JP3615674B2 - 斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、斜板式コンプレッサを構成する部品の一つである斜板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両空調システム等に一般的に使用されているコンプレッサには、シャフトに対する斜板の傾斜角が一定に設定された容量固定式のコンプレッサと、シャフトに対する斜板の傾斜角が可変とされた容量可変式のコンプレッサがある。いずれの斜板式コンプレッサも、回転駆動するシャフトとこれに同期回転する円盤状の斜板を有し、シャフトを回転させることにより、斜板に摺動するように取り付けられたピストンが所定の往復運動を行う。ピストンはシリンダ内に嵌装されており、ピストンがシリンダ内を往復運動することにより、吸入、圧縮、排気行ってコンプレッサとして機能する。
【0003】
ここに使用される斜板は、一般的に、図1に示す形状をしている。図1(a)は、容量固定式コンプレッサに用いる斜板の概略形状を示し、斜板1は、略円盤形状なし、中央部のボス部1cにシャフトが挿通するための穴1aが設けられ、外周近くに摺動面となる周辺部1bを有している。シャフト穴1aは略円盤状の部分に対し所定の角度をもって斜めに設けられており、斜板1はシャフトに対し一定の傾斜角を有するものとなっている。また、図1(b)は、容量可変式コンプレッサに用いられる斜板の概略形状を示し、斜板2は、略円盤状をなしており、外周近くに摺動面となる周辺部2bを有し、中央部にボス部を有するとともに、その中心にシャフトがその角度を変えつつ挿通することのできる比較的大きい径のシャフト穴2aが設けられている。
【0004】
上記斜板は、コンプレッサ部品としての機能を果たすため、静的強度、疲労強度が高く、耐摩耗性、耐衝撃性に優れ、低熱膨張係数を有すること等、種々の特性が要求される。この要求を満たす材料として、A390を始めとする過共晶Al−Si系合金が広く用いられている。この過共晶Al−Si系合金を用いて斜板を製造する方法としては、鋳造あるいは鍛造が考えられるが、鋳造では強度が低くまた各種特性においてもばらつくことから、信頼性を考慮し、鍛造によって製造されるのが一般的になっている。ところが、過共晶Al−Si系合金は、初晶Siを含む組織となっており、比較的脆くまた比較的変形能力が低く、加工程度が大きい鍛造を施すと、割れ等の欠陥が発生しやすいものである。
【0005】
従来、斜板の鍛造は、図6に模式的に示すような方法にて行っていた。図6に示すのは、固定容量式コンプレッサ用の斜板の鍛造であり、必要とする外形形状を成形するためのキャビティ30を形成する上下の鍛造金型10、20を用い、この金型10、20内に素材を納置し、加圧することにより素材をキャビティ30内に充満させるように鍛造して斜板1を得るようにしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の鍛造方法では、素材の塑性流動が効率的ではなく、キャビティの隅々にまで素材が充満せず製品に欠肉を生じる、斜板の外周部に素材の被りが生じる、製品の各所に割れが発生する等といった鍛造欠陥が発生しやすいものとなっていた。また、鍛造時の塑性流動の効率がよくないことは、金型の摩耗をも引き起こし、金型寿命を短いものとしていた。さらに、従来の方法では、素材量のバラツキによって精密な鍛造が困難で、後の機械加工等による加工代の大きい製品しか鍛造できず、特に過大量の素材が投入された場合、製品自体に不可避的なバリが生じたり、金型が割れるといったトラブルを生じ易いものとなっていた。
【0007】
さらにまた、上記従来の鍛造方法では、中央部に加工するシャフト穴を同時に鍛造するべくパンチ(突起)を取付けた金型を用いた場合、塑性流動がより複雑なものとなり、上述した鍛造欠陥、金型への負荷はさらに増加するものとなっていた。したがって、シャフト穴の同時鍛造は断念せざるを得ず、鍛造後に切削加工等を行ってシャフト穴を穿孔しており、後工程への負担、材料ロスが大きいものとなっていた。
【0008】
本発明は、上記従来の鍛造方法の抱える問題を解決すべくなされたものであり、余剰素材が流入する空間をキャビティ内に設け、また、鍛造時の素材の塑性流動を適正なものとすることにより、鍛造欠陥が少なく、金型への負担が小さく、かつ中央部に設けるシャフト穴の加工までもが同時に行えるという利点を有する、優れた鍛造工程を含む斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法は、中央部にシャフトが挿通するためシャフト穴を有し略円盤形状をなす斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法であって、衝合することでキャビティを形成する第1の型と第2の型とからなり、該第1の型または該第2の型のいずれか一方は前記シャフト穴を成形するためのシャフト穴成形パンチを有し、該第1の型または該第2の型の他方は該パンチに対向する位置に凹部を有する鍛造金型を用い、該鍛造金型内に円柱の外形を有する鍛造素材を納置し該第1の型と該第2の型とを衝合して加圧し、前記キャビティ内に該鍛造素材を塑性流動させて充満させ、必要とされる製品形状をもつ製品部と該製品部の外部に連続して付帯し該鍛造素材のうちの製品部を形成しない余剰素材が前記凹部に塑性流動することによって形成される付帯部とを一体に成形する鍛造工程と、前記付帯部を前記製品部から除去する付帯部除去工程とを含んでなることを特徴とする。
【0010】
つまり、本発明の製造方法の最大の特徴は、金型に凹部を設けることで余剰素材が流入する空間をキャビティ内に存在させ、もうもう一方の金型のこの空間に対向する位置に中央部のシャフト穴を成形するためのパンチを付設し、パンチをこの空間に向かって押し進めるように素材を加圧して鍛造を行う鍛造工程にある。この鍛造工程では、キャビティ内において、素材を効率よく塑性流動させつつ充満させることが可能となる。
【0011】
キャビティ内における鍛造素材の塑性流動の適正化と余剰素材が流入する空間の存在により、本発明の製造方法の鍛造工程では、割れ、被り等の鍛造欠陥が極めて少なくかつ寸法精度の良好な製品を鍛造することができる。また、余剰素材が流入する空間は、余剰素材の内さらに過剰な過剰素材を効率的に吸収できる空間となり、鍛造金型への負担が少なく、型割れの危険性が極めて小さくかつ型寿命を長くすることが可能となる。さらに、本発明の製造方法は、それまで行い得なかった斜板外形と中央部のシャフト穴との同時鍛造成形をも可能とし、余剰素材から形成される付帯部を後に続く簡便な方法によって除去するだけでよく、効率のよいかつ製造コストの小さな製造方法となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法が適用される対象は、斜板式コンプレッサの構成部品の一つである斜板である。斜板式コンプレッサは、前述のように、容量固定のものと容量可変のものがあり、そのいずれに用いる斜板にも適用できる。容量固定式コンプレッサの斜板は図1(a)に示すような形状をしており、また、容量可変式コンプレッサの斜板は図1(b)に示すような形状をしている。いずれの斜板も、摺動面となる略円盤状の周辺部を有し、かつ中央部にシャフトが挿通するためのシャフト穴を有している。固定式斜板は、周辺部を構成する円盤と所定の角度をもったシャフト穴が形成され、シャフト穴の周囲は、周辺部より厚肉となってボス部を形成している。
【0013】
斜板の材質は、特に限定するものではないが、一般にアルミニウム合金が用いられ、本発明の製造方法は、このアルミニウム合金製の斜板に対して特にその効果を発揮する。用いることのできるアルミニウム合金としては、亜共晶Al−Si系、過共晶Al−Si系等を挙げることができる。コスト、機械的特性等のバランス等を考慮すれば、例えば、A390、A4032、AC9種等のAl−Si系アルミニウム合金を用いればよい。
【0014】
本発明の製造方法の鍛造工程で用いられる鍛造金型は、衝合することでキャビティを形成する第1の型と第2の型とからなる。例えば、竪型の鍛造機を用いる場合は、上型と下型の2つの型になる。2つの型が衝合することによって形成されるキャビティは、鍛造において素材が塑性流動して充満する空間となる。キャビティは、上述した斜板の周辺部および中央部からなる製品形状に合致する製品部と、後に詳しくする付帯部とを同時に成形することのできる空間形状となっている。
【0015】
鍛造金型を構成する第1の型または第2の型のいずれか一方は前記シャフト穴を成形するためのシャフト穴成形パンチを有する。シャフト穴成形パンチは、製品に設けられるシャフト穴の内径と同じ外径をもつ突起である。鍛造素材が、このパンチによって周辺部に押し広がるように塑性流動させられる、あるいは、このパンチに向かって塑性流動させられることによって、製品の中央部に設けられるシャフト穴を成形する。
【0016】
鍛造金型を構成する第1の型または該第2の型の他方は上記シャフト穴成形パンチに対向する位置に凹部を有している。この凹部は、シャフト穴成形パンチの先端部と相俟って、所定の空間を形成する。この空間は、必要とされる上記製品部を成形する空間と連続し、製品として必要とされる部分外に存在する空間となる。この空間は、鍛造時に素材が塑性流動して入り込むことで、付帯部を成形する空間となる。
【0017】
付帯部を形成する空間の存在により、素材の塑性流動は活性化することになり、製品の中央部に設けられるシャフト穴が容易に形成することができる。また、塑性流動が活性化することは、鍛造時における素材と金型との間の摩擦をも軽減できることとなり、金型の摩耗の少ない鍛造工程が実現でき、さらに、割れ、被りといった鍛造欠陥を防止することにもつながる。さらにまた、付帯部を形成する空間は、余剰素材のなかでもさらに過剰となる過剰素材を吸収することのできる空間となり、鍛造バリ等の発生を防止するばかりでなく、異常な鍛造金型への負荷がなくなり、型割れ等のトラブルのない鍛造工程をも実現できる。
【0018】
鍛造は、上記鍛造金型を用い、鍛造金型内に円柱の外形を有する鍛造素材を納置し第1の型と第2の型とを衝合して加圧し、キャビティ内に該鍛造素材を塑性流動させて充満させ、必要とされる製品形状をもつ製品部と、製品部の外部に連続して付帯し鍛造素材のうちの製品部を形成しない余剰素材が前記凹部に塑性流動することによって形成される付帯部とを一体に成形する。鍛造機は、製品に応じた能力を持つ既存の鍛造機を用いればよく、特に限定するものではない。鍛造条件についても一般に行う条件に従えばよい。なお、アルミニウム合金の素材から鍛造する場合は、熱間鍛造によるのがよく、360〜450℃の範囲に加熱した素材に鍛造を施すのが望ましい。
【0019】
金型に設ける凹部の形状は、塑性流動の活性化、過剰素材の吸収といった機能を担保できるものであれば、特に限定するものではない。ただし、効率的な塑性流動等を考慮して、凹部の形状を、錘状に凹む錘部と、該錘部に通じ小さな断面積を有する導出路部とからなるような形状とし、付帯部は、錘体と該錘体から延出する軸体とを有する形状に成形するのが望ましい。
【0020】
錐状に凹む錘部とは、いわゆるすり鉢状に窪むような形状の凹部を意味する。このような凹部は、製品部から遠ざかるにつれて断面積が小さくなるような錘体形状の付帯部が成形される。換言すれば、この錘部によって成形される付帯部は底面を製品部に向けた錘体となる。このような形状の凹部に向かって素材が塑性流動することにより、キャビティ内の素材の塑性流動がよりスムーズなものとなり、また過度に余剰となる素材を必要としないというメリットがある。錘部を構成する錘面は、円錐面、角錘面のいずれであってもよいが、よりスムーズな塑性流動を確保するためには円錐面であるのが望ましい。
【0021】
錘部に通ずる導出路部は、錘部をはみ出す過剰素材を導くための通路である。キャビティ内に素材を充満させるために素材全体にある程度の静水圧的な圧力がかかる必要があることから、導出路部は断面積の小さな通路であることが望ましい。Al−Si系合金を鍛造素材として使用する場合、円形断面をもつ導出路部とするときは、その通路径を1〜10mmφとするのが好ましく、2〜4mmφとするのがより好ましい。なお、導出路部に流入する過剰素材は、製品の付帯部の内の軸体として成形される。
【0022】
また、効率よく導出路に素材を導くためには、導出路部は、その一端を、錘部の最深部、つまり錘部を構成する錘面の頂にあたる部分に通じていることが望ましい。さらに、導出路部によって軸体状の付帯部が成形されるため、この軸体状の部分が金型から容易に離脱できることが必要となる。そこでこの導出路部は、鍛造後の製品を金型から離脱する方向に平行な方向に真っ直ぐに設けることが好ましい。
【0023】
導出路部の他端は、金型の外部に通じていることが望ましい。導出路部の他端を金型外部に通じさせれば、例えば、2以上の素材が納置される等、極端に過剰となる素材が金型内に納置された場合であっても、過剰素材がこの導出路を通過して金型内に排出されるため、金型への負担を小さくできことになり、型割れ等の一層の防止効果がある。
【0024】
鍛造工程で金型内に納置する鍛造素材は、製品となる斜板が略円盤状をしていることから、円柱の外形を有する形状のものとする。本製造方法の鍛造工程では、中央部のシャフト穴をも同時成形する。例えば、可変容量式斜板のように、製品自体が比較的薄くかつ円盤外周径に対するシャフト穴径が比較的大きい形状をもつ斜板を鍛造する場合等には、シャフト穴成形パンチを鍛造素材に据込むことによって、素材を周辺部に押し広げるように塑性流動させて鍛造成形することができる。このような態様の鍛造成形によれば、従来のシャフト穴を成形しない鍛造の場合と比較して、小さい外径を有する円柱状の鍛造素材を用いることができる。鍛造素材は長い棒状の素材から所定の長さに切断して作製される。この場合外径の小さな棒状素材から鍛造素材を作製できることとなり、切断精度のバラツキによる1つあたりの鍛造素材の量のバラツキ小さくなるというメリットを有する。
【0025】
繰り返すが、例えば、可変容量式斜板のように、製品自体が比較的薄くかつ円盤外周径に対するシャフト穴径が比較的大きい形状をもつ斜板を鍛造する場合等には、シャフト穴成形パンチを鍛造素材に据込むことで、このパンチによって素材が周辺部に押し広げられるように塑性流動して鍛造することができる。この場合、シャフト穴成形パンチは、その先端を凸状にするのが望ましい。先端を凸状にすることによって、この凸状部が鍛造素材にまず当接し、素材の周辺部への押し広げをよりスムーズなものとすることができる。また、シャフト穴成形パンチの先端の凸部形状を対向する他方の型の凹部形状に適合させることが望ましい。形成される付帯部の体積を減少させることができ、余剰素材の少ない効率的な鍛造を行うことができる。
【0026】
本発明の製造方法では、鍛造素材を、その円柱形状の1端面にシャフト穴より大きな断面をもつ凹みを有するような形状のものとし、その凹みにシャフト穴成形パンチが挿入されるようにその鍛造素材を鍛造金型内に納置して鍛造工程を行うことができる。例えば、固定容量式斜板のように、ボス部を有し、シャフト穴の穴径が比較的小さく、シャフト穴の長さ(深さ)が長い(深い)形状の斜板の製造に効果的な実施態様である。
【0027】
シャフト穴が小さくかつ長い斜板をそのシャフト穴をも同時に鍛造成形する場合、単純な(中実な)円柱状素材を用い、鍛造金型に設けたシャフト穴成形パンチによってその素材を周辺部に押し広げるように鍛造することは、シャフト穴成形パンチにかかる負荷が大きいばかりでなく、キャビティ内での素材の塑性流動が適切なものとならない可能性がある。そこで本態様のように、鍛造素材にシャフト穴より大きな断面をもつ凹みを設ける、いわば底付きパイプのような形状の鍛造素材を用いることにより、シャフト穴成形パンチへの負担軽減と素材の塑性流動の適切化を図ることができる。
【0028】
凹みを設けた鍛造素材のその凹みは、鍛造時に挿入されるシャフト成形パンチの周囲に、擬空間を存在させる。そして、鍛造金型を衝合して素材を加圧することにより、素材は周辺部に向かって押し広げられるだけでなく、その擬空間を充てんするように中央部に寄せられる方向にも塑性流動する。このような塑性流動が可能となることにより、比較的小さな穴径の比較的長いシャフト穴の同時鍛造成形が可能となる。
【0029】
塑性流動をより適正なものとするためには、鍛造素材に設ける凹みの空間体積と製品に成形されるシャフト穴の空間体積との間に、ある関係が存在することを、本発明者は見出した。その関係は、鍛造素材に設ける凹みの空間体積をV0、製品に成形されるシャフト穴の空間体積をVeをした場合に、その空間体積比(V0/Ve)を1.1〜2.5の範囲とするのが望ましいというものである。V0/Veの値が1.1未満の場合は、鍛造時に適正な塑性流動を達成できなくなる可能性があり、また、2.5を超える場合は、鍛造時に座屈したり、被り、欠肉等の鍛造欠陥を生じる可能性があるからである。
【0030】
上述したような一端面にシャフト穴より大きな断面をもつ凹みを有する円柱形状の鍛造素材を成形するために、本発明の製造方法では、端面に前記凹みを形成させるための凸部を有する予備鍛造金型を用い、前記鍛造素材より小さな外径の円柱形状をした素材を、該素材の一端面に該凸部を据込むようにして鍛造することにより、該鍛造素材を成形する予備鍛造工程を行う実施形態とすることもできる。
【0031】
この予備鍛造工程で用いる予備鍛造金型は、衝合することによりキャビティを形成する2つの型の一方に凹みを形成させるための凸部(パンチ)を有するものである。予備鍛造されて成形される鍛造素材の外径より小さな外径を有する円柱形状素材を予備鍛造金型内に納置し、その円柱一端面に凸部を当接させて加圧し、素材を押し広げるように塑性流動させてキャビティ内に充満させて予備鍛造を行う。
【0032】
上記凹部を形成しつつその凸部により半径方向の外側に向かって素材を押し広げるという凸部の作用により、キャビティに充満しようとする素材は、静水圧的に、換言すれば素材全体に均一に圧力が加えられるような状態で、据込鍛造が行われる。このような方法の予備鍛造により、より小さな外径の素材を使用することができ、切断精度のバラツキによる素材1つ当たりの量のバラツキを少なくすることができ、後に続く鍛造工程の加工精度を高めることもできる。ちなみにAl−Si系の合金を使用する場合、凹部を形成しないで素材径を大きくするような予備鍛造を行う場合、予備鍛造後の鍛造素材の80%以上の径をもつ素材しか使用できないのに対し、本予備鍛造工程においては、30〜70%という小さい外径を有する素材を使用することができる。なお素材径が小さいほど、切断にかかる工数も小さくなり、生産性も向上するものとなる。
【0033】
この予備鍛造工程で用いる鍛造機についても特に限定するものではなく、一般に用いるられている鍛造機を使用できる。次工程となる鍛造工程を、別ステージとして同じ鍛造機に組み込んで行うこともできる。なお、アルミニウム合金の素材から予備鍛造する場合は、熱間鍛造によるのがよく、360〜450℃の範囲に加熱した素材に予備鍛造を施すのが望ましい。
【0034】
次に本発明の製造方法では、シャフト穴とは別の1以上の貫通穴を有する斜板を製造する場合、第1の型または第2の型のいずれか一方に1以上の貫通穴を成形するための1以上の貫通穴成形パンチを有し、第1の型または第2の型の他方はそのパンチに対向する位置にさらに1以上の凹部を有するような鍛造金型を用い、それぞれの凹部に塑性流動することによって複数の付帯部が形成されるように鍛造工程を行う実施形態とすることができる。
【0035】
斜板は、シャフト穴以外に、油穴、重量軽減のための肉抜き穴等、その周辺部等を貫通する貫通穴を有する形状のものもある。このような斜板を製造する場合、同時にこれらの貫通穴をも鍛造加工にて成形したいときもある。この場合、上述した凹部を貫通穴形成パンチに対向する位置に設け、貫通穴の数に応じた数の付帯部を形成することによって、塑性流動を適切なものに保ちつつ、鍛造欠陥等の発生の少ない斜板の製造を行うことができる。
【0036】
さらに本発明の製造方法では、貫通穴をも同時鍛造成形する場合において、円柱形状の1端面にシャフト穴より大きな断面をもつ凹みおよびその貫通穴より大きな断面をもつ1以上の凹みを有する鍛造素材を用い、それぞれの凹みにシャフト穴成形パンチおよび貫通穴成形パンチがそれぞれ挿入されるようにその鍛造素材を鍛造金型内に納置して鍛造工程を行う実施形態とすることもできる。
【0037】
一般に、油穴等の貫通穴は、その断面積が小さな穴となる。小さな断面積をもつ貫通穴をパンチを素材に押し込むようにして鍛造成形を行うと、そのパンチに大きな負荷がかかること等が原因して、うまく成形できない。そこで、貫通穴成形パンチの周囲についても上述した擬空間を存在させ、小さな断面積の貫通穴であっても、素材の塑性流動を適切なものとすることにより、容易に同時鍛造成形ができることとなる。
【0038】
斜板には、種々の形状があり、例えば、斜板の周辺部を平板状に成形するのではなく、補強リブ等の役割を果たすような凹凸部を有する形状に成形したい場合もある。このような場合は、2つの型によって形成するキャビティを、必要とする形状に合致した形状とすることによって可能となる。このように、従来から行われている種々の鍛造方法を本製造方法に採り入れることは可能であり、本製造方法の鍛造工程の実施形態は、上述した実施形態に決して限定されるものではない。
【0039】
上述した鍛造工程の後に行う付帯部除去工程は、その方法を特に限定するものではない。例えば、金型を用いたプレス切断、プラズマによる溶断、あるいは旋盤等を用いた機械加工による切削等、いずれの方法によっても行うことができる。同じ鍛造機を用い、別ステージにプレス切断金型を組み込み、鍛造工程に連動させて行うことで工程を簡略化することもでき、また、機械加工による切削の場合は、精密仕上げ加工と同時に行うことによって工程数を省略することもできる。
【0040】
【実施例】
以下に、図を参照しつつ、本発明の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法、特にその中の鍛造工程について説明する。ただし、以下に掲げる実施例は、本発明の製造方法の一例に過ぎず、本発明の製造方法は、決して以下の実施例の態様に限定されるものではない。
【0041】
〈第1実施例〉
本実施例は、可変容量式の斜板コンプレッサに使用される斜板であり、図1(b)に例示するように、中央部に成形されるシャフト穴2aが比較的大きな径を有する斜板に適した実施例である。図2に、鍛造工程の様子を模式的に示す。
【0042】
製造する斜板2は、周辺部2bの厚さが9.5mmで、直径97mmφの円盤状をしており、中央部に直径47mmφのシャフト穴2aを有するものである。この斜板2を鍛造するための鍛造素材3は、A390(Al−Si系合金、Al−17Si−4.5Cu−0.6Mg)であり、直径60mmφ、長さ(厚さ)30mmの円柱形状をしたものである。なお、鍛造は、鍛造素材3を420℃に加熱し、熱間で行っている。
【0043】
使用する鍛造金型は、上型10と下型20とから構成される。この上型10と下型20が衝合することにより、素材が充満して製品を成形するためのキャビティ30を形成する。上型10には、シャフト穴2aを成形するためのシャフト穴成形パンチ11が設けられている。なお、パンチ11の先端11aは、突出した凸部を有する形状となっており、その凸部の形状は、後に説明する下型20の凹部21に適合する(沿う)ような形状となっている。また、下型20は、シャフト穴成形パンチ11に対向する位置に、凹部21を有し、その凹部21は、円錐面で形作られる錘部21aと、錘部21aの円錐頂(最深部)から下方に向かって真っ直ぐに延び下型20の外部に通ずる円形断面をもつ導出路部21bとから構成される。なお、錘部21aの円錐底面直径は15mmφ、深さは10mmであり、導出路部21bの直径は3mmφである。
【0044】
鍛造素材3を下型20内の中央部に納置し、上型10と下型20とを衝合するように接近させて、両型で鍛造用素材3を加圧する。上型10に設けられたシャフト穴成形パンチ11の先端11aが、鍛造素材3にまず当接し、その後このパンチ11による加圧により、素材は、下型20に設けられた凹部21に押し付けられつつ、周辺方向に押し広げられていくように塑性流動する。鍛造終了直前に、素材は、キャビティ30に充満する。その後過剰素材は、加圧を続けることにより、凹部21を構成する導出路部21bに流入し、鍛造を終了する。
【0045】
鍛造された製品は、斜板2に必要とされる製品部4、すなわち所定の厚さに形成された周辺部2bを主体とする部分と、製品部4に連続した付帯部5とが一体成形されたものとなる。なお、付帯部5は、凹部21の錘部21aと導出路部21bとによって、それぞれ錘体5aとそれに連続する軸体5bとを有する形状に成形される。
【0046】
本実施例の特徴は、シャフト穴成形パンチを素材に据込むようにして、素材を周辺部に押し広げるように塑性流動させることにあり、また、パンチに対向する位置に設けられた凹部により、その塑性流動を適正なものにすることにある。本実施例の鍛造工程によれば、素材は、静水圧的な加圧を受けることで、鍛造金型のキャビティ内の隅々にまでスムーズに充満する。したがって、欠肉の発生がなく、また、割れ、被り等の欠陥のない製品が鍛造成形できる。さらに、塑性流動がスムーズなことで型の摩耗が軽減され、型寿命の長い鍛造工程となる。さらにまた、過剰素材を吸収する空間を有することで、金型に過度の負担がかかることなく、型割れ等を防止することのできる鍛造工程となる。
【0047】
また、シャフト穴成形パンチを素材に据込むようにして、素材を周辺部に押し広げるように塑性流動させることは、鍛造素材を細い径のものとすることができるというメリットを有する。ちなみに、A390の円柱素材を用いて、単純に円柱高さ方向に押しつぶすように鍛造した場合の限界加工率(円柱が鍛造割れを発生し始める加工率、すなわち健全な加工が可能な最大の加工率をいい、加工率とは鍛造素材の円柱高さをH0、鍛造後の製品高さをHとした場合の、(H0−H)÷H0×100%で表される値をいう)は42%に過ぎない。しかし、本実施例では、68%の加工率を有する押し広げ鍛造が可能となっている。
【0048】
〈第2実施例〉
本実施例は、固定容量式の斜板コンプレッサに使用される斜板であり、図1(a)に例示するように、中央部に成形されるシャフト穴1aが比較的大きな径を有し、シャフト穴の周りにボス部1cが形成されている斜板に適した実施例である。図3に、鍛造工程の様子を模式的に示す。
【0049】
製造する斜板1は、周辺部1bの厚さが13mmで、シャフト方向から見た直径が80mmφの略円盤状をしており、中央部に直径15mmφのシャフト穴1aを有し、ボス部1c直径は40mmφで、その厚さが30mmの斜板である。この斜板1を鍛造するための鍛造素材3は、第1実施例の場合と同様、A390であり、直径60mmφ、長さ(厚さ)33mmの円柱形状をなし、中央部に直径33mmφ、深さ23mmの凹み3aを有している。ちなみに、成形されたの製品のシャフト穴の空間体積Veと、凹み3aの空間体積V0との空間体積比(V0/Ve)は、2.4となっている。なお、鍛造は、第1実施例の場合と同様、鍛造素材3を420℃に加熱し、熱間で行っている。
【0050】
使用する鍛造金型は、上型10と下型20とから構成される。この上型10と下型20が衝合することにより、素材が充満して製品を成形するためのキャビティ30を形成する。上型10には、シャフト穴1aを成形するためのシャフト穴成形パンチ11が設けられている。また、下型20は、シャフト穴成形パンチ11に対向する位置に、凹部21を有し、その凹部21は、円錐面で形作られる錘部21a、と錘部21a円錐頂(最深部)から下方に向かって真っ直ぐに延び下型20の外部に通ずる円形断面をもつ導出路部21bとから構成される。なお、錘部21aの円錐底面直径は17mmφ、深さは12mmであり、導出路部21bの直径は2.5mmφである。
【0051】
鍛造素材3を、下型20内の中央部で上型10に設けられているシャフト穴成形パンチ11が凹み3aに挿入するような位置に納置し、上型10と下型20とを衝合するように接近させて、両型で鍛造用素材3を加圧する。第1実施例の場合と異なり、加圧された素材は周辺部に向かって塑性流動するだけでなく、凹み3aの周りに存在する擬空間を充てんするようにも塑性流動する。また素材はボス部1cを形成すべく盛り上がるようにも塑性流動する。鍛造終了直前に、素材は、キャビティ30に充満し、その後過剰素材は、加圧を続けることにより、凹部21を構成する導出路部21bに流入し、鍛造を終了する。
【0052】
第1実施例の場合と同様、鍛造された製品は、斜板1に必要とされる製品部4、すなわち所定の厚さに成形された周辺部1bを主体とする部分と、製品部4に連続した付帯部5とが一体成形されたものとなる。なお、付帯部5は、凹部21の錘部21aと導出路部21bとによって、それぞれ錘体5aとそれに連続する軸体5bとを有する形状に成形される。
【0053】
本実施例の鍛造工程の特徴は、第1実施例の場合における金型の凹部の作用に加え、シャフト穴より大きな径の凹みを予め鍛造素材に設け、この凹みで形成される擬空間を充てんするように素材を塑性流動させることにある。比較的小さな穴径で深いシャフト穴を有する斜板においても、素材の塑性流動を適切なものとすることができる。これにより、本実施例の鍛造工程は、割れ、被り等の鍛造欠陥の発生のないスムーズな鍛造工程となり、シャフト穴成形パンチに過大な負荷がかからず、金型の破損等を防止できる鍛造工程となる。
【0054】
次に上記鍛造工程に供する鍛造素材3を製造するための予備鍛造工程について説明する。図4に、予備鍛造工程の様子を模式的に示す。なお、この予備鍛造工程も、鍛造工程同様、素材を420℃に加熱して熱間で行っている。
【0055】
使用する予備鍛造金型は、鍛造工程における鍛造金型同様、上型40と下型50とから構成される。この上型40と下型50が衝合することにより、素材が充満して製品を成形するためのキャビティ60を形成する。上型40には、上記鍛造素材3の凹み3aを成形するための凸部(凹み成形パンチ)41が設けられている。
【0056】
素材6は、直径55mmφ、長さ35mmの円柱形状をなしている。この素材6を、その端面を下にして、下型50内の中央部に納置し、上型40と下型50とを衝合するように接近させて、両型で素材6を加圧する。上型40に設けられた凹み成形パンチ41が、素材6にまず当接し、その後このパンチ41による加圧により、素材は、周辺方向に押し広げられていくように塑性流動する。その後加圧を続けることにより、素材は、キャビティ60に充満し、上記鍛造素材3が成形される。
【0057】
本予備鍛造工程の特徴は、凸部(凹み成形パンチ)を素材に据込むようにして、素材を周辺部に押し広げるように塑性流動させることにある。第1実施例の鍛造工程と同様に、本実施例の予備鍛造工程によれば、素材は、静水圧的な加圧を受けつつ鍛造金型のキャビティ内の隅々にまでスムーズに充満し、その塑性流動は適切なものとなる。したがって、欠肉、割れ、被り等の欠陥を生じずに、凹みを有する鍛造用素材が成形できる。さらに、塑性流動がスムーズなことで型の摩耗が軽減され、型寿命の長い予備鍛造工程となる。
【0058】
また、第1実施例の鍛造工程と同様、素材を周辺部に押し広げるように塑性流動させることは、用いることのできる素材を細い径のものとすることができるというメリットを有する。細径の素材を用いることができることは、素材の切断精度のバラツキによる鍛造素材1つ当たりの素材量のバラツキを小さなものとでき、さらに、素材の切断工数の削減にもつながる。本予備鍛造工程では、56%の加工率を有する押し広げ鍛造を行っている。
【0059】
〈第3実施例〉
本実施例は、第2実施例と同様、固定容量式の斜板コンプレッサに使用される斜板についての実施例であるが、第2実施例と異なり、周辺部に2つの貫通する油穴を有する斜板についての実施例である。図5に、鍛造工程の様子を模式的に示す。なお、鍛造は、他の実施例の場合と同様、鍛造素材を420℃に加熱し、熱間で行っている。
【0060】
製造する斜板1は、第2実施例のものと同じ外形形状を有し、周辺部1bのボス部1c近傍に、直径が5mmφの2つの油穴を有している。この斜板1を鍛造するための鍛造素材3は、第2実施例の場合と同様、A390であり、直径60mmφ、長さ(厚さ)26mmの円柱形状をなし、中央部に直径35mmφ、深さ20mmの凹み3aを有し、さらにその径方向の外側に、直径10mmφ、深さ15mmの2つの凹み3bを有している。
【0061】
使用する鍛造金型は、上型10と下型20とから構成される。この上型10と下型20が衝合することにより、素材が充満して製品を成形するためのキャビティ30を形成する。上型10には、シャフト穴1aを成形するためのシャフト穴成形パンチ11と、油穴(貫通穴)1dを形成するための2つの油穴形成パンチ(貫通穴成形パンチ)12が設けられている。また、下型20は、シャフト穴成形パンチ11に対向する位置に凹部21を、さらに、それぞれの油穴成形パンチ12に対向する位置にそれぞれの凹部21を有し、各凹部21は、円錐面で形作られる錘部21a、と錘部21a円錐頂(最深部)から下方に向かって真っ直ぐに延び下型20の外部に通ずる円形断面をもつ導出路部21bとから構成される。なお、シャフト穴成形パンチ11に対向する位置に設けられた凹部21の錘部21aの円錐底面直径は17mmφ、深さは8mmであり、導出路部21bの直径は2.5mmφである。また、油穴成形パンチ12に対向する位置に設けられた凹部21の錘部21aの円錐底面直径は6mmφ、深さは4mmであり、導出路部21bの直径は1.5mmφである。
【0062】
鍛造素材3を、下型20内の中央部であって、上型10に設けられているシャフト穴成形パンチ11が凹み3aに、また、それぞれの油穴成形パンチ12がそれぞれの凹み3bに挿入する位置に納置し、上型10と下型20とを衝合するように接近させて、両型で鍛造用素材3を加圧する。第2実施例の場合と同様に、加圧された素材は周辺部に向かって塑性流動するだけでなく、凹み3aの周りに存在する擬空間を充てんするようにも塑性流動し、さらに凹み3bの周りに存在する擬空間を充てんするようにも塑性流動する。
【0063】
鍛造された製品は、斜板1に必要とされる製品部4と、製品部4に連続した3つの付帯部5とが一体成形されたものとなる。なお、他の実施例の場合と同様、それぞれの付帯部5は、凹部21の錘部21aと導出路部21bとによって、それぞれ錘体5aとそれに連続する軸体5bとを有する形状に成形される。
【0064】
本実施例の鍛造工程の特徴は、シャフト穴以外の貫通穴をも同時に鍛造成形することにある。それぞれのパンチに過大な負荷をかけず、割れ、被り等の鍛造欠陥の発生のないスムーズな鍛造成形が可能となることで、本実施例では、斜板の製造工程の一層の簡略化が可能となる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法は、鍛造工程を、金型に凹部を設けることで余剰素材が流入する空間をキャビティ内に存在させ、もう一方の金型のこの空間に対向する位置に中央部のシャフト穴を成形するためのパンチを付設し、パンチをこの空間に向かって押し進めるように素材を加圧して鍛造を行うように構成するものである。このように構成された鍛造工程を採用することで、鍛造工程における素材の塑性流動が適正化され、また、過剰素材が効率的に吸収されることとなり、本発明の製造方法は、製品寸法精度が高く、鍛造欠陥が少なく、金型への負担が小さく、かつ中央部に設けるシャフト穴の加工までもが同時に鍛造成形できるるという、極めて優れた製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法が適用される斜板式コンプレッサ用斜板の概略形状を示す。
【図2】可変容量式コンプレッサ用斜板の製造例である第1実施例の鍛造工程を模式的に示す。
【図3】固定容量式コンプレッサ用斜板の製造例である第2実施例の鍛造工程を模式的に示す。
【図4】固定容量式コンプレッサ用斜板の製造例である第2実施例の予備鍛造工程を模式的に示す。
【図5】油穴を有する固定容量式コンプレッサ用斜板の製造例である第3実施例の鍛造工程を模式的に示す。
【図6】従来の製造方法の鍛造工程を模式的に示す。
【符号の説明】
1:容量固定式コンプレッサ用斜板
1a:シャフト穴 1b:周辺部 1c:ボス部
1d:油穴(貫通穴)
2:容量可変式コンプレッサ用斜板
2a:シャフト穴 2b:周辺部
3:鍛造素材
3a:凹み 3b:凹み
4:製品部
5:付帯部
5a:錘体 5b:軸体
6:素材(予備鍛造における)
10:上型(鍛造工程)
11:シャフト穴成形パンチ 11a:先端部
12:油穴成形パンチ(貫通穴成形パンチ)
20:下型(鍛造工程)
21:凹部 21a:錘部 21b:導出路部
30:キャビティ
40:上型(予備鍛造工程)
41:凸部(凹み成形パンチ)
50:下型(予備鍛造工程)
60:キャビティ
【発明の属する技術分野】
本発明は、斜板式コンプレッサを構成する部品の一つである斜板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両空調システム等に一般的に使用されているコンプレッサには、シャフトに対する斜板の傾斜角が一定に設定された容量固定式のコンプレッサと、シャフトに対する斜板の傾斜角が可変とされた容量可変式のコンプレッサがある。いずれの斜板式コンプレッサも、回転駆動するシャフトとこれに同期回転する円盤状の斜板を有し、シャフトを回転させることにより、斜板に摺動するように取り付けられたピストンが所定の往復運動を行う。ピストンはシリンダ内に嵌装されており、ピストンがシリンダ内を往復運動することにより、吸入、圧縮、排気行ってコンプレッサとして機能する。
【0003】
ここに使用される斜板は、一般的に、図1に示す形状をしている。図1(a)は、容量固定式コンプレッサに用いる斜板の概略形状を示し、斜板1は、略円盤形状なし、中央部のボス部1cにシャフトが挿通するための穴1aが設けられ、外周近くに摺動面となる周辺部1bを有している。シャフト穴1aは略円盤状の部分に対し所定の角度をもって斜めに設けられており、斜板1はシャフトに対し一定の傾斜角を有するものとなっている。また、図1(b)は、容量可変式コンプレッサに用いられる斜板の概略形状を示し、斜板2は、略円盤状をなしており、外周近くに摺動面となる周辺部2bを有し、中央部にボス部を有するとともに、その中心にシャフトがその角度を変えつつ挿通することのできる比較的大きい径のシャフト穴2aが設けられている。
【0004】
上記斜板は、コンプレッサ部品としての機能を果たすため、静的強度、疲労強度が高く、耐摩耗性、耐衝撃性に優れ、低熱膨張係数を有すること等、種々の特性が要求される。この要求を満たす材料として、A390を始めとする過共晶Al−Si系合金が広く用いられている。この過共晶Al−Si系合金を用いて斜板を製造する方法としては、鋳造あるいは鍛造が考えられるが、鋳造では強度が低くまた各種特性においてもばらつくことから、信頼性を考慮し、鍛造によって製造されるのが一般的になっている。ところが、過共晶Al−Si系合金は、初晶Siを含む組織となっており、比較的脆くまた比較的変形能力が低く、加工程度が大きい鍛造を施すと、割れ等の欠陥が発生しやすいものである。
【0005】
従来、斜板の鍛造は、図6に模式的に示すような方法にて行っていた。図6に示すのは、固定容量式コンプレッサ用の斜板の鍛造であり、必要とする外形形状を成形するためのキャビティ30を形成する上下の鍛造金型10、20を用い、この金型10、20内に素材を納置し、加圧することにより素材をキャビティ30内に充満させるように鍛造して斜板1を得るようにしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の鍛造方法では、素材の塑性流動が効率的ではなく、キャビティの隅々にまで素材が充満せず製品に欠肉を生じる、斜板の外周部に素材の被りが生じる、製品の各所に割れが発生する等といった鍛造欠陥が発生しやすいものとなっていた。また、鍛造時の塑性流動の効率がよくないことは、金型の摩耗をも引き起こし、金型寿命を短いものとしていた。さらに、従来の方法では、素材量のバラツキによって精密な鍛造が困難で、後の機械加工等による加工代の大きい製品しか鍛造できず、特に過大量の素材が投入された場合、製品自体に不可避的なバリが生じたり、金型が割れるといったトラブルを生じ易いものとなっていた。
【0007】
さらにまた、上記従来の鍛造方法では、中央部に加工するシャフト穴を同時に鍛造するべくパンチ(突起)を取付けた金型を用いた場合、塑性流動がより複雑なものとなり、上述した鍛造欠陥、金型への負荷はさらに増加するものとなっていた。したがって、シャフト穴の同時鍛造は断念せざるを得ず、鍛造後に切削加工等を行ってシャフト穴を穿孔しており、後工程への負担、材料ロスが大きいものとなっていた。
【0008】
本発明は、上記従来の鍛造方法の抱える問題を解決すべくなされたものであり、余剰素材が流入する空間をキャビティ内に設け、また、鍛造時の素材の塑性流動を適正なものとすることにより、鍛造欠陥が少なく、金型への負担が小さく、かつ中央部に設けるシャフト穴の加工までもが同時に行えるという利点を有する、優れた鍛造工程を含む斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法は、中央部にシャフトが挿通するためシャフト穴を有し略円盤形状をなす斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法であって、衝合することでキャビティを形成する第1の型と第2の型とからなり、該第1の型または該第2の型のいずれか一方は前記シャフト穴を成形するためのシャフト穴成形パンチを有し、該第1の型または該第2の型の他方は該パンチに対向する位置に凹部を有する鍛造金型を用い、該鍛造金型内に円柱の外形を有する鍛造素材を納置し該第1の型と該第2の型とを衝合して加圧し、前記キャビティ内に該鍛造素材を塑性流動させて充満させ、必要とされる製品形状をもつ製品部と該製品部の外部に連続して付帯し該鍛造素材のうちの製品部を形成しない余剰素材が前記凹部に塑性流動することによって形成される付帯部とを一体に成形する鍛造工程と、前記付帯部を前記製品部から除去する付帯部除去工程とを含んでなることを特徴とする。
【0010】
つまり、本発明の製造方法の最大の特徴は、金型に凹部を設けることで余剰素材が流入する空間をキャビティ内に存在させ、もうもう一方の金型のこの空間に対向する位置に中央部のシャフト穴を成形するためのパンチを付設し、パンチをこの空間に向かって押し進めるように素材を加圧して鍛造を行う鍛造工程にある。この鍛造工程では、キャビティ内において、素材を効率よく塑性流動させつつ充満させることが可能となる。
【0011】
キャビティ内における鍛造素材の塑性流動の適正化と余剰素材が流入する空間の存在により、本発明の製造方法の鍛造工程では、割れ、被り等の鍛造欠陥が極めて少なくかつ寸法精度の良好な製品を鍛造することができる。また、余剰素材が流入する空間は、余剰素材の内さらに過剰な過剰素材を効率的に吸収できる空間となり、鍛造金型への負担が少なく、型割れの危険性が極めて小さくかつ型寿命を長くすることが可能となる。さらに、本発明の製造方法は、それまで行い得なかった斜板外形と中央部のシャフト穴との同時鍛造成形をも可能とし、余剰素材から形成される付帯部を後に続く簡便な方法によって除去するだけでよく、効率のよいかつ製造コストの小さな製造方法となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法が適用される対象は、斜板式コンプレッサの構成部品の一つである斜板である。斜板式コンプレッサは、前述のように、容量固定のものと容量可変のものがあり、そのいずれに用いる斜板にも適用できる。容量固定式コンプレッサの斜板は図1(a)に示すような形状をしており、また、容量可変式コンプレッサの斜板は図1(b)に示すような形状をしている。いずれの斜板も、摺動面となる略円盤状の周辺部を有し、かつ中央部にシャフトが挿通するためのシャフト穴を有している。固定式斜板は、周辺部を構成する円盤と所定の角度をもったシャフト穴が形成され、シャフト穴の周囲は、周辺部より厚肉となってボス部を形成している。
【0013】
斜板の材質は、特に限定するものではないが、一般にアルミニウム合金が用いられ、本発明の製造方法は、このアルミニウム合金製の斜板に対して特にその効果を発揮する。用いることのできるアルミニウム合金としては、亜共晶Al−Si系、過共晶Al−Si系等を挙げることができる。コスト、機械的特性等のバランス等を考慮すれば、例えば、A390、A4032、AC9種等のAl−Si系アルミニウム合金を用いればよい。
【0014】
本発明の製造方法の鍛造工程で用いられる鍛造金型は、衝合することでキャビティを形成する第1の型と第2の型とからなる。例えば、竪型の鍛造機を用いる場合は、上型と下型の2つの型になる。2つの型が衝合することによって形成されるキャビティは、鍛造において素材が塑性流動して充満する空間となる。キャビティは、上述した斜板の周辺部および中央部からなる製品形状に合致する製品部と、後に詳しくする付帯部とを同時に成形することのできる空間形状となっている。
【0015】
鍛造金型を構成する第1の型または第2の型のいずれか一方は前記シャフト穴を成形するためのシャフト穴成形パンチを有する。シャフト穴成形パンチは、製品に設けられるシャフト穴の内径と同じ外径をもつ突起である。鍛造素材が、このパンチによって周辺部に押し広がるように塑性流動させられる、あるいは、このパンチに向かって塑性流動させられることによって、製品の中央部に設けられるシャフト穴を成形する。
【0016】
鍛造金型を構成する第1の型または該第2の型の他方は上記シャフト穴成形パンチに対向する位置に凹部を有している。この凹部は、シャフト穴成形パンチの先端部と相俟って、所定の空間を形成する。この空間は、必要とされる上記製品部を成形する空間と連続し、製品として必要とされる部分外に存在する空間となる。この空間は、鍛造時に素材が塑性流動して入り込むことで、付帯部を成形する空間となる。
【0017】
付帯部を形成する空間の存在により、素材の塑性流動は活性化することになり、製品の中央部に設けられるシャフト穴が容易に形成することができる。また、塑性流動が活性化することは、鍛造時における素材と金型との間の摩擦をも軽減できることとなり、金型の摩耗の少ない鍛造工程が実現でき、さらに、割れ、被りといった鍛造欠陥を防止することにもつながる。さらにまた、付帯部を形成する空間は、余剰素材のなかでもさらに過剰となる過剰素材を吸収することのできる空間となり、鍛造バリ等の発生を防止するばかりでなく、異常な鍛造金型への負荷がなくなり、型割れ等のトラブルのない鍛造工程をも実現できる。
【0018】
鍛造は、上記鍛造金型を用い、鍛造金型内に円柱の外形を有する鍛造素材を納置し第1の型と第2の型とを衝合して加圧し、キャビティ内に該鍛造素材を塑性流動させて充満させ、必要とされる製品形状をもつ製品部と、製品部の外部に連続して付帯し鍛造素材のうちの製品部を形成しない余剰素材が前記凹部に塑性流動することによって形成される付帯部とを一体に成形する。鍛造機は、製品に応じた能力を持つ既存の鍛造機を用いればよく、特に限定するものではない。鍛造条件についても一般に行う条件に従えばよい。なお、アルミニウム合金の素材から鍛造する場合は、熱間鍛造によるのがよく、360〜450℃の範囲に加熱した素材に鍛造を施すのが望ましい。
【0019】
金型に設ける凹部の形状は、塑性流動の活性化、過剰素材の吸収といった機能を担保できるものであれば、特に限定するものではない。ただし、効率的な塑性流動等を考慮して、凹部の形状を、錘状に凹む錘部と、該錘部に通じ小さな断面積を有する導出路部とからなるような形状とし、付帯部は、錘体と該錘体から延出する軸体とを有する形状に成形するのが望ましい。
【0020】
錐状に凹む錘部とは、いわゆるすり鉢状に窪むような形状の凹部を意味する。このような凹部は、製品部から遠ざかるにつれて断面積が小さくなるような錘体形状の付帯部が成形される。換言すれば、この錘部によって成形される付帯部は底面を製品部に向けた錘体となる。このような形状の凹部に向かって素材が塑性流動することにより、キャビティ内の素材の塑性流動がよりスムーズなものとなり、また過度に余剰となる素材を必要としないというメリットがある。錘部を構成する錘面は、円錐面、角錘面のいずれであってもよいが、よりスムーズな塑性流動を確保するためには円錐面であるのが望ましい。
【0021】
錘部に通ずる導出路部は、錘部をはみ出す過剰素材を導くための通路である。キャビティ内に素材を充満させるために素材全体にある程度の静水圧的な圧力がかかる必要があることから、導出路部は断面積の小さな通路であることが望ましい。Al−Si系合金を鍛造素材として使用する場合、円形断面をもつ導出路部とするときは、その通路径を1〜10mmφとするのが好ましく、2〜4mmφとするのがより好ましい。なお、導出路部に流入する過剰素材は、製品の付帯部の内の軸体として成形される。
【0022】
また、効率よく導出路に素材を導くためには、導出路部は、その一端を、錘部の最深部、つまり錘部を構成する錘面の頂にあたる部分に通じていることが望ましい。さらに、導出路部によって軸体状の付帯部が成形されるため、この軸体状の部分が金型から容易に離脱できることが必要となる。そこでこの導出路部は、鍛造後の製品を金型から離脱する方向に平行な方向に真っ直ぐに設けることが好ましい。
【0023】
導出路部の他端は、金型の外部に通じていることが望ましい。導出路部の他端を金型外部に通じさせれば、例えば、2以上の素材が納置される等、極端に過剰となる素材が金型内に納置された場合であっても、過剰素材がこの導出路を通過して金型内に排出されるため、金型への負担を小さくできことになり、型割れ等の一層の防止効果がある。
【0024】
鍛造工程で金型内に納置する鍛造素材は、製品となる斜板が略円盤状をしていることから、円柱の外形を有する形状のものとする。本製造方法の鍛造工程では、中央部のシャフト穴をも同時成形する。例えば、可変容量式斜板のように、製品自体が比較的薄くかつ円盤外周径に対するシャフト穴径が比較的大きい形状をもつ斜板を鍛造する場合等には、シャフト穴成形パンチを鍛造素材に据込むことによって、素材を周辺部に押し広げるように塑性流動させて鍛造成形することができる。このような態様の鍛造成形によれば、従来のシャフト穴を成形しない鍛造の場合と比較して、小さい外径を有する円柱状の鍛造素材を用いることができる。鍛造素材は長い棒状の素材から所定の長さに切断して作製される。この場合外径の小さな棒状素材から鍛造素材を作製できることとなり、切断精度のバラツキによる1つあたりの鍛造素材の量のバラツキ小さくなるというメリットを有する。
【0025】
繰り返すが、例えば、可変容量式斜板のように、製品自体が比較的薄くかつ円盤外周径に対するシャフト穴径が比較的大きい形状をもつ斜板を鍛造する場合等には、シャフト穴成形パンチを鍛造素材に据込むことで、このパンチによって素材が周辺部に押し広げられるように塑性流動して鍛造することができる。この場合、シャフト穴成形パンチは、その先端を凸状にするのが望ましい。先端を凸状にすることによって、この凸状部が鍛造素材にまず当接し、素材の周辺部への押し広げをよりスムーズなものとすることができる。また、シャフト穴成形パンチの先端の凸部形状を対向する他方の型の凹部形状に適合させることが望ましい。形成される付帯部の体積を減少させることができ、余剰素材の少ない効率的な鍛造を行うことができる。
【0026】
本発明の製造方法では、鍛造素材を、その円柱形状の1端面にシャフト穴より大きな断面をもつ凹みを有するような形状のものとし、その凹みにシャフト穴成形パンチが挿入されるようにその鍛造素材を鍛造金型内に納置して鍛造工程を行うことができる。例えば、固定容量式斜板のように、ボス部を有し、シャフト穴の穴径が比較的小さく、シャフト穴の長さ(深さ)が長い(深い)形状の斜板の製造に効果的な実施態様である。
【0027】
シャフト穴が小さくかつ長い斜板をそのシャフト穴をも同時に鍛造成形する場合、単純な(中実な)円柱状素材を用い、鍛造金型に設けたシャフト穴成形パンチによってその素材を周辺部に押し広げるように鍛造することは、シャフト穴成形パンチにかかる負荷が大きいばかりでなく、キャビティ内での素材の塑性流動が適切なものとならない可能性がある。そこで本態様のように、鍛造素材にシャフト穴より大きな断面をもつ凹みを設ける、いわば底付きパイプのような形状の鍛造素材を用いることにより、シャフト穴成形パンチへの負担軽減と素材の塑性流動の適切化を図ることができる。
【0028】
凹みを設けた鍛造素材のその凹みは、鍛造時に挿入されるシャフト成形パンチの周囲に、擬空間を存在させる。そして、鍛造金型を衝合して素材を加圧することにより、素材は周辺部に向かって押し広げられるだけでなく、その擬空間を充てんするように中央部に寄せられる方向にも塑性流動する。このような塑性流動が可能となることにより、比較的小さな穴径の比較的長いシャフト穴の同時鍛造成形が可能となる。
【0029】
塑性流動をより適正なものとするためには、鍛造素材に設ける凹みの空間体積と製品に成形されるシャフト穴の空間体積との間に、ある関係が存在することを、本発明者は見出した。その関係は、鍛造素材に設ける凹みの空間体積をV0、製品に成形されるシャフト穴の空間体積をVeをした場合に、その空間体積比(V0/Ve)を1.1〜2.5の範囲とするのが望ましいというものである。V0/Veの値が1.1未満の場合は、鍛造時に適正な塑性流動を達成できなくなる可能性があり、また、2.5を超える場合は、鍛造時に座屈したり、被り、欠肉等の鍛造欠陥を生じる可能性があるからである。
【0030】
上述したような一端面にシャフト穴より大きな断面をもつ凹みを有する円柱形状の鍛造素材を成形するために、本発明の製造方法では、端面に前記凹みを形成させるための凸部を有する予備鍛造金型を用い、前記鍛造素材より小さな外径の円柱形状をした素材を、該素材の一端面に該凸部を据込むようにして鍛造することにより、該鍛造素材を成形する予備鍛造工程を行う実施形態とすることもできる。
【0031】
この予備鍛造工程で用いる予備鍛造金型は、衝合することによりキャビティを形成する2つの型の一方に凹みを形成させるための凸部(パンチ)を有するものである。予備鍛造されて成形される鍛造素材の外径より小さな外径を有する円柱形状素材を予備鍛造金型内に納置し、その円柱一端面に凸部を当接させて加圧し、素材を押し広げるように塑性流動させてキャビティ内に充満させて予備鍛造を行う。
【0032】
上記凹部を形成しつつその凸部により半径方向の外側に向かって素材を押し広げるという凸部の作用により、キャビティに充満しようとする素材は、静水圧的に、換言すれば素材全体に均一に圧力が加えられるような状態で、据込鍛造が行われる。このような方法の予備鍛造により、より小さな外径の素材を使用することができ、切断精度のバラツキによる素材1つ当たりの量のバラツキを少なくすることができ、後に続く鍛造工程の加工精度を高めることもできる。ちなみにAl−Si系の合金を使用する場合、凹部を形成しないで素材径を大きくするような予備鍛造を行う場合、予備鍛造後の鍛造素材の80%以上の径をもつ素材しか使用できないのに対し、本予備鍛造工程においては、30〜70%という小さい外径を有する素材を使用することができる。なお素材径が小さいほど、切断にかかる工数も小さくなり、生産性も向上するものとなる。
【0033】
この予備鍛造工程で用いる鍛造機についても特に限定するものではなく、一般に用いるられている鍛造機を使用できる。次工程となる鍛造工程を、別ステージとして同じ鍛造機に組み込んで行うこともできる。なお、アルミニウム合金の素材から予備鍛造する場合は、熱間鍛造によるのがよく、360〜450℃の範囲に加熱した素材に予備鍛造を施すのが望ましい。
【0034】
次に本発明の製造方法では、シャフト穴とは別の1以上の貫通穴を有する斜板を製造する場合、第1の型または第2の型のいずれか一方に1以上の貫通穴を成形するための1以上の貫通穴成形パンチを有し、第1の型または第2の型の他方はそのパンチに対向する位置にさらに1以上の凹部を有するような鍛造金型を用い、それぞれの凹部に塑性流動することによって複数の付帯部が形成されるように鍛造工程を行う実施形態とすることができる。
【0035】
斜板は、シャフト穴以外に、油穴、重量軽減のための肉抜き穴等、その周辺部等を貫通する貫通穴を有する形状のものもある。このような斜板を製造する場合、同時にこれらの貫通穴をも鍛造加工にて成形したいときもある。この場合、上述した凹部を貫通穴形成パンチに対向する位置に設け、貫通穴の数に応じた数の付帯部を形成することによって、塑性流動を適切なものに保ちつつ、鍛造欠陥等の発生の少ない斜板の製造を行うことができる。
【0036】
さらに本発明の製造方法では、貫通穴をも同時鍛造成形する場合において、円柱形状の1端面にシャフト穴より大きな断面をもつ凹みおよびその貫通穴より大きな断面をもつ1以上の凹みを有する鍛造素材を用い、それぞれの凹みにシャフト穴成形パンチおよび貫通穴成形パンチがそれぞれ挿入されるようにその鍛造素材を鍛造金型内に納置して鍛造工程を行う実施形態とすることもできる。
【0037】
一般に、油穴等の貫通穴は、その断面積が小さな穴となる。小さな断面積をもつ貫通穴をパンチを素材に押し込むようにして鍛造成形を行うと、そのパンチに大きな負荷がかかること等が原因して、うまく成形できない。そこで、貫通穴成形パンチの周囲についても上述した擬空間を存在させ、小さな断面積の貫通穴であっても、素材の塑性流動を適切なものとすることにより、容易に同時鍛造成形ができることとなる。
【0038】
斜板には、種々の形状があり、例えば、斜板の周辺部を平板状に成形するのではなく、補強リブ等の役割を果たすような凹凸部を有する形状に成形したい場合もある。このような場合は、2つの型によって形成するキャビティを、必要とする形状に合致した形状とすることによって可能となる。このように、従来から行われている種々の鍛造方法を本製造方法に採り入れることは可能であり、本製造方法の鍛造工程の実施形態は、上述した実施形態に決して限定されるものではない。
【0039】
上述した鍛造工程の後に行う付帯部除去工程は、その方法を特に限定するものではない。例えば、金型を用いたプレス切断、プラズマによる溶断、あるいは旋盤等を用いた機械加工による切削等、いずれの方法によっても行うことができる。同じ鍛造機を用い、別ステージにプレス切断金型を組み込み、鍛造工程に連動させて行うことで工程を簡略化することもでき、また、機械加工による切削の場合は、精密仕上げ加工と同時に行うことによって工程数を省略することもできる。
【0040】
【実施例】
以下に、図を参照しつつ、本発明の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法、特にその中の鍛造工程について説明する。ただし、以下に掲げる実施例は、本発明の製造方法の一例に過ぎず、本発明の製造方法は、決して以下の実施例の態様に限定されるものではない。
【0041】
〈第1実施例〉
本実施例は、可変容量式の斜板コンプレッサに使用される斜板であり、図1(b)に例示するように、中央部に成形されるシャフト穴2aが比較的大きな径を有する斜板に適した実施例である。図2に、鍛造工程の様子を模式的に示す。
【0042】
製造する斜板2は、周辺部2bの厚さが9.5mmで、直径97mmφの円盤状をしており、中央部に直径47mmφのシャフト穴2aを有するものである。この斜板2を鍛造するための鍛造素材3は、A390(Al−Si系合金、Al−17Si−4.5Cu−0.6Mg)であり、直径60mmφ、長さ(厚さ)30mmの円柱形状をしたものである。なお、鍛造は、鍛造素材3を420℃に加熱し、熱間で行っている。
【0043】
使用する鍛造金型は、上型10と下型20とから構成される。この上型10と下型20が衝合することにより、素材が充満して製品を成形するためのキャビティ30を形成する。上型10には、シャフト穴2aを成形するためのシャフト穴成形パンチ11が設けられている。なお、パンチ11の先端11aは、突出した凸部を有する形状となっており、その凸部の形状は、後に説明する下型20の凹部21に適合する(沿う)ような形状となっている。また、下型20は、シャフト穴成形パンチ11に対向する位置に、凹部21を有し、その凹部21は、円錐面で形作られる錘部21aと、錘部21aの円錐頂(最深部)から下方に向かって真っ直ぐに延び下型20の外部に通ずる円形断面をもつ導出路部21bとから構成される。なお、錘部21aの円錐底面直径は15mmφ、深さは10mmであり、導出路部21bの直径は3mmφである。
【0044】
鍛造素材3を下型20内の中央部に納置し、上型10と下型20とを衝合するように接近させて、両型で鍛造用素材3を加圧する。上型10に設けられたシャフト穴成形パンチ11の先端11aが、鍛造素材3にまず当接し、その後このパンチ11による加圧により、素材は、下型20に設けられた凹部21に押し付けられつつ、周辺方向に押し広げられていくように塑性流動する。鍛造終了直前に、素材は、キャビティ30に充満する。その後過剰素材は、加圧を続けることにより、凹部21を構成する導出路部21bに流入し、鍛造を終了する。
【0045】
鍛造された製品は、斜板2に必要とされる製品部4、すなわち所定の厚さに形成された周辺部2bを主体とする部分と、製品部4に連続した付帯部5とが一体成形されたものとなる。なお、付帯部5は、凹部21の錘部21aと導出路部21bとによって、それぞれ錘体5aとそれに連続する軸体5bとを有する形状に成形される。
【0046】
本実施例の特徴は、シャフト穴成形パンチを素材に据込むようにして、素材を周辺部に押し広げるように塑性流動させることにあり、また、パンチに対向する位置に設けられた凹部により、その塑性流動を適正なものにすることにある。本実施例の鍛造工程によれば、素材は、静水圧的な加圧を受けることで、鍛造金型のキャビティ内の隅々にまでスムーズに充満する。したがって、欠肉の発生がなく、また、割れ、被り等の欠陥のない製品が鍛造成形できる。さらに、塑性流動がスムーズなことで型の摩耗が軽減され、型寿命の長い鍛造工程となる。さらにまた、過剰素材を吸収する空間を有することで、金型に過度の負担がかかることなく、型割れ等を防止することのできる鍛造工程となる。
【0047】
また、シャフト穴成形パンチを素材に据込むようにして、素材を周辺部に押し広げるように塑性流動させることは、鍛造素材を細い径のものとすることができるというメリットを有する。ちなみに、A390の円柱素材を用いて、単純に円柱高さ方向に押しつぶすように鍛造した場合の限界加工率(円柱が鍛造割れを発生し始める加工率、すなわち健全な加工が可能な最大の加工率をいい、加工率とは鍛造素材の円柱高さをH0、鍛造後の製品高さをHとした場合の、(H0−H)÷H0×100%で表される値をいう)は42%に過ぎない。しかし、本実施例では、68%の加工率を有する押し広げ鍛造が可能となっている。
【0048】
〈第2実施例〉
本実施例は、固定容量式の斜板コンプレッサに使用される斜板であり、図1(a)に例示するように、中央部に成形されるシャフト穴1aが比較的大きな径を有し、シャフト穴の周りにボス部1cが形成されている斜板に適した実施例である。図3に、鍛造工程の様子を模式的に示す。
【0049】
製造する斜板1は、周辺部1bの厚さが13mmで、シャフト方向から見た直径が80mmφの略円盤状をしており、中央部に直径15mmφのシャフト穴1aを有し、ボス部1c直径は40mmφで、その厚さが30mmの斜板である。この斜板1を鍛造するための鍛造素材3は、第1実施例の場合と同様、A390であり、直径60mmφ、長さ(厚さ)33mmの円柱形状をなし、中央部に直径33mmφ、深さ23mmの凹み3aを有している。ちなみに、成形されたの製品のシャフト穴の空間体積Veと、凹み3aの空間体積V0との空間体積比(V0/Ve)は、2.4となっている。なお、鍛造は、第1実施例の場合と同様、鍛造素材3を420℃に加熱し、熱間で行っている。
【0050】
使用する鍛造金型は、上型10と下型20とから構成される。この上型10と下型20が衝合することにより、素材が充満して製品を成形するためのキャビティ30を形成する。上型10には、シャフト穴1aを成形するためのシャフト穴成形パンチ11が設けられている。また、下型20は、シャフト穴成形パンチ11に対向する位置に、凹部21を有し、その凹部21は、円錐面で形作られる錘部21a、と錘部21a円錐頂(最深部)から下方に向かって真っ直ぐに延び下型20の外部に通ずる円形断面をもつ導出路部21bとから構成される。なお、錘部21aの円錐底面直径は17mmφ、深さは12mmであり、導出路部21bの直径は2.5mmφである。
【0051】
鍛造素材3を、下型20内の中央部で上型10に設けられているシャフト穴成形パンチ11が凹み3aに挿入するような位置に納置し、上型10と下型20とを衝合するように接近させて、両型で鍛造用素材3を加圧する。第1実施例の場合と異なり、加圧された素材は周辺部に向かって塑性流動するだけでなく、凹み3aの周りに存在する擬空間を充てんするようにも塑性流動する。また素材はボス部1cを形成すべく盛り上がるようにも塑性流動する。鍛造終了直前に、素材は、キャビティ30に充満し、その後過剰素材は、加圧を続けることにより、凹部21を構成する導出路部21bに流入し、鍛造を終了する。
【0052】
第1実施例の場合と同様、鍛造された製品は、斜板1に必要とされる製品部4、すなわち所定の厚さに成形された周辺部1bを主体とする部分と、製品部4に連続した付帯部5とが一体成形されたものとなる。なお、付帯部5は、凹部21の錘部21aと導出路部21bとによって、それぞれ錘体5aとそれに連続する軸体5bとを有する形状に成形される。
【0053】
本実施例の鍛造工程の特徴は、第1実施例の場合における金型の凹部の作用に加え、シャフト穴より大きな径の凹みを予め鍛造素材に設け、この凹みで形成される擬空間を充てんするように素材を塑性流動させることにある。比較的小さな穴径で深いシャフト穴を有する斜板においても、素材の塑性流動を適切なものとすることができる。これにより、本実施例の鍛造工程は、割れ、被り等の鍛造欠陥の発生のないスムーズな鍛造工程となり、シャフト穴成形パンチに過大な負荷がかからず、金型の破損等を防止できる鍛造工程となる。
【0054】
次に上記鍛造工程に供する鍛造素材3を製造するための予備鍛造工程について説明する。図4に、予備鍛造工程の様子を模式的に示す。なお、この予備鍛造工程も、鍛造工程同様、素材を420℃に加熱して熱間で行っている。
【0055】
使用する予備鍛造金型は、鍛造工程における鍛造金型同様、上型40と下型50とから構成される。この上型40と下型50が衝合することにより、素材が充満して製品を成形するためのキャビティ60を形成する。上型40には、上記鍛造素材3の凹み3aを成形するための凸部(凹み成形パンチ)41が設けられている。
【0056】
素材6は、直径55mmφ、長さ35mmの円柱形状をなしている。この素材6を、その端面を下にして、下型50内の中央部に納置し、上型40と下型50とを衝合するように接近させて、両型で素材6を加圧する。上型40に設けられた凹み成形パンチ41が、素材6にまず当接し、その後このパンチ41による加圧により、素材は、周辺方向に押し広げられていくように塑性流動する。その後加圧を続けることにより、素材は、キャビティ60に充満し、上記鍛造素材3が成形される。
【0057】
本予備鍛造工程の特徴は、凸部(凹み成形パンチ)を素材に据込むようにして、素材を周辺部に押し広げるように塑性流動させることにある。第1実施例の鍛造工程と同様に、本実施例の予備鍛造工程によれば、素材は、静水圧的な加圧を受けつつ鍛造金型のキャビティ内の隅々にまでスムーズに充満し、その塑性流動は適切なものとなる。したがって、欠肉、割れ、被り等の欠陥を生じずに、凹みを有する鍛造用素材が成形できる。さらに、塑性流動がスムーズなことで型の摩耗が軽減され、型寿命の長い予備鍛造工程となる。
【0058】
また、第1実施例の鍛造工程と同様、素材を周辺部に押し広げるように塑性流動させることは、用いることのできる素材を細い径のものとすることができるというメリットを有する。細径の素材を用いることができることは、素材の切断精度のバラツキによる鍛造素材1つ当たりの素材量のバラツキを小さなものとでき、さらに、素材の切断工数の削減にもつながる。本予備鍛造工程では、56%の加工率を有する押し広げ鍛造を行っている。
【0059】
〈第3実施例〉
本実施例は、第2実施例と同様、固定容量式の斜板コンプレッサに使用される斜板についての実施例であるが、第2実施例と異なり、周辺部に2つの貫通する油穴を有する斜板についての実施例である。図5に、鍛造工程の様子を模式的に示す。なお、鍛造は、他の実施例の場合と同様、鍛造素材を420℃に加熱し、熱間で行っている。
【0060】
製造する斜板1は、第2実施例のものと同じ外形形状を有し、周辺部1bのボス部1c近傍に、直径が5mmφの2つの油穴を有している。この斜板1を鍛造するための鍛造素材3は、第2実施例の場合と同様、A390であり、直径60mmφ、長さ(厚さ)26mmの円柱形状をなし、中央部に直径35mmφ、深さ20mmの凹み3aを有し、さらにその径方向の外側に、直径10mmφ、深さ15mmの2つの凹み3bを有している。
【0061】
使用する鍛造金型は、上型10と下型20とから構成される。この上型10と下型20が衝合することにより、素材が充満して製品を成形するためのキャビティ30を形成する。上型10には、シャフト穴1aを成形するためのシャフト穴成形パンチ11と、油穴(貫通穴)1dを形成するための2つの油穴形成パンチ(貫通穴成形パンチ)12が設けられている。また、下型20は、シャフト穴成形パンチ11に対向する位置に凹部21を、さらに、それぞれの油穴成形パンチ12に対向する位置にそれぞれの凹部21を有し、各凹部21は、円錐面で形作られる錘部21a、と錘部21a円錐頂(最深部)から下方に向かって真っ直ぐに延び下型20の外部に通ずる円形断面をもつ導出路部21bとから構成される。なお、シャフト穴成形パンチ11に対向する位置に設けられた凹部21の錘部21aの円錐底面直径は17mmφ、深さは8mmであり、導出路部21bの直径は2.5mmφである。また、油穴成形パンチ12に対向する位置に設けられた凹部21の錘部21aの円錐底面直径は6mmφ、深さは4mmであり、導出路部21bの直径は1.5mmφである。
【0062】
鍛造素材3を、下型20内の中央部であって、上型10に設けられているシャフト穴成形パンチ11が凹み3aに、また、それぞれの油穴成形パンチ12がそれぞれの凹み3bに挿入する位置に納置し、上型10と下型20とを衝合するように接近させて、両型で鍛造用素材3を加圧する。第2実施例の場合と同様に、加圧された素材は周辺部に向かって塑性流動するだけでなく、凹み3aの周りに存在する擬空間を充てんするようにも塑性流動し、さらに凹み3bの周りに存在する擬空間を充てんするようにも塑性流動する。
【0063】
鍛造された製品は、斜板1に必要とされる製品部4と、製品部4に連続した3つの付帯部5とが一体成形されたものとなる。なお、他の実施例の場合と同様、それぞれの付帯部5は、凹部21の錘部21aと導出路部21bとによって、それぞれ錘体5aとそれに連続する軸体5bとを有する形状に成形される。
【0064】
本実施例の鍛造工程の特徴は、シャフト穴以外の貫通穴をも同時に鍛造成形することにある。それぞれのパンチに過大な負荷をかけず、割れ、被り等の鍛造欠陥の発生のないスムーズな鍛造成形が可能となることで、本実施例では、斜板の製造工程の一層の簡略化が可能となる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法は、鍛造工程を、金型に凹部を設けることで余剰素材が流入する空間をキャビティ内に存在させ、もう一方の金型のこの空間に対向する位置に中央部のシャフト穴を成形するためのパンチを付設し、パンチをこの空間に向かって押し進めるように素材を加圧して鍛造を行うように構成するものである。このように構成された鍛造工程を採用することで、鍛造工程における素材の塑性流動が適正化され、また、過剰素材が効率的に吸収されることとなり、本発明の製造方法は、製品寸法精度が高く、鍛造欠陥が少なく、金型への負担が小さく、かつ中央部に設けるシャフト穴の加工までもが同時に鍛造成形できるるという、極めて優れた製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法が適用される斜板式コンプレッサ用斜板の概略形状を示す。
【図2】可変容量式コンプレッサ用斜板の製造例である第1実施例の鍛造工程を模式的に示す。
【図3】固定容量式コンプレッサ用斜板の製造例である第2実施例の鍛造工程を模式的に示す。
【図4】固定容量式コンプレッサ用斜板の製造例である第2実施例の予備鍛造工程を模式的に示す。
【図5】油穴を有する固定容量式コンプレッサ用斜板の製造例である第3実施例の鍛造工程を模式的に示す。
【図6】従来の製造方法の鍛造工程を模式的に示す。
【符号の説明】
1:容量固定式コンプレッサ用斜板
1a:シャフト穴 1b:周辺部 1c:ボス部
1d:油穴(貫通穴)
2:容量可変式コンプレッサ用斜板
2a:シャフト穴 2b:周辺部
3:鍛造素材
3a:凹み 3b:凹み
4:製品部
5:付帯部
5a:錘体 5b:軸体
6:素材(予備鍛造における)
10:上型(鍛造工程)
11:シャフト穴成形パンチ 11a:先端部
12:油穴成形パンチ(貫通穴成形パンチ)
20:下型(鍛造工程)
21:凹部 21a:錘部 21b:導出路部
30:キャビティ
40:上型(予備鍛造工程)
41:凸部(凹み成形パンチ)
50:下型(予備鍛造工程)
60:キャビティ
Claims (6)
- 中央部にシャフトが挿通するためシャフト穴を有し略円盤形状をなす斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法であって、
衝合することでキャビティを形成する第1の型と第2の型とからなり、該第1の型または該第2の型のいずれか一方は前記シャフト穴を成形するためのシャフト穴成形パンチを有し、該第1の型または該第2の型の他方は該パンチに対向する位置に凹部を有する鍛造金型を用い、該鍛造金型内に円柱の外形を有する鍛造素材を納置し該第1の型と該第2の型とを衝合して加圧し、前記キャビティ内に該鍛造素材を塑性流動させて充満させ、必要とされる製品形状をもつ製品部と該製品部の外部に連続して付帯し該鍛造素材のうちの製品部を形成しない余剰素材が前記凹部に塑性流動することによって形成される付帯部とを一体に成形する鍛造工程と、
前記付帯部を前記製品部から除去する付帯部除去工程と
を含んでなる斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法。 - 前記鍛造金型の凹部は、錘状に凹む錘部と、該錘部に通じ小さな断面積を有する導出路部とからなり、前記鍛造工程において、前記付帯部は、錘体と該錘体から延出する軸体とを有する形状に成形される請求項1に記載の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法。
- 前記鍛造素材はその円柱形状の1端面に前記シャフト穴より大きな断面をもつ凹みを有し、該凹みに前記シャフト穴成形パンチが挿入されるように該鍛造素材を前記鍛造金型内に納置して鍛造工程を行う請求項1または請求項2に記載の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法。
- 端面に前記凹みを形成させるための凸部を有する予備鍛造金型を用い、前記鍛造素材より外径の小さな円柱形状をした素材を、該素材の一端面に該凸部を据込むようにして鍛造することにより、該鍛造素材を成形する予備鍛造工程をさらに含む請求項3に記載の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法。
- 前記斜板は、前記シャフト穴とは別の1以上の貫通穴を有し、
前記第1の型または前記第2の型のいずれか一方は該1以上の貫通穴を成形するための1以上の貫通穴成形パンチを有し、該第1の型または該第2の型の他方は該パンチに対向する位置にさらに1以上の凹部を有し、前記余剰素材がそれぞれの凹部に塑性流動することによって複数の付帯部が形成される請求項1または請求項2に記載の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法。 - 前記鍛造素材はその円柱形状の1端面に前記シャフト穴より大きな断面をもつ凹みおよび前記貫通穴より大きな断面をもつ1以上の凹みを有し、それぞれの凹みに前記シャフト穴成形パンチおよび貫通穴成形パンチがそれぞれ挿入されるように該鍛造素材を前記鍛造金型内に納置して鍛造工程を行う請求項5に記載の斜板式コンプレッサ用斜板の製造方法。
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