JP3606948B2 - 同調増幅器 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、同調周波数と最大減衰量とを互いに干渉することなく、任意に調整し得る同調増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】
同調増幅器として従来より能動素子およびリアクタンス素子を使用した各種の増幅回路が提案され実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の同調増幅器においては、同調周波数を調整すると、LC回路に依存するQと利得が変化し、最大減衰量を調整すると同調周波数が変化したり、また、図33の特性曲線AおよびBに示すように、最大減衰量を調整すると同調周波数における利得が変化するので、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量C1、C2を互いに干渉しあうことなく調整することは極めて困難であった。
【0004】
さらに、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器を集積回路によって形成することも困難であった。
【0005】
そこで、この発明は、このような課題を解決するために考えられたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、この発明の同調増幅器は、
入力信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とインダクタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記インダクタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
を備え、前記2つの移相回路を縦続接続し、これら縦続接続された2つの移相回路の中の前段の移相回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、後段の移相回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら2つの移相回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0007】
また、この発明の同調増幅器は、
入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とインダクタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記インダクタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を変えずに出力する非反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記非反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0008】
また、この発明の同調増幅器は、
入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とインダクタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記インダクタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を反転して出力する位相反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記位相反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0009】
また、この発明の同調増幅器は、
入力側インピーダンス素子を介して入力された交流信号を同相で出力する非反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびインダクタと抵抗との直列接続よりなり、前記非反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続および抵抗とインダクタとの直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路とは反対方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還側インピーダンス素子を介して前記非反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、この発明の同調増幅器は、
入力抵抗を介して入力された交流信号を反転して出力する位相反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびインダクタと抵抗との直列接続よりなり、前記位相反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続およびインダクタと抵抗との直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路と同じ方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還抵抗を介して前記位相反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
【実施例】
以下、この発明を適用した一実施例の同調増幅器について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
(第1実施例)
図1は、この発明を適用した第1実施例の同調増幅器の構成を示す回路図である。同図に示す同調増幅器1は、入力信号の位相を変えずに出力する非反転回路50と、それぞれが入力信号の位相を所定量シフトさせることにより所定の周波数において合計で0°の位相シフトを行う2つの移相回路10、30と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路30から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。なお、非反転回路50はバッファ回路として機能するものであるが、同調増幅器の基本動作のみに着目した場合には省略してもよい。
【0013】
図2は、図1に示した前段の移相回路10の構成を抜き出して示したものである。同図に示す前段の移相回路10は、2入力の差分電圧を所定の増幅度(例えば約2倍)で増幅して出力する差動増幅器12と、入力端22に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器12の非反転入力端子に入力する可変抵抗16およびインダクタ17と、入力端22に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器12の反転入力端子に入力する抵抗18および20とを含んで構成されている。
【0014】
なお、インダクタ17と可変抵抗16との間に挿入されているキャパシタ19は直流電流阻止用であり、そのインピーダンスは動作周波数において極めて小さく、すなわち大きな静電容量を有している。また、インダクタ17と抵抗20の接続点が接地されている場合を考えて以下の説明を行うものとする。
【0015】
このような構成を有する移相回路10において、所定の交流信号が入力端22に入力されると、差動増幅器12の反転入力端子には、入力端22に印加される電圧(入力電圧Ei)を抵抗18と抵抗20とによって分圧した電圧が印加される。抵抗18および20の各抵抗値はほぼ等しく設定されており、これら2つの抵抗18、20の直列回路により構成される分圧回路によって約1/2に分圧された電圧Ei/2が差動増幅器12の反転入力端子に印加される。
【0016】
一方、入力信号が入力端22に入力されると、差動増幅器12の非反転入力端子には、インダクタ17と可変抵抗16の接続点(正確にはインダクタ17に直列に接続されたキャパシタ19と可変抵抗16の接続点であるが、上述したようにこのキャパシタ19は直流電流阻止用であって動作に影響を与えないため基本動作の説明を行う場合には省略することができる)に現れる信号が入力される。可変抵抗16とインダクタ17により構成されるLR回路(直列回路)の一方端には入力信号が入力されているため、入力信号の位相をこのLR回路によって所定量シフトした信号の電圧が差動増幅器12の非反転入力端子には印加される。
【0017】
差動増幅器12は、このようにして2つの入力端子に印加される電圧の差分を所定の増幅度、例えば約2倍に増幅した信号を出力する。
【0018】
図3は、移相回路10の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0019】
同図に示すように、インダクタ17の両端に現れる電圧VL1と可変抵抗16の両端に現れる電圧VR1は、互いに位相が90°ずれており、これらをベクトル的に合成(加算)したものが入力電圧Eiとなる。したがって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図3に示す半円の円周に沿ってインダクタ17の両端電圧VL1と可変抵抗16の両端電圧VR1とが変化する。
【0020】
また、差動増幅器12の非反転入力端子に印加される電圧(インダクタ17の両端電圧VL1)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗20の両端電圧Ei/2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo′となる。この差分電圧Eo′は、図3に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VL1と電圧VR1とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei/2に等しくなる。実際には、差動増幅器12はこの差分電圧Eo′を2倍に増幅しており、出力電圧Eo=Eo′×2=Eiとなる。したがって、この実施例の移相回路10において、入力信号の振幅と出力信号の振幅とは等しく、入出力信号間で信号の減衰が生じないことがわかる。
【0021】
また、図3から明らかなように、電圧VL1と電圧VR1とは円周上で直角に交わるため、入力電圧Eiと電圧VL1との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って90°から0°まで変化する。そして、移相回路10全体の位相シフト量φ1はその2倍であり、周波数に応じて180°から0°まで変化する。
【0022】
次に、上述した入出力電圧間の関係を定量的に検証する。
【0023】
図4は、前段の移相回路10を等価的に表した図であり、差動増幅器12の入力側に設けられた2つの直列回路に対応する構成が示されている。
【0024】
抵抗18および20により構成される直列回路の両端には入力電圧Eiが印加されるため、抵抗18、20のそれぞれは電圧Ei/2を発生する2つの電圧源27、28に置き換えて考えることができる。このとき、図4に示す等価回路の閉ループに流れる電流Iは、インダクタ17のインダクタンスをL、可変抵抗16の抵抗値をRとすると、
【数1】
となる。ここで、図4に示す2点間の電位差(差分)Eo′を求めると、
【数2】
となる。上述した(2)式に(1)式を代入して計算すると、
【数3】
となる。また、この実施例の移相回路10の出力電圧Eoは、上述した差分Eo′を2倍したものであるから、
【数4】
となる。ここで、可変抵抗16とインダクタ17からなるLR回路の時定数をT(=L/R)とした。
【0025】
この(4)式においてs=jωを代入して変形すると、
【数5】
となる。(5)式から出力電圧Eoの絶対値を求めると、
【数6】
となる。すなわち、(6)式は、この実施例の移相回路10は入出力間の位相がどのように回転しても、その出力信号の振幅は入力信号の振幅に等しく一定であることを表している。
【0026】
また、(5)式から出力電圧Eoの入力電圧Eiに対する位相シフト量φ1を求めると、
【数7】
となる。この(7)式から、例えばωがほぼ1/T(=R/L)となるような周波数における位相シフト量φ1はほぼ90°となり、入力信号の振幅を減衰させることなく位相のみをほぼ90°シフトさせることができる。しかも、可変抵抗16の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量φ1がほぼ90°となる周波数ωを変化させることができる。
【0027】
図5は、図1に示した後段の移相回路30の構成を抜き出して示したものである。同図に示す後段の移相回路30は、2入力の差分電圧を所定の増幅度(例えば約2倍)で増幅して出力する差動増幅器32と、入力端42に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器32の非反転入力端子に入力するインダクタ37および可変抵抗36と、入力端42に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器32の反転入力端子に入力する抵抗38および40とを含んで構成されている。
【0028】
なお、インダクタ37に直列に挿入されているキャパシタ39は直流電流阻止用であり、そのインピーダンスは動作周波数において極めて小さく、すなわち大きな静電容量を有している。
【0029】
このような構成を有する移相回路30において、所定の交流信号が入力端42に入力されると、差動増幅器32の反転入力端子には、入力端42に印加される電圧(入力電圧Ei)を抵抗38と抵抗40とによって分圧した電圧が印加される。抵抗38および40の各抵抗値はほぼ等しく設定されており、これら2つの抵抗38、40の直列回路により構成される分圧回路によって約1/2に分圧された電圧Ei/2が差動増幅器32の反転入力端子に印加される。
【0030】
一方、入力信号が入力端42に入力されると、差動増幅器32の非反転入力端子には、インダクタ37と可変抵抗36の接続点に現れる信号が入力される。インダクタ37と可変抵抗36により構成されるLR回路(直列回路)の一方端には入力信号が入力されているため、入力信号の位相をこのLR回路によって所定量シフトした信号の電圧が差動増幅器32の非反転入力端子には印加される。
【0031】
差動増幅器32は、このようにして2つの入力端子に印加される電圧の差分を所定の増幅度、例えば約2倍に増幅した信号を出力する。
【0032】
図6は、移相回路30の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0033】
同図に示すように、可変抵抗36の両端に現れる電圧VR2とインダクタ37の両端に現れる電圧VL2は、互いに位相が90°ずれており、これらをベクトル的に合成(加算)したものが入力電圧Eiとなる。したがって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図6に示す半円の円周に沿って可変抵抗36の両端電圧VR2とインダクタ37の両端電圧VL2とが変化する。
【0034】
また、差動増幅器32の非反転入力端子に印加される電圧(可変抵抗36の両端電圧VR2)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗40の両端電圧Ei/2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo′となる。この差分電圧Eo′は、図6に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VR2と電圧VL2とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei/2に等しくなる。実際には、差動増幅器32はこの差分電圧Eo′を2倍に増幅しており、出力電圧Eo=Eo′×2=Eiとなる。したがって、この実施例の移相回路30において、入力信号の振幅と出力信号の振幅とは等しく、入出力信号間で信号の減衰が生じないことがわかる。
【0035】
また、図6から明らかなように、電圧VR2と電圧VL2とは円周上で直角に交わるため、入力電圧Eiと電圧VR2との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って0°から90°まで変化する。そして、移相回路30全体の位相シフト量φ2はその2倍であり、周波数に応じて0°から180°まで変化する。
【0036】
次に、上述した入出力電圧間の関係を定量的に検証する。
【0037】
図7は、後段の移相回路30を等価的に表した図であり、差動増幅器32の入力側に設けられた2つの直列回路に対応する構成が示されている。
【0038】
抵抗38および40により構成される直列回路の両端には入力電圧Eiが印加されるため、前段の移相回路10の場合と同様に、抵抗38、40のそれぞれは電圧Ei/2を発生する2つの電圧源27、28に置き換えて考えることができる。このとき、図7に示す等価回路の閉ループに流れる電流Iは、可変抵抗36の抵抗値をR、インダクタ37のインダクタンスをLとすると、上述した(1)式で表すことができる。
【0039】
ここで、図7に示す2点間の電位差(差分)Eo′を求めると、
【数8】
となる。上述した(8)式に(1)式を代入して計算すると、
【数9】
となる。また、この実施例の移相回路30の出力電圧Eoは、上述した差分Eo′を2倍したものであるから、
【数10】
となる。ここで、移相回路10と同様に、インダクタ37と可変抵抗36からなるLR回路の時定数をT(=L/R)とした。
【0040】
(10)式においてs=jωを代入して変形すると、
【数11】
となる。
【0041】
上述した(10)式および(11)式は、前段の移相回路10について示した(4)式および(5)式と符号のみ異なっている。したがって、出力電圧Eoの絶対値は(6)式をそのまま適用することができ、後段の移相回路30は入出力間の位相がどのように回転しても、その出力信号の振幅は入力信号の振幅に等しく一定であることがわかる。
【0042】
また、(11)式から出力電圧Eoの入力電圧Eiに対する位相シフト量φ2を求めると、
【数12】
となる。この(12)式から、例えばωがほぼ1/T(=R/L)となるような周波数における位相シフト量φ2はほぼ90°となり、入力信号の振幅を減衰させることなく位相のみをほぼ90°シフトさせることができる。しかも、可変抵抗36の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量φ2がほぼ90°となる周波数ωを変化させることができる。
【0043】
このようにして、2つの移相回路10、30のそれぞれにおいて位相が所定量シフトされる。しかも、図3および図6に示すように、各移相回路10、30における入出力電圧の相対的な位相関係は反対方向であって、所定の周波数において2つの移相回路10、30の全体により位相シフト量が0°となる信号が出力される。
【0044】
また、後段の移相回路30の出力は、帰還抵抗70を介して移相回路10の前段に設けられた非反転回路50の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算される。この加算された信号は、バッファ回路として機能する非反転回路50を介して移相回路10の入力端(図2に示した入力端22)に入力される。
【0045】
このような帰還ループを形成することにより、ある周波数において帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、非反転回路50や2つの移相回路10、30の各増幅度を調整して、同調増幅器1全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0046】
図8は、上述した構成を有する2つの移相回路10、30および非反転回路50の全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えたシステム図であり、伝達関数K1を有する回路と並列に抵抗R0を有する帰還抵抗70が、直列に帰還抵抗70のn倍の抵抗値(nR0)を有する入力抵抗74が接続されている。図9は、図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図であり、変換後のシステム全体の伝達関数Aは、
【数13】
で表すことができる。
【0047】
ところで、(4)式から明らかなように、前段の移相回路10の伝達関数K2は、
【数14】
であり、(10)式から明らかなように、後段の移相回路30の伝達関数K3は、
【数15】
である。したがって、移相回路10、30を2段縦続接続した場合の全体の伝達関数K1は、
【数16】
となる。この(16)式を上述した(13)式に代入すると、
【数17】
となる。
【0048】
この(17)式によれば、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路10、30の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であることがわかる。換言すれば、図10に示すように、nの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0049】
このように、この実施例の同調増幅器1によれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路10、30内の可変抵抗16あるいは36の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0050】
また、この実施例の同調増幅器1において、インダクタ17および37は、写真触刻法等によりスパイラル状の導体を形成することによって半導体基板上へ形成することが可能となるが、このようなインダクタ17および37を用いることにより、それ以外の構成部品(差動増幅器や抵抗等)とともに半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1の全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。但し、この場合にはインダクタ17および37が有するインダクタンスは極めて小さくなるため、同調周波数が高くなる。別の見方をすれば、同調増幅器1の同調周波数はR/Lに比例し、この中のインダクタンスLは集積化等により小さくすることが容易であるため、同調周波数の高周波化に適している。
【0051】
なお、上述した第1実施例の同調増幅器1では、前段に移相回路10を、後段に移相回路30をそれぞれ配置したが、これらの全体によって入出力信号間の位相シフト量が0°となればよいことから、これらの前後を入れ換えて前段に移相回路30を、後段に移相回路10をそれぞれ配置して同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0052】
(第2実施例)
上述した第1実施例の同調増幅器1は、構成が異なる2つの移相回路10および30を組み合わせて構成したが、同じ構成を有する2つの移相回路を組み合わせて同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0053】
図1に示す同調増幅器1に含まれる一方の移相回路10は図2に示した基本構成を有しており、移相回路10の入力と出力との間には(4)式で表される関係が成立する。以下では、図2に示す構成を有する移相回路10を(4)式中の分数の符号を用いて便宜上「−型の移相回路」と称して説明を行う。また、図1に示す同調増幅器1に含まれる他方の移相回路30は図5に示した基本構成を有しており、移相回路30の入力と出力との間には(10)式で表された関係が成立する。以下では、図5に示す構成を有する移相回路30を(10)式中の分数の符号を用いて便宜上「+型の移相回路」と称して説明を行う。
【0054】
このように各移相回路を便宜上2つのタイプに分類した場合には、第1実施例の同調増幅器1は、タイプが異なる2つの移相回路10および30を組み合わせることにより、全体としての位相シフト量が0°となる周波数において同調動作を行うようになっている。
【0055】
ところで、1つの−型の移相回路10に信号の位相を反転させる位相反転回路を接続した場合のその全体の入出力間の関係に着目すると、(4)式において分数の符号「−」を反転して「+」にすればよく、1つの−型の移相回路に位相反転回路を接続した構成が1つの+型の移相回路に等価であるといえる。同様に、1つの+型の移相回路30に信号の位相を反転させる位相反転回路を接続した場合のその全体の入出力間の関係に着目すると、(10)式において分数の符号「+」を反転して「−」にすればよく、1つの+型の移相回路に位相反転回路を接続した構成が1つの−型の移相回路に等価であるといえる。
【0056】
したがって、第1実施例においてタイプが異なる2つの移相回路10および30を組み合わせて同調増幅器を構成する代わりに、同タイプの2つの移相回路と位相反転回路を組み合わせて同調増幅器を構成することができる。
【0057】
図11は、第2実施例の同調増幅器の構成を示す図である。同図に示す同調増幅器1aは、入力信号の位相を反転する位相反転回路80と、図2に示す−型の2つの移相回路10と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路10から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0058】
このような構成を有する同調増幅器1aにおいて、ある周波数において2つの移相回路10によって位相が180°シフトされるとともに、位相反転回路80によって位相が反転されるため、全体として信号の位相シフト量が0°となる。例えば、2つの移相回路10内のLR回路の時定数が同じであると仮定し、その値をTとおくと、ω=1/Tの周波数では2つの移相回路10のそれぞれにおける位相シフト量が90°となる。したがって、位相反転回路80によって位相が反転されるとともに、2つの移相回路10の全体によって位相が180°シフトされ、全体として、位相が一巡して位相シフト量が0°となる信号が後段の移相回路10から出力される。
【0059】
また、後段の移相回路10の出力は、帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算され、この加算された信号が位相反転回路80に入力されている。
【0060】
このような帰還ループを形成することにより、位相反転回路80によって信号の位相が反転されるとともに、ある周波数において2つの移相回路10によって位相が180°シフトされ、全体として帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、位相反転回路80や2つの移相回路10の各増幅度を調整して、同調増幅器1a全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0061】
ところで、上述した位相反転回路80および2つの移相回路10を含む第2実施例の同調増幅器1aは、その全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えると、第1実施例の場合と同様に、図8に示すシステム図で表すことができる。したがって、ミラーの定理によって変換することにより図9に示すシステム図で表すことができ、変換後のシステム全体の伝達関数Aは(13)式で表すことができる。
【0062】
また、移相回路10の伝達関数K2は(14)式で表されるため、位相反転回路80と2段の移相回路10とを接続した場合の全体の伝達関数K1は、
【数18】
となる。この(18)式で求めた伝達関数K1は、(16)式で求めた第1実施例の同調増幅器1の2つの移相回路10、30の全体の伝達関数K1と同じであり、同調増幅器1aの全体の伝達関数は(17)式に示したAをそのまま適用することができる。
【0063】
したがって、第2実施例の同調増幅器1aは、第1実施例の同調増幅器1と同様の特性を有しており、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路10の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であって、図10に示すようにnの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0064】
このように、この実施例の同調増幅器1aによれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路10内の可変抵抗16の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0065】
また、第1実施例と同様に、インダクタ17は写真触刻法等によりスパイラル状の導体を形成することによって半導体基板上へ形成することが可能となるが、このようなインダクタ17を用いることにより、それ以外の構成部品(差動増幅器や抵抗等)とともに半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1aの全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。また、集積化した場合には容易に同調周波数を高周波化することができる。
【0066】
(第3実施例)
上述した第2実施例の同調増幅器1aでは−型の2つの移相回路10を接続した場合を説明したが、+型の移相回路30を2段接続することにより同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0067】
図12は、第3実施例の同調増幅器の構成を示す図である。同図に示す同調増幅器1bは、入力信号の位相を反転する位相反転回路80と、図5に示す+型の2つの移相回路30と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路30から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0068】
上述した第1実施例で説明したように、+型の2つの移相回路30のそれぞれは、入力信号の周波数ωが0から∞まで変化するにしたがって位相シフト量が0°から180°まで変化する。例えば、2つの移相回路30内のLR回路の時定数が同じであると仮定し、その値をTとおくと、ω=1/Tの周波数では2つの移相回路30のそれぞれにおける位相シフト量が90°となる。したがって、2つの移相回路30の全体によって位相が180°シフトされるとともに、前段に設けられた位相反転回路80によって位相が反転されるため、全体として、位相が一巡して位相シフト量が0°となる信号が後段の移相回路30から出力される。
【0069】
また、後段の移相回路30の出力は、帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算され、この加算された信号が位相反転回路80に入力されている。
【0070】
このような帰還ループを形成することにより、位相反転回路80によって信号の位相が反転されるとともに、ある周波数において2つの移相回路30によって位相が180°シフトされ、全体として帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、位相反転回路80や2つの移相回路30の各増幅度を調整して、同調増幅器1b全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0071】
ところで、上述した位相反転回路80および2つの移相回路30を含む第3実施例の同調増幅器1bは、その全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えると、第1実施例の場合と同様に、図8に示すシステム図で表すことができる。したがって、ミラーの定理によって変換することにより図9に示すシステム図で表すことができ、変換後のシステム全体の伝達関数Aは(13)式で表すことができる。
【0072】
また、(15)式から明らかなように、2つの移相回路30のそれぞれの伝達関数K3は、(14)式で表される移相回路10の伝達関数K2と符号のみ異なっていることから、位相反転回路80と2段の移相回路30とを接続した場合の全体の伝達関数K1は(18)式に示したものをそのまま適用することができる。このため、第2実施例の同調増幅器1aと同様に、同調増幅器1bの全体の伝達関数は(17)式に示したAをそのまま適用することができる。
【0073】
したがって、第3実施例の同調増幅器1bは、第1実施例の同調増幅器1等と同様の特性を有しており、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路30の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であって、図10に示すようにnの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0074】
このように、この実施例の同調増幅器1bによれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路30内の可変抵抗36の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0075】
また、第1実施例等と同様に、インダクタ37は写真触刻法等によりスパイラル状の導体を形成することによって半導体基板上へ形成することが可能となるが、このようなインダクタ37を用いることにより、それ以外の構成部品(差動増幅器や抵抗等)とともに半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1bの全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。また、集積化した場合には容易に同調周波数を高周波化することができる。
【0076】
(その他の実施例)
上述した各実施例の同調増幅器に含まれる非反転回路50あるいは位相反転回路80は、トランジスタやオペアンプや抵抗等を組み合わせて簡単に構成することができる。
【0077】
図13は、オペアンプを用いて構成した非反転回路と位相反転回路の具体例を示す図である。同図(A)に示す非反転回路50は、反転入力端子が抵抗54を介して接地されているとともにこの反転入力端子と出力端子との間に抵抗56が接続されたオペアンプ52を含んで構成されており、2つの抵抗54、56の抵抗比によって定まる所定の増幅度を有するバッファとして機能する。オペアンプ52の非反転入力端子に交流信号が入力されると、オペアンプ52の出力端子からは同相の信号が出力される。
【0078】
また、同図(B)に示す位相反転回路80は、入力信号が抵抗84を介して反転入力端子に入力されるとともに非反転入力端子が接地されたオペアンプ82と、このオペアンプ82の反転入力端子と出力端子との間に接続された抵抗86とを含んで構成されている。この位相反転回路80は、2つの抵抗84、86の抵抗比によって定まる所定の増幅度を有しており、抵抗84を介してオペアンプ82の反転入力端子に交流信号が入力されると、オペアンプ82の出力端子からは位相が反転した逆相の信号が出力される。
【0079】
ところで、上述した各実施例の同調増幅器は、2つの移相回路と非反転回路あるいは位相反転回路によって構成されており、接続された複数の回路の全体によって所定の周波数において合計の位相シフト量を0°にすることにより所定の同調動作を行うようになっている。したがって、位相シフト量だけに着目すると、移相回路と非反転回路あるいは位相反転回路とをどのような順番で接続するかはある程度の自由度があり、必要に応じて接続順番を決めることができる。
【0080】
図14は、タイプが異なる2つの移相回路と非反転回路とを組み合わせて同調増幅器を構成した場合において、2つの移相回路と非反転回路50の接続状態を示す図である。なお、これらの図において、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、各同調増幅器の出力信号と入力信号とを所定の割合で加算するためのものであり、最も一般的には図1等に示すように、帰還側インピーダンス素子70aとして帰還抵抗70を、入力側インピーダンス素子74aとして入力抵抗74を使用する。
【0081】
但し、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、それぞれの素子に入力された信号の位相関係を変えることなく加算できればよいことから、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aをともにキャパシタにより、あるいは帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aをともにインダクタにより形成するようにしてもよい。または、抵抗やキャパシタあるいはインダクタを組み合わせることにより、インピーダンスの実数分および虚数分の比を同時に調整しうるようにして各インピーダンス素子を形成してもよい。
【0082】
図14(A)には、タイプが異なる(一方が−型であって他方が+型である)2つの移相回路の後段に非反転回路50を配置した構成が示されている。このように、後段に非反転回路50を配置した場合には、この非反転回路50に出力バッファの機能を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこともできる。
【0083】
図14(B)には、タイプが異なる2つの移相回路の中間に非反転回路50を配置した構成が示されている。このように、中間に非反転回路50を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30と後段の移相回路30あるいは10の相互干渉を完全に防止することができる。
【0084】
図14(C)には、タイプが異なる2つの移相回路の前段に非反転回路50を配置した構成が示されており、図1に示した同調増幅器1に対応している。このように、前段に非反転回路50を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30に対する帰還側インピーダンス素子70aや入力側インピーダンス素子74aの影響を最小限に抑えることができる。
【0085】
同様に、図15は、同タイプの2つの移相回路と位相反転回路を組み合わせて同調増幅器を構成した場合において、2つの移相回路と位相反転回路80の接続状態を示す図である。なお、図14について説明したように、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、各同調増幅器の出力信号と入力信号とを所定の割合で加算するためのものであり、最も一般的には図1等に示すように、帰還側インピーダンス素子70aとして帰還抵抗70を、入力側インピーダンス素子74aとして入力抵抗74を使用する。但し、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、それぞれの素子に入力された信号の位相関係を変えることなく加算できればよいことから、キャパシタ等によって形成するようにしてもよい。
【0086】
図15(A)には、同タイプの2つの移相回路の後段に位相反転回路80を配置した構成が示されている。このように、後段に位相反転回路80を配置した場合には、この位相反転回路80に出力バッファの機能を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこともできる。
【0087】
図15(B)には、同タイプの2つの移相回路の間に位相反転回路80を配置した構成が示されている。このように、中間に位相反転回路80を配置した場合には、2つの移相回路間の相互干渉を完全に防止することができる。
【0088】
図15(C)には、2つの移相回路の前段に位相反転回路80を配置した構成が示されており、図11に示した同調増幅器1aや図12に示した同調増幅器1bに対応している。このように、前段に位相反転回路80を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30に対する帰還側インピーダンス素子70aや入力側インピーダンス素子74aの影響を最小限に抑えることができる。
【0089】
また、上述した各実施例において示した移相回路10、30には可変抵抗16あるいは36が含まれている。これらの可変抵抗16、36は、具体的には接合型あるいはMOS型のFETを用いて実現することができる。
【0090】
図16は、各実施例において示した2種類の移相回路内の可変抵抗16あるいは36をFETに置き換えた場合の移相回路の構成を示す図である。
【0091】
同図(A)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16をFETに置き換えた構成が示されている。同図(B)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36をFETに置き換えた構成が示されている。
【0092】
このように、FETのソース・ドレイン間に形成されるチャネルを抵抗体として利用して可変抵抗16あるいは36の代わりに使用すると、ゲート電圧を可変に制御してこのチャネル抵抗をある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができるため、同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0093】
なお、図16に示した各移相回路は、可変抵抗を1つのFET、すなわちpチャネルあるいはnチャネルのFETによって構成したが、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのゲートとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加するようにしてもよい。抵抗値を可変する場合にはこのゲート電圧の大きさを変えればよい。このように、2つのFETを組み合わせて可変抵抗を構成することにより、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0094】
また、上述した各実施例において示した移相回路10あるいは30は、インダクタ17、37と直列に接続された可変抵抗16あるいは36の抵抗値を変化させて位相シフト量を変化させることにより全体の同調周波数を変えるようにしたが、インダクタ17、37を可変インダクタによって形成し、そのインダクタンスを変化させることにより同調周波数を変えるようにしてもよい。
【0095】
図17は、各実施例において示した2種類の移相回路内のインダクタ17あるいは37を可変インダクタに置き換えた場合の移相回路の構成を示す図である。
【0096】
同図(A)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16を固定抵抗に置き換えるとともにインダクタ17を可変インダクタ17aに置き換えた構成が示されている。同図(B)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36を固定抵抗に置き換えるとともにインダクタ37を可変インダクタ37aに置き換えた構成が示されている。
【0097】
このように、インダクタ17あるいは37を可変インダクタ17aあるいは37aに置き換えて、それらが有するインダクタンスをある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、同調周波数を任意に変更することができる。
【0098】
ところで、上述した図17(A)、(B)では可変インダクタ17aあるいは37aのインダクタンスのみを可変したが、同時に可変抵抗16あるいは36の抵抗値を可変するようにしてもよい。図17(C)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16を用いるとともにインダクタ17を可変インダクタ17aに置き換えた構成が示されている。同図(D)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36を用いるとともにインダクタ37を可変インダクタ37aに置き換えた構成が示されている。
【0099】
また、図17(C)、(D)に示した可変抵抗を図16に示したようにFETのチャネル抵抗を利用して形成することができることはいうまでもない。特に、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのベースとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加した場合には、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0100】
このように、可変抵抗と可変インダクタを組み合わせて移相回路を構成した場合であっても、可変抵抗の抵抗値および可変インダクタのインダクタンスをある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、同調周波数を任意に変更することができる。
【0101】
また、上述したように可変抵抗や可変インダクタを用いる場合の他、素子定数が異なる複数の抵抗あるいはインダクタを用意しておいて、スイッチを切り換えることにより、これら複数の素子の中から1つあるいは複数を選ぶようにしてもよい。この場合にはスイッチ切り換えにより接続する素子の個数および接続方法(直列接続、並列接続あるいはこれらの組み合わせ)によって、素子定数を不連続に切り換えることができる。例えば、可変抵抗の代わりに抵抗値がR、2R、4R、…といった2のn乗の系列の複数の抵抗を用意しておいて、1つあるいは任意の複数を選択して直列接続することにより、等間隔の抵抗値の切り換えをより少ない素子で容易に実現することができる。このため、同調周波数が複数ある回路、例えばAMラジオに各実施例の同調増幅器を適用して、複数の放送局から1局を選局して受信するような用途に適している。
【0102】
図18は、上述した可変インダクタ17aの具体例を示す図であり、半導体基板上に形成された平面構造の概略が示されている。なお、同図に示す可変インダクタ17aの構造は、そのまま可変インダクタ37aにも適用することができる。
【0103】
同図に示す可変インダクタ17aは、半導体基板110上に形成された渦巻き形状のインダクタ導体112と、その外周を周回するように形成された制御用導体114と、これらインダクタ導体112および制御用導体114の両方を覆うように形成された絶縁性磁性体118とを含んで構成されている。
【0104】
上述した制御用導体114は、制御用導体114の両端に可変のバイアス電圧を印加するために可変電圧電源116が接続され、この可変電圧電源116によって印加する直流バイアス電圧を可変に制御することにより、制御用導体114に流れるバイアス電流を変化させることができる。
【0105】
また、半導体基板110は、例えばn型シリコン基板(n−Si基板)やその他の半導体材料(例えばゲルマニウムやアモルファスシリコン等の非晶質材料)が用いられる。また、インダクタ導体112は、アルミニウムや金等の金属薄膜あるいはポリシリコン等の半導体材料を渦巻き形状に形成されている。
【0106】
なお、図18に示した半導体基板110には、可変インダクタ17aの他に図1等に示した同調増幅器の他の構成部品が形成されている。
【0107】
図19は、図18に示した可変インダクタ17aのインダクタ導体112および制御用導体114の形状をさらに詳細に示す図である。
【0108】
同図に示すように、内周側に位置するインダクタ導体112は、所定ターン数(例えば約4ターン)の渦巻き形状に形成されており、その両端には2つの端子電極122、124が接続されている。同様に、外周側に位置する制御用導体114は、所定ターン数(例えば約2ターン)の渦巻き形状に形成されており、その両端には2つの制御電極126、128が接続されている。
【0109】
図20は、図19のA−A線拡大断面図であり、インダクタ導体112と制御用導体114を含む絶縁性磁性体118の横断面が示されている。
【0110】
同図に示すように、半導体基板110表面に絶縁性の磁性体膜118aを介してインダクタ導体112および制御用導体114が形成されており、さらにその表面に絶縁性の磁性体膜118bが被覆形成されている。これら2つの磁性体膜118a、118bによって図18に示した絶縁性磁性体118が形成されている。
【0111】
例えば、磁性体膜118a、118bとしては、ガンマ・フェライトやバリウム・フェライト等の各種磁性体膜を用いることができる。また、これらの磁性体膜の材質や形成方法については各種のものが考えられ、例えばFeO等を真空蒸着して磁性体膜を形成する方法や、その他分子線エピタキシー法(MBE法)、化学気相成長法(CVD法)、スパッタ法等を用いて磁性体膜を形成する方法等がある。
【0112】
なお、絶縁膜130は、非磁性体材料によって形成されており、インダクタ導体112および制御用導体114の各周回部分の間を覆っている。このようにして各周回部分間の磁性体膜118a、118bを排除することにより、各周回部分間に生じる漏れ磁束を最小限に抑えることができるため、インダクタ導体112が発生する磁束を有効に利用して大きなインダクタンスを有する可変インダクタ17aを実現することができる。
【0113】
このように、図18等に示した可変インダクタ17aは、インダクタ導体112と制御用導体114とを覆うように絶縁性磁性体118(磁性体膜118a、118b)が形成されており、制御用導体114に流す直流バイアス電流を可変に制御することにより、上述した絶縁性磁性体118を磁路とするインダクタ導体112の飽和磁化特性が変化し、インダクタ導体112が有するインダクタンスが変化する。
【0114】
したがって、インダクタ導体112のインダクタンスそのものを直接変化させることができ、しかも、半導体基板110上に薄膜形成技術や半導体製造技術を用いて形成することができるため製造が容易となる。さらに、半導体基板110上には同調増幅器1等の他の構成部品を形成することも可能であるため、各実施例の同調増幅器の全体を集積化によって一体形成する場合に適している。
【0115】
なお、図18等に示した可変インダクタ17aは、図21あるいは図22に示すように、インダクタ導体112と制御用導体114とを交互に周回させたり、インダクタ導体112と制御用導体114とを重ねて形成するようにしてもよい。いずれの場合であっても、制御用導体114に流す直流バイアス電流を変化させることにより絶縁性磁性体118の飽和磁化特性を変えることができ、インダクタ導体112が有するインダクタンスをある範囲で変化させることができる。
【0116】
また、図18等に示した可変インダクタ17aは、半導体基板110上にインダクタ導体112等を形成する場合を例にとり説明したが、セラミックス等の絶縁性あるいは導電性の各種基板上に形成するようにしてもよい。
【0117】
また、磁性体膜118a、118bとして絶縁性材料を用いたが、メタル粉(MP)のような導電性材料を用いるようにしてもよい。但し、このような導電性の磁性体膜を上述した絶縁性の磁性体膜118a等に置き換えて使用すると、インダクタ導体112等の各周回部分が短絡されてインダクタ導体として機能しなくなるため、各インダクタ導体と導電性の磁性体膜との間を電気的に絶縁する必要がある。この絶縁方法としては、インダクタ導体112等を酸化して絶縁酸化膜を形成する方法や、化学気相法等によりシリコン酸化膜あるいは窒化膜を形成する方法等がある。
【0118】
特に、メタル粉等の導電性材料は、ガンマ・フェライト等の絶縁性材料に比べると透磁率が大きいため、大きなインダクタンスを確保することができる利点がある。
【0119】
また、図18等に示した可変インダクタ17aは、インダクタ導体112と制御用導体114の両方の全体を絶縁性磁性体118で覆うようにしたが、一部のみを覆って磁路を形成するようにしてもよい。
【0120】
図23は、絶縁性磁性体118を部分的に形成した可変インダクタを示す図である。同図に示すように、絶縁性磁性体118がインダクタ導体112と制御用導体114の一部を覆うように形成されており、この部分的に形成された絶縁性磁性体118によって磁路が形成される。このように、磁路となる絶縁性磁性体(あるいは導電性磁性体でもよい)118を部分的に形成した場合には、磁路が狭まることによりインダクタ導体112および制御用導体114によって生じる磁束が飽和しやすくなる。したがって、制御用導体114に少ないバイアス電流を流した場合であっても磁束が飽和し、少ないバイアス電流を可変に制御することによりインダクタ導体112のインダクタンスを変えることができる。このため、制御系の構造を簡略化することができる。
【0121】
また、図18等に示した可変インダクタ17aは、インダクタ導体112と制御用導体114とを同心状に巻回して形成したが、これら各導体を半導体基板110表面の隣接した位置に形成してそれらの間を絶縁性あるいは導電性の磁性体によって形成した磁路によって磁気結合させてもよい。
【0122】
図24は、インダクタ導体と制御用導体とを隣接した位置に並べて形成した場合の可変インダクタ17bの概略を示す平面図である。
【0123】
同図に示す可変インダクタ17bは、半導体基板110上に形成された渦巻き形状のインダクタ導体112aと、このインダクタ導体112aと隣接した位置に形成された渦巻き形状の制御用導体114aと、インダクタ導体112aと制御用導体114aの各渦巻き中心を覆うように形成された絶縁性磁性体(あるいは導電性磁性体)119とを含んで構成されている。
【0124】
図18等に示した可変インダクタ17aと同様に、制御用導体114aにはその両端に可変のバイアス電圧を印加するために可変電圧電源116が接続されており、この可変電圧電源116によって印加するバイアス電圧を可変に制御することにより、制御用導体114aに流れる所定のバイアス電流を変化させることができる。
【0125】
図25は、図24に示した可変インダクタ17bのインダクタ導体112aおよび制御用導体114aの形状をさらに詳細に示した図である。
【0126】
同図に示すように、インダクタ導体112aは、所定ターン数(例えば約4ターン)の渦巻き形状に形成されており、その両端には2つの端子電極122、124が接続されている。同様に、インダクタ導体112aに隣接して配置された制御用導体114aは、所定ターン数(例えば約2ターン)の渦巻き形状に形成されており、その両端には2つの制御電極126、128が接続されている。
【0127】
図26は、図25のB−B線拡大断面図であり、インダクタ導体112aと制御用導体114aを含む絶縁性磁性体119の横断面が示されている。
【0128】
同図に示すように、半導体基板110表面に絶縁性の磁性体膜119aおよび絶縁性の非磁性体膜132が形成されており、その表面にインダクタ導体112aおよび制御用導体114aがそれぞれ形成されている。そして、これらインダクタ導体112aと制御用導体114aの各中心部を貫くようにさらに表面に絶縁性の磁性体膜119bが被覆形成されている。これら2つの磁性体膜119a、119bによってインダクタ導体112aと制御用導体114aの共通の磁路となる環状の磁性体119が形成されている。
【0129】
なお、図26に示した絶縁性の非磁性体膜132は、磁性体膜119aとほぼ同じ膜厚を有しており、さらにそれらの表面においてインダクタ導体112aと制御用導体114aのそれぞれをほぼ同じ高さに形成するためのものである。したがって、インダクタ導体112aおよび制御用導体114aに多少の段差が生じてもよい場合には、非磁性体膜132を形成せずに、半導体基板110上に直接インダクタ導体112aおよび制御用導体114aの一部を形成するようにしてもよい。
【0130】
また、磁性体膜119a表面のインダクタ導体112aおよび制御用導体114aの各周回部分の間には、図18等に示した可変インダクタ17aと同様に絶縁膜130が形成されている。このように部分的に絶縁膜130を充填して各周回部分間の磁性体膜119a、119bを排除することにより、各周回部分間に生じる漏れ磁束を最小限に抑えることができるため、インダクタ導体112aによって発生した磁束は、そのほとんどが磁性体膜119a、119bを通って制御用導体114aと交差するようになる。したがって、漏れ磁束を少なくすることにより、インダクタ導体112aが発生する磁束を有効に利用して大きなインダクタンスを得ることができる。
【0131】
このように、上述した可変インダクタ17bは、インダクタ導体112aと制御用導体114aの各渦巻き中心を通るように環状の絶縁性磁性体119(磁性体膜119a、119b)が形成されている。したがって、制御用導体114aに流す直流バイアス電流を可変に制御することにより、上述した磁性体119を磁路とするインダクタ導体112aの飽和磁化特性が変化し、インダクタ導体112aが有するインダクタンスも変化する。
【0132】
また、上述したように各実施例の同調増幅器1等を半導体基板上に形成した場合には、インダクタ17あるいは37としてあまり大きなインダクタンスを確保することができない。したがって、半導体基板上に実際に形成したインダクタ17等の小さなインダクタンスを、回路を工夫することにより見かけ上大きくすることができれば、時定数Tを大きな値に設定して同調周波数の低周波数化を図る際に都合がよい。
【0133】
図27は、図1等に示した移相回路10、30に用いたインダクタ17あるいは37を素子単体ではなく回路によって構成した変形例を示す図であり、実際に半導体基板上に形成されるインダクタ素子(インダクタ導体)のインダクタンスを見かけ上大きくみせるインダクタンス変換回路として機能する。なお、図27に示した回路全体が移相回路10、30に含まれるインダクタ17あるいは37に対応している。
【0134】
図27に示すインダクタンス変換回路17cは、所定のインダクタンスL0を有するインダクタ210と、2つのオペアンプ212、214と、2つの抵抗216、218とを含んで構成されている。
【0135】
1段目のオペアンプ212は、出力端子が反転入力端子に接続された利得1の非反転増幅器であって、主にインピーダンス変換を行うバッファとして機能する。同様に、2段目のオペアンプ214も出力端子が反転入力端子に接続されており、利得1の非反転増幅器として機能する。また、これら2つの非反転増幅器の間には抵抗216と218による分圧回路が挿入されている。
【0136】
このように、間に分圧回路を挿入することにより、2つの非反転増幅器を含む増幅器全体の利得を0から1の間で自由に設定することができる。
【0137】
図27に示したインダクタンス変換回路17cにおいて、インダクタ210を除く回路全体の伝達関数をK4とすると、インダクタンス変換回路17cは図28に示すシステム図で表すことができる。図29は、これをミラーの定理によって変換したシステム図である。
【0138】
図28に示したインピーダンスZ0を用いて図29に示したインピーダンスZ1を表すと、
【数19】
となる。ここで、図27に示したインダクタンス変換回路17cの場合には、インピーダンスZ0=jωL0であり、これを(19)式に代入して、
【数20】
【数21】
となる。この(21)式は、インダクタンス変換回路17cにおいてインダクタ210が有するインダクタンスL0が見掛け上は1/(1−K4)倍になったことを示している。
【0139】
したがって、利得K4が正であって0から1の間にある場合には、1/(1−K4)は常に1より大きくなるため、インダクタンスL0を大きいほうに変化させることができる。
【0140】
ところで、図27に示したインダクタンス変換回路17cにおける増幅器の利得、すなわちオペアンプ212と214の全体により構成される増幅器の利得K4は、抵抗216と218によって構成される分圧回路の分圧比によって決まり、それぞれの抵抗値をR16、R18とすると、
【数22】
となる。この利得K4を(21)式に代入して見かけ上のインダクタンスLを計算すると、
【数23】
となる。したがって、抵抗216と218の抵抗比R18/R16を大きくすることにより、2つの端子204、206間の見かけ上のインダクタンスLを大きくすることができる。例えば、R18=R16の場合には、(23)式からインダクタンスLをL0の2倍にすることができる。
【0141】
このように、上述したインダクタンス変換回路17cは、2つの非反転増幅器の間に挿入された分圧回路の分圧比を変えることにより、実際に接続されているインダクタ210のインダクタンスL0を見かけ上大きくすることができる。そのため、半導体基板上に図1等に示した同調増幅器1等の全体を形成するような場合には、半導体基板上に小さなインダクタンスL0を有するインダクタ210をスパイラル状の導体等によって形成しておいて、図27に示したインダクタンス変換回路によって大きなインダクタンスLに変換することができ、集積化に際して好都合となる。特に、このようにして大きなインダクタンスを確保することができれば、図1に示した同調増幅器1等の同調周波数を比較的低い周波数領域まで下げることが容易となる。また、集積化を行うことにより、同調増幅器全体の実装面積を小型化して、材料コスト等の低減も可能となる。
【0142】
なお、抵抗216、218による分圧回路の分圧比を固定した場合の他、これら2つの抵抗216、218の少なくとも一方を可変抵抗により形成することにより、具体的には接合型やMOS型のFETあるいはpチャネルFETとnチャネルFETとを並列に接続して可変抵抗を形成することにより、この分圧比を連続的に変化させてもよい。この場合には、図27に示したオペアンプ212、214を含んで構成される増幅器全体の利得が変わり、端子204、206間のインダクタンスLも連続的に変化する。したがって、このインダクタンス変換回路17cを図17に示した可変インダクタ17aの代わりに使用することにより、各移相回路における位相シフト量をある範囲で任意に変化させることができる。このため、同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、上述した同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0143】
また、図27に示したインダクタンス変換回路17cは、2つのオペアンプ212、214を含む増幅器全体の利得が1以下に設定されているため、全体をエミッタホロワ回路あるいはソースホロワ回路に置き換えるようにしてもよい。
【0144】
図30は、オペアンプ212、214を含む増幅器全体をエミッタホロワ回路に置き換えたインダクタンス変換回路の構成を示す図である。同図(A)に示すインダクタンス変換回路17dは、エミッタに2つの抵抗224、226が接続されたバイポーラトランジスタ228と、この2つの抵抗224、226による分圧点とトランジスタ228のベースとの間に接続されたインダクタ210と、直流電流阻止用のキャパシタ230とを含んで構成されている。インダクタ210の一方端側に挿入されたキャパシタ230は、周波数特性に影響を与えないようにそのインピーダンスは動作周波数において極めて小さく、すなわち大きな静電容量に設定されている。
【0145】
上述したエミッタホロワ回路の利得は、主に2つの抵抗224、226の抵抗比に応じて決まり、しかもその利得は常に1未満であるため、(21)式からわかるように、実際にインダクタ210が有するインダクタンスL0を見掛け上大きくすることができる。しかも、1つのエミッタホロワ回路を用いているだけであり、回路構成が簡略化でき、最高動作周波数も高く設定することができる。
【0146】
図30(B)はその変形例を示す図であり、同図(A)の2つの抵抗224、226を可変抵抗232に置き換えた点が異なっている。このように可変抵抗232を用いることにより、利得を任意にしかも連続的に変化させることができるため、見掛け上のインダクタンスLも任意にしかも連続的に変化させることができ、このインダクタンス変換回路17eを図17に示した可変インダクタ17aの代わりに使用することにより、各移相回路における位相シフト量をある範囲で任意に変化させることができる。このため、同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、上述した同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0147】
なお、図30(B)に示したインダクタンス変換回路17eは、同図(A)の2つの抵抗224、226を1つの可変抵抗232に置き換えているが、これら2つの抵抗224、226の少なくとも一方を可変抵抗によって構成するようにしてもよい。
【0148】
図31は、図30(A)および(B)に示したインダクタンス変換回路17d、17eのそれぞれをソースホロワ回路によって実現したものであり、バイポーラトランジスタ228をFET234に置き換えたものである。図31(A)が図30(A)に、図31(B)が図30(B)にそれぞれ対応している。
【0149】
図32は、図27に示したインダクタンス変換回路17cの変形例を示す図である。図32に示すインダクタンス変換回路17fは、npn型のバイポーラトランジスタ236およびそのエミッタに接続された抵抗240と、pnp型のバイポーラトランジスタ238とそのエミッタに接続された抵抗242と、インダクタンスL0を有するインダクタ210とを含んで構成されている。
【0150】
上述した一方のトランジスタ236と抵抗240により第1のエミッタホロワ回路が、他方のトランジスタ238と抵抗242により第2のエミッタホロワ回路がそれぞれ形成され、それらが縦続接続されている。しかも、npn型のトランジスタ236とpnp型のトランジスタ238を用いているため、インダクタ210の一方端であるトランジスタ236のベース電位とトランジスタ238のエミッタ電位とをほぼ同じに設定することができ、直流電流阻止用のキャパシタが不要となる。
【0151】
なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0152】
例えば、上述した各実施例の同調増幅器においては、移相回路10、30内の差動増幅器12、32によって2入力の差分を2倍に増幅して各移相回路の出力とすることにより、同調増幅器のループゲインをほぼ1に設定するようにしたが、差動増幅器12、32の増幅度をこれ以外の値に設定してもよい。例えば、各差動増幅器12、32において2入力の差分を増幅せずに、あるいは2倍以外の増幅度で増幅して出力するとともに、非反転回路50あるいは位相反転回路80の増幅度を調整して同調増幅器のループゲインをほぼ1に設定するようにしてもよい。
【0153】
また、図1等に示した各同調増幅器においては、帰還側インピーダンス素子として抵抗値が固定の帰還抵抗70を用い、入力側インピーダンス素子として抵抗値が固定の入力抵抗74を用いるようにしたが、少なくとも一方の抵抗を可変抵抗により構成して最大減衰量を任意に変更可能に形成してもよい。この場合に、可変抵抗を図16に示したようにFETのチャネル抵抗を利用して形成することができることはいうまでもない。特に、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのベースとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加した場合には、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0154】
同様に、帰還側インピーダンス素子および入力側インピーダンス素子をキャパシタとした場合には少なくとも一方を可変容量ダイオードやゲート容量可変のFETにより構成して最大減衰量を任意に変更可能に形成してもよい。
【0155】
また、上述した実施例の同調増幅器1等には2つの移相回路が含まれているが、同調周波数を可変する場合には、両方の移相回路に含まれるLR回路を構成する抵抗とインダクタの少なくとも一方の素子定数を変える場合の他、一方の移相回路に含まれるLR回路を構成する抵抗とインダクタの少なくとも一方の素子定数を変える場合が考えられる。また、全ての抵抗やインダクタの各素子定数を固定して、同調周波数が固定の同調増幅器を構成することもできる。
【0156】
【発明の効果】
以上の各実施例に基づく説明から明らかなように、同調周波数が高い場合にはこの発明の同調増幅器を構成する各素子は集積回路の製法によって形成することが可能であるから、同調増幅器を半導体ウエハ上に集積回路として小型に形成でき、大量生産によって安価に作ることができる。また、各移相回路内のインダクタをインダクタンス変換回路を用いて大きいほうに変換することができ、同調周波数を低周波化することもできる。
【0157】
特に、各移相回路におけるLR回路の可変抵抗としてFETのソース・ドレイン間のチャネルを使用し、このFETのゲートに印加する制御電圧を変化させてチャネルの抵抗を変化させるように構成すると、制御電圧を印加する配線のインダクタンスや静電容量の影響を回避することができ、ほぼ設計どおりの理想的な特性を備えた同調増幅器を得ることができる。
【0158】
また、この発明の同調増幅器は、最大減衰量が入力側インピーダンス素子と帰還側インピーダンス素子の抵抗比によって決まるとともに、同調周波数が各移相回路におけるLR回路の時定数によって決まるため、最大減衰量や同調周波数および同調周波数における利得を互いに干渉しあうことなく設定することができる。
【0159】
また、従来のLC共振を利用した同調増幅器においては、同調周波数ωが1/√LCであるから、同調周波数を調整するために静電容量CまたはインダクタンスLを変化させると、同調周波数はその変化量の平方根に比例して変化するが、この発明の同調増幅器では同調周波数ωが例えばR/Lであって、同調周波数は抵抗値Rに比例して変化させることができるので、同調周波数の大幅な変更および調整が可能となる。また、インダクタンスLは小さくすることが容易であるため、同調周波数の高周波化を図ることが容易であり、高い同調周波数を有する同調増幅器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を適用した第1実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図2】図1に示した前段の移相回路の構成を抜き出して示した図、
【図3】前段の移相回路の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図、
【図4】図2に示した移相回路を等価的に表した図、
【図5】図1に示した後段の移相回路の構成を抜き出して示した図、
【図6】後段の移相回路の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図、
【図7】図5に示した移相回路を等価的に表した図、
【図8】2つの移相回路および非反転回路の全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えたシステム図、
【図9】図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図、
【図10】この実施例の同調増幅器の同調特性を示す図、
【図11】第2実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図12】第3実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図13】非反転回路および位相反転回路の具体例を示す図、
【図14】移相回路と非反転回路との接続形態を示す図、
【図15】移相回路と位相反転回路との接続形態を示す図、
【図16】移相回路の可変抵抗をFETに置き換えた移相回路の構成を示す図、
【図17】移相回路のインダクタを可変インダクタに置き換えた移相回路の構成を示す図、
【図18】可変インダクタの一例を示す図、
【図19】図18に示した可変インダクタのインダクタ導体および制御用導体の形状をさらに詳細に示す図、
【図20】図19のA−A線拡大断面図、
【図21】図18に示した可変インダクタの変形例を示す図、
【図22】図18に示した可変インダクタの変形例を示す図、
【図23】図18に示した可変インダクタの変形例を示す図、
【図24】可変インダクタの他の例を示す図、
【図25】図24に示した可変インダクタのインダクタ導体および制御用導体の形状をさらに詳細に示す図、
【図26】図25のB−B線拡大断面図、
【図27】インダクタが実際に有するインダクタンスを見かけ上大きくするインダクタンス変換回路の構成を示す図、
【図28】図27に示した回路を伝達関数を用いて表した図、
【図29】図28に示す構成をミラーの定理によって変換した図、
【図30】図27に含まれる2つのオペアンプを含む増幅器全体をエミッタホロワ回路に置き換えたインダクタンス変換回路の構成を示す図、
【図31】図30の回路をソースホロワ回路によって実現した構成を示す図、
【図32】インダクタンス変換回路の変形例を示す図、
【図33】従来の同調増幅器における同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量の関係の一例を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
1 同調増幅器
10、30 移相回路
12、32 差動増幅器
16、36 可変抵抗
17、37 インダクタ
18、20、38、40 抵抗
19、39 キャパシタ
50 非反転回路
70 帰還抵抗
74 入力抵抗
90 入力端子
92 出力端子
【産業上の利用分野】
この発明は、同調周波数と最大減衰量とを互いに干渉することなく、任意に調整し得る同調増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】
同調増幅器として従来より能動素子およびリアクタンス素子を使用した各種の増幅回路が提案され実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の同調増幅器においては、同調周波数を調整すると、LC回路に依存するQと利得が変化し、最大減衰量を調整すると同調周波数が変化したり、また、図33の特性曲線AおよびBに示すように、最大減衰量を調整すると同調周波数における利得が変化するので、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量C1、C2を互いに干渉しあうことなく調整することは極めて困難であった。
【0004】
さらに、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器を集積回路によって形成することも困難であった。
【0005】
そこで、この発明は、このような課題を解決するために考えられたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、この発明の同調増幅器は、
入力信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とインダクタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記インダクタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
を備え、前記2つの移相回路を縦続接続し、これら縦続接続された2つの移相回路の中の前段の移相回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、後段の移相回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら2つの移相回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0007】
また、この発明の同調増幅器は、
入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とインダクタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記インダクタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を変えずに出力する非反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記非反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0008】
また、この発明の同調増幅器は、
入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とインダクタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記インダクタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を反転して出力する位相反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記位相反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0009】
また、この発明の同調増幅器は、
入力側インピーダンス素子を介して入力された交流信号を同相で出力する非反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびインダクタと抵抗との直列接続よりなり、前記非反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続および抵抗とインダクタとの直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路とは反対方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還側インピーダンス素子を介して前記非反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、この発明の同調増幅器は、
入力抵抗を介して入力された交流信号を反転して出力する位相反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびインダクタと抵抗との直列接続よりなり、前記位相反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続およびインダクタと抵抗との直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路と同じ方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還抵抗を介して前記位相反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
【実施例】
以下、この発明を適用した一実施例の同調増幅器について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
(第1実施例)
図1は、この発明を適用した第1実施例の同調増幅器の構成を示す回路図である。同図に示す同調増幅器1は、入力信号の位相を変えずに出力する非反転回路50と、それぞれが入力信号の位相を所定量シフトさせることにより所定の周波数において合計で0°の位相シフトを行う2つの移相回路10、30と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路30から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。なお、非反転回路50はバッファ回路として機能するものであるが、同調増幅器の基本動作のみに着目した場合には省略してもよい。
【0013】
図2は、図1に示した前段の移相回路10の構成を抜き出して示したものである。同図に示す前段の移相回路10は、2入力の差分電圧を所定の増幅度(例えば約2倍)で増幅して出力する差動増幅器12と、入力端22に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器12の非反転入力端子に入力する可変抵抗16およびインダクタ17と、入力端22に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器12の反転入力端子に入力する抵抗18および20とを含んで構成されている。
【0014】
なお、インダクタ17と可変抵抗16との間に挿入されているキャパシタ19は直流電流阻止用であり、そのインピーダンスは動作周波数において極めて小さく、すなわち大きな静電容量を有している。また、インダクタ17と抵抗20の接続点が接地されている場合を考えて以下の説明を行うものとする。
【0015】
このような構成を有する移相回路10において、所定の交流信号が入力端22に入力されると、差動増幅器12の反転入力端子には、入力端22に印加される電圧(入力電圧Ei)を抵抗18と抵抗20とによって分圧した電圧が印加される。抵抗18および20の各抵抗値はほぼ等しく設定されており、これら2つの抵抗18、20の直列回路により構成される分圧回路によって約1/2に分圧された電圧Ei/2が差動増幅器12の反転入力端子に印加される。
【0016】
一方、入力信号が入力端22に入力されると、差動増幅器12の非反転入力端子には、インダクタ17と可変抵抗16の接続点(正確にはインダクタ17に直列に接続されたキャパシタ19と可変抵抗16の接続点であるが、上述したようにこのキャパシタ19は直流電流阻止用であって動作に影響を与えないため基本動作の説明を行う場合には省略することができる)に現れる信号が入力される。可変抵抗16とインダクタ17により構成されるLR回路(直列回路)の一方端には入力信号が入力されているため、入力信号の位相をこのLR回路によって所定量シフトした信号の電圧が差動増幅器12の非反転入力端子には印加される。
【0017】
差動増幅器12は、このようにして2つの入力端子に印加される電圧の差分を所定の増幅度、例えば約2倍に増幅した信号を出力する。
【0018】
図3は、移相回路10の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0019】
同図に示すように、インダクタ17の両端に現れる電圧VL1と可変抵抗16の両端に現れる電圧VR1は、互いに位相が90°ずれており、これらをベクトル的に合成(加算)したものが入力電圧Eiとなる。したがって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図3に示す半円の円周に沿ってインダクタ17の両端電圧VL1と可変抵抗16の両端電圧VR1とが変化する。
【0020】
また、差動増幅器12の非反転入力端子に印加される電圧(インダクタ17の両端電圧VL1)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗20の両端電圧Ei/2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo′となる。この差分電圧Eo′は、図3に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VL1と電圧VR1とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei/2に等しくなる。実際には、差動増幅器12はこの差分電圧Eo′を2倍に増幅しており、出力電圧Eo=Eo′×2=Eiとなる。したがって、この実施例の移相回路10において、入力信号の振幅と出力信号の振幅とは等しく、入出力信号間で信号の減衰が生じないことがわかる。
【0021】
また、図3から明らかなように、電圧VL1と電圧VR1とは円周上で直角に交わるため、入力電圧Eiと電圧VL1との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って90°から0°まで変化する。そして、移相回路10全体の位相シフト量φ1はその2倍であり、周波数に応じて180°から0°まで変化する。
【0022】
次に、上述した入出力電圧間の関係を定量的に検証する。
【0023】
図4は、前段の移相回路10を等価的に表した図であり、差動増幅器12の入力側に設けられた2つの直列回路に対応する構成が示されている。
【0024】
抵抗18および20により構成される直列回路の両端には入力電圧Eiが印加されるため、抵抗18、20のそれぞれは電圧Ei/2を発生する2つの電圧源27、28に置き換えて考えることができる。このとき、図4に示す等価回路の閉ループに流れる電流Iは、インダクタ17のインダクタンスをL、可変抵抗16の抵抗値をRとすると、
【数1】
となる。ここで、図4に示す2点間の電位差(差分)Eo′を求めると、
【数2】
となる。上述した(2)式に(1)式を代入して計算すると、
【数3】
となる。また、この実施例の移相回路10の出力電圧Eoは、上述した差分Eo′を2倍したものであるから、
【数4】
となる。ここで、可変抵抗16とインダクタ17からなるLR回路の時定数をT(=L/R)とした。
【0025】
この(4)式においてs=jωを代入して変形すると、
【数5】
となる。(5)式から出力電圧Eoの絶対値を求めると、
【数6】
となる。すなわち、(6)式は、この実施例の移相回路10は入出力間の位相がどのように回転しても、その出力信号の振幅は入力信号の振幅に等しく一定であることを表している。
【0026】
また、(5)式から出力電圧Eoの入力電圧Eiに対する位相シフト量φ1を求めると、
【数7】
となる。この(7)式から、例えばωがほぼ1/T(=R/L)となるような周波数における位相シフト量φ1はほぼ90°となり、入力信号の振幅を減衰させることなく位相のみをほぼ90°シフトさせることができる。しかも、可変抵抗16の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量φ1がほぼ90°となる周波数ωを変化させることができる。
【0027】
図5は、図1に示した後段の移相回路30の構成を抜き出して示したものである。同図に示す後段の移相回路30は、2入力の差分電圧を所定の増幅度(例えば約2倍)で増幅して出力する差動増幅器32と、入力端42に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器32の非反転入力端子に入力するインダクタ37および可変抵抗36と、入力端42に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器32の反転入力端子に入力する抵抗38および40とを含んで構成されている。
【0028】
なお、インダクタ37に直列に挿入されているキャパシタ39は直流電流阻止用であり、そのインピーダンスは動作周波数において極めて小さく、すなわち大きな静電容量を有している。
【0029】
このような構成を有する移相回路30において、所定の交流信号が入力端42に入力されると、差動増幅器32の反転入力端子には、入力端42に印加される電圧(入力電圧Ei)を抵抗38と抵抗40とによって分圧した電圧が印加される。抵抗38および40の各抵抗値はほぼ等しく設定されており、これら2つの抵抗38、40の直列回路により構成される分圧回路によって約1/2に分圧された電圧Ei/2が差動増幅器32の反転入力端子に印加される。
【0030】
一方、入力信号が入力端42に入力されると、差動増幅器32の非反転入力端子には、インダクタ37と可変抵抗36の接続点に現れる信号が入力される。インダクタ37と可変抵抗36により構成されるLR回路(直列回路)の一方端には入力信号が入力されているため、入力信号の位相をこのLR回路によって所定量シフトした信号の電圧が差動増幅器32の非反転入力端子には印加される。
【0031】
差動増幅器32は、このようにして2つの入力端子に印加される電圧の差分を所定の増幅度、例えば約2倍に増幅した信号を出力する。
【0032】
図6は、移相回路30の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0033】
同図に示すように、可変抵抗36の両端に現れる電圧VR2とインダクタ37の両端に現れる電圧VL2は、互いに位相が90°ずれており、これらをベクトル的に合成(加算)したものが入力電圧Eiとなる。したがって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図6に示す半円の円周に沿って可変抵抗36の両端電圧VR2とインダクタ37の両端電圧VL2とが変化する。
【0034】
また、差動増幅器32の非反転入力端子に印加される電圧(可変抵抗36の両端電圧VR2)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗40の両端電圧Ei/2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo′となる。この差分電圧Eo′は、図6に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VR2と電圧VL2とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei/2に等しくなる。実際には、差動増幅器32はこの差分電圧Eo′を2倍に増幅しており、出力電圧Eo=Eo′×2=Eiとなる。したがって、この実施例の移相回路30において、入力信号の振幅と出力信号の振幅とは等しく、入出力信号間で信号の減衰が生じないことがわかる。
【0035】
また、図6から明らかなように、電圧VR2と電圧VL2とは円周上で直角に交わるため、入力電圧Eiと電圧VR2との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って0°から90°まで変化する。そして、移相回路30全体の位相シフト量φ2はその2倍であり、周波数に応じて0°から180°まで変化する。
【0036】
次に、上述した入出力電圧間の関係を定量的に検証する。
【0037】
図7は、後段の移相回路30を等価的に表した図であり、差動増幅器32の入力側に設けられた2つの直列回路に対応する構成が示されている。
【0038】
抵抗38および40により構成される直列回路の両端には入力電圧Eiが印加されるため、前段の移相回路10の場合と同様に、抵抗38、40のそれぞれは電圧Ei/2を発生する2つの電圧源27、28に置き換えて考えることができる。このとき、図7に示す等価回路の閉ループに流れる電流Iは、可変抵抗36の抵抗値をR、インダクタ37のインダクタンスをLとすると、上述した(1)式で表すことができる。
【0039】
ここで、図7に示す2点間の電位差(差分)Eo′を求めると、
【数8】
となる。上述した(8)式に(1)式を代入して計算すると、
【数9】
となる。また、この実施例の移相回路30の出力電圧Eoは、上述した差分Eo′を2倍したものであるから、
【数10】
となる。ここで、移相回路10と同様に、インダクタ37と可変抵抗36からなるLR回路の時定数をT(=L/R)とした。
【0040】
(10)式においてs=jωを代入して変形すると、
【数11】
となる。
【0041】
上述した(10)式および(11)式は、前段の移相回路10について示した(4)式および(5)式と符号のみ異なっている。したがって、出力電圧Eoの絶対値は(6)式をそのまま適用することができ、後段の移相回路30は入出力間の位相がどのように回転しても、その出力信号の振幅は入力信号の振幅に等しく一定であることがわかる。
【0042】
また、(11)式から出力電圧Eoの入力電圧Eiに対する位相シフト量φ2を求めると、
【数12】
となる。この(12)式から、例えばωがほぼ1/T(=R/L)となるような周波数における位相シフト量φ2はほぼ90°となり、入力信号の振幅を減衰させることなく位相のみをほぼ90°シフトさせることができる。しかも、可変抵抗36の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量φ2がほぼ90°となる周波数ωを変化させることができる。
【0043】
このようにして、2つの移相回路10、30のそれぞれにおいて位相が所定量シフトされる。しかも、図3および図6に示すように、各移相回路10、30における入出力電圧の相対的な位相関係は反対方向であって、所定の周波数において2つの移相回路10、30の全体により位相シフト量が0°となる信号が出力される。
【0044】
また、後段の移相回路30の出力は、帰還抵抗70を介して移相回路10の前段に設けられた非反転回路50の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算される。この加算された信号は、バッファ回路として機能する非反転回路50を介して移相回路10の入力端(図2に示した入力端22)に入力される。
【0045】
このような帰還ループを形成することにより、ある周波数において帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、非反転回路50や2つの移相回路10、30の各増幅度を調整して、同調増幅器1全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0046】
図8は、上述した構成を有する2つの移相回路10、30および非反転回路50の全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えたシステム図であり、伝達関数K1を有する回路と並列に抵抗R0を有する帰還抵抗70が、直列に帰還抵抗70のn倍の抵抗値(nR0)を有する入力抵抗74が接続されている。図9は、図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図であり、変換後のシステム全体の伝達関数Aは、
【数13】
で表すことができる。
【0047】
ところで、(4)式から明らかなように、前段の移相回路10の伝達関数K2は、
【数14】
であり、(10)式から明らかなように、後段の移相回路30の伝達関数K3は、
【数15】
である。したがって、移相回路10、30を2段縦続接続した場合の全体の伝達関数K1は、
【数16】
となる。この(16)式を上述した(13)式に代入すると、
【数17】
となる。
【0048】
この(17)式によれば、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路10、30の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であることがわかる。換言すれば、図10に示すように、nの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0049】
このように、この実施例の同調増幅器1によれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路10、30内の可変抵抗16あるいは36の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0050】
また、この実施例の同調増幅器1において、インダクタ17および37は、写真触刻法等によりスパイラル状の導体を形成することによって半導体基板上へ形成することが可能となるが、このようなインダクタ17および37を用いることにより、それ以外の構成部品(差動増幅器や抵抗等)とともに半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1の全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。但し、この場合にはインダクタ17および37が有するインダクタンスは極めて小さくなるため、同調周波数が高くなる。別の見方をすれば、同調増幅器1の同調周波数はR/Lに比例し、この中のインダクタンスLは集積化等により小さくすることが容易であるため、同調周波数の高周波化に適している。
【0051】
なお、上述した第1実施例の同調増幅器1では、前段に移相回路10を、後段に移相回路30をそれぞれ配置したが、これらの全体によって入出力信号間の位相シフト量が0°となればよいことから、これらの前後を入れ換えて前段に移相回路30を、後段に移相回路10をそれぞれ配置して同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0052】
(第2実施例)
上述した第1実施例の同調増幅器1は、構成が異なる2つの移相回路10および30を組み合わせて構成したが、同じ構成を有する2つの移相回路を組み合わせて同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0053】
図1に示す同調増幅器1に含まれる一方の移相回路10は図2に示した基本構成を有しており、移相回路10の入力と出力との間には(4)式で表される関係が成立する。以下では、図2に示す構成を有する移相回路10を(4)式中の分数の符号を用いて便宜上「−型の移相回路」と称して説明を行う。また、図1に示す同調増幅器1に含まれる他方の移相回路30は図5に示した基本構成を有しており、移相回路30の入力と出力との間には(10)式で表された関係が成立する。以下では、図5に示す構成を有する移相回路30を(10)式中の分数の符号を用いて便宜上「+型の移相回路」と称して説明を行う。
【0054】
このように各移相回路を便宜上2つのタイプに分類した場合には、第1実施例の同調増幅器1は、タイプが異なる2つの移相回路10および30を組み合わせることにより、全体としての位相シフト量が0°となる周波数において同調動作を行うようになっている。
【0055】
ところで、1つの−型の移相回路10に信号の位相を反転させる位相反転回路を接続した場合のその全体の入出力間の関係に着目すると、(4)式において分数の符号「−」を反転して「+」にすればよく、1つの−型の移相回路に位相反転回路を接続した構成が1つの+型の移相回路に等価であるといえる。同様に、1つの+型の移相回路30に信号の位相を反転させる位相反転回路を接続した場合のその全体の入出力間の関係に着目すると、(10)式において分数の符号「+」を反転して「−」にすればよく、1つの+型の移相回路に位相反転回路を接続した構成が1つの−型の移相回路に等価であるといえる。
【0056】
したがって、第1実施例においてタイプが異なる2つの移相回路10および30を組み合わせて同調増幅器を構成する代わりに、同タイプの2つの移相回路と位相反転回路を組み合わせて同調増幅器を構成することができる。
【0057】
図11は、第2実施例の同調増幅器の構成を示す図である。同図に示す同調増幅器1aは、入力信号の位相を反転する位相反転回路80と、図2に示す−型の2つの移相回路10と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路10から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0058】
このような構成を有する同調増幅器1aにおいて、ある周波数において2つの移相回路10によって位相が180°シフトされるとともに、位相反転回路80によって位相が反転されるため、全体として信号の位相シフト量が0°となる。例えば、2つの移相回路10内のLR回路の時定数が同じであると仮定し、その値をTとおくと、ω=1/Tの周波数では2つの移相回路10のそれぞれにおける位相シフト量が90°となる。したがって、位相反転回路80によって位相が反転されるとともに、2つの移相回路10の全体によって位相が180°シフトされ、全体として、位相が一巡して位相シフト量が0°となる信号が後段の移相回路10から出力される。
【0059】
また、後段の移相回路10の出力は、帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算され、この加算された信号が位相反転回路80に入力されている。
【0060】
このような帰還ループを形成することにより、位相反転回路80によって信号の位相が反転されるとともに、ある周波数において2つの移相回路10によって位相が180°シフトされ、全体として帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、位相反転回路80や2つの移相回路10の各増幅度を調整して、同調増幅器1a全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0061】
ところで、上述した位相反転回路80および2つの移相回路10を含む第2実施例の同調増幅器1aは、その全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えると、第1実施例の場合と同様に、図8に示すシステム図で表すことができる。したがって、ミラーの定理によって変換することにより図9に示すシステム図で表すことができ、変換後のシステム全体の伝達関数Aは(13)式で表すことができる。
【0062】
また、移相回路10の伝達関数K2は(14)式で表されるため、位相反転回路80と2段の移相回路10とを接続した場合の全体の伝達関数K1は、
【数18】
となる。この(18)式で求めた伝達関数K1は、(16)式で求めた第1実施例の同調増幅器1の2つの移相回路10、30の全体の伝達関数K1と同じであり、同調増幅器1aの全体の伝達関数は(17)式に示したAをそのまま適用することができる。
【0063】
したがって、第2実施例の同調増幅器1aは、第1実施例の同調増幅器1と同様の特性を有しており、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路10の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であって、図10に示すようにnの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0064】
このように、この実施例の同調増幅器1aによれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路10内の可変抵抗16の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0065】
また、第1実施例と同様に、インダクタ17は写真触刻法等によりスパイラル状の導体を形成することによって半導体基板上へ形成することが可能となるが、このようなインダクタ17を用いることにより、それ以外の構成部品(差動増幅器や抵抗等)とともに半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1aの全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。また、集積化した場合には容易に同調周波数を高周波化することができる。
【0066】
(第3実施例)
上述した第2実施例の同調増幅器1aでは−型の2つの移相回路10を接続した場合を説明したが、+型の移相回路30を2段接続することにより同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0067】
図12は、第3実施例の同調増幅器の構成を示す図である。同図に示す同調増幅器1bは、入力信号の位相を反転する位相反転回路80と、図5に示す+型の2つの移相回路30と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路30から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0068】
上述した第1実施例で説明したように、+型の2つの移相回路30のそれぞれは、入力信号の周波数ωが0から∞まで変化するにしたがって位相シフト量が0°から180°まで変化する。例えば、2つの移相回路30内のLR回路の時定数が同じであると仮定し、その値をTとおくと、ω=1/Tの周波数では2つの移相回路30のそれぞれにおける位相シフト量が90°となる。したがって、2つの移相回路30の全体によって位相が180°シフトされるとともに、前段に設けられた位相反転回路80によって位相が反転されるため、全体として、位相が一巡して位相シフト量が0°となる信号が後段の移相回路30から出力される。
【0069】
また、後段の移相回路30の出力は、帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算され、この加算された信号が位相反転回路80に入力されている。
【0070】
このような帰還ループを形成することにより、位相反転回路80によって信号の位相が反転されるとともに、ある周波数において2つの移相回路30によって位相が180°シフトされ、全体として帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、位相反転回路80や2つの移相回路30の各増幅度を調整して、同調増幅器1b全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0071】
ところで、上述した位相反転回路80および2つの移相回路30を含む第3実施例の同調増幅器1bは、その全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えると、第1実施例の場合と同様に、図8に示すシステム図で表すことができる。したがって、ミラーの定理によって変換することにより図9に示すシステム図で表すことができ、変換後のシステム全体の伝達関数Aは(13)式で表すことができる。
【0072】
また、(15)式から明らかなように、2つの移相回路30のそれぞれの伝達関数K3は、(14)式で表される移相回路10の伝達関数K2と符号のみ異なっていることから、位相反転回路80と2段の移相回路30とを接続した場合の全体の伝達関数K1は(18)式に示したものをそのまま適用することができる。このため、第2実施例の同調増幅器1aと同様に、同調増幅器1bの全体の伝達関数は(17)式に示したAをそのまま適用することができる。
【0073】
したがって、第3実施例の同調増幅器1bは、第1実施例の同調増幅器1等と同様の特性を有しており、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路30の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であって、図10に示すようにnの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0074】
このように、この実施例の同調増幅器1bによれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路30内の可変抵抗36の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0075】
また、第1実施例等と同様に、インダクタ37は写真触刻法等によりスパイラル状の導体を形成することによって半導体基板上へ形成することが可能となるが、このようなインダクタ37を用いることにより、それ以外の構成部品(差動増幅器や抵抗等)とともに半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1bの全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。また、集積化した場合には容易に同調周波数を高周波化することができる。
【0076】
(その他の実施例)
上述した各実施例の同調増幅器に含まれる非反転回路50あるいは位相反転回路80は、トランジスタやオペアンプや抵抗等を組み合わせて簡単に構成することができる。
【0077】
図13は、オペアンプを用いて構成した非反転回路と位相反転回路の具体例を示す図である。同図(A)に示す非反転回路50は、反転入力端子が抵抗54を介して接地されているとともにこの反転入力端子と出力端子との間に抵抗56が接続されたオペアンプ52を含んで構成されており、2つの抵抗54、56の抵抗比によって定まる所定の増幅度を有するバッファとして機能する。オペアンプ52の非反転入力端子に交流信号が入力されると、オペアンプ52の出力端子からは同相の信号が出力される。
【0078】
また、同図(B)に示す位相反転回路80は、入力信号が抵抗84を介して反転入力端子に入力されるとともに非反転入力端子が接地されたオペアンプ82と、このオペアンプ82の反転入力端子と出力端子との間に接続された抵抗86とを含んで構成されている。この位相反転回路80は、2つの抵抗84、86の抵抗比によって定まる所定の増幅度を有しており、抵抗84を介してオペアンプ82の反転入力端子に交流信号が入力されると、オペアンプ82の出力端子からは位相が反転した逆相の信号が出力される。
【0079】
ところで、上述した各実施例の同調増幅器は、2つの移相回路と非反転回路あるいは位相反転回路によって構成されており、接続された複数の回路の全体によって所定の周波数において合計の位相シフト量を0°にすることにより所定の同調動作を行うようになっている。したがって、位相シフト量だけに着目すると、移相回路と非反転回路あるいは位相反転回路とをどのような順番で接続するかはある程度の自由度があり、必要に応じて接続順番を決めることができる。
【0080】
図14は、タイプが異なる2つの移相回路と非反転回路とを組み合わせて同調増幅器を構成した場合において、2つの移相回路と非反転回路50の接続状態を示す図である。なお、これらの図において、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、各同調増幅器の出力信号と入力信号とを所定の割合で加算するためのものであり、最も一般的には図1等に示すように、帰還側インピーダンス素子70aとして帰還抵抗70を、入力側インピーダンス素子74aとして入力抵抗74を使用する。
【0081】
但し、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、それぞれの素子に入力された信号の位相関係を変えることなく加算できればよいことから、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aをともにキャパシタにより、あるいは帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aをともにインダクタにより形成するようにしてもよい。または、抵抗やキャパシタあるいはインダクタを組み合わせることにより、インピーダンスの実数分および虚数分の比を同時に調整しうるようにして各インピーダンス素子を形成してもよい。
【0082】
図14(A)には、タイプが異なる(一方が−型であって他方が+型である)2つの移相回路の後段に非反転回路50を配置した構成が示されている。このように、後段に非反転回路50を配置した場合には、この非反転回路50に出力バッファの機能を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこともできる。
【0083】
図14(B)には、タイプが異なる2つの移相回路の中間に非反転回路50を配置した構成が示されている。このように、中間に非反転回路50を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30と後段の移相回路30あるいは10の相互干渉を完全に防止することができる。
【0084】
図14(C)には、タイプが異なる2つの移相回路の前段に非反転回路50を配置した構成が示されており、図1に示した同調増幅器1に対応している。このように、前段に非反転回路50を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30に対する帰還側インピーダンス素子70aや入力側インピーダンス素子74aの影響を最小限に抑えることができる。
【0085】
同様に、図15は、同タイプの2つの移相回路と位相反転回路を組み合わせて同調増幅器を構成した場合において、2つの移相回路と位相反転回路80の接続状態を示す図である。なお、図14について説明したように、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、各同調増幅器の出力信号と入力信号とを所定の割合で加算するためのものであり、最も一般的には図1等に示すように、帰還側インピーダンス素子70aとして帰還抵抗70を、入力側インピーダンス素子74aとして入力抵抗74を使用する。但し、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、それぞれの素子に入力された信号の位相関係を変えることなく加算できればよいことから、キャパシタ等によって形成するようにしてもよい。
【0086】
図15(A)には、同タイプの2つの移相回路の後段に位相反転回路80を配置した構成が示されている。このように、後段に位相反転回路80を配置した場合には、この位相反転回路80に出力バッファの機能を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこともできる。
【0087】
図15(B)には、同タイプの2つの移相回路の間に位相反転回路80を配置した構成が示されている。このように、中間に位相反転回路80を配置した場合には、2つの移相回路間の相互干渉を完全に防止することができる。
【0088】
図15(C)には、2つの移相回路の前段に位相反転回路80を配置した構成が示されており、図11に示した同調増幅器1aや図12に示した同調増幅器1bに対応している。このように、前段に位相反転回路80を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30に対する帰還側インピーダンス素子70aや入力側インピーダンス素子74aの影響を最小限に抑えることができる。
【0089】
また、上述した各実施例において示した移相回路10、30には可変抵抗16あるいは36が含まれている。これらの可変抵抗16、36は、具体的には接合型あるいはMOS型のFETを用いて実現することができる。
【0090】
図16は、各実施例において示した2種類の移相回路内の可変抵抗16あるいは36をFETに置き換えた場合の移相回路の構成を示す図である。
【0091】
同図(A)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16をFETに置き換えた構成が示されている。同図(B)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36をFETに置き換えた構成が示されている。
【0092】
このように、FETのソース・ドレイン間に形成されるチャネルを抵抗体として利用して可変抵抗16あるいは36の代わりに使用すると、ゲート電圧を可変に制御してこのチャネル抵抗をある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができるため、同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0093】
なお、図16に示した各移相回路は、可変抵抗を1つのFET、すなわちpチャネルあるいはnチャネルのFETによって構成したが、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのゲートとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加するようにしてもよい。抵抗値を可変する場合にはこのゲート電圧の大きさを変えればよい。このように、2つのFETを組み合わせて可変抵抗を構成することにより、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0094】
また、上述した各実施例において示した移相回路10あるいは30は、インダクタ17、37と直列に接続された可変抵抗16あるいは36の抵抗値を変化させて位相シフト量を変化させることにより全体の同調周波数を変えるようにしたが、インダクタ17、37を可変インダクタによって形成し、そのインダクタンスを変化させることにより同調周波数を変えるようにしてもよい。
【0095】
図17は、各実施例において示した2種類の移相回路内のインダクタ17あるいは37を可変インダクタに置き換えた場合の移相回路の構成を示す図である。
【0096】
同図(A)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16を固定抵抗に置き換えるとともにインダクタ17を可変インダクタ17aに置き換えた構成が示されている。同図(B)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36を固定抵抗に置き換えるとともにインダクタ37を可変インダクタ37aに置き換えた構成が示されている。
【0097】
このように、インダクタ17あるいは37を可変インダクタ17aあるいは37aに置き換えて、それらが有するインダクタンスをある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、同調周波数を任意に変更することができる。
【0098】
ところで、上述した図17(A)、(B)では可変インダクタ17aあるいは37aのインダクタンスのみを可変したが、同時に可変抵抗16あるいは36の抵抗値を可変するようにしてもよい。図17(C)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16を用いるとともにインダクタ17を可変インダクタ17aに置き換えた構成が示されている。同図(D)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36を用いるとともにインダクタ37を可変インダクタ37aに置き換えた構成が示されている。
【0099】
また、図17(C)、(D)に示した可変抵抗を図16に示したようにFETのチャネル抵抗を利用して形成することができることはいうまでもない。特に、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのベースとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加した場合には、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0100】
このように、可変抵抗と可変インダクタを組み合わせて移相回路を構成した場合であっても、可変抵抗の抵抗値および可変インダクタのインダクタンスをある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、同調周波数を任意に変更することができる。
【0101】
また、上述したように可変抵抗や可変インダクタを用いる場合の他、素子定数が異なる複数の抵抗あるいはインダクタを用意しておいて、スイッチを切り換えることにより、これら複数の素子の中から1つあるいは複数を選ぶようにしてもよい。この場合にはスイッチ切り換えにより接続する素子の個数および接続方法(直列接続、並列接続あるいはこれらの組み合わせ)によって、素子定数を不連続に切り換えることができる。例えば、可変抵抗の代わりに抵抗値がR、2R、4R、…といった2のn乗の系列の複数の抵抗を用意しておいて、1つあるいは任意の複数を選択して直列接続することにより、等間隔の抵抗値の切り換えをより少ない素子で容易に実現することができる。このため、同調周波数が複数ある回路、例えばAMラジオに各実施例の同調増幅器を適用して、複数の放送局から1局を選局して受信するような用途に適している。
【0102】
図18は、上述した可変インダクタ17aの具体例を示す図であり、半導体基板上に形成された平面構造の概略が示されている。なお、同図に示す可変インダクタ17aの構造は、そのまま可変インダクタ37aにも適用することができる。
【0103】
同図に示す可変インダクタ17aは、半導体基板110上に形成された渦巻き形状のインダクタ導体112と、その外周を周回するように形成された制御用導体114と、これらインダクタ導体112および制御用導体114の両方を覆うように形成された絶縁性磁性体118とを含んで構成されている。
【0104】
上述した制御用導体114は、制御用導体114の両端に可変のバイアス電圧を印加するために可変電圧電源116が接続され、この可変電圧電源116によって印加する直流バイアス電圧を可変に制御することにより、制御用導体114に流れるバイアス電流を変化させることができる。
【0105】
また、半導体基板110は、例えばn型シリコン基板(n−Si基板)やその他の半導体材料(例えばゲルマニウムやアモルファスシリコン等の非晶質材料)が用いられる。また、インダクタ導体112は、アルミニウムや金等の金属薄膜あるいはポリシリコン等の半導体材料を渦巻き形状に形成されている。
【0106】
なお、図18に示した半導体基板110には、可変インダクタ17aの他に図1等に示した同調増幅器の他の構成部品が形成されている。
【0107】
図19は、図18に示した可変インダクタ17aのインダクタ導体112および制御用導体114の形状をさらに詳細に示す図である。
【0108】
同図に示すように、内周側に位置するインダクタ導体112は、所定ターン数(例えば約4ターン)の渦巻き形状に形成されており、その両端には2つの端子電極122、124が接続されている。同様に、外周側に位置する制御用導体114は、所定ターン数(例えば約2ターン)の渦巻き形状に形成されており、その両端には2つの制御電極126、128が接続されている。
【0109】
図20は、図19のA−A線拡大断面図であり、インダクタ導体112と制御用導体114を含む絶縁性磁性体118の横断面が示されている。
【0110】
同図に示すように、半導体基板110表面に絶縁性の磁性体膜118aを介してインダクタ導体112および制御用導体114が形成されており、さらにその表面に絶縁性の磁性体膜118bが被覆形成されている。これら2つの磁性体膜118a、118bによって図18に示した絶縁性磁性体118が形成されている。
【0111】
例えば、磁性体膜118a、118bとしては、ガンマ・フェライトやバリウム・フェライト等の各種磁性体膜を用いることができる。また、これらの磁性体膜の材質や形成方法については各種のものが考えられ、例えばFeO等を真空蒸着して磁性体膜を形成する方法や、その他分子線エピタキシー法(MBE法)、化学気相成長法(CVD法)、スパッタ法等を用いて磁性体膜を形成する方法等がある。
【0112】
なお、絶縁膜130は、非磁性体材料によって形成されており、インダクタ導体112および制御用導体114の各周回部分の間を覆っている。このようにして各周回部分間の磁性体膜118a、118bを排除することにより、各周回部分間に生じる漏れ磁束を最小限に抑えることができるため、インダクタ導体112が発生する磁束を有効に利用して大きなインダクタンスを有する可変インダクタ17aを実現することができる。
【0113】
このように、図18等に示した可変インダクタ17aは、インダクタ導体112と制御用導体114とを覆うように絶縁性磁性体118(磁性体膜118a、118b)が形成されており、制御用導体114に流す直流バイアス電流を可変に制御することにより、上述した絶縁性磁性体118を磁路とするインダクタ導体112の飽和磁化特性が変化し、インダクタ導体112が有するインダクタンスが変化する。
【0114】
したがって、インダクタ導体112のインダクタンスそのものを直接変化させることができ、しかも、半導体基板110上に薄膜形成技術や半導体製造技術を用いて形成することができるため製造が容易となる。さらに、半導体基板110上には同調増幅器1等の他の構成部品を形成することも可能であるため、各実施例の同調増幅器の全体を集積化によって一体形成する場合に適している。
【0115】
なお、図18等に示した可変インダクタ17aは、図21あるいは図22に示すように、インダクタ導体112と制御用導体114とを交互に周回させたり、インダクタ導体112と制御用導体114とを重ねて形成するようにしてもよい。いずれの場合であっても、制御用導体114に流す直流バイアス電流を変化させることにより絶縁性磁性体118の飽和磁化特性を変えることができ、インダクタ導体112が有するインダクタンスをある範囲で変化させることができる。
【0116】
また、図18等に示した可変インダクタ17aは、半導体基板110上にインダクタ導体112等を形成する場合を例にとり説明したが、セラミックス等の絶縁性あるいは導電性の各種基板上に形成するようにしてもよい。
【0117】
また、磁性体膜118a、118bとして絶縁性材料を用いたが、メタル粉(MP)のような導電性材料を用いるようにしてもよい。但し、このような導電性の磁性体膜を上述した絶縁性の磁性体膜118a等に置き換えて使用すると、インダクタ導体112等の各周回部分が短絡されてインダクタ導体として機能しなくなるため、各インダクタ導体と導電性の磁性体膜との間を電気的に絶縁する必要がある。この絶縁方法としては、インダクタ導体112等を酸化して絶縁酸化膜を形成する方法や、化学気相法等によりシリコン酸化膜あるいは窒化膜を形成する方法等がある。
【0118】
特に、メタル粉等の導電性材料は、ガンマ・フェライト等の絶縁性材料に比べると透磁率が大きいため、大きなインダクタンスを確保することができる利点がある。
【0119】
また、図18等に示した可変インダクタ17aは、インダクタ導体112と制御用導体114の両方の全体を絶縁性磁性体118で覆うようにしたが、一部のみを覆って磁路を形成するようにしてもよい。
【0120】
図23は、絶縁性磁性体118を部分的に形成した可変インダクタを示す図である。同図に示すように、絶縁性磁性体118がインダクタ導体112と制御用導体114の一部を覆うように形成されており、この部分的に形成された絶縁性磁性体118によって磁路が形成される。このように、磁路となる絶縁性磁性体(あるいは導電性磁性体でもよい)118を部分的に形成した場合には、磁路が狭まることによりインダクタ導体112および制御用導体114によって生じる磁束が飽和しやすくなる。したがって、制御用導体114に少ないバイアス電流を流した場合であっても磁束が飽和し、少ないバイアス電流を可変に制御することによりインダクタ導体112のインダクタンスを変えることができる。このため、制御系の構造を簡略化することができる。
【0121】
また、図18等に示した可変インダクタ17aは、インダクタ導体112と制御用導体114とを同心状に巻回して形成したが、これら各導体を半導体基板110表面の隣接した位置に形成してそれらの間を絶縁性あるいは導電性の磁性体によって形成した磁路によって磁気結合させてもよい。
【0122】
図24は、インダクタ導体と制御用導体とを隣接した位置に並べて形成した場合の可変インダクタ17bの概略を示す平面図である。
【0123】
同図に示す可変インダクタ17bは、半導体基板110上に形成された渦巻き形状のインダクタ導体112aと、このインダクタ導体112aと隣接した位置に形成された渦巻き形状の制御用導体114aと、インダクタ導体112aと制御用導体114aの各渦巻き中心を覆うように形成された絶縁性磁性体(あるいは導電性磁性体)119とを含んで構成されている。
【0124】
図18等に示した可変インダクタ17aと同様に、制御用導体114aにはその両端に可変のバイアス電圧を印加するために可変電圧電源116が接続されており、この可変電圧電源116によって印加するバイアス電圧を可変に制御することにより、制御用導体114aに流れる所定のバイアス電流を変化させることができる。
【0125】
図25は、図24に示した可変インダクタ17bのインダクタ導体112aおよび制御用導体114aの形状をさらに詳細に示した図である。
【0126】
同図に示すように、インダクタ導体112aは、所定ターン数(例えば約4ターン)の渦巻き形状に形成されており、その両端には2つの端子電極122、124が接続されている。同様に、インダクタ導体112aに隣接して配置された制御用導体114aは、所定ターン数(例えば約2ターン)の渦巻き形状に形成されており、その両端には2つの制御電極126、128が接続されている。
【0127】
図26は、図25のB−B線拡大断面図であり、インダクタ導体112aと制御用導体114aを含む絶縁性磁性体119の横断面が示されている。
【0128】
同図に示すように、半導体基板110表面に絶縁性の磁性体膜119aおよび絶縁性の非磁性体膜132が形成されており、その表面にインダクタ導体112aおよび制御用導体114aがそれぞれ形成されている。そして、これらインダクタ導体112aと制御用導体114aの各中心部を貫くようにさらに表面に絶縁性の磁性体膜119bが被覆形成されている。これら2つの磁性体膜119a、119bによってインダクタ導体112aと制御用導体114aの共通の磁路となる環状の磁性体119が形成されている。
【0129】
なお、図26に示した絶縁性の非磁性体膜132は、磁性体膜119aとほぼ同じ膜厚を有しており、さらにそれらの表面においてインダクタ導体112aと制御用導体114aのそれぞれをほぼ同じ高さに形成するためのものである。したがって、インダクタ導体112aおよび制御用導体114aに多少の段差が生じてもよい場合には、非磁性体膜132を形成せずに、半導体基板110上に直接インダクタ導体112aおよび制御用導体114aの一部を形成するようにしてもよい。
【0130】
また、磁性体膜119a表面のインダクタ導体112aおよび制御用導体114aの各周回部分の間には、図18等に示した可変インダクタ17aと同様に絶縁膜130が形成されている。このように部分的に絶縁膜130を充填して各周回部分間の磁性体膜119a、119bを排除することにより、各周回部分間に生じる漏れ磁束を最小限に抑えることができるため、インダクタ導体112aによって発生した磁束は、そのほとんどが磁性体膜119a、119bを通って制御用導体114aと交差するようになる。したがって、漏れ磁束を少なくすることにより、インダクタ導体112aが発生する磁束を有効に利用して大きなインダクタンスを得ることができる。
【0131】
このように、上述した可変インダクタ17bは、インダクタ導体112aと制御用導体114aの各渦巻き中心を通るように環状の絶縁性磁性体119(磁性体膜119a、119b)が形成されている。したがって、制御用導体114aに流す直流バイアス電流を可変に制御することにより、上述した磁性体119を磁路とするインダクタ導体112aの飽和磁化特性が変化し、インダクタ導体112aが有するインダクタンスも変化する。
【0132】
また、上述したように各実施例の同調増幅器1等を半導体基板上に形成した場合には、インダクタ17あるいは37としてあまり大きなインダクタンスを確保することができない。したがって、半導体基板上に実際に形成したインダクタ17等の小さなインダクタンスを、回路を工夫することにより見かけ上大きくすることができれば、時定数Tを大きな値に設定して同調周波数の低周波数化を図る際に都合がよい。
【0133】
図27は、図1等に示した移相回路10、30に用いたインダクタ17あるいは37を素子単体ではなく回路によって構成した変形例を示す図であり、実際に半導体基板上に形成されるインダクタ素子(インダクタ導体)のインダクタンスを見かけ上大きくみせるインダクタンス変換回路として機能する。なお、図27に示した回路全体が移相回路10、30に含まれるインダクタ17あるいは37に対応している。
【0134】
図27に示すインダクタンス変換回路17cは、所定のインダクタンスL0を有するインダクタ210と、2つのオペアンプ212、214と、2つの抵抗216、218とを含んで構成されている。
【0135】
1段目のオペアンプ212は、出力端子が反転入力端子に接続された利得1の非反転増幅器であって、主にインピーダンス変換を行うバッファとして機能する。同様に、2段目のオペアンプ214も出力端子が反転入力端子に接続されており、利得1の非反転増幅器として機能する。また、これら2つの非反転増幅器の間には抵抗216と218による分圧回路が挿入されている。
【0136】
このように、間に分圧回路を挿入することにより、2つの非反転増幅器を含む増幅器全体の利得を0から1の間で自由に設定することができる。
【0137】
図27に示したインダクタンス変換回路17cにおいて、インダクタ210を除く回路全体の伝達関数をK4とすると、インダクタンス変換回路17cは図28に示すシステム図で表すことができる。図29は、これをミラーの定理によって変換したシステム図である。
【0138】
図28に示したインピーダンスZ0を用いて図29に示したインピーダンスZ1を表すと、
【数19】
となる。ここで、図27に示したインダクタンス変換回路17cの場合には、インピーダンスZ0=jωL0であり、これを(19)式に代入して、
【数20】
【数21】
となる。この(21)式は、インダクタンス変換回路17cにおいてインダクタ210が有するインダクタンスL0が見掛け上は1/(1−K4)倍になったことを示している。
【0139】
したがって、利得K4が正であって0から1の間にある場合には、1/(1−K4)は常に1より大きくなるため、インダクタンスL0を大きいほうに変化させることができる。
【0140】
ところで、図27に示したインダクタンス変換回路17cにおける増幅器の利得、すなわちオペアンプ212と214の全体により構成される増幅器の利得K4は、抵抗216と218によって構成される分圧回路の分圧比によって決まり、それぞれの抵抗値をR16、R18とすると、
【数22】
となる。この利得K4を(21)式に代入して見かけ上のインダクタンスLを計算すると、
【数23】
となる。したがって、抵抗216と218の抵抗比R18/R16を大きくすることにより、2つの端子204、206間の見かけ上のインダクタンスLを大きくすることができる。例えば、R18=R16の場合には、(23)式からインダクタンスLをL0の2倍にすることができる。
【0141】
このように、上述したインダクタンス変換回路17cは、2つの非反転増幅器の間に挿入された分圧回路の分圧比を変えることにより、実際に接続されているインダクタ210のインダクタンスL0を見かけ上大きくすることができる。そのため、半導体基板上に図1等に示した同調増幅器1等の全体を形成するような場合には、半導体基板上に小さなインダクタンスL0を有するインダクタ210をスパイラル状の導体等によって形成しておいて、図27に示したインダクタンス変換回路によって大きなインダクタンスLに変換することができ、集積化に際して好都合となる。特に、このようにして大きなインダクタンスを確保することができれば、図1に示した同調増幅器1等の同調周波数を比較的低い周波数領域まで下げることが容易となる。また、集積化を行うことにより、同調増幅器全体の実装面積を小型化して、材料コスト等の低減も可能となる。
【0142】
なお、抵抗216、218による分圧回路の分圧比を固定した場合の他、これら2つの抵抗216、218の少なくとも一方を可変抵抗により形成することにより、具体的には接合型やMOS型のFETあるいはpチャネルFETとnチャネルFETとを並列に接続して可変抵抗を形成することにより、この分圧比を連続的に変化させてもよい。この場合には、図27に示したオペアンプ212、214を含んで構成される増幅器全体の利得が変わり、端子204、206間のインダクタンスLも連続的に変化する。したがって、このインダクタンス変換回路17cを図17に示した可変インダクタ17aの代わりに使用することにより、各移相回路における位相シフト量をある範囲で任意に変化させることができる。このため、同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、上述した同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0143】
また、図27に示したインダクタンス変換回路17cは、2つのオペアンプ212、214を含む増幅器全体の利得が1以下に設定されているため、全体をエミッタホロワ回路あるいはソースホロワ回路に置き換えるようにしてもよい。
【0144】
図30は、オペアンプ212、214を含む増幅器全体をエミッタホロワ回路に置き換えたインダクタンス変換回路の構成を示す図である。同図(A)に示すインダクタンス変換回路17dは、エミッタに2つの抵抗224、226が接続されたバイポーラトランジスタ228と、この2つの抵抗224、226による分圧点とトランジスタ228のベースとの間に接続されたインダクタ210と、直流電流阻止用のキャパシタ230とを含んで構成されている。インダクタ210の一方端側に挿入されたキャパシタ230は、周波数特性に影響を与えないようにそのインピーダンスは動作周波数において極めて小さく、すなわち大きな静電容量に設定されている。
【0145】
上述したエミッタホロワ回路の利得は、主に2つの抵抗224、226の抵抗比に応じて決まり、しかもその利得は常に1未満であるため、(21)式からわかるように、実際にインダクタ210が有するインダクタンスL0を見掛け上大きくすることができる。しかも、1つのエミッタホロワ回路を用いているだけであり、回路構成が簡略化でき、最高動作周波数も高く設定することができる。
【0146】
図30(B)はその変形例を示す図であり、同図(A)の2つの抵抗224、226を可変抵抗232に置き換えた点が異なっている。このように可変抵抗232を用いることにより、利得を任意にしかも連続的に変化させることができるため、見掛け上のインダクタンスLも任意にしかも連続的に変化させることができ、このインダクタンス変換回路17eを図17に示した可変インダクタ17aの代わりに使用することにより、各移相回路における位相シフト量をある範囲で任意に変化させることができる。このため、同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、上述した同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0147】
なお、図30(B)に示したインダクタンス変換回路17eは、同図(A)の2つの抵抗224、226を1つの可変抵抗232に置き換えているが、これら2つの抵抗224、226の少なくとも一方を可変抵抗によって構成するようにしてもよい。
【0148】
図31は、図30(A)および(B)に示したインダクタンス変換回路17d、17eのそれぞれをソースホロワ回路によって実現したものであり、バイポーラトランジスタ228をFET234に置き換えたものである。図31(A)が図30(A)に、図31(B)が図30(B)にそれぞれ対応している。
【0149】
図32は、図27に示したインダクタンス変換回路17cの変形例を示す図である。図32に示すインダクタンス変換回路17fは、npn型のバイポーラトランジスタ236およびそのエミッタに接続された抵抗240と、pnp型のバイポーラトランジスタ238とそのエミッタに接続された抵抗242と、インダクタンスL0を有するインダクタ210とを含んで構成されている。
【0150】
上述した一方のトランジスタ236と抵抗240により第1のエミッタホロワ回路が、他方のトランジスタ238と抵抗242により第2のエミッタホロワ回路がそれぞれ形成され、それらが縦続接続されている。しかも、npn型のトランジスタ236とpnp型のトランジスタ238を用いているため、インダクタ210の一方端であるトランジスタ236のベース電位とトランジスタ238のエミッタ電位とをほぼ同じに設定することができ、直流電流阻止用のキャパシタが不要となる。
【0151】
なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0152】
例えば、上述した各実施例の同調増幅器においては、移相回路10、30内の差動増幅器12、32によって2入力の差分を2倍に増幅して各移相回路の出力とすることにより、同調増幅器のループゲインをほぼ1に設定するようにしたが、差動増幅器12、32の増幅度をこれ以外の値に設定してもよい。例えば、各差動増幅器12、32において2入力の差分を増幅せずに、あるいは2倍以外の増幅度で増幅して出力するとともに、非反転回路50あるいは位相反転回路80の増幅度を調整して同調増幅器のループゲインをほぼ1に設定するようにしてもよい。
【0153】
また、図1等に示した各同調増幅器においては、帰還側インピーダンス素子として抵抗値が固定の帰還抵抗70を用い、入力側インピーダンス素子として抵抗値が固定の入力抵抗74を用いるようにしたが、少なくとも一方の抵抗を可変抵抗により構成して最大減衰量を任意に変更可能に形成してもよい。この場合に、可変抵抗を図16に示したようにFETのチャネル抵抗を利用して形成することができることはいうまでもない。特に、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのベースとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加した場合には、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0154】
同様に、帰還側インピーダンス素子および入力側インピーダンス素子をキャパシタとした場合には少なくとも一方を可変容量ダイオードやゲート容量可変のFETにより構成して最大減衰量を任意に変更可能に形成してもよい。
【0155】
また、上述した実施例の同調増幅器1等には2つの移相回路が含まれているが、同調周波数を可変する場合には、両方の移相回路に含まれるLR回路を構成する抵抗とインダクタの少なくとも一方の素子定数を変える場合の他、一方の移相回路に含まれるLR回路を構成する抵抗とインダクタの少なくとも一方の素子定数を変える場合が考えられる。また、全ての抵抗やインダクタの各素子定数を固定して、同調周波数が固定の同調増幅器を構成することもできる。
【0156】
【発明の効果】
以上の各実施例に基づく説明から明らかなように、同調周波数が高い場合にはこの発明の同調増幅器を構成する各素子は集積回路の製法によって形成することが可能であるから、同調増幅器を半導体ウエハ上に集積回路として小型に形成でき、大量生産によって安価に作ることができる。また、各移相回路内のインダクタをインダクタンス変換回路を用いて大きいほうに変換することができ、同調周波数を低周波化することもできる。
【0157】
特に、各移相回路におけるLR回路の可変抵抗としてFETのソース・ドレイン間のチャネルを使用し、このFETのゲートに印加する制御電圧を変化させてチャネルの抵抗を変化させるように構成すると、制御電圧を印加する配線のインダクタンスや静電容量の影響を回避することができ、ほぼ設計どおりの理想的な特性を備えた同調増幅器を得ることができる。
【0158】
また、この発明の同調増幅器は、最大減衰量が入力側インピーダンス素子と帰還側インピーダンス素子の抵抗比によって決まるとともに、同調周波数が各移相回路におけるLR回路の時定数によって決まるため、最大減衰量や同調周波数および同調周波数における利得を互いに干渉しあうことなく設定することができる。
【0159】
また、従来のLC共振を利用した同調増幅器においては、同調周波数ωが1/√LCであるから、同調周波数を調整するために静電容量CまたはインダクタンスLを変化させると、同調周波数はその変化量の平方根に比例して変化するが、この発明の同調増幅器では同調周波数ωが例えばR/Lであって、同調周波数は抵抗値Rに比例して変化させることができるので、同調周波数の大幅な変更および調整が可能となる。また、インダクタンスLは小さくすることが容易であるため、同調周波数の高周波化を図ることが容易であり、高い同調周波数を有する同調増幅器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を適用した第1実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図2】図1に示した前段の移相回路の構成を抜き出して示した図、
【図3】前段の移相回路の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図、
【図4】図2に示した移相回路を等価的に表した図、
【図5】図1に示した後段の移相回路の構成を抜き出して示した図、
【図6】後段の移相回路の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図、
【図7】図5に示した移相回路を等価的に表した図、
【図8】2つの移相回路および非反転回路の全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えたシステム図、
【図9】図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図、
【図10】この実施例の同調増幅器の同調特性を示す図、
【図11】第2実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図12】第3実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図13】非反転回路および位相反転回路の具体例を示す図、
【図14】移相回路と非反転回路との接続形態を示す図、
【図15】移相回路と位相反転回路との接続形態を示す図、
【図16】移相回路の可変抵抗をFETに置き換えた移相回路の構成を示す図、
【図17】移相回路のインダクタを可変インダクタに置き換えた移相回路の構成を示す図、
【図18】可変インダクタの一例を示す図、
【図19】図18に示した可変インダクタのインダクタ導体および制御用導体の形状をさらに詳細に示す図、
【図20】図19のA−A線拡大断面図、
【図21】図18に示した可変インダクタの変形例を示す図、
【図22】図18に示した可変インダクタの変形例を示す図、
【図23】図18に示した可変インダクタの変形例を示す図、
【図24】可変インダクタの他の例を示す図、
【図25】図24に示した可変インダクタのインダクタ導体および制御用導体の形状をさらに詳細に示す図、
【図26】図25のB−B線拡大断面図、
【図27】インダクタが実際に有するインダクタンスを見かけ上大きくするインダクタンス変換回路の構成を示す図、
【図28】図27に示した回路を伝達関数を用いて表した図、
【図29】図28に示す構成をミラーの定理によって変換した図、
【図30】図27に含まれる2つのオペアンプを含む増幅器全体をエミッタホロワ回路に置き換えたインダクタンス変換回路の構成を示す図、
【図31】図30の回路をソースホロワ回路によって実現した構成を示す図、
【図32】インダクタンス変換回路の変形例を示す図、
【図33】従来の同調増幅器における同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量の関係の一例を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
1 同調増幅器
10、30 移相回路
12、32 差動増幅器
16、36 可変抵抗
17、37 インダクタ
18、20、38、40 抵抗
19、39 キャパシタ
50 非反転回路
70 帰還抵抗
74 入力抵抗
90 入力端子
92 出力端子
Claims (26)
- 入力信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とインダクタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記インダクタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
を備え、前記2つの移相回路を縦続接続し、これら縦続接続された2つの移相回路の中の前段の移相回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、後段の移相回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら2つの移相回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする同調増幅器。 - 入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とインダクタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記インダクタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を変えずに出力する非反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記非反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1または2において、
前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗および前記インダクタの接続の仕方を、前記2つの移相回路において反対にしたことを特徴とする同調増幅器。 - 入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とインダクタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記インダクタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を反転して出力する位相反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記位相反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする同調増幅器。 - 請求項4において、
前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗および前記インダクタの接続の仕方を、前記2つの移相回路において同じにしたことを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子のそれぞれは抵抗であることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項6において、
前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子の少なくとも一方を可変抵抗により形成し、前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子の抵抗比を変えることにより、最大減衰量を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記第3の抵抗を可変抵抗により形成し、この抵抗値を変えることにより、同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項7または8において、
前記可変抵抗をFETのチャネルによって形成し、ゲート電圧を変えてチャネル抵抗を変えることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項7または8において、
前記可変抵抗をpチャネル型のFETとnチャネル型のFETとを並列接続することにより形成し、極性が異なる各FETのゲート電圧の大きさを変えてチャネル抵抗を変えることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記インダクタが有するインダクタンスを変えることにより、同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項11において、
前記インダクタは、
基板上にほぼ平面状に渦巻き形状に形成されたインダクタ導体と、
前記基板上であって前記インダクタ導体とほぼ同心状に形成されており、所定の直流バイアス電流が流される制御用導体と、
前記インダクタ導体と前記制御用導体とを覆うように形成された磁性体と、
を備え、前記制御用導体に流す直流バイアス電流を変えて前記インダクタ導体の両端に現れるインダクタンスを変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項11において、
前記インダクタは、
基板上にほぼ平面状に渦巻き形状に形成されたインダクタ導体と、
前記基板上であって前記インダクタ導体に隣接する位置にほぼ平面状で渦巻き形状に形成されており、所定の直流バイアス電流が流される制御用導体と、
前記インダクタ導体と前記制御用導体の各渦巻き中心を貫通するように環状に形成された磁性体と、
を備え、前記制御用導体に流す直流バイアス電流を変えて前記インダクタ導体の両端に現れるインダクタンスを変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記第3の抵抗として抵抗値が固定の複数の抵抗を有しており、スイッチ切り換えにより選択的に接続することにより、同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記インダクタとしてインダクタンスが固定の複数のインダクタを有しており、スイッチ切り換えにより選択的に接続することにより、同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記インダクタを、利得を0から1の間に設定した増幅器と、前記増幅器の入出力間に並列接続されたインダクタ素子に置き換えることにより、前記増幅器の入力側からみたインダクタンスを実際に前記インダクタ素子が有するインダクタンスよりも大きくすることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項16において、
前記増幅器の利得を可変して前記増幅器の入力側からみたインダクタンスを変えることにより、同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 入力側インピーダンス素子を介して入力された交流信号を同相で出力する非反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびインダクタと抵抗との直列接続よりなり、前記非反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続および抵抗とインダクタとの直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路とは反対方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還側インピーダンス素子を介して前記非反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項18において、
前記第1の移相回路の前記インダクタと直列接続された抵抗の抵抗値および/または前記第2の移相回路の前記インダクタと直列接続された前記抵抗の抵抗値を変化させて同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項18において、
前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子の素子定数の比を変化させて最大減衰量を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項18において、
各抵抗をFETのチャネルで形成し、このチャネル抵抗を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 入力抵抗を介して入力された交流信号を反転して出力する位相反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびインダクタと抵抗との直列接続よりなり、前記位相反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続およびインダクタと抵抗との直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路と同じ方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還抵抗を介して前記位相反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項22において、
前記第1の移相回路のインダクタと直列接続された抵抗の抵抗値および/または前記第2の移相回路のインダクタと直列接続された抵抗の抵抗値を変化させて同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項22において、
前記入力抵抗および前記帰還抵抗の抵抗値の比を変化させて最大減衰量を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項22において、
各抵抗をFETのチャネルで形成し、このチャネル抵抗を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜25のいずれかにおいて、
半導体集積回路として形成することを特徴とする同調増幅器。
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1995
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| JPH08154035A (ja) | 1996-06-11 |
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