸切れ発生状況]
◎:全く糸切れが発生しない
○:1時間に3回以内発生する
△:1時間に4〜15回発生する
また、この延伸糸の表面艶・光沢を目視観察し、次の様に評価した。
【0050】
[延伸糸の艶状態]
◎(半艶状態):表面が平滑で、わずかに鈍い光沢があり、半艶状態を示す
○(七部艶状態):表面が平滑で、鈍い光沢があり、七部艶状態を示す
●(完全艶消状態):表面がザラザラで、光沢がなく、完全艶消状態を示す
×(艶有状態): 表面が平滑で、全面的に光沢があり、輝き感がある
さらに、この延伸糸を手で触り、その手触り触感を、次の様に評価した。
【0051】
[延伸糸の触感]
◎:表面が平滑で、サラサラとした触感がある
○:表面が平滑で、かすかに湿った触感があるが、サラサラ感がある
△(ザラザラ感):表面がザラザラで、ザラザラとした触感がある
●(プラスチック感):表面が平滑で、プラスチック的触感があり、滑り触感がある
またさらに、この延伸糸を指に数回巻き付け、その際の反発力、触感、柔軟性を、次の様に評価した。
【0052】
[延伸糸のしなやかさ]
◎:指にやわらかく、しなやかに巻き取ることができる
○:かすかに反発触感があるが、しなやかに巻き取ることができる
●(ゴワゴワ感):全体的に硬い感触で、かなり強い反発触感がある
△(ザラザラ感):指にやわらかく巻けるが、ザラザラとした触感がある
該延伸糸を引張試験、熱収縮試験に供し、強度および熱収縮率を求めた。尚、延伸糸の熱収縮率の測定は、100℃の雰囲気温度で、25分熱収縮させ、計算は、次の様に行なった。
【0053】
[熱収縮率]
(熱処理前の延伸糸長−熱処理後の延伸糸長)/熱処理前の延伸糸長×100 =熱収縮率(%)
これらの評価結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
Figure 0003583587
【0055】
実験1〜5の比較から判る様に、可塑剤の配合比率が1重量部未満であると繊維の品質は良好であるが、ノズル圧力が500Kg/cm以上になり、押出機の設計圧力を超える状態になり、安全な生産ができなくなる傾向がある。一方、可塑剤の配合比率が8重量部を越えると組成の溶融状態が不均一となり、溶融紡糸時、延伸時の糸切れが著しくなる。また、繊維の表面がザラザラとした手触り触感になる。さらに、ノズル圧力を低下する為に、スクリュー回転数を低下すると、押出量が低下して、溶融紡糸生産性が低下する。これらの実験から、ノズル圧力と繊維品質のバランスが最適となる可塑剤の配合比率は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、1〜8重量部の領域が最適であることが判る。
【0056】
[実験6〜10」(低重合度塩化ビニル系樹脂の添加効果)]
実験1〜5と同様に塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、低重合度塩化ビニル系樹脂の添加量を変更し、表4に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら、内容物の温度が105℃になる迄、攪拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら攪拌・混合を続け、内容物の温度が70℃になる迄、冷却して、塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。尚、繊維の柔軟性を向上する為に、EVA系樹脂(酢酸ビニル含有量=25%,メルトインデックス=3)を使用した。該パウダーコンパウンドを表3(ペレット条件)に示した条件にて、ペレットコンパウンド とし、表1(紡糸条件1)と同様の条件にて、溶融紡糸実験に供した。
【0057】
【表3】
Figure 0003583587
【0058】
該ペレットコンパウンドを、表1と同様の条件にて、溶融紡糸実験を行った。溶融紡糸実験は、定常状態になってから、スクリュー回転数と押出量の関係を求め、押出量が7.2Kg/Hrsになる様に、スクリュー回転数を決定した。
ノズル圧力、樹脂温度は、ダイ圧計ならびに樹脂温度センサーをノズル部に設置して測定した。鉛直方向にノズルから溶融・流出したストランドを加熱紡糸筒に導入し、ここで該ストランドを瞬間的に加熱溶解し、ノズル直下、約3mの位置に設置した引取機にて、未延伸糸を一定速度で巻き取った。この際、該未延伸糸の繊度が約168デニール程度になる様に引取速度を調節した。
【0059】
また、その他の紡糸条件などは、実験1〜5に示した方法と同様に行い、評価方法なども実験1〜5に示した方法と全く同様に行なった。これらの評価結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
Figure 0003583587
【0061】
実験6〜10の比較から判る様に、低重合度塩化ビニル系樹脂の配合比率が5重量部未満であると繊維の品質は良好であるが、ノズル圧力が500Kg/cm以上になり、押出機の設計圧力を超える状態になり、安全な生産ができなくなる。 一方、可塑剤の配合比率が35重量部を越えるとノズル圧力は安全な領域を確保できるものの、繊維の熱収縮率が高くなる傾向にある。さらに、ノズル圧力を低下する為に、スクリュー回転数を低下すると、押出量が低下して、溶融紡糸生産性が低下する。これらの実験から、ノズル圧力と繊維品質のバランスが最適となる低重合度塩化ビニル系樹脂の配 合比率は、塩化ビニル系混合物100重量部に対して、5〜35重量部の領域が最適であることが判る。
【0062】
[実験11〜15(低重合度塩化ビニル樹脂と可塑剤の併用効果)]
実験1〜5と同様、塩化ビニル系混合物100重量部が4Kgになる様に計量し、次いで、低重合度塩化ビニル樹脂、可塑剤の添加量ならびに種類を変更しながら、表5に示す配合剤をそれぞれ計量して、20Lのヘンシェルミキサーに投入し、攪拌しながら、内容物の温度が115℃になる迄、攪拌・混合した。その後、冷却水をヘンシェルミキサーのジャケットに流しながら攪拌・混合を続け、内容物の温度が75℃になる迄、冷却して、塩ビ系パウダーコンパウンドを得た。
【0063】
該パウダーコンパウンドを実験1〜5に示した紡糸条件,延伸条件,加熱緩和処理条件と全く同様の条件にて、溶融紡糸・延伸・熱処理実験に供した。また、実験1〜5に示した試験方法、評価方法にて、未延伸糸、延伸糸の評価を全く同様に行なった。評価結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
Figure 0003583587
【0065】
実験11〜15の比較から判る様に、低重合度塩化ビニル樹脂と可塑剤を併用することにより、繊維品質とノズル圧力のバランスの優れる領域を容易に得ることができる。とりわけ、熱収縮率の点から、フタル酸可塑剤(DINP)がもっとも良好な繊維品質となる。
【0066】
【発明の効果】
以上のように、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を用いれば、品質に優れ、人毛に極めて類似した七部〜半艶表面の手触り触感を兼ね備えた塩化ビニル系繊維を得られ、また、本発明の製造法を用いれば、目的の塩化ビニル系繊維を、高い紡糸生産性を維持しながら、安全に製造することができる。

Claims (6)

  1. 粘度平均重合度が850〜1700の塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、熱安定剤、滑剤、ならびに、ノズル圧力低下剤としてフタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤から選択される1種または2種以上の可塑剤を1〜8重量部、および/または粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂を5〜35重量部配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物からなることを特徴とする塩化ビニル繊維。
  2. ノズル圧力低下剤が、塩化ビニル系混合物100重量部に対してフタル酸系可塑剤を1〜5重量部および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂を5〜15重量部配合してなることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系繊維。
  3. 粘度平均重合度が850〜1700の塩化ビニル系樹脂100〜60重量%と塩素化塩化ビニル系樹脂0〜40重量%からなる塩化ビニル系混合物100重量部に対して、熱安定剤、滑剤、ならびに、ノズル圧力低下剤としてフタル酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤から選択される1種または2種以上の可塑剤を1〜8重量部、および/または粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂を5〜35重量部配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸することを特徴とする塩化ビニル繊維の製造法。
  4. ノズル圧力低下剤が、塩化ビニル系混合物100重量部に対してフタル酸系可塑剤を1〜5重量部および粘度平均重合度が400〜850の塩化ビニル系樹脂を5〜15重量部配合してなることを特徴とする請求項3記載の塩化ビニル系繊維の製造法。
  5. 塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズル孔から溶融・流出せしめることを特徴とする請求項3または4に記載の塩化ビニル系繊維の製造法。
  6. 塩化ビニル系樹脂組成物を溶融紡糸するに際し、1ケのノズル孔の断面積が0.5mm2以下のノズル孔から溶融・流出せしめ、300デニール以下の未延伸糸を製造し、次いで、この未延伸糸に延伸処理、熱処理を施して、100デニール以下の繊維とすることを特徴とする請求項3または4に記載の塩化ビニル系繊維の製造法。
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