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JP3594530B2 - タンタルのめっき法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属、合金、導電性セラミックス、半導体性セラミックスなどへのタンタルの溶融塩電解めっき法に関する。
【0002】
【従来の技術】
タンタルは高融点で、延性、展性に富み、かつ耐食性に優れると言った特徴を有し、電解コンデンサー、電子工業用加工品の材料、化学装置材料、などの幅広い用途で使用されている。このような用途の中には、材料をタンタルそのままで使用する場合もあれば、LSIにおける銅配線上のバリヤー層として形成されたタンタル薄膜のように、母材にタンタル膜を作製して用いられる場合もある。
【0003】
タンタル膜を形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法などの各種物理蒸着法、化学蒸着法が用いられている。一般的な成膜方法としては、前記のような乾式法以外にも、例えば、めっき法が考えられるが、タンタルは水溶液からはめっきが不可能であり、タンタル膜をめっきによって形成する方法としては溶融塩を用いる方法のみが知られていた。
【0004】
例えば、塩化リチウム−塩化カリウム溶融塩に五塩化タンタルを加えた溶融塩からは450℃でタンタルがめっきできることや、塩化カリウム−塩化ナトリウム溶融塩にKTaFを加えた溶融塩からは700℃付近でタンタルがめっきできることが報告されている(J.Electrochem.Soc.,Vol.139,No.5,May 1992,P1249〜1255)。
【0005】
また、LiF−NaF−KF(50−30−20モル%)のフッ化物系共融混合物中にKTaFを添加溶解した溶融塩浴を用い、タンタル板を陽極として電流を周期的に反転させて600〜900℃の溶融温度で鉄などの被めっき体にめっきする方法が特開平6−57479号公報に開示されている。
【0006】
しかしながら、いずれも高温の溶融塩を用いたタンタルめっきであり、室温や100℃程度といった低温の溶融塩からはタンタルのめっきが可能な電解浴はこれまで開発されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、乾式法によるタンタル膜の形成が一般的ではあるが、膜を形成できる大きさや形状、厚さに制限がある。これに比べて、めっき法の場合にはこれらの制限を受けないという利点があるが、一方では、現状の溶融塩を用いるタンタル膜の形成方法では、高温でかつ反応性の高い溶融塩を用いることから、作業性、安全性、コストの点で工業的に実用化が出来ていない。
本発明の目的は、このようなディメリットを克服することが可能な低温の電解浴を用いて、めっき法によるタンタル膜の形成方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これまで種々の溶融塩を用いて金属イオンの電極反応を研究してきた。その過程で、五塩化タンタルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドを混合すると100℃以下で溶融塩を形成することを見出し、先に報告した(「1998年電気化学秋季大会講演要旨集」,p.233,1998、「Proc.of the 7th China−Japan Bilateral Conf.on Molten Salt Chem. and Technol.」,pp.209−213,1998)。
【0009】
本発明者らは、さらに、この組成の溶融塩にアルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物を加えることによって、タンタルが低温においてもめっきが可能となることを見出し、これらの知見に基づいて低温でのタンタルのめっきを初めて実現し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、五塩化タンタルとアルキルイミダゾリウムクロライドとアルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物からなる溶融塩を電解浴に用いることを特徴とするタンタルのめっき法である。
【0011】
また、本発明は、アルキルイミダゾリウムクロライドが1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドであることを特徴とする上記のタンタルのめっき法である。
【0012】
また、本発明は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物が弗化リチウムであることを特徴とする上記のタンタルのめっき法である。
【0013】
本発明の方法において、アルキルイミダゾリウムクロライドとしては、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−エチルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライドなどが用いられるが、アルキル基およびその組み合わせについては、これらに限定されるものではない。
【0014】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物としては、イオン結合性が比較的強く、かつ溶融塩中において容易に弗化物イオンを提供するものがよく、具体的には、弗化リチウム、弗化ナトリウム、弗化カリウム、弗化ベリリウム、弗化マグネシウム、弗化カルシウムなどが挙げられる。特に、弗化リチウムはイオン結合性が強く溶融塩中で容易に弗化物イオンを生じるとともに、イオン半径の小さいカチオンであるリチウムイオンを生じる。
【0015】
詳細なメカニズムは明らかではないが、上記の特性により溶融塩中のタンタルに配位している塩化物イオンの一部または全部が弗化物イオンに置換されると予測される。これによって、溶融塩中において5価のタンタル錯体の電子的な構造対称性が悪くなることにより還元性が増して、0価まで還元され、タンタルがめっき可能となると考えられる。また、このタンタル錯体の構造は、溶融塩中にリチウムイオンのようなイオン半径の小さいカチオンが存在することによっても電子的に対称性が悪くなり、より還元されやすくなると考えられる。以上のような理由から弗化リチウムは他のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物に比べてより望ましい。
【0016】
図1は、五塩化タンタルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドと弗化リチウム(記載順に混合比30:60:10mol%)からなる溶融塩中で、白金電極を用いて100℃で得られたサイクリックボルタモグラムである。この図1において、カソード方向への電位走査で観察された4つの還元波A、B、C、Dは、5価のタンタル錯体の還元反応に対応し、この溶融塩中で5価のタンタル錯体から0価のタンタルへの還元が少なくとも4段階以上の反応過程で起こることを示している。なお、弗化リチウムを含まない溶融塩で得られたサイクリックボルタモグラムでは、A波およびB波のみが観察されたことから、弗化リチウムの添加によって新たに生じたC波およびD波に相当する反応過程において最終的に0価のタンタルまでの還元、すなわちタンタルのめっきが生じると考えられる。
【0017】
五塩化タンタルとアルキルイミダゾリウムクロライドとアルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物の混合比は、以下の割合が望ましい。まず、五塩化タンタルとアルキルイミダゾリウムクロライドの2成分について、モル比で五塩化タンタルが30mol%〜50mol%、アルキルイミダゾリウムクロライドが50mol%〜70mol%が望ましく、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物は、五塩化タンタルとアルキルイミダゾリウムクロライドの合計モル数に対して内割で2mol%〜13mol%が望ましい。
【0018】
五塩化タンタルが30mol%よりも小さくなると、またはアルキルイミダゾリウムクロライドが70mol%よりも大きくなると、溶融塩の融点が高くなり、100℃以下のような低温で溶融塩を形成しなくなるため好ましくない。また、五塩化タンタルが50mol%より大きくなると、またはアルキルイミダゾリウムクロライドが50mol%よりも小さくなると、同様に溶融塩の融点が高くなり、100℃以下で溶融塩を形成しなくなるため好ましくない。
【0019】
また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物が2mol%よりも小さくなると、弗化物の割合が少なくタンタルが0価まで還元される効果が得られなくなり、タンタルのめっきが困難になるため好ましくない。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物が13mol%よりも大きくなると、完全に溶解できず固体として弗化物が溶融塩中に残って溶融塩として機能しない無駄な弗化物となるため好ましくない。
【0020】
より好ましくは、五塩化タンタルとアルキルイミダゾリウムクロライドの2成分について、モル比で五塩化タンタルが33.3mol%〜45mol%、アルキルイミダゾリウムクロライドが66.7mol%〜55mol%で、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物が、五塩化タンタルとアルキルイミダゾリウムクロライドの合計モル数に対して内割で5mol%〜10mol%である。
【0021】
さらに、代表的な電解条件を以下に記す。陰極には各種の金属、合金、導電性セラミックス、半導体性セラミックスなどを用いることができる。例えば、鉄製材料、ニッケル、銅などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、異種材料の上に薄膜状に形成された金属、合金、セラミックスなども陰極として用いることができる。陽極には、タンタル、タングステン、モリブデン、白金などの板状材料や、これらの金属を異種材料上に薄膜状に形成したものなどが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
なお、タンタルを陽極とする場合はタンタルの溶解が陽極反応の主体となるが、その他の材料では陽極上での反応は塩素発生が主体となるため、塩素発生反応に対して過電圧が低く、かつ耐久性が高い陽極材料が望ましい。
【0023】
電流密度は通常の電気めっきの場合に準ずるが、一例として0.01A/cm〜1A/cmが用いられる。但し、電流密度は電解浴を静止状態で使用するか、流動状態で使用するかによってその適正な範囲が変化するとともに、溶融温度や電流波形によっても変化するため、上記の範囲に限定されるものではない。また、めっきの際の通電方法としては、電流制御法のほかに電位制御法でも可能である。電流制御法の場合、定電流法の他に、パルス電流や周期的逆電流を印加するなど種々の電流波形を用いることができる。また、電位制御法においても定電位法の他に、パルス電圧や周期的逆電圧を印加する方法など種々の電圧波形を用いることができる。
【0024】
また、溶融温度は150℃以下、より好ましくは100℃以下である。150℃よりも高い温度ではアルキルイミダゾリウムクロライドの分解によって、溶融塩の劣化が早くなるため好ましくない。上記のような電解条件において本発明の溶融塩を用いてめっきを行えば、100μm程度までの膜厚を有するタンタル膜をめっきすることができる。
【0025】
【実施例】
実施例1〜4、比較例1〜2
本発明の実施例を比較例と対比して詳細に述べる。不活性ガス雰囲気のグローブボックス内において、五塩化タンタル(TaCl)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EMIC)、弗化リチウム(LiF)を各実施例ごとに表1に示す所定量を秤量し、ガラスチューブ内につめた後、ガラスチューブを減圧封止した。これを100℃まで加熱して溶融塩とした。
【0026】
【表1】
Figure 0003594530
【0027】
この溶融塩を前記グローブボックス内において白金電極を2本備えたガラスセル内に移し、再び減圧封止した。このガラスセルを電気炉内に設置し、電源を用いて60mA/cmの定電流で100℃で電解した。4時間通電して電解し、陰極とした白金電極の表面を洗浄後、X線回折装置で分析し、タンタルがめっきされているか否かを確認した。図2は、タンタル膜のX線回折像を示すグラフである。この図には、陰極として用いた白金の回折ピークとともにタンタルの回折ピークが現れており、陰極上にタンタルがめっきされていることが確認された。
【0028】
また、比較例1〜2として、表1に示す組成の五塩化タンタルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドのみを混合した溶融塩も作製し、実施例と同様な操作を行った。実施例および比較例のタンタルめっき膜の有無を表1に示す。
【0029】
表1の結果から、本発明のタンタルのめっき法によれば、従来のめっき法では不可能であった100℃という低い温度においてもタンタルをめっきさせることができることが分かる。なお、五塩化タンタルのモル%が少ない実施例1および実施例3については、室温での電解でもタンタルがめっきされていることを確認した。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、これまで不可能であった100℃以下という低い温度においても、溶融塩電解めっきによりタンタル膜を形成させることが可能となり、作業性、安全性、コストの点で極めて有利なタンタル膜を形成する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、モル比1:2の五塩化タンタルと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド溶融塩に弗化リチウムを添加した場合に得られたサイクリックボルタモグラムである。
【図2】図2は、本発明の方法でめっきされたタンタル膜のX線回折像を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 五塩化タンタルとアルキルイミダゾリウムクロライドとアルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物からなる溶融塩を電解浴に用いることを特徴とするタンタルのめっき法。
  2. アルキルイミダゾリウムクロライドが1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドであることを特徴とする請求項1に記載のタンタルのめっき法。
  3. アルカリ金属またはアルカリ土類金属の弗化物が弗化リチウムであることを特徴とする請求項1または2に記載のタンタルのめっき法。
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