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JP3584879B2 - 膜電極接合体及びこれを用いた燃料電池 - Google Patents
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JP3584879B2 - 膜電極接合体及びこれを用いた燃料電池 - Google Patents

膜電極接合体及びこれを用いた燃料電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜電極接合体及びこれを用いた燃料電池に関し、さらに詳しくは、可搬型の小型電源、車載用動力源、コジェネレーションシステム等として好適な燃料電池及びこれに用いられる膜電極接合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、使用する電解質の種類によって、固体高分子型、リン酸型、アルカリ型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型等に分類される。これらの中で、低温作動型の燃料電池、特に、固体高分子型燃料電池は、燃料電池を構成する材料面での制約が少なく、小型化・軽量化が可能であることから、可搬型の小型電源や車載用動力源等への応用が期待されているものである。しかしながら、特に車載動力源として固体高分子型燃料電池を応用するためには、さらに高出力化及び小型化を図ることが望まれており、そのためには解決すべき課題が残されている。
【0003】
第1の課題は、電解質膜の高イオン伝導化及び高強度化である。固体高分子型燃料電池の場合、電解質として、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表される非架橋のパーフルオロ系電解質や種々の炭化水素系電解質などの高分子膜を用いるのが一般的である。このような固体高分子型燃料電池を高出力化するためには、高分子膜のイオン伝導率は高い方が望ましい。また、燃料電池は、一般に多数の単電池を積層したスタックとして使用されるので、固体高分子型燃料電池を小型化するためには、高分子膜の厚さは薄い方が好ましく、そのためには、高分子膜の強度は高い方が望ましい。
【0004】
しかしながら、一般に高分子膜中におけるイオン交換基の分布はランダムであるため、イオン交換基の密度が小さいところでは抵抗が大きくなる。そのため、イオン交換基密度の低い高分子膜では、高いイオン伝導率は得られない。一方、イオン交換基密度を高くすれば、高分子膜のイオン伝導率は高くなる。しかしながら、高分子膜のイオン交換基密度が高くなると、あるところで膜が水溶性となり、高分子膜の強度が低下するという問題がある。すなわち、高分子膜では、高イオン伝導率と高強度とを両立させるのが困難である。
【0005】
従来の固体高分子型燃料電池においては、この問題を解決するために、複合化や架橋により高分子膜の強度を維持しながら、イオン交換基密度を高める方法を用いるのが一般的である。例えば、特開平10−312815号公報には、パーフルオロ系電解質の寸法安定性及び取扱適正を改善するために、繊維が無作為に配向した多孔質支持体(例えば、不織ガラス繊維)に、イオン伝導性ポリマ(例えば、パーフルオロスルホン酸)を含浸させた複合膜が開示されている。
【0006】
第2の課題は、電解質膜の耐ドライアップ化及び電極の耐フラッディング化である。固体高分子型燃料電池に用いられる電解質膜としては、種々の材料が知られているが、これらは、いずれもイオン伝導性を発現するには水を必要とする。そのため、燃料電池の運転条件がドライ条件になると、電解質膜の含水率が低下し、イオン伝導率が低下する、いわゆるドライアップが発生し、燃料電池の出力を低下させる原因となる。
【0007】
従来の固体高分子型燃料電池においては、この問題を解決するために、補機を用いて外部から電解質膜に水分を補給する方法を用いるのが一般的である。電解質膜に水分を補給する方法としては、具体的には、バブラ、ミスト発生器等を用いて反応ガスを加湿する方法、セパレータ内部に形成された反応ガス流路に直接水分を注入する方法等が知られている。
【0008】
また、固体高分子型燃料電池は、一般に、固体高分子電解質膜の両面に一対の電極を接合して膜電極接合体とし、その両側をセパレータで挟んだ構造を取る。電池反応を進行させるためには、電解質、触媒及び反応ガスの三相が共存する三相界面を電極内に確保する必要があるので、電極は、一般に、触媒及び電解質を含む多孔質構造になっている。
【0009】
一方、固体高分子型燃料電池の場合、カソードにおいて、電池反応により水が生成する。また、プロトンがアノード側からカソード側に移動する際に、電気浸透により水もカソード側に移動する。そのため、燃料電池の運転条件がウエット条件になると、特にカソードにおいて過剰の水が滞留しやすくなる。この水を放置すると、電極内の細孔が水で閉塞し、反応ガスの供給が阻害される、いわゆるフラッディングが発生し、燃料電池の出力を低下させる原因となる。
【0010】
従来の固体高分子型燃料電池においては、この問題を解決するために、電極構造を最適化する方法を用いるのが一般的である。例えば、三相界面を増大させるために、電極を、拡散層と、固体高分子電解質膜と接する面に設けられた触媒層の二層構造とする方法が知られている。拡散層は、触媒層への反応ガスの供給及び電子の授受を行うための層であり、一般に、多孔質かつ電子伝導性を有する材料が用いられる。また、触媒層は、電池反応の反応場となる層であり、一般に、触媒又は担体に担持させた触媒と、固体高分子電解質膜と同一成分を有する電解質(触媒層内電解質)からなっている。
【0011】
また、例えば、特開平5−36418号公報には、電極に対して反応サイトを増大させるために、表面が固体高分子電解質で被覆された触媒担持カーボンをフッ素系樹脂で結着させた多孔質電極が開示されている。
【0012】
さらに、特開平9−320611号公報には、多孔質電極に対して均一に撥水性を付与するために、白金触媒を担持したカーボンブラック、フッ素系イオン交換樹脂及びイオン交換基を有しない溶媒可溶性フッ素重合体の混合液を固体高分子電解質膜に塗布して得られる固体高分子型燃料電池用電極が開示されている。また、同公報には、白金触媒を担持したカーボンブラックとポリテトラフルオロエチレンの混合物を混練・延伸することにより多孔質フィルムとし、これにフッ素系イオン交換樹脂及びイオン交換基を有しない溶媒可溶性フッ素重合体を含浸させて得られる固体高分子型燃料電池用電極が開示されている。
【0013】
第3の課題は、電極の耐CO化である。固体高分子型燃料電池の燃料ガスには、純水素を用いることもできるが、炭化水素を水蒸気改質することにより得られる改質ガスを用いることも検討されている。しかしながら、この改質ガスには、微量のCOガスが含まれている場合がある。固体高分子型燃料電池の電極には、一般に、白金系の触媒が使用されるが、特に低温領域では、白金は微量のCOであっても被毒し、出力低下の原因となる。
【0014】
従来の固体高分子型燃料電池においては、この問題を解決するために、耐CO性触媒を用いるのが一般的である。耐CO性触媒としては、具体的には、白金に対して、ルテニウム、イリジウム、ロジウム等を添加した白金系の合金触媒が知られている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術には、以下のような問題がある。第1に、繊維が無作為に配向した多孔質支持体にイオン伝導性ポリマを含浸させた複合膜を電解質膜として用いる場合、多孔質支持体内部の気孔はランダムに配向しているので、導入されたイオン交換基の内、イオン伝導に有効に寄与するのはその内の一部である。従って、高いイオン伝導率を得るためには、多量のイオン伝導性ポリマを多孔質支持体に導入する必要がある。しかしながら、複合膜の強度を維持するには、多孔質支持体の気孔率をあまり大きくできない。そのため、このような複合膜を用いた高イオン伝導化には限界がある。
【0016】
第2に、補機を用いて電解質を加湿する場合、加湿用の水を貯蔵するための水タンク、加湿器、燃料電池から排出される水を回収するための凝縮器等、様々なコンポーネントが必要となる。そのため、燃料電池システム全体が複雑かつ大型化するという問題がある。また、補機を用いた電解質の加湿は、余分な補機動力が必要となり、燃料電池の発電効率を低下させる原因にもなる。
【0017】
一方、固体高分子型燃料電池の場合、上述したように、カソード側において電池反応により水が生成する。この生成水を電解質の加湿に直接利用することができれば、補機による電解質の加湿を軽減又は不要化することができ、燃料電池システム全体の小型化、軽量化及び高効率化が期待できる。
【0018】
しかしながら、固体高分子型燃料電池に用いられる従来の電極は、フラッディングによる出力低下を抑制するために、電極の細孔内表面に撥水処理を施す等、電極内に滞留する水を排出しやすくしたものが一般的であり、生成水の有効利用に適した構造にはなっていない。
【0019】
例えば、特開平9−320611号公報に開示される固体高分子型燃料電池用電極は、電極の細孔内表面の少なくとも一部をイオン交換基を有しない溶媒可溶性含フッ素重合体で被覆し、撥水性を付与することを狙っている。しかしながら、開示された方法を用いて、気相側表面に露出しているイオン交換基のすべてを溶媒可溶性含フッ素重合体で薄く均一に被覆することは困難である。そのため、電池反応による生成水の大部分は、細孔内部から電極外に排出され、電解質の加湿に有効利用されることはなく、安定して作動させるためには、補機による加湿が不可欠となっている。
【0020】
第3に、耐CO性触媒は、触媒表面に到達したCOを酸化除去したり、あるいは、COの吸着を阻止する機能を有している。耐CO性触媒のこのような機能は、COガス雰囲気に長時間曝されることによって経時劣化する。そのため、耐CO性触媒を用いた電極の耐CO化には限界がある。
【0021】
本発明が解決しようとする課題は、低温作動型の燃料電池に用いられる膜電極接合体として好適であり、しかも、相対的に少量のイオン交換基導入量で高いイオン伝導率が得られる電解質膜を用いた膜電極接合体を提供することにある。
【0022】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、低温作動型の燃料電池に用いた場合に、補機による電解質の加湿を軽減又は不要化し、無加湿条件下においても高い出力が安定して得られる膜電極接合体及びこれを用いた燃料電池を提供することにある。
【0023】
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、低温作動型の燃料電池において、電極の耐CO性及びその耐久性を向上させることにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る膜電極接合体は、電解質膜の両面に電極が接合されたものであって、その電解質膜は、厚さ方向に貫通する連通孔を有する膜支持体と、前記連通孔の内部に導入されたイオン伝導性物質とを備えるとともに、前記電極の少なくとも一方は、触媒又は担体に担持された触媒と触媒層内電解質とを含む触媒層を備え、前記触媒層内電解質の気相側表面は反応ガス透過性を有する撥水層で被覆されていることを要旨とするものである。
【0025】
本発明に係る膜電極接合体によれば、その電解質膜中のイオン伝導性物質を導入するための多孔質支持体として、厚さ方向に貫通する連通孔を有する膜支持体を用いているので、イオン伝導性物質の導入場所が特定される。そのため、イオン伝導性物質の導入量、すなわち、イオン交換基の導入量が相対的に少ない場合であっても、高いイオン伝導率が得られる。
【0026】
また、上記膜電極接合体を低温作動型の燃料電池の膜電極接合体として用いた場合、上記膜電極接合体は、相対的に高いイオン伝導率かつ高強度であるので、燃料電池の高出力化及び小型化を図ることができる。
【0027】
さらに、上記膜電極接合体は、触媒層内電解質の気相側表面が反応ガス透過性を有する撥水層で被覆されているので、触媒層への反応ガスの拡散を阻害することなく、触媒層から拡散層側への水の排出が抑制される。その結果、電池反応による生成水の一部は、触媒層内部に滞留する。触媒層内部に滞留した水分は、拡散によって電解質膜まで戻され、電解質膜の加湿に再利用される。
【0028】
そのため、低加湿あるいは無加湿条件下においても、電解質膜の含水率を安定作動に必要な水準に維持することができ、安定して高い出力を有する燃料電池が得られる。
【0029】
この際、前記撥水層は、フッ素系材料からなることが望ましい。フッ素系材料からなる薄層は、COの透過率が低いので、これを撥水層として用いると、触媒層に含まれる触媒のCO被毒が抑制される。また、触媒がCOガスと接触する頻度が減少するので、電極の耐久性も向上する。
【0030】
一方、本発明に係る燃料電池によれば、本発明に係る膜電極接合体を備えているので、上述した作用効果を奏する燃料電池が得られる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に、本発明の一実施の形態に係る膜電極接合体が備える電解質膜の概略構成図を示す。図1(a)において、電解質膜10は、膜支持体12と、イオン伝導性物質14とを備えている。
【0032】
膜支持体12は、厚さ方向に貫通する多数の連通孔12aを備えている。この連通孔12aの断面積は、0.2nm以上30000nm以下が好ましい。連通孔12aの断面積が0.2nm未満になると、イオン伝導が妨げられるので好ましくない。また、連通孔12aの断面積が30000nmを超えると、電解質膜10全体のイオン伝導率が低下するので好ましくない。連通孔12aの断面積は、さらに好ましくは0.2nm以上100nm以下である。
【0033】
連通孔12aの単位面積当たりの数は、膜支持体12の強度を維持できる限り、多いほど好ましい。電解質膜10に高いイオン伝導率を付与するためには、連通孔12aの単位面積当たりの数は、1×10/cm以上が好ましく、さらに好ましくは、3×1010/cm以上である。
【0034】
また、連通孔12aは、少なくとも膜支持体12の厚さ方向に貫通するものであれば良く、その形状は、特に限定されるものではない。例えば、連通孔12aは、膜支持体12の面に対して90゜未満の角度で傾斜していても良い。また、連通孔12aは、直線状であっても良く、あるいは、ジグザグ状であっても良い。しかしながら、電解質膜12の膜抵抗を最小にするには、連通孔12aは、膜支持体12に対してほぼ垂直に貫通している方が好ましい。さらにまた、連通孔の断面の形状は、イオン導電性物質を導入することができる形状であれば良く、その形状は、特に限定されるものではない。例えば、連通孔12aの断面は、円形でも良く、また、楕円形でも良く、あるいは多角形でも良く、さらにまた、ひょうたん形や星形のように、上記の図形が連接してできる形状でも良い。
【0035】
なお、膜支持体12の材質は、上述のような連通孔12aを作ることができるものであれば良く、特に限定されるものではない。例えば、高分子材料であっても良く、あるいは、無機材料であっても良い。また、有機材料及び無機材料の複合体であっても良い。
【0036】
膜支持体12としては、具体的には、連通孔が面に対して垂直に貫通しているアルミナ膜、電子線照射及び溶剤によって連通孔が面に対して垂直に貫通しているポリカーボネート膜等が好適な一例として挙げられる。
【0037】
イオン伝導性物質14は、膜支持体12の連通孔12a内部に導入される。イオン伝導性物質14は、イオン交換基を有し、かつ、連通孔12a内部に導入可能な物質であれば良く、特に限定されるものではない。また、連通孔12aに導入されるイオン導電性物質14の量、すなわち、イオン交換基の量は、導入可能な限りにおいて、多いほど良い。電解質膜10に高いイオン伝導率を付与するためには、単位面積当たりのイオン交換基の量(以下、これを「イオン交換基面密度」という。)は、1/nm以上が好ましく、さらに好ましくは、10/nm以上である。
【0038】
また、本発明において「イオン伝導性物質14を導入する」とは、連通孔12a内部又はその内壁面にイオン伝導性を付与することを言う。具体的には、連通孔12aの内部にイオン伝導性物質14を含浸させること、連通孔12aの内壁面をイオン伝導性物質14で修飾すること等が好適な一例として挙げられる。
【0039】
連通孔12a内部にイオン伝導性物質14を含浸させる場合、イオン伝導性物質14としては、固体高分子電解質を用いるのが好ましい。この場合、固体高分子電解質は、ポリマ骨格の全部又は一部がフッ素化されたフッ素系ポリマであってイオン交換基を備えているものでもよく、あるいはポリマ骨格にフッ素を含まない炭化水素系ポリマであってイオン交換基を備えているものであってもよい。
【0040】
また、これらのポリマに含まれるイオン交換基についても、特に限定されるものではなく、用途に応じて任意に選択することができる。すなわち、イオン交換基は、スルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸等のいずれであっても良い。また、これらのポリマには、1種類のイオン交換基が含まれていても良く、あるいは、2種以上のイオン交換基が含まれていても良い。
【0041】
ポリマ骨格の全部又は一部がフッ素化された固体高分子電解質としては、具体的には、ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマ、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマ、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマ、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマ等が好適な一例として挙げられる。
【0042】
また、フッ素を含まない炭化水素系の固体高分子電解質としては、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸等が好適な一例として挙げられる。
【0043】
連通孔12aの内壁面をイオン伝導性物質14で修飾する場合、イオン伝導性物質14としては、イオン交換基を有するカップリング剤又はイオン交換基を導入可能なカップリング剤を用いるのが好ましい。この場合、使用するカップリング剤は、膜支持体12の材質に応じて最適なものを選択する。例えば、膜支持体12が、酸化物系の無機材料、末端にOH基を有する有機材料又はこれらのいずれかを含む複合材料からなる場合、イオン伝導性物質14としては、シランカップリング剤、チタネート系のカップリング剤等が好適である。
【0044】
イオン交換基を導入可能なカップリング剤としては、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェネチルトリクロロシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等、及び、これらのオリゴマが好適な一例として挙げられる。
【0045】
なお、カップリング剤で連通孔12aの内壁面を修飾する場合、イオン交換基は、予めカップリング剤に導入されていても良く、あるいは、イオン交換基を含まないカップリング剤で連通孔12aを修飾した後、カップリング剤にイオン交換基を導入しても良い。
【0046】
また、カップリング剤に導入されるイオン交換基の種類は、特に限定されるものではなく、用途に応じて任意に選択することができる。すなわち、イオン交換基は、スルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸等のいずれであっても良い。また、これらのカップリング剤には、1種類のイオン交換基が含まれていても良く、あるいは、2種以上のイオン交換基が含まれていても良い。
【0047】
図1(b)に、イオン伝導性物質としてカップリング剤14aを用いた電解質膜10aの拡大断面図を示す。図1(b)に例示する電解質膜10aは、膜支持体12を貫通する連通孔12aの内壁面がフェニル基を有するシランカップリング剤14aにより修飾されており、各フェニル基には、それぞれ、スルホン酸基が導入されているものである。
【0048】
次に、本実施の形態に係る膜電極接合体が上記電解質膜を備えることによる作用について説明する。繊維を無作為に配向させた多孔質支持体にイオン伝導性ポリマを含浸させた複合膜の場合、多孔質支持体内部では、気孔はランダムに配向した状態になっている。そのため、これにイオン伝導性ポリマを含浸させても、イオン伝導に実質的に寄与するイオン交換基は、その内の一部に過ぎない。従って、高いイオン伝導率を得るには、多量のイオン伝導性ポリマを含浸させる必要がある。
【0049】
これに対し、多孔質支持体として、厚さ方向に貫通する連通孔12aを有する膜支持体12を用いる場合、実質的にすべての連通孔12aが、イオン伝導パスとして機能する。従って、このような膜支持体12の連通孔12a内部にイオン伝導性物質14を導入すると、イオン伝導性物質14に含まれるイオン交換基の大部分が、イオン伝導に有効的に寄与する。そのため、イオン交換基の導入量が相対的に少ない場合であっても、高いイオン伝導率が得られる。
【0050】
特に、連通孔12aが膜支持体12の面に対してほぼ垂直である場合には、電解質膜10の両側に設けられる電極間が最短のイオン移動経路でつながることになる。そのため、電解質膜10の膜抵抗が小さくなり、高イオン伝導率が得られる。
【0051】
さらに、膜支持体12に導入されたイオン交換基は、イオン伝導に有効に寄与する割合が高いので、膜支持体12の気孔率が相対的に小さい場合であっても、高いイオン伝導率が得られる。すなわち、上記電解質膜10を用いた膜電極接合体によれば、従来の複合膜を用いた場合に比して、高イオン伝導率と高強度との両立が可能となる。
【0052】
次に、本発明に係る膜電極接合体が備える電極の詳細な構成及び本発明に係る膜電極接合体を用いた本発明に係る燃料電池について図面を参照しながら詳細に説明する。図2に、本発明の一実施の形態に係る燃料電池に備えられる膜電極接合体の拡大断面図を示す。図2において、膜電極接合体20は、電解質膜30と、その一方の面に接合されたアノード40aと、他方の面に接合されたカソード40bとを備えている。
【0053】
ここで、電解質膜30は、厚さ方向に貫通する貫通孔32aを有する膜支持体32と、貫通孔32a内部に導入されたイオン伝導性物質34とを備えたものからなる。電解質膜30の詳細な構成は、図1に示す電解質膜10と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
アノード40aは、拡散層42aと、触媒層44aと、撥水層52aとを備えている。また、カソード40bは、拡散層42bと、触媒層44bと、撥水層52bとを備えている。
【0055】
拡散層42aは、触媒層44aへの燃料ガスの供給及び電子の授受を行うための層であり、アノード40aの気相側に設けられる。同様に、拡散層42bは、触媒層44bへの酸化剤ガスの供給及び電子の授受を行うための層であり、カソード40bの気相側に設けられる。拡散層42a、42bの材質は、多孔質かつ電子伝導性を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。一般的には、多孔質のカーボン布、カーボン紙等が用いられる。
【0056】
触媒層44a、44bは、電池反応の反応場となる層であり、それぞれ、電解質膜20と接する面に設けられる。また、アノード40aの触媒層44aは、担体46aと、担体46aに担持された触媒48aと、触媒層内電解質50aとを備えている。同様に、カソード40bの触媒層44bは、担体46bと、担体46bに担持された触媒48bと、触媒層内電解質50bとを備えている。
【0057】
担体46a、46b及び触媒48a、48bの材質は、特に限定されるものではなく、用途に応じて種々の材質を用いることができる。一般に、担体46a、46bにはカーボンが用いられ、触媒48a、48bにはPt又はPt合金が用いられる。なお、触媒48a、48bは、図2に示すように、担体46a、46bに担持された状態で触媒層44a、44bに含まれていても良いが、触媒48a、48bが単独で触媒層44a、44bに含まれていても良い。
【0058】
触媒層内電解質50a、50bは、それぞれ、触媒層44a、44bにイオン伝導性を付与するために加えられるものである。触媒層内電解質50a、50bの材質は、特に限定されるものではなく、用途に応じて種々の材質を用いることができる。通常は、パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマに代表されるフッ素系の固体高分子電解質や炭化水素系の固体高分子電解質が用いられる。また、触媒層内電解質50a、50bの表面に、それぞれ、撥水層52a、52bを形成するために、触媒層内電解質50a、50bとして、主鎖の末端もしくは側鎖に疎水セグメントを持つ固体高分子電解質を用いても良い。この点については、後述する。
【0059】
撥水層52a、52bは、それぞれ、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面を被覆するように設けられる。アノード40a側の撥水層52aは、燃料ガスに含まれる水素を触媒層44aに供給することが可能な水素透過性と、触媒層44aから拡散層42aへの水の排出を抑制することが可能な撥水性とを備えたものであれば、いずれの材質であっても使用でき、特に限定されるものではない。但し、アノード40aに耐CO性を付与するためには、撥水層52aの材質は、分子内にC−F結合を有するフッ素系材料が特に好適である。また、カソード40b側の撥水層52bは、酸素透過性と撥水性とを備えたものであれば、いずれの材質であっても使用でき、特に限定されるものではない。
【0060】
また、撥水層52a、52bの厚さは、要求される反応ガス透過性及び撥水性を備えている限り、その材質に応じて任意に選択することができる。例えば、十分な撥水性を備えている限り、撥水層52a、52bは、単分子層であっても良い。また、例えば、十分な反応ガス透過性を備えている限り、撥水層52a、52bは、所定の厚さを有する高分子層であっても良い。
【0061】
さらに、撥水層52a、52bの面積は、広いほど良い。触媒層内電解質50a、50bの気相側表面を被覆する撥水層52a、52bの面積が大きくなるほど、触媒層44a、44bから拡散層42a、42bへの水の排出が効率的に抑制されるためである。但し、触媒層44a、44bと拡散層42a、42bとの間で電子の授受を行うためには、両者が電気的に連続している必要がある。従って、撥水層52a、52bは、触媒層44a、44bの気相側表面の内、触媒層48a、48b又は担体46a、46bが拡散層42a、42bと接触している部分以外の部分を被覆する、実質的に連続した層であることが好ましい。
【0062】
このような撥水層52a、52bとしては、具体的には、疎水性メタロキサン前駆体を重縮合させることにより得られる重縮合体層、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面にあるイオン交換基と塩基とを酸塩基反応させることにより得られる塩基層、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に気相を介して反応ガス透過性を有する撥水性材料を析出させた析出層等が好適な一例として挙げられる。また、撥水層52a、52bは、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に異種材料を形成する代わりに、触媒層内電解質50a、50bとして主鎖の末端や側鎖に疎水セグメントが結合している固体高分子電解質を用い、この疎水セグメントを触媒層44a、44bの気相側表面に偏在させることにより得られる偏在層であっても良い。
【0063】
このような連通孔32a内にイオン伝導性物質34が導入された電解質膜30と、撥水層52a、52bで被覆された触媒層44a、44bとを備えた膜電極接合体20は、従来の膜電極接合体と同様に、その両面を、反応ガスを供給するための反応ガス流路を備えたセパレータで狭持した状態で使用される。
【0064】
次に、本実施の形態に係る膜電極接合体及びこれを用いた燃料電池の作用について説明する。図2において、膜電極接合体20のアノード40a側に水素を含む燃料ガスを供給すると、水素が拡散層42aを通って撥水層52a表面に達する。撥水層52aは水素透過性を有しているので、水素の拡散が阻害されることはなく、水素は撥水層52aをそのまま透過し、触媒層44a内の触媒48bに達する。
【0065】
イオン伝導性物質34及び触媒層内電解質50a、50bとして、それぞれ、プロトン伝導性を有するものを用いる場合、アノード40aにおいては、水素からプロトンと電子が生成し、生成したプロトンは、電解質膜30内に導入されたイオン伝導性物質34を介してカソード40bに移動する。また、生成した電子は、拡散層42aから負荷(図示せず)に運ばれ、さらに負荷からカソード40b側の拡散層42bを通って触媒層44bに運ばれる。
【0066】
一方、カソード40b側に酸素を含む酸化剤ガスを供給すると、酸素が拡散層42bを通って撥水層52b表面に達する。撥水層52bは酸素透過性を有しているので、酸素の拡散が阻害されることはなく、酸素は撥水層52bをそのまま透過し、触媒層44b内の触媒48bに達する。
【0067】
触媒48bの表面では、プロトン、酸素、及び電子から、水が生成する。この時、撥水層52bは、高い撥水性を有しているので、触媒層44b内で生成した水分の一部は、拡散層42b側に排出されることなく触媒層44b内に滞留する。触媒層44b内に滞留した水分は、拡散により電解質膜30内に戻され、電解質膜30の加湿に再利用される。
【0068】
また、電解質膜30内に戻された水の一部は、アノード40a側に拡散する。この時、アノード側40aの触媒層44aの気相側表面もまた撥水層52aで被覆されているので、アノード40a側から排出される水分量も減少する。
【0069】
本実施の形態に係る燃料電池は、膜電極接合体20を構成する電解質膜30として、厚さ方向に貫通する連通孔32aを有する膜支持体32にイオン伝導性物質34を導入したものを用いているので、電解質膜30の強度を維持しながらイオン伝導率を高くすることができる。そのため、燃料電池を高出力化及び小型化することができる。
【0070】
また、電池反応による生成水が電解質膜30の加湿に再利用されるので、補機を用いて外部から水を補給しなくても、電解質膜30の含水率が安定作動に必要な水準に維持され、高い出力が安定して得られる。
【0071】
さらに、燃料ガスとして改質ガスを用いる場合、燃料ガス中には、微量のCOガスが含まれている場合がある。しかしながら、フッ素系材料からなる薄層はCOの透過率が低いので、これをアノード40a側の撥水層52aとして用いると、触媒層44aへのCOの拡散が阻止される。そのため、触媒48aがCOガスにより被毒されにくくなり、電極の耐久性が向上する。
【0072】
次に、撥水層52a、52bの具体例について、詳細に説明する。撥水層52a、52bの第1の具体例は、触媒層44a、44bの気相側表面に疎水性メタロキサン前駆体を含む溶液を塗布し、重縮合させることにより得られる重縮合体層からなる。ここで、疎水性メタロキサン前駆体とは、疎水基を有し、かつ、ゾルゲル法で重縮合させることによりメタロキサン結合を生ずるモノマ又はオリゴマをいう。疎水性メタロキサンモノマは、次の化1の式で表すことができる。また、疎水性メタロキサンオリゴマとは、化1の式で表される疎水性メタロキサンモノマの2〜200量体をいう。
【0073】
【化1】
4−nM(OR)
【0074】
化1の式において、nは、1〜3までの整数である。Mは4価の半金属元素又は金属元素であり、シリコン、チタン、ジルコニウム等が好適な一例として挙げられる。ORはアルコキシル基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が好適な一例として挙げられる。
【0075】
また、元素Mに結合しているXは、少なくとも1つが疎水基であればよい。疎水基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基等の中の炭素と結合している少なくとも1つの水素がフッ素に置き換わったものが特に好適である。また、疎水基は、疎水性の強い炭化水素基(例えば、フェニル基、アルキル基、アリル基等)であっても良い。さらに、2個以上の疎水基が元素Mに結合している場合、各疎水基は、同一のものであっても良く、あるいは、異なるものであっても良い。
【0076】
このような疎水性メタロキサン前駆体としては、具体的には、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン等、及び、これらのオリゴマが好適な一例として挙げられる。
【0077】
触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に疎水性メタロキサン前駆体を含む溶液を塗布する場合、溶液には、1種類の疎水性メタロキサン前駆体が含まれていても良く、あるいは、2種以上の疎水性メタロキサン前駆体が含まれていても良い。また、溶液に含まれる疎水性メタロキサン前駆体の種類及び濃度、溶液の塗布量等は、形成しようとする重縮合体層の厚さ、重縮合体層に要求される反応ガス透過性、撥水性等に応じて、適宜調節すれば良い。
【0078】
また、本発明において「塗布」とは、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面を溶液で均一に被覆することをいい、具体的には、滴下、ハケ塗り、スプレー、蒸気接触等が好適な一例として挙げられる。さらに、疎水性メタロキサン前駆体の重縮合方法は、加熱する方法、酸又はアルカリを作用させる方法等、種々の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0079】
触媒層内電解質50a、50bの気相側表面にイオン交換基が露出していると、このイオン交換基を介して水分が拡散層42a、42b側に排出されやすい。これに対し、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面を疎水性メタロキサン前駆体の重縮合体層で被覆すると、触媒層44a、44bから拡散層42a、42bへの水の排出が抑制される。特に、水の排出口となり易いイオン交換基が露出した部分に存在する水と、イオン交換基自身の触媒作用により、選択的に撥水層を形成できるので、効率よく水の排出が抑制される。しかも、このような重縮合体層は、反応ガス透過性を有しているので、触媒層44a、44bへの反応ガスの拡散が阻害されることもない。そのため、無加湿条件下においても安定して作動する燃料電池が得られる。
【0080】
次に、第2の具体例について説明する。撥水層52a、52bの第2の具体例は、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面にあるイオン交換基と塩基とを酸塩基反応させることにより得られる塩基層からなる。イオン交換基と反応させる塩基としては、次の化2の式で表される第4級アンモニウム塩が好適な一例として挙げられる。
【0081】
【化2】
(RN)Y
【0082】
化2の式において、Rは、一般にアルキル基、アリル基、アリール基等であるが、本発明においては、Rの構造は、特に限定されるものではなく、種々の第4級アンモニウム塩を使用できる。また、塩基層に高い撥水性を付与するためには、Rは、上述したアルキル基、アリル基、アリール基等の中の炭素と結合している少なくとも1つの水素がフッ素に置換した疎水基が特に好適である。なお、窒素原子と結合する各Rは、同一のものであっても良く、あるいは、異なるものであっても良い。また、Yは、陰イオンであり、その種類は、特に限定されるものではない。
【0083】
このような塩基としては、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、3,3,3−トリフルオロトリプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等が好適な一例として挙げられる。
【0084】
なお、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面にあるイオン交換基と塩基とを酸塩基反応させるには、塩基を含む溶液を触媒層44a、44bの気相側表面に塗布すれば良い。この場合、溶液に含まれる塩基の種類、溶液の濃度、溶液の塗布量等は、塩基層に要求される反応ガス透過性、撥水性等に応じて、適宜調節すれば良い。
【0085】
触媒層内電解質50a、50bの気相側表面にあるイオン交換基と塩基とを酸塩基反応させると、イオン交換基が塩基によりブロックされ、触媒層44a、44bから拡散層42a、42bへの水の排出が抑制される。特に、疎水基を備えた塩基を用いると、イオン交換基のブロックに加え、疎水基によって塩基層に高い撥水性が付与される。しかも、このような塩基層は、反応ガス透過性を有しているので、触媒層44a、44bへの反応ガスの拡散が阻害されることもない。もちろん、気相側表面にあるイオン交換基のみを選択的に撥水化するのみであるので、本来の役割であるプロトン伝導性は、内部のイオン交換基により十分保たれる。
【0086】
次に、第3の具体例について説明する。撥水層52a、52bの第3の具体例は、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に気相を介して反応ガス透過性を有する撥水性材料を析出させることにより得られる析出層からなる。析出層に用いられる撥水性材料としては、具体的には、CF、ポリテトラフルオロエチレン(以下、これを「PTFE」という。)、フッ化ピッチ等が好適な一例として挙げられる。
【0087】
また、気相析出させる方法は、使用する撥水性材料の種類に応じて、種々の方法を用いることができる。例えば、撥水性材料としてCFを用いる場合、プラズマ処理法が好適である。触媒層内電解質50a、50bの表面に対してCFを用いたプラズマ処理を行うと、処理条件に応じて、単分子層から多分子層のフッ化炭素被膜を触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に形成することができる。
【0088】
また、例えば、撥水性材料としてPTFEを用いる場合、スパッタリング法が好適である。触媒層内電解質50a、50bの表面に対してPTFEのスパッタリング処理を行うと、処理条件に応じて、任意の厚さのPTFE被膜を触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に形成することができる。
【0089】
また、例えば、撥水性材料としてフッ化ピッチを用いる場合、蒸気接触法が好適である。触媒層内電解質50a、50bにフッ化ピッチを蒸気接触させると、処理条件に応じて、任意の厚さのフッ化ピッチ被膜を触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に形成することができる。
【0090】
フッ素系の撥水性材料は、一般に溶剤に対して難溶性であるので、溶液を塗布する方法により、撥水性材料からなる均一な被膜を触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に形成するのは困難である。これに対し、気相を介して析出させる方法によれば、触媒層内電解質50a、50b表面のミクロな凹凸に沿って、均一な被膜を形成することができる。しかも、このような方法により得られる析出層は、反応ガス透過性を有しているので、触媒層44a、44bへの反応ガスの拡散が阻害されることもない。
【0091】
次に、第4の具体例について説明する。撥水層52a、52bの第4の具体例は、触媒層内電解質50a、50bとして、主鎖の末端や側鎖に疎水性セグメントを持つ固体高分子電解質(以下、これを「疎水性電解質」という。)を用い、疎水セグメントを触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に偏在させることにより得られる偏在層からなる。
【0092】
ここで、疎水セグメントとは、一般式:CF−(CF−で表される原子団をいう。疎水セグメントは、直鎖状であっても良く、あるいは、分岐が途中にあってもかまわない。一般に、nが大きくなるほど、疎水セグメントの撥水性が高くなる傾向がある。一方、nの値は、反応ガス透過性にほとんど影響を与えない。従って、nの値は、要求される撥水性、疎水性電解質の製造容易性等を考慮して、任意に選択することができる。偏在層に高い撥水性を付与するためには、nは、2以上が好ましく、さらに好ましくは10以上である。但し、nが200を超えると、溶解性が低下し、触媒層を形成し難くなるので、nは200以下が好ましい。
【0093】
また、疎水性電解質の疎水セグメント以外の部分は、特に限定されるものではない。すなわち、疎水性電解質は、ポリマ骨格の全部又は一部がフッ素化された固体高分子電解質の主鎖の末端や側鎖に疎水セグメントを結合させたものであっても良く、あるいは、フッ素を含まない炭化水素系の固体高分子電解質の主鎖の末端や側鎖に疎水セグメントを結合させたものであっても良い。
【0094】
このような疎水性電解質としては、具体的には、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマの主鎖の末端や側鎖に疎水セグメントを結合させたものが好適な一例として挙げられる。なお、触媒層内電解質50a、50bには、疎水性電解質を単独で用いても良く、あるいは、疎水性電解質と疎水セグメントを有しない電解質との混合物を用いても良い。
【0095】
疎水性電解質を含む触媒層内電解質50a、50bと、触媒又は担体に担持した触媒との混合液を電解質膜10の表面に塗布し、溶媒を除去すると、触媒層44a、44bが形成される。この時、溶媒が除去されるに伴い、疎水セグメントが触媒層44a、44bの気相側表面に配列し、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に偏在層が形成される。このようにして得られた偏在層は、撥水性を有し、しかも、反応ガス透過性を有しているので、触媒層44a、44bへの反応ガスの拡散を阻害することなく、拡散層42a、42bへの水の排出を抑制することができる。
【0096】
次に、本実施の形態に係る膜電極接合体及びこれを用いた燃料電池の製造方法について説明する。本実施の形態に係る膜電極接合体及びこれを用いた燃料電池は、種々の方法により製造することができる。第1の製造方法は、まず、膜支持体32の連通孔32a内にイオン導電性物質34を導入した電解質膜30の両面に触媒層44a、44bを接合し、次いで、上述した種々の方法を用いて触媒層内電解質50a、50bの表面に撥水層52a、52bを均一に形成した後、触媒層44a、44bの表面に拡散層42a、42bを形成する方法である。この場合、拡散層42a、42bは、触媒層44a、44bと接合しても良く、あるいは、セル組み付け時に締結によって接触させるだけでも良い。
【0097】
触媒層44a、44b中の担体46a、46b、もしくは、触媒48a、48bが完全に触媒層内電解質50a、50bに被覆された状態の場合には、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に撥水層52a、52bを均一に形成した後、拡散層42a、42bの接合又は締結を行うと、拡散層42a、42bの表面の内、突出している部分が撥水層52a、52b及び触媒層内電解質50a、50bを突き破り、触媒層44a、44bと拡散層42a、42bが電気的に連通した状態となる。このような膜電極接合体20の両側を、反応ガス流路を備えたセパレータで狭持すれば、無加湿条件下でも安定に作動する低温作動型の燃料電池が得られる。
【0098】
第2の製造方法は、まず、シート状の触媒層44a、44bを作製し、次いで、上述した種々の方法を用いて触媒層内電解質50a、50bの表面に撥水層52a、52bを均一に形成した後、撥水層52a、52bが形成された触媒層44a、44bを電解質膜30に接合し、さらに、触媒層44a、44bの表面に拡散層42a、42bを形成する方法である。この場合も、拡散層42a、42bは、接合しても良く、あるいは、締結によって接触させるだけでも良い
【0099】
第3の製造方法は、まず、電解質膜30の表面に触媒層44a、44bを形成し、次いで、触媒層44a、44bの表面に拡散層42a、42bを形成した後、拡散層42a、42b側から疎水性メタロキサン前駆体の含浸・重縮合、塩基による処理、撥水性材料の気相析出等を行い、触媒層内電解質50a、50bの気相側表面に撥水層52a、52bを形成する方法である。このような方法によっても、無加湿条件下で安定に作動する低温作動型の燃料電池を得ることができる。
【0100】
第4の製造方法は、まず、拡散層42a、42bに触媒層44a、44bを形成し、次いで、拡散層42a、42b側から触媒層内電解質50a、50bの表面に撥水層52a、52bを形成した後、電解質膜30と接合する方法である。
【0101】
【実施例】
(実施例1)
以下の手順により、本発明に係る膜電極接合体の電解質膜を作製した。膜支持体には、直径43mm、厚さ60μmで、直径0.1μmの連通孔が面に垂直に貫通しているアルミナメンブレンフィルタ(Whatman製Anodiscメンブレンフィルタ)を用い、イオン導電性物質には、既知の方法で合成したフェニルトリエトキシシランスルホン酸エステルを用いた。
【0102】
まず、アルミナメンブレンフィルタをフェニルトリエトキシシランスルホン酸エステルの1%エタノール溶液に室温で10分間浸漬し、室温で風乾した。次いで、これを空気中で10分間110℃に加熱し、フェニルトリエトキシシランスルホン酸エステルと、アルミナメンブレンフィルタの連通孔内にある表面水酸基とをカップリング反応によって結合させた。これを室温まで冷却した後、軽く水洗し、連通孔内表面に1分子層のイオン導電性物質が導入された電解質膜を得た。
【0103】
得られた電解質膜について、スルホン酸基導入量を測定した。スルホン酸基導入量は、電解質膜を1Mの塩化ナトリウム水溶液に一晩浸漬し、次いで、その溶液を0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定することにより求めた。
【0104】
また、得られた電解質膜について、イオン伝導度を測定した。イオン伝導度は、周波数1kHzの交流2端子法により測定した。すなわち、電解質膜を2枚のナフィオン112(デュポン社製)で挟み、両側から白金黒をメッキした白金板を圧力1.6MPaで押し当てて抵抗を測定し、この値からナフィオン112だけの抵抗を差し引き、電解質膜の抵抗とした。
【0105】
なお、比較のため、ナフィオン112(デュポン社製)についても同様に、滴定によりスルホン酸基導入量を求め、周波数1kHzの交流2端子法によりイオン伝導度を測定した。
【0106】
ナフィオン112の場合、単位体積当たりのスルホン酸基導入量(以下、これを「スルホン酸基密度」という。)は1.3mmol/cm、イオン伝導度は0.08S/cmであり、スルホン酸基密度に対するイオン伝導度の比(以下、これを「比伝導度」という。)は、0.062(S/cm)/(mmol/cm)であった。
【0107】
これに対し、本発明に係る膜電極接合体の電解質膜の場合、スルホン酸基密度は0.158mmol/cm、イオン伝導度は0.0182S/cmであり、ナフィオン112より低い値となった。しかしながら、比伝導度は、0.12(S/cm)/(mmol/cm)であり、ナフィオン112の約2倍となった。この結果は、本発明に係る膜電極接合体の電解質膜によれば、スルホン酸基導入量が相対的に少ない場合であっても、高いイオン伝導度が得られることを示している。
【0108】
また、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系の高分子電解質膜は、数mmol/cmのスルホン酸基密度で、スルホン酸基間距離は、約1nmと考えられている。スルホン酸基間距離がこれより短くなる(すなわち当量重量を下げる)と、あるところで膜が水溶性となる。そこでイオン伝導度は最高となるものの、それ以上のイオン伝導度は出なくなる。また、膜が水溶性となることによって、強度を維持するのが困難となる。
【0109】
これに対し、本発明に係る膜電極接合体の電解質膜は、膜支持体により強度が維持されるので、上述のような理由によりイオン交換基導入量が制限されることはない。本実施例で得られた電解質膜の場合、スルホン酸基面密度は、12.4/nmであり、一般の高分子電解質より高い値が得られている。
【0110】
(実施例2)
以下の手順により本発明に係る膜電極接合体及び燃料電池を作製した。まず、実施例1で得られた電解質膜の両面に、触媒を担持させたカーボンと電解質からなる触媒層(13cm)を接合した。次いで、触媒層の表面に300μlの(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシランの溶液(フッ素溶媒)を均一に滴下した後、乾燥させることにより、触媒層の表面に撥水層を形成した。次に、触媒層の外側にさらに拡散層を接合して膜電極接合体とした後、さらに、その両側を、反応ガス流路を備えたセパレータで狭持し、燃料電池を得た。
【0111】
得られた燃料電池を用いて発電試験を行った。発電条件は、燃料ガス及び酸化剤ガスとして、それぞれ、10ppmのCOガスを含む改質ガス及び空気を用い、両極無加湿、セル温度100℃、電流密度0.5A/cm、燃料過剰率1.5、空気過剰率1.5とした。本実施例で得られた燃料電池は、このような高温無加湿、高CO濃度の条件下においても連続運転が可能であり、安定して高出力が得られた。
【0112】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0113】
例えば、図2に示す燃料電池においては、アノード及びカソードの双方に撥水層が設けられているが、撥水層は、アノード又はカソードの少なくとも一方に設けるようにしても良い。また、イオン伝導性物質としてプロトン伝導性を有するものを用いる場合、一般に、カソード側からより多くの水が排出されるので、この場合には、カソード側にのみ撥水層を設けても良い。
【0114】
また、例えば、上記実施の形態では、イオン伝導性物質として陽イオン交換基を備えたものを用いた例について主に説明したが、陰イオン交換基を備えたものをイオン伝導性物質電解質として用いても良い。
【0115】
【発明の効果】
本発明に係る膜電極接合体は、その電解質膜が、厚さ方向に貫通する連通孔を有する膜支持体と、前記連通孔の内部に導入されたイオン伝導性物質とを備えているので、イオン伝導性物質の導入量、すなわち、イオン交換基の導入量が相対的に少ない場合であっても、高いイオン伝導率が得られるという効果がある。
【0116】
また、上記膜電極接合体は、その電解質膜が相対的に高イオン伝導率かつ高強度であるので、この膜電極接合体を燃料電池に用いた場合、あるいは、その燃料電池によれば、燃料電池の高出力化及び小型化が図れるという効果がある。
【0117】
また、上記膜電極接合体の電極の少なくとも一方が、触媒又は担体に担持された触媒と触媒層内電解質とを含む触媒層を備え、触媒層内電解質の気相側表面が反応ガス透過性を有する撥水層で被覆されているのでこの膜電極接合体を燃料電池に用いた場合、あるいは、その燃料電池によれば、無加湿条件下においても、電解質膜の含水率を安定作動に必要な水準に維持することができ、高い出力が安定して得られるという効果がある。
【0118】
さらに、撥水層として、フッ素系材料を用いた場合には、触媒層に含まれる触媒のCO被毒が抑制され、電極の耐久性も向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明に係る膜電極接合体が備える電解質膜の概略構成図であり、図1(b)は、その拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る燃料電池に備えられる膜電極接合体の拡大断面図である。
【符号の説明】
10、10a、30 電解質膜
12、32 膜支持体
12a、32a 連通孔
14、34 イオン伝導性物質
14a カップリング剤
20 膜電極接合体
40a アノード
40b カソード
42a、42b 拡散層
44a、44b 触媒層
46a、46b 担体
48a、48b 触媒
50a、50b 触媒層内電解質
52a、52b 撥水層

Claims (19)

  1. 電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体において、
    前記電解質膜は、厚さ方向に貫通する連通孔を有する膜支持体と、前記連通孔の内部に導入されたイオン伝導性物質とを備えるとともに、
    前記電極の少なくとも一方は、触媒又は担体に担持された触媒と触媒層内電解質とを含む触媒層を備え、
    前記触媒層内電解質の気相側表面は反応ガス透過性を有する撥水層で被覆されていることを特徴とする膜電極接合体
  2. 前記連通孔の断面積は、0.2nm以上30000nm以下である請求項1に記載の膜電極接合体
  3. 前記連通孔の単位面積当たりの数は、1×10/cm以上である請求項1に記載の膜電極接合体
  4. 前記連通孔は、前記膜支持体の面に対してほぼ垂直に貫通している請求項1に記載の膜電極接合体
  5. 前記イオン伝導性物質に含まれるイオン交換基の面密度は、1/nm以上である請求項1に記載の膜電極接合体
  6. 前記イオン伝導性物質は、前記連通孔に含浸させた固体高分子電解質である請求項1に記載の膜電極接合体
  7. 前記イオン伝導性物質は、前記連通孔の内面を修飾するイオン交換基を有するカップリング剤である請求項1に記載の膜電極接合体
  8. 電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体を備えた燃料電池において、
    前記電解質膜は、厚さ方向に貫通する連通孔を有する膜支持体と、前記連通孔の内部に導入されたイオン伝導性物質とを備えるとともに、
    前記電極の少なくとも一方は、触媒又は担体に担持された触媒と触媒層内電解質とを含む触媒層を備え、
    前記触媒層内電解質の気相側表面は反応ガス透過性を有する撥水層で被覆されていることを特徴とする燃料電池。
  9. 前記連通孔の断面積は、0.2nm以上30000nm以下である請求項8に記載の燃料電池。
  10. 前記連通孔の単位面積当たりの数は、1×10/cm以上である請求項8に記載の燃料電池。
  11. 前記連通孔は、前記膜支持体の面に対してほぼ垂直に貫通している請求項8に記載の燃料電池。
  12. 前記イオン伝導性物質に含まれるイオン交換基の面密度は、1/nm以上である請求項8に記載の燃料電池。
  13. 前記イオン伝導性物質は、前記連通孔に含浸させた固体高分子電解質である請求項8に記載の燃料電池。
  14. 前記イオン伝導性物質は、前記連通孔の内面を修飾するイオン交換基を有するカップリング剤である請求項8に記載の燃料電池。
  15. 前記撥水層は、フッ素系材料からなる請求項に記載の燃料電池。
  16. 前記撥水層は、気相を介して、前記触媒層内電解質の気相側表面に反応ガス透過性を有する撥水性材料を析出させることにより得られる析出層である請求項に記載の燃料電池。
  17. 電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体を備えた燃料電池において、
    前記電解質膜は、厚さ方向に貫通する連通孔を有する膜支持体と、前記連通孔の内部に導入されたイオン伝導性物質とを備えるとともに、
    前記電極の少なくとも一方は、触媒又は担体に担持された触媒と触媒層内電解質とを含む触媒層を備え、
    前記触媒層内電解質の気相側表面は反応ガス透過性を有する撥水層で被覆され、
    前記撥水層は、前記触媒層内電解質の気相側表面に疎水性メタロキサン前駆体を含む溶液を塗布し、重縮合させることにより得られる重縮合体層であることを特徴とする燃料電池。
  18. 電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体を備えた燃料電池において、
    前記電解質膜は、厚さ方向に貫通する連通孔を有する膜支持体と、前記連通孔の内部に導入されたイオン伝導性物質とを備えるとともに、
    前記電極の少なくとも一方は、触媒又は担体に担持された触媒と触媒層内電解質とを含む触媒層を備え、
    前記触媒層内電解質の気相側表面は反応ガス透過性を有する撥水層で被覆され、
    前記撥水層は、前記触媒層内電解質の気相側表面にあるイオン交換基と塩基とを酸塩基反応させることにより得られる塩基層であることを特徴とする燃料電池。
  19. 電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体を備えた燃料電池において、
    前記電解質膜は、厚さ方向に貫通する連通孔を有する膜支持体と、前記連通孔の内部に導入されたイオン伝導性物質とを備えるとともに、
    前記電極の少なくとも一方は、触媒又は担体に担持された触媒と触媒層内電解質とを含む触媒層を備え、
    前記触媒層内電解質の気相側表面は反応ガス透過性を有する撥水層で被覆され、
    前記撥水層は、前記触媒層内電解質として主鎖の末端や側鎖に疎水セグメントが結合しているものを用い、該疎水セグメントを前記触媒層の気相側表面に偏在させることにより得られる偏在層であることを特徴とする燃料電池。
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