JP3603966B2 - 核酸 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は新規遺伝子に関し、更に詳細には、高親和性抗体の選抜、及び人工抗体分子の作製等に有用な遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術】
抗体の抗原特異性はV領域(VH 、VL )のアミノ酸配列によって決定されている。この抗体の可変領域を含むFab、あるいはFv部分を大腸菌に発現させた抗体ライブラリーが作製されている。すなわち、マウス及びヒト由来のVH 及びVL 遺伝子をPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いて、増幅した後に大腸菌発現ベクターに組込み発現させたものである〔サイエンス(Science)、第246巻、第1275〜1281頁(1989)、ネイチャー(Nature) 、第341巻、第544〜546頁(1989)、ジャーナル オブ モレキュラー バイオロジー(Journal of Molecular Biology) 、第213巻、第617〜619頁(1990)、ネイチャー、第347巻、第483〜485頁(1990)、サイエンス、第240巻、第1038〜1041頁(1988)、同、第240巻、第1041〜1043頁(1988)〕。
更に、目的の抗原と反応する抗体分子を発現する組換体を効率的にスクリーニングするために、抗体分子を線状ファージのコートタンパク質と融合タンパク質の形で発現させた、いわゆるファージ提示抗体ライブラリーも作製されている〔プロシーデイングズ オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシージ オブ ザ USA(Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA)第89巻、第3576〜3580頁(1992)、同、第89巻、第4457〜4461頁(1992)、同、第88巻、第7978〜7982頁(1991)、同、第88巻、第4363〜4366頁(1991)、ジャーナル オブ モレキュラー バイオロジー、第227巻、第381〜388頁(1992)、同、第226巻、第889〜896頁(1992)、同、第222巻、第581〜597頁(1991)、ネイチャー、第352巻、第624〜628頁(1991)、同、第348巻、第522〜554頁(1990)、同、第349巻、第293〜299頁(1991)〕。
【0003】
このファージ提示抗体ライブラリーでは、ファージ表面に抗体分子由来ポリペプチドがあるために、抗原を固定化した樹脂等でファージ粒子を直接スクリーニングでき、そのファージ粒子を大腸菌に再度感染させることにより増殖できる。なお、本明細書中で用いるファージ粒子とはファージミド粒子も含まれる。したがって、短時間に数多くのクローンをスクリーニングすることができるばかりでなく、目的抗体分子をコードする遺伝子の回収が容易である。得られた目的抗体分子をコードする遺伝子から抗体分子を回収する方法としては、制限酵素消化により、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を取り除き、抗体分子のみを発現させることができる。また抗体遺伝子とファージコートタンパク質遺伝子の間にアンバー変異を入れておき、大腸菌の種類を変えることにより、抗体分子、あるいは抗体分子とコートタンパク質の融合タンパク質をそれぞれ選択的に発現できるベクターも構築されている。
また、発現された抗体分子を精製、あるいは使用するために抗体分子に短いペプチド鎖を融合させ、そのペプチド鎖に対する抗体を用いることにより、抗体を精製、あるいは検出することもでき、また酵素と融合タンパク質として発現させて、その酵素活性により、検出する形にしたものも開発されている〔バイオ/テクノロジー(Bio/Technology) 、第11巻、第601〜605頁(1993)、同、第10巻、第1128〜1132頁(1992)、ジーン(Gene) 、第122巻、第361〜365頁(1992)〕。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
抗体と抗原の親和力をいう場合、アフィニティーと呼ばれる固有親和力と、アビディティーと呼ばれる機能的親和力がある。前者は、抗体と抗原の結合部位で形成されている結合の強さ、すなわち、水素結合、疎水結合、ファンデルワールス力などにより決定される親和力であり、後者は、アフィニティーの強さに加えて、抗体及び抗原の結合部位の価数が多価である場合の総合的な親和力である。実際に抗体分子を免疫実験に用いる場合、アフィニティーが強く特異的であることが必要であるが、更にその価数が多い分子である方が実用上有用であり、アフィニティーが低い抗体分子であっても、その価数が多ければ全体として強い親和性を示すことになる。
ファージ提示抗体ライブラリーなどで用いられているベクターでは、抗体分子はFabフラグメントあるいは一本鎖Fvフラグメント〔VH 、VL フラグメント間を数個のアミノ酸残基からなるスペーサーにより結合させて、一本鎖ポリペプチドとしたもの(以下scFvと略す)〕の形で発現させている。しかしながら、1つのファージ粒子に何個の抗体分子が提示されているかは不明であり、その個数の制御方法も示されていない。また、得られた抗体分子のアビディティーを上げて、実用上有用な形への変換方法も開示されていない。
本発明の目的は、ファージ提示抗体発現系において、提示された抗体機能を持つ分子の個数を制御し、アフィニティーの高い抗体分子を選抜する方法を提供でき、また得られた抗体分子を、多価の結合性を持たせることによりアビディティーが高く、抗原を高感度で検出できる人工抗体を作成する方法を提供することのできる遺伝子を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明は下記一般式(化1)で表される核酸に関する。
【0006】
【化1】
【0007】
〔式中X'は抗体可変部位をコードする塩基配列を含有する核酸、Yは線状ファージコートタンパク質III又はVIIIをコードする塩基配列を含有し、かつその最後に終止コドンが存在する核酸、ZはプロテインA、プロテインG若しくはこれらのFc結合ドメインをコードする塩基配列を含有する核酸、mは1又は0であり、mが1のとき一般式(化1)の核酸は抗体可変部位と線状ファージコートタンパク質III又はVIIIとを含有する融合ポリペプチドをコードし、mが0のとき一般式(化1)の核酸は抗体可変部位とプロテインA、プロテインG若しくはこれらのFc結合ドメインとを含有する融合ポリペプチドをコードしている〕
【0008】
本発明者らは式(化1)で表される遺伝子を創製し、該遺伝子に抗体可変部位をコードする遺伝子を組込み、該抗体可変部位をファージ表面発現能を有するポリペプチドとの融合タンパク質の形でファージ表面に発現させれば、該ファージ提示抗体のアフィニティーが簡便に測定でき、高アフィニティー抗体可変部位の選抜が効率よく行えること、また、該抗体可変部位をFc結合能を有するポリペプチドとの融合タンパク質の形で発現させれば、該タンパク質は、Fcを含有する分子と複合体を形成し、該複合体は多価の抗体価を示すこと、極めて安定であること等より、高アビディティーな人工抗体として免疫学的使用に有用であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の遺伝子は抗体可変部位をコードする遺伝子の組込部位を含有する遺伝子(以下、X遺伝子と称す)の下流に、ファージ表面発現能を有するポリペプチドをコードする遺伝子を含有する遺伝子(以下、Y遺伝子と称す)、更に下流にFc結合能を有するポリペプチドをコードする遺伝子を含有する遺伝子(以下、Z遺伝子と称す)が並んで構成される。ここでいう抗体可変部位とは天然、あるいは人工のあらゆる抗体可変部位、Fab、scFv、Fvをいうが、後述の方法でアフィニティー能を測定する場合はFvを選択するのが好ましい。
【0010】
またファージ表面発現能を有するポリペプチドとしては線状ファージコートタンパク質III (以下、cpIII と略す)や同VIII(以下、cpVIIIと略す)あるいはそれぞれの一部などが挙げられるが、抗体可変部位と融合ポリペプチドの形で発現され、ファージ粒子の表面に抗体可変部位が提示されるものであれば特に限定されない。更にFc結合能を有するポリペプチドとは、例えばプロテインA、プロテインGがあり、これらのFc結合ドメイン、あるいはFc結合ドメイン様構造体を用いても良い。Fc結合ドメイン、あるいはFc結合ドメイン様構造体を用いる場合、ドメイン数は通常1〜5の範囲で選択される。これらの遺伝子の配列に関してはX遺伝子に組込まれた抗体可変部位の読取り枠に続く形で、Y遺伝子がコードするポリペプチドの読取り枠がつながり、Y遺伝子がコードしているポリペプチドの最後に終止コドンが存在する。またX遺伝子とY遺伝子の境界には制限酵素サイトが存在し、またY遺伝子とZ遺伝子との境界にも制限酵素サイトが存在する。この2つの制限酵素サイトは、同じ制限酵素サイトであっても良いし、違う制限酵素サイトでも良いが、切断後生じる末端、すなわちX遺伝子末端とZ遺伝子末端が接続可能であれば良い。更にZ遺伝子は、X遺伝子に組込まれた抗体可変部位の読取り枠に続く形で、Z遺伝子がコードするポリペプチドの読取り枠がつながり、Z遺伝子がコードするポリペプチドの最後に終止コドンが存在するようにつながっている。
【0011】
本発明の遺伝子はベクターに組込まれて使用される。本発明で使用されるベクターとしては、例えばファージミドベクターを基本骨格として、プロモーターの下流にX−Y−Z遺伝子が組込まれたベクター、ファージミドベクターを基本骨格としてプロモーターの下流にX−Y遺伝子が組込まれたベクター、ファージミドベクターを基本骨格として、プロモーターの下流にX−Z遺伝子が組込まれたベクターがあり、これらを組合せて使用することができる。
【0012】
前述の様にX遺伝子は、天然、又は人工の抗体可変部位をコードする遺伝子を組込むことができる。抗体可変部位をコードする遺伝子が組込まれたX遺伝子を以下X′遺伝子と称する。同様に、抗体可変部位をコードする遺伝子が組込まれたX−Y−Z遺伝子、X−Y遺伝子、X−Z遺伝子をそれぞれX′−Y−Z遺伝子、X′−Y遺伝子、X′─Z遺伝子と称する、なお、本明細書において抗体可変部位とは抗体の可変部位を分子中に含有するポリペプチドを意味する。
【0013】
抗体可変部位をコードする遺伝子、例えばFv、Fab、scFvをコードする遺伝子が組込まれたX′−Y−Z遺伝子を含有するファージミドベクターを保持する大腸菌にヘルパーファージを感染させると線状ファージが形成される。この時、ベクター上のX′−Y遺伝子より、抗体可変部位がつながったファージコートタンパク質が発現し、ファージ表面に組込まれる。すなわち、この線状ファージ表面に、X′−Y遺伝子にコードされた抗体可変部位を含むポリペプチドが提示されることになる。目的とする抗原結合能を有する抗体可変部位を提示したファージ粒子は、目的とする抗原を固定化した担体によるアフィニティースクリーニングで容易に選択することができる。この時、抗体可変部位を含むポリペプチドがFvフラグメントの形であれば、ファージ粒子を界面活性剤N−ラウロイルサルコシンナトリウム(以下、サルコシルと略する)を含む溶液で洗浄することにより、ファージの感染性を損うことなしに、FvフラグメントのVH ドメインとVL ドメインを解離することができる。すなわち、この洗浄の条件によって、ファージ表面上で提示されている抗原結合能を持ったFvフラグメントの数を調整することができる。
このことにより、ファージ表面に存在する抗体の価数を調整でき、同価数でアフィニティーの高い抗体分子を提示しているファージ粒子を選抜することができる。この洗浄の条件は、例えば、表面プラズモン共鳴を利用したBIAコアシステム(ファルマシア社)を利用して、抗原を固定化したセンサーチップに、様々な処理をしたファージ液を投入することにより決定することができる。
【0014】
得られたファージ粒子を再度大腸菌に感染させることにより、目的抗体分子をコードする遺伝子を含むプラスミドを回収することができる。回収されたプラスミドは、制限酵素消化をしてY遺伝子を遊離させ、セルフライゲーションさせることによりX′−Z遺伝子によりコードされる融合ポリペプチドを発現する形に変換できる。
変換されたプラスミドベクターを大腸菌に導入して培養することにより、X′−Z遺伝子によりコードされる融合ポリペプチドを大量に生産することができる。このポリペプチドは、Fc結合能を持つことより、例えばIgGを結合した樹脂を用いることにより容易に精製できる。又は、抗原を固定化した樹脂を用いても良い。
【0015】
この様にして得られた抗体可変部位とFc結合能を有するポリペプチドが融合したポリペプチドを、Fcを含有する分子、例えばヒトIgGと混合することにより、複合体が形成される。例えばFc結合能を有するポリペプチドが、配列表の配列番号2で表される遺伝子がコードするプロテインA由来のFc結合ドメイン様の58アミノ酸残基からなるFc結合能を持つドメイン構造を含むポリペプチド(配列表の配列番号4)の場合、1つのFcを含有する分子に対し、2ヵ所で結合することができる〔ヨーロピアン ジャーナル オブ バイオケミストリー(European Journal of Biochemistry) 、第78巻、第471〜490頁(1977)、モレキュラー イムノロジー(Molecular Immunology) 、第17巻、第1563〜1573頁(1980)、ジ エンボ ジャーナル(The EMBO Journal) 、第4巻、第1075〜1080頁(1985)、プロテイン エンジニアリング(Protein Engineering)、第1巻、第2号、第102〜113頁(1987)〕。したがって、該Fc結合ドメインを含有する融合ポリペプチドは、例えばIgG1分子に対して2分子の融合ポリペプチドが付加した複合体を形成する。すなわち2価の抗体価を持つ分子を創製することができる。得られた複合体は、2価であるために抗体としてのアビディティーが高く、Fcフラグメントを含むために抗Fcフラグメント抗体を用いることで容易に検出でき、広くELISA等にも適用できる。
【0016】
更に、Fc結合能を有するポリペプチドの数を倍加させると、更に安定な抗体価数の高い複合体が形成される。すなわち、例えば配列表の配列番号3で表される遺伝子がコードするプロテインAのFc結合ドメイン様構造2個を含むポリペプチドを含有する融合ポリペプチドは、例えばヒトIgGと、巨大分子を形成することなく、意外にもIgG2分子と融合ポリペプチド3分子の安定な複合体を形成する。この複合体は極めて安定であり、かつ3価の高い抗体価を有し、かつ抗Fcフラグメント抗体で検出でき、該複合体もELISA等の適用に極めて有用な人工抗体である。
【0017】
以上述べてきたような機能を持つ、本発明の遺伝子を含むベクターの例として、本発明者らが作製したプラスミドpM13Fvがある。
【0018】
プラスミドpM13Fvの遺伝子配列に関する概略図を図1に示す。
図1中で本発明の遺伝子は、X遺伝子に相当する部分は HindIII−SalI間であり、Y遺伝子はSalI−SalI間、Z遺伝子はSalI−EcoRI間に相当する。このX−Y−Zに相当する HindIII−EcoRIサイト間の遺伝子配列も配列表の配列番号5に示す。
【0019】
プラスミドpM13Fvは、一般的なファージミドベクターであるプラスミドpTZ19R(ファルマシア社)の HindIII、EcoRIサイト間に本発明の遺伝子X−Y−Zが挿入されている。ベクター由来プロモーターの下流にあるX遺伝子は、まず、SD配列(シャイン−ダルガルノの配列)に続いて1つ目の読取り枠があり、分泌シグナルペプチドとVH フラグメント様ポリペプチドの融合ポリペプチドがコードされている。
更に、その下流に再度SD配列があり、分泌シグナルペプチドVL フラグメント様ポリペプチドがコードされている2つ目の読取り枠が続く。VL 遺伝子の3′末端部分に制限酵素SalIサイトが存在し(配列番号5の塩基番号891−896)、VL 遺伝子の読取り枠に続く形で、ΔcpIII ポリペプチドをコードする遺伝子(配列番号1)を含有するY遺伝子がつながっている。
すなわち、2つ目の読取り枠は、分泌シグナルペプチド、VL フラグメント様ポリペプチド、ΔcpIII ポリペプチドの融合ポリペプチドをコードする。Y遺伝子は、Y遺伝子がコードするΔcpIII ポリペプチド遺伝子の更に下流にある制限酵素SalIサイト(配列番号5の塩基番号1555−1560)でZ遺伝子とつながっている。Z遺伝子は、プロテインAのFc結合ドメイン様構造2個を含むポリペプチドをコードする遺伝子(配列番号3)を含有する遺伝子である。
【0020】
このような構造のpM13Fvは制限酵素SalIで完全消化するとY遺伝子が切り出され、Y遺伝子を除いた後にセルフライゲーションさせれば、X遺伝子とZ遺伝子はSalIサイトにて連結される。
この時、Z遺伝子がコードするプロテインAのFc結合ドメイン様構造2個を含むポリペプチドは、X遺伝子の2つ目の読取り枠に続く形で連結される。すなわち、プラスミドpM13Fvを制限酵素SalIで消化してY遺伝子を除いた後、本発明の遺伝子がコードする2つ目の読取り枠は、分泌シグナルペプチド、VL フラグメント様ポリペプチド、プロテインAのFc結合ドメイン様構造2個を含むポリペプチドの融合ポリペプチドをコードする。
【0021】
このプラスミドpM13Fvにおいて、X遺伝子に相当する部分には、ニワトリ卵白リゾチーム(以下、HELと略す)に対するモノクローナル抗体由来のFv遺伝子が挿入されているため、厳密に言えば本発明でいうX′遺伝子であるが、実際には、Fv遺伝子を容易に置換できるように制限酵素サイトが存在するため、挿入されているFv遺伝子を単なるスペーサー配列と考えればX遺伝子とすることができる。すなわち、先に示した配列表の配列番号5で示した塩基配列中塩基番号115−120に存在するPstIサイトと塩基番号438−444に存在するBstEIIサイトでプラスミドpM13Fvを切断して挿入されていたVH 遺伝子を取り除き、読取り枠が合うように調製した任意のVH 遺伝子を挿入できる。読取り枠が合うようなPstI−BstEII断片は、DNA合成機を用いて合成したDNAでも良いし、あるいは、従来から用いられている方法により、PstIサイトあるいはBstEIIサイトを含むように合成したVH 遺伝子増幅用プライマーを用いてPCR法により得たDNA断片をPstI、BstEIIで消化して得たDNA断片でも良い。同様にしてVL 遺伝子も配列表の配列番号5で示した塩基配列中塩基番号583−588に存在するSacIサイトと塩基番号891−896に存在するSalIサイト間でVL 遺伝子をコードするDNA断片と置換することができる。ただしこのプラスミドpM13Fvの場合は、Y遺伝子とZ遺伝子間にもSalIサイトがあるために、SalI消化は部分分解をしてベクターを調製する。
【0022】
このプラスミドpM13Fvの構築方法を簡単に説明する。HELに対するモノクローナル抗体D1.3由来のFvフラグメントをコードするプラスミドpSW1VH D1.3VK D1.3〔ジャーナル オブ モレキュラー バイオロジー、第2 13巻、第617〜619頁(1990)〕はグレッグ ウインター(Greg Winter)博士(ケンブリッジ、UK)より譲渡を受けた。ただし、譲渡を受けたプラスミドは、文献記載の配列と多少異なっていた。このプラスミドpSW1VH D1.3VK D1.3は、プラスミドpUC19の HindIII−EcoRI間にFvフラグメントをコードする遺伝子が挿入されている。この HindIII−EcoRI挿入断片の配列を配列表の配列番号6に示す。
【0023】
このプラスミドpSW1VH D1.3VK D1.3のVH 遺伝子を含む HindIII−SmaI断片を、pTZ19R(ファルマシア社)の HindIII、SmaIサイトに挿入してプラスミドT19VHを構築する。また、VL 遺伝子を含むSmaI−EcoRI断片をpTZ18R(ファルマシア社)のSmaI、EcoRIサイトに挿入してプラスミドT18VLを構築する。このプラスミドT18VLを鋳型として、配列表の配列番号7で示した制限酵素EcoRI認識配列とSalI認識配列を持つプライマーVL3′SalIと、配列表の配列番号8で示したプライマーUPMCSを用いてPCR法によりDNAを増幅後、 HindIII、EcoRI消化をしてDNA断片を得る。これをプラスミドpTZ18Rの HindIII、EcoRIサイトに挿入してプラスミドT18VLSを得る。このプラスミドT18VLSの、VL 遺伝子を含むSmaI−EcoRI断片を先に構築したプラスミドT19VHのSmaI、EcoRIサイトに挿入し、プラスミドT19VHVLSを得る。次に、プラスミドpEZZ18(ファルマシア社)を鋳型として、配列表の配列番号9で示したプライマーProA5′と、配列番号10で示したプライマーProA3′を用いてPCR法により、プロテインAのFc結合ドメイン様構造2個を含むポリペプチドをコードする遺伝子を含むDNAを増幅する。このDNAを制限酵素SalIとEcoRIで消化した後、プラスミドpTZ18RのSalI、EcoRIサイトに挿入してプラスミドT18PAを得る。このプラスミドT18PAのプロテインAのFc結合ドメイン様構造2個を含むポリペプチドをコードする遺伝子を含むSalI−EcoRI断片を、プラスミドT19VHVLSのSalI、EcoRIサイトに挿入し、プラスミドpFv−PPを得る。次にプラスミドM13mp18を鋳型として、配列表の配列番号11で示したプライマーcpIII 5′−1と配列番号12で示したプライマーcpIII 3′を用いてPCR法により、cpIII のC末端側ポリペプチドをコードする遺伝子を含むDNAを増幅する。このDNAを制限酵素SalIで消化した後、プラスミドpFv−PPのSalIサイトに挿入する。この時、プラスミドpFv−PPのVL 遺伝子に続いて、プライマーcpIII 5′−1由来配列がつながった向きに挿入されたプラスミドがpM13Fvである。この様にして構築したプラスミドpM13Fvを導入した大腸菌JM109は、Escherichia coli JM109/pM13Fvと命名、表示され工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−13698として寄託されている。
【0024】
本発明の遺伝子を用いることにより、以下のことが可能となる。
まず、本発明の遺伝子は、ファージミドベクターに組込まれて使用される。そして本発明のX遺伝子に、Y遺伝子がある状態で抗体可変部位をコードする遺伝子を挿入すれば、抗体可変部位をその表面に提示した、いわゆるファージ提示抗体ライブラリーを構築することができる。抗体遺伝子の取得方法としては、従来から用いられている方法に従って、ヒトを含む動物あるいはそれら由来の培養細胞などから得た、抗体のmRNAを含むRNAを原料として、cDNAを合成した後PCR法によって天然の抗体可変部位を含む遺伝子を増幅させることができる。これを本発明の遺伝子に抗体可変部位が発現するように組込めば良い。あるいは、合成DNAを用いて、色々な種類のアミノ酸をコードするように作製した合成的な抗体可変部位をコードする遺伝子を用いてもよい。この場合、抗体可変部位の中でも特にアミノ酸の置換が多く、抗原と直接作用している超可変領域に変異を多く導入すると効果が期待できる。
【0025】
このように構築した抗体可変部位を提示したファージ提示抗体ライブラリーから目的の抗原結合能を持つ抗体分子を提示しているファージを選択する場合、X′遺伝子がFvフラグメントを発現するように調製された場合非常に有用である。なぜならば、本発明者らは鋭意努力の結果、ファージ表面に発現している抗原結合能を有するFv分子の数を制御する方法を見出したからである。Fvフラグメントがその抗原結合能を示すのは、VH フラグメントとVL フラグメントが結合してFvフラグメントとして存在している場合であり、VH フラグメント、あるいはVL フラグメント単独ではその結合能は非常に低くなってしまう。
【0026】
この性質を利用して、ファージ表面に発現しているFvフラグメントをVH フラグメントとVL フラグメントに解離させることにより、ファージ表面に複数個存在する抗原結合能を有するFv分子の数を1分子程度にすることができる。これは、界面活性剤サルコシルを用いた穏やかな洗浄処理による工程で実施可能であり、かつ該工程はファージ粒子の感染性に何ら影響を与えない。ファージミドベクターを用いてそのファージ粒子に抗体分子を提示させる場合、その抗体分子の個数を制御できない。ファージ表面に2分子以上の抗体分子が存在すると、その抗体分子のアフィニティーが低くても、全体としてのアビディティーが高くなり、抗原を用いたアフィニティースクリーニングの際、あたかも高アフィニティーであるかのようにふるまう。この時、ファージ粒子の感染性を損うことなく、Fv分子の数を1分子程度に制御できれば、高アフィニティーの抗体分子を提示したファージ粒子を得ることが期待できる。VH フラグメントとVL フラグメントが共有結合でつながっているscFvや、Fabを提示したファージ提示抗体ライブラリーでは、このような制御をすることは難しい。また、得られたFv分子を提示しているファージ粒子からFvフラグメントをコードしている遺伝子を回収し、scFvフラグメントやFabフラグメントに変換することは容易である。すなわち、得られたファージミド粒子を大腸菌に感染させ、プラスミドを回収する。このプラスミドから、目的のVH 遺伝子とVL 遺伝子を取り出し、scFvフラグメントや、Fabフラグメントの形で発現できるように構築したプラスミドに入れ直せば良い。
【0027】
目的の抗体可変部位を提示したファージ粒子が得られた後、用いた本発明の遺伝子がX′−Y−Zの場合、実用上有用な形に変換するのは容易である。すなわち、得られたファージミド粒子を大腸菌に感染させて、プラスミドを回収する。その後前述の通り、Y遺伝子を取り除き、X′−Zの形に変換すれば、プラスミドは抗体可変部位を含むポリペプチドとZ遺伝子がコードするFc結合能を有するポリペプチドとの融合ポリペプチドを発現する形に変換される。
【0028】
この抗体可変部位を含むポリペプチドと、Fc結合能を有するポリペプチドの融合ポリペプチドは、非常に有用である。すなわち、まず第1に、精製が容易である。例えば、Fcを含む、ポリペプチドあるいはタンパク質を固定化した樹脂を用いて、培養物から融合ポリペプチドを回収することができる。第2に、この融合ポリペプチドを、Fcを含むポリペプチドあるいはタンパク質、例えばヒトIgGなどと混合することにより、安定な多価の抗体複合体を形成する。多価であるために、抗原との結合安定性は、1価である時よりも高く、ELISAやウェスタンブロッティング等の使用に用いる場合有用である。また、混合するFcを含むポリペプチドの性質により検出も容易となり有用である。このような融合ポリペプチドを作製するための本発明の遺伝子X′−Zの使用の際には、X′遺伝子がコードする抗体可変部位を含むポリペプチドは、Fvフラグメント、scFvフラグメント、Fabフラグメントなどどのようなものも有効である。
【0029】
また、本発明の遺伝子を用いることにより、ポリクローナル人工抗体を作製することもできる。すなわち、抗体可変部位をコードする遺伝子のライブラリーを作製し、次にX遺伝子に組込み、X′−Y−Z遺伝子ライブラリーを作製する。次に、X′−Y遺伝子ライブラリーでファージを形質転換し、抗原結合性を有するX′−Y遺伝子群を選抜する。次に選抜されたX′遺伝子群を有するX′−Z遺伝子群を発現させることにより、ポリクローナル人工抗体を作製することができる。該ポリクローナル人工抗体も抗原精製、抗原測定、診断等の分野で有用である。
【0030】
以上詳細に説明したように、本発明の遺伝子を用いることにより、抗原に対して特異的な抗体分子の中でも特にアフィニティーの高い抗体分子を選択し、更にアビディティーの高い人工抗体を提供することが可能となった。
【0031】
【実施例】
次に実施例を示すが、これらは本発明を限定するものではない。
【0032】
実施例1 発現プラスミドの構築
HELに対するモノクローナル抗体D1.3由来のFvフラグメントをコードするプラスミドpSWlVH D1.3VK D1.3は、グレッグ ウインター博士(ケンブリッジ、UK)より譲渡を受けた。ただし、譲渡を受けたプラスミドは文献記載の配列と多少異なっていた。このプラスミドpSWlVH D1.3VK D1.3はpUC19の HindIII−EcoRI間にFvフラグメントをコードする遺伝子が挿入されている。この HindIII−EcoRI挿入断片の配列を配列番号6に示す。
【0033】
(1−1) プラスミドpFv−PP、pFv−Pの構築
プラスミドpSW1VH D1.3V KD1.3を制限酵素 HindIIIとSmaIで消化しアガロースゲル電気泳動により分離後、VH 遺伝子を含む約470bpのDNA断片を抽出精製した。このDNA断片をプラスミドpTZ19R(ファルマシア社)の HindIII、SmaIサイトに挿入し、プラスミドT19VHを得た。また、プラスミドpSW1VH D1.3VK D1.3を制限酵素EcoRIとSmaIで消化しアガロースゲル電気泳動により分離後、VL 遺伝子を含む約450bpのDNA断片を抽出精製した。このDNA断片をプラスミドpTZ18R(ファルマシア社)のEcoRI、SmaIサイトに挿入し、プラスミドT18VLを得た。このプラスミドT18VLを鋳型として、配列表の配列番号7に示した制限酵素EcoRI認識配列と、SalI認識配列を持つプライマーVL3′SalIと配列番号8に示したpTZ18R由来配列であるプライマーUPMCSを用いてPCRを行い、増幅してきたDNAを制限酵素 HindIIIとEcoRIで消化した。これをアガロースゲル電気泳動により分離後 HindIII、EcoRI断片を抽出精製した。
このDNA断片をプラスミドpTZ18Rの HindIII、EcoRIサイトに挿入し、プラスミドT18VLSを得た。このプラスミドT18VLSはVl 遺伝子の3′末端側に制限酵素SalI認識配列を持つ。
このプラスミドT18VLSを制限酵素EcoRI、SmaIで消化しアガロースゲル電気泳動により分離後、VL 遺伝子を含む約430bpのDNA断片を抽出精製した。このDNA断片を先に構築したVH 遺伝子を持つプラスミドT19VHのEcoRI、SmaIサイトに挿入し、プラスミドT19VHVLSを得た。このプラスミドT19VHVLSはpTZ19Rlacプロモーターの下流に、VH 遺伝子、VL 遺伝子を持つ。
【0034】
次にプラスミドpEZZ18(ファルマシア社)を鋳型として、配列表の配列番号9に示した、制限酵素SalI認識配列を持つプライマーProA5′と、配列番号10に示した、制限酵素EcoRI認識配列を持つプライマーProA3′を用いてPCR法によりDNAを増幅した。
増幅してきた、プロテインAのFc結合ドメイン様構造2個を含むポリペプチドをコードする遺伝子(配列番号3)を含むDNAを、制限酵素SalIとEcoRIで消化しアガロースゲル電気泳動を行い約390bpのDNA断片を抽出精製した。このDNA断片をpTZ18RSalI、EcoRIサイトに導入しプラスミドT18PAを得た。次にこのプラスミドT18PAを制限酵素SalI、EcoRIで消化しアガロースゲル電気泳動を行い、約390bpのDNA断片を抽出精製した。
【0035】
このDNA断片を先に得たプラスミドT19VHVLSのSalI、EcoRIサイトに挿入し、プラスミドpFv−PPを構築した。
このプラスミドpFv−PPは、VH フラグメントと、VL フラグメントのC末端にプロテインAのFc結合ドメイン様構造(配列番号4の58アミノ酸残基)2個を含む融合ポリペプチドをコードする。このプラスミドpFv−PPを制限酵素MluIで消化し、遊離する約170bpのDNA断片を除いた後セルフライゲーションさせ、プラスミドpFv−Pを得た。このプラスミドpFv−PはVH フラグメントと、VL フラグメントのC末端に配列表の配列番号2で示す遺伝子がコードするプロテインAのFc結合ドメイン様構造1個を含む融合ポリペプチドをコードする。
【0036】
(1−2) プラスミドpM13Fvの構築
プラスミドM13mp18(宝酒造社)を鋳型として、配列表の配列番号11で示した、制限酵素SalI認識配列を持つプライマーcpIII 5′−1と、配列番号12で示した、制限酵素SalI認識配列とNheI認識配列を持つプライマーcpIII 3′を用いてPCRを行い、cpIII のC末端側ポリペプチドをコードするDNAを増幅させた。このDNAを制限酵素SalIで消化後アガロースゲル電気泳動を行い、約650bpのDNA断片を抽出精製した。このDNA断片を実施例(1−1) で得たプラスミドpFv−PPのSalIサイトに挿入した。得られたプラスミドのうち、VL 遺伝子に続いてプライマーcpIII 5′−1由来の配列がつながった向きに挿入されたプラスミドをプラスミドpM13Fvとした。
【0037】
このプラスミドpM13Fvは、VH フラグメントと、VL フラグメントのC末端に配列表の配列番号1で示した遺伝子がコードする、cpIII のC末端側のポリペプチド(ΔcpIII)がつながった融合ポリペプチドとを発現するように構築されている。
更にこのプラスミドpM13Fvの HindIII−EcoRIに挿入されたDNA断片の概略図を図1に示し、塩基配列を配列表の配列番号5に示す。このプラスミドpM13Fvは、制限酵素SalIで消化後セルフライゲーションを行うことにより容易に実施例(1−1) で構築したプラスミドpFv−PPの形にすることができる。このプラスミドpM13Fvを導入した大腸菌JM109 をEscherichia coli JM109/pM13Fvと命名表示し、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−13698として寄託した。
【0038】
同様にして、プラスミドM13mp18を鋳型として、配列表の配列番号13で示した、制限酵素SalI認識配列を持つプライマーcpIII 5′−2と、先に用いたプライマーcpIII 3′を用いてPCRを行い、増幅してきたDNAをSalI消化後プラスミドpFv−PPのSalIサイトに挿入し、プラスミドpM13ΔFvを構築した。このプラスミドpM13ΔFvは、pM13Fvとほぼ同じ遺伝子配列を持っているが、プライマーcpIII 5′−2の配列の中に終止コドンが含まれているために、VL 遺伝子とΔcpIII 遺伝子の間で読取り枠中に終止コドンが出現する。
したがって、pM13ΔFvは、VH フラグメントと、VL フラグメントのみとを発現するように構築されている。
【0039】
実施例2 ファージ表面へのFvフラグメントの発現とその性質の解析
(2−1) Fv提示ファージ粒子の調製
実施例(1−2) で得たプラスミドpM13Fvを用いて大腸菌BMH71−18を形質転換し、大腸菌BMH71−18/pM13Fvを得た。
コントロールとして、pM13ΔFvを用いて大腸菌BMH71−18を形質転換した大腸菌BMH71−18/pM13ΔFvを用いた。
これら2種の大腸菌を2×TY培地(1.6%バクトトリプトン、1%イーストエキストラクト、0.5%NaCl)に接種し、30℃で一晩振とう培養した。
この培養物4mlを12mlの2×TY培地に接種し、30℃で1時間培養した。2mlのM13K07ファージ液(1×1012pfu/ml)を加えた後、培養液を30℃で更に1時間培養した。この培養液を3mlずつ70μg/mlのカナマイシンを含有する500mlの2×TY培地6本に接種し、30℃で24時間培養した。同様にしてM13K07ファージをプラスミドを持たない大腸菌BMH71−18を宿主として、調製した。それぞれ培養物より遠心分離により菌体を除き上清を得た。
【0040】
3リットルの培養液上清に、1リットルのPEG/NaCl(20%のポリエチレングリコール6,000及び2.5MのNaCl)を加え、得られた混合物を4℃で一晩静置した。ファージを遠心分離にかけてペレットを生成した。沈殿物を3等分し、各ペレットを3種の異なった方法で調製した。すなわち、第1に、300mlのTE(10mMのトリス・塩酸緩衝液、pH8.0、1mMのEDTA)に室温にて1時間、第2に、300mlのTES(0.1%のサルコシルを含有するTE)に室温にて1時間、そして第3に、300mlのTESに室温にて18時間、溶解、回転させた。この3種類の処理をしたファージ液に100mlのPEC/NaClを添加することによって、ファージを再度沈殿させた。4℃で一晩回転することによって、沈殿物をNET(10mMのトリス・塩酸緩衝液、pH8.0、0.1MのNaCl、及び1mMのEDTA)に溶解させた。ファージを170,000×gで3時間遠心分離して集め、NETに溶解した。最後に、ファージの精製を、濃度勾配CsCl超遠心法を用いて、36,000rpm で1時間遠心分離することによって行った。ファージのバンドを集め、NETに対して透析してファージ液を得た。大腸菌BMH71−18/pM13Fvより得られたファージをM13Fv、大腸菌BMH71−18/pM13ΔFvより得られたファージをM13ΔFvと命名した。このように調製した3種類のファージ液、M13Fv、M13ΔF、ヘルパーファージM13K07をそれぞれ先に述べた3種類の処理後精製したものについて以下の分析を行った。
【0041】
(2−2) ファージ並びにファージミドの感染性の測定
実施例(2−1) で得た3種類のファージ(M13Fv、M13ΔFv、M13K07)を3種類の処理(無処理、サルコシル洗浄1時間、サルコシル洗浄18時間)したファージ溶液のコロニー形成能とプラーク形成能を測定した。すなわちこれらファージ溶液をNETを用いて適当に段階希釈した。このファージ溶液100μlに、対数増殖期(O.D.600 =0.8)の大腸菌XLI−Blue(ストラタジーン社)培養液500μlを加えて室温にて45分間放置した。このうち100μlを50μg/mlアンピシリンを含む2×TY培地プレートに直接塗りつけて、37℃で一晩保温して出現したコロニー数を数えた。また別に100μlを50℃に保温しておいた4mlのソフトアガー(2×TY培地に0.65%となるように寒天を溶かしたもの)に混ぜて2×TY培地プレートに広げて固化させた。これを37℃で一晩保温して出現したプラーク数を数えた。この結果を表1に示す。すなわち表1は得られたファージ溶液のコロニー形成能とプラーク形成能を比較した表である。
【0042】
【表1】
【0043】
ビリオン中のfdDNAの、260nmでのリン酸基1個当りのモル吸光係数は、6750であることが測定されている。M13K07のDNAの長さは6.4kbであり、M13Fv並びにM13ΔFvのDNAの長さは4.8kbであるので、1O.D.280 ユニット(以下DUと略す)のファージは、M13K07については約1.3×1013個のファージ粒子に、またM13Fv並びにM13ΔFvについては約1.8×1013個のファージ粒子に対応するはずである。サルコシル処理を行わなかったサンプルの結果から、M13K07は0.25PFU/ファージ粒子であり、M13Fv並びにM13ΔFvは0.06CFU/ファージ粒子程度であることが示された。M13Fv並びにM13ΔFvに感染した細菌によって形成されたプラークは、ヘルパーファージから誘導されたと考えられ、調製物中の約10%のファージがヘルパーファージであることが示唆された。これらの3種のファージ粒子の感染性は、0.1%サルコシル溶液を用いた1時間の処理(穏やかな洗浄)によっても、18時間の処理(十分な洗浄)によっても、全く損なわれることがなかった。
【0044】
(2−3) ファージ表面に発現されたFvフラグメントの分析
実施例(2−1) で調製したM13Fv、M13ΔFv、及びM13K07それぞれ3種類の処理後調製したファージ11.2DUを、5%SDS、1%β−メルカプトエタノールを含む、10mMトリス−アセテート緩衝液(pH5.4)1mlに溶解し、24時間室温にてかくはんした。1NのNaOHで中和した後、最終濃度0.1MとなるようにMgCl2 を加えた。20℃にて150,000×g12時間遠心分離後上清を取出し、2分間沸騰させた。等容量のSDS−PAGE用サンプル緩衝液を加え、そのうち15μl(0.075DU相当)を16%SDS−PAGEにかけた。泳動後セミドライブロッターを用いてポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(ミリポア社)にブロッティングした。この膜を1%ウシ血清アルブミン(BSA)に浸し室温で1時間保温することによりブロッキングした。一次抗体として抗D1.3Fvフラグメントウサギ抗体(D1.3Fvをウサギに免疫して得られた血清をD1.3Fv固定化カラムで精製したもの、以下抗D1.3抗体と略す)を0.05%トゥイーン20(Tween20)を含むリン酸緩衝液(以下PBS/Tと略す)に加えたものに浸して室温で4時間保温した後PBS/Tで3回洗浄した。検出に当っては、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた抗ウサギIgGロバ抗体を用いたECLウェスタンブロッティング検出システム(アマシャム社)を用いた。その結果を図2に示す。すなわち図2は線状ファージM13Fv、M13ΔFv、及びM13K07を界面活性剤サルコシルを含む溶液で処理した場合に、ファージコートタンパク質に残存するFvフラグメント由来ポリペプチドの量を比較した図である。
【0045】
M13ΔFv中のFvフラグメントがM13ファージの表面に吸着するとは考えられないものの、ウェスタン・ブロッティングでは、VH フラグメントとサイズが対応するバンドが現れた。しかし、ファージを0.1%のサルコシル溶液で1時間洗浄したところ、このバンドは完全に消えた。一方、M13Fvの場合には、2本のバンド、すなわち、VH フラグメントと対応する1本の太いバンドと、VL フラグメントをΔcpIII と融合させたものに対応するもう一本のバンドが、明らかに検出された。ファージを0.1%のサルコシル溶液で1時間洗浄した場合にも、VH に対応するバンドが弱くなったものの、双方のバンドとも残存した。ファージを18時間にわたって十分に洗浄すると、VH の方のバンドは完全に消えたものの、VL フラグメントをΔcpIII と融合させたものの方は、量が減少することもなくファージ上に残存した。
以上述べてきたごとく、VH フラグメント並びにVL フラグメントの双方は、会合した形状でファージ表面上に発現され、また、サルコシル溶液を用いた処理によって、VH フラグメントのみがファージ表面から除去される。
【0046】
次にファージM13Fv表面に発現されたFvフラグメントを定量するために、それぞれ0.075DUのファージと濃度既知のD1.3Fvフラグメントも同様にしてウェスタンブロッティングによって分析した。その結果を図3に示す。すなわち図3は、線状ファージM13Fv表面に発現しているFvフラグメント由来ポリペプチドの量を比較した図である。
サルコシル溶液による1時間の洗浄後のM13Fvファージ上に発現されたVH のバンドの強度は、Fvフラグメント1ngに対応するようであった。
各レーンに、0.075DUのファージから調製した全タンパク質を加えた。Fvフラグメントの分子質量は24.7kDa であるので、1ngのFvフラグメントは2.4×1010個の分子に対応する。このことから、0.1%のサルコシル溶液で1時間処理したM13Fvファージを調製する際には、約2%のファージがFv分子を発現することが示唆された。しかし、VH フラグメントの一部は、サルコシル溶液を用いた洗浄によって、ファージ表面から除去されていたはずである。
実際、M13Fvファージを洗浄を行わずに調製した際のVH のバンドの強度は、1時間の洗浄を行ったサンプルの場合のVH のバンドの強度より数倍高かった。洗浄を行わずにM13ΔFvを調製した場合について示したのと同様にして、遊離VH フラグメントがこの分画に非特異的に混入したおそれもあるので、Fvフラグメントの正確な量を推定することは難しい。また、ファージ粒子からタンパク質を調製する過程でも、実質的な量のタンパク質の損失が生じたはずである。したがって、Fv分子を発現するM13Fvの本当の率は、上記の推定よりはるかに高いはずである。
以上述べてきたごとく、M13Fvファージはその表面上にFv分子を実際に発現しており、また、M13Fvファージのうち、Fv分子を表面上に発現するものの率は、5%以上であると推定される。
【0047】
(2−4) ファージ表面に発現されたFvフラグメントの抗原結合性の分析
ファージ表面に発現されたFvフラグメントの抗原結合性を表面プラズモン共鳴を利用したBIAコアシステム(BIA core system ;ファルマシア社)によって調べた。HELあるいは、抗D1.3抗体を、製造業者の指示に従って、バイオセンサーのチップの支持体に、アミン結合法によって化学的に結合させた。実験はすべて、HBS(10mMのHEPES、pH7.4、3.4mMのEDTA、150mMのNaCl、及び0.5%トゥイーン20)を用いて、30℃で、5μl/分の流速にて実施した。
【0048】
実施例(2−1) で得た9種類のファージ液をいずれもHBSに対して透析した後、5種類の濃度(3.7、1.8、0.9、0.45、0.23DU/ml)に希釈して、20μlをHEL固定化センサーチップに投入した。その結果を図4〜図12に示す。すなわち図4〜図12はサルコシル処理が、無処理、1時間洗浄、18時間洗浄がそれぞれ図4〜図6、図7〜図9、図10〜図12に対応し、縦軸は共鳴単位(RU)、横軸は時間(秒)を示す。また、同様にして濃度3.7DU/mlのファージ20μlを投入した後に、抗M13ファージウサギ抗体(M13ファージをウサギに免疫して得られた血清をM13ファージ固定化カラムで精製したもの、以下抗M13抗体と略す)を更に投入してシグナルを増幅した。この結果を図13に示す。すなわち図13は、ファージをHEL固定化センサーチップに投入後、抗M13抗体を更に投入した時の表面プラズモン共鳴センサーの結果を示した図であり、縦軸は共鳴単位(RU)、横軸は時間(秒)を示す。また、ファージ表面にD1.3Fvフラグメント由来ポリペプチドが存在しているかを調べるために、抗D1.3Fv抗体を固定化したセンサーチップに、濃度3.7DU/mlのファージ液20μlを投入した。その結果を図14に示す。すなわち図14は、ファージを抗D1.3抗体固定化センサーチップに投入した時の表面プラズマモン共鳴センサーの結果を示した図であり、縦軸は共鳴単位(RU)、横軸は時間(秒)を示す。
【0049】
以上図4〜図14に示した結果をまとめる。
図4、図5で示した通り、M13K07も、M13ΔFvも、HELとは結合しなかった。ベースラインの移動は、サンプルの状態、すなわち、溶質、pH、及び/又はイオン強度の違いに起因するものであると考えられる。結合によっては生じた共鳴単位(RU)は、3.7DU/mlのファージ溶液について200RU程度で、あまり高くなったものの、M13FvはHELと明らかに結合した(図6)。解離曲線の形状から判断すると、ファージの一部がHELから迅速に解離する一方(Koff =3×10−2S−1)、残りのファージはほとんど解離しないようであった(Koff =1×10−3S−1)。このことによって、これらのファージが異なった形状のファージを包含するものであることが示唆された。すなわち、表面上にFv分子を1つのみ発現するファージと、ファージ粒子1つの表面上に複数のFv分子を発現するファージとがあるのではないかと予測された。これは、サルコシル溶液で1時間にわたり洗浄を行ったM13Fv調製物で得られた結果によって裏付けられた(図9)。図9に示された通り、サルコシルで1時間洗浄したM13FvファージがHELから解離する際の曲線は、単一の抗原結合部位を有するファージ抗体について予測される、単純なパターンとなった(Koff =3×10−2S−1)。サルコシル溶液で十分に洗浄したM13Fvは、HEL結合活性を完全に消失した(図12)。
【0050】
センサーチップ上のHELに結合したファージ抗体を、抗M13抗体を投入することによって直接検出した。図13からは、抗M13抗体の投入によって、サルコシルによる洗浄を行わなかったM13Fvの場合にはRUが増大し、サルコシル溶液で洗浄を行うとRUが低減し、そして十分に洗浄すると、HELに結合したファージがバックグラウンドのレベルまで消失することが示唆された。こうした結果から、表面上にFvフラグメントを発現するファージがHELに結合することが、直接的に立証された。サルコシル溶液を用いた洗浄がHELとの結合活性に及ぼす影響は、ファージ表面からVH フラグメントが除去されることに起因するものであると考えられる。すなわち図14に示すように、M13Fvの抗D1.3抗体分子への結合が、サルコシル溶液を用いた洗浄によって大きく影響されることはなかった。抗D1.3抗体はVH フラグメントのみならずVL フラグメントにも結合するので、これらの結果からは、サルコシルでの洗浄によってファージ表面から除去されたのがVH フラグメントのみであって、ΔcpIII と融合したVL フラグメントは、サルコシルによる洗浄後もファージの表面に吸着したままであることが示唆される。BIAコアシステムを用いた分析の結果は、実施例(2−3) で得られたウェスタン・ブロッティングの結果と完全に合致するものである。
【0051】
以上述べてきたごとくM13Fvファージの一部は、ファージ粒子1つの表面上に2つ以上のFv分子を発現するものであり、また、サルコシル溶液を用いて穏やかに洗浄することによって、ファージ表面に提示された抗体の結合価を制御し、また、解離の際の速度論的性状を制御することができるとの結論に達した。
【0052】
実施例3 Fc結合ドメイン様構造を含むポリペプチドに融合させさFvフラグメントを用いた、結合性の高い人工抗体の作製
(3−1) Fc結合ドメイン様構造を含むポリペプチドに融合させさFvフラグメントの調製
実施例(1−1) で構築したプラスミドpFv−P、プラスミドpFv−PPとプラスミドpSW1VH D1.3VK D1.3を用いてそれぞれ大腸菌BMH71−18を形質転換して、大腸菌BMH71−18/ pSW1VH D1.3V K D1.3、大腸菌BMH71−18/pFv−PP、大腸菌BMH71−18/pFv−P を得た。これら3種類の大腸菌を100μg/mlアンピシリン、0.1%グルコースを含む2×TY培地に接種し、30℃で一晩振とう培養した。この培養物10mlを1リットルの100μg/mlアンピシリン、0.1%グルコースを含む2×TY培地に接種し30℃で振とう培養した(各2リットル)。培養液の濁度が分光光度計でO.D.600 =0.8となったところで最終濃度1mMとなるようにIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を添加し、更に30℃で36時間振とう培養した。それぞれの培養物より遠心分離により菌体を除き上清を得た。
得られた上清それぞれ2リットルをペリコンカセット(ミリポア社)を用い、0.45μmのフィルターでろ過した。更に分画分子量1万のフィルターで濃縮後、結合用緩衝液〔10mMトリス−塩酸緩衝液pH8.0、140mM−NaCl、1mM EDTA、0.1mM PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオライド)〕に置換した。
【0053】
この濃縮液からFvフラグメントの精製には、HELをリアクチ−ゲル(Reacti−Gel、ピアス社)に固定化したアフィニティーゲルを、Fv−P、Fv−PPの精製にはIgGセファロース6FF(ファルマシア社)を用いた。
すなわち、濃縮液200mlに対し10mlのそれぞれのアフィニティーゲルを加えた。混合物を4℃にて24時間ゆっくりと回転させ、結合用緩衝液で5回洗浄した。ゲルをカラムに充てんし、アフィニティーゲルに結合したFvフラグメント等を、50mMのグリシン・塩酸緩衝液(pH2.5)、及び150mMのNaClで溶出させた。溶出液を1Mのトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)ですばやく中和し、200mM NaClを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に対して4℃にて2晩透析した。大腸菌BMH71−18/ pSW1VH D1.3V K D1.3、大腸菌BMH71−18/pFv−PP、大腸菌BMH71−18/pFv−P 培養物から得られたFvフラグメント由来ポリペプチドをFv、Fv−PP、Fv−Pと命名し、以下の分析に用いた。
【0054】
まず得られたFv、Fv−P、Fv−PPの一部をSDS−PAGEにより分離後、クマシ−ブリリアントブルーR250により染色して検出した。その結果を図15に示す。すなわち図15は、アフィニティー樹脂により精製されたFv、Fv−P、Fv−PPのSDS−PAGEの結果を示した図である。図15に示されるとおり、VH 部分とVL 部分はいずれの場合もモル比1:1で会合してFv形状をなしている。また、アフィニティークロマトグラフィーの結果から、プロテインAから誘導された部分が、IgG結合活性を有していることが示された。
【0055】
(3−2) Fv、Fv−P、Fv−PPのFv部分の物理的特性の分析
Fv、Fv−P、及びFv−PPがHELと結合する際の会合定数(KA )及び会合エンタルピー(ΔH)を、マイクロカル社製のオメガ(OMEGA)滴定熱量計を使用した熱量測定によって測定した(これをDTC分析と称する)。
すなわち、熱量測定装置は、100μlの投入用シリンジを使用して、2分間隔で24回の投入を次々と行うよう、自動的に作動させた。
15秒の間に、1.36mlのサンプル溶液の入った熱量測定装置のセルに、5μlのHEL溶液を加えた。熱量測定を行うのに先立って、O.D.280 を測定することによってHELの濃度を正確に測定し、0.02028mMに固定した。熱量計のセル中のFv、Fv−P、及びFv−PPの濃度は0.01mM程度に調整し、DTC分析のデータから正確に計算した。熱量計を使用した結合実験は、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)及び200mMのNaCl中で、30℃にて実施した。
【0056】
得られたデータから、ΔG及び−TΔSの値も計算した。表2及び表3にデータをまとめて示す。すなわち表2及び表3は、FvフラグメントのHELとの結合に関する熱力学的、動的学的パラメーターを示した表である。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
Fv─P及びFv−PPのKA の値は、FvのKA の値よりわずかに小さい。こうした違いは、これらの融合タンパク質を分析する際にエンタルピーの項がわずかに減少したことに由来するようである。次にFv、Fv−P、及びFv−PPがHELと反応する際のKon を、ストップト・フロー装置(モデルSF.17MV、アプライド・フォト・フィジック社)を使用した蛍光消光法によって測定した。HELの濃度を、6μMから16μMまで2μMずつ上昇させ、Fv、Fv−P、及びFv−PPの濃度は1μMに固定した。
次に、50μlの各溶液を、1:1の容量比で混合した。励起光の波長は280nmとし、320nm以上の波長の蛍光を検出した。実験は30℃にて13回行い、データの平均値を更なる分析に使用した。アプライド・フォト・フィジック社によって提供されたソフトウェアのマニュアルの説明に従って、非線形回帰解析を行い、見掛上の反応速度(Kapp ) を測定した。
【0060】
この方法では、偽一次条件が仮定されており、次式(数1):
【0061】
【数1】
Kapp = Kon〔A〕0 + Koff
【0062】
が有効であると想定されている。式中の〔A〕0 はHELの初期濃度に対応する。実験的には、抗体に対してHELがはるかに過剰となるような条件下でHELの濃度を変化させ、Kapp の値を各濃度で測定した。Konは、〔A〕0 に対するKapp のグラフの勾配の値から計算した。Koff は、〔A〕0 が0に等しい場合のKapp の値であるが、Koff の実際の値は、この方法で実験的に測定するには小さすぎた。そこで、Koff はKon/KA から計算した。KA は上述のようにしてDTCによって測定した。表3に、3種の分子についてのKon並びにKoff の値を示す。表3に示される通り分子が大きいほど、Konの値が小さく、Koff の値が大きかったものの、これらの分子を比較した場合には、Kon並びにKoff についてのこの違いは大きいとはいえなかった。
以上述べてきたように、DTC分析とストップト・フロー分析の結果をまとめると、Fv、Fv−P、及びFv−PPのいずれにおいても、Fv部分の物理的特性は実質的に同一であった。
【0063】
(3−3) IgGとFv−P、Fv−PP複合体の分析
Fv−P及びFv−PPがヒトIgGと会合する際の熱力学的パラメーターを、DTCによって測定した。まず、Fv−P、Fv−PP、及びHELを用いた結合実験で得られたデータに基づいて、熱量計のセル中のFv−Pの濃度を0.0100mMに調整し、Fv−PPの濃度を0.0050mMに調整した。200μlのシリンジ中のヒトIgG(シグマ社、#I−4506)の濃度は、0.04mM程度に調整した。12.5μlのIgG溶液を、1.36mlのFv−PあるいはFv−PPの溶液の入った熱量計のセルに23回投入した。IgGの濃度は、DTC分析で得られたデータから計算した。
【0064】
DTC分析の結果をFv−Pについては図16に、Fv−PPについては図17に示した。すなわち図16及び図17は、それぞれFv−P及びFv−PPとヒトIgGとの結合に関するDTC分析結果を示した図であり、縦軸は熱量(抽入物kcal/モル及びμcal/秒)、横軸は投入番号及び時間(秒)を示す。そこから計算された熱力学的パラメーターを表4及び表5に示す。すなわち表4及び表5は、Fv−PとFv−PPのヒトIgGとの結合に関する熱力学的パラメーターを示した表である。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
Fv−PPのIgGに対する親和性はFv−Pより約10倍高く、これは主にエントロピーの項に由来するもののようであった。とはいえ、図16、図17における変曲点での反応物質の濃度のモル比から判定すると、IgG分子1個が最大で2個のFv−P分子と、そして2個のIgG分子が最大で2個のFv−PP分子と結合しうるので、Fv−P及びFv−PPのいずれのプロテインAドメインも、Fv結合活性を有するものである。プロテインAドメインの安定性、及びFc部分の物理的接近可能性に差がある可能性もある。Fv−PPとIgGの組合せでは、飽和点に達した後に異常な熱の吸着が観察された(図17)。逐次滴定実験では、モル比が急激に、すなわち、IgGに対してFv−PPが過剰な条件から、IgGの方が過剰な条件へと変化する。この熱の吸着から、Fv−PPに対してIgGが過剰に存在する場合に、複合体が再編成されていることが示唆される。
【0068】
Fv−PあるいはFv−PPとIgGとの間に形成される複合体の分子形状を、HPLCによって更に調べた。
2種のHPLC用カラム、G3000SW及びG2000SW(東ソー社)を直列につないだ。作業はすべて室温にて行い、ランニング緩衝液として200mMのNaClを含む50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を用いた。15μlの5μMヒトIgG溶液、又は15μlの10μM Fv、Fv−P、あるいはFv−PP溶液を、まず装置に投入した。複合体の形状の分析に際しては、Fv、Fv−P、あるいはFv−PP(最終濃度はいずれの場合も10μM)をヒトIgG(最終濃度、5μM)と混合し、室温で1時間インキュベートしてから、15μlの混合物をHPLC装置に投入した。245nmでの吸収を監視した。その結果を図18に示す。すなわち図18はFv、Fv−P、Fv−PP及びこれらのIgG混合物のHPLCによる結果を示した図であり、縦軸はO.D.245 、横軸は時間(分)を示す。
【0069】
予想分子質量は以下の通りであった。
VH ドメイン、12,831Da;VL ドメイン、11,877Da;プロテインAのドメイン1個と融合したVL ドメイン、19,341Da;プロテインAのドメイン2個と融合したVL ドメイン、25,963Da;ヒトIgG、146,000Da(平均値)。
Fv、Fv−P、及びFv−PPの溶出曲線からは、いずれの場合にもVH ドメインとVL ドメインが互いに緊密に会合していることを示された。ヒトIgGの溶出曲線には、大きなピークが1つと小さなピークが1つ含まれていた。小さい方のピークはIgGの二量体と対応する。
予想どおり、FvとIgGの混合物の溶出曲線は、IgGとFvのそれぞれ別の溶出曲線を単に合せたものであり、これらの2種の分子の間に相互作用が起きていないことが示された。Fv−PをIgGと混合した場合には、IgGのピークのやや前に、新たな物質のピーク(図18中、分画A)が溶出した。
Fv−PとIgGの分画の物質が減少していることや、分子量から判断して、分画Aは、1個のIgG分子と2個のFv−P分子から構成される複合体〔(Fv−P)2 IgG複合体と称する〕に対応する。
【0070】
Fv−PPをIgGと混合した場合には、新たな小さいピークと大きなピーク(図18中、分画B)が現れた。Fv−PとIgGの場合と同様に、分画Bは、2個のIgG分子と3個のFv−PP分子の複合体〔(Fv−PP)3 (IgG)2 複合体と称する〕に対応している。
【0071】
この(Fv−PP)3 (IgG)2 複合体は、混合物中のFv−PPとIgG濃度を10倍低減させた場合にも、選択的に形成した。また、溶出曲線から判断して、この(Fv−PP)3 (IgG)2 複合体は、(Fv−P)2 IgG複合体と比べて更に安定なようであった。IgGの大半は複合体中に見いだされ、複合体を形成していないFv−PP分子の溶出曲線は極めてシャープで、図18中分画Bを分取後同じ条件でクロマトグラフィーにかけた場合のFv−PPの溶出曲線とほぼ同一であった。
【0072】
これら分画A、Bが新たな複合体を形成していることを確認するために、変性条件下のHPLCにより更に分析した。すなわち、吸収のピークを示した分画(図18中分画A及びB)を分取し、凍結乾燥した。これらを5Mグアニジン−塩酸に溶解した後、同じカラムで変性条件下でHPLC分析をした。ランニング緩衝液としては、5Mグアニジン−塩酸を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を用いた。コントロールとして、IgGとFv−Pの混合物、並びにIgGとFv−PPの混合物(それぞれ2種の成分のモル比は1:2)も分析した。
【0073】
その結果を図19に示す。すなわち図19は、Fv−P、Fv−PPとIgG複合体(それぞれ図18中の分画A、B)の変性条件下のHPLCによる分析結果を示した図であり、縦軸はO.D.245 、横軸は時間(分)を示す。図19に示されたとおり、分画Aの複合体は、モル比1:2:2でIgG、VL −プロテインAFc結合ドメイン1個、及びVH に分かれた。また分画Bの複合体は、モル比2:3:3のIgG、VL −プロテインAFc結合ドメイン2個及びVH を生じた。
【0074】
以上述べてきたごとく、IgG分子を加えると、Fv−P分子並びにFv−PP分子が、複数の抗原結合部位を有する複合体を生ずる。
【0075】
(3−4) Fv−P、Fv−PPとIgG分子複合体の物理特性の分析
Fv、Fv−P、Fv−PP、あるいはそれらとIgG複合体の、固体支持体に結合させておいたHELとの複合体のKon及びKoff を、BIAコアシステムを使用して測定した。200μg/mlのHEL溶液35μlを、製造業者の指示に従って、バイオセンサーチップ上の支持体にアミン結合法によって化学的に結合させた。実験はすべて、5μl/分の流速で、HBS中、30℃にて実施した。まず、ヒトIgGを含有する(モル比2:1)、あるいは含有しない100nM、50nM、及び25nMの抗体(Fv、Fv−P、あるいはFv−PP)溶液20μlを、バイオセンサーチップ中に投入し、その後HBSで洗浄し、そして最後に、チップを100mMの塩酸で再生した。ヒトIgGの混合条件は、希釈緩衝液としてHBSを使用した以外は、実施例(3−3) で示したHPLCによる分析の場合と同一とした。
【0076】
その結果を図20に示す。すなわち図20は、IgGを加えた場合と加えない場合について、HELのFv、Fv−P、及びFv−PPとの会合、並びに生じた複合体の解離を、BIAコアシステムを使用して分析した際に得られた共鳴センサーの結果を示す図であり、縦軸は共鳴単位(RU)、横軸は時間(秒)を示す。これらのデータに基づいて、Kon及びKoff の値を計算した。その結果を表6に示す。すなわち表6は、BIAコアシステムにより測定したFvフラグメントとHELの結合に関する動力学的パラメーターを示した表である。
【0077】
【表6】
【0078】
Fv、Fv−P、及びFv−PPは、IgG分子を加えなかった場合、BIAコアで測定したKon及びKoff の値が、いずれも、実施例(3−2) で示したDTC並びにストップト・フロー装置で測定した値より10倍程度小さかった。こうした見掛上の差は、おそらく、複合体の形成条件の違いに起因するものである。すなわち、BIAコアシステムの場合には、HELは固体支持体に化学的に結合されているのに対し、DTC及びストップト・フロー分析の場合には、反応物質は溶液中で遊離していた。こうした違いにもかかわらず、全体としての親和性を反映していると考えられるKA の値は、互いにほぼ同一であった。Koff の値は、Fv−PとIgGの組合せの場合を除き、いずれの場合にも、総じて抗体の濃度が低いほど小さかった。こうした現象は、BIAコアシステムを用いた分析に特有のもののようである。固体支持体上に形成した複合体の安定性は、バイオセンサーチップ上の固体支持体に結合させた抗原の物理的条件に左右されるようであった。すなわち抗体の接近可能性は、チップ上で等しく達成されたわけではなかったのである。真のKoff は、理想的には、濃度をゼロとした地点で測定すべきである。したがって、測定値はすべて、経験的な予測値であると考えるべきである。
【0079】
Fvの場合、IgGを加えても、KonにもKoff にも何ら変化が生じなかった。Fv−Pの場合、IgGを加えると、Konの値は半分となり、Koff の値が3分の1となった。しかし、Fv−Pの濃度が低い場合、Koff の値は上昇した。この現象は、(Fv−P)2 IgG複合体が不安定で、その結果、濃度が低いと解離してしまうことに起因すると考えられる。Fv−PPの場合、IgGを加えたことがKoff の減少に及ぼす正の効果が更に明りょうとなった。すなわち、測定を行ったすべての抗体濃度で、Koff の値が3.5倍低かったのである。BIAコア分析で観察された、(Fv−P)2 IgG複合体と(Fv−PP)3 (IgG)2 複合体の間の安定性についてのこの違いは、実施例(3−3) で示したHPLC及びDTCによる分析での結果と符合するものである。このように、(Fv−PP)3 (IgG)2 複合体は、抗原との結合性に関して安定、かつ多価性であると考えられる。
【0080】
(3−5) Fv−P、Fv−PPとIgG分子複合体を用いた酵素免疫測定法(ELISA)
20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解した100μg/ml HELを96穴プレート(スミコンマルチプレート;スミトモベークライト社)に50μlずつ入れ、プレートを40℃に一晩保った。上清を除去した後、100μlの1%BSAを加え、室温に1時間保った。プレートをPBS/Tで3回洗浄し、各ウェルに、50μlの一次抗体溶液を加えた。この一次抗体溶液は、ヒトIgGを含有する、あるいは含有しない抗体(Fv、Fv−P、Fv−PP)、あるいはヒトIgGのみを段階希釈したものである。
【0081】
ヒトIgGの混合条件は、希釈緩衝液としてPBS/Tを使用した以外は、実施例(3−3) で示したHPLCによる分析の場合と同一とした。
このプレートを室温で4時間保温した。溶液を取除いた後、PBS/Tで3回洗浄した。二次抗体として、抗D1.3抗体をPBS/Tで希釈したものを50μl加えた。室温に4時間保温した後、プレートをPBS/Tで3回洗浄した。三次抗体として、PBS/Tで希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた抗ウサギIgGロバ由来抗体、50μlを加え、室温で4時間保温した。
PBS/Tで4回洗浄した後、0.04%のo−フェニレンジアミン(OPDA)、0.02%のH2 O2 、48.5mMのクエン酸塩、及びNa− リン酸(pH5.0)からなる染色用溶液50μlを加えた。染色反応を暗室内で室温にて20分間進行させ、50μlの2M硫酸を加えることにより停止させた。492nmでの吸光度を、タイターテック(Titertek) 〔マルチスカン(Multiskan)、MCC社〕によって測定した。その結果を図21に示す。すなわち図21はヒトIgGのみのもの(×)と、Fv(白丸)、Fv−P(白四角)、Fv−PP(白三角)とFvにヒトIgGを加えたもの(黒丸)、Fv−PにヒトIgGを加えたもの(黒四角)、Fv−PPにヒトIgGを加えたもの(黒三角)を一次抗体として抗D1.3抗体により検出したELISAの結果を示した図であり、縦軸はO.D.492 、横軸は一次抗体濃度(μM)を示す。
【0082】
また同様にして、二次抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた抗ヒトIgGFcフラグメントヤギ抗体(カッペル社、以下抗ヒトFc抗体と略す)に変えて二次抗体の洗浄後発色させた。この場合、HELに結合した一次抗体中にヒトIgGが含まれているかを調べることとなる。
その結果を図22に示す。すなわち図22は、図21と同様のものを一次抗体として抗ヒトFc抗体により検出したELISAの結果を示した図であり、縦軸はO.D.492 、横軸は一次抗体濃度(μM)を示す。
【0083】
これらELISAの結果は、プロテインAから誘導した部分が、第1のヒトIgG分子ばかりでなく、第2及び第3の抗体にも結合した可能性があったので、得られたデータの解釈は多少複雑なものとなった。しかし、いずれの場合にも、Fv−P並びにFv−PPを単独で使用した場合より、Fv−PとIgGとの混合物、並びにFv−PPとIgGとの混合物を用いた場合の方が検出の感度が高いことは明らかであった。更に、等しいO.D.492 の値を示す第1抗体の濃度を比較したところ、Fv−PPとIgGとの混合物を用いた場合の検出の感度は、Fvを単独で用いた場合の検出の感度より一桁以上高かった。
【0084】
図22に示すように、第2抗体として抗Fc抗体を使用したELISAでは、IgGを加えた場合に感度が上昇することが明らかに観察された。IgGを加えなかった場合には、Fv−PもFv−PPもシグナルを示さなかったのである。以上述べてきたごとく、Fv−P並びにFv−PPをIgGと混合したものは、ELISAに用いる反応物質として有用である。
【0085】
(3−6) Fv−P、Fv−PPとIgG分子複合体を用いたウェスタンブロッティング
0.5μg、0.25μg、0.125μg、0.0625μgのHELをSDS−PAGE後、セミドライブロッターを用いてPVDF膜にブロッティングした。この膜を、1%BSAを含むPBS/Tに室温で1時間浸してブロッキングした。一次抗体としてPBS/Tで希釈した10mMのFv、Fv−PあるいはFv−PPを使用した。室温で4時間保温後PBS/Tで3回洗浄した。抗D1.3抗体を含有するPBS/Tに浸し、室温に4時間保ち、そしてPBS/Tで3回洗浄した。この膜を、更に、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた抗ウサギIgG抗体を含むPBS/Tに浸し、室温に4時間保った。PBS/Tで5回洗浄した後、ELCウェスタン ブロッティングシステム(アマシャム社)を用いて検出した。
【0086】
その結果を図23に示す。すなわち図23は、Fv、Fv−P、Fv−PPを一次抗体として抗D1.3抗体により検出したHEL〔0.5μg(1) 、0.25μg(2) 、0.125μg(3) 、0.0625μg(4) 〕のウェスタン ブロッティングの結果を示した図である。
【0087】
また同様にして、Fv−PあるいはFv−PPとヒトIgG複合体を一次抗体としてウェスタン ブロッティングをした。
すなわち、実施例(3−3) で示したHPLCの分析で用いた複合体をPBS/Tで1000倍希釈したもの(Fv−P、Fv−PP濃度として10nM)を一次抗体として用いた。
二次抗体として、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた抗ヒトFc抗体を用いた。
二次抗体洗浄後ECLウェスタン ブロッティングシステムを用いて検出した。その結果を図24に示す。すなわち図24は、Fv−PあるいはFv−PPとヒトIgG複合体を一次抗体として、抗ヒトFc抗体により検出したHEL〔0.5μg(1) 、0.25μg(2) 、0.125μg(3) 、0.0625μg(4) 〕のウェスタン ブロッティングの結果を示した図である。
【0088】
これらウェスタン ブロッティングの結果をまとめると、第2抗体として抗D1.3抗体を使用した場合、Fv−P並びにFv−PPはFvより強い信号を示した。第2抗体として抗Fc抗体を使用した場合、Fv−PあるいはFv−PPのIgGとの複合体は、予想どおり、更に強い信号を示した。
【0089】
【発明の効果】
本発明により提供される遺伝子を用いることにより、目的抗原に対して高アフィニティーの抗体分子をコードする遺伝子の選抜が容易となり、選抜された高アフィニティー抗体を含有するモノクローナル型の多価人工抗体の製造方法も提供される。目的抗原に対してアフィニティーを示す抗体分子をコードする遺伝子群を用いれば、ポリクローナル型の多価人工抗体の作製も容易であり、これらの多価人工抗体は、抗原精製、抗原測定、診断等の分野で有用である。
【0090】
【配列表】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【図面の簡単な説明】
【図1】PM13FvのHind III−EcoR I挿入断片とその付近の概略図。
【図2】線状ファージM13Fv、M13ΔFv、M13K07をサルコシル処理した時にファージコートタンパク質に残存するFvフラグメント由来ポリペプチドを比較した図。
【図3】線状ファージM13Fv表面に発現されているFvフラグメント由来ポリペプチドを比較定量した図。
【図4】ファージM13K07サルコシル無処理でHEL固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図5】ファージM13ΔFvをサルコシル無処理でHEL固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図6】ファージM13Fvをサルコシル無処理でHEL固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図7】ファージM13K07をサルコシル1時間処理でHEL固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図8】ファージM13ΔFvをサルコシル1時間処理でHEL固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図9】ファージM13Fvをサルコシル1時間処理でHEL固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図10】ファージM13K07をサルコシル18時間処理でHEL固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図11】ファージM13ΔFvをサルコシル18時間処理でHEL固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図12】ファージM13Fvをサルコシル18時間処理でHEL固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図13】ファージをHEL固定化センサーチップに投入後、抗M13ファージ抗体をさらに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図14】ファージを抗D1.3抗体固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図15】アフィニティ樹脂により精製されたFv、Fv−P、Fv−PPのSDS−PAGEによる分析結果を示した図。
【図16】Fv−PとヒトIgGとの結合に関するDTC分析結果を示した図。
【図17】Fv−PPとヒトIgGとの結合に関するDTC分析結果を示した図。
【図18】Fv、Fv−P、Fv−PP及びこれらのIgG混合物のHPLCによる分析結果を示した図。
【図19】Fv−P、Fv−PPとIgG複合体の変性条件下HPLCによる分析結果を示した図。
【図20】Fv、Fv−P、Fv−PPとそれらにヒトIgGを加えたものを、HEL固定化センサーチップに投入した時の表面プラズモン共鳴センサー分析結果を示した図。
【図21】Fv、Fv−P、Fv−PPとそれらにヒトIgGを加えたものを一次抗体として抗D1.3抗体により検出したELISAの結果を示した図。
【図22】Fv、Fv−P、Fv−PPとそれらにヒトIgGを加えたものを一次抗体として抗ヒトFc抗体により検出したELISAの結果を示した図。
【図23】Fv、Fv−P、Fv−PPを一次抗体として、抗D1.3抗体により検出したウエスタンブロッティングの結果を示した図。
【図24】Fv−PあるいはFv−PPとヒトIgG複合体を一次抗体として抗ヒトFc抗体により検出したウエスタンブロッティングの結果を示した図。
Claims (3)
- 下記一般式(化1)で表される核酸。
〔式中X’は抗体可変部位をコードする塩基配列を含有する核酸、Yは線状ファージコートタンパク質III又はVIIIをコードする塩基配列を含有し、かつその最後に終止コドンが存在する核酸、ZはプロテインA、プロテインG若しくはこれらのFc結合ドメインをコードする塩基配列を含有する核酸、mは1又は0であり、mが1のとき一般式(化1)の核酸は抗体可変部位と線状ファージコートタンパク質III又はVIIIとを含有する融合ポリペプチドをコードし、mが0のとき一般式(化1)の核酸は抗体可変部位とプロテインA、プロテインG若しくはこれらのFc結合ドメインとを含有する融合ポリペプチドをコードしている〕 - 一般式(化1)においてZがプロテインAのFc結合ドメインをコードする塩基配列を含有する核酸である請求項1に記載の核酸。
- 一般式(化1)においてYが配列表の配列番号1で表される塩基配列を含有する核酸であり、Zが配列表の配列番号2又は配列番号3で表される塩基配列を含有する核酸である請求項1に記載の核酸。
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