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JP3592282B2 - 磁気抵抗効果膜、およびそれを用いたメモリ - Google Patents
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JP3592282B2 - 磁気抵抗効果膜、およびそれを用いたメモリ - Google Patents

磁気抵抗効果膜、およびそれを用いたメモリ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類金属と遷移金属を主成分とするフェリ磁性体を用いた磁気抵抗効果膜に関し、特に、比較的大きな磁気抵抗効果を示す磁気抵抗効果膜とこのような磁気抵抗効果膜を用いたメモリとに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、固体メモリである半導体メモリは、情報機器に多く用いられており、DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)、FeRAM(強誘電体ランダムアクセスメモリ)、フラッシュEEPROM(電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ)など、その種類も様々である。これら半導体メモリの特性は一長一短であり、現在の情報機器において要求される仕様のすべてを満たすメモリは存在しない。例えば、DRAMは、記録密度が高く書き換え可能回数も多いが、揮発性であり電源を切るとその保持している情報は消えてしまう。一方、フラッシュEEPROMは、不揮発性ではあるが、情報の消去に要する時間が長く、情報の高速処理には不向きである。
【0003】
上記のような半導体メモリの現状に対して、磁気抵抗効果を用いたメモリ(MRAM;磁気ランダムアクセスメモリ)は、不揮発性であって、書き込み時間、読み出し時間、記録密度、書き換え可能回数、消費電力などの点において、多くの情報機器から求められる仕様をすべて満たすメモリとして有望である。特にスピン依存トンネル磁気抵抗(TMR;Tunnel Magneto−Resistance)効果を利用したMRAMは、大きな読み出し信号が得られることから、高記録密度化あるいは高速読み出しに有利であり、近年の研究報告においてMRAMとしての実現性が実証されている。
【0004】
MRAMの素子として用いられる磁気抵抗効果膜の基本構成は、非磁性層を介してその両側に磁性層が隣接して形成されたサンドイッチ構造である。非磁性層として良く用いられる材料として、CuやAlが挙げられる。磁気抵抗効果膜において非磁性層にCuなどのような導体を用いたものを巨大磁気抵抗効果(GMR;Giant Magneto−Resistance)膜といい、Alなどの絶縁体を用いたものをスピン依存トンネル磁気抵抗効果(TMR)膜という。一般に、TMR膜は、GMR膜に比べて大きな磁気抵抗効果を示す。
【0005】
図6(a),(b)は、非磁性層を介して面内磁化膜である2つの磁性層が積層した構成を有する磁気抵抗効果膜を示しており、各磁性層での磁化の方向が矢印で示されている。図6(a)に示すように2つの磁性層の磁化方向が平行であると、磁気抵抗効果膜の電気抵抗(一方の磁性層と他方の磁性層の間の電気抵抗)は相対的小さく、図6(b)に示すように磁化方向が反平行であると、電気抵抗は相対的大きくなる。したがって、一方の磁性層をメモリ層、他方を検出層とし、上記の性質を利用することで、情報の読み出しが可能である。例えば非磁性層12の図示上部に位置する磁性層13をメモリ層、下部に位置する磁性層11を検出層とし、メモリ層(磁性層13)の磁化方向が右向きの場合を『1』、左向きの場合を『0』とする。
【0006】
図7(a)に示すように両磁性層11,13の磁化方向がともに図示右向きの場合、磁気抵抗効果膜の電気抵抗は相対的に小さく、図7(b)に示すように検出層11の磁化方向が図示右向きでかつメモリ層13の磁化方向が図示左向きであると電気抵抗は相対的に大きい。同様に、図7(c)に示すように検出層11の磁化方向が左向きでかつメモリ層13の磁化方向が右向きであると電気抵抗は相対的に大きく、図7(d)に示すように両磁性層11,13の磁化方向が左向きの場合には電気抵抗は相対的に小さい。つまり、検出層11の磁化方向が右向きに固定されている場合であれば、電気抵抗が相対的に大きければ、メモリ層13には『0』が記録されていることになり、電気抵抗が相対的に小さければ、『1』が記録されていることになる。あるいは、検出層11の磁化方向が左向きに固定されている場合であれば、電気抵抗が相対的に大きければ、メモリ層13には『1』が記録されていることになり、電気抵抗が相対的に小さければ、『0』が記録されていることになる。
【0007】
そこで、検出層11の保磁力が相対的に大きくメモリ層13の保磁力が相対的に小さくなるように各磁性層11,13の組成を選択し、検出層11を一方向に磁化した上で、検出層11の磁化反転が起こらない程度の磁化をメモリ層13に加えてメモリ層13の磁化の方向を変化させることにより、磁気抵抗効果膜に情報を記録することが可能になり、また、磁気抵抗効果膜の電気抵抗を検出することによって、記録された情報の読み出しを行なえることになる。
【0008】
MRAMの記録密度を高くするために磁気抵抗効果膜の素子サイズを小さくしていくと、磁性層として面内磁化膜を使用したMRAMでは、反磁界あるいは素子端面の磁化のカーリングといった影響から、情報を保持できなくなるという問題が生じる。この問題を回避するためには、例えば磁性層の形状を長方形にすることが挙げられるが、この方法では素子サイズが小さくできないために記録密度の向上があまり期待できない。
【0009】
そこで、本出願人は、既に、例えば特開平11−213650で述べているように、垂直磁化膜を用いることにより上記問題を回避しようとすることを提案した。垂直磁化膜を利用した場合には、素子サイズが小さくなっても反磁界は増加しないので、面内磁化膜を用いたMRAMよりも小さなサイズの磁気抵抗効果膜が実現可能である。
【0010】
垂直磁化膜を用いた磁気抵抗効果膜では、面内磁化膜を用いた磁気抵抗効果膜と同様に、2つの磁性層の磁化方向が平行であると磁気抵抗効果膜の電気抵抗は相対的に小さく、磁化方向が反平行であると電気抵抗は相対的に大きくなる。非磁性層22の上部に位置する磁性層23をメモリ層、下部に位置する磁性層21を検出層とし、メモリ層23の磁化方向が上向きの場合を『1』、下向きの場合を『0』とする。図8(a)に示すように両磁性層21,23の磁化方向が上向きの場合、磁気抵抗効果膜の電気抵抗は相対的に小さく、図8(c)に示すように検出層21の磁化方向が下向きでかつメモリ層23の磁化方向が上向きであると電気抵抗は相対的に大きくなる。同様に、図8(b)に示すように検出層21の磁化方向が上向きでかつメモリ層23の磁化方向が下向きであると電気抵抗は相対的に大きくなり、図8(d)に示すように両磁性層21,23の磁化方向が下向きの場合には電気抵抗は相対的に小さくなる。つまり、検出層21の磁化方向が上向きに固定されている場合には、電気抵抗が相対的に大きければメモリ層23には『0』が記録されていることになり、電気抵抗が相対的に小さければ『1』が記録されていることになる。あるいは、検出層21の磁化方向が下向きに固定されている場合であれば、電気抵抗が相対的に大きければメモリ層23には『1』が記録されていることになり、電気抵抗が相対的に小さければ『0』が記録されていることになる。
【0011】
このような垂直磁化膜を使用した磁気抵抗素子において、垂直磁化膜として用いられる材料としては、例えば、Gd,Dy、Tb等の希土類金属から選ばれる少なくとも1種類の元素とCo,Fe,Ni等の遷移金属から選ばれる少なくとも1種類との元素の合金膜や人工格子膜、あるいは、Co/Pt等遷移金属と貴金属の人工格子膜、CoCr等の膜面垂直方向の結晶磁気異方性を有する合金膜などが挙げられる。これらの材料の中で、希土類金属と遷移金属の合金膜は、角型比が1である磁化曲線を示し、磁界を印加した場合に急峻な磁化反転を生じること、さらに作成が容易であることから、メモリ素子として用いる磁気抵抗効果膜に最適である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで磁気抵抗効果膜における磁気抵抗変化率は、非磁性層(トンネル障壁層)に接している材料に強く依存する。これまでの研究において、FeやCoあるいはそれらの合金は、大きな磁気抵抗変化率を示す材料であることが知られている。しかし、上記のように非磁性層に接する磁性体として希土類金属と遷移金属からなる磁性体を用いた磁気抵抗効果膜について本発明者らが鋭意検討した結果、磁気抵抗変化率はFeやCoあるいはそれらの合金を用いた場合よりも小さくなってしまうことが分かった。その原因は、希土類金属が非磁性層に接して存在することであると考えられる。つまり合金中の希土類金属原子は、その原子構造から磁気抵抗効果にはほとんど寄与しないと予想され、トンネル障壁層との界面に存在する希土類金属原子を伝導する電子はスピン依存トンネリングをしないので、磁気抵抗効果膜をマクロに見た磁気抵抗変化率は低いものとなる。
【0013】
本発明は、この点に鑑み、希土類金属と遷移金属を主成分とするフェリ磁性体を用いた磁気抵抗効果膜において、比較的大きな磁気抵抗効果を示す磁気抵抗効果膜、さらにはそのような磁気抵抗効果膜を用いたメモリを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気抵抗効果膜は、第1及び第2の磁性層と、第1及び第2の磁性層に挟まれたトンネル障壁層とを有し、第1及び第2の磁性層の少なくとも一方が希土類金属と遷移金属とを主成分とするフェリ磁性層である磁気抵抗効果膜において、フェリ磁性層のトンネル障壁層との界面付近に存在する希土類金属が酸化しており、酸化した希土類金属が島状または網状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
Gd,Dy,Tb等の希土類金属は酸化されやすいという性質を有し、かつこれら酸化物は単体の原子よりも高い電気抵抗率を示すので、フェリ磁性層のトンネル障壁層との界面付近の希土類金属を酸化させることにより、実効的に磁気抵抗変化率を高めることが可能となる。
【0016】
本発明において、「希土類金属と遷移金属とを主成分とするフェリ磁性層」とは、希土類金属と、希土類金属以外の遷移金属とを主成分とする磁性層であって、フェリ磁性を示す磁性層のことである。本発明においては、希土類金属としては、例えば、Gd,Dy,Tbからなる群から選ばれた1種類以上の元素を好ましく用いることができ、また、(希土類金属以外の)遷移金属としては、鉄族元素すなわちFe,Co,Niからなる群の中から選ばれる1種類以上の元素を好ましく用いることができる。
【0017】
このような磁気抵抗効果膜を製造する方法としては、以下のようなものがある。
【0018】
まず、希土類金属と遷移金属を主成分とするフェリ磁性層を形成し、その表面にトンネル障壁層を成膜する。その後、トンネル障壁層表面から酸化処理を施し、フェリ磁性層の希土類金属原子の中でトンネル障壁層との界面付近に存在するものを選択的に酸化させる。希土類金属は、Fe,Co,Ni等の遷移金属よりも酸化されやすいため、希土類金属と遷移金属の合金を酸化処理すると、希土類金属は容易に選択的に酸化される。酸化方法としては、プラズマ酸化法や自然酸化法等いくつかが挙げられるが、いずれの方法も使用可能である。また、フェリ磁性層形成後にトンネル障壁層を成膜するのではなく、酸化処理することによりトンネル障壁層となりうる材料、例えばAl等を成膜し、その後の酸化処理により、希土類金属の選択的な酸化と同時にトンネル障壁層を形成することも可能である。さらに希土類金属原子を酸化するために、トンネル障壁層を形成する前にフェリ磁性層の表面に対して酸化処理を施し、その後、トンネル障壁層を形成してもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の一形態の磁気抵抗効果膜を模式的に示した断面図である。
【0020】
図1に示した磁気抵抗効果膜は、トンネル障壁層113を挟んで図示上方に磁性層114、図示下方にフェリ磁性層112を設けた構成のものである。ここでフェリ磁性層112は、希土類金属と遷移金属とを主成分とするフェリ磁性体によって構成されている。フェリ磁性層112において、トンネル障壁層113との界面付近に存在する希土類金属原子は酸化し、層115となっている。ここで希土類金属酸化物は電気抵抗率が高いことから、トンネル障壁層11と層115が接している部分は実効的にトンネル障壁層11が厚くなっていて、トンネル障壁層113の図示下表面には一面に遷移金属原子が接している状態であると考えることができる。したがって、トンネル障壁層113をトンネルする電子は遷移金属原子のスピン状態に依存してトンネリングすることになり、酸化していない希土類金属がトンネル障壁層に接している場合に比べると、磁気抵抗変化率は増加すると考えられる。
【0021】
ここで、希土類金属が酸化している層115は、フェリ磁性層112とトンネル障壁層113の界面に一様に形成されていてもよいが、図1に示すように、島状あるいは網状に形成されていてもよい。また層115は、フェリ磁性層112の形成後、トンネル障壁層113を形成する前に、フェリ磁性層112の表面に対して酸化処理を行うことによって形成してもよいし、あるいは、フェリ磁性層112及びトンネル障壁層113を順次形成した後に、トンネル障壁層113の表面側から酸化処理を行うことにより、トンネル障壁層11との界面付近のフェリ磁性層112の希土類金属を酸化させて形成してもよい。
【0022】
フェリ磁性層112としては、Gd,Dy,Tb等の希土類金属から選ばれる少なくとも1種類の元素とCo,Fe,Ni等の遷移金属から選ばれる少なくとも1種類の元素を主成分とする合金が好適に用いられる。また、フェリ磁性層112は、面内磁化膜であっても垂直磁化膜であってもよく、いずれの場合であっても本発明の効果は同様に得られるものである。
【0023】
図1に示した例では、トンネル障壁層113の下側に位置する磁性層がフェリ磁性層であるとしたが、本発明においては、トンネル障壁層113の両側の磁性層をそれぞれフェリ磁性層とし、これらのフェリ磁性層とトンネル障壁層113との界面付近のそれぞれにおいて希土類金属を酸化させてもよい。
【0024】
さらに、フェリ磁性層112とトンネル障壁層113の界面に、フェリ磁性層112よりも大きなスピン分極率を有する磁性体を形成することにより、より大きな磁気抵抗変化率を得ることが可能である。このスピン分極率の大きな磁性体の形状は、膜状、島状あるいは網状のいずれであってもよく、これらのいずれの場合においても比較的大きな磁気抵抗変化率が得られる。
【0025】
また、本発明の磁気抵抗効果膜をメモリ素子とし、この磁気抵抗効果膜(メモリ素子)に対して情報を記録する手段と、磁気抵抗効果膜に記録された情報を読み出す手段を備えることによって、読み出し信号の大きなメモリを構成することが可能である。ここで、情報を記録する手段としては、配線に電流を流すことで生じる磁界が好適に用いられ、記録された情報を読み出す手段には、メモリ素子に一定電流を流したときのこのメモリ素子の両端の電圧を検出する回路が好適に用いられる。
【0026】
【実施例】
次に、本発明の磁気抵抗効果膜について、実施例に基づいてさらに詳しく説明する。
【0027】
(実施例−1)
図2はこの実施例−1で作成した磁気抵抗効果膜の断面を示している。磁気抵抗効果膜を形成するための基板としてSi(シリコン)基板100を用い、このSi基板100上に、フェリ磁性層112として10nmの膜厚のGd20(Fe60Co4080膜、トンネル障壁層113として1.5nmの膜厚のAl(酸化アルミニウム)膜をスパッタにより順次形成し、その後、真空チャンバー内に酸素ガスを導入し、Al膜表面を介してフェリ磁性層112の表面(すなわちフェリ磁性層112のトンネル障壁層113側の界面)のプラズマ酸化を行い、フェリ磁性層112のトンネル障壁層113側の界面の希土類金属を酸化させて、希土類金属が酸化している層115を形成した。プラズマ酸化時の投入パワーは5Wで、酸化時間は40秒であった。その後、十分に真空引きを行い、磁性層114として10nmの膜厚のTb20(Fe50Co5080膜をスパッタにより形成し、さらに、保護膜116として膜厚2nmのPt膜をスパッタにより形成した。Pt膜は、各磁性層の酸化等の腐食を防ぐのに有効である。
【0028】
次に、このようにして得られた多層膜の上部に1μm角のレジスト膜を形成し、ドライエッチングによってレジストに覆われていない部分の磁気抵抗効果膜を除去した。エッチング後、25nmの膜厚のAl膜を成膜し、さらにレジストおよびその上部のAl膜を除去し、上部電極とフェリ磁性層112(Gd20(Fe60Co4080膜)との間の電気絶縁を行うための絶縁膜121を形成した。その後、リフトオフ法によって上部電極122をAl膜により作成し、上部電極122に覆われていない部分のAl膜を一部除去して測定回路を接続するための電極パットとした。
【0029】
このようにして作成された磁気抵抗効果膜に対し、上部電極122と下部電極(Si基板100)との間に定電流電源を接続し、フェリ磁性層112(Gd20(Fe60Co4080膜)と磁性層114(Tb20(Fe50Co5080膜)の間のトンネル障壁層113(Al膜)を電子がトンネルするように、一定電流を流した。この状態で、磁気抵抗効果膜の膜面に垂直方向に磁界を印加しその大きさと方向を変えることにより、磁気抵抗効果膜の電圧の変化(磁気抵抗曲線)を測定した。この測定結果によると磁気抵抗変化率は約30%であった。
【0030】
さらに得られた磁気抵抗効果膜についてXPS(X線光電子分光)分析を行った結果、トンネル障壁層113であるAl膜とフェリ磁性層112との界面付近でGdのピークが観察され、この界面付近のGd原子が酸化されていることが明らかとなった。
【0031】
(実施例−2)
フェリ磁性層112として10nmの膜厚のDy21(Fe50Co5079膜を用い、磁性層114として10nmの膜厚のGd20(Fe60Co4080膜を用いた以外は実施例−1と同様にして、磁気抵抗効果膜を作成した。実施例−1と同様にこの磁気抵抗効果膜の磁気抵抗曲線を測定したところ、磁気抵抗変化率は29%であった。また、得られた磁気抵抗効果膜についてXPS分析を行った結果、トンネル障壁層113であるAl膜とフェリ磁性層112との界面付近でDyのピークが観察され、この界面付近のDy原子が酸化されていることが明らかとなった。
【0032】
(実施例−3)
実施例−1の磁気抵抗効果膜においてフェリ磁性層112とトンネル障壁層113の界面にFe60Co40が挿入された膜構成の磁気抵抗効果膜とした。このFe60Co40層は、フェリ磁性層112を一様に覆う膜形状ではなく島形状をしており、1つの島の大きさは直径1nm〜2nm程度であった。この磁気抵抗効果膜の磁気抵抗曲線を測定したところ、フェリ磁性層112とトンネル障壁層113の界面に存在するFe60Co40はフェリ磁性層112との交換結合力によって磁化方向が膜面垂直方向に向いていることがうかがわれ、また、磁気抵抗変化率は約50%であった。得られた磁気抵抗効果膜についてXPS分析を行った結果、Fe60Co40層とフェリ磁性層112との界面付近でGdのピークが観察され、この界面付近のGd原子が酸化されていることが明らかとなった。
【0033】
(実施例−4)
Si基板(Siウエハ)上にトランジスタや配線層等を形成した後に実施例−3で用いた膜構成の磁気抵抗効果膜を成膜し、さらにそれを3行3列の9つのメモリ素子に加工し、メモリセルアレイを構成した。メモリ素子への情報の記録は、導線に電流を流しそれにより発生する磁界によって行われる。記録磁界印加用の電気回路を図3に、読み出し回路を図4に示す。図3及び図4は、Si基板を上から見た図に対応し、磁気抵抗効果膜での磁化方向は、紙面に垂直な方向となる。実際には、図3及び図4に示す構成は、多層配線技術によってメモリセルアレイ内に重畳するように形成されるものである。
【0034】
選択したメモリ素子(磁気抵抗効果膜)の磁性膜の磁化を選択的に反転させる方法について説明する。
【0035】
図3に示すように、メモリセルアレイには9個のメモリ素子(磁気抵抗効果膜)101〜109が3×3に配列しており、メモリ素子の各行を挟むように、行方向に伸びる第1の書き込み線311〜314が設けられている。これらの書き込み線311〜314の図示左端は共通に接続し、図示右端には、それぞれ、これら書き込み線311〜314を電源411に接続するためのトランジスタ211〜214と、配線300に接続するためのトランジスタ215〜218とが設けられている。メモリ素子の各列を挟むように、列方向に伸びる第2の書き込み線321〜324が設けられている。これらの書き込み線321〜324の図示上端は共通に接続し、図示下端には、書き込み線321〜324をそれぞれ接地するためのトランジスタ219〜222と、配線300にそれぞれ接続するためのトランジスタ223〜226が設けられている。
【0036】
ここで例えば、磁気抵抗効果膜105の磁化を選択的に反転させる場合、トランジスタ212,217,225,220を導通状態にし、その他のトランジスタは遮断状態にしておく。このようにすると電流は書き込み線312,313,323,322を流れ、それらの周りに磁界を誘起する。この状態では、磁気抵抗効果膜105にのみ4本の書き込み線から同方向の磁界が印加され、他の磁気抵抗効果膜には、同方向の磁界は2本の書き込み線からしか印加されないか、さらには逆方向の磁界が印加されて実効的に磁界が相殺されるかして、磁気抵抗効果膜105ほどには磁界が印加されないことになる。そこで、4本の書き込み線から同方向に磁界が印加されたときの合成磁界がメモリ素子(磁気抵抗効果膜)の磁性膜の磁化反転磁界よりもわずかに大きくなるように調整しておけば、選択的に磁気抵抗効果膜105の磁化のみ反転させることが可能である。また、ここで述べたのとは上下逆方向の磁界を磁気抵抗効果膜105に印加する場合は、トランジスタ213,216,224,221を導通状態にし、その他のトランジスタは遮断状態にしておく。このようにすると電流は、書き込み線312,313,323,322を上述とは逆の方向に流れ、磁気抵抗効果膜105へは逆方向の磁界が印加される。したがって、磁気抵抗効果膜105には二値の情報のうち上述とは異なるものが記録されることになる。
【0037】
次に読み出し時の動作を説明する。図4に示すように、各メモリ素子(磁気抵抗効果膜)101〜109の一端には、それぞれ直列にそのメモリ素子を接地するためのトランジスタ231〜239が形成されている。ビット線331〜333は行ごとに設けられており、ビット線331〜333の図示右端には、それぞれ、固定抵抗150を介してこれらビット線を電源412に接続するためのトランジスタ240〜242が設けられている。ビット線331は磁気抵抗効果膜101〜103の他端に接続し、ビット線332は磁気抵抗効果膜104〜106の他端に接続し、ビット線333は磁気抵抗効果膜107〜109の他端に接続する。ビット線331〜333の図示左端は共通接続されて、これらビット線の電位と基準電圧Refとの差を増幅するセンスアンプ500に接続している。さらに、ワード線341〜343が列ごとに設けられており、ワード線341はトランジスタ231,234,237のゲートに接続し、ワード線342はトランジスタ232,235,238のゲートに接続し、ワード線343はトランジスタ233,236,239のゲートに接続している。
【0038】
ここで、例えば、磁気抵抗効果膜105に記録された情報を読み出すことを考える。この場合、トランジスタ235,241を導通状態とする。すると、電源412、固定抵抗150及び磁気抵抗効果膜105が直列に接続された回路となる。したがって、電源電圧は、固定抵抗150の抵抗値と磁気抵抗効果膜105の抵抗値との割合でそれぞれの抵抗に分圧される。電源電圧は固定されているので、磁気抵抗効果膜の抵抗値が変化するとそれにしたがって磁気抵抗効果膜にかかる電圧は異なる。この電圧値をセンスアンプ500で読み出すことにより、磁気抵抗効果膜105に記録されている情報を読み出すことができる。
【0039】
図5は、このようなメモリ素子の1つ分の周辺部分の立体構造を模式的に示している。ここでは、図3及び図4における磁気抵抗効果膜105の近傍が示されている。例えば、p型Si基板161に2つのn型拡散領域162,163が形成されており、これらの間に絶縁層123を介してワード線(ゲート電極)342が形成されている。コンタクトプラグ351を介してn型拡散領域162に接地線356を接続し、コンタクトプラグ352,353,354,357とローカル配線358とを介してn型拡散領域163に磁気抵抗効果膜105を接続する。磁気抵抗効果膜105は、さらに、コンタクトプラグ355を介してビット線332に接続されている。磁気抵抗効果膜105の横には、磁界を発生させるための書き込み線322,323が配されている。
【0040】
(比較例)
実施例−1と同様に、Si基板100上に、フェリ磁性層112として10nmの膜厚のGd20(Fe60Co4080膜、トンネル障壁層113として1.5nmの膜厚のAl膜をスパッタにより順次形成した。その後、真空チャンバー内に酸素ガスを導入し、トンネル障壁層113(Al膜)表面からプラズマ酸化を行った。このときの投入パワーは3Wで、酸化時間は20秒であった。その後、十分に真空引きを行い、磁性層114として10nmの膜厚のTb20(Fe50Co5080膜、保護膜116として2nmのPt膜をスパッタにより順次形成した。その後、得られた多層膜の上部に1μm角のレジスト膜を形成し、ドライエッチングによってレジストに覆われていない部分の磁気抵抗効果膜を除去した。エッチング後、25nmの膜厚のAl膜を成膜し、さらにレジストおよびその上部のAl膜を除去し、上部電極とフェリ磁性層112(Gd20(Fe60Co4080膜)との間の電気絶縁を行うための絶縁膜121を形成した。次に、リフトオフ法によって上部電極122をAl膜により作成し、上部電極に覆われていない部分のAl膜を一部除去して測定回路を接続するための電極パットとした。
【0041】
このようにして形成された磁気抵抗効果膜に対し、上部電極122と下部電極(Si基板100)の間に定電流電源を接続して、フェリ磁性層112(Gd20(Fe60Co4080膜)と磁性層114(Tb20(Fe50Co5080膜)の間のトンネル障壁層113(Al膜)を電子がトンネルするように、一定電流を流した。この状態で磁気抵抗効果膜の膜面に垂直方向に磁界を印加し、その大きさと方向を変えることにより磁気抵抗効果膜の電圧の変化(磁気抵抗曲線)を測定した。この測定結果によると磁気抵抗変化率は約6%であった。
【0042】
また、このようにして得られた磁気抵抗効果膜についてXPS分析を行った結果、フェリ磁性層112とトンネル障壁層113との界面付近にはGdのピークは観察されず、界面付近のGd原子は酸化されていないと予想された。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、フェリ磁性層のトンネル障壁層との界面付近に存在する希土類金属が酸化するようすることにより、トンネル障壁層に接して形成されている磁性体に希土類金属と遷移金属を主成分とする材料を用いた場合においても、大きな磁気抵抗変化率を示す磁気抵抗効果膜とすることが可能となる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の磁気抵抗効果膜の膜構成を模式的に示した断面図である。
【図2】実施例−1で形成される磁気抵抗効果膜の構成を示す断面図である。
【図3】実施例−4において用いられた情報を記録するために印加する磁界を発生させるための回路を示す回路図である。
【図4】実施例−4において用いられた記録された情報を読み出すための回路を示す回路図である。
【図5】実施例−4において形成されるメモリ素子を模式的に示した断面図である。
【図6】磁気抵抗効果膜の磁化方向と磁気抵抗効果による電気抵抗の大きさを説明するための断面図である。
【図7】面内磁化膜を用いた磁気抵抗効果膜をメモリとして用いた場合の磁化方向と読み出し信号との関係を説明するための断面図である。
【図8】垂直磁化膜を用いた磁気抵抗効果膜をメモリとして用いた場合の磁化方向と読み出し信号との関係を説明するための断面図である。
【符号の説明】
11,21 磁性層(検出層)
12,22 非磁性層
13,23 磁性層(メモリ層)
100 Si基板
101〜109 磁気抵抗効果膜(メモリ素子)
112 フェリ磁性層
113 トンネル障壁層
114 磁性層
115 酸化希土類金属層
116 保護層
121 絶縁膜
122 上部電極
150 固定抵抗
161 p型Si基板
162,163 n型拡散領域
211〜226,231〜242 トランジスタ
300 配線
311〜314,321〜324 書き込み線
331〜333 ビット線
341〜343 ワード線(ゲート電極)
351〜355、357 コンタクトプラグ
356 接地線
358 ローカル配線
411,412 電源
500 センスアンプ

Claims (9)

  1. 第1及び第2の磁性層と、前記第1及び第2の磁性層に挟まれたトンネル障壁層とを有し、前記第1及び第2の磁性層の少なくとも一方が希土類金属と遷移金属とを主成分とするフェリ磁性層である磁気抵抗効果膜において、
    前記フェリ磁性層の前記トンネル障壁層との界面付近に存在する希土類金属が酸化しており、前記酸化した希土類金属が島状または網状に形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果膜。
  2. 前記フェリ磁性層は、前記希土類金属としてGd,Dy,Tbからなる群の中から選ばれる1種類以上の元素と、前記遷移金属としてFe,Co,Niからなる群の中から選ばれる1種類以上の元素とを主成分とする、請求項1に記載の磁気抵抗効果膜。
  3. 前記トンネル障壁層が酸化アルミニウムによって構成される請求項1または2に記載の磁気抵抗効果膜。
  4. 前記フェリ磁性層が垂直磁化膜である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果膜。
  5. 前記フェリ磁性層の表面に前記トンネル障壁層を形成した後に前記トンネル障壁層表面側から酸化処理を施すことにより、前記界面付近の前記希土類金属が酸化している、請求項1に記載の磁気抵抗効果膜。
  6. 前記フェリ磁性層を形成した後に酸化処理を施し、その後前記トンネル障壁層を形成することにより、前記界面付近の前記希土類金属が酸化している、請求項1に記載の磁気抵抗効果膜。
  7. 前記フェリ磁性層と前記トンネル障壁層との界面に、前記フェリ磁性層よりも大きなスピン分極率を有する第3の磁性層を形成されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果膜。
  8. 前記第3の磁性層が島状または網状に形成されている、請求項7に記載の磁気抵抗効果膜。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果膜と、前記磁気抵抗効果膜に記録を行う手段と、前記磁気抵抗効果膜に記録された情報を読み出す手段と、を有するメモリ。
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