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JP3608291B2 - 電子源及びそれを用いた陰極線管 - Google Patents
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JP3608291B2 - 電子源及びそれを用いた陰極線管 - Google Patents

電子源及びそれを用いた陰極線管 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、CRT型ディスプレイ、真空管、半導体製造装置等に用いられる電界放出型の電子源及びそれを用いた陰極線管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子源としては熱フィラメントからの熱電子放出等を利用したものが多用されていたが、画像表示装置の薄型化、軽量化に伴って、半導体の微細加工技術を利用した電界放出型(フィールドエミッタ)の電子源の開発が注目されてきた。
【0003】
図27は、例えば特開平2−226635号公報に記載された従来の電界放出電子源の一部の構成を示す断面図である。図において、電子放出部を形成するエミッタ104はカソード電極である基板101を加工して円錐形状に形成されている。エミッタ104を取り囲むように基板101上に絶縁膜105、引出し電極102、絶縁膜106、集束電極103、絶縁膜107、加速電極108が順に積層されている。引き出し電極102と基板101の間に印加された電圧(電源109からの電圧)により電子がエミッタ104の先端から引き出され、電源110により集束電極103に印加された電圧により電子は集束され、さらに電源111により加速電極108に印加された電圧により電子は加速され、電子線100となって放出される。本実施例では電極が引出し電極、集束電極、加速電極の3層構造となってそれぞれ異なる電位が印加されるが、引出し電極さえあれば、電子放出は実現する。
【0004】
次に電子源の動作について説明する。引き出し電極102に電源109によりカソード電極(基板)101に対し、正の例えば100Vの電圧を印加すると、エミッタ104の先端には約10V/cmの電界が発生し、トンネル効果によりエミッタ104より電子が放出される。放出された電子による電流の大きさは1つのエミッタ当たり25〜100μAで、エミッタ104の密度しだいで高い電流密度を得ることができる。しかも、引き出し電極102にはほとんど電流が流れないため、消費電力は極めて小さい。
【0005】
ところで、上記のような電界放出電子源では、エミッタ104先端の形状を反映した電界分布の影響により放出電子線100は発散する。そのため集束電極103に電源110によりカソード電極101と同程度の電位を加え放出電子を減速して放出電子線100を集束できるように工夫している。これを電源111により正の電位を加えた加速電極108で加速し放出させる。ただし、個々のエミッタに加速電極108を設けずに外部の陽極で電子を加速させることもできる。
【0006】
このような素子は写真製版と薄膜技術を用いれば数μm〜10μmの間隔で100万個程度のエミッタアレイを同時に作製することができ、ピーク電流100Aの電子源が得られる。しかも、その電子源はカソード電極101を放出電流が流れることによる消費電力以外は電力損失はなく、電子線も発散しない低エミッタンスのものが得られる。
【0007】
次に、このような従来の電界放出電子源の形成方法について説明する。電界放出電子源の形成方法については、例えば雑誌”1990年電子情報通信学会秋季全国大会予稿集(1990年)p.5−282”や”第7回真空マイクロエレクトロニクスに関する国際会議の論文集,7th International Vacuum Microelectronics Conference 1994 July p.25〜28”に掲載されている。図28は、”第7回真空マイクロエレクトロニクスに関する国際会議の論文集,7th International Vacuum Microelectronics Conference 1994 July p.25〜28”に記載された電界放出電子源の形成方法を示す断面工程図である。図において、(a)〜(f)は工程の順を示す。まず、Siのような半導体(あるいはAlのような導体)基板101上にフォトレジスト113aを用いてSiOの円形状のマスク112を形成する(工程(a))。マスク112を用いてSi基板101を等方性エッチングし、その後基板表面を熱酸化させる。すると図中(b)の基板101の表面に沿って酸化膜101aが形成される(工程(b))。次にその上にSiO絶縁層105及び例えばNbからなる電極102を形成する(工程(c))。電極102には接続端子部を設けるためにさらにフォトレジスト113bを設け(工程(d))、SiO絶縁層106及び例えばNbからなる電極103を形成する(工程(e))。最後にフォトレジスト113bを除去、及びSiOの円形状のマスク112をフッ酸で除去すると、基板101上の酸化膜101aの一部も除去され、図中(f)のような先端形状の鋭い円錐形状のエミッタ104が得られる。
【0008】
一例として、エミッタ104の位置する電子放出部の開口直径は2〜3μm、円錐の高さは1μm、円錐の先端径は0.06μmである。また、電極102、103の厚さは、電圧が印加できるだけの厚さであれば厚くする必要もないため、通常約0.1〜0.3μmである。また、絶縁層105はエミッタ104の先端から効率よく電子放出を行うために、エミッタの高さとほぼ同じに設定してあり(1μm)、絶縁層106の厚さも電極102と電極103間の絶縁耐圧を考慮し、絶縁層105と同じ1μmに設定してあるのが通常である。
【0009】
上記のような電子源の適用例としてはCRTの電子銃が考えられる。この種の電子源をCRTヘ適用した例は、特開昭48ー90467号公報に述べられている。ただし電子源としては、個々のエミッタ104に引き出し電極102以外に集束電極103を設けるという構成は述べられていない。図29に、電子銃の構成を示す。図において、電子源(フィールドエミッタからなる電子源)121から放出された電子線は加速のための第1アノード電極122、第2アノード電極123を通過し、電子レンズ124、125でクロスオーバー点127を形成し、コンバージェンス電極126で集束され、さらに偏向マグネット128により方向制御されてシャドウマスク129を通ってアルミバック130付き蛍光体131の蛍光面に集束される。
【0010】
一方、出願人はフィールドエミッタ型の電子源に関する発明として、特開平5−198278号公報において、簡便な素子構成で2次元画素のアドレッシングを容易に行え、製作が容易な電子源を用いた平面パネル型ディスプレイについての発明を既に出願している。さらに、特願平6−240169号において、電子源の集束特性を向上させるために集束電極に対向して遮蔽電極を配置した電界放出電子源を陰極線管に適用する発明を既に出願している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電界放出型の電子源は上記のように構成されていたので、集束特性の優れた電子線を得るためには集束電極103に所望の電位を与える必要がある。電位の与え方として引出し電極より高い電位を与える場合、数kVオーダの高電圧が必要となり、引出し電極と集束電極の間の絶縁層を絶縁耐圧まで厚くする必要がありさらに、消費電力が高くなるという問題があった。そのため、集束電極に与える電位としては引出し電極より小さい電位、例えば、引出し電極100Vに対して集束電極0Vを与えていた。しかし、集束電極の電位を引き出し電極に加える電位より低くすると、集束電極に与える電位の影響を受けて、エミッタ先端の電界が低下してトンネル効果により放出される電子が極端に減少するという問題が生じた。図30に、集束電極に与える電位に対するアノ−ド電流と電子ビ−ムの発散角の変化を調べた実験結果を示す。図は集束電極の電圧100Vでの値で規格化して示している。集束電極へ印加する電圧が高い程アノ−ド電流は大きく、即ち十分な電子線強度が得られ、一方電子ビ−ムは発散してしまう。集束電極へ印加する電圧を小さくすると、電子ビ−ムは集束するものの、電流値は激減してしまう。
【0012】
本願発明は上記のような問題を解決するためになされたもので、集束電極に与える電圧を小さくしてもアノード電流が低下しないような、高電流密度で且つ集束特性の良好な性能の優れた電子源を提供することを目的とする。即ち、集束電極に与える電圧の影響をエミッタに及ぼさないような電子源の構造を与え、さらに、その高性能な電子源を搭載した陰極線管を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる電子源は、略円錐形状の電子放出部を有するカソード電極上に、開口部を形成して電子放出部を囲むように順に第1の絶縁層、カソード電極部から電子を引き出すための引き出し電極、第2の絶縁層、引き出された電子を集束するための集束電極が配置され、前記集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段を備え前記集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段が、カソード電極の略円錐形状の電子放出部の高さに対する引き出し電極の厚さの比が0.5以上の厚さの引き出し電極であることを規定するものである。
【0016】
また、集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段が、カソード電極の略円錐形状の電子放出部の高さに対する引き出し電極の厚さの比が1以上の厚さの引き出し電極であることを規定するものである。
【0018】
また、集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段が、カソード電極の略円錐形状の電子放出部の高さに対する第2の絶縁層の厚さの比が2.5以上の厚さの第2の絶縁層であることを規定するものである。
【0019】
また、集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段が、集束電極と引き出し電極(第1の引き出し電極)の間に第2の引き出し電極を備え、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを同電位とし、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを開口部の内面で接続したことであることを規定するものである。
【0020】
また、集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段が、集束電極と同一平面上で、かつ前記集束電極の開口部側に第2の引き出し電極を備えたことであることを規定するものである。
【0021】
また、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを同電位としたことを規定するものである。
【0022】
また、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを開口部の内面で接続したこと規定するものである。
【0023】
また、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを開口部の外部で接続したことを規定するものである。
【0024】
また、第2の引き出し電極に印加する電位は、引き出し電極(第1の引き出し電極)に印加する電位より高くしたことを規定するものである。
【0025】
また、この発明に係わる陰極線管は、真空容器内に、上記構成のいずれかの電子源と、該電子源から出射された電子線を集束する手段と、集束された電子線を蛍光体の所定の位置に偏向して導く手段とを備えたものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図について説明する。図1は実施の形態1による電子源の要部を示す断面図であり、図2は電極の結線状態を示す概略平面図である。図において、例えばガラス材からなる基板14上にカソード電極11を構成するシリコン基板を固着し、この表面を加工して、円錐状のフィールドエミッタ15を得る。電子源はこのエミッタを有する開口部10の周りの基板14上に、フィールドエミッタ15に電界を印加して電子を引き出す引き出し電極12、引き出された電子の向きを揃えるための電子レンズを形成する集束電極13がそれぞれ第1絶縁膜17、第2絶縁膜16を介して積層されている。なお、開口10とフィールドエミッタ15は、例えば7.5μmピッチで直径200μmの領域に配列されており、その数は図では省略しているが600個以上である。フィールドエミッタ15の先端は図1中に示したようにほぼ引き出し電極12の下面と同程度の高さにある。
【0028】
さらに、図2に示すように、集束電極13は上方から見ると中心部に開口10部すなわち電子放出領域のある直径400μmの円形となるように形成されている。ただし1ケ所、ボンディング端子(電極端子)23へ接続する線状の配線22が伸びて上部の空間に露出している。同様に引き出し電極12およびカソード電極11のボンディング端子(電極端子)19、18も空間に露出しており、これらの端子19、18と電極を接続する線状の配線21、20も引き出し電極12、カソード電極11の外側まで伸びている。さらに、ボンディング端子18、19、23には電圧を供給する導線26、24、25がそれぞれ接続されている。このように各電極11、12、13に給電する端子部を構成するボンディング用端子18、19、23や配線20、21、22や導線26、24、25の一部が電子放出空間側に露出している。
【0029】
次にこの電子源の動作について説明する。引き出し電極12にカソード電極11に対し+60〜+110Vの電圧を印加する。また、集束電極13にはカソード電極11に対し0〜+20Vの電圧を印加する。この際に、引き出し電極12が十分厚いため、エミッタ15先端の電界を低下させる集束電極13からの電界の影響を遮蔽することができ、集束電極13からの電界の影響を低減できる。図3は、引き出し電極(ゲート電極)の厚さとエミッタ先端から放出される電流との関係を示す、差分法を用いた電界解析結果である。横軸は引き出し電極(ゲート電極)12の厚さとエミッタ15の高さの比で、縦軸はエミッタ15先端から放出される電流値を集束電極13を用いない時の電流値を100%として規格化したものである。図中A点は、集束電極13を用い且つ、従来の膜厚条件(エミッタ高さ1μm、ゲート電極の厚さ0.3μm)での放出電流の比で、引き出し電極12の厚みを厚くすることでエミッタ15先端から放出される電流が増加することがわかる。例えば、引き出し電極(ゲート電極)12の厚さとエミッタ15の高さの比が2以上では放出電流を80%以上を確保できる。このように引き出し電極(ゲート電極)を厚くすることで、電流密度が高く集束特性の優れた電子線が得ることができる。
【0030】
一方、引き出し電極(ゲート電極)を厚くすると、図1におけるエミッタ間のピッチpが広がり、複数のエミッタを形成して電子源とする際の単位面積当たりのエミッタ数が減少する。そのため、複数のエミッタを形成して電子源として用いる場合、全てのエミッタからの放出電流の合計は、1個当たりのエミッタからの放出電流とエミッタの個数で決定される。図4には、集束作用があり放出電流の低下がないエミッタ群の総放出電流を100%としたときの、引き出し電極(ゲート電極)の厚さとエミッタとの高さの比に対する総放出電流の関係を示したものである。
【0031】
図3では、引き出し電極(ゲート電極)の厚さとエミッタとの高さの比が2以上でエミッタ1個当たりの放出電流を80%以上を確保でき、さらに、引き出し電極(ゲート電極)の厚さとエミッタとの高さの比が4で集束電極を用いない時のエミッタ群の総放出電流と同レベルまで確保できることが分かった。さらに、図4で示されるようにエミッタ群としては少なくとも引き出し電極(ゲート電極)の厚さとエミッタとの高さの比が1以上であれば、従来と同程度あるいはそれ以上の総放出電流を得られることがわかる。
【0032】
一方、総放出電流を向上させる方法として電極の材質や印加電圧を最適化する方法がある。例えば、文献”第7回真空マイクロエレクトロニクスに関する国際会議の論文集,7th International Vacuum Microelectronics Conference 1994 July p.405〜407”には、エミッタを陽極化成処理することにより、総放出電流が向上することが報告されている。即ち、総放出電流の低下分は電極の材質や印加電圧等の他のパラメータを適正化することで補填することが可能であり、図4において、少なくとも40%であれば、総放出電流を100%まで(2.5倍とする)補填することが可能である。即ち、引き出し電極(ゲート電極)の厚さとエミッタとの高さの比が0.5以上であれば、従来と同程度あるいはそれ以上の総放出電流を得ることが可能となる。
【0033】
また、引き出し電極(ゲート電極)の厚さは厚い方がよいが、電極の厚膜化もプロセス上難しく、さらに図4で厚くすると総電流は下降する傾向にある。エミッタ高さが1μmであれば10倍の10μm程度が限界であろう。さらに、電子源が薄型化され、エミッタが低くなると、図3での増加の傾きが緩やかとなり、図4においても増加の傾きが緩やかとなる。その場合、エミッタ高さに対して電極の厚さはさらに大きくする必要があり、その場合は10倍以上の可能性もある。また、エミッタ高さが1μmより1桁以上大となることは、電子源の薄型化に対して、またプロセス上困難であることから考慮しなくてもよい。
【0034】
図5に、引き出し電極の膜厚を従来の膜厚の0.3μmから3μm(この時エミッタの高さ1μm)に厚くした時のアノード電流の変化を調べた実験結果を示す。集束電極に印加する電圧を小さくしてもアノ−ド電流の低下は抑制され、電子源として十分な電流密度を確保することができた。また、従来の課題で説明した図30と併せると、印加電圧を小さくして電子線を集束させ且つ電流密度の高い電子源を提供することができた。
【0035】
なお、フィールドエミッタ15の先端から放出された電子は集束電極13の形成する電界により減速され、集束されて、電子源の外部に設けられた陽極方向へ放出される。
【0036】
さらに、上記実施の形態では複数のエミッタを有する電子源について説明したが、エミッタ自身は1つで1つの電子源を構成してもよい。
【0037】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2を図について説明する。図6は実施の形態2による電子源の要部を示す断面図である。図において、従来と異なるのは引き出し電極12と集束電極13の間の第2絶縁膜16の膜厚を十分厚くしている。
【0038】
次に、このように構成されたものにおける電子源の動作について説明する。引き出し電極12にカソード電極11に対し、例えば+60〜+110Vの電圧を印加する。また、集束電極13にはカソード電極11に対し、例えば0〜+20Vの電圧を印加する。この際に、エミッタ15先端の電界を低下させる集束電極13がエミッタ15から離れるために、エミッタ15先端への集束電極13からの電界の影響が低減できる。
【0039】
図7は、第2絶縁膜16の厚さとエミッタ15先端から放出される電流との関係を示す、差分法を用いた電界解析結果である。横軸は第2絶縁膜16の厚さとエミッタ15の高さの比で、縦軸はエミッタ15先端から放出される電流を集束電極13を用いない時の電流値を100%として規格化したものである。図中B点は、集束電極13を用い且つ、従来の膜厚条件(エミッタ高さ1μm、第2絶縁膜の厚さ1μm)での放出電流の比で、第2絶縁膜16の厚さを厚くすることでエミッタ15先端からの放出電流が増加することが分る。例えば、第2絶縁膜16の厚さとエミッタ15の高さの比が3以上で、従来10%以下であった放出電流を30%以上に確保できることがわかる。従って、実施の形態1と同様に集束電極に印加する電位を小さくして電子線を集束させても高電流密度の電子線を発生可能な電子源を提供することができる。
【0040】
一方、第2絶縁膜を厚くすると、図6におけるエミッタ間のピッチpが広がり、複数のエミッタを形成して電子源とする際の単位面積当たりのエミッタ数が減少する。そのため、複数のエミッタを形成して電子源として用いる場合、全てのエミッタからの放出電流の合計は、1個当たりのエミッタからの放出電流とエミッタの個数で決定される。図8には、集束作用があり放出電流の低下がないエミッタ群の総放出電流を100%としたときの、第2絶縁膜の厚さとエミッタの高さとの比に対する総放出電流の関係を示したものである。図8で示されるようにエミッタ群としては少なくとも第2絶縁膜の厚さとエミッタの高さとの比が2.5以上であれば、エミッタ群としての総電流は40%程度で飽和する。上記実施の形態1で述べたように、エミッタ群としての総電流は40%程度であれば、他のパラメータを適正化することで、総電流を100%まで補填することが可能である。従って第2絶縁膜の厚さは厚さはエミッタ高さが1μmであれば、2.5μmであればよい。なお、厚さの上限は厚膜化プロセスを考慮すると10倍の10μm程度であろう。
【0041】
さらに、電子源が薄型化され、エミッタの高さが低くなると、図7での増加の傾きが緩やかとなり、図8においても増加の傾きが緩やかとなる。その場合、エミッタ高さに対して電極の厚さはさらに大きくする必要があり、その場合は10倍以上の可能性もある。また、エミッタ高さが1μmより1桁以上大となることは、電子源の薄型化に対して、またプロセス上困難であることから考慮しなくてもよい。エミッタ高さが1μmより大きくなると図7、8共に傾きが急俊になりエミッタ高さに対する第2絶縁膜の厚さの比は2.5よりも小さくてよい。
【0042】
なお、実施の形態1と同様に、エミッタ自身は1つで1個の電子源を構成してもよい。
【0043】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3を図について説明する。図9は実施の形態3による電子源の要部を示す断面図であり、図10は電極の結線状態を示す概略平面図である。図において、12aは第2の引き出し電極であり、第1の引き出し電極12と集束電極13の間にそれぞれ第2絶縁膜16、第3絶縁膜36を介して設けた。さらに、図10に示すように、第2の引き出し電極12aは1ヶ所より、第2の引き出し電極12aに給電する端子部を構成するボンディング端子(電極端子)19aへ接続する線状の配線21aが伸びて上部の空間に露出している。さらに、ボンディング端子19aには電圧を供給する導線24aが接続されている。
【0044】
次に、このように構成されたものにおける電子源の動作について説明する。第1の引き出し電極12にカソード電極11に対し、例えば+60〜+110Vの電圧を印加する。また、集束電極13にはカソード電極11に対し、例えば0〜+20Vの電圧を印加する。第2の引き出し電極12aには少なくとも集束電極13より高く第1の引出し電極12より低い電位、例えば+50Vを印加する。すると、エミッタ15先端近傍の電界強度は、第2の引き出し電極12aが集束電極13の電界強度の影響に対して遮蔽の役目を果たし、十分な電界強度が得られる。従って、実施の形態1、2と同様に集束電極に印加する電位を小さくして電子線を集束させても高電流密度の電子線を発生可能な電子源を提供することができる。このように、多層にすることで実施の形態1、2にように各層の厚さを従来と比べて極端に厚くする必要がないため、それぞれの膜を厚膜化することで生じる問題、例えば、膜内の内部応力等を無視することが可能となる。
【0045】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4を図について説明する。図11は実施の形態4による電子源の要部を示す断面図であり、図12は電極の結線状態を示す概略平面図である。実施の形態3では、第2の引き出し電極12aに印加する電位を第1の引き出し電極12と集束電極13とに印加する電位の中間的な電位としたが、本実施の形態4では外部回路で第1の引き出し電極12と第2の引き出し電極12aとを導通させ、同電位とした。図11において、導通部を構成する外部回路は各電極と同一基板上に形成されており、38はボンディング端子部に設けられた電極端子であり、第1の引き出し電極12と第2の引き出し電極12aを開口部10の外部で電気的に短絡させている。
【0046】
このように構成された電子源に対し、第1の引き出し電極12および第2の引き出し電極12aにはカソード電極11に対し、例えば+60〜+110Vの電圧を印加し、集束電極13にはカソード電極11に対し、例えば0〜+20Vの電圧を印加する。
【0047】
このような構成にすれば、実施の形態3と同様、各層の厚さを薄くすることができるので各膜を厚くすることで生じる問題、例えば膜内の内部応力や剥離等を無視することができる。また、図12に示すように第1の引き出し電極12と第2の引き出し電極12aの電極端子38が共通となるので、電極端子数を減らすことができ、電極端子等からの非対称電界の影響を小さくすることができる。さらに、電源の数も少なくてすみ、簡便な構成で、高性能の電子源が得られる。
【0048】
なお、図11では第1の引き出し電極と第2の引き出し電極を、各電極と同一基板上に設けた外部回路において短絡させたが、電源と電極端子との間の外部回路(基板の外)で短絡させてもよい。このようにすれば電極端子数は減らないが製造が容易となる。
また、第1の引き出し電極と第2の引き出し電極を配線21、21aを通さず、直接、電極内部で短絡させてもよい。このようにすれば配線21、21aが一本となり、より簡便な構成となる。
【0049】
なお、図13はエミッタ高さに対する引き出し電極の膜厚の比とエミッタ先端の電界強度との関係を示したものであり、実施の形態1における引き出し電極のを2分して第1及び第2の引き出し電極とし、第2の引き出し電極を従来通りの厚さの第2絶縁膜の中間に設け(絶縁膜は図11中の第2絶縁膜16と第3絶縁膜36に分離)、第1及び第2の引き出し電極に同電位を印加した時の本実施の形態の第2の引き出し電極を採用した3段電極(2段の引き出し電極と1段の集束電極)の効果を示したものである。エミッタ高さに対する引き出し電極の膜厚の比が2の時、実施の形態1と同程度の効果があることが確認された。ここで、3段電極においては引き出し電極の厚さとは、第1及び第2の引き出し電極の厚さと第2絶縁膜との和であるから、各層の厚さは実施の形態1と比べて小さくすることができる。また、第1及び第2の引き出し電極に印加する電位を調整すれば、第1及び第2の引き出し電極の厚さを厚くする必要はない。
【0050】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5を図について説明する。図14は実施の形態5による電子源の要部を示す断面図である。図において、第2の引き出し電極12aを第1の引き出し電極12と集束電極13の間にそれぞれ絶縁膜16、36を介して設け、開口部10の内壁で第1の引き出し電極12及び第2の引き出し電極12aを接続させるための電極面37を設けた。
【0051】
このような構成にすれば、外部回路で第1の引き出し電極12及び第2の引き出し電極12aを接続させる必要はなく、構造が簡単になる。さらに、引き出し電極に与える電位の影響を開口部の内部に形成される電界に与え易く、カソード電極先端の電界の低下を防止でき、電流密度が高く集束特性の優れた電子線が得られる。
【0052】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6を図について説明する。実施の形態6による電子源の構造は図9及び図10に示した実施の形態3のものと同様であるが、各電極に印加される電圧が異なる。
【0053】
この電子源の動作について説明する。図9において、第1の引き出し電極12にはカソード電極11に対し、例えば+60〜+110Vの電圧を印加する。第2の引き出し電極12aには第1の引き出し電極12より高い電圧、例えばカソード電極11に対し+80〜+160Vを印加する。また、集束電極13にはカソード電極11に対し、例えば+20〜+80Vを印加する。この際に、エミッタ15先端の電界を低下させる集束電極13からの電界の影響を第2の引き出し電極12aに印加した電圧により遮蔽することができ、集束電極13自体もエミッタ15から離れるためにエミッタ15先端への集束電極13からの電界の影響も低減できる。エミッタ15には第1の引き出し電極12に印加した電圧により電子放出に必要となる電界が生じるので電子が放出される。この方法を用いることでエミッタ15の先端から放出された電子は集束電極13の形成する電界により減速され、集束されて、電子源の外に設けられた陽極へ向けて放出される。
【0054】
このように、第1の引き出し電極12に与える電圧より第2の引き出し電極12aに与える電圧を高くすることにより、第2絶縁膜16を上記実施の形態3〜5のものより薄くして全体の膜厚を薄くし、第1の引き出し電極と第2の引き出し電極の間の距離を小さくしても、第1の引き出し電極と第2の引き出し電極を同電位としたものと同じように電子線を集束する効果が得られる。また、集束電極に加える電圧がカソード電極に対し高くなることにより、カソード電極先端の電界の低下の影響が小さくなる。
【0055】
実施の形態7.
この発明の実施の形態7を図について説明する。図15は実施の形態7による電子源の要部を示す断面図であり、図16は電極の結線状態を示す概略平面図である。図において、前記実施の形態3〜6の3段電極型と異なるのは第2の引き出し電極12aと集束電極13を同一平面内に形成し、第3絶縁膜を無くして2層電極型にしたことにある。
【0056】
次に、このように構成されたものにおける電子源の動作について説明する。第1の引き出し電極12にカソード電極11に対し、例えば+60〜+110Vの電圧を印加する。また、集束電極13にはカソード電極11に対し、例えば0〜+20Vの電圧を印加する。第2の引き出し電極12aには少なくとも集束電極13より高く第1の引出し電極12より低い電位、例えば+50Vを印加する。すると、エミッタ15先端近傍の電界強度は、第2の引き出し電極12aが集束電極13の電界強度の影響に対して遮蔽の役目を果たし、十分な電界強度が得られる。従って、実施の形態3と同様に集束電極に印加する電位を小さくして電子線を集束させても高電流密度の電子線を発生可能な電子源を提供することができる。
【0057】
このような構成にすれば、前記各実施の形態に比べて全膜厚を薄くすることができ、かつ各層の厚さを薄くすることができるので、全膜厚を厚くすることおよび各膜を厚くすることで生じる問題、例えば膜内の内部応力や剥離等を無視することができ、製造も容易となる。また、第2の引き出し電極12aと集束電極13の形状を同時に作成することになるので、従来の3段電極型と比べて製造工程数を削減することができる。以上の2点により製造コスト低減、歩留まり向上等が実現できる。
【0058】
なお、本実施の形態では第1の引き出し電極12に与える電圧より第2の引き出し電極12aに与える電圧を低くしたが、実施の形態4と同様に、外部回路により第1の引き出し電極12と第2の引き出し電極12aを短絡させ、例えば第1の引き出し電極12および第2の引き出し電極12aにはカソード電極11に対し+60〜+110Vの電圧を、集束電極13にはカソード電極11に対し0〜+20Vの電圧を印加することにより、簡便な構成で、高性能の電子源が得られる。
【0059】
さらに、図15において、実施の形態6と同様に、例えば、第1の引き出し電極12にはカソード電極11に対し+60〜+110Vの電圧を、第2の引き出し電極12aにはカソード電極11に対し+80〜+160Vを、集束電極13にはカソード電極11に対し+20〜+80Vを印加して、第1の引き出し電極12に与える電圧より第2の引き出し電極12aに与える電圧を高くすることにより、第2絶縁膜16がより薄くでき、全体の膜厚をより薄くすることができる。
【0060】
実施の形態8.
この発明の実施の形態を図について説明する。図17は実施の形態8による電子源の要部を示す断面図であり、図18は電極の結線状態を示す概略平面図である。図において、実施の形態7と異なるのは第2の引き出し電極12aとボンディング端子19aを接続する線状の配線21aの仕方が異なる。すなわち、図16に示すような配線パターンによって第2の引き出し電極12a及び集束電極13と同一平面上に配線21aを形成するのではなく、図17に示すように第2の引き出し電極12aと集束電極13とは別の平面に絶縁層35を介して配線21aを形成したことにある。
【0061】
このようにすることにより、集束電極13が配線21aにより分断されることがないので、集束電極13による電界の対称性が保たれ、集束特性の優れた電子線を発する電子源が得られる。
【0062】
実施の形態9.
この発明の実施の形態9を図について説明する。図19は実施の形態9による電子源の要部を示す断面図であり、図20は電極の結線状態を示す概略平面図である。本実施の形態は実施の形態7と同様、2層電極型であるが、図15に示す実施の形態7と異なるのは、第1の引き出し電極12と第2の引き出し電極12aを開口部10の内側で電極面37により電気的に接続し、同電位としたことにある。
【0063】
このような構成にすれば集束電極13に与えた電位による電子放出部先端の電界の低下を、第1の引き出し電極12と第2の引き出し電極12aによる電位により容易に遮蔽することができる。さらに、外部回路で第1の引き出し電極12と第2の引き出し電極12aを接続させる必要はなく、構造が簡単になり、且つ集束電極13による電界の対称性も保たれ、集束特性の優れた電子線を発する電子源が得られる。
【0064】
実施の形態10.
この発明の実施の形態10を図について説明する。図21は実施の形態1、2のように従来よりも各層の厚さを厚くして電子源を製造する時のプロセスを示したものである。図において、蒸着法により引き出し電極12や絶縁膜16、17を成膜する場合に開口部10形成用の円形マスク29の厚さを所定の厚さに設定した場合の製造プロセスの様子を示している。
【0065】
図中(a)において、例えばガラス材からなる基板14上のエミッタ材(例えばSi)28の上に従来より厚く所定の厚さに設計された円形マスク材(例えばSiO2 )30を成膜する。次に(b)においてエミッタ15成形用に円形マスク材30を円形に加工して円形マスク29を作製する。(c)において円形マスク29を用いてエミッタ材28を所望の形状のエミッタ15に加工する。(d)において、円形マスク29及び基板14のエミッタ15の形成されていない部分に同時に第1絶縁膜(例えばSiO2 )17、引き出し電極(例えばNb、Au、Pt等の金属、Auであれば外部端子との接続が良好である)12、第2絶縁膜(例えばSiO2 )16、集束電極(例えばNb、Au、Pt等の金属、Auであれば外部端子との接続が良好である)13を順に、蒸着法により形成する。この際に円形マスク29の保護によりエミッタ15に絶縁材や電極材が付着しない。(e)において円形マスク29と円形マスク上の不要蒸着物31をエッチング(例えばフッ酸溶液を用いる)により除去する。
【0066】
次に、円形マスクの厚さの設計方法について説明する。図22は円形マスクの厚さの違いによる電子源の形成の差を示したものである。図において、(a)は円形マスクの厚さを適正化しないで成膜した場合の状態を、(b)は円形マスクの厚さを適正化して成膜した場合の状態を示したものである。図において、deはエミッタの高さ、dmはマスクの厚さ、dは図21の(d)において成膜する場合の成膜中の膜(種類は問わない)の基板14からの厚さ、ro及びriはそれぞれdの高さにおける開口部10の径及びマスク29上の蒸着物の径、rは基板上での開口径を示す。成膜中基板14上の膜は開口部が広がるように成膜されていき、円形マスク29上の膜はマスクの径から広がるように成膜されていく。このとき、円形マスク29上の膜のマスクの径からの広がりが、基板14上の膜の広がりより大きいため、円形マスクを十分厚くしておかないと、図中(a)のように、成膜が完了しないうちに開口部がふさがれてしまい、図21の工程(e)で、不要蒸着物の除去が難しく電子源を作製することができなかった。そこで、図22中(b)のように円形マスクの厚さを十分厚くすればよい。
【0067】
次に、円形マスクの厚さの具体的な設定方法について説明する。図23は、基板からの高さdにおける開口部10の径ro及びマスク29上の蒸着物の径riの関係を示したグラフである。従来のエミッタの高さは1μm、マスクdm1 は0.3μm、基板上での開口径1.8μmにおいて、roとriの交点は約3.2μmである。第1絶縁膜17は約1μm、引き出し電極12は0.3μm、第2絶縁膜16は約1μm、集束電極13は0.3μmで膜厚の合計は2.6μmであるので、開口部を塞ぐことなく十分電子源の製作が可能である。一方、実施の形態2のように絶縁膜を設計すると、例えば第2絶縁膜16を3μmとすると膜厚の合計は4.6μmとなる。円形マスクの厚さを厚くしないと、電子源の製作はできない。そこで、図23よりdが4.6μm以上でroとriが交点を有するようにriをd方向に平行移動させる。その時のdm2 が設計マスク厚となる。本実施の形態ではマスクの厚さを1μm以上とすれば、開口部が塞がれることなく、電子源の製作が可能となることがわかる。
【0068】
また、実施の形態1で引き出し電極を3μmとすると、膜厚の合計は5.3μmとなる。このとき、グラフを外挿すると円形マスクの厚さは1.4μm以上必要であることがわかる。
【0069】
なお、本グラフの傾きは蒸着装置の種類等により若干異なるが、予めroとriの関係を求めておけば、異なる装置を使用しても同様な手法で最適な円形マスクの厚さを設計することができる。
【0070】
なお、上記実施の形態1〜10では基板14上にエミッタ15を形成していたが、1枚のSi基板を用い、これを加工してエミッタと基板を一体化させた構造であってもよい。
【0071】
実施の形態11.
この発明の実施の形態11を図について説明する。図24は例えば実施の形態10および実施の形態11による製造方法により製造された電子源を示す断面図である。実施の形態10のようにして形成された電子源(図24(a))においては、引き出し電極12の膜厚が従来の引き出し電極の膜厚より厚いため、成膜時における膜の回り込みやエッチングの影響等により段状になったり、この段の角部が尖った形状に成り易く、エミッタ15と引き出し電極12の間で異常放電が生じたり、電極間が短絡することによる初期不良が発生することがあった。本実施の形態においてはこれを防ぐために、実施の形態10の製造方法に加え、さらにウェットエッチング工程を施すものである。
【0072】
例えば、引き出し電極12、集束電極13、基板14、エミッタ15、第1絶縁膜17、第2絶縁膜16をそれぞれAu、Nb、Si、Si、SiO、SiOで作成する。形成後に例えば王水等で引き出し電極12のAuのみわずかにウェットエッチングして開口部における引き出し電極12の角部40を、エミッタ15に対して平坦面41となるようにし、尖った部分を無くし、引き出し電極形状に丸みを帯びさせて図24(b)の様な形状にさせる。
【0073】
このように尖りを無くし、丸みを帯びた形状にすることによりエミッタ15から電子を放出させるために引き出し電極12に電圧を印加したときに、エミッタ15と引き出し電極12の間での異常放電が生じにくくなる。
また、引き出し電極とカソード電極間に成膜時の回り込みによるAuの異物が存在し、それを介して電極間が短絡することによる初期不良が発生することがあるが、ウェットエッチングにより尖った部分とともに異物を除去することで初期不良を低減することができ、歩留まりが向上する。
【0074】
実施の形態12.
この発明の実施の形態12を図について説明する。図25は、実施の形態1〜11のいずれかに記載の電子源を用いた陰極線管の断面構成図である。図において、1つのあるいは複数のエミッタから構成される電子源51から出射された電子線53は、電子線の集束手段である電子銃52内でクロスオーバー点59を形成して偏向磁石54で偏向され、シャドウマスク55を介してアルミ膜57を有する蛍光体56の所望の位置に導かれる。陰極線管を構成するものは真空容器58内に収納されている。
【0075】
このように、実施の形態1〜11のいずれかの電子源を陰極線管に用いると電子源から出射された電子線が既に集束しているため、十分に集束された電子線が得られ、陰極線管としての解像度が向上する。
【0076】
実施の形態13.
この発明の別の実施の形態を図について説明する。図26は、実施の形態1〜11のいずれかに記載の電子源を用いた陰極線管の断面構成図である。図において、電子源51は3つの電子源51R、51G、51Bに分別され、それぞれの電子源から出射された電子線は、電子線の集束手段である電子銃52内でクロスオーバー点59(それぞれ59R、59G、59B)を形成して偏向磁石54で偏向され、シャドウマスク55を介してアルミ膜57を有する蛍光体56のそれぞれ赤の蛍光体部分、緑の蛍光体部分、青の蛍光体部分に導かれる。なお、本装置も真空容器内に収納されている。
【0077】
このように、実施の形態1〜11のいずれかの電子源を陰極線管に用いると電子源から出射された電子線が既に集束しているため、十分に集束された電子線が得られ、陰極線管としての解像度が向上し、本実施の形態ではカラー画像としての品質も向上し、性能の高い陰極線管を提供することが可能となる。
【0078】
なお、実施の形態12、13の電子銃内でのクロスオーバー点は十分な集束が可能であれば、形成されなくてもよい。
【0081】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、カソード電極の略円錐形状の電子放出部の高さに対する引き出し電極の厚さの比を0.5以上としたので、従来より引き出し電極が厚く集束電極と電子放出部との距離が確保でき、且つ引き出し電極の厚さが十分厚いため、電子放出部即ちカソード電極先端の電界の低下が防止でき、引き出し電極の電位を電子放出部に与え易くなり、電流密度が高く集束特性の優れた電子線を発する電子源を提供することができる。
【0082】
また、前記電子源において、カソード電極の略円錐形状の電子放出部の高さに対する引き出し電極の厚さの比を1以上としたので、従来より引き出し電極が厚く集束電極と電子放出部との距離が確保でき、且つ引き出し電極の厚さが十分厚いため、電子放出部即ちカソード電極先端の電界の低下が防止でき、引き出し電極の電位を電子放出部に与え易くなり、電流密度が高く集束特性の優れた電子線を発する電子源を提供することができる。さらに、エミッタ群を形成した時に、他のパラメータを操作することなく、総電流量を集束作用があり放出電流の低下がないエミッタ群と同レベルに確保でき、高性能な電子源を提供することができる。
【0084】
また、カソード電極の略円錐形状の電子放出部の高さに対する第2の絶縁層の厚さの比を2.5以上としたので、従来より引き出し電極が厚く集束電極と電子放出部との距離が確保され、電子放出部即ちカソード電極先端の電界の低下が防止でき、所定の引き出し電位で電子放出を容易に制御することができ、電流密度が高く集束特性の優れた電子線を発する電子源を提供することができる。
【0085】
また、集束電極と引き出し電極(第1の引き出し電極)の間に第2の引き出し電極を備え、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを同電位とし、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを開口部の内面で接続したので、厚い引き出し電極を用いた場合と同様に集束電極と電子放出部との距離が確保でき、且つ第1の引き出し電極と第2の引き出し電極とで形成される実効的な引き出し電極の厚さが十分厚く、また、引き出し電極に与える電位の影響を開口部の内部に形成される電界に与え易く、電子放出部即ちカソード電極先端の電界の低下を防止でき、電流密度が高く集束特性の優れた電子線を発する電子源を提供することができる。さらに、1つの電極の厚さを厚くする必要がないため、製造プロセスが容易となり、歩留りも向上する。
【0086】
また、集束電極と同一平面上で、かつ前記集束電極の開口部側に第2の引き出し電極を備えたので、電子放出部即ちカソード電極先端の電界の低下を防止でき、電流密度が高く集束特性の優れた電子線を発する電子源を提供することができる。さらに、全膜厚を薄くすることができ、製造が容易となり、製造コスト低減、歩留まり向上等が実現できる。
【0087】
また、前記電子源において、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを同電位としたので、厚い引き出し電極を用いた場合と同様に集束電極と電子放出部との距離が確保でき、且つ第1の引き出し電極と第2の引き出し電極とで形成される実効的な引き出し電極の厚さが十分厚いため、電子放出部即ちカソード電極先端の電界の低下を防止でき、引き出し電極の電位を電子放出部に与え易くなり、電流密度が高く集束特性の優れた電子線を発する電子源を提供することができる。さらに、1つの電極の厚さを厚くする必要がないため、製造プロセスが容易となり、歩留りも向上する。
【0088】
また、前記電子源において、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを開口部の内面で接続したので、引き出し電極に与える電位の影響を開口部の内部に形成される電界に与え易く、電子放出部即ちカソード電極先端の電界の低下を防止でき、電流密度が高く集束特性の優れた電子線を発する電子源を提供することができる。
【0089】
また、前記電子源において、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを開口部の外部で接続したので、電流密度が高く集束特性の優れた電子線を発する電子源を容易に製造することができる。
【0090】
また、前記電子源において、第2の引き出し電極に印加する電位を引き出し電極(第1の引き出し電極)に印加する電位より高くしたので、全体の膜厚を薄くし、第1の引き出し電極と第2の引き出し電極の間の距離を小さくしても、第1の引き出し電極と第2の引き出し電極を同電位としたものと同じように電子線を集束する効果が得られ、高性能な電子源を提供することができる。また、膜厚が薄くできることから、製造プロセスが容易となり、歩留まりも向上する。
【0091】
また、陰極線管において、前記電子源のいずれか1つの電子源を搭載したので、元々集束性が高く、高電流密度の電子線を電子源から発することができるため、制御性の高い陰極線管を構成することができ、高性能な陰極線管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1による電子源の要部の構成を示す断面図である。
【図2】実施の形態1による電子源の電極の結線状態を示す概略平面図である。
【図3】引き出し電極の厚さと放出電流の関係を示す電界解析結果のグラフである。
【図4】引き出し電極の厚さと総放出電流の関係を示す電界解析結果のグラフである。
【図5】引き出し電極の厚さを変化させた時の集束電極への印加電圧とアノード電流の関係を示すグラフである。
【図6】実施の形態2による電子源の要部の構成を示す断面図である。
【図7】第2絶縁膜の厚さと放出電流の関係を示す電界解析結果のグラフである。
【図8】第2絶縁膜の厚さと総放出電流の関係を示す電界解析結果のグラフである。
【図9】実施の形態3による電子源の要部の構成を示す断面図である。
【図10】実施の形態3による電子源の電極の結線状態を示す概略平面図である。
【図11】実施の形態4による電子源の要部の構成を示す断面図である。
【図12】実施の形態4による電子源の電極の結線状態を示す概略平面図である。
【図13】3段電極構造(第2の引き出し電極有り)の効果を示すグラフである。
【図14】実施の形態5による電子源の要部の構成を示す断面図である。
【図15】実施の形態7による電子源の要部の構成を示す断面図である。
【図16】実施の形態7による電子源の電極の結線状態を示す概略平面図である。
【図17】実施の形態8による電子源の要部の構成を示す断面図である。
【図18】実施の形態8による電子源の電極の結線状態を示す概略平面図である。
【図19】実施の形態9による電子源の要部の構成を示す断面図である。
【図20】実施の形態9による電子源の電極の結線状態を示す概略平面図である。
【図21】実施の形態10による電子源の製造プロセスを示す断面図である。
【図22】マスク厚さの違いによる電子源の製造の良否を示す模式図である。
【図23】マスク厚さを決定するための、マスク上の蒸着物の径と基板上の蒸着物の内径との関係を示すグラフである。
【図24】実施の形態10および実施の形態11による電子源の製造方法により製造された電子源を示す断面図である。
【図25】実施の形態1〜11のいずれかによる電子源を搭載した陰極線管の断面構成図である。
【図26】実施の形態1〜11のいずれかによる電子源を複数搭載した陰極線管の断面構成図である。
【図27】従来の電子源を示す断面構成図である。
【図28】従来の電子源の製造プロセスを示す断面図である。
【図29】従来の陰極線管を示す断面構成図である。
【図30】従来の電子源の集束電極への印加電圧とアノード電流、電子ビーム発散角の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 開口、 11 カソード電極、
12 引き出し電極(第1の引き出し電極)、12a 第2の引き出し電極、
13 集束電極、 14 基板、 15 エミッタ、
16 第2絶縁膜、 17 第1絶縁膜、 18 電極端子、
19 電極端子、 19a 電極端子、 20 配線、 21 配線、
21a 配線、 22 配線、 23 電極端子、 24 導線、
24a 導線、 25 導線、 26 導線、 28 エミッタ材、
29 円形マスク、 30 円形マスク材、 31 不要蒸着物、
35 絶縁層、 36 第3絶縁膜、 37 開口部内壁の電極面、
38 電極端子、 51、51R、51G、51B 電子源、
52 電子銃、53 電子線、 54 偏向磁石、 55 シャドウマスク、
56 蛍光体、 57 アルミ膜、 58 真空容器、
59、59R、59G、59B クロスオーバー点、
100 電子線、 101 カソード電極(基板)、 101a 酸化膜、
102 引き出し電極、 103 集束電極、 104 エミッタ、
105 絶縁膜、 106 絶縁膜、 107 第3絶縁膜、
108 加速電極、 109 引き出し電極用電源、
110 集束電極用電源、 111 加速電極用電源、
112 マスク、 113a、113b フォトレジスト、
121 フィールドエミッタからなるカソード、
122 アノード電極、 123 アノード電極、 124 電子レンズ、
125 電子レンズ、 126 コンバージェンス電極、
127 クロスオーバー点、 128 偏向マグネット、
129 シャドウマスク、 130 アルミ膜、
131 アルミバックつき蛍光体。

Claims (10)

  1. 略円錐形状の電子放出部を有するカソード電極上に、開口部を形成して電子放出部を囲むように順に第1の絶縁層、カソード電極部から電子を引き出すための引き出し電極、第2の絶縁層、引き出された電子を集束するための集束電極が配置され、前記集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段を備えた電子源において、集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段が、カソード電極の略円錐形状の電子放出部の高さに対する引き出し電極の厚さの比が0.5以上の厚さの引き出し電極であることを特徴とする電子源。
  2. 集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段が、カソード電極の略円錐形状の電子放出部の高さに対する引き出し電極の厚さの比が1以上の厚さの引き出し電極であることを特徴とする請求項に記載の電子源。
  3. 略円錐形状の電子放出部を有するカソード電極上に、開口部を形成して電子放出部を囲むように順に第1の絶縁層、カソード電極部から電子を引き出すための引き出し電極、第2の絶縁層、引き出された電子を集束するための集束電極が配置され、前記集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段を備えた電子源において、集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段が、カソード電極の略円錐形状の電子放出部の高さに対する第2の絶縁層の厚さの比が2.5以上の厚さの第2の絶縁層であることを特徴とする電子源。
  4. 略円錐形状の電子放出部を有するカソード電極上に、開口部を形成して電子放出部を囲むように順に第1の絶縁層、カソード電極部から電子を引き出すための引き出し電極(第 1 の引き出し電極)、第2の絶縁層、引き出された電子を集束するための集束電極が配置され、前記集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段を備えた電子源において、集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段が、集束電極と引き出し電極(第1の引き出し電極)の間に第2の引き出し電極を備え、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを同電位とし、引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを開口部の内面で接続したことを特徴とすることを特徴とする電子源。
  5. 略円錐形状の電子放出部を有するカソード電極上に、開口部を形成して電子放出部を囲むように順に第1の絶縁層、カソード電極部から電子を引き出すための引き出し電極(第 1 の引き出し電極)、第2の絶縁層、引き出された電子を集束するための集束電極が配置され、前記集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段を備えた電子源において、集束電極に印加された電位により形成された電界のカソード電極の電子放出部への影響を遮蔽する手段が、集束電極と同一平面上で、かつ前記集束電極の開口部側に第2の引き出し電極を備えたことを特徴とする電子源。
  6. 引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを同電位としたことを特徴とする請求項に記載の電子源。
  7. 引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを開口部の内面で接続したことを特徴とする請求項に記載の電子源。
  8. 引き出し電極(第1の引き出し電極)と第2の引き出し電極とを開口部の外部で接続したことを特徴とする請求項に記載の電子源。
  9. 第2の引き出し電極に印加する電位は、引き出し電極(第1の引き出し電極)に印加する電位より高くしたことを特徴とする請求項に記載の電子源。
  10. 真空容器内に、請求項1乃至のいずれか1項に記載の電子源と、該電子源から出射された電子線を集束する手段と、集束された電子線を蛍光体の所定の位置に偏向して導く手段とを備えたことを特徴とする陰極線管。
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