JP3593367B2 - 炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、耐熱性に優れかつ強靭な炭素繊維強化樹脂複合材料を形成しうる炭素繊維強化熱硬化樹脂プリプレグに関する。
【0002】
【従来技術】
炭素繊維強化複合材料は、その比強度、比弾性が優れているという特徴を活かして、スポーツ用品を中心に各種用途に広く使用されている。現在のところ、そのマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂が主流であるが、エポキシ樹脂は耐熱性が十分でなく、そのため炭素繊維強化エポキシ樹脂複合材料は航空・宇宙用途を中心に高まりつつある耐熱素材の要求を十分満足することは困難になってきた。耐熱性樹脂としては、熱硬化性のポリイミド、ビスマレイミド、ビスマレイミド−トリアジン、シアネート樹脂などが良く知られているが、一般に耐熱性樹脂は、その硬化物は非常に脆く、その複合材料は靭性、耐衝撃性が乏しく、その用途はかなり制限されたものとなっている。
【0003】
この欠点を改良するため、ゴム成分や熱可塑性樹脂を配合する方法、他のモノマー成分を共重合する方法などが提案されているが、耐熱性などの物性の低下が大きい割りには靭性の向上が十分でなかったり、樹脂単体の破壊靭性は一応向上しても複合材料にした時の靭性向上が十分でないなどの問題があった。
また、複合材料全体として靭性を付与する考え方から、積層体の層間を選択的に補強し、衝撃時の層間剥離をおさえることが有効であるとの知見から、インターリーフと呼ばれる一種の接着層ないしは衝撃吸収層を層間に挿入する方法が提案されたが、強化繊維含有率が上げられない、プリプレグとしての取扱性も悪いなどの欠点があり、一般に使用されるに至っていない。
さらにゴム粒子あるいは高靭性熱可塑性樹脂微粒子をエポキシ樹脂プリプレグ表面に局在化させる方法も提案されているが、期待されるほどの靭性改良効果が得られない場合もある。
特に、この方法を耐熱性樹脂系たとえばマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂などのプリプレグまたは複合材料に適用した場合、ほとんど期待される十分な靭性改良効果が得られていないのが実情である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、マトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂の耐熱性を損なうことなく、炭素繊維強化熱硬化性樹脂複合材料に優れた靭性を付与することのできる炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、表面に熱可塑性樹脂成形物が存在する炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグについて種々検討した結果、このプリプレグを構成する炭素繊維として特定の化合物で処理したものを用いることにより、該プリプレグで成形した複合材料の靭性を著しく高め得ることを知見し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、炭素繊維を強化材とし、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とし、且つ表面に熱可塑性樹脂成形物が存在する炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグにおいて、炭素繊維として、ラウリルアミンとエチレンオキサイドの反応によって得られる化合物で処理された炭素繊維を使用することを特徴とする炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグである。
【0007】
本発明の特徴は、マトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂組成物、強化材としての炭素繊維、及び熱可塑性樹脂成形物とでプリプレグを構成するに当たり、炭素繊維として、一般式(1)で表される化合物で処理したものを用いる点にある。
このように特定の化合物で処理した炭素繊維をプリプレグ原料に用いることにより、マトリックス樹脂の耐熱性等の特性を損なうことなく、該プリプレグから成形した炭素繊維複合材料に著しく向上した靭性を付与し得るのであって、未処理の炭素繊維を用いたのでは、いかに靭性の高い樹脂組成物及び熱可塑性樹脂を組み合わせても、複合材料にした時にその靭性を十分には発揮させ得ない。
【0008】
本発明に用いられる「炭素繊維」の用語は、炭素繊維及び黒鉛繊維の両方を意味する。この炭素繊維は、通常「プレカーサー」と称されるポリアクリロニトリル、ピッチ等の繊維状物を炭化するか、或はグラファイト温度に加熱することにより得られ、なかでも引張強度4500MPa以上、伸度1.7%以上の高強度・高伸度の炭素繊維が好適に用いられる。また、炭素繊維の表面を電解酸化、オゾン酸化することにより、炭素繊維表面に水酸基、カルボン酸基などの官能基を導入したものが好適に用いられる。
【0009】
本発明に用いられる炭素繊維を処理する化合物は、ラウリルアミンとエチレンオキサイドとの反応により得られる化合物である。例えば、CH 3 (CH 2 ) 11 NH(CH 2 CH 2 O) 3 H及び/またはCH 3 (CH 2 ) 11 NCH 2 CH 2 OH(CH 2 CH 2 O)Hが好適に使用される。炭素繊維をラウリルアミンとエチレンオキサイドとの反応により得られる化合物で処理する方法としては、この化合物の溶液に炭素繊維を浸漬した後、乾燥し巻き取る公知の方法が使用できる。付着量は、溶液濃度、浸漬速度などにより選択できるが、好ましい溶液は、水溶液であって、その濃度としては、5重量%以下より好ましくは、1重量%以下である。これよりも高濃度の場合、処理後炭素繊維が収束し、その後熱硬化性樹脂と一体化する場合、樹脂の含浸性の低下をきたすなど悪影響を及ぼし好ましくない。
【0010】
本発明における熱硬化性樹脂としては、熱または光などの外部エネルギーで硬化して、少なくとも部分的に三次元硬化物を形成する樹脂であればいずれも使用できる。代表的な例としては、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアン酸エステル末端を有する樹脂、アリル末端を有する樹脂、アセチレン末端を有する樹脂、ナジック酸末端を有する樹脂、ベンゾシクロブテンを末端に有する樹脂があげられる。エポキシ樹脂としては、特にアミン類、フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されない。これらのエポキシ樹脂は単独または混合物として使用できる。
【0011】
エポキシ樹脂は、通常硬化剤と組み合わせて用いられるが、本発明において用いられる硬化剤にもとくに制限はなくアミノ基、酸無水物基などエポキシ樹脂と反応しうる官能基を有する化合物を適宜用いることが可能である。
マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂及びこれらの混合物も本発明における熱硬化性樹脂として好ましく用いられる。
マレイミド樹脂とは、多官能性マレイミド樹脂を主成分とする樹脂組成物であり、分子内に2個以上のマレイミド基を有する化合物が30重量%以上しめる樹脂組成物である。
耐熱性、靭性等の物性を低下させない範囲で単官能性マレイミドあるいは他の共重合可能な反応性化合物を含んでいても良い。
【0012】
多官能性マレイミドとしては、下記の化合物が挙げられる。
1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,12−ビスマレイミドドデカン、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、1,6−ビスマレイミド−(2,4,4−トリメチル)ヘキサン、1,3−ビスマレイミドベンゼン、1,4−ビスマレイミドベンゼン、3,3′−または4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン、3,3′−または4,4′−ビスマレイミドジフェニルスルホン、3,3′−または4,4′−ビスマレイミドジフェニルエーテル、2,4−、2,6−または3,4−ビスマレイミドトルエン、4,4′−ビスマレイミドジフェニルスルフィド、4,4′−ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン、4,4′−ビスマレイミドジシクロヘキシルヘキセン、N,N′−m−または−p−キシリレンビスマレイミド、N,N′−m−フェニレンビス−シトラコンイミド、2,2′−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3′−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3′−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、N,N′−[1,3−フェニレン−ジ−(2,2−プロピリデン)−ジ−p−フェニレン]ビスマレイミドなど並びにこれらの混合物及びマレイミドとジアミンからなるプレポリマーが含まれる。プレポリマーに用いるジアミンとしては、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミンが好ましい。
【0013】
4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン及びこの化合物と1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン及び/または、ビスマレイミドトルエンの共融混合物が特に好ましい。
多官能性マレイミドと共重合可能な反応性化合物としては、例えばo,o′−ジアリルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールF等のアルケニルフェノール類、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、N−ビニルピロリドン及びエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0014】
これらの共重合可能な反応性化合物は単独あるいは混合して多官能性マレイミドを主成分とする樹脂組成物中70重量%以下、好ましくは50重量%以下の範囲で用いられる。
これら共重合可能な反応性化合物のうちアルケニルフェノール類は、多官能性マレイミドを主成分とする樹脂組成物の靭性向上、加工性向上にも効果があり、熱硬化性樹脂中10〜50重量%の範囲で用いることが好ましい。
多官能性マレイミドを主成分とする樹脂組成物は、熱により容易に硬化させることができるが、硬化物に所望の特性を付与したり、硬化特性を調整する目的で触媒を添加してもよい。
【0015】
触媒としては、オルガノホスフィン類、オルガノホスホニウム塩、あるいはこれらの錯体、イミダゾール類、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、3弗化ホウ素アミン錯体及び有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合触媒を用いることができる。触媒の添加量は、目的に応じて決定すれば良いが、樹脂成分全量に対して、0.01〜5重量%が安定性の点から好ましい。
【0016】
シアン酸エステル樹脂とは、一般式
Y(−O−CN)n
(式中nは2〜5の整数、Yは芳香族性有機残基を示す。)
で表される多官能性シアン酸エステル及びそのオリゴマーを50重量%以上含有する樹脂組成物である。
多官能性シアン酸エステルとしては、1,3−または1,4−ジシアナートベンゼン、4,4′−ジシアナートビフェニル、2,2′−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−シアナートフェニル)エタン、ビス(4−シアナートフェニル)メタン、ビス(4−シアナートフェニル)スルホン、ビス(4−シアナートフェニル)スルフィド、ビス(3,4−メチル−4−シアナートフェニル)メタン及び以下の構造式
【0017】
【化1】
【0018】
で示される化合物あるいはこれらの混合物等が用いられる。
またこれらの多官能性シアン酸エステルをシアナートの三量化によるトリアジンオリゴマーあるいはアミンとの反応によるプレポリマーの形で用いることもできる。プレポリマーの製造に用いるアミンとしては、芳香族あるいは脂肪族のジアミンが好ましい。
多官能性シアン酸エステルを主成分とする熱硬化性樹脂中に所望の特性を付与したり、硬化特性を調整する目的でフェノール類あるいは触媒を添加することは何らさしつかえない。フェノール類としては通常のアルキルフェノールを用いることができるし、触媒としては、三弗化ホウ素アミン錯体の様な潜在性硬化触媒の他、第3級アミン、有機過酸化物、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト等の有機酸金属塩等が好適に使用される。触媒の添加量は、目的に応じて決定すれば良いが、樹脂成分全量に対して、0.05〜3重量%が安定性の点で好ましい。
【0019】
多官能性マレイミド(I)と多官能性シアン酸エステルまたはそのオリゴマー(II)との混合物あるいは(I)と(II)の予備反応物を主成分とする熱硬化性樹脂も本発明における熱硬化性樹脂として好適に用いられる。(I)と(II)の比率は目的に応じて適宜設定すればよいが、重量比で(I)/(II)=5/95〜15/85が特に好ましい。(I)と(II)の混合物あるいは予備反応物を主成分とする熱硬化性樹脂にエポキシ樹脂あるいはポリエステル樹脂を添加することは何ら問題なく、むしろ好ましい結果が得られる。エポキシ樹脂としては、前記例示した公知のものが使用され、またポリエステル樹脂としては、下記一般式(A)または(B)で示される化合物が好ましく、特に酸成分が主としてテレフタル酸でかつグリコール成分が主としてネオペンチルグリコールまたはエチレングリコールである化合物が好ましい。
【0020】
【化2】
【0021】
もしくは
【0022】
【化3】
【0023】
(式中Arはフェニレン基、R1 は2価の脂肪族基、R2 は2価の芳香族基または脂肪族基を示す。)
これらのポリエステル化合物は、数平均分子量が500〜10000特に500〜3000でかつ軟化点が100℃以下、好ましくは70℃であるとき最も好ましい結果が得られる。
【0024】
(I)と(II)の混合物あるいは予備反応物を主成分とする熱硬化性樹脂におけるエポキシ樹脂およびポリエステル樹脂の添加量は(I)と(II)の混合物あるいは予備反応物100重量部に対しエポキシ樹脂5〜100重量部、ポリエステル化合物5〜50重量部であるがともに30重量部以下の添加量で十分な場合が多い。(I)と(II)の混合物あるいは予備反応物を主成分とする熱硬化性樹脂の場合にも目的に応じて触媒を添加してもよい。触媒としては、先に多官能性マレイミドあるいは多官能性シアン酸エステルを主成分とする熱硬化性樹脂のところで例示したものの中から目的に応じて適宜選択してさしつかえない。触媒の添加量も目的に応じて決定すれば良いが樹脂成分全量に対して0.2〜3重量%が安定性の点から好ましい。さらにまた、ナジック酸末端あるいはアセチレン末端ポリイミド樹脂も熱硬化性樹脂として好ましく用いられる。
ナジック酸末端ポリイミド樹脂としては、PMR−15等原料モノマーとして芳香族ジアミン
【0025】
【化4】
【0026】
芳香族テトラカルボン酸のジエステル
【0027】
【化5】
【0028】
とナジック酸のモノエステル
【0029】
【化6】
【0030】
から得られる部分縮合物あるいはBステージ化樹脂あるいは完全縮合イミド化後のナジック酸末端ポリイミドオリゴマーたとえば
【0031】
【化7】
【0032】
を主成分とする熱硬化性樹脂を挙げることができる。
さらにアセチレン末端ポリイミド樹脂としてはサーミッドの商標で知られているThermid 600,Thermid IP−600等が好適である。
ベンゾシクロブテン末端を有する樹脂としては、メタノン、1,3−フェニレンビス−[ビシクロ(4,2,0)オクタ−1,3,5−トリエン−3−イル−]等及びベンゾシクロブテン末端を有する樹脂と多官能性マレイミドとの混合物などを例示することができる。
【0033】
本発明における熱硬化性樹脂として上記熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂あるいはそのオリゴマーを添加したものを用いることもできる。
特にポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等所謂エンジニアリングプラスチックが耐熱性の点から好ましく、熱硬化性樹脂と反応しうる官能基を分子末端あるいは分子鎖中に有するものがさらに好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂に溶解しても良いし、微粉末として混合しても良い。
【0034】
熱硬化性樹脂成分に対する熱可塑性樹脂成分の添加量は30重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。熱可塑性樹脂成分の添加量が30重量%以上になると系の粘度が高くなり過ぎてプリプレグ化時の含浸不良の原因となるだけでなく、プリプレグのタック特性、ドレープ特性が大幅に低下する原因ともなる。また熱硬化性樹脂に微粉末シリカなどの無機微粒子やブタジエン/アクリロニトリル共重合体等のエラストマー成分をプリプレグ特性、加工特性、機械的特性、熱的特性等を犠牲にしない範囲で少量添加することも可能である。
【0035】
本発明の炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグにおける化合物(1)で処理した炭素繊維と熱硬化性樹脂との比率はその目的に応じて適宜設定することが可能であるが、重量比で60/40〜75/25の範囲が特に好ましい。
また、本発明においては、プリプレグの表面に、熱可塑性樹脂成形物を存在させる。この熱可塑性樹脂成形物は、プリプレグの片面に施しても、両面に施してもよい。
この熱可塑性樹脂成形物の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアリールスルホン、ポリエーテルエーテルケトンなど所謂エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックあるいはポリマーアロイ化したものなどが挙げられる。分子鎖中にアミノ基、フェノール性水酸基、アミド基、アリル基、ビニル基等熱硬化性樹脂と反応しうる官能基を有するものが好ましく、これらは共重合などの手段により官能基を末端あるいは分子鎖中に導入したエンジニアリングプラスチックあるいはスーパーエンジニアリングプラスチックあるいはポリマーアロイ化したもの等である。
【0036】
また特に、熱硬化性樹脂に成形硬化過程で溶解し、相分離する、そのなかでも特に硬化後、熱可塑性樹脂が海、熱硬化性樹脂が島の海島構造を呈するたとえば、ポリイミド、ポリエーテルイミドが好適に使用される。
また、熱可塑性樹脂成形物の形態としては、繊維状、粒子状、フィルム状などが挙げられる。粒子状の熱可塑性樹脂成形体としては、前記エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックの微粒子として市販されているものが使用でき、また微粒子として市販されていないものは、粉砕するなど公知の方法により微粒子化して使用する。微粒子の粒径は、100μm以下が好ましく、更に好ましくは、2〜60μmである。
【0037】
繊維状の熱可塑性樹脂成形体としては、前記エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックの溶融紡糸あるいは溶液紡糸など公知の方法により得ることができる。繊維の形態としては、長繊維状モノフィラメントあるいはこれらを束にしたもの、或は短繊維状のものなど特に限定されない。繊維の直径としては、100μm以下が好ましく、50μm以下が特に好ましい。更に、前記繊維状熱可塑性樹脂から作られた織物、その組織としては平織り、朱子織り、からめ織りなど特に限定されない。また不織布も使用できる。織り物は、その織り物目付(単位面積当たりの重さ)が1〜25g/m2 のものが好ましい。
【0038】
これらの熱可塑性樹脂成形体のなかでも、繊維状熱可塑性樹脂を使用すると、次のような利点、すなわち、
(1)少量の熱可塑性樹脂をプリプレグ表面に配置することができる。
(2)プリプレグのタックレベルのコントロールが可能である。
(3)高粘度物を取り扱う必要がなく、従来のプリプレグ製造プロセスがそのまま利用できる。
(4)品質管理が容易である。
などの利点があり、特に好ましい。
また、これらの形態の熱可塑性樹脂成形物は、例えば繊維状のものと粒子状のものをプリプレグ表面に配置するなど組み合わせて用いてもよい。
【0039】
熱可塑性樹脂成形物は、熱硬化性樹脂100重量部に対し0.5〜50重量部の比率で用いる。0.5重量部未満では、十分な靭性改良効果は得られず、また50重量部を越えると靭性改良効果は頭打ちになるばかりか表面タックの減少あるいは用いる樹脂の種類によっては、耐熱性、耐溶剤性が低下する場合もあり好ましくない。
【0040】
次に、化合物(1)で処理した炭素繊維と熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂成形物とから片表面或は両表面に熱可塑性樹脂成形物が存在する炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグを製造する方法を示す。
この方法は、たとえば、
(1)熱硬化性樹脂中に粒子状の熱可塑性樹脂を分散したもので樹脂フィルムを形成し、引きそろえた化合物(1)で処理した炭素繊維をこの樹脂フィルムで上下からはさみ含浸処理を行い、この含浸過程で粒子状熱可塑性樹脂が炭素繊維により濾過されて実質的にプレプレグ表面に存在するようにする方法。
(2)化合物(1)で処理した炭素繊維と熱硬化性樹脂とから通常の方法でプリプレグを作成し、その表面に、粒子状熱可塑性樹脂あるいは繊維状(短繊維状)熱可塑性樹脂を振りかけて一体化する方法、または繊維状(長繊維状)熱可塑性樹脂を引きそろえて一体化する方法。
(3)引きそろえた繊維状熱可塑性樹脂に熱硬化性樹脂を含浸させ樹脂フィルム状にしたものと、化合物(1)で処理した炭素繊維とから製造する方法などであるが、特に制限されない。
【0041】
本発明の好ましい実施態様は、次のとおりである。
すなわち、本発明の炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグにおいて、
1.熱硬化性樹脂として、多官能性マレイミドとアルケニルフェノールを主成分とするマレイミド樹脂を使用する。
2.熱硬化性樹脂として、多官能性マレイミドと多官能性シアン酸エステルとの混合物またはその予備反応物に、エポキシ化合物及び/またはポリエステル化合物を配合したものを使用する。
3.熱硬化性樹脂として、PMR−15等として知られている、原料モノマーとして芳香族ジアミン、芳香族テトラカルボン酸のジエステルとナジック酸のモノエステルから得られるBステージの樹脂あるいは完全イミド化後のナジック酸末端ポリイミドオリゴマーを主成分とする熱硬化性ポリイミド樹脂を使用する。
4.炭素繊維として1重量%以下の一般式(1)で表される化合物の水溶液で処理された繊維を使用する。
【0042】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(参考例)
ラウリルアミン1モルに触媒として水酸化ナトリウム1グラムを加えて150〜180℃に加熱し撹拌しながらエチレンオキサイドを4モル液中に吹き込み反応させた。反応終了後塩酸を加え中和しCH3(CH2)11NH(CH2CH2O)3HとCH3(CH2)11NCH2CH2OH(CH2CH2O)2Hの混合物を得た。
【0043】
(実施例1〜3)
参考例により合成した化合物の0.2%水溶液を調整した。この水溶液に高強度中弾性炭素繊維(三菱レイヨン社製、MR−50K、引張強度5600MPa、弾性率300GPa:表面は酸化処理されており表面サイジング剤は付着していないもの)を浸漬、通過させた。その後130℃で2分間熱風乾燥し巻き取った。さらに80℃で12時間15mmHg以下の減圧下で十分乾燥した。処理後炭素繊維は未処理のものと同様の外観を示した。次に、表1に示す樹脂組成物と、上記の処理を施した炭素繊維とから一方向プリプレグをホットメルト法により製造した。プリプレグ目付は145g/m2 、樹脂含有率は30重量%であった。
一方、マトリミド5218(チバガイギー社製)のポリイミドを塩化メチレン/メタノール混合溶媒(塩化メチレン/メタノール=90/10重量比)に溶解し所定の粘度(約1200ポイズ)に調整した溶液を繊維状に押し出し、乾燥して巻き取り200デニール/52フィラメントの繊維状の熱可塑性樹脂を製造した。
【0044】
上記の繊維状熱可塑性樹脂を、上記のプリプレグの両表面に且つ炭素繊維と同方向に、2mm間隔で片面当たり繊維状熱可塑性樹脂目付11g/m2 となるように配置し、軽く含浸した。かくして、本発明の炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグを得た。このプリプレグを、所定の寸法、枚数に切断し、炭素繊維の方向が+45°、0°、−45°、90°に4層、4回積層し次に90°、−45°、0°、+45°にて4層、4回積層後、オートクレーブにて硬化条件180℃で6時間硬化し、さらに232℃で6時間硬化して衝撃後圧縮強度測定用試験片を作成した。この試験片を用いてSACMA(Supplier of Advanced Composites Materials Asociation)Recommended Method SRM2−88に準拠して1500in−lb/in衝撃後の圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
(比較例1〜3)
参考例により合成した化合物の水溶液処理を施していない炭素繊維を用いる以外は、実施例1,2,3と同様にして試験片を作成し評価した。結果を表1に示した。
【0046】
(実施例4〜6)
マトリミド5218の代わりにポリエーテルイミド(ジェネラルエレクトリック社製ウルテム1000)を用い同様に繊維状に賦型し200デニール/52フィラメントの繊維を得た。この繊維を用い実施例1,2,3と同様にして試験片を作成し評価した。結果を表2に示す。
【0047】
(実施例7〜9)
実施例1と同様にして処理した炭素繊維を得た。一方、実施例1,2,3の樹脂組成物にマトリミド5218パウダー(粒径80μm以下)をそれぞれ15重量%添加し、70℃でミキサーにて混合し均一に樹脂中に分散した。これらをそれぞれ離型紙上に広げ樹脂目付40g/m2 の樹脂フィルムとした。各樹脂フィルムで、一方向に引き揃えた前記処理炭素繊維を上下からはさみ込みホットメルト法によりプリプレグを作成した。炭素繊維の目付は、145g/m2 であった。
樹脂中に分散していたマトリミド5218パウダーは、炭素繊維により樹脂が炭素繊維に含浸する過程で実質的にプリプレグ表面に集まり、本発明のプリプレグを得た。これらのプリプレグを用いて、実施例1,2,3と同様にして試験片を作成し評価した。結果を表2に示す。
(実施例10)
【0048】
熱硬化性樹脂として、メチレンジアニリンとベンゾフェノンテトラカルボン酸ジメチルエステルとナジック酸モノメチルエステルからなるいわゆるPMR−15樹脂のアルコール溶液に、実施例1の処理炭素繊維等を通過させ、さらにドラム上に一定間隔で巻つけ溶剤を風乾した。得られたベースプリプレグ上に実施例1で得られたマトリミド5218繊維を2mm間隔でプリプレグ両表面に巻きつけ軽く含浸し切り開くことにより炭素繊維目付190g/m2 、樹脂(マトリミド5218繊維を含む)含有率35重量%、揮発分6重量%の本発明のプリプレグを得た。プリプレグを所定の枚数、所定の大きさに切断し、さらに200℃の熱風乾燥器中で1時間、残存溶剤の除去と、Bステージ化(イミド化反応)を実施した。さらに(+45°/0°/−45°/90°)3Sに積層し、金型にセットしプレス成形(315℃、1000psi、4時間)により成形パネルを得、実施例1と同様に評価した。衝撃損傷後圧縮強度は208MPaであった。
【0049】
(比較例4)
処理をしていない炭素繊維を用いその他は実施例10と同様にして試験片を得た。衝撃損傷後圧縮強度は165MPaであった。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1,2において、各略語は以下を意味する。
MDABMI:4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン(三井東圧社製)
コンピミド353:ビスマレイミドの共融混合物(シェル社製)
マトリミド5292B:ジアリルビスフェノールA(チバガイギー社製)
BCN:2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン(チバガイギー社製)
タクティクス742:トリグリシジル型エポキシ樹脂(ダウ社製)
エピコート807:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(油化シェル社製)
【0053】
【発明の効果】
本発明の炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグから得られる炭素繊維強化樹脂複合材料は、マトリックス樹脂の耐熱性を損なうことなく優れた靭性を有する。したがって、航空宇宙用構造材料などに好適に使用できる複合材料を成形しうるプリプレグとして極めて有用である。
Claims (2)
- 炭素繊維を強化材とし、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とし、且つ表面に熱可塑性樹脂成形物が存在する炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグにおいて、炭素繊維として、ラウリルアミンとエチレンオキサイドの反応によって得られる化合物で処理された炭素繊維を使用することを特徴とする炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグ。
- 熱可塑性樹脂成形物が繊維状である請求項1記載の炭素繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグ。
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