JP3600766B2 - メカニカルシール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は回転軸の軸周を密封するメカニカルシールであって、特に、摺動環が他の環状部材に嵌合保持された構造を備えるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
メカニカルシールには、静止側摺動環と回転側摺動環との摺動面の両側に存在する空間のうち、いずれの空間が相対的に高圧になっても密封性能を発揮するものがある。図5はその一例を部分的に示すもので、静止側摺動環101がベローズ102によって軸方向の押し付け力が付与され、この静止側摺動環101に密封的に摺接する回転側摺動環103が、保持部材であるリテーナ104に嵌合保持された構造を備えている。
【0003】
回転側摺動環103は、リテーナ104の筒状張出部104aの内周にパッキン105を介して密嵌されると共に、ピン106との係合によって回転軸100側からの回転力がリテーナ104を介して伝達される。また、静止側摺動環101と回転側摺動環103による密封摺動面SFの内周側に連なる空間Bが、前記密封摺動面SFの外周側に連なる空間Aより高圧になる逆圧状態の時に、その差圧が回転側摺動環103の背面に作用することによって、この回転側摺動環103がベローズ102を圧縮しながらリテーナ104から抜け出すことのないように、回転側摺動環103は、リテーナ104の筒状張出部104aの内周溝に嵌着されたスナップリング107によって抜け止めがなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来構造のメカニカルシールによれば、リテーナ104からの摺動環103の抜け止めがリテーナ104の筒状張出部104aの内周溝に、密封摺動面SF側から嵌着されたスナップリング107によりなされていることから、このスナップリング107の内径と、摺動環103の摺動面の外径D1 とのクリアランスΔD1 が、スナップリング嵌着用溝の溝深さdよりも大きく設定されていないと、スナップリング107の装着が不可能である。したがって、摺動環103の外径D2 は、少なくともD1 +2d以上とする必要があり、その結果リテーナ104の外径も大きくなり、径方向に対して大きな装着スペースが必要であった。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その主な技術的課題とするところは、保持部材に対する摺動環の抜け止め構造によって、径方向の装着スペースを小さくすることの可能なメカニカルシールを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係るメカニカルシールは、回転側又は静止側の摺動環が保持部材に嵌合保持され、前記摺動環と、その外周を包囲する前記保持部材の筒状張出部の互いの対向周面に、それぞれ円周方向へ延びる溝が形成され、前記保持部材の筒状張出部にその先端から延びてこの筒状張出部の内周溝を円周方向へ分断する切欠が形成され、前記両溝間に嵌合するストッパが前記切欠から前記両溝間へ円周方向に挿入された構成を備える。
【0007】
上記構成によれば、摺動環を保持部材の筒状張出部の内周へ収容保持した後、径方向に互いに対向する前記摺動環の外周溝と前記筒状張出部の内周溝との間に、この筒状張出部に前記内周溝を円周方向へ分断するように形成された切欠からストッパを円周方向へ挿入することによって、ストッパが前記両溝間に嵌合され、保持部材からの摺動環の抜け止めがなされる。この構造において、ストッパは摺動環の端面を係止するものではなく、前記筒状張出部の内周面と摺動環の外周面間に介在する構造であるため、前記摺動環の外径を摺動面の外径と一致させることが可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るメカニカルシールの好ましい一実施形態を用いた軸封装置全体を示すものである。なお、以下の説明において、「背面」とはメカニカルシール1の密封摺動面SFと反対側を向いた面のことであり、「後端」あるいは「後部」とは、前記密封摺動面SFと反対側の端部のことである。
【0009】
図1において、参照符号2は複数の環状部材21,22がボルト・ナット23によって組み立てられた軸封部のハウジング、3はハウジング2の内周に挿通されてその軸心の周りに回転される回転軸である。前記ハウジング2と回転軸3との間で軸封を行うメカニカルシール1は、ハウジング2側に非回転状態に配置された静止側シールユニット11と、回転軸3側に軸方向移動自在に配置されてこの回転軸3と共に回転される回転側シールユニット12とを備える。
【0010】
静止側シールユニット11は、カーボン材料からなる静止側摺動環としてのシールリング111と、このシールリング111を密嵌保持する静止側リテーナ112と、ハウジング2を構成する環状部材22の内周フランジ部22aにガスケット115を介してボルト116により固定されたベローズカラー113と、軸方向両端が前記静止側リテーナ112とベローズカラー113に溶接されたベローズ114とからなる。すなわち、シールリング111は、静止側リテーナ112、ベローズ114及びベローズカラー113を介して、ハウジング2側に非回転状態にかつ軸方向移動可能な状態に保持されている。
【0011】
一方、回転側シールユニット12は、シールリング111と対向端面同士で密接した状態に配置されたSiCからなる回転側摺動環としてのメイティングリング121と、このメイティングリング121を嵌合保持する保持部材である回転側リテーナ(以下、単にリテーナという)122と、このリテーナ122の背面にボルト124を介して固定されると共に、回転軸3に外装された軸スリーブ31の一端にピン123aを介して係止されたコンプレッションリング123とを備える。すなわち、前記メイティングリング121は、回転軸3に外装された軸スリーブ31から、コンプレッションリング123及びリテーナ122を介して回転トルクが伝達されることにより、回転軸3と一体的に回転して、非回転のシールリング111との間に密封摺動面SFを形成する。
【0012】
軸スリーブ31は、コンプレッションリング123との係合部と反対側の端部31aに円周方向等間隔で開設された孔31bに、その外周に配置されたスリーブカラー32からねじ込まれた複数のセットスクリュ33によって、回転軸3の外周に固定されている。前記端部31aの内周段差部と回転軸3の外周面との間にはパッキン34が挿入されており、このパッキン34は、前記スリーブカラー32に軸方向にねじ込まれたボルト35の締め付け力で、シールカバー36を介して圧縮されることにより、回転軸13と軸スリーブ31との間をシールするものである。
【0013】
ハウジング(環状部材22)には、シールリング111とメイティングリング121による密封摺動面SFの外周側に連なる機内空間S1に向けて開口された所要数のフラッシング孔2aが形成されている。すなわち、機内空間S1内の密封対象液は、このフラッシング孔2aを通じて、図示されていない外部の循環装置との間で循環されている。
【0014】
メカニカルシール1と軸スリーブ31との間のクエンチング空間S2には、バッフルスリーブ4が配置されており、その基部4aがハウジング2を構成する環状部材22の内周フランジ部22aの背面に固定されている。なお、ベローズカラー113を固定するボルト116は、前記バッフルスリーブ4の基部4aに対する固定手段を兼ねるものである。
【0015】
バッフルスリーブ4の基部4aの背面側には円筒面シール5が配置されており、ハウジング2の環状部材22の外端内周部にフランジ部材51及びボルト52を介して固定されている。更に、前記環状部材22には、前記バッフルスリーブ4の外周空間へ向けて開口されたクエンチング液供給孔2bと、前記バッフルスリーブ4の基部4aの背面側の空間へ向けて開口されたクエンチング液排出孔2cが形成されている。
【0016】
円筒面シール5は、フランジ部材51に固定されたケース部材53内に非回転状態に収容されたシールリング54が、その内周面を軸スリーブ31の外周面に微小隙間を介して密封的に摺接されると共に、一端面を、円周方向複数配置されたコンプレッションスプリング55の軸方向付勢力によって、前記ケース部材53の内側面と密接された構造を有する。そしてこれによって、バッフルスリーブ4の基部4aの背面側でクエンチング空間S2を密封し、クエンチング液が機外空間S3へ流出するのを防止するものである。
【0017】
すなわち、クエンチング液供給孔2bから供給されたクエンチング液は、メカニカルシール1の静止側シールユニット11とバッフルスルーブ4との間の隙間をメカニカルシール1の密封摺動面SFの内周側まで迂回して流れ、そこから前記バッフルスリーブ4と軸スリーブ31との間の隙間及びバッフルスリーブ4の基部4aの背面側を経由して、クエンチング液排出孔2cから排出される。そしてこのようなクエンチング液の流通によって、メカニカルシール1の密封摺動面SFで発生する摺動熱を除去すると共に、前記密封摺動面SFからクエンチング空間S2内へ漏洩した機内の密封対象流体を、機外空間S3へ流出することのないようにクエンチング液排出孔2cから排出するものである。
【0018】
ここで、メカニカルシール1における回転側シールユニット12の構成について、更に詳しく説明すると、図2及び図3に示されるように、メイティングリング121は軸心を通る平面で切断した断面形状が略L字形をなすものであって、すなわち静止側シールユニット11のシールリング111との密封摺動面SFが形成された大径部121aと、その背面側へ延びる小径部121bとを有する。前記大径部121aの外周面には、円周方向に連続した溝121cが形成されており、前記小径部121bの後端部には、円周方向2等配(180°間隔)で係合切欠121dが形成されている。
【0019】
リテーナ122は、軸スリーブ31の外周面に支持される内径フランジ部122aと、その外周部から突出形成されて、メイティングリング121の小径部121bの後部外周面を挿入可能な段差部122bと、更にその外周部から突出形成されて、メイティングリング121の大径部121aを挿入可能な筒状張出部122cとを有する。メイティングリング121は、このリテーナ122に、大径部121aにおける密封摺動面SF側の端部が前記筒状張出部122cから露出した状態で嵌合保持される。
【0020】
リテーナ122の内径フランジ部122aには、円周方向2等配(180°間隔)でピン122dが突設されている。このピン122dは、メイティングリング121の後端の各係合切欠121dと係合することによって、メイティングリング121とリテーナ122との相対回転を阻止し、リテーナ122からメイティングリング121へ回転トルクを伝達するものである。
【0021】
リテーナ122における内径フランジ部122aの背面には、パッキン125が装着されており、このパッキン125は、先に説明したボルト124の締め付けにより、コンプレッションリング123及びスプリットリング126を介して圧縮され、前記内径フランジ部122aと軸スリーブ31との間を密封するものである。また、メイティングリング121の大径部121aと小径部121bの外周面間の段差部には、パッキン127が嵌着される。このパッキン127は、前記メイティングリング122をリテーナ122に嵌合保持した状態では、その筒状張出部122cの内周面との間で適当に圧縮され、メイティングリング121とリテーナ122との間を密封するものである。
【0022】
メイティングリング121における大径部121aの外周面を包囲するリテーナ122の筒状張出部122cの内周面には、前記大径部121aの外周面に形成された溝121cと互いに対応する位置に、円周方向に延びる溝122eが形成されており、両溝121c,122e間には、ストッパ28が嵌着されるようになっている。このストッパ28は、SUS等の鋼材からなり、図2に示されるように円周方向に延びると共にその一部が切断された略C字形をなすことによって、半径方向への適当な弾性が与えられている。
【0023】
リテーナ122の筒状張出部122cの先端部には、その内周面に形成された溝122eを円周方向へ分断する切欠122fが、円周方向2等配(180°間隔)で形成されている。
【0024】
以上の構成において、メカニカルシール1は、密封摺動面SFの外周側に連なる機内空間S1が、内周側に連なるクエンチング空間S2より高圧となる正圧状態では勿論、機内空間S1よりクエンチング空間S2が相対的に高圧となる逆圧状態であっても、その差圧が、ベローズ114に対して静止側シールユニット11のシールリング111をメイティングリング121側へ押し付ける背圧として作用する。
【0025】
そして、クエンチング液の軸方向の圧力に対するメイティングリング121の受圧面積は、シールリング111との密封摺動面SFの内周側の受圧面積よりも、背面側の受圧面積の方が大きいため、機内空間S1よりクエンチング空間S2が相対的に高圧となる逆圧状態の時は、メイティングリング121は、リテーナ122から抜け出す方向への軸方向変位力を受ける。しかしながら、前記メイティングリング121は、その大径部121aの外周面に形成された溝121cと、リテーナ122の筒状張出部122cの内周面に形成された溝122eに跨がって嵌着されたストッパ128によって、リテーナ122との相対的な軸方向変位が阻止されているので、前記逆圧時に、メイティングリング121がベローズ114を圧縮するようにリテーナ122から抜け出してしまうことがない。したがって、このメカニカルシール1は、正圧に対しても逆圧に対しても優れた密封性能を発揮することができる。
【0026】
また、リテーナ122に対してメイティングリング121を抜け止めするためのストッパ128が、メイティングリング121の大径部121aの外周面に形成された溝121cと嵌合する構成となっているため、図5に示された従来構造のものと異なり、メイティングリング121の外径を、C字形のストッパ128のスパンを考慮して密封摺動面SFより十分に大径にするといった必要がなく、メイティングリング121の外径を、密封摺動面SFの外径と略同一にすることができる。このため、メイティングリング121の半径方向の肉厚を従来よりも小さくすることができ、その結果、リテーナ122の半径方向の寸法も小さくして、メカニカルシール1全体の小型化を図ることができる。
【0027】
なお、メイティングリング121をリテーナ122に組み付けるには、まず、メイティングリング121の小径部121bの外周面にパッキン127を嵌め込んでから、前記メイティングリング121をリテーナ122に挿入する。その際、メイティングリング121を適当に回転させることによって、その小径部121bの後端に形成された係合切欠121dを、リテーナ122の内径フランジ部122aに突設されたピン122dと係合させる。そしてこの状態では、メイティングリング121の大径部121aの外周面に形成された溝121cと、リテーナ122の筒状張出部122cの内周面に形成された溝122eとが、半径方向に互いに対向する位置にある。
【0028】
次に、図4に示されるように、リテーナ122の筒状張出部122cに形成された切欠122fを通じて、ストッパ128の一端128aを、互いに半径方向に対向した位置にある溝121c,122e間へ挿入する。ストッパ128は、半径方向に対する弾性を有するため、前記筒状張出部122cの外周側から切欠122fを通じて適当に弾性変形しながら溝121c,122e間へ連続的に押し込まれて円周方向へ移動して行き、嵌合状態となる。そして、このようにしていったん挿入されたストッパ128は、前記溝121c,122e間から外部へ逸脱するようなことはない。
【0029】
なお、上記実施形態においては、回転側の摺動環(メイティングリング121)が回転側の保持部材(リテーナ122)に嵌合された構造のものに本発明を適用した場合について説明したが、メカニカルシール1の仕様によっては、静止側の摺動環と、その保持部材との装着構造ついても、同様に構成することができる。また、ストッパ128は、必ずしもC字形に延びるものである必要はなく、ワイヤ状のものや、金属環を円周方向複数箇所で切断した円弧状のものも採用可能であり、その断面形状も図示のような円形のものには限定されない。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るメカニカルシールによると、摺動環とこれを嵌合保持する保持部材との抜け止めをするためのC字形のストッパは、摺動環の端面を係止するものではなく、前記保持部材の筒状張出部の内周面と摺動環の外周面間に介在する構造であるため、前記摺動環の外径を密封摺動面の外径と略同一とすることができ、このため摺動環及び保持部材を半径方向に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るメカニカルシールの好ましい一実施形態を用いた軸封装置全体を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図2】上記実施形態における要部を分解して示す一部切断した斜視図である。
【図3】上記実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図4】上記実施形態におけるメイティングリングとリテーナとの間にストッパを挿入する過程を示す説明図である。
【図5】従来技術を示す部分的な断面図である。
【符号の説明】
1 メカニカルシール
121 メイティングリング(回転側摺動環)
121c,122e 溝
122 回転側リテーナ(保持部材)
122c 筒状張出部
122f 切欠
128 ストッパ
SF 摺動面
Claims (1)
- 回転側又は静止側の摺動環が保持部材に嵌合保持され、
前記摺動環と、その外周を包囲する前記保持部材の筒状張出部の互いの対向周面に、それぞれ円周方向へ延びる溝が形成され、
前記保持部材の筒状張出部にその先端から延びてこの筒状張出部の内周溝を円周方向へ分断する切欠が形成され、
前記両溝間に嵌合するストッパが前記切欠から前記両溝間へ円周方向に挿入されたことを特徴とするメカニカルシール。
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