JP3602682B2 - 重合性直鎖アルキルピリジニウム化合物およびそれを含有する重合性組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は新規な直鎖アルキルピリジニウム化合物に関し、抗菌性を有する重合体を製造しうる抗菌性重合性単量体に関するものである。さらに詳しくは、抗菌成分が溶出しない非溶出型抗菌性重合体を製造しうる重合性単量体に関する。本発明により製造される重合性組成物は、抗菌性医療用具(歯科材料、人工臓器のモジュール、人工血管、カテーテル、人工皮膚、創傷被覆材、骨セメント)を始めとし、冷蔵庫の内装材、建築物の内装用塗料などに幅広く利用することが可能である。
【0002】
【従来の技術】
従来から抗菌性を有するポリマーは知られており、その一例として溶出型の抗菌性成分を含むポリマーが挙げられる。特開昭62−201806号公報には、公知のカチオン型界面活性剤の塩化セチルピリジニウムを含有する歯科用抗菌性組成物が開示されている。しかし、溶出型の抗菌性ポリマーは、抗菌性成分の溶出により経時的に抗菌性が低下し、抗菌性成分がなくなればその抗菌性は失われる。また、溶出した抗菌性成分は正常組織にも移行するため、その為害性をなくすことはできなかった。さらに、抗菌性成分の配合により材料の機械的強度も低下する問題もあった。
【0003】
前述のような溶出型ポリマーの問題点を解決するために、分子内に共重合性基と抗菌性を発現する基とを併せ持つ抗菌性単量体が開発されている。例えば、ビニル基と長鎖アルキルアンモニウム基を併せ持つ化合物、塩化ジメチルセチル(4ービニル)ベンジルアンモニウム(繊維高分子材料研究所研究報告第159号17頁(1988年))、メタクリロイル基と長鎖アルキルピリジニウム基を併せ持つ化合物、臭化メタクリロイルオキシドデシルピリジニウム(特開平6−9725号公報)等が知られており、これらの単量体を配合した組成物を重合させることにより重合後の表面に非溶出型の抗菌性を発現させることが可能とされている。しかしこれらの抗菌性単量体は、重合後の表面の抗菌性が弱いために、表面に接触した細菌を十分に死滅させることができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点を解決するために、重合させた後も、硬化物表面に強い非溶出型の抗菌性を発現させることが可能な強力な抗菌性重合性単量体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を加えた結果、抗菌活性部と重合性基を併せ持ち、且つその抗菌活性発現部位と重合性部位の間に一定の距離を保つような連結部を有する新規な化合物により、かかる課題を達成できることを見いだした。
【0006】
さらに詳しくは、抗菌性単量体として、分子内に重合可能なオレフィン性不飽和基と、抗菌活性発現部位である直鎖アルキルピリジニウム基と、これらを結合する原子数6から15の有機基からなる下記一般式(1)
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、XはOまたはNHを表し、R2は−CO−,−CO2−,−OCO−,−O−,−S−,−OCONH−および−NHCO2−から選ばれる一つ以上の基が−CR4R5−を介して連結してなる有機基であって主鎖を構成する原子数が6から15となる有機残基を表し、R4、R5は水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシル基またはアルコキシ基から選ばれる同一もしくは異なる基を表し、R3は炭素数12から22の直鎖アルキル基を表し、Zはハロゲン原子を表す)で表される重合性直鎖アルキルピリジニウム化合物である抗菌性単量体を提供することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明の直鎖アルキルピリジニウム化合物は、ピリジン誘導体、スペーサー、官能性重合性単量体を反応させて重合性ピリジン誘導体を製造し、次に長鎖アルキルハロゲン化物を反応させてピリジン環に長鎖アルキル基を導入し製造することができる。また、ピリジン誘導体、スペーサー、長鎖アルキルハロゲン化物を反応させて長鎖アルキルピリジニウム化合物を製造し、次に官能性重合性単量体を反応させて製造することもできる。
ピリジン誘導体としては、スペーサーを結合させうる官能基を有するものであれば何でも使用できるが、例えば水酸基を有するものとしてピリジルメタノール、ピリジルプロパノール等、カルボキシル基を有するものとしてニコチン酸、イソニコチン酸等を挙げることができる。
【0010】
重合性単量体としては、共重合可能なビニル基と、スペーサーと結合可能な官能基を併せ持つものであれば何でも使用できるが、例えばカルボキシル基を有するものとして(メタ)アクリル酸、イタコン酸等、水酸基を有するものとして2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリレートあるいはこれらのカプロラクトン変成物等、アミド基を有するものとして(メタ)アクリルアミド等、エポキシ基を有するものとしてグリシジル(メタ)アクリレート等、アジリジル基を有するものとしてイミノール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0011】
スペーサーとしては、上記官能性ピリジン誘導体と官能性単量体とを化学結合させうる官能基を2個有し、且つピリジン環と重合性基を結合する主鎖の原子数が6から15となる化合物が使用できる。スペーサーは1種の化合物で連結基を構成してもよく、2種以上の化合物が結合して上記の原子数となる連結基を構成してもよい。また2個の官能基は環を形成していてもよい。官能基としては、上記ピリジン誘導体および単量体の有する官能基と化学結合、具体的にはエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合等を形成可能である官能基であれば何でも使用できるが、例えばカルボキシル基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、ハロゲン原子あるいはこれらの活性化体である酸ハライド、酸無水物、アルコキシド等が挙げられる。
これらのスペーサーを例示すると、無水コハク酸、無水グルタル酸、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチレンイソシアネート、4−クロロブタノール、エチレンブロモヒドリン等が挙げられる。
【0012】
長鎖アルキルハロゲン化物は、CH3(CH2)nXで表され、nは11から21の整数であり、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素である化合物である。nが10より小さくても、22より大きくても抗菌性が低くなるため、nはこの範囲であるのが好ましい。化合物を具体的に例示すると、フッ化ドデシル、フッ化セチル、フッ化ステアリル、塩化ドデシル、塩化セチル、塩化ステアリル、臭化ドデシル、臭化テトラデシル、臭化セチル、臭化ステアリル、臭化エイコシル、ヨウ化ドデシル、ヨウ化セチル、ヨウ化ステアリル等を挙げることができる。
【0013】
上記官能性ピリジン誘導体、官能性単量体、スペーサーおよび長鎖アルキルハロゲン化物の結合は、通常有機合成に用いられる手法により形成することができる。例えば、エステル結合の形成であれば、一方に水酸基あるいはエポキシ基、他方にカルボキシル基あるいはその活性化体を用い、必要に応じ酸あるいは塩基触媒存在下にエステル結合を形成させ、通常の後処理、精製操作を経てエステル体を得ることができる。同様にウレタン結合では一方に水酸基、他方にイソシアネート基を用い、塩基あるいはスズ化合物触媒存在下にウレタン結合を形成させ、通常の後処理、精製操作を経てウレタン体を得ることができる。また、ピリジン誘導体とアルキルハロゲン化物との結合は、両化合物を加熱することにより生成し、通常の精製操作を経て4級ピリジニウム構造を得ることができる。
【0014】
このようにして得られた本発明の抗菌性単量体として具体的には以下のものが挙げられる。
【0015】
【化3】
【0016】
本発明の抗菌性単量体は、この単量体単独あるいは他の共重合可能な単量体あるいは樹脂類と共に、重合開始剤の使用の下に重合硬化させることにより、硬化物表面に強い非溶出型の抗菌性を付与することが可能である。共重合可能な単量体もしくは樹脂類としてはアクリル系単量体、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、塩化ビニルのように特殊な反応条件によらずとも容易に重合するものであれば、何でも使用できる。これら共重合可能な単量体あるいは樹脂類の添加量は、本発明の抗菌性単量体の抗菌効果を十分に発現するためには99.99重量%以下であるのが好ましい。
【0017】
使用する重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であれば何でも使用できるが、具体的にはベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物、トリブチルボラン、ベンゾイルパーオキサイド/芳香族第3級アミン系、芳香族スルフィン酸(またはその塩)/芳香族第2級または第3級アミン/アシルパーオキサイド系などの常温重合開始剤が挙げられる。また、カンファーキノン、カンファーキノン/p−ジメチルアミノ安息香酸エステル系、カンファーキノン/p−ジメチルアミノベンゾフェノン、カンファーキノン/芳香族スルフィン酸塩系、カンファーキノン/過酸化物、カンファーキノン/アルデヒド系、カンファーキノン/メルカプタン系、アシルフォスフィンオキサイドなどの光重合開始剤を挙げることができる。なお、紫外線照射による光重合を行う場合には、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、2−エチルチオキサントン、ジアセチル、ベンジル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィドなどが好適である。さらには、常温重合開始剤と光重合開始剤の両方を同時に使用することも可能である。また重合触媒は通常組成物全体に対して0.1〜10重量%の範囲内で使用される。
【0018】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
還流冷却器および塩化カルシウム管を備えた500ml容ナス型フラスコに、4−ピリジルメタノール22.4g、無水コハク酸20.5g、ピリジン20mlおよびトルエン200mlを仕込み、12時間加熱還流させた。反応混合物を室温まで放冷後、析出した固体を濾取しトルエンで洗浄後、減圧乾燥した。淡黄色微粉末としてコハク酸(4−ピリジルメチル)半エステル39.8g(93%収率)を得た。
塩化カルシウム管を備えた200ml容ナス型フラスコに上記で得られたコハク酸半エステル19.4gおよび塩化チオニル50mlを仕込み、80℃で5時間加熱撹拌した。過剰の塩化チオニルを減圧留去し、残渣に乾燥塩化メチレン80mlを加えた。ここへ2−ヒドロキシエチルメタクリレート13.3gを乾燥塩化メチレン20mlに溶解させたものを滴下し、その後室温で終夜撹拌した。反応混合物を水、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣を減圧乾燥することで、黄褐色油状物としてコハク酸[2−(メタクリロイルオキシエチル)](4−ピリジルメチル)エステル24.8g(83%収率)を得た。
【0020】
還流冷却器および塩化カルシウム管を備えた20ml容ナス型フラスコに上記で得られたコハク酸エステル2.18g、1−ブロモドデカン1.65mlおよび4−メトキシフェノール0.03gを仕込み、120℃で1時間加熱撹拌した。放冷後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、淡赤褐色固体2.25gを得た。これを酢酸エチルより再結晶し、無色鱗状晶として臭化ドデシル[4−[3−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシカルボニル]プロパノイルオキシメチル]ピリジニウム(化合物1)2.03g(52%収率)を得た。
1H−NMR(270MHz,CDCl3,ppm from TMS) 0.87(3H t), 1.24(18H s), 1.93(3H s), 2.0−2.1(2H m), 2.7−2.8(4H m), 4.34(4H s), 4.98(2H t), 5.43(2H s), 5.57 (1H s), 6.12(1H s), 8.03(2H d), 9.37(2H d)
【0021】
(実施例2)
還流冷却器及び塩化カルシウム管を備えた20ml容ナス型フラスコに実施例1中で得られたコハク酸[2−(メタクリロイルオキシエチル)](4−ピリジルメチル)エステル2.92g、1−ブロモヘキサデカン2.80gおよび4−メトキシフェノール0.04gを仕込み。120℃で2時間加熱撹拌した。反応混合物を冷却し、得られた赤褐色半固体を酢酸エチルより再結晶し、淡黄色鱗状晶として臭化ヘキサデシル[4−[3−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシカルボニル]プロパノイルオキシメチル]ピリジニウム(化合物2)2.85g(50%収率)を得た。
【0022】
1H−NMR(270MHz,CDCl3,ppm from TMS) 0.88(3H t), 1.24(26H s), 1.95(3H s),2.0−2.1(2H m), 2.7−2.8(4H m), 4.33(4H s), 4.98(2H t), 5.44(2H s), 5.57 (1H s), 6.12(1H s), 8.05(2H d), 9.40(2H d)
【0023】
(実施例3)
還流冷却器および塩化カルシウム管を備えた200ml容ナス型フラスコに,3−(4−ピリジル)プロパノール13.7g、無水コハク酸10.0g、ピリジン10mlおよびトルエン100mlを仕込み。20時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、析出した淡黄色固体を濾取した。これをトルエンで洗浄後、減圧乾燥することでコハク酸3−(4−ピリジル)プロピル半エステルを淡黄色微粉末として22.8g(96%収率)得た。
還流冷却器および滴下ロートを備えた200ml容三頭フラスコに、上記で得られた半エステル22.8gおよびジクロロエタン100mlを仕込み、0℃2冷却した。ここへグリシジルメタクリレート13.6gを50mlのジクロロエタンに溶解したものを2時間かけて滴下し、その後8時間加熱還流した。反応混合物を放冷後、水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、淡黄色油状物としてコハク酸[(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシ)プロピル][3−(4−ピリジル)プロピル]を19.3g(53%収率)得た。
【0024】
還流冷却器および塩化カルシウム管を備えた100ml容ナス型フラスコに、上記で得られたコハク酸エステル19.3g、1−ブロモドデシル12.9gおよび4−メトキシフェノール0.1gを仕込み、100℃で3時間加熱攪拌した。反応混合物を氷冷し、得られた赤褐色の半固体を酢酸エチルから再結晶し、淡黄褐色固体として臭化ドデシル[4−[3−[3−[2−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシ)プロピルオキシカルボニル]プロパノイルオキシ]プロピル]ピリジニウム](化合物3)12.1g(38%収率)を得た。
1H−NMR(270MHz,CDCl3,ppm from TMS)0.87(3H t),1.24(18H s),1.2−1.3(2Hm),1.95(3H s), 2.0−2.1(2H m),2.7−2.8(4H m),2.86(2H t),3.7−3.8(4H m),4.10(1H m),4.32(4H s),5.58(1H s),6.13(1H s),8.03(2H d),9.38(2H d)
【0025】
(実施例4)
還流冷却器を備えた200ml容ナス型フラスコに3−(4−ピリジル)プロパノール6.85g、δ−バレロラクトン5.00g、p−トルエンスルホン酸0.5gおよびトルエン100mlを仕込み、10時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却後、水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、淡褐色油状物として5−ヒドロキシ吉草酸3−(4−ピリジル)プロピル5.33g(45%収率)で得た。
窒素雰囲気下、100ml容ナス型フラスコに、上記で得られた5−ヒドロキシ吉草酸エステル5.33g、トリエチルアミン3.75mlおよび乾燥塩化メチレン30mlを仕込み、0℃に冷却した。ここへ塩化メタクリロイル2.64mlを滴下し、その後室温で終夜撹拌した。反応混合物に70mlの塩化メチレンを加え、これを水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、残渣を減圧乾燥することで淡赤褐色油状物として5−メタクリロイルオキシ吉草酸3−(4−ピリジル)プロピル5.84g(85%収率)で得た。
【0026】
還流冷却器および塩化カルシウム管を備えた50ml容ナス型フラスコに、上記で得られた5−メタクリロイルオキシ吉草酸エステル5.84g、1−ブロモヘキサデカンおよび4−メトキシフェノール0.08gを仕込み、120℃で2時間加熱撹拌した。反応混合物を氷冷し、析出した固体を酢酸エチルより再結晶し、淡紅褐色微粉末として臭化ヘキサデシル[4−[3−(5−メタクリロイルオキシ)バレロイルオキシ]プロピル]ピリジニウム(化合物4)5.48g(47%収率)を得た。
1H−NMR(270MHz,CDCl3,ppm from TMS) 0.86(3H t), 1.2−1.3(32H s), 1.95(3H s), 2.0−2.1(2H m), 2.31(2H t), 2.86(2H t), 4.21(2H t), 4.33(2H t), 4.96(2H t), 5.58(1H s), 6.12(1H s), 8.03(2H d), 9.37(2H d)
【0027】
(実施例5)水分凝縮器を備えた200ml容丸底フラスコに、4−ピリジルメタノール3.27g、12−アミノドデカン酸6.45g、濃硫酸5.88gおよびクロロホルム100mlを仕込み、流出する水分を除きながら48時間加熱還流した。放冷後、反応混合物に200mlの水を加え、苛性ソーダでpHを9に調整し、分液した水層をクロロホルムで抽出した。合わせた有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し残渣を減圧乾燥することで、暗褐色油状物として12−アミノドデカン酸(4−ピリジル)メチル3.86g(42%収率)を得た。窒素雰囲気下、100ml容ナス型フラスコに、上記で得られた12−アミノドデカン酸エステル3.86g、トリエチルアミン2.10mlおよび乾燥アセトニトリル50mlを仕込み、0℃に冷却した。ここへ塩化メタクリロイル1.47mlを滴下し、その後室温で終夜攪拌した。反応混合物から溶媒を留去し、残渣に塩化メチレン50mlを加え溶解し、これを水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、淡黄色油状物として12−メタクリロイルアミノドデカン酸(4−ピリジル)メチル3.68g(78%収率)を得た。
【0028】
還流冷却器および塩化カルシウム管を備えた20ml容ナス型フラスコに、上記で得られた12−メタクリロイルアミノドデカン酸エステル3.66g、1−クロロヘキサデカン2.55gおよび4−メトキシフェノール0.05gを仕込み、120℃で3時間加熱撹拌した。反応混合物を室温まで放冷後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、淡褐色固体として塩化ヘキサデシル[4−(12−メタクリロイルアミノ)ドデカノイルオキシメチル]ピリジニウム(化合物5)1.43g(23%収率)を得た。
1H−NMR(270MHz,CDCl3,ppm from TMS) 0.87(3H t), 1.2−1.3(44H s), 1.93(3H s), 2.0−2.1(2H m), 2.33(2H t), 3.21(2H q−like), 4.98(2H t), 5.45(2H s), 5.58(1H s), 6.11(1H s), 6.7(1H br−s), 8.03(2H d), 9.38(2H d)
【0029】
(実施例6)
窒素雰囲気下、温度計、還流冷却器および滴下漏斗を備えた100ml容三頭フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート16.2mlを仕込んだ。ここへ室温で4−ピリジルメタノール1.09g、ジブチルスズラウリレート一滴およびジクロロエタン20mlを滴下し、60℃で3時間加熱撹拌した。反応混合物を室温まで放冷した後、ここへ2−ヒドロキシエチルメタクリレート29.8gおよびジクロロエタン20mlを滴下し、60℃で8時間加熱撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、これを酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下に留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、黄色油状物として1,6−ヘキサンジカルバミン酸(2−メタクリロキシエチル)(4−ピリジルメチル)エステル2.56g(63%収率)を得た。
【0030】
還流冷却器および塩化カルシウム管を備えた20ml容ナス型フラスコに、上記で得られた1,6−ヘキサンジカルバミン酸エステル2.56g、1−ブロモヘキサデカン1.93gおよび4−メトキシフェノール0.06gを仕込み、120℃で2時間加熱撹拌した。反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し 淡黄褐色微粉末として臭化ヘキサデシル[4−[6−(2−メタクリロキシ)エトキシカルボニルアミノ]ヘキシルアミロキシメチル]ピリジニウム(化合物6)1.75g(39%収率)を得た。
1H−NMR(270MHz,CDCl3,ppm from TMS) 0.85(3H t), 1.23(26H s), 1.5−1.7(8H m), 1.94(3H s), 2.05(2H m), 3.23(4H q−like), 4.34(4H s), 4.98(2H t), 5.2(2H br−s), 5.50(2H s), 5.57(1H s), 6.12(1H s), 8.05(2H d), 9.38(2H d)
【0031】
(試験片の調製方法)
重合性単量体、抗菌性基を有する単量体、光重合開始剤を含有する組成物を、直径20mm、厚さ0.5mmの金型に填入、両面を1分間ずつ光照射して重合硬化させ、円盤状の試験片を作成した。得られた試験片をメタノールに1時間浸漬し、表面の未重合モノマーを除去した後、エチレンオキサイドガス滅菌を行った。
【0032】
(抗菌性試験方法)
S.mutans(IFO13955)を、BHI(ブレインハートインフージョン)培地中で一夜培養した後、細菌濃度が5×103(CFU/ml)になるように生理食塩水で希釈した。この希釈液10μlを試験片の上にマイクロピペッターを用いて滴下し、そのまま15分間静置した後、試験片をさかさまにして、試験片上の液をBHI寒天培地に押しつけて残存細菌を回収した。さらに、試験片をBHI寒天培地の異なる部分に押しつけて、細菌を残らず寒天培地に回収した。その後、37℃で48時間好気培養を行った後、寒天培地に形成されるコロニー数を計測した。各サンプルについて、形成コロニー数と、接種した全細菌数をもとに、下記の計算式に従って、細菌死滅率を求めた。
(細菌死滅率)=(接種細菌数)−(形成コロニー数)/(接種細菌数)×100(%)
【0033】
同じようにして、細菌濃度が5×104(CFU/ml)、5×105(CFU/ml)になるように希釈した細菌希釈液を用いて、全く同じ試験を行った。さらに、S.mutansの代わりに、枯草菌(B.subtilis、IFO13721)、ブドウ球菌(S.aureus、IFO12732)、大腸菌(E.coli.、IFO12734)を用いて、上記と全く同じ試験を行った。
【0034】
上記の細菌死滅率が100%の場合には、サンプル上に接種した細菌がすべて死滅したことを示し、サンプル表面に非常に強い抗菌性が発現していることを示すものである。逆に細菌死滅率が0%の場合には、接種した細菌がすべて生存していることを示し、サンプル表面には抗菌性がないことを示すものである。さらに、細菌死滅率が0%から100%の間の場合には、細菌を完全に死滅させることはできないものの、ある程度の抗菌性を有していることを示すものである。本発明の目的からすれば、死滅率100%のものが好ましいが、死滅率80%以上の場合には、十分目的を達しうるものと判断される。
【0035】
(溶出試験方法)
S.mutans(IFO13955)を、BHI(ブレインハートインフージョン)培地中で一夜培養した後、細菌濃度が1×106(CFU/ml)になるように生理食塩水で希釈した。この希釈液を、BHI寒天プレートに塗布した後乾燥した。その上に試験片を置き、37℃で48時間好気培養を行った後、試験片の周辺に形成される阻止斑の有無を観察し、以下の判定基準により判定した。
(+):サンプルの周囲に細菌の増殖が抑制された阻止斑が形成された。
(−):サンプルの周囲に阻止斑が全く形成されなかった。
【0036】
さらに、S.mutansの代わりに、枯草菌(B.subtilis、IFO13721)、ブドウ球菌(S.aureus、IFO12732)、大腸菌(E.coli.、IFO12734)を用いて、上記と全く同じ試験を行った。
【0037】
上記の判定の結果、(+)のものは、サンプル表面から抗菌性物質が溶出されたことを示しており、本発明の目的のひとつである非溶出型抗菌性の発現という要求を満たしていないことになる。前述の抗菌性試験の結果、100%の死滅率を示したサンプルであっても、この溶出試験で阻止斑が形成されたものは、本発明の目的を達成することはできないと判断される。
【0038】
(実施例7)
実施例1で合成した化合物1および、ビスフェノールAジ(2−ヒドロキシプロポキシ)ジメタクリレート(以下BisGMAと略称する)、トリエチレングリコールジメタクリレート(以下3Gと略称する)、カンファーキノン(以下CQと略称する)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下DMAEMAと略称する)を表1に記載した割合で配合したモノマー混合物を調製した。該組成物を用いて前述の方法により試験片を作製し、前述の抗菌性試験方法に従い、S.mutansに対する抗菌性を評価した。結果を表2に示す。さらに、同じ方法で調製した試験片を用いて、前述の溶出試験方法に従い、S.mutans、に対する阻止斑形成の有無を観察した。さらに、S.mutansの代わりに、枯草菌(B.subtilis、IFO13721)、ブドウ球菌(S.aureus、IFO12732)、大腸菌(E.coli.、IFO12734)を用いて、上記と全く同じ試験を行った。結果を表2、3に示す。
【0039】
(実施例8〜12)
実施例2〜6で合成した化合物2〜6および、BisGMA、3G、CQ、DMAEMAを表2に記載した割合で配合したモノマー混合物を調製した。該組成物を用いて実施例1と同様の方法により、S.mutans、B.subtilis、S.aureus、E.coli.に対する抗菌性試験および阻止斑形成試験を行った。結果を表2、3に示す。
【0040】
(比較例1)
実施例1で用いた化合物1の代わりに、塩化ジメチルセチル(4ーベンジル)アンモニウム(化合物7)および、BisGMA、3G、CQ、DMAEMAを表1に記載した割合で配合したモノマー組成物を調製した。該組成物を用いて実施例1と同様の方法により、S.mutans、B.subtilis、S.aureus、E.coli.に対する抗菌性試験および阻止斑形成試験を行った。結果を表2、3に示す。
【0041】
(比較例2)
実施例1で用いた化合物1の代わりに、臭化メタクリロイルオキシドデシルピリジニウム(化合物8)を用いて、BisGMA、3G、CQ、DMAEMAを表1に記載した割合で配合したモノマー組成物を調製した。該組成物を用いて実施例1と同様の方法により、S.mutans、B.subtilis、S.aureus、E.coli.に対する抗菌性試験および阻止斑形成試験を行った。結果を表2、3に示す。
【0042】
(比較例3)
実施例1で用いた化合物1の代わりに、塩化セチルピリジニウム(化合物9)を用いて、BisGMA、3G、CQ、DMAEMAを表1に記載した割合で配合したモノマー組成物を調製した。該組成物を用いて実施例1と同様の方法により、S.mutans、B.subtilis、S.aureus、E.coli.に対する抗菌性試験および阻止斑形成試験を行った。結果を表2、3に示す。
【0043】
表2から明らかなように、実施例1〜6で合成した化合物1〜6を含む組成物の重合硬化後の表面には、接触した4種の細菌を全て死滅させ得るだけの強い抗菌性が発現している(実施例7〜12)。さらに、表3から明らかなように、実施例1〜6で合成した化合物1〜6を含む組成物の重合硬化後の表面からは、抗菌性成分の溶出は見られない。従って、これらの組成物の抗菌性は非溶出型の抗菌性であることは明らかである。これに対して、表2から明らかなように、比較例1〜3の組成物では、接触させた4種の細菌いずれの場合にも、全て死滅させることはできなかった。また、比較例3の化合物では、表2から明らかなように重合後の表面に接触させた細菌は全て死滅したが、表3から明らかなように、この抗菌性は表面から溶出した抗菌性成分による抗菌性である。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【発明の効果】
抗菌性を有する重合性単量体を歯科用組成物に配合することにより、重合後の組成物表面に非溶出型の抗菌性を付与することは公知であるが、該技術による歯科用組成物は、重合後の表面に抗菌性を有するものの、接触した細菌を速やかに死滅させることはできなかった。これに対して、本発明では、抗菌性単量体として重合可能なオレフィン性不飽和基と、抗菌活性発現部位である長鎖アルキルピリジニウム基と、これらを結合する原子数6から15の有機基からなる新規な共重合性抗菌剤を配合することによりその重合硬化後の組成物の表面に接触した細菌を速やかに死滅させることができる強い抗菌性が発現することを見いだした。
【0048】
上記の抗菌性は、重合後の組成物をアセトン、メタノールなどで洗浄することにより、未重合の重合性単量体やリン酸化合物を洗浄除去した後にも確認されたことから、これらの抗菌性成分の溶出による効果ではなく、組成物表面に共有結合で固定化された非溶出型の抗菌性であることが判った。従って、抗菌成分が溶出することにより抗菌性が低下することはなく、その抗菌性は半永久的に保持される。
Claims (2)
- (a)重合性単量体、(b)請求項1に記載される重合性直鎖アルキルピリジニウム化合物および(c)重合開始剤を含むことを特徴とする重合性組成物。
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-
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