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JP3608877B2 - キノン誘導体およびそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents
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JP3608877B2 - キノン誘導体およびそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents

キノン誘導体およびそれを用いた電子写真感光体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子輸送剤として好適に用いられる新規なキノン誘導体と、静電式複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる電子写真感光体とに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、上記画像形成装置においては、当該装置に用いられる光源の波長領域に感度を有する種々の感光体が使用されている。その1つはセレンのような無機材料を感光層に用いた無機感光体であり、他は有機材料を感光層に用いた有機感光体(OPC)である。有機感光体は、無機感光体に比べて製造が容易であるとともに、電荷輸送剤、電荷発生剤、結着樹脂等の感光体材料の選択肢が多様で、機能設計の自由度が高いことから、広範な研究が進められている。
【0003】
有機感光体には、電荷発生剤と電荷輸送剤とを同一の感光層中に分散させた単層型感光体と、電荷発生剤を含有する電荷発生層と電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とを積層した積層型感光体とがあり、このうち積層型感光体が一般的である。積層型感光体は、機械的強度の観点から、通常、電荷発生層よりも膜厚の厚い電荷輸送層が最外層に配置される。
【0004】
有機感光体に用いられる電荷輸送剤にはキャリヤ移動度が高いことが要求されるが、キャリヤ移動度の高い電荷輸送剤のほとんどが正孔輸送性である。このため、現在実用化されている有機感光体は、最外層に電荷輸送層を配置した負帯電型の積層型感光体となる。
しかし、負帯電型の有機感光体は、オゾンの発生量が多い負極性コロナ放電によって帯電させる必要があり、オゾンによる環境への影響や、感光体自体の劣化が問題となる。
【0005】
そこで、上記の問題を解決するため、電荷輸送剤として電子輸送剤を使用することが検討されており、例えば特開平1−206349号公報には、ジフェノキノン誘導体を電子輸送剤として用いた電子写真感光体が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ジフェノキノン誘導体は一般に結着樹脂との相溶性が乏しく、感光層中に均一に分散されないため、電子のホッピング距離が長くなり、とりわけ低電界での電子移動が生じにくい。従って、ジフェノキノン誘導体自体は高いキャリヤ移動度を有するものの、これを電子輸送剤として感光体に使用した際にその特性が十分に発揮されず、感光体の残留電位が高くなり、感度が不十分になるという問題がある。
【0007】
また、単層型の感光体は、電子輸送剤と正孔輸送剤とを併用することで、1つの感光体を正帯電型および負帯電型の両方に使用できるという利点を有するものの、前記ジフェノキノン誘導体を電子輸送剤として用いた場合には、正孔輸送剤との相互作用によって電荷移動錯体が形成され、電子および正孔の輸送が阻害されるという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記の技術的課題を解決し、電子写真感光体における電子輸送剤として好適な新規化合物を提供することである。
本発明の他の目的は、高感度な電子写真感光体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、一般式(1) :
【0010】
【化2】
Figure 0003608877
【0011】
(式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を示す。但し、RおよびRは同時に水素原子でないものとする。)
で表されるキノン誘導体が、従来のジフェノキノン誘導体よりも高い電子輸送能を有するという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
上記一般式(1) で表されるキノン誘導体は、溶剤への溶解性および結着樹脂との相溶性が良好で、電荷発生剤とのマッチングが優れている。また、電荷発生剤で発生した電荷(電子)を引き抜く作用が強く、電子受容性に優れている。さらに、上記キノン誘導体(1) は、分子内でのπ電子の広がりが大きく、分子の平面性が高いことから、従来のジフェノキノン誘導体に比べて安定性が大きく、電荷の輸送を阻害する正孔輸送剤との相互作用が生じない。従って、上記キノン誘導体(1) を電子輸送剤として用いることにより、高感度な感光体を提供することができる。
【0013】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、前記感光層が一般式(1) で表されるキノン誘導体を含有することを特徴とする。
上記の構成によれば、残留電位が低下し、高い感度を有する電子写真感光体が得られる。
【0014】
また、前記感光層が、前記一般式(1) で表されるキノン誘導体とともに、酸化還元電位が−0.8〜−1.4Vである電子受容性化合物を含有することにより、より感度が向上した感光体が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のキノン誘導体(1) について詳細に説明する。
一般式(1) 中、置換基RおよびRに相当する基としては、水素原子のほか、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の炭素数が1〜6のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ等の炭素数が1〜6のアルコキシ基があげられる。なお、基RおよびRは、同時に水素原子ではない。
【0016】
一般式(1) 中、置換基Rに相当する基としては、水素原子、上記例示のアルキル基およびアルコキシ基のほか、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ビフェニリル、o−テルフェニル等のアリール基があげられる。
一般式(1) で表されるキノン誘導体の具体例としては、例えば下記式(1−1) 〜(1−4) で表される化合物があげられる。
【0017】
【化3】
Figure 0003608877
【0018】
本発明のキノン誘導体(1) は、例えば、下記の反応行程式(I) に示すようにして合成される。すなわち、まずベンゾキノン誘導体(2) とβ−ナフトール誘導体(3) とを酢酸等の溶媒中にて、酢酸銅、塩化鉄(III) 等の触媒とともに、50〜110℃に加熱して、一般式(4) で表される中間体を得る。次いで、この中間体(4) をピリジン等の溶媒中にて、塩化銅等の触媒とともに還流することによってキノン誘導体(1) が得られる。
【0019】
反応行程式(I) :
【0020】
【化4】
Figure 0003608877
【0021】
次に、本発明の電子写真感光体について詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体は、前記一般式(1) で表されるキノン誘導体を電子輸送剤として含有する感光層を、導電性基体上に設けたものである。感光層には、いわゆる単層型と積層型とがある。本発明の感光体は、この単層型および積層型のいずれにも適用できる。
【0022】
単層型感光体は、導電性基体上に、電子輸送剤であるキノン誘導体(1) と電荷発生剤とを含有する単一の感光層を設けたものである。かかる単層型の感光層は、単独の構成で正負いずれの帯電にも対応できるが、負極性コロナ放電を用いる必要のない正帯電型で使用するのが好ましい。単層型感光体は、層構成が簡単で生産性に優れていること、感光層の被膜欠陥が発生するのを抑制できること、層間の界面が少ないので光学的特性を向上できること等の利点を有する。
【0023】
また、電子輸送剤である上記キノン誘導体(1) を、正孔輸送性に優れた正孔輸送剤と併用した単層型の感光体は、前述のように、キノン誘導体(1) と正孔輸送剤との相互作用が生じないため、両輸送剤を高濃度で同一の感光層中に含有させても、電子輸送および正孔輸送がそれぞれ効率よく行うことができ、高感度の感光体を得ることができる。
【0024】
一方、積層型感光体は、導電性基体上に、電荷発生剤を含有する電荷発生層と、電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とをこの順で、あるいは逆の順で積層したものである。但し、電荷発生層は電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
【0025】
積層型感光体は、上記電荷発生層と電荷輸送層との形成順序と、電荷輸送層中で使用する電荷輸送剤の種類とによって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。例えば、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した層構成において、電荷輸送層中の電荷輸送剤として上記キノン誘導体(1) のような電子輸送剤を使用したときは、正帯電型の感光体になる。この場合、電荷発生層には正孔輸送剤を含有させてもよい。一方、上記の層構成において、電荷輸送層中の電荷輸送剤として正孔輸送剤を使用したときは、負帯電型の感光体になる。この場合、電荷発生層には電子輸送剤を含有させてもよい。
【0026】
また、本発明の感光体においては、前記一般式(1) で表されるキノン誘導体(電子輸送剤)とともに、酸化還元電位が−0.8〜−1.4Vである電子受容性化合物を感光層中に含有させることにより、残留電位が大きく低下して、感光体の感度がより向上するという効果が得られる。
上記電子受容性化合物は、そのLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital 、最低空軌道)のエネルギー準拠が電荷発生剤のそれよりも低いため、光照射による電荷発生剤での電子(−)と正孔(+)とのイオン対の生成時に、電荷発生剤から効率よく電子を引き抜く。このため、電子と正孔の再結合によるイオン対の消失の割合が減少して、電荷発生効率が向上する。また、上記電子受容性化合物は、電荷発生剤から引き抜いた電子を、電子輸送剤であるキノン誘導体(1) に効率よく伝達する働きもする。このため、キノン誘導体(1) と電子受容性化合物との併用系では、電荷発生剤からの電子の注入と輸送がスムーズに行われ、感光体の感度がさらに向上する。
【0027】
電子受容性化合物の酸化還元電位が上記範囲内に限定されるのは、以下の理由による。
すなわち、酸化還元電位が−0.8Vよりも大きい電子受容性化合物は、トラップ−脱トラップを繰り返しながら移動する電子を脱トラップが不可能なレベルに落とし込み、キャリヤトラップを生じさせる。このキャリヤトラップは電子輸送の妨げとなるため、感光体の感度が低下する。逆に、酸化還元電位が−1.4Vより小さい電子受容性化合物は、LUMOのエネルギー準位が電荷発生剤よりも高くなり、前記イオン対の生成時に電子が電子受容性化合物に移動しないため、電荷発生効率の向上につながらない。なお、電子受容性化合物の酸化還元電位は、上記範囲内でも特に、−0.85〜−1.00Vであるのが好ましい。
【0028】
酸化還元電位は、図1に示すように、牽引電圧(V)と電流(μA)との関係から同図に示すEとEを求め、次式を用いて算出した。
酸化還元電位(V)=(E+E)/2
上記牽引電圧(V)および電流(μA)は、以下の材料を調合した測定溶液を用い、3電極式のサイクリックボルターメトリーにて測定した。
【0029】
Figure 0003608877
上記電子受容性化合物としては、例えば下記一般式(5) で表されるジフェノキノン誘導体、下記一般式(6) で表されるベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体等の電子受容性を有する化合物の中から、酸化還元電位が前記範囲内にある化合物を使用できる。
【0030】
【化5】
Figure 0003608877
【0031】
(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは同一または異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基または置換基を有してもよいアミノ基を示す。)
上記例示の電子受容性化合物のなかでも、上記一般式(5) で表されるジフェノキノン誘導体および上記一般式(6) で表されるベンゾキノン誘導体に属し、かつ酸化還元電位が前記範囲内にある化合物を用いるのが好ましい。
【0032】
なお、上記一般式(5) および(6) 中のアルキル基、アリール基およびアルコキシ基としては、前記と同様な基があげられる。また、アラルキル基としては、例えばベンジル、ベンズヒドリル、トリチル、フェネチル等の基があげられる。シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の炭素数が3〜6の基があげられる。置換基を有してもよいアミノ基としては、例えばアミノ基のほか、モノメチルアミノ、ジメチルアミノ、モノエチルアミノ、ジエチルアミノ等の基があげられる。
【0033】
上記例示の電子受容性化合物のうち、一般式(5) で表されるジフェノキノン誘導体の具体例としては、例えば下記式(5−1) で表される3,5−ジメチル−3’,5’−ジ(t−ブチル)−4,4’−ジフェノキノン(酸化還元電位−0.86V)、下記式(5−2) で表される3,3’,5,5’−テトラ(t−ブチル)−4,4’−ジフェノキノン(酸化還元電位−0.94V)のほか、3,3’−ジメチル−5,5’−ジ(t−ブチル)−4,4’−ジフェノキノン、3,5’−ジメチル−3’,5−ジ(t−ブチル)−4,4’−ジフェノキノン等があげられる。
【0034】
【化6】
Figure 0003608877
【0035】
また、一般式(6) で表されるベンゾキノン誘導体の具体例としては、例えば式(6−1) で表されるp−ベンゾキノン(酸化還元電位−0.81V)、式(6−2) で表される2,6−ジ(t−ブチル)−p−ベンゾキノン(酸化還元電位−1.31V)等があげられる。
【0036】
【化7】
Figure 0003608877
【0037】
上記例示の電子受容性化合物は、それぞれ単独で使用できるほか、2種以上を併用することもできる。
次に、本発明の電子写真感光体に用いられる種々の材料について説明する。
〈電荷発生剤〉
本発明に用いられる電荷発生剤としては、例えばセレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電材料の粉末や、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ系顔料、ジチオケトピロロピロール系顔料、スクアライン系顔料、アゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、インジゴ系顔料、アズレニウム系顔料、シアニン系顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等があげられる。上記例示の電荷発生剤は、感光体が所望の領域に吸収波長を有するように、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0038】
上記例示の電荷発生剤のうち、特に半導体レーザーなどの光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば無金属フタロシアニンやチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。
【0039】
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば一般式:
【0040】
【化8】
Figure 0003608877
【0041】
(式中、RおよびRは同一または異なって、炭素数が18以下の置換または未置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカノイル基またはアラルキル基を示す。)
で表されるペリレン系顔料やビスアゾ系顔料等が好適に用いられる。
なお、上記一般式中、炭素数が18以下の置換または未置換のアルキル基としては、前述の炭素数が1〜6のアルキル基に加えて、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、ペンタデシル、オクタデシル等の基があげられる。シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基としては、前述と同様な基があげられる。アルカノイル基としては、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル等の基があげられる。また、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基は、その任意の位置にアルキル基などの置換基を有してもよい。
【0042】
〈正孔輸送剤〉
本発明に用いられる正孔輸送剤としては、例えばベンジジン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ナフチレンジアミン誘導体、フェナントリレンジアミン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル誘導体、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、インドール誘導体、オキサゾール誘導体、イソオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾール誘導体、トリアゾール誘導体等を用いることができる。
【0043】
〈電子輸送剤〉
本発明の感光体においては、一般式(1) で表されるキノン誘導体とともに種々の電子輸送剤を併用してもよい。かかる電子輸送剤としては、例えばベンゾキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン誘導体、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の種々の電子吸引性化合物があげられる。
【0044】
〈結着樹脂〉
上記各成分を分散させるための結着樹脂は、従来より感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
【0045】
感光層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0046】
本発明における単層型感光体は、一般式(1) および/または(2) で表されるキノン誘導体(電子輸送剤)、電荷発生剤、結着樹脂、さらに必要に応じて正孔輸送剤を適当な溶媒に溶解または分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成される。
上記単層型感光体において、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。電子輸送剤は、結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部の割合で配合すればよい。また、正孔輸送剤は、結着樹脂100重量部に対して5〜500重量部、好ましくは25〜200重量部の割合で配合すればよい。なお、電子輸送剤と正孔輸送剤とを併用する場合において、電子輸送剤と正孔輸送剤との総量は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部、好ましくは30〜200重量部とするのが適当である。単層型の感光層に電子受容性化合物を含有させる場合は、電子受容性化合物を結着樹脂100重量部に対して0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜20重量部で配合するのが適当である。
【0047】
単層型感光体における感光層の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
本発明における積層型感光体は、まず導電性基体上に、蒸着または塗布などの手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層を形成し、次いでこの電荷発生層上に、一般式(1) および/または(2) で表されるキノン誘導体(電子輸送剤)と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することによって作製される。
【0048】
上記積層型感光体において、電荷発生層を構成する電荷発生剤と結着樹脂とは、種々の割合で使用することができるが、結着樹脂100重量部に対して電荷発生剤を5〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部の割合で配合するのが適当である。電荷発生層に正孔輸送剤を含有させる場合は、正孔輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して10〜500重量部、好ましくは50〜200重量部とするのが適当である。
【0049】
電荷輸送層を構成する電子輸送剤と結着樹脂とは、電荷の輸送を阻害しない範囲および結晶化しない範囲で種々の割合で使用することができるが、光照射により電荷発生層で生じた電荷が容易に輸送できるように、結着樹脂100重量部に対して、電子輸送剤を10〜500重量部、好ましくは25〜200樹脂の割合で配合するのが適当である。電荷輸送層に電子受容性化合物を含有させる場合は、電子受容性化合物の割合を結着樹脂100重量部に対して0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜20重量部とするのが適当である。
【0050】
積層型感光体における感光層の厚さは、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
単層型感光体においては、導電性基体と感光層との間に、また積層型感光体においては、導電性基体と電荷発生層との間、導電性基体と電荷輸送層との間または電荷発生層と電荷輸送層との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層が形成されていてもよい。また、感光体の表面には、保護層が形成されていてもよい。
【0051】
上記感光層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属単体や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
【0052】
導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。
前記感光層を塗布の方法により形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂等を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカーあるいは超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
【0053】
上記分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0054】
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を合成例、実施例および比較例に基づいて説明する。
〈キノン誘導体の合成〉
合成例1(キノン誘導体(1−1) の合成)
メチル−1,4−ベンゾキノン3.0g(24.6ミリモル)、酢酸100ml、酢酸銅(II)一水和物2.5g(12.5ミリモル)およびβ−ナフトール3.5g(24.3ミリモル)を反応容器に加え、50℃で3時間攪拌した。反応後、反応溶液を水に注ぎ、有機成分をクロロホルムで抽出した。水洗後、クロロホルム成分を留去し、残渣をシリカゲルカラムで精製(展開溶媒:クロロホルム)して、下記式(4−1) で表される中間体1.1g(収率16.7%)を得た。
【0056】
【化9】
Figure 0003608877
【0057】
次いで、上記中間体(4−1) 0.5g(1.9ミリモル)、塩化銅0.25g(1.9ミリモル)およびピリジン20mlを反応容器に加え、2時間還流した。反応後、反応溶液を1N−塩酸水溶液に注ぎ、有機成分をクロロホルムで抽出した。水洗後、クロロホルムを留去し、残渣をシリカゲルカラム(展開溶媒:クロロホルム)で精製して、前記式(1−1) で表されるキノン誘導体0.12g(収率24.1%)を得た。
【0058】
融点:251℃
質量スペクトル:[M]=262
合成例2(キノン誘導体(1−2) の合成)
合成例1で得られたキノン誘導体(1−1) 0.1g(0.38ミリモル)、メタノール10mlおよび塩化亜鉛0.01gを反応容器に加え、50〜60℃で5時間攪拌した。反応後、反応溶液を水に注ぎ、有機成分をクロロホルムで抽出した。水洗後、クロロホルムを留去し、残渣をシリカゲルカラムで精製(展開溶媒:クロロホルム)して、前記式(1−2) で表されるキノン誘導体0.07g(収率63%)を得た。
【0059】
融点:254℃
〈電子写真感光体の製造〉
実施例1(デジタル光源用単層型感光体)
電荷発生剤5重量部、正孔輸送剤50重量部、電子輸送剤30重量部および結着樹脂(ポリカーボネート)100重量部を溶媒(テトラヒドロフラン)800重量部とともにボールミルにて50時間混合分散して、単層型感光層用の塗布液を作製した。次いでこの塗布液を導電性基材(アルミニウム素管)上にディップコート法にて塗布し、100℃で60分間熱風乾燥して、膜厚15〜20μmの感光層を有する単層型感光体を製造した。
【0060】
上記感光体において、電荷発生剤にはチタニルフタロシアニン顔料(PcTiO) を、正孔輸送剤には下記式(B) で表されるベンジジン誘導体を、電子輸送剤には前記式(1−1) で表されるキノン誘導体をそれぞれ使用した。
【0061】
【化10】
Figure 0003608877
【0062】
比較例1
電子輸送剤として前記式(5−1) で表されるジフェノキノン誘導体を用いたほかは、実施例1と同様にして、デジタル光源用の単層型感光体を製造した。
実施例2(デジタル光源用積層型感光体)
電荷発生剤100重量部および結着樹脂(ポリビニルブチラール)100重量部を溶媒(テトラヒドロフラン)2000重量部とともにボールミルにて50時間混合分散して、電荷発生層用の塗布液を作製した。次いで、この塗布液を導電性基材(アルミニウム素管)上にディップコート法にて塗布し、100℃で60分間熱風乾燥して、膜厚1μmの電荷発生層を形成した。
【0063】
次に、電子輸送剤100重量部および結着樹脂(ポリカーボネート)100重量部を溶媒(トルエン)800重量部とともにボールミルにて50時間混合分散して、電荷輸送層用の塗布液を作製した。次いで、この塗布液を上記電荷発生層上にディップコート法にて塗布し、100℃で60分間熱風乾燥して、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、積層型感光体を得た。
【0064】
上記感光体において、電荷発生剤には無金属フタロシアニン顔料(PcH)を使用した。また、電子輸送剤は実施例1と同じものを使用した。
比較例2
電子輸送剤として前記式(5−1) で表されるジフェノキノン誘導体を用いたほかは、実施例2と同様にして、デジタル光源用の積層型感光体を製造した。
【0065】
実施例3(アナログ光源用単層型感光体)
電荷発生剤として、式(Pe):
【0066】
【化11】
Figure 0003608877
【0067】
で表されるペリレン系顔料を用いたほかは、実施例1と同様にして、アナログ光源用の単層型感光体を製造した。
比較例3
電子輸送剤として前記式(5−1) で表されるジフェノキノン誘導体を用いたほかは、実施例3と同様にして、アナログ光源用の単層型感光体を製造した。
【0068】
比較例4
電子輸送剤を配合しなかったほかは、実施例3と同様にして、アナログ光源用の単層型感光体を製造した。
実施例4(アナログ光源用積層型感光体)
電荷発生剤として、前記式(Pe)で表されるペリレン系顔料を用いたほかは、実施例2と同様にして、アナログ光源用の積層型感光体を製造した。
【0069】
比較例5
電子輸送剤として前記式(5−1) で表されるジフェノキノン誘導体を用いたほかは、実施例4と同様にして、アナログ光源用の積層型感光体を製造した。
実施例5〜8(デジタル光源用単層型感光体)
電荷発生剤5重量部、正孔輸送剤50重量部、電子輸送剤30重量部、電子受容性化合物10重量部および結着樹脂(ポリカーボネート)100重量部を溶媒(テトラヒドロフラン)800重量部とともにボールミルにて50時間混合分散して、単層型感光層用の塗布液を作製した。次いでこの塗布液を導電性基材(アルミニウム素管)上にディップコート法にて塗布し、100℃で60分間熱風乾燥して、感光層の膜厚が15〜20μmの単層型感光体を製造した。
【0070】
上記感光体において、電荷発生剤には無金属フタロシアニン(HPc)を、正孔輸送剤には前記式(B) で表されるベンジジン誘導体を、電子輸送剤には前記式(1−1) で表されるキノン誘導体をそれぞれ使用した。
電子受容性化合物としては、前記式(6−1),(6−2) で表されるベンゾキノン誘導体または前記式(5−1),(5−2) で表されるジフェノキノン誘導体を使用した。
【0071】
比較例6
電子輸送剤として、前記式(1−1) で表されるキノン誘導体に代えて前記式(5−1) で表されるジフェノキノン誘導体を使用し、さらに電子受容性化合物を配合しなかったほかは、実施例5と同様にして、デジタル光源用の単層型感光体を製造した。
【0072】
比較例7
電子輸送剤および電子受容性化合物を配合しなかったほかは、実施例5と同様にして、デジタル光源用の単層型感光体を製造した。
上記実施例1〜2、5〜8および比較例1〜2、6〜7について下記の電気特性試験(A) を行い、上記実施例3〜4および比較例3〜5について下記の電気特性試験(B) を行って、各感光体の電気特性を評価した。
【0073】
電気特性試験(A) (デジタル光源用感光体の電気特性試験)
ジェンテック(GENTEC)社製のドラム感度試験機を用いて感光体の表面に印加電圧を加え、その表面を+700に帯電させた。次いで、露光光源として、ハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルタを用いて取り出した波長780nm(半値幅20nm、光強度16μW/cm)の単色光を使用し、かかる単色光を感光体の表面に照射(照射時間80ミリ秒)して露光させ、露光開始から330ミリ秒経過した時点での表面電位を残留電位V(単位:V)として測定した。
【0074】
電気特性試験(B) (アナログ光源用感光体の電気特性試験)
露光光源としてハロゲンランプの白色光(光強度147μW/cm)を使用し、照射時間を50ミリ秒としたほかは、上記電気特性試験(A) と同様にして、残留電位V(単位:V)を測定した。
なお、残留電位Vは、その値が小さいほど感度が優れていることを示す。
【0075】
実施例1〜8および比較例1〜7で使用した電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤および電子受容性化合物の種類を、電気特性の試験結果とともに表1に示す。なお、以下の表において、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤および電子受容性化合物の種類はそれぞれの化合物に付した番号で示す。
【0076】
【表1】
Figure 0003608877
【0077】
実施例9(デジタル光源用単層型感光体)
電子輸送剤として前記式(1−2) で表されるキノン誘導体を用いたほかは、実施例1と同様にして、デジタル光源用の単層型感光体を製造した。
実施例10(デジタル光源用積層型感光体)
電子輸送剤として前記式(1−2) で表されるキノン誘導体を用いたほかは、実施例2と同様にして、デジタル光源用の積層型感光体を製造した。
【0078】
実施例11(アナログ光源用単層型感光体)
電子輸送剤として前記式(1−2) で表されるキノン誘導体を用いたほかは、実施例3と同様にして、アナログ光源用の単層型感光体を製造した。
実施例12(アナログ光源用積層型感光体)
電子輸送剤として前記式(1−2) で表されるキノン誘導体を用いたほかは、実施例4と同様にして、アナログ光源用の積層型感光体を製造した。
【0079】
実施例13〜16(デジタル光源用単層型感光体)
電子輸送剤として前記式(1−2) で表されるキノン誘導体を用いたほかは、実施例5〜8と同様にして単層型感光体を製造した。
上記実施例9〜10、13〜16について下記の電気特性試験(A) を行い、上記実施例11〜12について下記の電気特性試験(B) を行って、各感光体の電気特性を評価した。
【0080】
実施例9〜16で使用した電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤および電子受容性化合物の種類を、電気特性の試験結果とともに表2に示す。
【0081】
【表2】
Figure 0003608877
【0082】
表1〜2から明らかなように、電子輸送剤として一般式(1) で表されるキノン誘導体を用いた実施例1〜16の電子写真感光体は、対応する比較例1〜7の感光体に比べて残留電位Vが小さく、感度が優れている。
【0083】
【発明の効果】
本発明のキノン誘導体(1) は、高い電荷輸送能(電子輸送能)を有することから、電子写真感光体、太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子等における電子輸送剤として好適に使用できる。
また、本発明の電子写真感光体は、一般式(1) で表されるキノン誘導体を含有する感光層を備えているため、高感度である。従って、本発明の電子写真感光体は、静電式複写機やレーザービームプリンタ等の各種画像形成装置の高速化、高性能化等に寄与するという特有の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】電子受容性化合物の酸化還元電位を求めるための、牽引電圧(V)と電流(μA)との関係を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 一般式(1) :
    Figure 0003608877
    (式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を示す。但し、RおよびRは同時に水素原子でないものとする。)
    で表されるキノン誘導体。
  2. 導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、前記感光層が請求項1記載の一般式(1) で表されるキノン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
  3. 前記感光層が、前記一般式(1) で表されるキノン誘導体とともに、酸化還元電位が−0.8〜−1.4Vである電子受容性化合物を含有する請求項2記載の電子写真感光体。
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