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JP3600526B2 - 新規カリウムチャネル蛋白質 - Google Patents
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JP3600526B2 - 新規カリウムチャネル蛋白質 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、遺伝子工学の分野に属し、特に脳に限定して発現している新規カリウムチャネル蛋白質または同効物、当該蛋白質又は同効物をコードする遺伝子、当該遺伝子を含むベクター、当該ベクターを含む宿主細胞等に関するものである。
背景技術
カリウムチャネルは、細胞の表面膜に存在しカリウムイオンを選択的に通す蛋白質で、細胞の膜電位のコントロールにおいて重要な役割を担っていると考えられている。特に、神経・筋細胞においては活動電位の頻度や持続性などを調節することにより、中枢・末梢神経のニューロトランスミッション、心臓のペースメーキング、筋肉の収縮などに寄与している。また、ホルモンの分泌、細胞容量の調整、細胞の増殖などにも関与していることが示されている。
チャネルの開閉機構から分類すると今までに膜電位依存性カリウムチャネル、内向き整流性カリウムチャネル、カルシウム依存性カリウムチャネル、受容体カップル型カリウムチャネルなどが同定されている。そのほか、ATP依存性カリウムチャネル、pH依存性カリウムチャネルなども報告されている。このうち、膜電位依存性カリウムチャネルは、膜電位が脱分極した際に開口する特性を有している。通常、カリウムイオンは細胞外が約5mM、細胞内が約150mMと非平衡状態で存在する。このため、脱分極により膜電位依存性カリウムチャネルが開口すると、細胞内から細胞外へとカリウムイオンが流出し、結果として膜電位の回復(再分極)を引き起こす。そのため、膜電位依存性チャネルの開口に伴って、神経・筋細胞の興奮性の低下などが誘導されることになる。また、非興奮性細胞においても例えばCa2+に対する駆動力の増大し同イオンの細胞内への流入が増大するなどの細胞機能の変化を引き起こす。膜電位依存性チャネルの開口を修飾する化合物は、神経・筋細胞の興奮性をはじめとして、さまざまな細胞の機能を調整できる可能性を持っている。
膜電位依存性カリウムチャネルの幾つかはすでに脳や心臓からその遺伝子が単離されており、タンパクの一次構造が明らかにされている。その一次配列より膜電位依存性カリウムチャネルは6箇所の膜貫通ドメイン(S1〜S6)と1個のイオン透過領域(H5)を持っていることが示唆されている。また、第4番目の膜貫通ドメインS4は正荷電を持った塩基性アミノ酸が3から4塩基おきに存在し、電圧センサーとして機能していることが推測されている。
これらのチャネルはアミノ酸配列の類似性によりShaker型とeag型に大きく2分することができる。Shaker型は非常に多様性の高いファミリーで、さらにKv1、Kv2、Kv3、Kv4の4群に分けることができる。一方、eag型はeag、eag-related gene、elkによって構成されており、その近縁遺伝子として過分極活性型のカリウムチャネルであるKAT遺伝子群、サイクリック・ヌクレオチドによって活性化するカチオンチャネルなどが存在する。
脳における膜電位依存性のカリウム電流の重要性については、これらのクローン化された膜電位依存性カリウムチャネルを用いて幾つかの知見が得られている。例えば、Kv1.1については、アンチセンスを用いたin vivo実験により記憶や痛みとの関連性が示唆されている(Meiri,N.et al.(1997)Pro.Natl.Acad.Sci.USA 94,4430-4434;Galeotti N.et al.(1997)J.Pharmacol.Exp.Ther.281,941-949)。Kv3.1については、大脳皮質のGABA作動性介在ニューロンの興奮性に関与していることが示されている(Massengill,J.et al.(1997)J.Neurosci.17,3136-3147)。一方、膜電位依存性カリウムチャネルの非選択的な阻害物質であるtetraethylammoniumや4-aminopyridineを用いた実験も幾つか報告されている。Tetraethylammoniumは大脳皮質由来の神経細胞の膜電位依存性カリウム電流を抑制するとともに、同神経細胞のアポトーシスも抑制することが示されている(Yu,S.P.et al.(1997)Science 278,114-117)。また、4-aminopyridineの脳室内投与はてんかん発作を引き起こすことが知られている。これらのことは、脳の膜電位依存性カリウムチャネルの活性を制御する薬剤が、記憶障害などによる痴呆、脳虚血に伴う神経細胞死、あるいは、てんかんなどの中枢性疾患の治療薬になる可能性を示唆している。
一方、今までにクローニングされている膜電位依存性カリウムチャネルの多くは、全身の臓器の中で多数の組織に分布している。そのため、特定の膜電位依存性カリウムチャネルに選択的に作用する薬剤を見いだしても、その薬剤は多くの組織に作用してしまい本来期待していない薬効までも誘導してしまう可能性がある。カリウムチャネルを標的として副作用の少ない薬剤を見いだすためには、発現組織が限定されているカリウムチャネルのクローニングが必要である。
発明の開示
本発明は、脳に限定して発現している新規カリウムチャネル蛋白質を、痴呆、脳虚血障害、てんかんなどの中枢性疾患の治療薬剤の標的として提供すること、さらに、本発明は、中枢性疾患の治療薬剤として有用な同カリウムチャネル蛋白質の活性を修飾する化合物およびペプチドのスクリーニング方法、中枢に特異的に作用し副作用の少ない、新規な中枢性疾患の治療薬剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、脳に限定して発現している新規カリウムチャネル蛋白質をコードする遺伝子を単離した。さらに本発明者らは、脳に限定して発現している新規カリウムチャネル蛋白質を発現させ、同カリウムチャネル蛋白質の活性を修飾する化合物およびペプチドのスクリーニング方法を確立することに成功した。
本発明は、
1)配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列、あるいは、該アミノ酸配列のアミノ酸を置換、欠失または挿入したアミノ酸配列を有し、かつ、脳に限定して発現しているカリウムチャネル蛋白質またはその同効物、
2)ヒト脳に限定して発現している1)記載のカリウムチャネル蛋白質またはその同効物、
3)配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列を有するカリウムチャネル蛋白質、
4)1)乃至3)記載のカリウムチャネル蛋白質またはその同効物をコードする遺伝子配列を有する遺伝子、
5)配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を有する遺伝子、
6)配列番号1の6番目乃至3257番目の遺伝子配列及び5の4番目乃至3057番目の遺伝子配列の何れかから選ばれた遺伝子配列を有する遺伝子、又は当該遺伝子と縮重の関係にある遺伝子、
7)4)乃至6)記載の遺伝子を含むベクター、
8)7)記載のベクターを含む宿主細胞、または、
9)8)記載の宿主細胞を用いる1)乃至3)記載のカリウムチャネル蛋白質の製造方法、
に関する。
以下、本発明で使用される用語に付き説明する。
「アミノ酸の置換、欠失もしくは挿入」とは、配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列中の1もしくは複数個のアミノ酸を置換、欠失または挿入することを意味する。
「脳に限定して発現している」とは、脳には発達しているが、心臓、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸、末梢血白血球には発現していないことをいい、具体的には、実施例の条件で、ノーザンブロットを行ったときに、シグナルが脳にのみ検出され、心臓、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸、末梢血白血球には検出されないことをいう。
また、「同効物」とは脳には発現しているが、心臓、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸、末梢血白血球には発現していない蛋白質のアミノ酸配列中の1もしくは複数個のアミノ酸を置換、欠失、挿入または付加を行った配列を有する蛋白質であっても、アミノ酸配列の変更を行っていないものと比較し同一の機能を有する蛋白質のことをいう。
「ヒト由来」とは、ヒトで発現しているカリウムチャネル蛋白質と同一のアミノ酸配列であることをいう。
なお、カリウムチャネルとカリウムチャネル蛋白質は、同義として用いられる。
本発明の新規カリウムチャネル蛋白質または同効物は、脳に限定して発現しているカリウムチャネル蛋白質または同効物なら何れでもよく、好ましくは、ヒト由来である。具体的には配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列、あるいは、配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸でアミノ酸の置換、欠失または挿入があるアミノ酸配列を有し、かつ、脳に限定して発現しているカリウムチャネル蛋白質またはその同効物であれば本発明に包含され、好ましくはヒト由来である。さらに好ましくは、配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列を有するカリウムチャネル蛋白質である。
また、本発明の新規カリウムチャネル蛋白質またはその同効物をコードする遺伝子配列を有する遺伝子は、脳に限定して発現しているカリウムチャネル蛋白質またはその同効物をコードする遺伝子配列を有する遺伝子なら何れでもよく、好ましくは、ヒト由来のカリウムチャネル蛋白質をコードする遺伝子である。具体的には配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列を有するカリウムチャネル蛋白質をコードする遺伝子、あるいは、配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸でアミノ酸の置換、欠失または挿入があり、かつ、脳に限定して発現しているカリウムチャネル蛋白質またはその同効物をコードする遺伝子配列を有する遺伝子であれば本発明に包含され、好ましくは該遺伝子はヒト由来のカリウムチャネル蛋白質またはその同効物をコード遺伝子である。さらに好ましくは、配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列をコードする遺伝子である。最も好ましくは、配列番号:1記載の遺伝子配列の6番目から3257番目を有する遺伝子及び配列番号:5記載の遺伝子配列4番目から3057番目を有する遺伝子の何れかである。また、ストリンジェントな条件下で、配列番号1もしくは5の遺伝子とハイブリダイズする遺伝子も本発明に包含される。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法(Maniatis,T.et al.(1982):"Molecular Cloning-A Laboratory Manual"Cold Spring Harbor Laboratory,NY)に従って実施することができる。ストリンジェントな条件下とは、ハイブリダイゼーション後2X SSC、0.1%SDSで2回洗浄し、さらに以下の洗浄操作を行った条件下のことをいう。
この洗浄操作とは0.5X SSC、0.1%SDS中で、好ましくは0.2X SSC、0.1%SDS中で、特に好ましくは0.1X SSC、0.1%SDS中で洗浄(65℃)を行うことをいう。本発明の新規カリウムチャネル蛋白質をコードする遺伝子は、以下の方法によって得ることができる。
1)新規カリウムチャネル遺伝子の製造方法
a)第1製造法
新規カリウムチャネル蛋白質を産生する能力を有するヒト細胞あるいは組織からmRNAを抽出する。次いでこのmRNAを鋳型として該チャネル蛋白質mRNAまたは一部のmRNA領域をはさんだ2種類のプライマーを用いる。逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(以下RT-PCRという)を行うことにより、該チャネル蛋白質cDNAまたはその一部を得ることができる。さらに、得られた新規カリウムチャネルcDNAまたはその一部を適当な発現ベクターに組み込むことにより、宿主細胞で発現させ、該チャネル蛋白質を製造することができる。
まず、本発明の新規カリウムチャネル蛋白質の産生能力を有する細胞あるいは組織、例えばヒト大脳皮質、から該蛋白質をコードするものを包含するmRNAを既知の方法により抽出する。抽出法としては、グアニジン・チオシアネート・ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン・塩酸法等が挙げられるが、好ましくはグアニジン・チオシアネート塩化セシウム法が挙げられる。該蛋白質の産生能力を有する細胞あるいは組織は、該蛋白質に特異的な抗体を用いたWestern blotting法などにより特定することができる。
mRNAの精製は常法に従えばよく、例えばmRNAをオリゴ(dT)セルロースカラムに吸着・溶出させ、精製することができる。さらに、ショ糖密度勾配遠心法等によりmRNAをさらに分画することもできる。
また、mRNAを抽出せずとも、市販されている抽出済mRNAを用いても良い。
次に、精製されたmRNAをランダムプライマー又はオリゴdTプライマーの存在下で、逆転写酵素反応を行い第1鎖cDNAを合成する。この合成は常法によって行うことができる。得られた第1鎖cDNAを用い、目的遺伝子の一部の領域をはさんだ2種のプライマーを用いてPCRに供し、目的とする新規カリウムチャネルDNAを増幅する。得られたDNAをアガロースゲル電気泳動等により分画する。所望により、上記DNAを制限酵素等で切断し、接続することによって目的とするDNA断片を得ることもできる。
b)第2製造法
本発明の遺伝子は上述の製造法の他、常法の遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。まず、前述の方法で得たmRNAを鋳型として逆転写酵素を用いて1本鎖cDNAを合成した後、この1本鎖cDNAから2本鎖cDNAを合成する。その方法としてはS1ヌクレアーゼ法(Efstratiadis,A.et al.(1976)Cell 7.279-288)、Land法(Land,H.et al.(1981)Nucleic Acids Res.9.2251-2266)、O.Joon Yoo法(Yoo,O.J.et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79,1049-1053)、Okayama-Berg法(Okayama,H.and Berg,P.(1982)Mol.Cell.Biol.2,161-170)などが挙げられる。
次に、上述の方法で得られる組換えプラスミドを大腸菌、例えばDH5α株に導入して形質転換させて、テトラサイクリン耐性あるいはアンピシリン耐性を指標として組換体を選択することができる。宿主細胞の形質転換は、例えば、宿主細胞が大腸菌の場合にはHanahanの方法(Hanahan,D.(1983)J.Mol.Biol.166,557-580)、すなわちCaCl2やMgCl2またはRbClを共存させて調製したコンピテント細胞に該組換えDNA体を加える方法により実施することができる。なお、ベクターとしてはプラスミド以外にもラムダ系などのファージベクターも用いることができる。
上記により得られる形質転換株から、目的の新規カリウムチャネル蛋白質のDNAを有する株を選択する方法としては、例えば以下に示す各種方法を採用できる。
▲1▼ 合成オリゴヌクレオチドプローブを用いるスクリーニング法
新規カリウムチャネル蛋白質の全部または一部に対応するオリゴヌクレオチドを合成し(この場合コドン使用頻度を用いて導いたヌクレオチド配列または考えられるヌクレオチド配列を組合せた複数個のヌクレオチド配列のどちらでもよく、また後者の場合、イノシシを含ませてその種類を減らすこともできる)、これをプローブ(32P又は33Pで標識する)として、形質転換株のDNAを変性固定したニトロセルロースフィルターとハイブリダイズさせ、得られたポジティブ株を検索して、これを選択する。
▲2▼ ポリメラーゼ連鎖反応により作製したプローブを用いるスクリーニング法
新規カリウムチャネル蛋白質の一部に対応するセンスプライマーとアンチセンスプライマーのオリゴヌクレオチドを合成し、これらを組合せてポリメラーゼ連鎖反応(Saiki,R.K.et al.(1988)Science 239,487-491)を行い、目的の新規カリウムチャネル蛋白質の全部又は一部をコードするDNA断片を増幅する。ここで用いる鋳型DNAとしては、新規カリウムチャネル蛋白質を産生する細胞のmRNAより逆転写反応にて合成したcDNA、またはゲノムDNAを用いることができる。このようにして調製したDNAを断片を32P又は33Pで標識し、これをプローブとして用いてコロニーハイブリダイゼーションまたはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより目的のクローンを選択する。
▲3▼ 他の動物細胞で新規カリウムチャネル蛋白質を産生させてスクリーニングする方法
形質転換株を培養し、遺伝子を増幅させ、その遺伝子を動物細胞にトランスフェクトし(この場合、自己複製可能で転写プロモーター領域を含むプラスミドもしくは動物細胞の染色体に組み込まれ得るようなプラスミドのいずれでもよい)、遺伝子にコードされた蛋白を細胞表面に産生させる。新規カリウムチャネル蛋白質に対する抗体を用いて該蛋白質を検出することにより、又はチャネル活性を指標として元の形質転換株より目的の新規カリウムチャネル蛋白質をコードするcDNAを有する株を選択する。
▲4▼ 新規カリウムチャネル蛋白質に対するチャネル活性を指標として選択する方法
あらかじめ、cDNAを発現ベクターに組込み、形質転換株表面で蛋白を産生させ、チャネル活性を指標に所望の新規カリウムチャネル蛋白質産生株を検出し、目的株を選択する。
▲5▼ 新規カリウムチャネル蛋白質に対する抗体を用いて選択する方法
あらかじめ、cDNAを発現ベクターに組込み、形質転換株表面で蛋白を産生させ、新規カリウムチャネル蛋白質に対する抗体および該抗体に対する2次抗体を用いて、所望の新規カリウムチャネル蛋白質産生株を検出し、目的の株を選択する。
▲6▼ セレクティブ・ハイブリダイゼーション・トランスレーションの系を用いる方法
形質転換株から得られるcDNAを、ニトロセルロースフィルター等にブロットし新規カリウムチャネル蛋白質産生細胞からのmRNAをハイブリダイズさせた後、cDNAに結合したmRNAを解離させ、回収する。回収されたmRNAを蛋白翻訳系、例えばアフリカツメガエルの卵母細胞への注入や、ウサギ網状赤血球ライゼートや小麦胚芽等の無細胞系で蛋白に翻訳させる。新規カリウムチャネル蛋白質に対する抗体を用いて検出して、目的の株を選択する。
得られた目的の形質転換株より新規カリウムチャネル蛋白質をコードするDNAを採取する方法は、公知の方法(Maniatis,T.et al.(1982):“Molecular Cloning-A Laboratory Manual"Cold Spring Harbor Laboratory,NY)に従い実施できる。例えば細胞よりプラスミドDNAに相当する画分を分離し、該プラスミドDNAよりcDNA領域を切り出すことにより行ない得る。
得られた目的の形質転換株より新規カリウムチャネル蛋白質をコードするDNAを採取する方法は、公知の方法(Maniatis,T.et al.(1982):“Molecular Cloning-A Laboratory Manual"Cold Spring Harbor Laboratory,NY)に従い実施できる。例えば細胞よりプラスミドDNAに相当する画分を分離し、該プラスミドDNAよりcDNA領域を切り出すことにより行ない得る。
c)第3製造法
配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAは、化学合成法によって製造した遺伝子断片を結合することによっても製造できる。各DNAは、DNA合成機(例えば、Oligo 1000M DNA Synthesizer(Beckman)、あるいは394 DNA/RNA Synthesizer(Applied Biosystems)など)を用いて合成することができる。
d)第4製造法
本発明DNAを利用して遺伝子工学的手法により得られる物質が脳に限定して発現している新規カリウムチャネル蛋白質機能を発現するためには、必ずしも配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列のすべてを有するものである必要は無く、例えばその一部の配列であって、それが脳に限定して発現している新規カリウムチャネル蛋白質の機能を示す限り、それらのアミノ酸配列もまた本発明のカリウムチャネル蛋白質に包含される。また、一般に真核生物の遺伝子はインターフェロン遺伝子等で知られているように、多型現象(polymorphism)を示すと考えられ(例えば、Nishi,T.et al.(1985)J.Biochem.97,153-159を参照)、この多型現象によって1または複数個のアミノ酸が置換される場合もあれば、ヌクレオチド配列の変化はあってもアミノ酸は全く変わらない場合もある。したがって、配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列の中の1もしくは複数個の部位において、1もしくは複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、または挿入されている蛋白質でもチャネル活性を有し、脳に限定して発現していることがありえる。これらの蛋白質を本発明においては、新規カリウムチャネル蛋白質の同効物と呼ぶ。
これらの新規カリウムチャネル蛋白質の同効物をコードする、同効の塩基配列を有する遺伝子はすべて本発明に含まれる。このような各種の本発明のDNAは、上記新規カリウムチャネル蛋白質の情報に基づいて、例えばホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller,M.et al.(1984)Nature 10,105-111)等の常法に従い、核酸の化学合成により製造することもできる。なお、所望アミノ酸に対するコドンはそれ自体公知であり、その選択も任意でよく、例えば利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して常法に従い決定できる(Crantham,R.et al.(1981)Nucleic Acids Res.9 r43-r74)。さらに、これら塩基配列のコドンの一部改変は、常法に従い、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用したサイトスペシフィック・ミュータジェネシス(site specific mutagenesis)(Mark,D.F.et al(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,5662-5666)等に従うことができる。
以上、a)乃至d)により得られるDNAの配列決定は、例えばマキサム−ギルバートの化学修飾法(Maxam,A.M.and Gilbert,W.(1980):“Methods in Enzymology"65,499-559)やM13を用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法(Messing,J.and Vieira,J(1982)Gene 19,269-276)等により行うことができる。
また、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明のカリウムチャネル蛋白質は、下記の方法によって得ることができる。
2)新規カリウムチャネルの組み換え蛋白質の製造方法
単離された新規カリウムチャネル蛋白質をコードする遺伝子を含む断片は、適当なベクターDNAに再び組込むことにより、他の真核生物の宿主細胞を形質転換させることができる。さらに、これらのベクターに適当なプロモーターおよび形質発現にかかわる配列を導入することにより、それぞれの宿主細胞において遺伝子を発現させることが可能である。
真核生物の宿主細胞には、脊椎動物、昆虫、酵母等の細胞が含まれ、脊椎動物細胞としては、例えばサルの細胞であるCOS細胞(Gluzman,Y.(1981)Cell 23,175-182)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)のジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株(Urlaub,G.and Chasin,L.A.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77,4216-4220)等がよく用いられているが、これらに限定されるわけではない。
脊椎動物細胞の発現ベクターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終結配列等を有するものを使用でき、これはさらに必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani,S.et al.(1981)Mol.Cell.Biol.1,854-864)等を例示できるが、これに限定されない。
宿主細胞として、COS細胞を用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞において自律増殖が可能であり、さらに転写プロモーター、転写終結シグナルおよびRNAスプライス部位を備えたものを用いることができ、例えば、pME18S、(Maruyama,K.and Takebe,Y.(1990)Med.Immunol.20,27-32)、pEF-BOS(Mizushima,S.and Nagata,S.(1990)Nucleic Acids Res.18,5322)、pCDM8(Seed,B.(1987)Nature 329,840-842)等が挙げられる。該発現ベクターはDEAE−デキストラン法(Luthman,H.and Magnusson,G.(1983)Nucleic Acids Res.11,1295-1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham,F.L.and vander Ed,A.J.(1973)Virology 52,456-457)および電気パルス穿孔法(Neumann,E.et al.(1982)EMBO J.1,841-845)等によりCOS細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。また、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、発現ベクターと共に、G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター、例えばpRSVneo(Sambrook,J.et al.(1989):“Molecular Cloning-A Laboratory Manual”Cold Spring Harbor Laboratory,NY)やpSV2-neo(Southern,P.J.and Berg,P.(1982)J.Mol.Appl.Genet.1,327-341)等をコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することにより新規カリウムチャネル蛋白質を安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。
上記で得られる所望の形質転換体は、常法に従い培養することができ、該培養により細胞内または細胞表面に新規カリウムチャネル蛋白質が生産される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、例えば上記COS細胞であればRPMI−1640培地やダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地に必要に応じ牛胎児血清(FBS)等の血清成分を添加したものを使用できる。
上記により、形質転換体の細胞内または細胞表面に生産される新規カリウムチャネル蛋白質は、該チャネル蛋白質の物理的性質や化学的性質等を利用した各種の公知の分離操作法により、それらより分離・精製することができる。該方法としては、具体的には例えばチャネル蛋白質を含む膜分画を可溶化した後、通常の蛋白沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換体クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せ等を例示できる。なお、膜分画は常法に従って得ることができる。例えば新規カリウムチャネル蛋白質を表面に発現した細胞を培養し、これらをバッファーに懸濁後、ホモジナイズし遠心分離することにより得られる。また、できるだけ緩和な可溶化剤(CHAPS、Triton X-100、ジキトニン等)でチャネル蛋白質を可溶化することにより、可溶化後もチャネルの特性を保持することができる。
本発明にはカリウムチャネル蛋白質の活性を修飾する化合物およびペプチドのスクリーニング法が包含されている。該スクリーニング法は、前記により構築された脳に限定して発現しているカリウムチャネル蛋白質を用いて、該カリウムチャネル蛋白質の生理学的な特性に応じたカリウムチャネル蛋白質の修飾の指標を測定する系に被験薬を添加し、該指標を測定する手段を含む。該測定系は、具体的には、以下のスクリーニング方法が挙げられる。また、被験薬は従来カリウムチャネルリガンド活性を有することは知られているが脳に限定して発現しているカリウムチャネル蛋白質の活性に対して選択的に修飾するか不明な化合物またはペプチド(例えば特開平4−178375号公報記載の化合物等)、あるいはケミカルファイルに登録されている種々のカリウムチャネルリガンド活性については不明の公知化合物やペプチド、コンブナトリアル・ケミストリー技術によって得られた化合物群やファージ・ディスプレイ法などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清や、植物、海洋生物由来の天然成分などもスクリーニングの対象となる。あるいは本発明のスクリーニング法により選択された化合物またはペプチドを化学的または生物学的に修飾した化合物またはペプチドを用いうる。
3)新規カリウムチャネル蛋白質の活性を修飾する化合物およびペプチドのスクリーニング方法
a)Voltage-clump法を利用したスクリーニング方法
新規カリウムチャネル蛋白質のチャネル活性はwhole-cell voltage-clamp法により測定することが可能である。同チャネル蛋白質を発現させた細胞をwhole-cell voltage-clamp法により膜電位固定し、全細胞電流を測定する。細胞外液には145mM NaCl、5.4mM KCl、2mM CaCl2、0.8mM MgCl2を含む溶液、細胞内液(パッチ電極液)は155mM KClを含む溶液などを用いる。脱分極刺激、すなわち、膜電位を保持電位(例えば-70mV)から脱分極側(例えば-80mV)にシフトさせることで生じる外向き電流を被検薬存在下と非存在下で比較することで、新規カリウムチャネル蛋白質の活性を修飾する化合物およびペプチドをスクリーニングすることができる。
b)Rb+イオンの放出を利用したスクリーニング方法
一般的にカリウムチャネルはK+イオンと同様にRb+イオンを通すことができるので、放射性同位元素86Rb+の放出を指標としてそのチャネル活性を測定することができる。新規カリウムチャネル蛋白質を発現させた細胞を86RbClとインキュベート(例えば18hr、37℃)することにより、86Rb+を同細胞内に取り込ませることができる。細胞は、低濃度K+生理食塩水(例えば4.5mM K+)で洗浄した後同様液に懸濁する。細胞懸濁液に高濃度K+溶液(例えば最終濃度100mM)を添加すると、細胞の膜電位が脱分極しカリウムチャネルが活性化される。これに伴い、細胞内の86Rb+が細胞外へ放出されるので、細胞外液の放射活性をチャネル活性の指標とすることができる。被験薬存在下と非存在下で高濃度K+溶液を添加した際の細胞外へ放出された放射活性を比較することで、新規カリウムチャネル蛋白質の活性を修飾する化合物およびペプチドをスクリーニングすることが可能である。
c)膜電位感受性色素や細胞内K+検出色素を利用したスクリーニング方法
膜電位感受性色素や細胞内K+検出色素は、カリウムチャネルの開口に伴う膜電位あるいは細胞内K+濃度の変化を光学的に検出することが可能である。膜電位感受性色素として、RH155、WW781、Di-4-ANEPPS、あるいはそれらの誘導体などを用いることができる。また、Shaker型の膜電位依存性カリウムチャネルのC末端細胞内領域にgreen fluorescent proteinのアミノ酸配列を挿入したキメラ蛋白質を膜電位の検出に用いることもできる(Siegel,M.S.and Isacoff,E.Y.(1997)Neuron 19,735-741)。細胞内K+検出色素としては、K+-binding benzofuran isophthalateなどを用いることができる。これらの色素を用いることにより新規カリウムチャネルのチャネル活性を測定することができ、被験薬存在下と非存在下で変化量を比較することで新規カリウムチャネル蛋白質の活性を修飾する化合物およびペプチドをスクリーニングすることが可能である。
本発明には、前記スクリーニング法により選択された脳に限定して発現しているカリウムチャネル蛋白質の活性を有意に修飾する化合物またはペプチドを有効成分とする医薬が包含される。
本発明医薬は、脳のカリウムチャネルの活性を選択的に制御する新規な薬理作用を有することを特徴としており、該医薬の用途としては脳のカリウムチャネル活性の亢進、低下、変性等の異常に起因するあるいは該異常を発現・併発する疾患、具体的には例えば痴呆、脳虚血障害、てんかんなどの中枢性疾患などが挙げられる。
本発明のカリウムチャネル蛋白質活性修飾化合物やペプチドを有効成分とする製剤は、該有効成分のタイプに応じて、それらの製剤化に通常用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製されうる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、経口用液剤などによる経口投与、あるいは静注、筋注などの注射剤、坐剤、経皮投与剤、経粘膜投与剤などによる非経口投与が挙げられる。特に胃酸によって消化されるペプチドにあっては静注等の非経口投与や下部消化管デリバリー投与等が望まれる。
本発明による経口投与のための固体組成物は、一つ又はそれ以上の活性物質が少なくとも一つの不活性な希釈剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどと混合される。組成物は常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば滑沢剤、崩壊剤、安定化剤、溶解乃至溶解補助剤などを含有していてもよい。錠剤や丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質などのフィルムで被覆していてもよい。
経口のための液体組成物は、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。該組成物は不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を含む。水溶性の溶液剤や懸濁剤には、希釈剤として例えば注射用蒸留水、生理用食塩水などが含まれる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としてはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80等を含む。該組成物はさらに湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解乃至溶解補助剤、防腐剤などを含んでいてもよい。組成物は例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合、または照射によって無菌化される。また、無菌の固体組成物を製造し、使用に際し無菌水その他の無菌用注射用媒体に溶解し使用することもできる。
投与量は前記スクリーニング法により選択された有効成分の活性の強さ、症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して適宜決定される。
【図面の簡単な説明】
図1は、配列番号:2(上段)及び配列番号:6(下段)カリウムチャネルのアミノ酸配列を示す。
図2は、新規カリウムチャネルに関するヒトの各臓器におけるノーザン解析の結果を示す。A、Bは配列番号:2のカリウムチャネル、C、Dは配列番号:6のカリウムチャネルの結果を表している。
図3は、新規カリウムチャネルに関するヒト脳の各領域についてのノーザン解析の結果を示す。A、Bは配列番号:2のカリウムチャネル、C、Dは配列番号:6のカリウムチャネルの結果を表している。
図4A、Bは、カリウムチャネル(配列番号:2)に関するin situ hybridizationの結果を示す(DG,歯状回の顆粒細胞層;CA1、CA3,アンモン角CA1およびCA3錐体細胞層;Cx,大脳皮質)。C、Dは大脳皮質の拡大像を表している(矢印は典型的な錐体細胞におけるシグナルを示す)。Hybridizationにはantisense probe(A、C)あるいはsense probe(B、D)を用いた。Scale barは1.5mm(A、B)あるいは50μm(B、D)を表している。
図5は、脱分極刺激によるカリウムチャネル(配列番号:2)のチャネル活性検出結果を示す。
図6は、脱分極刺激によるカリウムチャネル(配列番号:6)のチャネル活性検出結果を示す。
図7は、配列番号:2に示すカリウムチャネルのtail電流を示す。
図8は、配列番号:6に示すカリウムチャネルの高カリウム細胞外液中での電流応答を示す。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を更に具体的に開示するために、実施例を記載するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特に断りがない場合は、公知の方法(Maniatis,T.et al.(1982):"Molecular Cloning-A Laboratory Manual"Cold Spring Harbor Laboratory,NY)に従って実施可能である。
(実施例1)新規カリウムチャネル蛋白質をコードする遺伝子の単離
新規カリウムチャネル蛋白質をコードする全長cDNAは、ヒト脳由来のpoly A+RNA(Clontech)をtemplateとしてRT-PCRにより取得した。
配列番号:2に示すカリウムチャネル蛋白質の遺伝子を単離する為に、Forwar dprimerとして5'-GGAATTCC CTA AGA TGC CGG CCA TGC-3'(配列番号:3)、reverse primerとして5'-GCTCTAGAGC ACT CTG AGG TTG GGC CGA AC-3'(配列番号:4)を用いた(それぞれの5'末端にはEcoRI siteとXbaI siteが付加してある)。RT-PCRはPfu DNA polymerase(Stratagene)を用いて、Hot Start法で行った。最初に96℃(1分)で熱変性を行った後、96℃(10秒)/68℃(30秒)/72℃(7分)のサイクルを35回繰り返した。その結果、約3.3kbpのDNA断片が増幅された。この断片をEcoRIとXbaIで消化した後、pME18S plasmidを用いてクローニングした。pME18S plasmidは、動物細胞において強力なプロモーター活性を示すSR(プロモーター(Takebe,Y.at al.(1988)Mol.Cell.Biol.8,466-472)を持っているので、動物細胞に組み換え蛋白質を発現させるのに使用できる。同plasmidは千葉大・斉藤より供与されたものを使用した(Maruyama,k.and Takebe,Y.(1990)Med.Immunol.20,27-32)。得られたクローンpME-Elの塩基配列はdideoxy terminator法によりABI337 DNA Sequencer(Applied Biosystems)を用いて解析した。明らかになった配列を配列表 配列番号:1に示す。
同配列は3252 baseのopen reading frame(配列番号:1の第6番目から第3257番目)を持っている。Open reading frameから予測されるアミノ酸配列(1083アミノ酸)を配列表 配列番号:2に示す。
配列番号:6に示すカリウムチャネル蛋白質の遺伝子を単離する為に、Forward primerとして5'-GCC ATG CCG GTC ATG AAG G-3'(配列番号:7)、reverse primerとして5'-GCC AGG GTC AGT GGA ATG TG-3'(配列番号:8)を用いた。RT-PCRはTaKaRa LA Taq(宝酒造)を用いて、Hot Start法で行った。最初に98℃(1分)で熱変性を行った後、98℃(15秒)/68℃(3分)のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃で10分間伸長反応を行った。その結果、約3.1kbpのDNA断片が増幅された。この断片をpCR2.1 plasmid(Invitrogen)を用いてクローンニングした。得られたクローンの塩基配列を配列表 配列番号:5に示す。同遺伝子は動物細胞で発現させるためpME18S plasmidにサブクローニングし、pME-E2とした。配列番号:5は3054 baseのopen reading frame(配列番号:5の第4番目から第3057番目)を持っている。Open reading frameから予測されるアミノ酸配列(1017アミノ酸)を配列表 配列番号:6に示す。
両カリウムチャネルのアミノ酸配列は、膜電位依存性カリウムチャネルの特徴である6個の膜貫通ドメイン(S1〜S6)と思われる疎水性領域を有している。さらに、電圧センサーと考えられているS4ドメインは塩基性アミノ酸が3アミノ酸毎に連続する特徴を持っており、S5とS6の間にはH5領域に相当する中程度の疎水性配列も存在する。さらに、両アミノ酸配列はお互いに高い相同性を持っている。両アミノ酸配列のアライメント結果を図1に示す。全体のアミノ酸配列では48%、疎水性領域(配列番号:2の227番目のTrpから508番目のTyrまで。配列番号:6の229番目のTrpから482番目のTyrまで)では70%の相同性を示した。なお、配列アライメントおよび相同性の解析には、解析ソフトLasergene(DNASTAR)のMegAlignプログラムを用いた。
(実施例2)ヒト組織における新規カリウムチャネル遺伝子の発現分布
Northern blot hybridization法により新規カリウムチャネル遺伝子の発現分布を解析した。ProbeにはC末端の細胞内領域に相当するcDNA断片(配列番号:2のカリウムチャネルについては配列番号:1の第2105番目から第2956番目、配列番号:6のカリウムチャネルについては配列番号:5の第2241番目から第2898番目)を用いた。ヒトの各臓器由来のpoly A+RNA(2μg)をブロットしたメンブレンとprobeのhybridizationは50%formamide、5x SSPE、10x Denhardt's溶液、2%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中で、42℃(18時間)で行った。メンブレンは、最終的に0.1x SSC、0.1%SDSを含む溶液で2回(配列番号:2のカリウムチャネルについては55℃、配列番号:6のカリウムチャネルについては60℃で、それぞれ30分間)洗浄した。
ヒトの各臓器(心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸、末梢血白血球)についてNorthern解析を行ったところ、配列番号:2のカリウムチャネルについては約4kbのシグナルが、配列番号:6のカリウムチャネルについては約4.4kbと約7.5kbのシグナルが、脳にのみ検出された(図2)。すなわち、両新規カリウムチャネルのmRNAは脳に限定して発現していることがわかった。なお、配列番号:6カリウムチャネルmRNAの脳に選択的な発現は、RT-PCR解析によっても確認された。
さらに、ヒト脳の各領域(小脳、大脳皮質、延髄、脊髄、大脳皮質後頭葉、大脳皮質前頭葉、大脳皮質側頭葉、被殻、扁桃体、尾状核、脳梁、海馬、黒質、視床下核、視床)についてもNorthern解析を行った。配列番号:2に示すカリウムチャネルのmRNAは大脳皮質、扁桃体、海馬、綿条体(被殻、尾状核)といった終脳に限定して発現していることがわかった(図3A、B)。一方、配列番号:6に示すカリウムチャネルのmRNAは線条体、大脳皮質に多く発現していることがわかった(図3C、D)。また、弱い発現が海馬、扁桃体に認められた。両カリウムチャネル遺伝子の分布はオーバーラップしていた。
(実施例3)中枢神経細胞における新規カリウムチャネルの発現分布
中枢神経細胞における新規カリウムチャネル遺伝子の発現を検証するために、ラット脳切片のin situ hybridization解析を行った。In situ hybridizationは、ジゴキシゲニン標識したantisense RNA probeを用いて既報(Okumura,K.et al.(1997)Oncogene 14,713-720)に従って実施した。コントロール実験にはsense probeを用いた。Probeは、以下の手順で明らかにしたラットのカリウムチャネル遺伝子の配列を基に作成した。
ラットのカリウムチャネル遺伝子の部分配列を取得するために、5'-ACC TTC CTG GAC ACC ATC GC-3'(配列番号:11)と5'-CCA AAC ACC ACC GCG TGC AT-3'(配列番号:12)をprimerとしたRT-PCRを行った。両primerはそれぞれ配列番号:2のアミノ酸配列14番から20番と493番から499番に相当している。ラット脳より単離したpoly A+RNAをtemplateとしてRT-PCRを行った結果、配列番号:2と配列番号:6記載カリウムチャネルのラット・オーソローガス遺伝子(orthologous gene)に相当するそれぞれ約1.5kbと約1.4kbの断片が得られた。次に、それぞれの断片から明らかになった塩基配列を基に、それぞれについてRACEを行い、全長配列を明らかにした。RACEはRat Brain Marathon-Ready cDNA(Clontech)を用い、指定された手順に従って実施した。配列番号:2記載カリウムチャネルのラット・オーソローガス遺伝子(orthologous gene)の配列を配列番号:9に、配列番号:6記載カリウムチャネルのラット・オーソローガス遺伝子(orthologous gene)の配列を配列番号:10に示す。
配列番号:2に記載カリウムチャネルの前記ラット・オーソローガス遺伝子(orthologous gene)用probeには、配列番号:9の2683番目から3204番目のantisense配列あるいはsense配列を用いた。In situ hybridizationの結果、antisense probeを用いた時だけ、海馬にシグナルが認められ、同部位における発現が確認できた(図4A、B)。海馬での発現は、歯状回の顆粒細胞、アンモン角CA1およびCA3の錐体細胞などの神経細胞に認められた。特異的なシグナルは大脳皮質の神経細胞である錐体細胞にも認められた(図4C、D)。以上のように、同カリウムチャネルは中枢の神経細胞に発現していることが確認できた。
配列番号:6記載カリウムチャネルの前記ラット・オーソローガス遺伝子(orthologous gene)用probeには、配列番号10の3140番目から3705番目の配列を用いた。同カリウムチャネルは大脳皮質の神経細胞に強く発現していることがわかった。
(実施例4)新規カリウムチャネル蛋白質の発現の誘導
新規カリウムチャネル蛋白質のチャネル活性を検出するために、動物細胞に同蛋白質の発現を誘導した。細胞には、膜電位の変化によって内在性のチャネルによる電流を発生しないL929細胞を用いた。細胞の形質転換はpME-E1 plasmidあるいはpME-E2 plasmidを用いてリポフェクトアミン法により行った。
(実施例5)新規カリウムチャネル蛋白質のチャネル活性の検出
形質転換された細胞をwhole-cell voltage-clamp法により膜電位固定し、全細胞電流を測定した。細胞外は140mM NaCl、5.4mM KCl、2mM CaCl2、0.8mM MgCl2、15mM Glucose,10mM HEPES-Na(pH=7.4)を含む溶液、細胞内は125mM KCl、1mM CaCl2、2mM MgCl2、11mM EGTA、10mM HEPES-K(pH=7.2)を含む溶液を用いた。
pME-E1で形質転換された細胞については保持電位-70mVから200msec間、-40mVから+80mVまで20mV間隔で(図5)、pME-E2で形質転換された細胞については保持電位-120mVから200msec間、-60mVから+60mVまで20mV間隔で脱分極刺激した(図6)。その結果、両細胞で明らかな外向き電流が惹起された。このことから、配列番号:2に示した蛋白質、配列番号:6に示した蛋白質ともに膜電位依存性チャネルであることがわかった。
(実施例6)新規カリウムチャネル蛋白質におけるK+イオンの選択性
配列番号:2に示したカリウムチャネルのK+イオンの選択性を検証するために、tail電流を測定した。電流は実施例5と同様な方法で検討した。Tail電流(保持電位-70mVから200msec間+80mVの脱分極刺激によりチャネルを活性化させた後、-120mVから-20mVまで20mV間隔で再分極)から、この溶液下での反転電位は-80mVであった(図7)。この値はNernstの式から得られるK+の平衡電位(-87mV,25℃;[K]out=5.4mM,[K]in=158mM)とほぼ一致するため、このチャネルはK+イオンに対する選択性が大きいと考えられた。
配列番号:6に示したカリウムチャネルのK+イオン選択性の検証には、155mM KCl、4.5mM N-methyl-D-glucamine、2mM CaCl2、10mM Glucose,10mM HEPES(pH=7.4)を含む細胞外溶液を用いた。その他は実施例5と同様な方法で検討した。脱分極刺激(保持電位-120mVから200msec間、-20mVから+20mVまで10mV間隔)を行ったところ、電流応答は0mVを境に反転した(図8)。このことから、反転電位はおよそ0mVと見積もられた。この値がNernstの式から得られるK+の平衡電位(-5mV,25℃;[K]out=155mM,[K]in=158mM)とほぼ一致することおよび実施例5において外向き電流が惹起されたことから、このチャネルはK+イオンに対する選択性が大きいと考えられた。
産業上の利用可能性
本発明により、脳に限定して発現している新規なカリウムチャネル蛋白質、該蛋白質をコードする遺伝子、該遺伝子を含むベクター、該ベクターを含む宿主細胞、該カリウムチャネル蛋白質の製造方法が提供された。
また、本発明のカリウムチャネル蛋白質と被験薬を接触させることにより、該カリウムチャネル蛋白質の活性を修飾する化合物およびペプチドをスクリーニングし、新たな医薬、特に、新たな中枢性疾患治療剤をスクリーニングする方法を提供した。
例えば実施例3の結果より配列番号:2に示す本発明のカリウムチャネルの発現している組織の中で海馬は、記憶・学習との関連性が強く示唆されている領域である(Levitan,I.B.and Kaczmarek L.K.(1991)The Neuron:Cell and Molecular Biology,Oxford University Press,New York,NY.)。なかでも、当該カリウムチャネルの発現が確認された歯状回の顆粒細胞、CA1およびCA3錐体細胞は神経回路を形成しており、各種記憶入力は歯状回の顆粒細胞からCA1錐体細胞を経てCA3錐体細胞へとグルタミン酸を神経伝達物質とする興奮性シナプスを介して伝達される。それぞれのシナプスで認められる長期増強、長期抑圧といったシナプス伝達効率の長期変化は、記憶・学習に深く関わっていると考えられている。これらの長期変化が神経細胞の興奮頻度や興奮強度によって調節されていること、膜電位依存性カリウムチャネルは一般的に神経細胞の興奮性をコントロールできる可能性を持っていることなどより、膜電位依存性カリウムチャネルである本発明のカリウムチャネル蛋白質は、神経細胞の興奮性制御を介して記憶・学習の形成に関与している可能性が考えられる。
本発明のカリウムチャネル蛋白質の活性を特異的に修飾する化合物およびペプチドを有効成分とする医薬は、中枢特異的に作用し、副作用の少ない、例えば痴呆、脳虚血障害、てんかんなどの中枢性疾患治療剤等としての有用性が期待できる。
【配列表】
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Claims (7)

  1. 配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列を有するカリウムチャネル蛋白質。
  2. ストリンジェントな条件下で、配列番号1もしくは5の遺伝子とハイブリダイズする遺伝子がコードするカリウムチャネル蛋白質。
  3. 請求の範囲1乃至2記載のカリウムチャネル蛋白質をコードする遺伝子配列を有する遺伝子。
  4. 配列番号2及び6の何れかから選ばれたアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を有する遺伝子。
  5. 請求の範囲3乃至4記載の遺伝子を含むベクター。
  6. 請求の範囲記載のベクターを含む宿主細胞。
  7. 請求の範囲記載の宿主細胞を用いる請求の範囲1乃至2記載のカリウムチャネル蛋白質の製造方法。
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