JP3608335B2 - 高炉主樋メタルライン用黒鉛含有不定形耐火材料 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉主樋のメタルラインに用いられる不定形耐火物であって、耐食性、特に樋材表面近傍の溶銑流速の大きい領域での耐食性に優れた黒鉛含有不定形耐火材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高炉においては、銑鉄製造コストの削減という観点から、長時間出銑による耐火材料の原単位削減が指向されている。とりわけ、溶銑を高炉から輸送用容器へ移送するための樋を形成する樋材についての改良が強く求められている。なかでも、溶銑と溶融スラグを同時に流すための主樋(出銑樋)では、スラグおよびメタルの両方に対する耐食性を考慮しなければならず、最も改良の必要な材料である。
【0003】
こうした主樋用耐火物としては、従来、スラグ−空気の界面近傍(スラグライン)では高 SiC系耐火物を用い、一方スラグ−メタルの界面近傍(メタルライン)ではAl2O3 −SiC 系耐火物、Al2O3 −スピネル−SiC 系耐火物などが用いられている。その他、単に耐食性の向上を目的として開発されたものとしては、特開平8−183666号公報、特開平8−183667号公報で開示されているような、黒鉛含有不定形耐火物がある。
【0004】
これらの黒鉛含有不定形耐火物は、耐火物中にスラグやメタルとの濡れ性が悪い黒鉛を分散させることにより、前記部位において、耐火物中の溶出成分が溶銑、溶滓と接触する機会を低減するように工夫されたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、高炉主樋では局所的な損耗が見られる。すなわち、上記したスラグラインやメタルラインのような界面では、スラグ内にマランゴニ対流が生じるため、スラグ界面に樋の内壁から直角方向へのスラグ流れを発生し、これにより樋材耐火物成分の溶出が起こるという現象が見られる。また、主樋を溶銑・滓の流れ方向でみたときには、高炉から排出したスラグが主樋内部に流入する出銑落ち口付近が損耗の極大部となる。これは、上記出銑落ち口部位においては溶銑・滓が急激に流れ込むために、上記マランゴニ対流を一層促進すると共に、溶銑流速に起因する機械的損耗も加わるために極大になると考えられている。
【0006】
この点、上記黒鉛含有不定形耐火物では、黒鉛と溶銑・溶滓との濡れ性の悪さを利用することにより、耐火物成分の溶出を阻止することにて、樋材の耐用性を向上させたものである。しかし、黒鉛含有耐火物は、機械的強度が低いために、出銑落ち口のような溶銑速度の大きい部位においては、必ずしも耐用性が十分であるとは言えなかった。これは黒鉛は自己焼結性がないのと、黒鉛自身の存在が他の酸化物成分の焼結を阻害するため、耐火物全体としての強度が低くなってしまうからである。これを防止するために通常は、一般的なガラス形成を利用した酸化物系の焼結助材の添加や超微粉酸化物を添加して自己焼結性を高めるのが普通である。
【0007】
しかしながら、ガラスボンドでは、室温強度の発現はできても高炉主樋が使用されるような高温域での強度は発現せず、また超微粉を添加しても黒鉛のない場合より強度は低くなってしまう。
そこで、本発明の目的は、室温強度のみならず高温強度(高炉主樋での使用温度条件である1500℃程度の条件での熱間強度)に優れ、溶銑流速の大きい部位においても十分に耐用性を発揮できる高炉主樋メタルライン用不定形耐火材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した高炉主樋使用温度域における耐火物の熱間強度を発現させることのできる耐火材料組成、および焼成後の耐火物のマトリックス構造を研究するなかで、耐火物マトリックスを強化するには、針状晶のβ−SiC のネットワークを形成させることにより、熱間強度の向上を図ることが有効であるとの知見を得た。そして、熱間強度に優れるという SiCの特性を十分に発揮させるためには、Siを極めて微細な粒度で不定形耐火材料(原料)中に添加することで、耐火物マトリックス中に均一で微細な反応β−SiC のネットワークを形成させることが有効であることもわかった。さらに、Si表面に生成するSiO2による耐食性低下が生じないようにSiの添加比率を調整することも有効であるとの知見を得た。本発明は、こうした知見をもとに開発したものである。
【0009】
即ち、本発明は、黒鉛を3〜20wt%、粒径が 80 μ m 以下の微粉けい素を0.8〜6.0wt%以下の比率で含有する不定形耐火物であって、1500℃での熱間3点曲げ強度が10kg/cm2以上の特性を示すことを特徴とする高炉主樋メタルライン用黒鉛含有不定形耐火材料を提供するものである。
本発明においては、樋材使用温度域において、耐火物マトリックス中には3次元網目状の反応SiCが晶出するものであることが望ましい。
また、本発明においては、マトリックス中に針状晶のβ−SiCを含むことが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる不定形耐火材料中には、後述する骨材などとともに、種々の黒鉛を配合する。この黒鉛の配合量は、不定形耐火材料(骨材:80〜97wt%)中に3〜20wt%の範囲内で含有させる。その理由は、この黒鉛の配合量が3wt%未満では、この黒鉛がもっている高熱伝導性や耐スラグ性といった本来的な効果が充分に得られず、一方、この黒鉛の配合量が20wt%を超えると、耐酸化性が問題になると共に流動性が低下し緻密な不定形耐火物の施工体が得られないからである。なお、この黒鉛含有量の好ましい範囲は5〜15wt%である。
【0011】
ただし、黒鉛含有不定形耐火物というのは、樋の使用温度域(溶銑・滓と接する高温域)での機械的強度はそれほど高くないのが普通である。これは黒鉛自体に焼結性がないことと、黒鉛の存在により微粉材料の焼結で生成するセラミックボンドの形成を阻害するためである。このため、単に黒鉛を添加しただけでは、室温から高温までをカバーする十分な強度は発現しない。また、黒鉛は、高温大気雰囲気中において容易に酸化してしまうという弱点もある。
【0012】
これらの黒鉛の弱点を克服するために、本発明においては、所定量の微細なけい素を添加含有することにした。このけい素を含有させる理由は、樋材使用温度において本発明にかかる黒鉛含有不定形耐火材料は、複合添加する黒鉛粉と反応して、マトリックス中に3次元網目状の反応 SiCを晶出し、この SiCのネットワークが骨材粒子や微粉、黒鉛の粒子を被覆し、つなぐ役目を果たすことになる。即ち、本発明においては、マトリックス中に反応β−SiC のネットワークを形成せしめるために、けい素を用いるのである。
【0013】
黒鉛とSiとが共存する高温雰囲気ではSi+C= SiC、あるいはSi+CO= SiC+ 1/2O2 の反応でα−SiC を経てβ−SiC を晶出する。とくにSiとして、微細粒度のものを用いると、生成するβ−SiC も微細でかつ針状晶がからみあう形態となり、強固な結合力が発現する。
ただし、晶出SiC が過剰になると、溶銑に溶解しやすくなることと、SiC の表面にその酸化層であるSiO2 が生成することから、SiO2 量増加に伴う耐食性低下を招く。
【0014】
本発明において、黒鉛含有不定形耐火材料中に含有させるけい素を 0.8〜 6.0wt%に限定した理由はけい素の添加量が 0.8wt%未満では熱間強度が不十分であり、一方その添加量が 6.0wt%を超えると熱間強度は増加するものの、却って耐食性の低下を招くことになる。
【0015】
本発明においてこのけい素(Si)は、粒度が80μm以下のものを用いることが好ましい。その理由は、粒度が80μmをこえるものを使用した場合、必要な熱間強度を達成するためには7wt%以上の添加が必要となり、SiO2 生成による耐食性低下領域と重なるために適性領域が極めて狭く、ばらつきも考慮すると好ましくないからである。なお、Siの粒度調整は一般的な粉砕、分級で行えばよい。
なお、このSiは、水を扱う不定形耐火材料の中でもとくに水との反応を懸念する必要のない物質の1つであり、耐水用の表面処理や水和防止用添加物を考慮する必要がないという利点がある。
【0016】
また、本発明にかかる不定形耐火材料については、1500℃での熱間3点曲げ強度が10kg/cm2以上の特性を示すことが必要である。
通常、高炉から出銑される溶銑、溶滓の温度は、1500℃近傍であるので、本発明で対象とする高炉主樋用不定形耐火物が具えるべき特性は1500℃での熱間強度である。この点に関し、発明者らの研究によれば、後述の実施例からも明らかなとおり、出銑流の速度が大きいという使用条件下では、1500℃での熱間曲げ強度が10kg/cm2未満では、機械的損耗が大きく耐火物溶損の抑制に効果がなく、これを10kg/cm2以上にすることによって始めて、溶損の抑制に効果があることがわかった。
【0017】
なお、本発明における不定形耐火材料は、上述した黒鉛、金属Si等の他に、当然のことながら、不定形耐火物の骨格成分を構成する骨材として、塩基性、中性、酸性のものから選ばれる一種または二種以上を用いることが望ましい。例えば、マグネシア、スピネル、アルミナ、ジルコニア、ジルコン、シリカ、けい石、ろう石、炭化けい素、シャモットなどを、80〜95wt%程度含むものである。これらの骨材の粒度は、密充填組織が得られるように、粗粒、中粒、微粒、微粉にそれぞれ分けて調整したものを用いることが好ましい。
【0018】
また、発明にかかる不定形耐火材料中には、必要に応じて選択使用する助剤、例えば硬化剤(結合剤)としては、耐火物に一般的に使用されているアルミナセメントやシリカゾルあるいはアルミナゾルなどを使用し、酸化防止剤としてはB4C, SiC, Si, Alを使用し、分散剤としてはトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ウルトラポリリン酸ソーダ、酸性ヘキサメタリン酸ソーダ、ホウ酸ソーダ、炭酸ソーダなどの無機塩、クエン酸ソーダ、酒石酸塩、ポリアクリル酸ソーダ、スルホン酸ソーダおよびナフタレンスルホン酸ソーダのうちからから選ばれるいずれか1種または2種以上のものを使用し、そして硬化遅延剤としては、シュウ酸、クエン酸、グルコン酸、ホウ酸等を使用することが好ましい。
【0019】
なお、本発明にかかる不定形耐火材料は、以上に示した配合物以外にも本発明効果を損なわない範囲内であれば、さらに各種のファイバー類、金属微粉末などを添加してもよい。
【0020】
【実施例】
実施例1
この実施例は、本発明例および比較例の不定形耐火材料として、高炉主樋メタルラインの不定形耐火物として、Al2O3 、SiC 、黒鉛を主成分として含み、かつ微粉部にAl2O3 、黒鉛を配し、残部がセメント、硬化遅延材、分散剤、酸化防止剤からなる耐火原料をベースとした不定形耐火物を用いた。なお、黒鉛としては、平均粒径20μmの人造黒鉛のものを用い、配合の割合は、Al2O3 は72wt%、SiC は12wt%、黒鉛を10wt%とした。そして、上記の不定形耐火材料には、Siを 200μm、 100μm、80μm、30μmの各粒度で、外数で 0.1〜10wt%添加した。このSiはほぼ 100%β−SiC になる。
これらの不定形耐火材料を、実樋で、即ち高炉主樋メタルライン用として、混水量を耐火物の 5.5wt%で混練施工を行い、最も損耗量の大きい溶銑落ち口付近の位置での損耗速度(通銑量/出銑量)で比較評価した。操業条件は出銑温度1502〜1514℃、スラグ比33.8〜36.1%の範囲内のものを用いた。
図1、図2に示す結果から、明らかなように、1500℃での熱間強度は10kg/cm2以上が必要で、添加Siは粒度80μm以下、添加量 0.8〜 6.0wt%が好ましいことが確かめられた。
【0021】
実施例2
この実施例で用いた樋材は、Al2O3 :72wt%、 SiC:12wt%、残部はセメント、硬化遅延剤、分散剤、酸化防止剤からなる耐火原料に、残部比率は一定として平均粒度20μmの黒鉛を0〜30wt%の範囲で変えた不定形耐火材料である。また、この不定形耐火物には、粒度30μmのSiをで3wt%添加して4wt%以上の反応β−SiC を生成するようにしたものを用いた。操業条件は実施例1と同じである。
その結果を示す図3から明らかなように、黒鉛含有量は3〜20wt%が好ましいことが確かめられた。
【0022】
【発明の効果】
かくして本発明にかかる不定形耐火材料によれば、溶銑流速の低い領域では従来の黒鉛含有不定形耐火物のように耐食性を損なうことなく、溶銑流速の大きい領域での機械的耐食性を顕著に向上させることができ、実樋での樋寿命を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Siの平均粒径を変化させたときのSi添加量と熱間強度との関係を示すグラフである。
【図2】Siの平均粒径を変化させたときのSi添加量と損耗速度との関係を示すグラフである。
【図3】実施例2における黒鉛含有量と損耗速度との関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉主樋のメタルラインに用いられる不定形耐火物であって、耐食性、特に樋材表面近傍の溶銑流速の大きい領域での耐食性に優れた黒鉛含有不定形耐火材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高炉においては、銑鉄製造コストの削減という観点から、長時間出銑による耐火材料の原単位削減が指向されている。とりわけ、溶銑を高炉から輸送用容器へ移送するための樋を形成する樋材についての改良が強く求められている。なかでも、溶銑と溶融スラグを同時に流すための主樋(出銑樋)では、スラグおよびメタルの両方に対する耐食性を考慮しなければならず、最も改良の必要な材料である。
【0003】
こうした主樋用耐火物としては、従来、スラグ−空気の界面近傍(スラグライン)では高 SiC系耐火物を用い、一方スラグ−メタルの界面近傍(メタルライン)ではAl2O3 −SiC 系耐火物、Al2O3 −スピネル−SiC 系耐火物などが用いられている。その他、単に耐食性の向上を目的として開発されたものとしては、特開平8−183666号公報、特開平8−183667号公報で開示されているような、黒鉛含有不定形耐火物がある。
【0004】
これらの黒鉛含有不定形耐火物は、耐火物中にスラグやメタルとの濡れ性が悪い黒鉛を分散させることにより、前記部位において、耐火物中の溶出成分が溶銑、溶滓と接触する機会を低減するように工夫されたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、高炉主樋では局所的な損耗が見られる。すなわち、上記したスラグラインやメタルラインのような界面では、スラグ内にマランゴニ対流が生じるため、スラグ界面に樋の内壁から直角方向へのスラグ流れを発生し、これにより樋材耐火物成分の溶出が起こるという現象が見られる。また、主樋を溶銑・滓の流れ方向でみたときには、高炉から排出したスラグが主樋内部に流入する出銑落ち口付近が損耗の極大部となる。これは、上記出銑落ち口部位においては溶銑・滓が急激に流れ込むために、上記マランゴニ対流を一層促進すると共に、溶銑流速に起因する機械的損耗も加わるために極大になると考えられている。
【0006】
この点、上記黒鉛含有不定形耐火物では、黒鉛と溶銑・溶滓との濡れ性の悪さを利用することにより、耐火物成分の溶出を阻止することにて、樋材の耐用性を向上させたものである。しかし、黒鉛含有耐火物は、機械的強度が低いために、出銑落ち口のような溶銑速度の大きい部位においては、必ずしも耐用性が十分であるとは言えなかった。これは黒鉛は自己焼結性がないのと、黒鉛自身の存在が他の酸化物成分の焼結を阻害するため、耐火物全体としての強度が低くなってしまうからである。これを防止するために通常は、一般的なガラス形成を利用した酸化物系の焼結助材の添加や超微粉酸化物を添加して自己焼結性を高めるのが普通である。
【0007】
しかしながら、ガラスボンドでは、室温強度の発現はできても高炉主樋が使用されるような高温域での強度は発現せず、また超微粉を添加しても黒鉛のない場合より強度は低くなってしまう。
そこで、本発明の目的は、室温強度のみならず高温強度(高炉主樋での使用温度条件である1500℃程度の条件での熱間強度)に優れ、溶銑流速の大きい部位においても十分に耐用性を発揮できる高炉主樋メタルライン用不定形耐火材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した高炉主樋使用温度域における耐火物の熱間強度を発現させることのできる耐火材料組成、および焼成後の耐火物のマトリックス構造を研究するなかで、耐火物マトリックスを強化するには、針状晶のβ−SiC のネットワークを形成させることにより、熱間強度の向上を図ることが有効であるとの知見を得た。そして、熱間強度に優れるという SiCの特性を十分に発揮させるためには、Siを極めて微細な粒度で不定形耐火材料(原料)中に添加することで、耐火物マトリックス中に均一で微細な反応β−SiC のネットワークを形成させることが有効であることもわかった。さらに、Si表面に生成するSiO2による耐食性低下が生じないようにSiの添加比率を調整することも有効であるとの知見を得た。本発明は、こうした知見をもとに開発したものである。
【0009】
即ち、本発明は、黒鉛を3〜20wt%、粒径が 80 μ m 以下の微粉けい素を0.8〜6.0wt%以下の比率で含有する不定形耐火物であって、1500℃での熱間3点曲げ強度が10kg/cm2以上の特性を示すことを特徴とする高炉主樋メタルライン用黒鉛含有不定形耐火材料を提供するものである。
本発明においては、樋材使用温度域において、耐火物マトリックス中には3次元網目状の反応SiCが晶出するものであることが望ましい。
また、本発明においては、マトリックス中に針状晶のβ−SiCを含むことが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる不定形耐火材料中には、後述する骨材などとともに、種々の黒鉛を配合する。この黒鉛の配合量は、不定形耐火材料(骨材:80〜97wt%)中に3〜20wt%の範囲内で含有させる。その理由は、この黒鉛の配合量が3wt%未満では、この黒鉛がもっている高熱伝導性や耐スラグ性といった本来的な効果が充分に得られず、一方、この黒鉛の配合量が20wt%を超えると、耐酸化性が問題になると共に流動性が低下し緻密な不定形耐火物の施工体が得られないからである。なお、この黒鉛含有量の好ましい範囲は5〜15wt%である。
【0011】
ただし、黒鉛含有不定形耐火物というのは、樋の使用温度域(溶銑・滓と接する高温域)での機械的強度はそれほど高くないのが普通である。これは黒鉛自体に焼結性がないことと、黒鉛の存在により微粉材料の焼結で生成するセラミックボンドの形成を阻害するためである。このため、単に黒鉛を添加しただけでは、室温から高温までをカバーする十分な強度は発現しない。また、黒鉛は、高温大気雰囲気中において容易に酸化してしまうという弱点もある。
【0012】
これらの黒鉛の弱点を克服するために、本発明においては、所定量の微細なけい素を添加含有することにした。このけい素を含有させる理由は、樋材使用温度において本発明にかかる黒鉛含有不定形耐火材料は、複合添加する黒鉛粉と反応して、マトリックス中に3次元網目状の反応 SiCを晶出し、この SiCのネットワークが骨材粒子や微粉、黒鉛の粒子を被覆し、つなぐ役目を果たすことになる。即ち、本発明においては、マトリックス中に反応β−SiC のネットワークを形成せしめるために、けい素を用いるのである。
【0013】
黒鉛とSiとが共存する高温雰囲気ではSi+C= SiC、あるいはSi+CO= SiC+ 1/2O2 の反応でα−SiC を経てβ−SiC を晶出する。とくにSiとして、微細粒度のものを用いると、生成するβ−SiC も微細でかつ針状晶がからみあう形態となり、強固な結合力が発現する。
ただし、晶出SiC が過剰になると、溶銑に溶解しやすくなることと、SiC の表面にその酸化層であるSiO2 が生成することから、SiO2 量増加に伴う耐食性低下を招く。
【0014】
本発明において、黒鉛含有不定形耐火材料中に含有させるけい素を 0.8〜 6.0wt%に限定した理由はけい素の添加量が 0.8wt%未満では熱間強度が不十分であり、一方その添加量が 6.0wt%を超えると熱間強度は増加するものの、却って耐食性の低下を招くことになる。
【0015】
本発明においてこのけい素(Si)は、粒度が80μm以下のものを用いることが好ましい。その理由は、粒度が80μmをこえるものを使用した場合、必要な熱間強度を達成するためには7wt%以上の添加が必要となり、SiO2 生成による耐食性低下領域と重なるために適性領域が極めて狭く、ばらつきも考慮すると好ましくないからである。なお、Siの粒度調整は一般的な粉砕、分級で行えばよい。
なお、このSiは、水を扱う不定形耐火材料の中でもとくに水との反応を懸念する必要のない物質の1つであり、耐水用の表面処理や水和防止用添加物を考慮する必要がないという利点がある。
【0016】
また、本発明にかかる不定形耐火材料については、1500℃での熱間3点曲げ強度が10kg/cm2以上の特性を示すことが必要である。
通常、高炉から出銑される溶銑、溶滓の温度は、1500℃近傍であるので、本発明で対象とする高炉主樋用不定形耐火物が具えるべき特性は1500℃での熱間強度である。この点に関し、発明者らの研究によれば、後述の実施例からも明らかなとおり、出銑流の速度が大きいという使用条件下では、1500℃での熱間曲げ強度が10kg/cm2未満では、機械的損耗が大きく耐火物溶損の抑制に効果がなく、これを10kg/cm2以上にすることによって始めて、溶損の抑制に効果があることがわかった。
【0017】
なお、本発明における不定形耐火材料は、上述した黒鉛、金属Si等の他に、当然のことながら、不定形耐火物の骨格成分を構成する骨材として、塩基性、中性、酸性のものから選ばれる一種または二種以上を用いることが望ましい。例えば、マグネシア、スピネル、アルミナ、ジルコニア、ジルコン、シリカ、けい石、ろう石、炭化けい素、シャモットなどを、80〜95wt%程度含むものである。これらの骨材の粒度は、密充填組織が得られるように、粗粒、中粒、微粒、微粉にそれぞれ分けて調整したものを用いることが好ましい。
【0018】
また、発明にかかる不定形耐火材料中には、必要に応じて選択使用する助剤、例えば硬化剤(結合剤)としては、耐火物に一般的に使用されているアルミナセメントやシリカゾルあるいはアルミナゾルなどを使用し、酸化防止剤としてはB4C, SiC, Si, Alを使用し、分散剤としてはトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ウルトラポリリン酸ソーダ、酸性ヘキサメタリン酸ソーダ、ホウ酸ソーダ、炭酸ソーダなどの無機塩、クエン酸ソーダ、酒石酸塩、ポリアクリル酸ソーダ、スルホン酸ソーダおよびナフタレンスルホン酸ソーダのうちからから選ばれるいずれか1種または2種以上のものを使用し、そして硬化遅延剤としては、シュウ酸、クエン酸、グルコン酸、ホウ酸等を使用することが好ましい。
【0019】
なお、本発明にかかる不定形耐火材料は、以上に示した配合物以外にも本発明効果を損なわない範囲内であれば、さらに各種のファイバー類、金属微粉末などを添加してもよい。
【0020】
【実施例】
実施例1
この実施例は、本発明例および比較例の不定形耐火材料として、高炉主樋メタルラインの不定形耐火物として、Al2O3 、SiC 、黒鉛を主成分として含み、かつ微粉部にAl2O3 、黒鉛を配し、残部がセメント、硬化遅延材、分散剤、酸化防止剤からなる耐火原料をベースとした不定形耐火物を用いた。なお、黒鉛としては、平均粒径20μmの人造黒鉛のものを用い、配合の割合は、Al2O3 は72wt%、SiC は12wt%、黒鉛を10wt%とした。そして、上記の不定形耐火材料には、Siを 200μm、 100μm、80μm、30μmの各粒度で、外数で 0.1〜10wt%添加した。このSiはほぼ 100%β−SiC になる。
これらの不定形耐火材料を、実樋で、即ち高炉主樋メタルライン用として、混水量を耐火物の 5.5wt%で混練施工を行い、最も損耗量の大きい溶銑落ち口付近の位置での損耗速度(通銑量/出銑量)で比較評価した。操業条件は出銑温度1502〜1514℃、スラグ比33.8〜36.1%の範囲内のものを用いた。
図1、図2に示す結果から、明らかなように、1500℃での熱間強度は10kg/cm2以上が必要で、添加Siは粒度80μm以下、添加量 0.8〜 6.0wt%が好ましいことが確かめられた。
【0021】
実施例2
この実施例で用いた樋材は、Al2O3 :72wt%、 SiC:12wt%、残部はセメント、硬化遅延剤、分散剤、酸化防止剤からなる耐火原料に、残部比率は一定として平均粒度20μmの黒鉛を0〜30wt%の範囲で変えた不定形耐火材料である。また、この不定形耐火物には、粒度30μmのSiをで3wt%添加して4wt%以上の反応β−SiC を生成するようにしたものを用いた。操業条件は実施例1と同じである。
その結果を示す図3から明らかなように、黒鉛含有量は3〜20wt%が好ましいことが確かめられた。
【0022】
【発明の効果】
かくして本発明にかかる不定形耐火材料によれば、溶銑流速の低い領域では従来の黒鉛含有不定形耐火物のように耐食性を損なうことなく、溶銑流速の大きい領域での機械的耐食性を顕著に向上させることができ、実樋での樋寿命を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Siの平均粒径を変化させたときのSi添加量と熱間強度との関係を示すグラフである。
【図2】Siの平均粒径を変化させたときのSi添加量と損耗速度との関係を示すグラフである。
【図3】実施例2における黒鉛含有量と損耗速度との関係を示すグラフである。
Claims (3)
- 黒鉛を3〜20wt%、粒径が 80 μ m 以下の微粉けい素を0.8〜6.0wt%以下の比率で含有する不定形耐火材料であって、1500℃での熱間3点曲げ強度が10kg/cm2以上の特性を示すことを特徴とする高炉主樋メタルライン用黒鉛含有不定形耐火材料。
- 樋材使用温度域において、耐火物マトリックス中には3次元網目状の反応SiCが晶出するものであることを特徴とする請求項1に記載の不定形耐火材料。
- マトリックス中に針状晶のβ−SiCを含むことを特徴とする請求項2に記載の不定形耐火材料。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP08113497A JP3608335B2 (ja) | 1997-03-31 | 1997-03-31 | 高炉主樋メタルライン用黒鉛含有不定形耐火材料 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP08113497A JP3608335B2 (ja) | 1997-03-31 | 1997-03-31 | 高炉主樋メタルライン用黒鉛含有不定形耐火材料 |
Publications (2)
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