JP3604249B2 - 作業車の走行経路作成装置及び走行制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業車の走行経路作成装置、及び、その作成された予定走行経路に沿って作業車を自動走行させるための走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば肥料用の薬剤を散布する薬剤散布装置を備えた作業車を圃場等の作業地内で自動走行させる場合には、従来は、対象作業地内において薬剤散布装置の作業幅(薬剤散布幅)に対応する経路幅で複数の作業経路が隣接して並ぶように予定走行経路を設定して、例えば、作業幅の中心が経路横幅方向の中心線上を通過するように操向操作して各作業経路に沿って走行させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来では、作業地を平面視状態で見て経路設定を行っているので、作業地内で高低差が無く水平状態とみなせる場合には問題はないが、例えば、作業地が全体として傾斜しているような場合には、図11に示すように、実際の作業地表面に沿っての作業経路の幅SHが平面視での経路幅hよりも長くなるので、実際に傾斜した作業経路に対して作業するときに、作業部SBの作業幅hが実際に作業すべき作業経路の幅SHよりも短い状態で作業することがあり、その結果、隣接する作業経路同士の境界部分に未作業領域が生じるおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、上記従来技術の不具合を解消させるべく、傾斜した作業地内において作業車が作業走行する場合にも、例えば隣接する作業経路の境界付近に未作業領域を生じさせない状態で適正な作業ができるように予定走行経路を設定する走行経路作成装置、及び、その作成した走行経路データを用いて作業車を適正な状態で作業走行させる走行制御装置を得ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1では、作業車が走行車体に備えた所定作業幅の作業部にて作業しながら走行する作業地の3次元形状が計測され、その作業地の3次元形状計測情報に基づいて、作業地の傾斜状態を判別して、前記作業地内に平行状態で傾斜方向に沿って並ぶ複数の作業経路の隣接するもの同士の間隔を作業地表面での前記作業部の作業幅に基づき設定する状態で、作業車を前記作業地内において走行させるための予定走行経路のデータが作成される。
【0006】
従って、作業地の3次元形状計測情報に基づいて例えば作業地全体での傾斜状態を判別し、その傾斜した作業地表面での作業部の作業幅が平面視での幅よりも短くなる点を考慮して、作業車の予定走行経路を設定することができるので、従来のように単純に平面視状態で作業地内に作業部の作業幅に基づいて各作業経路を設定した場合には、作業地上で作業すべき幅に対して実際の作業幅が短くなって、隣接する作業経路の境界部分に未作業領域が生じるというような不都合を的確に防止して適正な作業を行うことができる走行経路作成装置が得られる。
【0009】
請求項2によれば、請求項1において、作業地の周縁部における複数設定箇所の3次元位置情報に基づいて、作業地の3次元形状が計測される。
【0010】
従って、例えば、作業地表面が平面であって一定の傾斜角で所定方向に傾斜しているような場合に、作業地内部での位置情報を要することなく、測量等によって位置が判っている作業地周縁部の複数設定箇所での3次元位置情報に基づいて、作業地全体の3次元形状を的確に判断することができ、もって、上記請求項1の走行経路作成装置の好適な手段が得られる。
【0011】
請求項3によれば、請求項2において、多角形状の作業地の各角部を、作業地の周縁部における複数設定箇所として、その各角部での3次元位置情報に基づいて、作業地の3次元形状が計測される。
【0012】
従って、通常最も多い多角形状の作業地に対して、必要最小数の箇所での3次元位置情報に基づいて作業地の3次元形状を的確に判断することができ、もって、上記請求項2の走行経路作成装置の好適な手段が得られる。
【0013】
請求項4によれば、請求項2又は3において、走行車体が作業地の周縁部における設定箇所に位置したときの走行車体の3次元位置が検出され、その走行車体の3次元位置情報に基づいて作業地の3次元形状が計測される。
【0014】
従って、予め測量等による3次元位置情報が得られていない作業地についても、作業走行させる前に走行車体を作業地の周縁部の設定箇所に位置させて、作業地の3次元形状を的確に判断することができ、もって、上記請求項2又は3の走行経路作成装置の好適な手段が得られる。
【0015】
請求項5によれば、請求項4において、地上側の基準位置において、GPS衛星からの搬送波信号がGPS基準局で受信され、そのGPS基準局での搬送波位相情報が基準側通信手段から車体側に向けて送信される一方、走行車体において、GPS移動局が受信したGPS衛星からの搬送波信号及び上記基準側通信手段の送信情報を受信した車体側通信手段が受信したGPS基準局での搬送波位相情報から求めた二重位相差情報に基づいて、走行車体の3次元位置が時系列的なGPS位置データとして求められる。
【0016】
従って、GPS衛星からの搬送波信号の二重位相差情報に基づく正確な位置の検出によって、走行車体の3次元位置を時系列的な位置データとして正確に求め、このGPS位置データを用いて、作業地の3次元形状を的確に判断することができ、もって、上記請求項4の走行経路作成装置の好適な手段が得られる。
【0017】
請求項6によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車の走行経路作成装置によって作成された予定走行経路のデータに基づいて、作業車が予定走行経路に沿って自動走行するように制御される。
【0018】
従って、例えば作業者が画面表示された走行経路を見て手動操縦する場合の負担増を回避しながら、傾斜等した作業地に対して適切に走行経路を設定して隣接する作業経路の境界部分に未作業領域が生じるような不都合を防止して適正な作業状態で自動走行させることができる作業車の走行制御装置が得られる。
【0019】
請求項7によれば、請求項6において、作業地内での作業車の走行車体の3次元位置が検出され、その走行車体の位置検出情報に基づいて作業車が予定走行経路に沿って自動走行するように制御される。
【0020】
従って、例えば、走行車体の3次元位置検出情報から予定走行経路の経路横方向の適正操向位置に対する偏位を判断して、その偏位を零にするように適切な操向状態で自動走行させることができ、もって、上記請求項6の作業車の走行制御装置の好適な手段が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、薬剤散布用の作業車Vが、矩形状の作業地(圃場F)内を自動走行しながら肥料である薬剤の散布作業を行う場合について図面に基づいて説明する。
【0022】
図2に示すように、例えばその地点の重力方向に対して水平方向を東西及び南北方向で表した局地水平座標系E(東方向),N(北方向),H(地球中心からの高さ方向)において高精度に位置(上記座標系E,N,Hでの座標値)が判っている地上側の基準位置に設置されて、少なくとも4個のGPS衛星2からのスペクトラム拡散変調された搬送波信号を受信するGPS基準局R(以後、単に基準局Rともいう)用のアンテナ19aと、そのアンテナ19aの受信信号を処理して搬送波の位相情報を得るGPS受信機19と、そのGPS受信機19からのGPS基準局での搬送波位相情報を送信する送信アンテナ20aを備えた地上側のデータ送受信機20とが設けられている。
【0023】
一方、作業車Vには、GPS衛星2からの搬送波信号を受信するGPS受信アンテナ17aと、そのGPS受信アンテナ17aの受信信号を処理して搬送波位相情報を得るGPS受信機17と、地上側の送受信機20の送信情報(基準局Rでの搬送波位相情報)を受信するデータ受信アンテナ18aを備えたデータ送受信機18とが設けられて、GPS移動局I(以後、単に移動局Iともいう)が構成されている。
【0024】
前記基準局R及び移動局Iの各GPS受信機19,17は、図4に示すように、ほぼ同様の構成になるものであって、夫々のGPS受信アンテナ19a,17aで受信した電波信号は、先ず高周波信号処理部30,40に入力して低周波数に変換される。その低周波数変換された信号は、C/Aコード解析部31,41にて衛星番号等が解読されるとともに、搬送波位相計測部33,43において、上記衛星番号に応じて作成されるC/Aコードと相関をとって搬送波が再生され、さらに内蔵した時計34,44にて設定時間間隔で搬送波の位相が計測される。同時に、C/Aコード解析部31,41からの情報に基づいて、航路メッセージ解読部32,42にて衛星位置情報等が判別される。そして、上記各部からの情報は、夫々の制御用のコンピュータ35,45に入力されて各基準局R及び移動局Iにおける搬送波位相情報が求められる。
【0025】
さらに、基準局R側コンピュータ35から出力された基準局Rでの搬送波位相情報が、地上側の送受信機20を経て送信アンテナ20aから送信されて作業車V側のアンテナ18aで受信され、送受信機18を経て移動局I側のコンピュータ45に入力される。そして、その移動局I側コンピュータ45によって、移動局Iでの搬送波位相情報及び上記受信した基準局Rでの搬送波位相情報から二重位相差情報を求め、その二重位相差情報に基づいて、基準局Rに対する移動局Iつまり作業車Vの走行車体5の3次元位置を所定時間間隔の時系列的なGPS位置データとして求めるGPS位置データ算出手段45が構成されている。
【0026】
ここで、二重位相差情報について概略を説明すると、異なる2つの衛星2からの各搬送波信号を2つの受信局(基準局R及び移動局I)夫々で受信して、各衛星2ごとに対応する2つの位相差を求め、さらにこれら2つの位相差の差分をとったものを二重位相差と呼ぶ。これによって各衛星2での送信信号の位相乱れの影響が除去されるとともに、各受信局の位相計測用の時計の同期ずれの影響が除去され、最終的に、衛星側及び受信局側での誤差の影響を少なくした精度のよい位相差情報が得られる。尚、基準局Rに対する移動局Iの位置ベクトルr(図5参照)を求めるために、実際は、異なる4つの衛星2からの各搬送波信号に基づいて、独立した3つの二重位相差が求められることになる。
【0027】
前記3つの二重位相差情報に基づく走行車体5の位置検出について具体的に説明する。先ず最初に、作業車Vを局地水平座標系E,N,Hにおいて高精度に位置が判っている地点に位置させ、移動局I側及び基準局R側の各GPS受信機17,19の受信情報から3つの二重位相差を計算し、基準局R及び作業車V間の相対位置が判っていることから上記二重位相差情報に含まれる搬送波波長の整数倍の不確定(整数値バイアス)を確定させる。次に、図5に示すように、作業車Vを圃場F内の未知の点に移動させたときの3つの二重位相差情報より、基準局Rから作業車Vへの位置ベクトルrが求まり、この位置ベクトルrと基準局Rの位置とから、走行車体5の3次元位置(x,y,z)(具体的には、受信アンテナ17aの位置)が判別される。
【0028】
以上より、走行車体5の3次元位置を検出する位置検出手段102が、前記GPS基準局Rと、そのGPS基準局Rでの搬送波位相情報を送信する基準側通信手段としてのデータ送受信機20とが、地上側の基準位置に設置されるとともに、前記GPS移動局Iと、前記地上側のデータ送受信機20の送信情報を受信する車体側通信手段としてのデータ送受信機18と、前記位置データ算出手段45とが、走行車体5に備えられて構成されることになる。
【0029】
次に、作業車Vの装置構成を、図1〜図3に基づいて説明する。
左右一対の前輪3及び後輪4を備えた走行車体5の後部に、作業部としての薬剤散布装置6と、この薬剤散布装置6に対して薬剤を加圧供給する供給タンク21とが設置されている。薬剤散布装置6は、車体横幅方向において所定作業幅で圃場面に向けて薬剤を噴射するために、細かいピッチで配列した多数の噴射ノズル6aを備えている。薬剤散布装置6の車体左右両側の各端部位置は、GPS受信アンテナ17aの位置に対して、車体後方側に距離b、車体横幅方向に車体中心から左右に各距離aに位置し、上下方向には距離c下方に位置している。これより、薬剤散布装置6の車体横幅方向での作業幅は2aになる。この薬剤散布装置6の作業幅は2a、及び、走行車体5(受信アンテナ17aの位置)に対する位置関係の情報は、後述の制御装置16内に記憶されている。
【0030】
前輪3及び後輪4は、左右を一対として各別に操向操作自在に構成され、操向用の油圧シリンダ7,8と、これに対する電磁操作式の制御弁9,10とが設けられている。そして、切換スイッチ13によって、前輪3又は後輪4の一方のみを操向する2輪ステアリング形式、前後輪3,4を逆位相で且つ同角度に操向する4輪ステアリング形式、前後輪3,4を同位相で且つ同角度に操向する平行ステアリング形式の3種類のステアリング形式を選択できる。
【0031】
作業車Vには、エンジンE、エンジンEからの出力を変速して前後輪3,4の夫々を同時に駆動する油圧式無段変速装置11、その変速操作用の電動モータ12、前記供給タンク21から各ノズル6aへの薬剤供給を断続する制御弁14が設けられている。16は作業車Vの走行等を制御するマイクロコンピュータ利用の制御装置であって、各種センサの検出情報及び予め記憶された作業データに基づいて、変速用モータ12、各制御弁9,10,14等を作動させる。
【0032】
作業車Vに装備されるセンサ類について説明すれば、図1に示すように、前後輪3,4夫々の操向角を検出するポテンショメータ利用の操向角検出センサR1,R2と、変速装置11の変速状態に基づいて間接的に前後進状態及び車速を検出するポテンショメータ利用の車速センサR3と、変速装置11の出力軸の回転数を計数して走行距離を検出するエンコーダS3と、車体方位を検出する地磁気方位センサS4とが設けられている。
【0033】
前記制御装置16を利用して、作業車Vが走行車体5に備えた薬剤散布装置6にて薬剤散布作業をしながら走行する圃場Fの3次元形状を計測する作業地形状計測手段101が構成されている。具体的には、図6及び図7に示すように、圃場Fの周縁部における複数設定箇所の3次元位置情報に基づいて、圃場Fの3次元形状を計測する。そのために、作業車Vを手動操縦等によって矩形状の圃場Fの各角部に走行させ、走行車体5が圃場Fの各角部(少なくとも、3つの角部P0,P1,P2)に位置したときの前記車体位置検出手段102の情報に基づいて、上記圃場Fの各角部の3次元位置情報を求めて圃場Fの3次元形状を計測する。つまり、図6及び図7の例では、圃場Fは短辺F2の方向にのみ傾斜していて、その傾斜角は、角部P2とP0との高低差(H座標の差)を、角部P2とP0間の水平距離で割ることによって算出される。
【0034】
又、前記制御装置16を利用して、前記作業地形状計測手段101の計測情報に基づいて、作業車Vを圃場F内において走行させるための予定走行経路のデータを作成する走行用データ作成手段103が構成され、この走行用データ作成手段103は、前記予定走行経路として、図5及び図6に示すように、圃場F内に平行状態で設定間隔を隔てて隣接して並ぶ複数の作業経路Lを形成するように構成されている。
【0035】
つまり、圃場Fの内部に位置して1つの角部寄りのスタート地点Stから圃場長手方向に沿って走行開始して、圃場の中央部分において、長手方向に沿う各作業経路Lを直進走行しながら薬剤散布し、圃場端部に達すると180度旋回して前回走行した作業済領域(図5の斜線部分)に隣接する状態で作業経路Lを逆方向に走行することを繰り返し、圃場の中央部分での作業を終えると、圃場短辺に隣接する上記旋回部分と、圃場長辺に隣接する作業経路部分とを走行して、出入口Piから外に出るようにして、圃場Fの全体を走行する予定走行経路が設定されている。
【0036】
図7に示すように、圃場Fは短辺F2の方向に傾斜し、長辺F1の方向には傾斜してないので、短辺F2に沿っての作業地表面での長さは、平面視での長さより長くなり(図11参照)、長辺F1に沿っての長さは平面視での長さと変わらない。従って、実際の作業地表面での短辺F2の長さに対して薬剤散布装置6の作業幅2aを対応させて、隣接する作業経路Lの間隔を設定することになる。つまり、平面視で見ると、作業経路Lの間隔は、傾斜していない作業地に対する間隔よりも短くなっている。
【0037】
又、前記制御装置16を利用して、前記走行用データ作成手段103の作成情報に基づいて、作業車Vが前記予定走行経路(各作業経路L)に沿って自動走行するように制御する走行制御手段100が構成され、この走行制御手段100は、前記車体位置検出手段102の位置情報に基づいて、前記走行車体5の圃場F内での位置を特定して前記走行制御を行うように構成されている。
【0038】
具体的には、図7に示すように、走行車体5の現在位置Pが、圃場Fの左下角部P0からPに向くベクトルP−P0で表され、下式(1)及び(2)に示すベクトルの内積演算によって、そのベクトルP−P0を短辺F2に投影した長さT2で短辺方向に沿っての位置(つまり、各作業経路Lの適正操向位置に対する位置ずれ)が示され、ベクトルP−P0を長辺F1に投影した長さT1で長辺方向に沿っての位置(つまり、作業経路Lに沿っての進行距離)が示され、このT1,T2の情報で走行車体5の圃場F内での位置が特定される。尚、式中、(P1−P0)はP0からP1に向くベクトル、(P2−P0)はP0からP2に向くベクトルを表し、ABS(P1−P0)、ABS(P2−P0)は、夫々、ベクトル(P1−P0)、ベクトル(P2−P0)の絶対値つまり長辺F1又は短辺F2の距離を表す。
【0039】
【数1】
T1=(P−P0)・(P1−P0)/ABS(P1−P0)……(1)
T2=(P−P0)・(P2−P0)/ABS(P2−P0)……(2)
【0040】
次に、図8〜図10に示すフローチャートに基づいて、圃場形状の計測、走行用データの作成、及び走行制御について説明する。
メインフロー(図8)では、先ず、矩形状の圃場Fの3角部に走行車体5を位置させて、各角部での3次元のGPS位置検出を行い、そのGPS位置データを記憶する。そして、3つの角部での位置データを記憶すると、それに基づいて圃場Fの3次元形状を判別し、さらに、予め入力してある薬剤散布幅2aや走行ルートのパターン(図6参照)等のデータを参照して、予定走行経路のデータを作成する。次に、前記スタート地点Stへ移動してから、圃場Fに対する無人作業走行を実行した後、全処理を終える。
【0041】
無人作業走行処理(図9)では、スタート地点Stから2輪ステアリングで作業経路Lに沿って直進走行を開始するとともに、経路始端側の作業開始位置に達すると薬剤散布装置6による薬剤散布作業を開始して、各作業経路に沿わせるための操向制御を行う。経路終端側の作業停止位置に達すると薬剤散布作業を停止するが、圃場Fの中央部分に対する往復走行が終了していない場合は、その地点から所定距離直進した後、ステアリングを2輪から4輪に切り換えて、隣接する次の作業経路の始端部に向けて180度旋回動作する。旋回後は、ステアリングを2輪に戻して次の作業経路を反対向きに操向制御しながら走行するとともに、上記と同様に、薬剤散布装置6による薬剤散布作業を行う。圃場Fの中央部分に対する往復走行が終了している場合には、圃場Fの短辺及び長辺に沿っての周り走行を行ってから圃場F外に出て走行停止し、メインフローに戻る。
【0042】
操向制御処理(図10)では、GPS位置データを取り込んで、現時点での車体5の位置P(x,y,z)を算出するとともに、その位置データと、3つの角部P0,P1,P2での位置データとから、前述の式(2)に基づいて車体位置と作業経路Lにおける適正位置との偏位dを求め、又、車体方位データ(φ)を取り込み、上記偏位dの情報と、車体方位φの情報と、前輪3の操舵角θの情報(これは操向角検出センサR1にて検出される)とに基づいて下式のように、前輪3に対する目標操舵角θfを演算する。尚、k1,k2,k3は所定のゲイン係数である。そして、この目標操舵角θfになるように、前輪3がステアリング操作される。
【0043】
【数2】
θf=k1・d+k2・φ+k3・θ……(3)
【0044】
〔別実施形態〕
上記実施例では、矩形状の作業地(圃場F)の傾斜方向が短辺方向に沿う場合を説明したが、これ以外の傾斜状態であってもよい。例えば、図6において圃場Fの傾斜方向が長辺方向に沿う場合は、各作業経路Lの隣接間隔は平面視のときと同じであり、長辺方向に沿っての進行距離が平面視のときよりも長くなる。又、図12に示すように、圃場Fの傾斜方向が長辺方向と短辺方向の中間の方向であったり、図13に示すように、圃場Fが、夫々の傾斜角度が異なる4つの小部分Fa,Fb.Fc,Fdからなるものであってもよい。図13の場合は、各小部分Fa,Fb.Fc,Fdごとの傾斜状態に対応させながら、圃場F全体での走行経路を設定する。
【0045】
作業地の形状は、多角形状であるものに限らない。又、多角形状の場合も、矩形状以外に、台形等であってもよい。
【0046】
上記実施例では、圃場に対して薬剤を散布する薬剤散布装置6を作業部として備えた作業車Vについて説明したが、これ以外の農作業用及びその他の用途の各種作業車に適用できる。
【0047】
上記実施例では、作業地の3次元形状の計測のために、作業地周縁部における設定箇所の3次元位置情報を求めるのに、車体位置検出手段を備えた作業車Vを作業走行させる前に、上記設定箇所に位置させて位置検出するようにしたが、これ以外に、予め上記設定箇所での位置を計測したデータを記憶させるようにしてもよい。
【0048】
上記実施例では、予定走行経路として、作業地内に平行状態で設定間隔を隔てて隣接して並ぶ複数の作業経路を形成するようにした(図6参照)が、これに限るものではなく、例えば、矩形状の作業地の外周の4辺に沿って、90度づつ向き変更しながら順次作業走行する、いわゆる「周り走行」用の作業経路を形成してもよい。
【0049】
位置検出手段102は、上記実施例に示したGPS受信データに基づくものに限らない。例えば、地上側から光利用の追尾式3次元位置検出装置にて作業車Vの位置を計測して、その位置データを作業車側に送るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】作業車の制御構成を示すブロック図
【図2】作業車及びGPS基準局を示す概略側面図
【図3】作業車の平面図
【図4】GPS受信局の構成を示すブロック図
【図5】作業経路に沿っての自動走行を説明するための平面図
【図6】作業車の予定走行経路を示す概略平面図
【図7】傾斜した作業地に対する走行経路の設定を示す斜視図
【図8】制御作動のフローチャート
【図9】制御作動のフローチャート
【図10】制御作動のフローチャート
【図11】傾斜作業地に対する作業部位置を説明する図
【図12】別実施例の作業地の3次元形状を示す斜視図
【図13】別実施例の作業地の3次元形状を示す斜視図
【符号の説明】
5 走行車体
6 作業部
18 車体側通信手段
20 基準側通信手段
45 GPS位置データ算出手段
100 走行制御手段
101 作業地形状計測手段
102 車体位置検出手段
103 走行用データ作成手段
I GPS移動局
R GPS基準局
V 作業車
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業車の走行経路作成装置、及び、その作成された予定走行経路に沿って作業車を自動走行させるための走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば肥料用の薬剤を散布する薬剤散布装置を備えた作業車を圃場等の作業地内で自動走行させる場合には、従来は、対象作業地内において薬剤散布装置の作業幅(薬剤散布幅)に対応する経路幅で複数の作業経路が隣接して並ぶように予定走行経路を設定して、例えば、作業幅の中心が経路横幅方向の中心線上を通過するように操向操作して各作業経路に沿って走行させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来では、作業地を平面視状態で見て経路設定を行っているので、作業地内で高低差が無く水平状態とみなせる場合には問題はないが、例えば、作業地が全体として傾斜しているような場合には、図11に示すように、実際の作業地表面に沿っての作業経路の幅SHが平面視での経路幅hよりも長くなるので、実際に傾斜した作業経路に対して作業するときに、作業部SBの作業幅hが実際に作業すべき作業経路の幅SHよりも短い状態で作業することがあり、その結果、隣接する作業経路同士の境界部分に未作業領域が生じるおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、上記従来技術の不具合を解消させるべく、傾斜した作業地内において作業車が作業走行する場合にも、例えば隣接する作業経路の境界付近に未作業領域を生じさせない状態で適正な作業ができるように予定走行経路を設定する走行経路作成装置、及び、その作成した走行経路データを用いて作業車を適正な状態で作業走行させる走行制御装置を得ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1では、作業車が走行車体に備えた所定作業幅の作業部にて作業しながら走行する作業地の3次元形状が計測され、その作業地の3次元形状計測情報に基づいて、作業地の傾斜状態を判別して、前記作業地内に平行状態で傾斜方向に沿って並ぶ複数の作業経路の隣接するもの同士の間隔を作業地表面での前記作業部の作業幅に基づき設定する状態で、作業車を前記作業地内において走行させるための予定走行経路のデータが作成される。
【0006】
従って、作業地の3次元形状計測情報に基づいて例えば作業地全体での傾斜状態を判別し、その傾斜した作業地表面での作業部の作業幅が平面視での幅よりも短くなる点を考慮して、作業車の予定走行経路を設定することができるので、従来のように単純に平面視状態で作業地内に作業部の作業幅に基づいて各作業経路を設定した場合には、作業地上で作業すべき幅に対して実際の作業幅が短くなって、隣接する作業経路の境界部分に未作業領域が生じるというような不都合を的確に防止して適正な作業を行うことができる走行経路作成装置が得られる。
【0009】
請求項2によれば、請求項1において、作業地の周縁部における複数設定箇所の3次元位置情報に基づいて、作業地の3次元形状が計測される。
【0010】
従って、例えば、作業地表面が平面であって一定の傾斜角で所定方向に傾斜しているような場合に、作業地内部での位置情報を要することなく、測量等によって位置が判っている作業地周縁部の複数設定箇所での3次元位置情報に基づいて、作業地全体の3次元形状を的確に判断することができ、もって、上記請求項1の走行経路作成装置の好適な手段が得られる。
【0011】
請求項3によれば、請求項2において、多角形状の作業地の各角部を、作業地の周縁部における複数設定箇所として、その各角部での3次元位置情報に基づいて、作業地の3次元形状が計測される。
【0012】
従って、通常最も多い多角形状の作業地に対して、必要最小数の箇所での3次元位置情報に基づいて作業地の3次元形状を的確に判断することができ、もって、上記請求項2の走行経路作成装置の好適な手段が得られる。
【0013】
請求項4によれば、請求項2又は3において、走行車体が作業地の周縁部における設定箇所に位置したときの走行車体の3次元位置が検出され、その走行車体の3次元位置情報に基づいて作業地の3次元形状が計測される。
【0014】
従って、予め測量等による3次元位置情報が得られていない作業地についても、作業走行させる前に走行車体を作業地の周縁部の設定箇所に位置させて、作業地の3次元形状を的確に判断することができ、もって、上記請求項2又は3の走行経路作成装置の好適な手段が得られる。
【0015】
請求項5によれば、請求項4において、地上側の基準位置において、GPS衛星からの搬送波信号がGPS基準局で受信され、そのGPS基準局での搬送波位相情報が基準側通信手段から車体側に向けて送信される一方、走行車体において、GPS移動局が受信したGPS衛星からの搬送波信号及び上記基準側通信手段の送信情報を受信した車体側通信手段が受信したGPS基準局での搬送波位相情報から求めた二重位相差情報に基づいて、走行車体の3次元位置が時系列的なGPS位置データとして求められる。
【0016】
従って、GPS衛星からの搬送波信号の二重位相差情報に基づく正確な位置の検出によって、走行車体の3次元位置を時系列的な位置データとして正確に求め、このGPS位置データを用いて、作業地の3次元形状を的確に判断することができ、もって、上記請求項4の走行経路作成装置の好適な手段が得られる。
【0017】
請求項6によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車の走行経路作成装置によって作成された予定走行経路のデータに基づいて、作業車が予定走行経路に沿って自動走行するように制御される。
【0018】
従って、例えば作業者が画面表示された走行経路を見て手動操縦する場合の負担増を回避しながら、傾斜等した作業地に対して適切に走行経路を設定して隣接する作業経路の境界部分に未作業領域が生じるような不都合を防止して適正な作業状態で自動走行させることができる作業車の走行制御装置が得られる。
【0019】
請求項7によれば、請求項6において、作業地内での作業車の走行車体の3次元位置が検出され、その走行車体の位置検出情報に基づいて作業車が予定走行経路に沿って自動走行するように制御される。
【0020】
従って、例えば、走行車体の3次元位置検出情報から予定走行経路の経路横方向の適正操向位置に対する偏位を判断して、その偏位を零にするように適切な操向状態で自動走行させることができ、もって、上記請求項6の作業車の走行制御装置の好適な手段が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、薬剤散布用の作業車Vが、矩形状の作業地(圃場F)内を自動走行しながら肥料である薬剤の散布作業を行う場合について図面に基づいて説明する。
【0022】
図2に示すように、例えばその地点の重力方向に対して水平方向を東西及び南北方向で表した局地水平座標系E(東方向),N(北方向),H(地球中心からの高さ方向)において高精度に位置(上記座標系E,N,Hでの座標値)が判っている地上側の基準位置に設置されて、少なくとも4個のGPS衛星2からのスペクトラム拡散変調された搬送波信号を受信するGPS基準局R(以後、単に基準局Rともいう)用のアンテナ19aと、そのアンテナ19aの受信信号を処理して搬送波の位相情報を得るGPS受信機19と、そのGPS受信機19からのGPS基準局での搬送波位相情報を送信する送信アンテナ20aを備えた地上側のデータ送受信機20とが設けられている。
【0023】
一方、作業車Vには、GPS衛星2からの搬送波信号を受信するGPS受信アンテナ17aと、そのGPS受信アンテナ17aの受信信号を処理して搬送波位相情報を得るGPS受信機17と、地上側の送受信機20の送信情報(基準局Rでの搬送波位相情報)を受信するデータ受信アンテナ18aを備えたデータ送受信機18とが設けられて、GPS移動局I(以後、単に移動局Iともいう)が構成されている。
【0024】
前記基準局R及び移動局Iの各GPS受信機19,17は、図4に示すように、ほぼ同様の構成になるものであって、夫々のGPS受信アンテナ19a,17aで受信した電波信号は、先ず高周波信号処理部30,40に入力して低周波数に変換される。その低周波数変換された信号は、C/Aコード解析部31,41にて衛星番号等が解読されるとともに、搬送波位相計測部33,43において、上記衛星番号に応じて作成されるC/Aコードと相関をとって搬送波が再生され、さらに内蔵した時計34,44にて設定時間間隔で搬送波の位相が計測される。同時に、C/Aコード解析部31,41からの情報に基づいて、航路メッセージ解読部32,42にて衛星位置情報等が判別される。そして、上記各部からの情報は、夫々の制御用のコンピュータ35,45に入力されて各基準局R及び移動局Iにおける搬送波位相情報が求められる。
【0025】
さらに、基準局R側コンピュータ35から出力された基準局Rでの搬送波位相情報が、地上側の送受信機20を経て送信アンテナ20aから送信されて作業車V側のアンテナ18aで受信され、送受信機18を経て移動局I側のコンピュータ45に入力される。そして、その移動局I側コンピュータ45によって、移動局Iでの搬送波位相情報及び上記受信した基準局Rでの搬送波位相情報から二重位相差情報を求め、その二重位相差情報に基づいて、基準局Rに対する移動局Iつまり作業車Vの走行車体5の3次元位置を所定時間間隔の時系列的なGPS位置データとして求めるGPS位置データ算出手段45が構成されている。
【0026】
ここで、二重位相差情報について概略を説明すると、異なる2つの衛星2からの各搬送波信号を2つの受信局(基準局R及び移動局I)夫々で受信して、各衛星2ごとに対応する2つの位相差を求め、さらにこれら2つの位相差の差分をとったものを二重位相差と呼ぶ。これによって各衛星2での送信信号の位相乱れの影響が除去されるとともに、各受信局の位相計測用の時計の同期ずれの影響が除去され、最終的に、衛星側及び受信局側での誤差の影響を少なくした精度のよい位相差情報が得られる。尚、基準局Rに対する移動局Iの位置ベクトルr(図5参照)を求めるために、実際は、異なる4つの衛星2からの各搬送波信号に基づいて、独立した3つの二重位相差が求められることになる。
【0027】
前記3つの二重位相差情報に基づく走行車体5の位置検出について具体的に説明する。先ず最初に、作業車Vを局地水平座標系E,N,Hにおいて高精度に位置が判っている地点に位置させ、移動局I側及び基準局R側の各GPS受信機17,19の受信情報から3つの二重位相差を計算し、基準局R及び作業車V間の相対位置が判っていることから上記二重位相差情報に含まれる搬送波波長の整数倍の不確定(整数値バイアス)を確定させる。次に、図5に示すように、作業車Vを圃場F内の未知の点に移動させたときの3つの二重位相差情報より、基準局Rから作業車Vへの位置ベクトルrが求まり、この位置ベクトルrと基準局Rの位置とから、走行車体5の3次元位置(x,y,z)(具体的には、受信アンテナ17aの位置)が判別される。
【0028】
以上より、走行車体5の3次元位置を検出する位置検出手段102が、前記GPS基準局Rと、そのGPS基準局Rでの搬送波位相情報を送信する基準側通信手段としてのデータ送受信機20とが、地上側の基準位置に設置されるとともに、前記GPS移動局Iと、前記地上側のデータ送受信機20の送信情報を受信する車体側通信手段としてのデータ送受信機18と、前記位置データ算出手段45とが、走行車体5に備えられて構成されることになる。
【0029】
次に、作業車Vの装置構成を、図1〜図3に基づいて説明する。
左右一対の前輪3及び後輪4を備えた走行車体5の後部に、作業部としての薬剤散布装置6と、この薬剤散布装置6に対して薬剤を加圧供給する供給タンク21とが設置されている。薬剤散布装置6は、車体横幅方向において所定作業幅で圃場面に向けて薬剤を噴射するために、細かいピッチで配列した多数の噴射ノズル6aを備えている。薬剤散布装置6の車体左右両側の各端部位置は、GPS受信アンテナ17aの位置に対して、車体後方側に距離b、車体横幅方向に車体中心から左右に各距離aに位置し、上下方向には距離c下方に位置している。これより、薬剤散布装置6の車体横幅方向での作業幅は2aになる。この薬剤散布装置6の作業幅は2a、及び、走行車体5(受信アンテナ17aの位置)に対する位置関係の情報は、後述の制御装置16内に記憶されている。
【0030】
前輪3及び後輪4は、左右を一対として各別に操向操作自在に構成され、操向用の油圧シリンダ7,8と、これに対する電磁操作式の制御弁9,10とが設けられている。そして、切換スイッチ13によって、前輪3又は後輪4の一方のみを操向する2輪ステアリング形式、前後輪3,4を逆位相で且つ同角度に操向する4輪ステアリング形式、前後輪3,4を同位相で且つ同角度に操向する平行ステアリング形式の3種類のステアリング形式を選択できる。
【0031】
作業車Vには、エンジンE、エンジンEからの出力を変速して前後輪3,4の夫々を同時に駆動する油圧式無段変速装置11、その変速操作用の電動モータ12、前記供給タンク21から各ノズル6aへの薬剤供給を断続する制御弁14が設けられている。16は作業車Vの走行等を制御するマイクロコンピュータ利用の制御装置であって、各種センサの検出情報及び予め記憶された作業データに基づいて、変速用モータ12、各制御弁9,10,14等を作動させる。
【0032】
作業車Vに装備されるセンサ類について説明すれば、図1に示すように、前後輪3,4夫々の操向角を検出するポテンショメータ利用の操向角検出センサR1,R2と、変速装置11の変速状態に基づいて間接的に前後進状態及び車速を検出するポテンショメータ利用の車速センサR3と、変速装置11の出力軸の回転数を計数して走行距離を検出するエンコーダS3と、車体方位を検出する地磁気方位センサS4とが設けられている。
【0033】
前記制御装置16を利用して、作業車Vが走行車体5に備えた薬剤散布装置6にて薬剤散布作業をしながら走行する圃場Fの3次元形状を計測する作業地形状計測手段101が構成されている。具体的には、図6及び図7に示すように、圃場Fの周縁部における複数設定箇所の3次元位置情報に基づいて、圃場Fの3次元形状を計測する。そのために、作業車Vを手動操縦等によって矩形状の圃場Fの各角部に走行させ、走行車体5が圃場Fの各角部(少なくとも、3つの角部P0,P1,P2)に位置したときの前記車体位置検出手段102の情報に基づいて、上記圃場Fの各角部の3次元位置情報を求めて圃場Fの3次元形状を計測する。つまり、図6及び図7の例では、圃場Fは短辺F2の方向にのみ傾斜していて、その傾斜角は、角部P2とP0との高低差(H座標の差)を、角部P2とP0間の水平距離で割ることによって算出される。
【0034】
又、前記制御装置16を利用して、前記作業地形状計測手段101の計測情報に基づいて、作業車Vを圃場F内において走行させるための予定走行経路のデータを作成する走行用データ作成手段103が構成され、この走行用データ作成手段103は、前記予定走行経路として、図5及び図6に示すように、圃場F内に平行状態で設定間隔を隔てて隣接して並ぶ複数の作業経路Lを形成するように構成されている。
【0035】
つまり、圃場Fの内部に位置して1つの角部寄りのスタート地点Stから圃場長手方向に沿って走行開始して、圃場の中央部分において、長手方向に沿う各作業経路Lを直進走行しながら薬剤散布し、圃場端部に達すると180度旋回して前回走行した作業済領域(図5の斜線部分)に隣接する状態で作業経路Lを逆方向に走行することを繰り返し、圃場の中央部分での作業を終えると、圃場短辺に隣接する上記旋回部分と、圃場長辺に隣接する作業経路部分とを走行して、出入口Piから外に出るようにして、圃場Fの全体を走行する予定走行経路が設定されている。
【0036】
図7に示すように、圃場Fは短辺F2の方向に傾斜し、長辺F1の方向には傾斜してないので、短辺F2に沿っての作業地表面での長さは、平面視での長さより長くなり(図11参照)、長辺F1に沿っての長さは平面視での長さと変わらない。従って、実際の作業地表面での短辺F2の長さに対して薬剤散布装置6の作業幅2aを対応させて、隣接する作業経路Lの間隔を設定することになる。つまり、平面視で見ると、作業経路Lの間隔は、傾斜していない作業地に対する間隔よりも短くなっている。
【0037】
又、前記制御装置16を利用して、前記走行用データ作成手段103の作成情報に基づいて、作業車Vが前記予定走行経路(各作業経路L)に沿って自動走行するように制御する走行制御手段100が構成され、この走行制御手段100は、前記車体位置検出手段102の位置情報に基づいて、前記走行車体5の圃場F内での位置を特定して前記走行制御を行うように構成されている。
【0038】
具体的には、図7に示すように、走行車体5の現在位置Pが、圃場Fの左下角部P0からPに向くベクトルP−P0で表され、下式(1)及び(2)に示すベクトルの内積演算によって、そのベクトルP−P0を短辺F2に投影した長さT2で短辺方向に沿っての位置(つまり、各作業経路Lの適正操向位置に対する位置ずれ)が示され、ベクトルP−P0を長辺F1に投影した長さT1で長辺方向に沿っての位置(つまり、作業経路Lに沿っての進行距離)が示され、このT1,T2の情報で走行車体5の圃場F内での位置が特定される。尚、式中、(P1−P0)はP0からP1に向くベクトル、(P2−P0)はP0からP2に向くベクトルを表し、ABS(P1−P0)、ABS(P2−P0)は、夫々、ベクトル(P1−P0)、ベクトル(P2−P0)の絶対値つまり長辺F1又は短辺F2の距離を表す。
【0039】
【数1】
T1=(P−P0)・(P1−P0)/ABS(P1−P0)……(1)
T2=(P−P0)・(P2−P0)/ABS(P2−P0)……(2)
【0040】
次に、図8〜図10に示すフローチャートに基づいて、圃場形状の計測、走行用データの作成、及び走行制御について説明する。
メインフロー(図8)では、先ず、矩形状の圃場Fの3角部に走行車体5を位置させて、各角部での3次元のGPS位置検出を行い、そのGPS位置データを記憶する。そして、3つの角部での位置データを記憶すると、それに基づいて圃場Fの3次元形状を判別し、さらに、予め入力してある薬剤散布幅2aや走行ルートのパターン(図6参照)等のデータを参照して、予定走行経路のデータを作成する。次に、前記スタート地点Stへ移動してから、圃場Fに対する無人作業走行を実行した後、全処理を終える。
【0041】
無人作業走行処理(図9)では、スタート地点Stから2輪ステアリングで作業経路Lに沿って直進走行を開始するとともに、経路始端側の作業開始位置に達すると薬剤散布装置6による薬剤散布作業を開始して、各作業経路に沿わせるための操向制御を行う。経路終端側の作業停止位置に達すると薬剤散布作業を停止するが、圃場Fの中央部分に対する往復走行が終了していない場合は、その地点から所定距離直進した後、ステアリングを2輪から4輪に切り換えて、隣接する次の作業経路の始端部に向けて180度旋回動作する。旋回後は、ステアリングを2輪に戻して次の作業経路を反対向きに操向制御しながら走行するとともに、上記と同様に、薬剤散布装置6による薬剤散布作業を行う。圃場Fの中央部分に対する往復走行が終了している場合には、圃場Fの短辺及び長辺に沿っての周り走行を行ってから圃場F外に出て走行停止し、メインフローに戻る。
【0042】
操向制御処理(図10)では、GPS位置データを取り込んで、現時点での車体5の位置P(x,y,z)を算出するとともに、その位置データと、3つの角部P0,P1,P2での位置データとから、前述の式(2)に基づいて車体位置と作業経路Lにおける適正位置との偏位dを求め、又、車体方位データ(φ)を取り込み、上記偏位dの情報と、車体方位φの情報と、前輪3の操舵角θの情報(これは操向角検出センサR1にて検出される)とに基づいて下式のように、前輪3に対する目標操舵角θfを演算する。尚、k1,k2,k3は所定のゲイン係数である。そして、この目標操舵角θfになるように、前輪3がステアリング操作される。
【0043】
【数2】
θf=k1・d+k2・φ+k3・θ……(3)
【0044】
〔別実施形態〕
上記実施例では、矩形状の作業地(圃場F)の傾斜方向が短辺方向に沿う場合を説明したが、これ以外の傾斜状態であってもよい。例えば、図6において圃場Fの傾斜方向が長辺方向に沿う場合は、各作業経路Lの隣接間隔は平面視のときと同じであり、長辺方向に沿っての進行距離が平面視のときよりも長くなる。又、図12に示すように、圃場Fの傾斜方向が長辺方向と短辺方向の中間の方向であったり、図13に示すように、圃場Fが、夫々の傾斜角度が異なる4つの小部分Fa,Fb.Fc,Fdからなるものであってもよい。図13の場合は、各小部分Fa,Fb.Fc,Fdごとの傾斜状態に対応させながら、圃場F全体での走行経路を設定する。
【0045】
作業地の形状は、多角形状であるものに限らない。又、多角形状の場合も、矩形状以外に、台形等であってもよい。
【0046】
上記実施例では、圃場に対して薬剤を散布する薬剤散布装置6を作業部として備えた作業車Vについて説明したが、これ以外の農作業用及びその他の用途の各種作業車に適用できる。
【0047】
上記実施例では、作業地の3次元形状の計測のために、作業地周縁部における設定箇所の3次元位置情報を求めるのに、車体位置検出手段を備えた作業車Vを作業走行させる前に、上記設定箇所に位置させて位置検出するようにしたが、これ以外に、予め上記設定箇所での位置を計測したデータを記憶させるようにしてもよい。
【0048】
上記実施例では、予定走行経路として、作業地内に平行状態で設定間隔を隔てて隣接して並ぶ複数の作業経路を形成するようにした(図6参照)が、これに限るものではなく、例えば、矩形状の作業地の外周の4辺に沿って、90度づつ向き変更しながら順次作業走行する、いわゆる「周り走行」用の作業経路を形成してもよい。
【0049】
位置検出手段102は、上記実施例に示したGPS受信データに基づくものに限らない。例えば、地上側から光利用の追尾式3次元位置検出装置にて作業車Vの位置を計測して、その位置データを作業車側に送るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】作業車の制御構成を示すブロック図
【図2】作業車及びGPS基準局を示す概略側面図
【図3】作業車の平面図
【図4】GPS受信局の構成を示すブロック図
【図5】作業経路に沿っての自動走行を説明するための平面図
【図6】作業車の予定走行経路を示す概略平面図
【図7】傾斜した作業地に対する走行経路の設定を示す斜視図
【図8】制御作動のフローチャート
【図9】制御作動のフローチャート
【図10】制御作動のフローチャート
【図11】傾斜作業地に対する作業部位置を説明する図
【図12】別実施例の作業地の3次元形状を示す斜視図
【図13】別実施例の作業地の3次元形状を示す斜視図
【符号の説明】
5 走行車体
6 作業部
18 車体側通信手段
20 基準側通信手段
45 GPS位置データ算出手段
100 走行制御手段
101 作業地形状計測手段
102 車体位置検出手段
103 走行用データ作成手段
I GPS移動局
R GPS基準局
V 作業車
Claims (7)
- 作業車が走行車体に備えた所定作業幅の作業部にて作業しながら走行する作業地の3次元形状を計測する作業地形状計測手段と、
前記作業地形状計測手段の計測情報に基づいて、作業地の傾斜状態を判別して、前記作業車を前記作業地内において走行させるための予定走行経路のデータを、前記作業地内に平行状態で傾斜方向に沿って並ぶ複数の作業経路の隣接するもの同士の間隔を作業地表面での前記作業部の作業幅に基づき設定する状態で作成する走行用データ作成手段とが設けられている作業車の走行経路作成装置。 - 前記作業地形状計測手段は、前記作業地の周縁部における複数設定箇所の3次元位置情報に基づいて、前記作業地の3次元形状を計測するように構成されている請求項1記載の作業車の走行経路作成装置。
- 前記作業地が、多角形状であり、
前記作業地形状計測手段は、前記多角形状の作業地の各角部を前記周縁部における設定箇所とするように構成されている請求項2記載の作業車の走行経路作成装置。 - 前記走行車体の3次元位置を検出する車体位置検出手段が設けられ、
前記作業地形状計測手段は、前記走行車体が前記作業地の周縁部における設定箇所に位置したときの前記車体位置検出手段の情報に基づいて、前記作業地の3次元形状を計測するように構成されている請求項2又は3記載の作業車の走行経路作成装置。 - 前記車体位置検出手段は、
GPS衛星からの搬送波信号を受信するGPS基準局と、そのGPS基準局での搬送波位相情報を送信する基準側通信手段とが、地上側の基準位置に設置されるとともに、
前記GPS衛星からの搬送波信号を受信するGPS移動局と、
前記基準側通信手段の送信情報を受信する車体側通信手段と、
前記GPS移動局での搬送波位相情報及び前記車体側通信手段が受信した前記GPS基準局での搬送波位相情報から求めた二重位相差情報に基づいて、前記走行車体の3次元位置を時系列的なGPS位置データとして求めるGPS位置データ算出手段とが、前記走行車体に備えられて構成されている請求項4記載の作業車の走行経路作成装置。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車の走行経路作成装置における、前記走行用データ作成手段の作成情報に基づいて、前記作業車が前記予定走行経路に沿って自動走行するように制御する走行制御手段が設けられている作業車の走行制御装置。
- 前記走行制御手段は、前記車体位置検出手段の位置情報に基づいて、前記走行車体の前記作業地内での位置を特定して前記走行制御を行うように構成されている請求項6記載の作業車の走行制御装置。
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