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JP3591282B2 - 平面加工装置およびこれを用いる平面加工方法 - Google Patents
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JP3591282B2 - 平面加工装置およびこれを用いる平面加工方法 - Google Patents

平面加工装置およびこれを用いる平面加工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、目的とする被加工体の加工形状やその経時変動に応じて迅速かつ簡便に最適な加工条件を設定・維持することが可能な平面加工装置と、この装置による平面加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械部品の多くは何らかの平面を有しており、この平面を高精度に加工する平面加工は、機械加工の基本的な技術のひとつである。
平面加工を行うための代表的な装置に、ラップ機がある。これは、旋盤加工や研削加工等の粗加工を経た被加工体に対して、さらに精度の高い研磨を施す機械である。
ラップ機の典型的な構成例を図14に示す。図14(a)上面図、図14(b)はそのX−X線断面図である。この機械は、太陽ギヤ81と内周ギヤ84との双方に噛合されることにより遊星運動を行うキャリア95と、上記太陽ギヤ81と同軸的に配され独自の回転運動を行う定盤87とを近接対向させ、上記キャリア95に装着された被加工体(ワーク)Wを上記定盤87の表面に摺接させることにより、該被加工体Wのラッピングを行うようになされたものである。
【0003】
上記太陽ギヤ81は、モータ83により回転駆動される回転軸82の上端部に一体的に取り付けられている。
上記内周ギヤ84は、上記定盤87の外周を包囲する枠体85の上端部に形成されており、この枠体85は上記モータ83とは独立に制御されるモータ86により回転駆動される。
定盤87は、その脚部88が上記回転軸82を包囲するごとく配され、該脚部88の末端にてモータ90により独立に回転駆動される。
被加工体Wは、キャリア95の開口96に嵌め込まれるように保持されている。
被加工体Wを上記定盤87の表面、すなわち作業面に摺接させる際は、該作業面の上方に開口するノズル94より研磨スラリーLを供給し、研磨効率を高めると共に摩擦熱を除去するようになされている。定盤87の表面には、余分な研磨スラリーLを周縁部へ誘導するための多数の溝89が刻設されている。定盤87の周縁部から落下する研磨スラリーLはドレン受け91で回収されてスラリータンク92に貯蔵され、ポンプ93により圧送されて循環再利用される。
【0004】
一方、上記のラッピングよりもさらに精度の高い鏡面研磨等の仕上げ加工を行う装置に、化学機械研磨(CMP)装置がある。
化学機械研磨装置の典型的な構成例を図15に示す。この装置は、表面に研磨布が張設された略円盤状の定盤101と、被加工体Wを保持する研磨ヘッド110とを平行に対向配置させたものであり、定盤101の回転運動と研磨ヘッド110の回転運動とを組み合わせることにより被加工体Wの表面を研磨するようになされたものである。研磨の機構は、機械的プロセスと研磨スラリーLによる化学的プロセスとが複合した複雑なメカノケミカル作用にもとづいている。
【0005】
上記定盤101は、上半部101tと下半部101bとがボルト等の固定手段を用いて堅固に一体化されたものであり、これら両半部の対向面の一部には溝状の空洞102が設けられて冷却水流路とされている。この空洞102の内部に冷却水を循環させることで、研磨時の摩擦熱に起因する定盤101の変形が防止され、これによって被加工体Wの平坦性が高められる。上半部101tと下半部101bとの接触面積、換言すれば冷却水による定盤101の冷却面積は、定盤101の作業面の面積の半分程度とされ、研磨荷重による定盤101の変形を極力抑えるように工夫されている。
また、下半部101bの底面中央部は回転軸103に接続され、図示されない駆動手段により定速回転するようになされている。
【0006】
上記定盤101の上面に張設される研磨布105は、適度な粘りと弾力を備えた粘弾性体であり、ウレタン不織布が典型的に使用される。
上記研磨布105の上面中央には、研磨スラリーLとしてたとえばコロイダルシリカがポンプ108で圧送され、上方のノズル109より供給される。また、上記定盤101の外周部には、そのエッジ部より溢れた研磨スラリーLを回収するためのドレン受け106が配設されている。このドレン受け106を通じて回収された研磨スラリーLは、スラリータンク107に一旦貯留された後、再びポンプ108で圧送される形で循環再利用される。
【0007】
一方、上記ヘッド110はその下面に被加工体保持板112を備えており、このウェーハ保持板112の上に真空吸着あるいはワックス接着等の方法で単数または複数の被加工体Wを保持するようになされている。研磨ヘッド110もまた回転軸113に接続されており、この回転軸113に取り付けられた図示されない駆動機構により所定の回転速度で回転駆動されると共に、所定の力で上記研磨布105に押圧付勢されている。
上記被加工体Wは、たとえばシリコンインゴットからスライスされた後にラッピングが施されたシリコンウェーハ、あるいは表面凹凸を有する絶縁膜や導電膜が形成された基板である。シリコンウェーハの研磨とは、ウェーハ仕上げの最終段階で行われる鏡面研磨である。絶縁膜の研磨による平坦化は、多層配線プロセスにおいて回路パターン形成の信頼性を高める上で不可欠の工程である。また導電膜の研磨は、絶縁膜に開口されたアスペクト比の高い接続孔をメタルプラグで埋め込む際に有用なプロセスである。
【0008】
かかる構成を有する化学機械研磨装置を用いて被加工体Wの研磨を行うと、被加工体Wは互いに平行な被加工体保持板112と定盤101との間に狭持されながら、かつ弾力性のある研磨布に押圧される。このため、被加工体Wの板厚の大きい領域は板厚の小さい領域に比べて高い接触圧力を受けて優先的に除去され、該被加工体Wの平坦化が進行するのである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のラップ機により得られる被加工体Wの平面は、高度な平坦面に限られず、用途に応じて中心部がわずかに凸となる形状(以下、中凸形状と称する。)や、中心部がわずかに凹となる形状(以下、中凹形状と称する。)とされる場合がある。したがって、定盤87の表面プロファイルもこれに応じた形状に作製する必要がある。すなわち、被加工体Wに中凸形状が要求される場合は中凹の表面プロファイルが要求され、逆に被加工体Wに中凹形状が要求される場合には中凸の表面プロファイルが要求されることになる。
【0010】
定盤のこれらの表面プロファイルは、ラップ機の運転条件を調節しながら専用の加工工具を用いて作製する。この定盤87を用いて所望の加工平面が得られるか否かは実際に被加工体Wを加工して確認し、所望の加工平面が得られない場合には定盤87の表面プロファイルを作り直すための調整を繰り返す。このため、調整作業は極めて煩雑となる。しかも、被加工体Wの加工を繰り返すことによっても定盤87の表面プロファイルは磨耗により変形するため、調整をその都度行うことはコスト的にも時間的にも大変不利である。
【0011】
被加工体が半導体ウェーハである場合には、事情は一層複雑である。半導体ウェーハの場合、サブミクロンからクォータミクロン、さらにはそれ未満の微細なデザインルールにしたがってリソグラフィ、エッチング、薄膜形成等のプロセスを精度良く行う必要から、その表面は平坦であればあるほど好ましい。
なお、微細加工に対応した近年のプラズマ装置や縮小投影露光装置では、ウェーハをステージに真空吸着させた状態でプロセスを行うため、若干の反りや歪みは矯正される。したがって、本明細書で問題とする平坦性とは、ウェーハの板厚のばらつきの多少を指すものとする。
【0012】
半導体ウェーハの鏡面研磨は、前述のように化学機械研磨装置を用い、メカノケミカル作用にもとづいて行われるが、かかる研磨には平坦性に影響する要因が極めて多い。たとえば、研磨布105の表面粗さ、研磨除去された物質による研磨布105の目詰まり、研磨布105の厚さおよびその均一性、研磨布105の粘弾性、被加工体Wと研磨布105との摩擦熱に密接に関連する研磨布105の表面温度、研磨スラリーLの被加工体の表面への到達度が挙げられる。しかし、これらすべての要因の平坦度への影響度が解明され、適切に制御されているとは言い難い。
前述のような従来の装置を用いてたとえばシリコンウェーハを研磨すると、一般に中央部に向かって球面状に凹となる形状を呈し、周縁部と中央部との高低差は直径約200mm(8インチ)のウェーハ でおおよそ0.1〜0.6μmの間を経時的に変動する。
【0013】
この中凹形状が発生する大きな原因のひとつとして、定盤101の熱変形の影響を挙げることができる。定盤101を変形させる熱には、被加工体Wと研磨布105との摺擦により発生する摩擦熱と、被加工体Wから研磨布105に加わる研磨の負荷により発生する摩擦熱とがある。
被加工体Wと研磨布105との摺擦により発生する摩擦熱の一部は、研磨布105の表面→研磨布105の本体→定盤101の表面→定盤101の裏面→定盤101の裏面を構成する空洞102に付着するスケール→冷却水の境界層→冷却水の本体、の順路で伝わり除去される。この発熱量は、表面粗さ,動摩擦係数,目詰まり状況といった研磨布105の種類に関連する要因、あるいは、研磨時間,研磨圧力,研磨速度といったプロセス条件により変動する。
一方、被加工体Wから研磨布105に加わる研磨の負荷により発生する摩擦熱の一部は、研磨布105上に不均等に分布する。しかも、この摩擦熱の冷却水への伝導経路となる研磨布105の熱伝導率はその目詰まり状況により変化し、また空洞102の内壁へのスケールの付着厚さや境界層の熱伝導率は冷却水の流速に依存して変動する。これらの要因により、定盤101の表面は実際には極めて複雑な形状を呈することになる。
【0014】
さらに、定盤101の上半部101tと下半部101bとは機械構造的に強固に結合されているため、各々の熱変形は相互に影響を及ぼし合う。また、冷却水による定盤101の上半部101tの冷却面積が作業面の総面積の半分程度と小さいために、摩擦熱の除去能力も限られている。これらの要因が重なって定盤101の上半部101tの熱変形量を増大させ、研磨布105の表面温度の上昇および不均一分布を助長し、最終的に被加工体Wの平坦性の悪化を招いている。
【0015】
そこで本発明は、被加工体の所望の平面加工形状が多岐にわたる場合や、装置自身の変形による被加工体の形状の経時変動が生ずる場合であっても、所望の被加工体形状を得るために必要な装置側の表面プロファイルを即時に修正できる平面加工装置と、これを用いて常に安定した平面加工を行うことが可能な方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の平面加工装置(図9を参照)は、作業面11a上に研磨布19が張設された円盤状の加工盤11と、被加工体14を保持する研磨ヘッド35とを平行に対向配置し、これら加工盤11と研磨ヘッド35を互いに逆向きに回転させ、研磨スラリーの存在下で、被加工体14の表面を化学機械研磨する平面加工装置において、
前記加工盤11は、いずれも剛性板体である上半部11tと下半部11bを一体化した円盤体であり、上半部11tと下半部11bとの接合面の一部は、冷却水が循環供給される空洞16として形成され、下半部11bの裏面側に第1の平面状ヒータ12aと、該ヒータ12aの裏面側に断熱材層13aとが設けられ、かつ前記第1の平面状ヒータ12aは、変圧器32を介して電源33に接続されて前記変圧器32の操作により発熱量が制御自在とされ、
前記研磨ヘッド35は、加圧室36の底面中央に被加工体保持部材15と、剛性板体である吸着治具40とを備え、被加工体14を被加工体保持部材15上に真空吸着保持しながら、前記研磨布19に対しては前記被加工体14を空気加圧により押圧付勢するものであり、
前記被加工体保持部材15は、一方の面が被加工体14を保持するための保持面15a、反対側の面が吸着治具40の装着面とされ、
前記吸着治具40は、真空配管41に接続されて空気の吸引路となっている溝を多数有し、該吸着治具40の背面に第2の平面状ヒータ12bと、該ヒータ12bの背面に断熱材層13bとが設けられ、かつ前記第2の平面状ヒータ12bは、変圧器43を介して電源44に接続されて前記変圧器43の操作により発熱量が制御自在とされ、
前記構成により前記加工盤11の熱変形、前記被加工体14の熱変形、前記被加工体保持部材15の熱変形のすべての制御が可能となっていることを特徴とする平面加工装置である。
【0017】
本発明の平面加工方法は、請求項1に記載の平面加工装置による半導体ウェーハ(前記被加工体14)の平面加工方法(化学機械研磨方法)であって、該平面加工時に、前記第1の平面状ヒータ12aの発熱量、前記第2の平面状ヒータ12bの発熱量、前記加工盤11に形成された前記空洞16に供給する冷却水の温度及び/又は循環量のうち、いずれか少なくとも一つを制御することにより、前記加工盤11の作業面の表面プロファイル、前記半導体ウェーハの表面プロファイル、前記研磨ヘッド35の被加工体保持部材15の表面プロファイルのいずれか少なくとも一つを熱的に制御することを特徴とする平面加工方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、本発明を提案するにあたり、円盤体の熱変形に関する基礎的な考察を行った。
この考察に用いたモデルを図1に示す。ここで、円盤体1の表面には研磨布2が張設され、裏面には冷却水流路3が形成されている。この裏面上には、スケール層4が付着形成されており、該スケール層4の表面に層流から乱流への移行領域である薄い境界層5が存在し、この境界層5の外側が自由に流動する冷却水6が存在する。
【0019】
いま、円盤体1が観察面側(ここでは研磨布2側)から均一に加熱されたと仮定すると、その基準面Sからの熱変形量ΔFは、次式(I)で表される。
【0020】
【数1】
Figure 0003591282
【0021】
ただし、α :円盤体の線膨張係数(1/℃)
λ :円盤体の熱伝導度(cal/mm・秒・℃)
D :円盤体の直径(mm)
Q :円盤体の伝熱密度(cal/mm
H :円盤体の厚さ(mm)
λc:研磨布の熱伝導度(cal/mm・秒・℃)
Hc:研磨布の厚さ(mm)
Tc:研磨布の表面温度(℃)
λs:スケールの熱伝導度(cal/mm・秒・℃)
Hs:スケールの厚さ(mm)
Ts:スケールの表面温度(℃)
f :境界層の伝熱係数(cal/mm・秒・℃)
Tw:冷却水の温度(℃)
なお、ΔFの符号は円盤体1が観察面側で凸平面となる場合をプラス(+)とし、Qの付号は観察面側から反対面側へ熱が流れる場合をプラス(+)とする。
【0022】
式(I)より、変形した円盤体1の表面の形状は放物面で近似されることがわかる。
ここで、αとλは円盤体1の構成材料に依存し、DとHは円盤体1の寸法そのものであるから、定数である。これに対し、TwとTsは加工条件、Hcとλcは研磨布2の目詰まり状況や構成材料、Hsとλsはスケール層4の付着状況、fは冷却水6の流速によりそれぞれ変動する。したがって、人為的な制御を比較的容易にΔFに反映できると考えられる項はQとTwであるが、中でも変動要因の無いQを制御する方がΔFを精度良く制御できることは明らかである。
【0023】
以上の考察は、円盤体1が冷却水流路3と接触しているモデルに関するものであるが、冷却水流路3と接触しない円盤体1については、上式(I)からスケール層4と境界層5と冷却水6に関連する項、すなわちλs,Hs,Ts,f,Twを削除すればよく、基本的な考え方は同じである。
また、円盤体1の表面に研摩布2が張設されていない場合には、研摩布2に関連する項、すなわちλc,Hc,Tcを削除すればよい。
さらに、上記円盤体1は、加工盤、被加工体、あるいは被加工体を保持する研磨ヘッドのいずれと考えてもよい。
本発明は、かかる考察にもとづき、すなわち加工盤の作業面の表面プロファイル、被加工体の表面プロファイル、あるいは被加工体を保持する研磨ヘッドの被加工体保持面の表面プロファイルの少なくともいずれかを熱的に制御するのである。この熱的な制御は、上記加工盤、上記被加工体の裏面、もしくは上記研磨ヘッドの少なくともいずれかに設けられた加熱手段への通電量の調節を通じて行うことができる。
【0024】
図2ないし図4に、これらの制御を実現するための構成を概念的に示す。ここでは、より実用的な構成を考慮して、加熱手段としてのヒータをいずれも断熱材層で被覆している。
図2は、加工盤11の作業面11aとは反対側の面に加熱手段としてのヒータ12が当接され、このヒータ12がさらに断熱材層13で被覆された状態を示している。ヒータ12が断熱材層13で被覆されることにより、熱流の方向を該ヒータ12から作業面11aへと規定することができ、加熱効率を高めることができる。
【0025】
図3は、被加工体14の被加工面14aとは反対側の面にヒータ12が当接され、このヒータ12がさらに断熱材層13で被覆された構成を示している。かかる構成は、被加工体14が肉厚板体である場合に適しており、たとえば次に述べる被加工体保持部材の被加工体保持面(以下、保持面と称する。)の加工を行う場合に適用することができる。
なお、本明細書における「肉厚板体」とは、仮に熱変形を起こす隣接部材が一方の主面に当接されていても、その変形による自身の表面プロファイル変化が無視し得る程度にしか生じない板体を指すものとする。このような肉厚板体の表面プロファイルを変化させるためには、隣接部材ではなく、肉厚板体自身を直接に加熱する必要がある。
【0026】
図4は、被加工体14が被加工体保持部材15の保持面15a上に保持されており、該保持面15aと反対側の面にヒータ12が当接され、このヒータ12がさらに断熱材層13で被覆された構成を示している。かかる構成は、被加工体14が肉薄板体である場合に適しており、たとえば半導体ウェーハの加工を行う場合に適用することができる。
なお、本明細書における「肉薄板体」とは、熱変形を起こす隣接部材が一方の主面に当接されている場合に、その変形の影響を受けて自身の表面プロファイルが変化するような板体を指すものとする。
【0027】
上記ヒータ12は、平面ヒータとすることが好適である。具体的には、たとえばニクロム線等の抵抗発熱体をシリコーンゴム等のフレキシブルな絶縁体で被包したシリコーンラバーヒータを用いることができる。平面ヒータは、面内の発熱密度分布ができるだけ均等なものがよい。また、平面ヒータと電源との間に変圧器を介在させれば、この変圧器で該平面ヒータへの通電量を制御して発熱量を調節することができる。この発熱量の調節により加工盤の作業面、被加工体、もしくは被加工体を保持する研磨ヘッドの被加工体保持部材の表面プロファイルを迅速、容易、かつ可逆的に変更することができる。特に、加工盤や研磨ヘッドに関しては、従来のような加工工具を用いた表面プロファイルの調整作業が不要となり、コストや時間の観点から極めて有利となる。
【0028】
図5および図6に、前掲の図2の加工盤11の作業面11aの表面プロファイルが加熱により変化し、これに伴って被加工体14の最終的な加工形状が変化する様子を模式的に示す。ここで、加工盤11と被加工体14は、それぞれの中心線の回りに矢印Aおよび矢印Bで示されるごとく回転している。
図5(a)はヒータ12への通電が無く、作業面11aが平坦な初期状態、図5(b)は平面ヒータ12への通電により作業面11aが中凹に変形した状態、図5(c)は通電量の増加により作業面11aの変形量がさらに大きくなった状態をそれぞれ示す。これに伴って、被加工体14の表面プロファイルも図5(a)の平坦から、図5(b)の中凸、さらに図5(c)の大きな中凸へと変化する。
あるいは、図6(a)に示されるように、作業面11aの初期状態を中凸としておき、この形状を通電による凹方向の変形と相殺して図6(b)図に示されるように平坦なプロファイルを得ることもできる。これに伴って、被加工体14の表面プロファイルは図6(a)の中凹から図6(b)の平坦へと変化する。
【0029】
なお、図5および図6には、加工盤11のみに表面プロファイルの変化が与えられる場合を図示したが、同様の変化を前掲の図3のように被加工体14に与えても、あるいは前掲の図4のように被加工体保持部材15の保持面15aに与えても、さらにあるいはこれらの変化を組み合わせてもよい。
【0030】
これらの平面加工装置を用いて所望の被加工体の加工形状を得ようとする場合、まずある条件で平面加工を行い、得られた被加工体の形状を測定する。このときの測定形状と目的形状との差を求め、その差が補正できるような熱変形を加工盤11、被加工体14、あるいは被加工体保持部材15の少なくともいずれかに与えて再び平面加工を行う。
本発明の平面加工方法では、これら一連の工程を所望の形状が得られるまで繰り返すことになるが、熱変形は通電量の調節により自在に起こすことが可能であるため、たとえば従来のごとく専用の加工工具を用いて加工盤や被加工体保持部材を作製し直すといった作業は一切不要であり、コスト的にも時間的にも極めて有利である。
【0031】
上記加工盤は、作業面を有する上半部と平面ヒータが当接される下半部との接合体より構成されてもよい。さらに、この上半部は、作業面のほぼ全域にわたる部分が互いに弾性材料層を介して隣接されかつ個々に前記下半部と接合される剛性ブロックの集合体であってもよい。これらの構成は、後述する冷却水流通用の空洞の形成し易さにも関係している。
ところで、本発明の平面加工方法では、表面プロファイルの制御に冷却手段による冷却を併用してもよい。冷却を併用すると、前述の加熱手段により発生した熱の一部がこの冷却で奪われることになるため、熱の有効利用の観点からは不利となるが、冷却に関連する制御パラメータが増えるため、より高精度な表面プロファイル制御が可能となる。
【0032】
かかる冷却手段の一例としては冷媒循環系統が挙げられ、その典型例は冷却水を循環させるものである。
図7に、内部に冷却水を循環させるようになされた加工盤11の構成例を示す。この加工盤11は、作業面11aを有する上半部11tと、ヒータ12が当接される下半部11bとが接合一体化されたものであり、両者の接合面の一部に冷却水流通用の空洞16が形成されている。上記空洞16はたとえば渦巻き状に形成されており、その両端部には、上記加工盤11の回転軸である脚部17の内部に挿通された冷却水配管18が接続されている。
【0033】
図8には、加工盤11の上半部11tを複数の剛性ブロック20の集合体より構成した例を示す。個々の剛性ブロック20は下端部が脚部20a、上端部がフランジ部20bとされており、該フランジ部20bの側面においてシール材21を介して多数が隣接配置されることにより、全体としてひとつの作業面11aを構成している。また、上記複数の剛性ブロック20は、脚部20aの部分で個々に下半部11bと接合されている。上記作業面11a内における上記フランジ部20bの平面形状は特に限定されるものではないが、作業面11aをできるだけ少ない隙間で充填する観点から、矩形あるいは六角形が好適である。
上記構成においては、隣接する剛性ブロック20と弾性を有するシール材21と下半部11bとで囲まれる空洞22が、冷却水の流路となる。これらの空洞22は互いに適当な順路で連結されている必要があり、上記脚部20aに設けられた貫通孔20cがこの連結の役目を果している。
【0034】
かかるブロック一体化構成によれば、たとえ平面加工中の摩擦熱により個々の剛性ブロック20に熱変形が生じても、これが弾性を有するシール材21で吸収されるため、作業面11a全体としては最初に設定した表面プロファイルをそのまま維持することができる。つまり、下半部11bの熱変形が、妨害されることなく作業面11aの表面プロファイルに直接反映されることになる。
また、個々の剛性ブロック20の隣接部に空洞22が設けられて冷却総面積を大きく確保しているため、冷却能力も十分である。
なお、上述のブロック一体化構成は必ずしも空洞を伴うものでなくてもよく、たとえば、個々の剛性ブロックが単純な柱状をなすものであってもよい。このような構成であっても、下半部11bgの熱変形を作業面11aの表面プロファイルに忠実に反映させる効果は期待することができる。
【0035】
ところで、本発明では上述の冷媒循環系統の他に、冷却手段として熱電冷却素子を使用することもできる。熱電冷却素子は、異種金属の接点に電流を流した時に吸熱が生ずるペルチェ効果を利用する素子である。平面ヒータのような加熱手段を用いている場合に、冷却手段としてかかる熱電冷却素子を利用すれば、加熱も冷却も共に電気的に行うことができ、装置構成を単純化することができる。
なお、熱電冷却素子は電流を流す方向を逆とすれば発熱体としても利用することができるので、これを平面ヒータの代わりに加熱手段として用いたり、あるいは加熱・冷却の双方に用いることも可能である。後者の場合には、たとえば熱電冷却素子の電気回路を2系統設け、一方の回路には発熱が生ずる方向、他方の回路には吸熱が生ずる方向に電流を流す構成が可能である。ただし、熱電冷却素子は元来が局所的な冷却/加熱に適する素子であるため、大面積の加熱には平面ヒータを使用した方が熱効率は良い。
【0036】
本発明では、加工盤の作業面に被加工体を摺接させる際に、該作業面上に研磨剤を供給し、該被加工体を研磨してもよい。研磨剤は、従来公知のものをいずれも使用することができ、典型的にはコロイダルシリカが用いられる。
特に、加工盤の作業面上に研磨布を張設し、かつ該研磨布の表面に研磨剤を供給する研磨剤供給手段を設けることにより、被加工体の化学機械研磨を行う平面加工装置を提供することができる。かかる装置は、被加工体が半導体ウェーハである場合に特に有用である。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0038】
実施例1
本実施例では、加工盤の裏面と研磨ヘッドの被加工体保持部材の裏面の双方にそれぞれヒータと断熱材層とを備えた化学機械研磨装置の構成例について、図9を参照しながら説明する。
この装置は、作業面11a上に研磨布19が張設された円盤状の加工盤11と、被加工体14としてたとえば半導体ウェーハを保持する研磨ヘッド35とを平行に対向配置させたものであり、加工盤11の矢印A方向の回転運動と研磨ヘッド35の矢印B方向の回転運動とを組み合わせて、研磨スラリーの存在下で半導体ウェーハの表面を化学機械研磨するようになされたものである。
【0039】
上記加工盤11は、厚さ30mmのSUS鋼板からなる上半部11tと、同じく厚さ30mmのSUS鋼板からなる下半部11bとがボルト等の固定手段を用いて堅固に一体化されてなる直径700mmの円盤体である。上半部11tと下半部11bとの接合面の一部は空洞16とされ、冷却水流路とされている。
加工盤11は矢印Aで示されるごとく、下半部11bの中心に接続される脚部17の回りに図示されない駆動手段を用いて回転される。この脚部17は、上記空洞16に冷却水を導入するための冷却水配管18の通路を兼ねており、該冷却水配管18は該脚部17の中途部に設けられたロータリージョイント34を経由して外部へ導出される。上記空洞16の冷却面積は、作業面11aの面積の約
70%であり、ここに温度20℃、流量5リットル/分で冷却水を流した。
【0040】
下半部11bの裏面側にはヒータ12aを当接させ、該ヒータ12aはさらに断熱材層13aで被覆した。 ^
上記ヒータ12aとしては、たとえばニクロム線をシリコンゴム層で被覆し、100Vの印加電圧で0.6W/cmの発熱密度が得られるシリコンラバーヒータを複数枚並列に接続して使用した。ヒータ12の配線は、脚部17の内部を通り、該脚部17の中途部に設けられたロータリーコネクタ31を経由して外部へ導出され、変圧器32を介して電源33に接続されている。この変圧器32を操作することにより、ヒータ12aへの通電量、すなわち発熱量を容易かつ迅速に変化させることができる。
上記断熱材層13としては、一例として厚さ6mmのシリコンラバー発泡体を使用した。
【0041】
上記作業面11aの上に張設される研磨布19としては、ウレタン不織布を使用した。
上記加工盤11の上方中央には、研磨スラリーを供給するためのノズル45が開口されている。研磨スラリーとしては、たとえばコロイダルシリカが研磨布19の表面へ供給される。上記加工盤11のエッジ部から溢れた研磨スラリーを回収するためのドレン受け、回収された研磨スラリーを貯蔵するためのタンク、研磨スラリーをノズル45へ圧送するためのポンプの図示はいずれも省略したが、前掲の図15を参照しながら説明したとおりである。
【0042】
一方、上記研磨ヘッド35は、加圧室36の底面中央に被加工体保持部材として被加工体保持部材15と吸着治具40とを備えたものであり、被加工体14を真空排気により被加工体保持部材15上に吸着保持しながら、上記研磨布19に対しては該被加工体14を空気加圧により所定の圧力で押圧付勢するものである。
上記加圧室36の壁は研磨ヘッド35の骨格をなす部材であり、矢印Bで示されるごとく、その天井部中央に接続される脚部37の回りに図示されない駆動手段を用いて回転される。この脚部37は、上記加圧室36に空気を導入するための空気配管39、後述の吸着治具40に接続される真空配管41、後述のヒータ12bの配線の通路を兼ねている。
【0043】
上記被加工体保持部材15は、たとえば直径210mm、厚さ30mmの多孔質アルミナセラミック板であり、その一方の面が被加工体14を保持するための保持面15a、該保持面15aと反対側の面が吸着治具40の装着面とされる。上記吸着治具40は、たとえば直径210mm、厚さ2mmのSUS鋼板であり、空気の吸引路となる溝を多数有している。この溝は、上述の真空配管41に接続されており、この真空配管41は上記脚部37の内部を通り、その中途部に設けられたロータリージョイント38を経由して外部へ導出され、図示されない真空ポンプに接続されている。
【0044】
吸着治具40の背面には、ヒータ12bと断熱材層13bが設けられている。これらは、加工盤11の下半部11bに装着したものと同じである。上記ヒータ12bの配線もやはり上記脚部37の内部を通り、その中途部に設けられたロータリーコネクタ42を経由して外部へ導出され、変圧器43を介して電源44に接続されている。この変圧器43を操作することにより、ヒータ12bへの通電量、すなわち発熱量を容易かつ迅速に変化させることができる。
かかる構成により、本装置は加工盤11の単独熱変形、被加工体14の単独熱変形、被加工体保持部材15の単独熱変形のすべての制御を可能とするものである。
【0045】
実施例2
ここでは、実施例1で上述した装置の研磨ヘッド35側のヒータ12bのみを作動させて、該ヒータ12bへの印加電圧を変化させながら実際にシリコンウェーハの化学機械研磨を行った場合の、ウェーハ表面の変形量を調べた。
研磨サンプルとしたシリコンウェーハは、インゴットから切り出された後にラッピングを施された直径200mmのウェーハである。研磨条件は、一例として研磨圧力=300g/cm、摺接速度=45mm/分とし、研磨スラリーとしてはコロイダルシリカを用いた。ヒータ12bへの印加電圧は、0〜40Vの範囲で変化させた。研磨されたシリコンウェーハの変形量は、レーザ式形状測定機を用いて非接触式に測定した。
なお、加工盤11の作業面11aの表面プロファイル、およびヒータ12bへ通電していない場合の被加工体保持部材15の保持面15aの表面プロファイルは、いずれも平坦である。
【0046】
結果を図10に示す。この図は、被加工体保持部材15の裏面側のヒータ12bへの印加電圧(V)に対してウェーハ表面の変形量(μm)をプロットしたものである。ここで変形量とは、平面を基準として半導体ウェーハの端部がどの程度上昇したか、あるいは低下したかを示す数値であり、端部が中央部より高ければ中凹、端部が中央部より低ければ中凸、同じなら平坦である。
ヒータ12bへ通電しない場合には、半導体ウェーハは0.2μmの中凹形状となった。このことは、たとえ加工盤11の作業面11aと被加工体保持部材15の保持面15aの表面プロファイルが共に平坦であっても、半導体ウェーハの表面を必ずしも平坦に加工できないことを示している。しかし、ヒータ12bへの印加電圧を高めるにしたがい、被加工体保持部材15の保持面15aの表面プロファイルが平坦→中凹へと変化し、これに伴って半導体ウェーハの表面プロファイルが中凹→平坦→中凸へと変化することが明らかとなった。図10によれば、半導体ウェーハの表面プロファイルをちょうど平坦とできるような印加電圧は20V近傍にある。ちなみに、この時の被加工体保持部材15の保持面15aの表面プロファイルはわずかな中凹であった。
【0047】
実施例3
本実施例では、加工盤11の上半部11tをブロック一体化構成とし、その内部に形成された冷却水流路を併用して精度の高い作業面11aの表面プロファイル制御を可能とした化学機械研磨装置を用い、半導体ウェーハを研磨した。
まず、使用した装置の構成を図11に示す。この装置は、前掲の図8に示した加工盤11を、前掲の図9に示した化学機械研磨装置に組み込んだものに相当し、符号も共通である。
【0048】
ここで、上半部11tを構成する個々の剛性ブロック20は、縦50mm、横50mm、厚さ30mmのSUS鋼板の一方の面を加工することにより、20mm四方の四角柱状の脚部20aと、50mm四方の正方形のフランジ部20bとが形成され、さらに該脚部20aに横方向の貫通孔20cが穿設されたものである。この剛性ブロック20を直径700mm、厚さ30mmのSUS鋼板からなる下半部11bの上に密に多数隣接して配置し、個々にボルトを用いて固定した。これら多数の剛性ブロック20により構成された作業面11aを適当な加工工具を用いて平坦に仕上げ、さらに、シリコーンゴム系のシール材21でブロック間の隙間を埋め込んだ。
【0049】
上記構成によると、隣接する剛性ブロック20の脚部20aの隙間が空洞22となり、これが冷却水流路として使用されるが、冷却水による冷却面積は、作業面11aの面積の約170%となった。この空洞22に接続される冷却水配管18は、加工盤11の脚部17の内部を通って、その中途部に設けられたロータリージョイント34を経由して外部へ導出されている。
また、下半部11bに当接されるヒータ12bの配線も加工盤11の脚部17の内部を通り、その中途部に設けられたロータリーコネクタ31を経由して外部へ導出され、変圧器32を介して電源44に接続されている。
この他の部材については、図8および図11と符号も共通なので、詳しい説明は省略する。
【0050】
次に、上述のように構成された上半部11tの表面にウレタン不織布からなる研磨布19を張設し、研磨ヘッド35側のヒータ12bと加工盤11側のヒータ12aとを共にオフとし、空洞22には、20℃に温調された冷却水を5リットル/分の流速で循環させた。
この状態で、直径200mmのシリコンウェーハを研磨圧力=300g/cm、摺接速度=45m/分にて連続して研磨した。研磨後のウェーハ全面の厚さ分布を静電容量式平坦度測定器を用いて測定したところ、球面状の中凹形状となり、ウェーハの中央部は端部よりも0.35μm薄かった。
【0051】
そこで、ウェーハの厚さ分布を均等とするため、上記加工盤11のヒータ12aに10Vの電圧を印加し、直径200mmのシリコンウェーハの摺接領域において作業面11aを凹方向に0.35μm変形させた。なお、この印加電圧は、加工盤11の線膨張係数α、同じく加工盤11の熱伝導度Q、およびヒータの特性より理論的に算出した値である。印加電圧以外の条件は同じとして、再びシリコンウェーハを研磨した。研磨後のウェーハの表面を平坦度測定器を用いて測定したところ、中凹形状や中凸形状は発生せず、高度に平坦化されていることが確認され、本発明の効果が実証された。
【0052】
実施例4
本実施例では、加工盤の裏面と研磨ヘッドの被加工体保持部材の裏面の双方にそれぞれヒータと断熱材層とを備えたラップ機の構成例について、図12を参照しながら説明する。
この機械は、太陽ギヤ51と内周ギヤ54との双方に噛合されることにより遊星運動を行うキャリア64と、上記太陽ギヤ51と同軸的に配され独自の回転運動を行う加工盤57とを近接対向させ、上記キャリア64に装着された被加工体14を上記定盤57の表面に摺接させることにより、該被加工体14のラッピングを行うようになされたものである。
【0053】
上記太陽ギヤ51は、モータ53に駆動される回転軸52の上端部に一体的に取り付けられている。上記内周ギヤ54は、上記加工盤57の外周を包囲する枠体55の上端部に形成されており、この枠体55は上記モータ53とは独立に制御されるモータ56により回転駆動される。
加工盤57は、直径1400mm、厚さ70mmの球状黒鉛鋳鉄からなる円盤体であり、その裏面側中央には脚部58が上記回転軸52を包囲するごとく接続され、該脚部58の末端にてモータ53により独立に回転駆動されるようになされている。また、加工盤57の表面には余分な研磨スラリーを周縁部へ誘導するための多数の溝59が刻設されている。研磨スラリーの循環再利用系統については従来と同じなので、図示は省略する。
さらに、加工盤57の裏面にはヒータ12aを当接させ、該ヒータ12aはさらに断熱材層13aで被覆した。これらヒータ12aと断熱材層13aは、前述の実施例1や実施例3で使用したものと同じである。ヒータ12aからの配線は、加工盤57の脚部58の内部を通過し、その中途部に設けられたロータリーコネクタ61を経由して外部へ導出され、変圧器62を経て電源63に接続されている。
【0054】
被加工体14は、キャリア64の底面の開口65に嵌め込まれて保持されている。被加工体14の背面側、すなわち被加工面と反対側の面にはヒータ12bが当接され、このヒータ12bはさらに断熱材層13bで被覆されている。断熱剤層13bの裏面側には支持部材66が配され、この内部に上記ヒータ12bからの配線を通過させ、ロータリーコネクタ67を経由して外部へ導出させるようになされている。外部へ導出された配線は、変圧器68を経て電源69に接続される。
かかる構成により、本ラップ機は加工盤57の単独熱変形、被加工体14の単独熱変形、あるいは加工盤57と被加工体14の同時熱変形の3種類の制御を可能とするものである。
【0055】
実施例5
ここでは、実施例4で上述したラップ機の加工盤57側のヒータ12aのみを作動させて、該ヒータ12aへの印加電圧を変化させながら加工盤57の変形に関する基礎的な検討を行った。
ここでは、ヒータ12aへの印加電圧0〜10Vの範囲で変化させた場合の加工盤57の変形量を、レーザ式形状測定機を用いて非接触式に測定した。なお、ヒータ12aに通電していない場合の加工盤57の作業面の初期表面プロファイルは、直径1400mmの加工盤57全体で10μmの中凸である。
【0056】
結果を図13に示す。この図は、加工盤57の裏面側のヒータ12aへの印加電圧(V)に対して加工盤57の作業面の変形量(μm)をプロットしたものである。ここで、変形量とは、平面を基準として加工盤57の端部がどの程度上昇したか、あるいは低下したかを示す数値であり、端部が中央部より高ければ中凹、端部が中央部より低ければ中凸、同じなら平坦である。
図より、ヒータ12aへの印加電圧を高めるにしたがい、加工盤57の表面プロファイルが中凸→平坦→中凹へと変化することが明らかとなった。この変化の傾向は、前述の理論式(I)に示した2次関数によく一致していることが確認された。
【0057】
次に、上述のラップ機を用いて実際に加工を行った。
被加工体14は、直径600mm、厚さ20mmのアルミナセラミックからなる肉厚板体であり、その片方の表面プロファイルを5μmの凸球面状に仕上げることを目標とする。
研磨スラリーLとしては、SiC(シリコンカーバイド)砥粒を防錆剤、界面活性剤等の添加剤と共に水に分散させたものを用いた。
研磨荷重は、被加工体14、ヒータ12b、断熱剤層13b、支持部材66およびその付属品の合計自重のみとした。
【0058】
加工盤57の裏面側のヒータ12aへの印加電圧は、該加工盤57の表面が被加工体14の目標形状と同一曲率を持つ凹球面状となるように、図13から求めた。すなわち、一般に円盤体の変形量は直径の二乗に比例するので、直径600mmの被加工体14が5μm変形した時の曲率は、直径1400mmの加工盤57が27〔=5×(1400/600)〕μmだけ変形した時の曲率に等しい。しかも、被加工体14の目標プロファイルが凸球面状であれば、これに対応する加工盤57の表面プロファイルは凹球面状であるから、変形量の符号はマイナスである。図13より、加工盤57の変形量が−27μmとなる時の印加電圧は、10Vである。
【0059】
以上の条件により被加工体14をラッピングしたところ、表面プロファイルは7μmの凸球面状となり、目標を2μm上回っていた。この差異の原因としては、加工盤57の表面プロファイル以外に、溝59に沿って流れる研磨スラリーLやその他の要因による蓄熱効果が考えられた。したがって、実際に必要な加工盤57の変形量は、被加工体14の目標変形量を便宜的に3(=5−2)μmと考えて算出できることになり、−16μm〔=−3×(1400/600)〕である。この変形量は、図13より、印加電圧8Vで達成できる。
そこで、印加電圧を8Vに低下させた他は同じ条件で再度ラッピングを行ったところ、今度は被加工体14について目標どおり5μmの凸球面状の表面プロファイルを得ることができた。
このように、本発明では熱的制御により加工盤の表面プロファイルを極めて容易に変更することができ、従来のように加工工具を用いた煩雑な調整作業を繰り返す必要が全くない。
【0060】
以上、本発明を5例の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
たとえば、上述の実施例では加工盤側にも、また研磨ヘッドやキャリアの側にもヒータと断熱材層を備え、いずれか一方の側のヒータに通電した場合の加工例について述べたが、もちろん双方のヒータに通電して目的とする被加工体の加工形状に最適な表面プロファイルを得るようにしてもよい。さらに、ヒータは前掲の図9,図11,図12のように必ずしも加工盤側と研磨ヘッドまたはキャリア側の双方に備えられている必要はなく、いずれか一方に備えられていてもよい。本発明の平面加工装置で一度に加工できる被加工体の数は1枚に限られず、研磨ヘッドやキャリアに複数枚の被加工体を装着できるものであってもよい。
【0061】
さらに、本発明の平面加工装置は、必ずしも上述のような相対的に大型の加工盤と小型の研磨ヘッドとを組み合わせたものである必要はない。たとえば、2枚の大型の加工盤の間に被加工体を保持して両面研磨を行うような装置についても、これらの加工盤の少なくとも一方にヒータと断熱材層を設置し、同様の表面プロファイルの最適化を行うことができる。
この他、装置構成、各部の寸法や形状や仕様、被加工体の種類、加工条件については、適宜選択、変更、組合せが可能である。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の平面加工方法および平面加工装置では加工盤の作業面、被加工体、または被加工体を保持する研磨ヘッドの被加工体保持部材の表面プロファイルの少なくともいずれかを熱的に制御するので、従来のように被加工体の加工結果に応じてたとえば加工盤の表面プロファイルを専用の加工工具を用いて創り直す等の手間や時間を省くことができ、加工精度と生産性の向上に大きく寄与するものである。
上記の熱的な制御は、加熱手段への通電量の調節を通じて迅速かつ簡便に行うことができる。被加工体については、それが肉厚板体であれば直接に、肉薄板体であれば被加工体保持部材を通じて間接に加熱を行ってその表面プロファイルを変化させることができる。薄い被加工体としては、半導体ウェーハを用いるプロセスが実用価値の高いものである。
【0063】
冷却手段による冷却を併用した場合には、制御パラメータを増やしてより精密な制御を行うことが可能となる。装置構成上は、加工盤を上半部と下半部との接合一体化構成とし、これらの接合面の一部に空洞を設けてこれを冷却水流路として使用するものが好適である。
また、上半部を互いに弾性材料層を介して隣接される多数の剛性ブロックの集合体とし、かつこれらの剛性ブロックを個別に下半部に固定しておけば、加工時に発生する摩擦熱による上半部の熱変形を最小限に抑え、下半部に意図的に与えられた熱変形のみをほぼ上半部に反映させることができ、制御の精度を向上させる上で有効である。また、ブロック間の隙間を冷却水流路として利用すれば、冷却面積を増大させることも可能である。
被加工体を作業面に摺接させる際に研磨剤を供給すれば、研磨効率を高めることができる。被加工体と研磨剤の組み合わせによっては、メカノケミカル作用による化学機械研磨も可能となり、半導体ウェーハの研磨を行う場合に特に好適である。
【0064】
本発明は、被加工体について中凸、中凹といった所望の表面プロファイルを得る加工はもちろん、半導体ウェーハの研磨のように高度な平坦性が要求される平面加工にも、既存の製造設備や作業手順を大きく変更することなく対応することが可能であり、その産業上の価値は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】円盤体の熱変形モデルを示す模式的断面図である。
【図2】加工盤の作業面とは反対側の面にヒータと断熱材層を配した構成を示す模式的断面図である。
【図3】被加工体の被加工面とは反対側の面にヒータと断熱材層を配した構成を示す模式的断面図である。
【図4】被加工体を保持する被加工体保持部材の裏面にヒータと断熱材層を配した構成を示す模式的断面図である。
【図5】初期状態が平坦な加工盤の作業面の表面プロファイルの変化に伴う被加工体の加工形状の変化を示す模式的断面図であり、(a)はヒータの発熱がない場合、(b)はヒータの発熱が小さい場合、(c)はヒータの発熱が大きい場合をそれぞれ表す。
【図6】初期状態が中凸である加工盤の作業面の表面プロファイルの変化に伴う被加工体の加工形状の変化を示す模式的断面図であり、(a)はヒータの発熱がない場合、(b)はヒータの発熱がある場合をそれぞれ表す。
【図7】上半部と下半部との接合面の一部に冷却水流通用の空洞を備える加工盤の構成例を示す模式的断面図である。
【図8】上半部が複数の剛性ブロックの集合体より構成される加工盤の構成例を示す模式的断面図である。
【図9】本発明の平面加工装置の一構成例として、加工盤の裏面と被加工体保持部材の裏面にヒータと断熱材層とがそれぞれ配された化学機械研磨装置を示す模式的断面図である。
【図10】図9の化学機械研磨装置を用いたシリコンウェーハの研磨において、被加工体保持部材の保持板裏のヒータへの印加電圧と、ウェーハの表面の変形量との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の平面加工装置の他の構成例として、加工盤の上半部が複数の剛性ブロックの集合体からなる化学機械研磨装置を示す模式的断面図である。
【図12】本発明の平面加工装置のさらに他の構成例として、加工盤の裏面と被加工体の裏面にヒータと断熱材層とがそれぞれ配されたラップ機を示す模式的断面図である。
【図13】図12のラップ機の加工盤裏のヒータへの印加電圧と、加工盤の変形量との関係を示すグラフである。
【図14】従来の典型的なラップ機の構成例を示す図であり、(a)は上面図、(b)はそのX−X線断面図である。
【図15】従来の典型的な化学機械研磨装置の構成例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
11,57 加工盤
11a 作業面
11t 上半部
11b 下半部
12,12a,12b ヒータ
13,13a,13b 断熱材層
14 被加工体
15 被加工体保持部材
15a 保持面
16,22 空洞
18 冷却水配管
19 研磨布
20 剛性ブロック
21 シール材
31,42,61,67 ロータリーコネクタ
32,43,60,68 変圧器
33,44,63,69 電源
34,38 ロータリージョイント
35 研磨ヘッド
64 キャリア

Claims (2)

  1. 作業面上に研磨布が張設された円盤状の加工盤と、被加工体を保持する研磨ヘッドとを平行に対向配置し、これら加工盤と研磨ヘッドを互いに逆向きに回転させ、研磨スラリーの存在下で、被加工体の表面を化学機械研磨する平面加工装置において、
    前記加工盤は、いずれも剛性板体である上半部と下半部を一体化した円盤体であり、上半部と下半部との接合面の一部は、冷却水が循環供給される空洞として形成され、下半部の裏面側に第1の平面状ヒータと、該平面状ヒータの裏面側に断熱材層とが設けられ、かつ前記第1の平面状ヒータは、変圧器を介して電源に接続されて前記変圧器の操作により発熱量が制御自在とされ、
    前記研磨ヘッドは、加圧室の底面中央に被加工体保持部材と、剛性板体である吸着治具とを備え、被加工体を被加工体保持部材上に真空吸着保持しながら、前記研磨布に対しては被加工体を空気加圧により押圧付勢するものであり、
    前記被加工体保持部材は、一方の面が被加工体を保持するための保持面、反対側の面が吸着治具の装着面とされ、
    前記吸着治具は、真空配管に接続されて空気の吸引路となっている溝を多数有し、該吸着治具の背面に第2の平面状ヒータと、該平面状ヒータの背面に断熱材層とが設けられ、かつ前記第2の平面状ヒータは、変圧器を介して電源に接続されて前記変圧器の操作により発熱量が制御自在とされ、
    前記構成により前記加工盤の熱変形、前記被加工体保持部材の熱変形、前記被加工体の熱変形のすべての制御が可能となっていることを特徴とする平面加工装置。
  2. 請求項1に記載の平面加工装置による半導体ウェーハの平面加工方法であって、該平面加工時に、前記第1の平面状ヒータの発熱量、前記第2の平面状ヒータの発熱量、前記加工盤に形成された前記空洞に供給する冷却水の温度及び/又は循環量のうち、いずれか少なくとも一つを制御することにより、前記加工盤の作業面の表面プロファイル、前記被加工体の表面プロファイル、前記研磨ヘッドの被加工体保持部材の表面プロファイルのいずれか少なくとも一つを熱的に制御することを特徴とする平面加工方法。
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