JP3612135B2 - 摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体 - Google Patents
摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結合金製のパッドを備えた摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、クラッチディスク(摩擦部材)には高いトルク容量を伝達することが望まれている。クラッチディスクのフェーシングとしては、通常、紙やコルク材等が使用されるが、このような構造のフェーシングではトルクの伝達容量が十分でない。
【0003】
そこで、高いトルク伝達容量を確保するために、セラミック粉末と金属粉末との混合物の焼結体(以下、焼結合金製パッドと記す)が使用されたクラッチディスクがある。このクラッチディスクは、一般に、鉄製の芯板に銅メッキを施し、さらにその上にセラミック粉末と金属粉末を配置し、これを加温(さらに加圧する場合もある)して形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような焼結合金製パッドを有するクラッチディスク組立体では、リング状のプレートをクラッチプレートの外周部に固定するとともに、このリング状のプレートの両面に焼結合金製パッドを固定している。すなわち従来の焼結合金製パッドを有するクラッチディスク組立体では、クラッチディスク部(摩擦部材部分)にクッション作用がなく、クラッチエンゲージ時のショックが大きい。
【0005】
そこで、1対のプレート部材のそれぞれに波加工等によって凸部を形成するとともに、その凸部分に焼結合金製パッドを固定し、これらの1対のプレート部材の背面を貼り合わせるようにして摩擦部材を構成することが考えられる。このような構成を採用すれば、クラッチエンゲージ時にプレート部材の凸部が撓み、クッショニング作用を得ることができる。
【0006】
しかし、プレート部材に焼結合金製パッドを固定する際にリベットが用いられるので、対向するプレート部材の背面に突出したリベットの頭部同士が衝突し、クッション量が制限されてしまう。したがって、リベットの固定位置が制限されてしまう。また、リベットの頭部同士の位置を干渉しないように設定したとしても、やはりリベットの頭部が一方のプレート部材の背面に当たるので、クッション量が制限されてしまう。また、クッション作用時にリベットの頭部のみが一方のプレート部材の背面に当接するので、焼結合金製パッドが全体的に均一に圧接されず、偏磨耗が生じる。
【0007】
本発明の課題は、焼結合金製パッドを用いた摩擦部材あるいはそれを用いたクラッチディスク組立体において、十分なクッション量を確保することにある。
【0008】
本発明の別の課題は、クッション量を確保しかつ耐磨耗性を向上させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る摩擦部材は、クラッチディスク本体の外周部に固定されるクラッチディスク組立体の摩擦部材であって、クラッチディスク本体の入力部に固定される環状のドリブンプレートと、ドリブンプレートの第1面側に配置され波加工されたクッショニングプレートと、第1及び第2の焼結合金製パッドとを有している。第1焼結合金製パッドはクッショニングプレートのドリブンプレートと逆側の面に固定されている。また第2焼結合金製パッドは、ドリブンプレートの一部をバーリング加工及びカール曲げ加工することによりドリブンプレートの第2面側に固定されている。そして、第1焼結合金製パッドはリベットによりクッショニングプレートに固定されており、ドリブンプレートのバーリング加工は第1焼結合金製パッドを固定するリベットに対向する位置に施されている。
【0010】
この摩擦部材では、2つの対向する焼結合金製パッドの間に波加工されたクッショニングプレートが設けられており、クラッチエンゲージ時にはこのクッショニングプレートが撓んでショックが緩和される。ここで、第2焼結合金製パッドは、ドリブンプレートの一部をバーリング加工及びカール曲げ加工してドリブンプレートの固定されているので、第2焼結合金製パッドを固定するためのリベットが不要になり、クッション量を十分に確保できる。また、第1焼結合金製パッドはリベットでクッショニングプレートに固定されているが、ドリブンプレートのリベットに対向する位置にはバーリング加工が施されている。すなわち孔が形成されている。したがって、リベットの頭部はその孔に入り込むことになり、2つの焼結合金製パッドが圧接された場合は、クッショニングプレートとドリブンプレートの背面同士、すなわち2つの焼結合金製パッドの背面同士が間接的に全面的に均一に当接することになる。このため、焼結合金製パッドの面圧分布が均一化し、耐磨耗性が向上する。
【0011】
請求項2に係る摩擦部材は、請求項1の摩擦部材において、クッショニングプレートは、内周端部がドリブンプレートとともにクラッチディスク本体の入力部に固定されるとともに、半径方向に向かって波加工が施されており、クッショニングプレート外周部をドリブンプレートに対して半径方向に移動自在にかつ円周方向に移動不能に支持するスライド支持機構をさらに有している。
【0012】
ここでは、クラッチエンゲージ時にクッショニングプレートが圧縮されると、クッショニングプレートは半径方向に波加工されかつ内周部が固定されているので、外周部が外方に移動しようとする。外周部は、スライド支持機構によって半径方向に移動自在に支持されているので、クッショニングプレートはスムーズに撓む。また、クッショニングプレートが熱膨張したとき、スライド支持機構によって外方に移動自在であるので熱歪みが抑えられる。さらに、クッショニングプレートがスライド支持機構によって支持されながら半径方向に移動する際に、クッショニングプレートとスライド支持機構との間にヒステリシスが発生する。このヒステリシスがクラッチの鳴き(異音)等に対して減衰効果を与える。
【0013】
請求項3に係る摩擦部材は、請求項2の摩擦部材において、スライド支持機構は、クッショニングプレートの外周端に外方から内方に向かって形成された半径方向の溝と、一端がドリブンプレートに固定され溝を貫通するピンとを有している。ここでは、スライド支持機構を簡単な構造で実現できる。
【0014】
請求項4に係るクラッチディスク組立体は、請求項1から3のいずれかに記載の摩擦部材と、摩擦部材が外周部に固定された入力側プレートと、入力側プレートに所定の角度範囲内で相対回転自在に設けられた出力側部材と、入力側プレートと出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するダンパー部とを備えている。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1及び図2に示す本発明の一実施形態によるクラッチディスク組立体1は本体部2とクラッチディスク(摩擦部材)3とを備えている。
【0016】
本体部2の中心には、トランスミッションの軸(図示せず)に連結されるスプラインハブ4が配置されている。スプラインハブ4は、ボス部4aと、ボス部4aから外周側に延びるフランジ部4bとを有している。フランジ部4bの両側方には、入力側プレートとしてのクラッチプレート5及びリテーニングプレート6が配置されている。両プレート5,6は、概ね円板状の部材であり、ボス部4aの外周に回転自在に係合している。フランジ部4bには、半径方向中間部に円周方向に延びる複数の窓孔4cが形成されており、この窓孔4cにトーションスプリング8が配置されている。このトーションスプリング8によって、クラッチプレート5及びリテーニングプレート6とスプラインハブ4とが円周方向に弾性的に連結されている。
【0017】
またフランジ部4bの外周部には、円周方向に等間隔で所定の幅の切欠き4dが形成されている。そして、この切欠き4dをストップピン9が軸方向に貫通しており、このストップピン9と内周側のスタッドピン10とによりクラッチプレート5とリテーニングプレート6とが互いに軸方向及び円周方向に相対移動不能に固定されている。また、ストップピン9と切欠き4dとの間には隙間が形成されており、これにより、ストップピン9と切欠き4dの縁部とが当接するまで、所定の角度範囲でクラッチプレート5及びリテーニングプレート6とスプラインハブ4とは相対回転可能である。
【0018】
フランジ部4bの内周部とクラッチプレート5及びリテーニングプレート6のそれぞれとの間には、ヒステリシストルクを発生するためのヒステリシストルク機構11が設けられている。ヒステリシストルク発生機構11は、リング状のフリクションワッシャ、フリクションプレート及びコーンスプリングにより構成されている。
【0019】
クラッチプレート5及びリテーニングプレート6は、それぞれフランジ部4bの窓孔4cに対応した位置に、軸方向外方に切り起こされた切起し部5a,6aを有しており、この切起し部5a,6aによって窓孔4c内のトーションスプリング8が支持されている。
【0020】
クラッチディスク3はクラッチプレート5の外周側に設けられており、リング状のドリブンプレート20と、3個のクッショニングプレート21と、ドリブンプレート20及びクッショニングプレート21に固定された複数の焼結合金製パッド22,23とを有している。
【0021】
ドリブンプレート20は、リング状に形成されており、円周方向に等間隔で3つの突出部20aを有している。そして、内周端部がリベット24によりクラッチプレート5の外周端部に固定されている。
【0022】
クッショニングプレート21は、図2及び図1の拡大図である図3に示すように、プレート部材を半径方向に波加工して形成したものであり、その形状はドリブンプレート20の突出部20aとほぼ同様である。そして、内周端部が、クラッチプレート5の外周端部にドリブンプレート5とともにリベット24により固定されている。また、クッショニングプレート21の外周部で円周方向の中央部には、外方から内方に向けて溝21aが切り欠かれている。溝21aには、一端がドリブンプレート20に固定されたスタッドピン25が貫通している。したがって、クッショニングプレート21は、ドリブンプレート20に対して円周方向には相対移動が不能であるが、半径方向には外周部のみが溝21a及びスタッドピン25に案内されてスライド自在である。このように、溝21aとスタッドピン25とにより、クッショニングプレート21の外周部をドリブンプレート20に対して半径方向にスライド自在にかつ円周方向に移動不能に支持するスライド支持機構が構成されている。
【0023】
第1焼結合金製パッド22は、1つのクッショニングプレート21に対して2個固定されており、図3に拡大して示すように、コアプレート30と、このコアプレート30上に焼結により形成された焼結合金31とから構成されている。コアプレート30及び焼結合金31にはそれぞれリベット固定用の孔30a,31aが形成されており、コアプレート30がリベット32によりクッショニングプレート21に固定されることにより、焼結合金製パッド22全体がクッショニングプレート21のドリブンプレート20と逆側の面に固定されている。
【0024】
第2焼結合金製パッド23は、ドリブンプレート20の1つの突出部20aに対して2個固定されており、第1焼結合金製パッド22と同様に、コアプレート40と焼結合金41とを有している。また、コアプレート40及び焼結合金41のそれぞれには孔40a,41aが形成されている。ドリブンプレート20には、第1焼結合金製パッド22を固定するリベット32と対向する位置に、バーリング加工が施されており、このバーリング加工部20b(図3参照)の先端は外方にカール曲げ加工が施されている。このバーリング加工部20bは、第2焼結合金製パッド23のコアプレート40の孔40aを貫通しており、カール曲げ加工部20c(図3参照)はコアプレート40をドリブンプレート20の表面に強固に支持している。このようにして、コアプレート40がドリブンプレート20に固定されることにより、第2焼結合金製パッド23全体がドリブンプレート20のクッショニングプレート21とは逆側の面に固定されている。
【0025】
このような構成のクラッチディスク組立体では、第1及び第2の焼結合金製パッド22,23の間にクッショニングプレート21が設けられているので、クラッチエンゲージ操作がなされ、両焼結合金製パッド22,23が図示しないフライホイールとプレッシャープレートとの間に圧接されると、クッショニングプレート21が弾性変形する。この弾性変形がクッションとして作用し、エンゲージ時のクッションが緩和される。
【0026】
このとき、第1焼結合金製パッド22はリベット32によりクッショニングプレート21に固定されているが、このリベット32の頭部は、ドリブンプレート20のバーリング加工部20bの孔に進入する。したがって、クッション量が制限されることはなく、かつドリブンプレート20とクッショニングプレート21の背面同士が全面的に当接することになる。すなわち、第1及び第2の焼結合金製パッド22,23が間接的にではあるが全面的に均一に荷重を受けることになり、偏磨耗が抑えられる。したがって、耐磨耗性が向上する。
【0027】
また、クッショニングプレート21は、内周端部がリベット24により固定されているが、外周部は溝21b及びスタッドピン25により半径方向にスライド自在であるので、弾性変形する際にスムーズに外方に変形する。この外方への変形の際に、スタッドピン25とクッショニングプレート21との間でヒステリシスが生じる。このヒステリシスは、クラッチの鳴きに対して減衰効果として有効に作用する。
【0028】
さらに、クラッチディスク3部分が加熱されてくると、クッショニングプレート21が熱膨張するが、クッショニングプレート21の外周部は前述のように半径方向にスライド自在であるので、これにより熱膨張を吸収でき、熱歪みを抑えることができる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本発明の摩擦部材及びクラッチディスク組立体によれば、焼結合金製のパッドを有するものにおいて、2つの対向する焼結合金製パッドの間にクッショニングプレートが設けられるとともに、一方の焼結合金製パッドは、ドリブンプレートの一部をバーリング加工及びカール曲げ加工してドリブンプレートに固定されているので、クッション量を十分に確保できる。
【0030】
また、第1焼結合金製パッドをリベットによりクッショニングプレートに固定し、第1焼結合金製パッドを固定するリベットに対向する位置にドリブンプレートのバーリング加工を施した場合は、リベットの頭部がバーリング加工部の孔に入り込むので、焼結合金製パッドの面圧分布が均一化し、耐磨耗性が向上する。
【0031】
さらに、クッショニングプレートの内周端部をクラッチディスク本体の入力部に固定し、半径方向に向かって波加工を施し、しかもクッショニングプレート外周部をドリブンプレートに対して半径方向に移動自在にかつ円周方向に移動不能に支持するスライド支持機構をさらに設けた場合は、クッショニングプレートはスムーズに撓む。また、クッショニングプレートの熱歪みが抑えられる。さらに、クッショニングプレートがスライド支持機構によって支持されながら半径方向に移動する際に、両者間にヒステリシスが発生するので、クラッチの鳴きに対して減衰効果を与える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例が採用されたクラッチディスク組立体の断面構成図。
【図2】前記クラッチディスク組立体の一部省略平面図。
【図3】図1の拡大部分図。
【符号の説明】
1 クラッチディスク組立体
3 クラッチディスク(摩擦部材)
4 スプラインハブ
5 クラッチプレート
6 リテーニングプレート
8 トーションスプリング
20 ドリブンプレート
20b バーリング加工部
20c カール曲げ加工部
21 クッショニングプレート
21a 溝
22,23 焼結合金製パッド
25 スタッドピン
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結合金製のパッドを備えた摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、クラッチディスク(摩擦部材)には高いトルク容量を伝達することが望まれている。クラッチディスクのフェーシングとしては、通常、紙やコルク材等が使用されるが、このような構造のフェーシングではトルクの伝達容量が十分でない。
【0003】
そこで、高いトルク伝達容量を確保するために、セラミック粉末と金属粉末との混合物の焼結体(以下、焼結合金製パッドと記す)が使用されたクラッチディスクがある。このクラッチディスクは、一般に、鉄製の芯板に銅メッキを施し、さらにその上にセラミック粉末と金属粉末を配置し、これを加温(さらに加圧する場合もある)して形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような焼結合金製パッドを有するクラッチディスク組立体では、リング状のプレートをクラッチプレートの外周部に固定するとともに、このリング状のプレートの両面に焼結合金製パッドを固定している。すなわち従来の焼結合金製パッドを有するクラッチディスク組立体では、クラッチディスク部(摩擦部材部分)にクッション作用がなく、クラッチエンゲージ時のショックが大きい。
【0005】
そこで、1対のプレート部材のそれぞれに波加工等によって凸部を形成するとともに、その凸部分に焼結合金製パッドを固定し、これらの1対のプレート部材の背面を貼り合わせるようにして摩擦部材を構成することが考えられる。このような構成を採用すれば、クラッチエンゲージ時にプレート部材の凸部が撓み、クッショニング作用を得ることができる。
【0006】
しかし、プレート部材に焼結合金製パッドを固定する際にリベットが用いられるので、対向するプレート部材の背面に突出したリベットの頭部同士が衝突し、クッション量が制限されてしまう。したがって、リベットの固定位置が制限されてしまう。また、リベットの頭部同士の位置を干渉しないように設定したとしても、やはりリベットの頭部が一方のプレート部材の背面に当たるので、クッション量が制限されてしまう。また、クッション作用時にリベットの頭部のみが一方のプレート部材の背面に当接するので、焼結合金製パッドが全体的に均一に圧接されず、偏磨耗が生じる。
【0007】
本発明の課題は、焼結合金製パッドを用いた摩擦部材あるいはそれを用いたクラッチディスク組立体において、十分なクッション量を確保することにある。
【0008】
本発明の別の課題は、クッション量を確保しかつ耐磨耗性を向上させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る摩擦部材は、クラッチディスク本体の外周部に固定されるクラッチディスク組立体の摩擦部材であって、クラッチディスク本体の入力部に固定される環状のドリブンプレートと、ドリブンプレートの第1面側に配置され波加工されたクッショニングプレートと、第1及び第2の焼結合金製パッドとを有している。第1焼結合金製パッドはクッショニングプレートのドリブンプレートと逆側の面に固定されている。また第2焼結合金製パッドは、ドリブンプレートの一部をバーリング加工及びカール曲げ加工することによりドリブンプレートの第2面側に固定されている。そして、第1焼結合金製パッドはリベットによりクッショニングプレートに固定されており、ドリブンプレートのバーリング加工は第1焼結合金製パッドを固定するリベットに対向する位置に施されている。
【0010】
この摩擦部材では、2つの対向する焼結合金製パッドの間に波加工されたクッショニングプレートが設けられており、クラッチエンゲージ時にはこのクッショニングプレートが撓んでショックが緩和される。ここで、第2焼結合金製パッドは、ドリブンプレートの一部をバーリング加工及びカール曲げ加工してドリブンプレートの固定されているので、第2焼結合金製パッドを固定するためのリベットが不要になり、クッション量を十分に確保できる。また、第1焼結合金製パッドはリベットでクッショニングプレートに固定されているが、ドリブンプレートのリベットに対向する位置にはバーリング加工が施されている。すなわち孔が形成されている。したがって、リベットの頭部はその孔に入り込むことになり、2つの焼結合金製パッドが圧接された場合は、クッショニングプレートとドリブンプレートの背面同士、すなわち2つの焼結合金製パッドの背面同士が間接的に全面的に均一に当接することになる。このため、焼結合金製パッドの面圧分布が均一化し、耐磨耗性が向上する。
【0011】
請求項2に係る摩擦部材は、請求項1の摩擦部材において、クッショニングプレートは、内周端部がドリブンプレートとともにクラッチディスク本体の入力部に固定されるとともに、半径方向に向かって波加工が施されており、クッショニングプレート外周部をドリブンプレートに対して半径方向に移動自在にかつ円周方向に移動不能に支持するスライド支持機構をさらに有している。
【0012】
ここでは、クラッチエンゲージ時にクッショニングプレートが圧縮されると、クッショニングプレートは半径方向に波加工されかつ内周部が固定されているので、外周部が外方に移動しようとする。外周部は、スライド支持機構によって半径方向に移動自在に支持されているので、クッショニングプレートはスムーズに撓む。また、クッショニングプレートが熱膨張したとき、スライド支持機構によって外方に移動自在であるので熱歪みが抑えられる。さらに、クッショニングプレートがスライド支持機構によって支持されながら半径方向に移動する際に、クッショニングプレートとスライド支持機構との間にヒステリシスが発生する。このヒステリシスがクラッチの鳴き(異音)等に対して減衰効果を与える。
【0013】
請求項3に係る摩擦部材は、請求項2の摩擦部材において、スライド支持機構は、クッショニングプレートの外周端に外方から内方に向かって形成された半径方向の溝と、一端がドリブンプレートに固定され溝を貫通するピンとを有している。ここでは、スライド支持機構を簡単な構造で実現できる。
【0014】
請求項4に係るクラッチディスク組立体は、請求項1から3のいずれかに記載の摩擦部材と、摩擦部材が外周部に固定された入力側プレートと、入力側プレートに所定の角度範囲内で相対回転自在に設けられた出力側部材と、入力側プレートと出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するダンパー部とを備えている。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1及び図2に示す本発明の一実施形態によるクラッチディスク組立体1は本体部2とクラッチディスク(摩擦部材)3とを備えている。
【0016】
本体部2の中心には、トランスミッションの軸(図示せず)に連結されるスプラインハブ4が配置されている。スプラインハブ4は、ボス部4aと、ボス部4aから外周側に延びるフランジ部4bとを有している。フランジ部4bの両側方には、入力側プレートとしてのクラッチプレート5及びリテーニングプレート6が配置されている。両プレート5,6は、概ね円板状の部材であり、ボス部4aの外周に回転自在に係合している。フランジ部4bには、半径方向中間部に円周方向に延びる複数の窓孔4cが形成されており、この窓孔4cにトーションスプリング8が配置されている。このトーションスプリング8によって、クラッチプレート5及びリテーニングプレート6とスプラインハブ4とが円周方向に弾性的に連結されている。
【0017】
またフランジ部4bの外周部には、円周方向に等間隔で所定の幅の切欠き4dが形成されている。そして、この切欠き4dをストップピン9が軸方向に貫通しており、このストップピン9と内周側のスタッドピン10とによりクラッチプレート5とリテーニングプレート6とが互いに軸方向及び円周方向に相対移動不能に固定されている。また、ストップピン9と切欠き4dとの間には隙間が形成されており、これにより、ストップピン9と切欠き4dの縁部とが当接するまで、所定の角度範囲でクラッチプレート5及びリテーニングプレート6とスプラインハブ4とは相対回転可能である。
【0018】
フランジ部4bの内周部とクラッチプレート5及びリテーニングプレート6のそれぞれとの間には、ヒステリシストルクを発生するためのヒステリシストルク機構11が設けられている。ヒステリシストルク発生機構11は、リング状のフリクションワッシャ、フリクションプレート及びコーンスプリングにより構成されている。
【0019】
クラッチプレート5及びリテーニングプレート6は、それぞれフランジ部4bの窓孔4cに対応した位置に、軸方向外方に切り起こされた切起し部5a,6aを有しており、この切起し部5a,6aによって窓孔4c内のトーションスプリング8が支持されている。
【0020】
クラッチディスク3はクラッチプレート5の外周側に設けられており、リング状のドリブンプレート20と、3個のクッショニングプレート21と、ドリブンプレート20及びクッショニングプレート21に固定された複数の焼結合金製パッド22,23とを有している。
【0021】
ドリブンプレート20は、リング状に形成されており、円周方向に等間隔で3つの突出部20aを有している。そして、内周端部がリベット24によりクラッチプレート5の外周端部に固定されている。
【0022】
クッショニングプレート21は、図2及び図1の拡大図である図3に示すように、プレート部材を半径方向に波加工して形成したものであり、その形状はドリブンプレート20の突出部20aとほぼ同様である。そして、内周端部が、クラッチプレート5の外周端部にドリブンプレート5とともにリベット24により固定されている。また、クッショニングプレート21の外周部で円周方向の中央部には、外方から内方に向けて溝21aが切り欠かれている。溝21aには、一端がドリブンプレート20に固定されたスタッドピン25が貫通している。したがって、クッショニングプレート21は、ドリブンプレート20に対して円周方向には相対移動が不能であるが、半径方向には外周部のみが溝21a及びスタッドピン25に案内されてスライド自在である。このように、溝21aとスタッドピン25とにより、クッショニングプレート21の外周部をドリブンプレート20に対して半径方向にスライド自在にかつ円周方向に移動不能に支持するスライド支持機構が構成されている。
【0023】
第1焼結合金製パッド22は、1つのクッショニングプレート21に対して2個固定されており、図3に拡大して示すように、コアプレート30と、このコアプレート30上に焼結により形成された焼結合金31とから構成されている。コアプレート30及び焼結合金31にはそれぞれリベット固定用の孔30a,31aが形成されており、コアプレート30がリベット32によりクッショニングプレート21に固定されることにより、焼結合金製パッド22全体がクッショニングプレート21のドリブンプレート20と逆側の面に固定されている。
【0024】
第2焼結合金製パッド23は、ドリブンプレート20の1つの突出部20aに対して2個固定されており、第1焼結合金製パッド22と同様に、コアプレート40と焼結合金41とを有している。また、コアプレート40及び焼結合金41のそれぞれには孔40a,41aが形成されている。ドリブンプレート20には、第1焼結合金製パッド22を固定するリベット32と対向する位置に、バーリング加工が施されており、このバーリング加工部20b(図3参照)の先端は外方にカール曲げ加工が施されている。このバーリング加工部20bは、第2焼結合金製パッド23のコアプレート40の孔40aを貫通しており、カール曲げ加工部20c(図3参照)はコアプレート40をドリブンプレート20の表面に強固に支持している。このようにして、コアプレート40がドリブンプレート20に固定されることにより、第2焼結合金製パッド23全体がドリブンプレート20のクッショニングプレート21とは逆側の面に固定されている。
【0025】
このような構成のクラッチディスク組立体では、第1及び第2の焼結合金製パッド22,23の間にクッショニングプレート21が設けられているので、クラッチエンゲージ操作がなされ、両焼結合金製パッド22,23が図示しないフライホイールとプレッシャープレートとの間に圧接されると、クッショニングプレート21が弾性変形する。この弾性変形がクッションとして作用し、エンゲージ時のクッションが緩和される。
【0026】
このとき、第1焼結合金製パッド22はリベット32によりクッショニングプレート21に固定されているが、このリベット32の頭部は、ドリブンプレート20のバーリング加工部20bの孔に進入する。したがって、クッション量が制限されることはなく、かつドリブンプレート20とクッショニングプレート21の背面同士が全面的に当接することになる。すなわち、第1及び第2の焼結合金製パッド22,23が間接的にではあるが全面的に均一に荷重を受けることになり、偏磨耗が抑えられる。したがって、耐磨耗性が向上する。
【0027】
また、クッショニングプレート21は、内周端部がリベット24により固定されているが、外周部は溝21b及びスタッドピン25により半径方向にスライド自在であるので、弾性変形する際にスムーズに外方に変形する。この外方への変形の際に、スタッドピン25とクッショニングプレート21との間でヒステリシスが生じる。このヒステリシスは、クラッチの鳴きに対して減衰効果として有効に作用する。
【0028】
さらに、クラッチディスク3部分が加熱されてくると、クッショニングプレート21が熱膨張するが、クッショニングプレート21の外周部は前述のように半径方向にスライド自在であるので、これにより熱膨張を吸収でき、熱歪みを抑えることができる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本発明の摩擦部材及びクラッチディスク組立体によれば、焼結合金製のパッドを有するものにおいて、2つの対向する焼結合金製パッドの間にクッショニングプレートが設けられるとともに、一方の焼結合金製パッドは、ドリブンプレートの一部をバーリング加工及びカール曲げ加工してドリブンプレートに固定されているので、クッション量を十分に確保できる。
【0030】
また、第1焼結合金製パッドをリベットによりクッショニングプレートに固定し、第1焼結合金製パッドを固定するリベットに対向する位置にドリブンプレートのバーリング加工を施した場合は、リベットの頭部がバーリング加工部の孔に入り込むので、焼結合金製パッドの面圧分布が均一化し、耐磨耗性が向上する。
【0031】
さらに、クッショニングプレートの内周端部をクラッチディスク本体の入力部に固定し、半径方向に向かって波加工を施し、しかもクッショニングプレート外周部をドリブンプレートに対して半径方向に移動自在にかつ円周方向に移動不能に支持するスライド支持機構をさらに設けた場合は、クッショニングプレートはスムーズに撓む。また、クッショニングプレートの熱歪みが抑えられる。さらに、クッショニングプレートがスライド支持機構によって支持されながら半径方向に移動する際に、両者間にヒステリシスが発生するので、クラッチの鳴きに対して減衰効果を与える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例が採用されたクラッチディスク組立体の断面構成図。
【図2】前記クラッチディスク組立体の一部省略平面図。
【図3】図1の拡大部分図。
【符号の説明】
1 クラッチディスク組立体
3 クラッチディスク(摩擦部材)
4 スプラインハブ
5 クラッチプレート
6 リテーニングプレート
8 トーションスプリング
20 ドリブンプレート
20b バーリング加工部
20c カール曲げ加工部
21 クッショニングプレート
21a 溝
22,23 焼結合金製パッド
25 スタッドピン
Claims (4)
- クラッチディスク本体の外周部に固定されるクラッチディスク組立体の摩擦部材であって、
前記クラッチディスク本体の入力部に固定される環状のドリブンプレートと、
前記ドリブンプレートの第1面側に配置され、波加工されたクッショニングプレートと、
前記クッショニングプレートの前記ドリブンプレートと逆側の面に固定された第1焼結合金製パッドと、
前記ドリブンプレートの一部をバーリング加工及びカール曲げ加工することにより前記ドリブンプレートの第2面側に固定された第2焼結合金製パッドと、
を備え、
前記第1焼結合金製パッドはリベットにより前記クッショニングプレートに固定されており、
前記ドリブンプレートのバーリング加工は前記第1焼結合金製パッドを固定するリベットに対向する位置に施されている、
摩擦部材。 - 前記クッショニングプレートは、内周端部が前記ドリブンプレートとともに前記クラッチディスク本体の入力部に固定されるとともに、半径方向に向かって波加工が施されており、
前記クッショニングプレート外周部を前記ドリブンプレートに対して半径方向に移動自在にかつ円周方向に移動不能に支持するスライド支持機構をさらに有している、
請求項1に記載の摩擦部材。 - 前記スライド支持機構は、前記クッショニングプレートの外周端に外方から内方に向かって形成された半径方向の溝と、一端が前記ドリブンプレートに固定され前記溝を貫通するピンとを有している、請求項2に記載の摩擦部材。
- 請求項1から3のいずれかに記載の摩擦部材と、
前記摩擦部材が外周部に固定された入力側プレートと、
前記入力側プレートに所定の角度範囲内で相対回転自在に設けられた出力側部材と、
前記入力側プレートと出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するダンパー部と、
を備えたクラッチディスク組立体。
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|---|---|---|---|
| JP04352596A JP3612135B2 (ja) | 1996-02-29 | 1996-02-29 | 摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP04352596A JP3612135B2 (ja) | 1996-02-29 | 1996-02-29 | 摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体 |
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| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH09236134A JPH09236134A (ja) | 1997-09-09 |
| JP3612135B2 true JP3612135B2 (ja) | 2005-01-19 |
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Family Applications (1)
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|---|---|---|---|
| JP04352596A Expired - Fee Related JP3612135B2 (ja) | 1996-02-29 | 1996-02-29 | 摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体 |
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| JP (1) | JP3612135B2 (ja) |
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|---|---|---|---|---|
| FR3047527B1 (fr) * | 2016-02-05 | 2019-04-12 | Valeo Embrayages | Dispositif de progressivite pour disque de friction d'embrayage et disque integrant un tel dispositif |
-
1996
- 1996-02-29 JP JP04352596A patent/JP3612135B2/ja not_active Expired - Fee Related
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| Publication number | Publication date |
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| JPH09236134A (ja) | 1997-09-09 |
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