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JP3608296B2 - 低温デバイス装置 - Google Patents
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JP3608296B2 - 低温デバイス装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷凍機を用いた通信機器、科学機器や情報機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近通信機器、科学機器、情報機器等の高性能化に伴い、高性能化に重要な役割を持つデバイスを低温環境で使うことが検討されている。それは低温環境にすることにより、周知の如く極めて優れた性能を持つ超電導デバイスを使えるだけでなく半導体デバイスも低雑音化、高速化、高集積化が図れるためである。
【0003】
低温環境にするための冷却装置は開サイクルタイプと閉サイクルタイプの2種類に大別できる。開サイクルタイプはいわゆる寒剤冷却である液体窒素や液体ヘリウムを用いる液体冷媒冷却、固体アルゴンやメタン等の昇華潜熱を利用する固体冷媒冷却と宇宙空間の様な低温シンクを利用し受動的に機能する放射冷却がある。通常開サイクルタイプによるデバイスの冷却には電子情報通信学会、信学技報、MW−93−7、pp39(1993)と電子情報通信学会論文誌、Vol.J75−C−II、No.11、pp729(1992)に述べられている様に液体窒素中または液体ヘリウム中にデバイスを浸漬する方法が用いられている。但しこの方法は実験室レベルであり実用化に向けては大型の装置を除き検討されていない。
【0004】
閉サイクルタイプにはスターリングサイクル(ST)、ギフォード・マクマホンサイクル(GM)、ビルマイヤサイクル(VM)、ジュール・トムソンサイクル(JT)、ブレイトンサイクル(BR)、パルスチューブサイクル等がある。これらの構造は未踏科学技術協会新超伝導材料研究会の宇宙用超伝導技術の平成元年度調査研究(その2)p314〜330に述べられている。近年は使用場所の制約が少なく、冷却温度を容易に変えられる後者の閉サイクルタイプが注目されている。中でも冷却効率が最も高いスターリングサイクルは小型化が期待されている。この閉サイクルタイプによるデバイスの冷却は図8に示す様に閉サイクル冷凍機(シングルヘッド)の冷却ヘッド62にデバイス63を直接固定して行なうものである。またデバイス63の周囲即ちガラス65と外枠64の内部は真空に保持され断熱を行なっている。尚この方法は電子情報通信学会、信学技報、MW94−143、pp9(1995)に詳細が述べられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の閉サイクル冷却装置を用いた低温デバイス装置は以下の様な問題を有していた。
【0006】
(1)ピストン、クランク、ディスプレーサーなど高速で摺動する機構を持つスターリングサイクル、ギフォードマクマホンサイクル、ビルマイヤーサイクル等は冷却ヘッドに於ける振動が大きくデバイスの特性劣化を招いていた。特に冷却効率が高く小型化が可能で民生機器への普及も期待されるスターリングサイクルは振動が大きい。
【0007】
(2)閉サイクル冷凍機を小型化すると冷却ヘッドも小さくなるため冷却できるデバイスの面積が少なくなる。ちなみに現在市販されている小型冷凍機の冷却ヘッドの面積は1〜2cm程度である。故にデバイスの設計が制約される。例えば超電導フィルター、超電導ミクサ、超電導アンテナ、超電導共振器、超電導遅延回路等超電導の際だった特徴である抵抗ゼロ・完全反磁性・量子効果を活かし他のデバイスの追従を許さないデバイスを組み合わせると理想的な低温デバイス装置が得られるが小型冷凍機を用いると超電導アンテナ、超電導ミクサー、超電導フィルターの搭載が限度となる。ちなみにT.IEE Japan,Vol.113−D,No.8(1993)では超電導ミクサと超電導フィルターが第41回応用物理学関係連合講演会(1994年)、講演予稿集、29a−ZV−6では超電導アンテナと超電導ミクサのモノリシック化が報告されている。しかし超電導アンテナ、超電導ミクサー、超電導フィルターの3デバイスをモノリシック化した報告は無い。
【0008】
(3)閉サイクル冷凍機の冷却能力は冷媒の量に比例するため小型化すると冷却能力は低下する。その場合如何に熱浸入を抑えるかがポイントとなる。
【0009】
▲1▼(2)に於て超電導デバイスの優れていることを述べたが残念ながら臨界温度が高い酸化物超電導体を用いた超電導デバイスには顕著な増幅機能は無い。故に増幅機能を付加するには半導体デバイスを用いる必要があるが周知の如く半導体デバイスを用いると増幅用の半導体デバイスは発熱量が多いため冷却到達温度が高くなると共に発熱量の変動により温度制御が困難になる。超電導デバイスは動作温度に敏感であり特に臨界温度を越えると全くデバイスとして機能しないため致命的な問題となる。
【0010】
▲2▼室外で用いる場合は熱線(赤外線)と可視光線の影響がある。熱線がデバイスに照射されると温度の上昇が起こる。また可視光線のエネルギーは酸化物超電導体のエネルギーギャップより大きいため超電導デバイスに照射されるとクーパー対が破壊されデバイス機能を持たなくなる。これらの電磁波の遮断は金属でデバイスの周部を覆おうことにより可能であるが電磁波を検出または放射するデバイスには用いることは出来ない。
(4)小さい冷却ヘッドの限られた面積の中に特性の異なるデバイスをモノリシック化すると相互干渉により性能が低下することが多々見られる。その1つに送信デバイスと受信デバイスがある。送信デバイスの強い信号が近傍の受信デバイスに入ると当然ノイズとなり性能は大幅に低下する。
【0011】
(5)アンテナの利得Gは
G=η ×D
で表される。ここでηは放射効率、Dは指向性利得である。式から分かるように指向性を強くすることによりアンテナの利得は向上する。超電導体をアンテナに用いると、いわゆる超指向性アンテナが出来る。しかし指向性を強くすると電磁波の来る方位が分からない場合や移動体の様にアンテナの方向が刻々と変わる場合は効率の良い方向にアンテナを向けないと逆に利得は大幅に低下する事になる。
本発明は以上述べた問題点を解決するものであり、民生機器への普及も可能である小型で高性能な低温デバイス装置を得んとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、本発明の低温デバイス装置は
(1)振動を打ち消しあう方向に連結した冷却ヘッドを有する2台の閉サイクル型冷凍機、
前記閉サイクル型冷凍機の一方の前記冷却ヘッドに固定された送信用デバイス、
前記閉サイクル型冷凍機の他方の前記冷却ヘッドに固定された受信用デバイス、
前記送信用デバイスの周部と前記受信用デバイスの周部のそれぞれの一部に配置された電磁波を遮蔽する材料からなる外枠を有することを特徴とする。
(2)振動を打ち消しあう方向に連結した冷却ヘッドを有する複数の閉サイクル型冷凍機、
各々の冷却ヘッドに接合し、前記各々の冷却ヘッドを連結した、無酸素銅に金メッキを施した一体の冷却ステージ、
該一体の冷却ステージの表面に固定されたデバイス、
前記一体の冷却ステージの裏面に接合した蓄冷体、
を有することを特徴とする。
(3)内枠に接合したデバイス、
該デバイスを覆うように内枠に接合した可視光吸収フィルター、
前記内枠に接合した冷却ヘッド、
前記可視光吸収フィルター、前記内枠、及び前記冷却ヘッドの周部を高真空に維持した断熱室、
該断熱室上に配置された赤外線吸収フィルター、
を有する低温デバイス装置において、
前記可視光吸収フィルターと前記内枠とが金属シートを挟んで固定されたことを特徴とする。
(4)キャビティーを構成する内枠に固定された永久磁石、
該永久磁石に係合したローター、
該ローター上に固定したデバイス、
前記内枠に接合した冷却ヘッド、
前記キャビティーの内部に密閉し、前記デバイスの動作温度より低い沸点を有する不活性ガス、酸素、窒素、またはそれらの混合ガス、
前記キャビティーの周部を高真空に維持した断熱室、
を有することを特徴とする。
(5)アンテナを有する通信用デバイスを固定した回転機構、
前記通信用デバイスの周部に該通信用デバイスの動作温度より低い沸点を有する不活性ガス、酸素、窒素、またはそれらの混合ガスを密閉したキャビティー、
該キャビティーに接合した冷却ヘッド、
前記キャビティーの周部を高真空に維持した断熱室、
を有する低温デバイス装置において、
必要なアンテナの指向位置においてデバイスの回転を停止させる制御機能を設けたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、実施例に従って本発明を詳細に説明していく。
【0014】
(実施例1)
本発明よりなる低温デバイス装置の部分断面図を図1に示す。2つのインテグラル型スターリングサイクル1a、1bを互いに振動を打ち消し合う方向、本実施例ではほぼ圧縮機ピストンの動作方向に連結し2つの冷却ヘッド2a,2bを有する閉サイクル冷凍機を得る。振動を効率良く抑えるため単なる連結ではなく外部ケースを一体にしている。また作動時には振動を抑制させるため2つのインテグラル型スターリングサイクル1a、1bの振動が互いに干渉し減衰する振動モードになる様に圧縮機の駆動タイミングを同期させる。尚連結方向をほぼ圧縮機ピストンの動作方向としたのは圧縮機ピストンの振動がメインであるが摺動部は他にもあり、更に冷凍機の形状と重心も振動に影響を与えるため全体の振動バランスを考慮すると多少ずれるためである。インテグラル型はスプリット型に比べて小型化が可能な反面振動が大きいのが特徴であり、振動を抑えると有効な冷凍機となる。
【0015】
次に冷却ヘッド2aに超電導デバイス3aを一方の冷却ヘッド2bに半導体デバイス3bを低融点金属であるIn−Ga合金で接着固定する。ここでIn−Ga合金で接着するのは熱伝導性を良くして効率良く冷却するためである。次にそれぞれのデバイス3a、3bの周部をステンレススチールからなる外枠4aと石英ガラスからなる4bで覆う。通常この様に外枠を2種類に分けるのは電磁波検出を目的とした場合でありそれを除くと金属で一体に形成しても良い。次に内部を10−4Torr以下の圧力に真空引きした後密閉し高真空に保持した断熱室70を構成して低温デバイス装置を得る。断熱室70を高真空に維持するには極力部品を一体に作り、ハーメチックシールや溶接の様に気密性の高い接合方法により部品間を接合する。パッキンを用いる場合は排気システムを付加することが好ましい。尚図中では配線は省略している(以下の実施例も同様)。
【0016】
【表1】
Figure 0003608296
【0017】
得られた低温デバイス装置の冷却ヘッド2a,2bに於ける振動とデバイス動作時に於ける到達温度を測定した。振動は加速度を測定し評価した。結果をそれぞれ表1と表2に示した。
【0018】
表1から判るように本実施例は2つのインテグラル型スターリングサイクル1a、1bを互いに振動を抑制する方向に連結し且つ振動が干渉により減衰する駆動タイミングで作動しているため振動が大幅に少なくなっている。冷却ヘッドを1つにして圧縮機ピストン部のみ2つ連結する方法も考えられるが振動を発生する摺動部は圧縮機ピストンだけではなく振動は抑制されるが全体的にバランスが取れないため本実施例より効果は少ない。また圧縮機ピストンのみ2つ連結する方法は1つの圧縮ピストンは冷却に関係無いため無駄が生ずる。
【0019】
【表2】
Figure 0003608296
【0020】
表2から半導体デバイス側の方が到達温度が高い、即ち冷却されないことが判る。これは半導体デバイスを作動させることにより半導体デバイスが発熱しているためである。半導体デバイスを作動しない時は60Kであるため作動の有無により15Kの差が生まれ、これは動作温度のバラツキに繋がる。この温度のバラツキは半導体デバイスでは特性に殆ど影響を与えないが超伝導デバイスでは臨界電流が変わり、さらには非超電導体へと相転移する場合もあるため特性に大きな影響を与える。即ち同じ冷却ヘッドに超伝導デバイスと半導体デバイスを同時に搭載すると半導体デバイスの発熱により超伝導デバイスに悪い影響を与えるため、冷却能力の低い小型冷凍機に超伝導デバイスと半導体デバイスを搭載する場合は冷却ヘッドを別々にする必要がある。この様に本実施例は振動の抑制だけでなく超伝導デバイスと半導体デバイスの特徴を共に活かすことが出来る。
【0021】
(実施例2)
実施例1により得た冷凍機の冷却ヘッド2a、2bに5素子スーパーゲインアンテナ(超利得アンテナ)、超電導ミクサ等を形成した超電導デバイス3a、3bを指向方位を45°〜90°ずらして冷却ヘッド2a、2bにIn−Gaにより接合固定する。次に実施例1と同様に超電導デバイス3a、3bの周部をステンレススチールからなる外枠4aと石英ガラスからなる外枠4bで覆い、更に内部を10−4Torr以下の圧力に真空引きし断熱室70を構成して低温デバイス装置を得る。
【0022】
得られた通信用低温デバイス装置の指向性を図2に示す。左が超電導デバイス3a、右が超電導デバイス3bの指向性であり最大(外周円)で15dBである。図から判るように超利得アンテナの指向性は強く利得が高い反面超利得アンテナ単独では直角方向では逆に極めて利得が低くなる。それを本実施例の様に指向をずらして2つ配置することにより欠点を補うことが出来る。超利得アンテナは給電を逆にすると指向性を反転できるため180°の方向は問題ない。尚本実施例では2方向の指向性で説明しているが冷凍機を更に連結し多方向に超利得アンテナを配置すると更に効率を良くすることが出来る。
【0023】
また受けた電磁波の電界強度の強い方の超利得アンテナ、または通信する相手の位置が判っている場合最も指向の合った超利得アンテナを選択して用いるとより効率の良い通信が可能になる。更に人、装置の有る方向を避ける様に超利得アンテナを選択すると電磁波の存在する範囲を必要最小限にできるため最近の問題となっている電磁波による脳障害や電子機器の誤動作防止に有効となる。
【0024】
(実施例3)
実施例2と同様に実施例1により得た冷凍機の冷却ヘッド2a、2bに5素子スーパーゲインアンテナ(超利得アンテナ)、超電導ミクサ等を形成した超電導デバイス3a、3bを冷却ヘッド2a、2bにIn−Gaにより接合固定する。超電導デバイス3aは発信用デバイス、超電導デバイス3bは受信用デバイスである。次に超電導デバイス3a、3bの周部をステンレススチールからなる外枠4aと石英ガラスからなる4bで覆い、更に内部を10−4Torr以下の圧力に真空引きし断熱室70を構成して低温デバイス装置を得る。
【0025】
得られた低温デバイス装置の通信実験を電波暗室に於て行なったところ超伝導デバイス3aと3bには十分な間隔があるため互いの干渉による性能低下はなかった。また間隔が有るとシールドも容易に図れる。
【0026】
(実施例4)
本発明よりなる低温デバイス装置の部分断面図を図3に示す。2つのインテグラル型スターリングサイクルを互いに振動を打ち消し合う方向に連結し閉サイクル冷凍機10を得る。実施例1では外枠4aを取り付けるフランジは別々にあったが本実施例では一体となっている。
【0027】
次に冷却ヘッド12aと12bに無酸素銅に金メッキを施した冷却ステージ16をIn−Ga合金で接合し冷却ヘッド12aと12bを連結する。次に冷却ステージ16の裏面に高比熱金属からなる蓄冷体17を、表面に超電導デバイス13a、13bをIn−Ga合金で接合する。ここで冷却ステージ16に無酸素銅を用いたのは熱伝導性に優れた無酸素銅を用いることにより効率良く超電導デバイス13a、13bを冷却するためであり、金メッキは酸化による熱伝導率の低下、熱射出率の増加を抑制するためである。また蓄冷体17は外部からの熱浸入など温度ゆらぎによる冷却ステージ16の温度変動を抑制する働きをする。
【0028】
次に超電導デバイス13a、13bの周部をステンレススチールからなる外枠14aと石英ガラスからなる外枠14bで覆い、更に内部を10−4Torr以下の圧力に真空引きし断熱室70を構成して低温デバイス装置を得る。
【0029】
得られた低温デバイス装置の冷却ステージ16の77Kに於ける温度分布を電波暗室内で測定した。結果を1つの冷却ヘッドに本実施例と同一面積の冷却ステージ16を接合した比較例と共に表3に示した。
【0030】
【表3】
Figure 0003608296
【0031】
表から判るように本実施例によると広い面積を有する冷却ステージ16の温度分布を少なく出来る。即ち広い面積の超電導デバイス13a、13bを使うことが出来、超電導ミクサ、超電導アンテナ、超電導フィルター、超電導共振器、超電導遅延回路等のモノリシック化が可能になる。
【0032】
また振動を抑制するため必然的に長くなったスターリングサイクルの連結方向に冷却ステージ16を長くしてデバイスを搭載する面積を広くしているため空間を有効に利用しデバイスの搭載面積を稼ぐことが出来る。即ち小型化が図れる。
【0033】
以上の実施例ではスターリングサイクルを用い説明したがギフォードマクマホンサイクル、ビルマイヤーサイクル等ピストン、クランク、ディスプレーサーなど高速で摺動する機構を持つサイクルであれば効果は同じである。
【0034】
(実施例5)
本発明よりなる低温デバイス装置の部分断面図を図4に示す。冷却ヘッド22に接合した内枠28、内枠28に接合した超電導デバイス23、超電導デバイス23を覆うように内枠に28に接合した可視光吸収フィルター29a、更に其れらを覆うように形成した外枠24a、赤外線吸収フィルター(赤外線反射フィルターでも良い)29bと電磁波遮断層29cを形成した外枠24bと断熱室70により構成される。
【0035】
本実施例のポイントは次の通りである。スターリングサイクルの冷却ヘッド22に無酸素銅に金メッキを施した内枠28をIn−Ga合金で接合し、該内枠28の内部に超電導アンテナと超電導ミクサ等を形成した超電導デバイス23を同じくIn−Gaで接合する。更に超電導デバイス23を覆うように可視光吸収フィルター29aを内枠28に固定する。この可視光吸収フィルター29aは内枠28に固定することにより超電導デバイス23と同様に内枠28を通して冷却せしめられる。尚可視光吸収フィルター29aと内枠28を強固に接合すると可視光吸収フィルター29aが内枠28との線膨張係数の違いにより降温または昇温時に割れるため熱伝導性が良く軟らかい金属シートを可視光吸収フィルター29aと内枠28の間に挟み機械的に固定している。次に内枠28と可視光吸収フィルター29aの周部をステンレススチールからなる外枠24aと赤外線(熱線)吸収フィルター29bと電磁波遮断層29cを形成した石英ガラスからなる外枠24bで覆う。電磁波遮断層29cはAl、Ag、Cu等電磁波を遮断し且つ熱放射の射出率が少ない材料を蒸着して形成する。尚熱放射の射出率は鏡面で有るほど少ないが平坦性の良い石英ガラスに金属を蒸着すると良い鏡面が得られる。更に内部を10−4Torr以下の圧力に真空引きし断熱室70を構成して低温デバイス装置を得る。
【0036】
得られた低温デバイス装置の冷却ヘッドの到達温度と温度バラツキ、10GHzのマイクロ波を照射した時のシャピロステップの形状をオープンサイト(太陽下)に於て評価した。
【0037】
【表4】
Figure 0003608296
【0038】
結果を可視光吸収フィルター、赤外線吸収フィルター共に形成しない場合(比較例1)、内枠に可視光吸収フィルターのみ形成した場合(比較例2)、外枠に赤外線吸収フィルターのみ形成した場合(比較例3)、内枠に赤外線吸収フィルターのみ形成した場合(比較例4)、外枠に可視光吸収フィルターのみ形成した場合(比較例5)、内枠に赤外線吸収フィルター、外枠に可視光吸収フィルターを形成した場合(比較例6)、外枠に赤外線吸収フィルターと可視光吸収フィルターを形成した場合(比較例7)、金属の外枠で完全に覆った場合の比較例と共に表4に示した。尚表4の中の○は明瞭なシャピロステップ、△は鈍りがあるシャピロステップ、×はシャピロステップなしを示す。
【0039】
表に示す様に超電導デバイス23の周囲を冷却した可視光吸収フィルター29aで、更にその外周を断熱室70を介して赤外線吸収フィルター29bで覆うことにより太陽下でも超電導デバイス23の冷却温度を安定させ且つ明瞭なシャピロステップを得ることが出来る。この理由を説明する。先ず温度バラツキに関しては、実施例、比較例3、比較例7の様に赤外線吸収フィルター29bを断熱室70の外に配したものが最も温度バラツキが少なく太陽光を全く通さない金属の外枠のみからなる比較例8とほぼ同等となっている。比較例4と比較例6の様に断熱室70の内部に赤外線吸収フィルターを配したものは赤外線吸収フィルターを全く用いないものより温度バラツキは少ないものの効果は顕著ではない。これは赤外線吸収フィルターは赤外線を吸収して赤外線を透過させないが自体は赤外線を吸収することにより発熱する、その時前者は断熱室70により熱の内部への浸入を抑制するが後者は熱が遮断されないため内枠28を通して冷却ヘッド22や超電導デバイス23の温度を変化させるためである。シャピロステップの波形に関しては可視光吸収フィルターを用いない比較例1、比較例3、比較例4はシャピロステップが見られない。これは超電導体のエネルギーギャップより大きいエネルギー(hν)の可視光が超電導デバイス23に入射することにより超電導体のクーパー対が破壊され量子効果が現れないためである。また可視光吸収フィルターを用いたものでも実施例2、実施例5、実施例6、実施例7は明瞭なシャピロステップが現れていない。これは太陽光の赤外線入射による温度上昇により超電導状態が不安定になったためと外枠や外枠に形成したフィルターからの熱放射によるものである。物体から射出される電磁波の波長は
λ=b/T b=0.289cmK T:絶対温度
で表わされる。この式から太陽下に於ける外枠またフィルターの温度50℃を当てはめると数μmの電磁波が射出されていることが判る。石英ガラスやフィルターの射出率は高い(ちなみに石英ガラスの射出率は約0.95)ためこの電磁波の放射がシャピロステップの波形を鈍らしているものと考えられる。
【0040】
またそのエネルギーは
S=σT σ=5.67×10ー12W・cm−2deg−4
で表される。この式から温度の4乗に比例して低くなることが判る。即ち実施例の様にフィルターを冷却することにより射出される電磁波の波長は長波長になり、さらにエネルギーが極めて少なくなる。実施例では冷却しているのは可視光吸収フィルター29aであるが可視光吸収フィルター29aの用いられているガラス基板はちょうど外枠24bや外枠24bに形成した赤外線吸収フィルター29b等からの電磁波を吸収するため明瞭なシャピロステップが出ているものと考えられる。以上の点を鑑みると断熱室70の外に赤外線吸収フィルター29bを断熱室70の内に冷却した可視光吸収フィルター29aを形成することが最も良いことが判る。
【0041】
(実施例6)
本発明よりなる低温デバイス装置の部分断面図を図5に示す。冷却ヘッド32に接合した内枠38aと該内枠38aに接合した内枠38bにより形成したキャビティー39、該キャビティー39の内部に内枠38aに固定された永久磁石41、永久磁石に係合したローター42、ローター42上に固定された超電導デバイス33、超電導デバイス33周囲を覆う熱伝導ガス40、そしてキャビティー39の周部に配した外枠34a、34b、断熱室70より構成される。
【0042】
本実施例のポイントは次の通りである。Ni−Fe系合金(パーマロイ)、Co−Fe系合金(パーメンジュール)、純鉄など高透磁率材料からなる円筒状の内枠38aの内面に多極着磁をしたリング状Pr−Fe−B系の永久磁石41を固定する。ここで内枠38aに高透磁率材料を用いたのは超電導デバイス33への磁束の漏洩を極力少なくするためであり、Pr−Fe−B系永久磁石を用いたのは多分野に応用されているNd−Fe−B系永久磁石は低温領域に於てスピンの再配列があり冷却することにより性能が低下するがPr−Fe−B系永久磁石は相転移がなく冷却する程磁気性能は高くなるためである。次に永久磁石41にローター42を係合する。ローター42にはヨークにコイルが巻かれているためコイルに制御電流を流すことにより所定の条件で回転するステップモーターとなる。尚回転をより精密に制御する場合はエンコーダーを用いてもよい。次にローター42に超電導デバイス33を固定する。ローター42他からの磁束の漏洩があり超電導デバイス33に影響を与える場合は漏洩場所に超電導体を配すると磁束を排除出来る。また回転機構をステップモーターで説明したが、これに限定されるものではなく、例えば超電導体のピンニング効果による磁石化やマイスナー効果による磁気浮上を利用すると回転抵抗の少ないアクチュエーターを形成出来る。
【0043】
次に石英ガラスから成る内枠38bを内枠38aに接合しキャビティー39を形成する。更にキャビティー39の内部を真空引きした後にHe、Ne、Ar、酸素、窒素単体またはそれらの混合ガスからなる熱伝導ガス40を注入し密閉する。但し用いる熱伝導ガス40は超電導デバイス33の動作温度より低い沸点を有する必要がある。熱伝導ガス40の中では沸点が低く熱伝導性の優れたHeやNeが好ましい。次にキャビティー39を冷凍機の冷却ヘッド32にIn−Gaで接合し更に前記実施例と同様に周囲をステンレススチールからなる外枠35aと石英からなる外枠35b、断熱室70で覆い低温デバイス装置を得る。
【0044】
超利得アンテナは指向性が強く利得が高い反面指向に対して直角方向は極めて利得が低いことを前述したが本実施例では超電導デバイス33を自由に回転出来るため必要な時に必要な方向に自由に指向を調整することが出来る。即ち電磁波の受信方向に関係なく超利得アンテナの利点を最大限に引き出すことが出来る。
【0045】
尚本実施例では冷却に閉サイクル冷凍機を用いているがキャビティー39と断熱室70の間に液体窒素や液体ヘリウムを入れる開サイクル冷凍機を用いても何等差し支えない。
【0046】
(実施例7)
本発明よりなる低温デバイス装置の部分断面図を図6に示す。本実施例のポイントは電磁波を透過する石英からなる外枠54bをドーム状に形成したことと該ドームの半径中心部かその近傍にデバイス53を配したことにある。デバイス53が大面積であり様々な素子を形成してある場合はデバイス53の中でも電磁波を直接検出するアンテナをドームの半径中心近傍に配する。
【0047】
前述の実施例(1〜6)や従来例では電磁波を透過する外枠4b、14b、24b、34b、65にフラットなガラスを用いている。しかしフラットな場合電磁波の入射してくる角度が変わると電磁波の反射率と透過するガラスの厚さが異な
りアンテナに入る電磁波の電界強度が変わる。特にガラス面に対して垂直に入射する場合は良いが低角度になると電磁波の電界強度は少なくなる。その点本実施例の用に電磁波を透過する外枠54bをドーム状に形成し、ドームの半径中心部かその近傍にアンテナを配したことにより電磁波の入射する角度が変わっても反射率やガラスの厚さ等電磁波の入射条件が一定になり安定した電界強度となる。尚図6ではドーム状にしたのは外枠54bのみであるがフィルターを用いる場合はフィルターもドーム状にした方が好ましい。また図7に示す用にレンズ(図7では超半球レンズ)を用いて電磁波を収束させる場合はアンテナではなくレンズをドームの半径中心部かその近傍に配する。
【0048】
【発明の効果】
本発明は、以上説明した様に構成されているので、以下に記載される様な効果を奏する。
【0049】
2台以上の閉サイクル型冷凍機を互いに振動を打ち消し合う方向に連結したことにより低い振動の冷凍機を得られ、それに搭載するデバイスの振動による性能の低下を抑制出来る。また振動を抑制するためだけの連結ではなく各々の冷却ヘッドには特性の異なるデバイスを搭載しているため下記の様に各々のデバイスの特徴を最大限に引き出すことが出来る。(1)送信用デバイスと受信用デバイスを別々の冷却ヘッドに搭載したことにより互いの干渉による性能の低下を抑制出来る。(2)半導体デバイスと超電導デバイスを別々の冷却ヘッドに搭載したことにより冷却能力の少ない小型冷凍機でも超電導デバイスは半導体デバイスの発熱による影響を受けないため性能の低下はない。(3)指向性の異なるアンテナをそれぞれの冷却ヘッドに配したため、例えば指向性の強い超利得アンテナを用いても多方位に渡り利用出来る。また都度必要な指向のアンテナを選択すると効率の良い通信が可能になるだけでなく人や装置の有る方向を避ける様にアンテナを選択すると電磁波の存在する範囲を必要最小限にできるため最近の問題となっている電磁波による脳障害や電子機器の誤動作防止に有効となる。
【0050】
またそれぞれの冷却ヘッドを冷却ステージにより連結することにより温度分布の少ない広い面積の冷却ステージを確保出来る。即ち広い面積のデバイスを使うことが出来、例えば超電導デバイスでは超電導ミクサ、超電導アンテナ、超電導フィルター、超電導共振器、超電導遅延回路等のモノリシック化が可能になる。
【0051】
また振動を抑制するため必然的に長くなったサイクルの連結方向に冷却ステージを長くしてデバイスを搭載する面積を広くしているため空間を有効に利用して小型化が図れる。
【0052】
また超電導デバイスの周囲を超電導デバイスと同様に冷却した可視光吸収フィルターでさらにその外周を断熱室を介して赤外線吸収フィルターで覆ったことにより冷却能力の低い小型冷凍機を用いても安定して冷却でき動作温度に敏感な超電導デバイスを安定して使うことが出来る。更に輻射など必要外の電磁波の超電導デバイスへの入射を抑制できるため鈍りのない出力信号波形を得ることが出来る。
【0053】
また超電導デバイスを自由に回転出来るため必要な時に必要な方向に自由に指向を調整することが出来る。即ち電磁波の受信方向に関係なく超利得アンテナの利点を最大限に引き出すことが出来る。将来イリジューム計画、テレデシック計画など衛星通信が計画されているがこれらは低軌道衛星で静止衛星ではなく追尾の必要がある。本実施例によればそれらに用いる通信装置として容易に対応がとれる。
【0054】
更に電磁波を透過し真空断熱を行なう外枠と所定の電磁波を反射または吸収するフィルターをドーム状に形成し、そのドームの径中心近傍にアンテナ、ミクサまたは電磁波を収束するレンズを配したことにより検出部への電磁波の照射を均一にし利得の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明よりなる第1の実施例に於ける低温デバイス装置の部分断面図。
【図2】本発明よりなる第2の実施例に於ける低温デバイス装置のアンテナの指向性を示す図。
【図3】本発明よりなる第4の実施例に於ける低温デバイス装置の部分断面図。
【図4】本発明よりなる第5の実施例に於ける低温デバイス装置の部分断面図。
【図5】本発明よりなる第6の実施例に於ける低温デバイス装置の部分断面図。
【図6】本発明よりなる第7の実施例に於ける低温デバイス装置の部分断面図。
【図7】本発明よりなる第7の実施例のレンズを用いた場合に於ける低温デバイス装置の部分断面図。
【図8】従来の低温デバイス装置の部分断面図。
【符号の説明】
1a、1b・・・閉サイクル冷凍機
2a、2b、12a、12b、22、32、52、62・・・冷却ヘッド
3a、3b、13a、13b、23、33、53、63・・・デバイス
4a、4b、14a、14b、24a、24b、34a、34b、54a、54b、64・・・外枠
16・・・冷却ステージ
17・・・蓄冷剤
28、38a,38b・・・内枠
29a・・・可視光吸収フィルター
29b・・・赤外線吸収フィルター
29c・・・遮断層
39・・・キャビティー
40・・・熱伝導ガス
41・・・永久磁石
42・・・ローター
65・・・ガラス
70・・・断熱室
80・・・ドーム半径の中心
90・・・レンズ
r ・・・ドーム内半径

Claims (5)

  1. 振動を打ち消しあう方向に連結した冷却ヘッドを有する2台の閉サイクル型冷凍機、
    前記閉サイクル型冷凍機の一方の前記冷却ヘッドに固定された送信用デバイス、
    前記閉サイクル型冷凍機の他方の前記冷却ヘッドに固定された受信用デバイス、
    前記送信用デバイスの周部と前記受信用デバイスの周部のそれぞれの一部に配置された電磁波を遮蔽する材料からなる外枠を有することを特徴とする低温デバイス装置。
  2. 振動を打ち消しあう方向に連結した冷却ヘッドを有する複数の閉サイクル型冷凍機、
    各々の冷却ヘッドに接合し、前記各々の冷却ヘッドを連結した、無酸素銅に金メッキを施した一体の冷却ステージ、
    該一体の冷却ステージの表面に固定されたデバイス、
    前記一体の冷却ステージの裏面に接合した蓄冷体、
    を有することを特徴とする低温デバイス装置。
  3. 内枠に接合したデバイス、
    該デバイスを覆うように内枠に接合した可視光吸収フィルター、
    前記内枠に接合した冷却ヘッド、
    前記可視光吸収フィルター、前記内枠、及び前記冷却ヘッドの周部を高真空に維持した断熱室、
    該断熱室上に配置された赤外線吸収フィルター、
    を有する低温デバイス装置において、
    前記可視光吸収フィルターと前記内枠とが金属シートを挟んで固定されたことを特徴とする低温デバイス装置。
  4. キャビティーを構成する内枠に固定された永久磁石、
    該永久磁石に係合したローター、
    該ローター上に固定したデバイス、
    前記内枠に接合した冷却ヘッド、
    前記キャビティーの内部に密閉し、前記デバイスの動作温度より低い沸点を有する不活性ガス、酸素、窒素、またはそれらの混合ガス、
    前記キャビティーの周部を高真空に維持した断熱室、
    を有することを特徴とする低温デバイス装置。
  5. アンテナを有する通信用デバイスを固定した回転機構、
    前記通信用デバイスの周部に該通信用デバイスの動作温度より低い沸点を有する不活性ガス、酸素、窒素、またはそれらの混合ガスを密閉したキャビティー、
    該キャビティーに接合した冷却ヘッド、
    前記キャビティーの周部を高真空に維持した断熱室、
    を有する低温デバイス装置において、
    必要なアンテナの指向位置においてデバイスの回転を停止させる制御機能を設けたことを特徴とする低温デバイス装置。
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