JP3626432B2 - 車両用モータ制御装置および車両用モータ制御装置の診断方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車あるいはハイブリッド車などの車両に用いられる車両用モータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気自動車およびハイブリッド車において、駆動用モータに3相交流同期モータを採用し、インバータをベクトル制御することによりトルク制御を行う制御装置が知られている(特開2000−134716号公報)。この電気自動車の制御装置では、トルクプロセッシングコントローラがモータコントローラにトルク指令を送信し、トルク指令を受けたモータコントローラがインバータを制御する。
【0003】
モータコントローラは、メインマイクロコンピュータ(以下、メインマイコンと呼ぶ)とサブマイクロコンピュータ(以下、サブマイコンと呼ぶ)とを有している。メインマイコンは、アクセル状態などの運転条件で決定されるトルク指令やモータの実回転角に基づいて、モータ制御指令値であるd軸電流指令値Idm*、q軸電流指令値Iqm*およびモータ電気角θmを演算する。また、サブマイコンは、上記トルク指令とメインマイコンで演算されたモータ電気角とに基づいて、疑似モータ制御指令値であるd軸電流指令値Ids*、q軸電流指令値Iqs*およびモータ電気角θsを演算する。メインマイコンは、d軸電流指令値Idm*−Ids*間の比較、q軸電流指令値Iqm*−Iqs*間の比較、およびモータ電気角θm−θs間の比較を行い、その差が所定値より大きければ制御異常と診断して、モータへの電力供給を中止する。サブマイコンは、電流指令値Ids*、Iqs*と3相モータ電流Iu,Iv,Iwの座標変換値Ids、Iqsをそれぞれ算出し、IdsとIds*、IqsとIqs*をそれぞれ比較し、その差が所定値より大きければ制御異常と診断して、モータへの電力供給を中止する。また、サブマイコンは、θm−θs間の比較も行って制御異常を診断し、異常診断はモータへの電力供給を中止する。
【0004】
そして従来は、このような診断の信頼性を担保する目的で、メインマイコンとサブマイコンの診断機能を診断している。この診断(以下、トルク比較機能診断と呼ぶ)は、車両起動時に擬似的に上述した各種指令値などを出力することによって行う。この時、センサレス制御に切り替えると共に、各相の電流のフィードバック制御ループの電流制御ゲインを通常走行時よりも大きい値に切り替えている。これにより、診断回の擬似的な各種電流指令によりモータが作動することを防ぎ、車両挙動の影響、例えば不所望に車両が振動することを抑えることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のトルク比較機能の診断では、モータにトルクが発生しないようにd軸電流のみを流していたが、センサレス制御に起因するモータ磁極位置の推定誤差が発生して、q軸にも微少電流が流れてしまっていた。このq軸に流れる電流によりモータが作動し、車両挙動に影響が表れるので、乗員に違和感を感じさせることがあった。
【0006】
本発明の目的は、トルク比較機能の診断時に不必要な車両挙動を発生させない車両用モータ制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
一実施の形態を示す図1〜図3を参照して本発明を説明する。
(1)本発明による車両用モータ制御装置は、直流電力を交流電力に変換してモータ4に供給する電力変換装置1と、電力変換装置1からモータ4へ印加される電力を制御する第1のモータ制御指令を演算する第1の演算装置21と、第1のモータ制御指令に対する疑似的な第2のモータ制御指令を演算する第2の演算装置31と、第1および第2の演算装置21,31によりそれぞれ演算された第1および第2のモータ制御指令を比較演算して、比較演算結果が異常を示すときにモータ4への電力の供給を停止する比較停止装置21,31,41と、モータ4の最大駆動周波数より大きい周波数を有する診断用の第1および第2のモータ制御指令を比較停止装置21,31へ与えて比較演算が正常に行われるか否かを診断する診断装置21,31とを備えることにより、上記目的を達成する。
(2)請求項2の発明は、請求項1の車両用モータ制御装置において、モータ4は、ベクトル制御される電力変換装置1からの電力で駆動される3相交流同期モータ4であり、第1の演算装置21は、運転条件によって決定されるトルク指令値とモータ4の実回転角度とに基づいて、d軸電流、q軸電流およびモータ電気角を演算し、第2の演算装置31は、トルク指令値と第1の演算装置21で演算されたモータ電気角とに基づいて、d軸電流、q軸電流およびモータ電気角を演算することを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項2の車両用モータ制御装置において、診断装置21,31は、q軸電流をゼロとし、d軸電流に所定値を与えて診断を行うことを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項2の車両用モータ制御装置において、診断装置21,31は、d軸電流をゼロとし、q軸電流に所定値を与えて診断を行うことを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれかの車両用モータ制御装置において、比較停止装置21,31,41は、第1の演算装置21で演算されたd軸電流と第2の演算装置31で演算されたd軸電流、第1の演算装置21で演算されたq軸電流と第2の演算装置31で演算されたq軸電流、および第1の演算装置21で演算されたモータ電気角と第2の演算装置31で演算されたモータ電気角とをそれぞれ比較し、それらの比較結果が異常値を示したときにモータ4への電力の供給を停止することを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの車両用モータ制御装置において、診断装置21,31は、比較演算が正常に行われるか否かの診断に用いる時定数を診断の前に検出し、検出した時定数の値が正常であると確認したときに診断を行うことを特徴とする。
(7)請求項7の発明は、直流電力を交流電力に変換してモータ4へ印加する車両用モータ制御装置の診断方法において、モータ4へ印加する電力を制御する第1のモータ制御指令を演算し、第1のモータ制御指令に対する疑似的な第2のモータ制御指令を演算し、第1および第2のモータ制御指令を比較演算して、比較演算結果が異常を示すときにモータ4への電力の供給を停止し、モータ4の最大駆動周波数より大きい周波数を有する診断用の第1および第2のモータ制御指令により比較演算が正常に行われるか否かを診断することを特徴とする。
【0008】
なお、上記課題を解決するための手段の項では、本発明をわかりやすく説明するために実施の形態の図1〜図3と対応づけたが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。
【0009】
【発明の効果】
本発明によれば、次のような効果を奏する。
(1)請求項1〜7の発明によれば、トルク比較機能診断時に、モータの最大駆動周波数より大きい周波数のモータ制御指令値を用いることにより、モータにトルクを発生させるq軸に電流が流れたときでもモータが回転することはない。これにより、車両挙動の影響を抑えることができる。
(2)請求項3または4の発明によれば、d軸電流もしくはq軸電流のどちらか片方の電流を0とすることにより、正確にトルク比較機能の診断を行うことができる。
(3)請求項5の発明によれば、第1および第2の制御装置で演算したd軸電流、q軸電流、モータ電気角のそれぞれを比較して、トルク比較機能が異常であると診断したときにモータ4への電力の供給を停止するので、正確にトルク比較機能の診断を行うとともに、トルク比較機能の異常時に車両を走行させることなく、運転者の安全を確保することができる。
(4)請求項6の発明によれば、トルク比較機能の診断に用いる時定数を診断の前に検出して正常・異常の判断を行うことにより、より正確にトルク比較機能の診断を行うことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明による車両用モータ制御装置の一実施の形態の構成を図1に示す。この車両用モータ制御装置は、例えば電気自動車およびハイブリッド車に用いられるバッテリ8の直流電力を3相交流に変換するインバータ(INV)1は、電気自動車およびハイブリッド車の走行状態を制御するトルクプロセッシングコントローラ(TP/C)2とモータコントローラ(M/C)3により制御される。インバータ1から駆動用モータ4である3相交流同期モータに電力を供給するU,V,W各相の電源線には、各相のモータ電流Iu,Iv,Iwをそれぞれ検出する電流検出器5が設置されている。エンコーダ6は、磁極位置を認識するため駆動用モータ4の回転角信号を検出する。それぞれの電流検出器5が検出した3相電流Iu,Iv,Iwとエンコーダ6が検出した回転角信号は、モータコントローラ3にフィードバックするようにしている。
【0011】
トルクプロセッシングコントローラ(TP/C)2は、アクセル信号、シフト信号、ブレーキ信号およびモータコントローラ3がエンコーダ6の信号に基づいて算出したモータ回転数に基づいてトルク指令値を演算し、モータコントローラ3に出力する。モータコントローラ3は、トルクプロセッシングコントローラ2で演算したトルク指令値、それぞれの電流検出器5で検出した各相のモータ電流、エンコーダ6で検出したモータ回転角信号に基づいて、PWM信号を演算する。インバータ1の図示しないスイッチング素子は、PWM信号に基づいて駆動され、バッテリ8の直流電流を所望の電圧の交流に変換して出力する。また、モータコントローラ3は、後述する条件が満足されたときに開閉器7を開放してバッテリ8からインバータ1への電力の供給を遮断する。
【0012】
モータコントローラ3の内部構成を図2に示す。モータコントローラ3は、メインマイコン21とサブマイコン31とOR回路41とを備えている。メインマイコン21は、モータ制御演算部22、座標変換部23、比較部24、電流制御部25、制御モード切替部26、ゲイン設定部27を備えている。サブマイコン31は、モータ制御演算部32、座標変換部33、比較部34を備えている。
【0013】
メインマイコン21内のモータ制御演算部22は、トルクプロセッシングコントローラ2で演算したトルク指令値と、エンコーダ6で検出したモータ回転角信号とに基づいて、モータ制御指令値であるd軸電流指令値Idm*、q軸電流指令値Iqm*、モータ電気角θmを演算して、比較部24と電流制御部25に入力する。モータ電気角θmは、座標変換部23とサブマイコン31の座標変換部33へも入力される。座標変換部23は、モータ制御演算部22で演算したモータ電気角θmに基づいて、それぞれの電流検出器5で検出した各相モータ電流Iu,Iv,Iwを、d軸電流のフィードバック値Idmおよびq軸電流のフィードバック値Iqmに座標変換(3相/2相変換)して電流制御部25に出力する。比較部24は、モータ制御演算部22で演算したモータ制御指令値Idm*,Iqm*,θmと、後述するサブマイコン31内のモータ制御演算部32で演算した疑似モータ制御指令値Ids*,Iqs*,θsとをそれぞれ比較し、いずれかに所定値以上の差があるとOR回路41へ停止指令を出力する。電流制御部25は、モータ制御指令値Idm*,Iqm*,θmと、電流フィードバック値Idm,Iqmとに基づいて電流フィードバック制御を行い、インバータ1へPWM信号を出力する。
【0014】
サブマイコン31内のモータ制御演算部32は、トルクプロセッシングコントローラ2で演算したトルク指令値と、エンコーダ6で検出したモータ回転角信号とに基づいて、疑似モータ制御指令値であるd軸電流指令値Ids*、q軸電流指令値Iqs*、モータ電気角θsを演算して、比較部34とメインマイコン21内の比較部24へ入力する。座標変換部33は、メインマイコン21内のモータ制御演算部22で演算したモータ電気角θmに基づいて、それぞれの電流検出器5で検出したモータ電流Iu,Iv,Iwを、d軸電流のフィードバック値Idsおよびq軸電流のフィードバック値Iqsに座標変換(3相/2相変換)する。比較部34は、モータ制御演算部32で演算したモータ制御指令値Ids*,Iqs*と、座標変換部33で変換した電流フィードバック値Ids,Iqsとをそれぞれ比較する。さらに、メインマイコン21内のモータ制御演算部22で演算されたモータ電気角θmとサブマイコン31内のモータ制御演算部32で演算したモータ電気角θsとを比較する。これらの比較の結果、いずれかに所定値以上の差があるとOR回路41へインバータ1の停止指令(後述するMCFAIL信号とFCFAIL信号)を出力する。
【0015】
図3は、モータコントローラ3のメインマイコン21とサブマイコン31との間で、電流指令値や異常判断信号などの信号の流れを説明する図である。図中、Idm*,Iqm*は、それぞれトルク指令に対してメインマイコン21のモータ制御演算部22が演算したd軸電流指令値、q軸電流指令値である。また、Ids*,Iqs*は、それぞれトルク指令に対してサブマイコン31のモータ制御演算部32が演算したd軸電流指令値、q軸電流指令値である。Ids,Iqsはそれぞれ、電流検出器5によって検出したモータ電流Iu,Iv,Iwとエンコーダ6が検出したモータ回転角とに基づいて、座標変換部33が演算したd軸フィードバック電流、q軸フィードバック電流を示している。
【0016】
上述したように、メインマイコン21内の比較部24は、d軸電流指令値Idm*とIds*、q軸電流指令値Iqm*とIqs*の比較をそれぞれ行い、両者のうちいずれかの差が所定値より大きければ制御異常と診断する。サブマイコン内部の比較部34では、d軸電流指令値Ids*と座標変換値Ids、q軸電流指令値Iqs*と座標変換値Iqsをそれぞれ比較し、両者のうちいずれかの差が所定値より大きければ制御異常と診断する。制御異常と診断されると、OR回路41からRLYCUT信号が出力されて開閉器7が開放する。また、このRLYCUT信号は、それぞれメインマイコン21およびサブマイコン31へも入力される。さらに、メインマイコン21による制御異常信号MCFAIL信号は、サブマイコン31に入力され、サブマイコン31による制御異常信号FCFAIL信号はメインマイコン21に入力される。
【0017】
本発明による車両用モータ制御装置では、上述したトルク比較機能診断のために、モータ4が駆動可能である最大駆動周波数より大きい高周波電流を用いる。これにより、q軸に電流が流れた場合でもモータ4が駆動することはないので、車両挙動の影響を抑えることができる。なお、車両挙動とは、例えば車両が不所望に走行することなどである。
【0018】
制御モード切替部26は、車両起動時のトルク比較機能の診断を行うために、センサレス制御モードに切り替える指令を両方のモータ制御演算部22,32に指示する。ゲイン設定部27は、センサレス制御モードの切替指令を受けて、センサレス制御モードでの積分ゲイン、比例ゲインを電流制御部25に設定する。この制御ゲインは、通常走行時に設定される値より大きい値であり、これにより、トルク比較機能診断を短時間(例えば30ms)に行い、車両挙動への影響を小さくする。なお、センサレス制御では、エンコーダ6によって検出されるモータ回転角信号を用いることなく、電流検出器5が検出する各相の電流値Iu,Iv,Iwを3相/2相座標変換して得られる電流値Ids,Iqsと、電流指令値Ids*,Iqs*とを用いたPI制御を行う。このセンサレス制御によってd軸にのみ電流指令を与え、q軸のモータ電流検出値からモータ磁極の位置を検出する。
【0019】
以下、モータコントローラ3による車両起動時のトルク機能の診断制御を、図4〜図8を用いて説明する。ステップS1から始まる制御は、操作者が車両を起動させるためのスタートスイッチ(不図示)を操作することによって始まる。以下の制御では、メインマイコン21とサブマイコン31が並行してそれぞれの処理を実行する。ステップS1では、メインマイコン21の起動が完了したか否かを判定する。これは、インバータリレー7が投入済みであり、モータ回転が停止している(あるいは、所定値以下である)こと、位相カウンタが初期化されていることを確認することにより行われる。メインマイコン21の起動が完了したと判定すると、ステップS2に進み、完了していないと判定すると起動が完了するまでステップS1にて待機する。
【0020】
ステップS2では、モータ回転数が50rpmより小さいか否かを判定する。これは、センサレス制御を開始するための条件である。すなわち、ステップS2では、センサレス制御への切替条件が成立したか否かを判定する。モータ回転数が50rpmより小さいと判定するとステップS3に進み、50rpm以上であると判定するとステップS2で待機する。
【0021】
ステップS3では、電流制御部25のフィードバック制御ループの各種制御ゲインを、センサレス制御用の制御ゲインに切り替える。これは、メインマイコン21内のゲイン設定部27にて行う。本実施の形態では、d軸,q軸の積分ゲインは通常時の4倍に、比例ゲインは通常時の1.33倍に設定する。なお、ゲイン値はこれらの値に限定されるものではなく、制御特性により実験的に決定する。
【0022】
ステップS3でセンサレス制御用の制御ゲインに切り替えると、ステップS4に進む。ステップS4では、モータ4の磁極位置の検出を行う。センサレス制御では、モータ4がトルクを発生しないようにd軸にのみ電流指令値(≠0)を与えるので、d軸のモータ電流検出値からモータ磁極の位置を検出する。次のステップS5では、センサレス制御が終了したか否かを判定する。これは、センサレス制御を行う所定時間(例えば30ms)が経過したか否かにより判定する。センサレス制御が終了したと判定するとステップS6に進み、終了していないと判定するとステップS5で待機する。
【0023】
ステップS6〜S9では、異常診断に用いられる時定数の整合性判断を行う。トルク比較機能診断時には、時定数の正確性については確認できないので、比較部24,34での異常診断を実施する前(後)に時定数の値を確認する。これにより、時定数が何らかの原因により書き換えられた場合にも、正確に異常診断を行うことができる。ステップS6では、不図示の時定数データROMから、時定数ΔId1とΔIq1を読み出す。次のステップS7では、不図示の時定数データROMから、時定数ΔId2とΔIq2の読み出しを行い、ステップS8に進む。ステップS8では、ΔId1とΔIq1、ΔId2とΔIq2とがそれぞれ一致するか否かを判定する。すなわち、次式(1)が成立するか否かを判定する。
ΔId1=ΔIq1,
ΔId2=ΔIq2 …(1)
式(1)の関係を満たさないと判定するとステップS9に進み異常であると判定する。式(1)の関係を満たすと判定するとステップS10に進む。
【0024】
ステップS10では、比較部24および34の診断モード、すなわちトルク比較機能診断モードへ遷移し、ステップS11に進む。ステップS11では、モータ4の回転数が5000rpmより大きいか否かを判定する。5000rpmより大きいと判定すると、ステップS12にてトルク機能診断モードを終了する信号を送信して、ステップS55に進む。5000rpm以下であると判定するとステップS13に進む。
【0025】
ステップS13では、サブマイコン31内の比較部34の診断を開始する信号CHK1をサブマイコン31に出力し、ステップS14に進む。ステップS14では、メインマイコン21内の比較部24での診断をマスクするための制御を行う。すなわち、サブマイコン31内の比較部34での診断を行っている間は、メインマイコン21内の比較部24での診断は行わないようにする。
【0026】
ステップS15では、1kHzのd軸電流Idm=−110[A]、1kHzのq軸電流Iqm=0[A]を出力する。上述したように、従来の制御装置によるトルク比較機能診断時にもd軸電流のみを流すようにしていたが、モータ4の磁極位置の推定誤差に起因して、q軸にも電流が流れてしまっていた。本発明による車両用モータ制御装置におけるトルク比較機能診断時には、モータ4の最大駆動周波数より大きい1kHzの高周波電流をモータ4へ出力する。これにより、q軸に電流が流れた場合でもモータ4が作動しない。したがって、車両挙動に影響が表れることはない。本実施の形態では、周波数を1kHz,Idm=−110[A]としているが本発明はこの値に限定されることはなく、電気自動車やハイブリッド車両の使用によって適宜決定される。
【0027】
ここで、ステップS101から始まるサブマイコン31で行う制御について図4〜図8を参照して説明する。サブマイコン31で行う各種処理のうち、メインマイコン21と同じ処理については説明を省略する。ステップS101では、サブマイコン31の起動が完了したか否かを判定する。この判定は、メインマイコン21で行うステップS1の判定と同じ条件に基づいて行われる。また、次のステップS102〜S105も、メインマイコン21で行うステップS6〜ステップS9と同じである。
【0028】
ステップS106では、ステップS12でメインマイコン21が送信したトルク機能診断制御を終了する信号を受信したか否かを判定する。受信したと判定するとステップS150に進む。受信していないと判定するとステップS107に進む。ステップS107では、ステップS13でメインマイコン21が送信したCHK1信号を受信したことを確認して、ステップS108に進む。ステップS108では、サブマイコン31内の比較部34の診断モードへ遷移し、ステップS109に進む。
【0029】
ステップS109では、それぞれの電流検出器5で検出したモータ電流Iu,Iv,Iwを検出し、座標変換部33でd軸電流のフィードバック値Idmおよびq軸電流のフィードバック値Iqmに変換(3相/2相変換)する。次のステップS110では、座標変換後の電流Idm,Iqmを比較部34に入力し、ステップS111に進む。ステップS111では、上述したように、モータ制御指令値Ids*と電流フィードバック値Ids、およびIqs*とIqsとをそれぞれ比較し、異常診断を行う。すなわち、次式(2)または(3)の関係を満たすときは異常であると判定して、メインマイコン21にFCFAIL信号を出力する。FCFAIL信号は、サブマイコン31の制御異常を示す信号である。
|Ids*−Ids|>|ΔId2| …(2)
|Iqs*−Iqs|>|ΔIq2| …(3)
【0030】
メインマイコン21は、ステップS16にてFCFAIL信号に基づいたRLYCUT信号が発生したか否かを判定する。図3に示すように、メインマイコン21にはサブマイコン31からFCFAIL信号が入力され、OR回路41からRLYCUT信号が入力される。RLYCUT信号が発生していないと判定するとステップS17に進み、異常であると判定する。RLYCUT信号が発生していると判定するとステップS18に進む。ステップS18では、再びサブマイコン31内の比較部34の診断を開始する信号CHK1をサブマイコン31に出力し、ステップS19に進む。
【0031】
サブマイコン31は、ステップS112において、ステップS18でメインマイコン21が出力したCHK1信号を受信したことを確認してステップS113に進む。ステップS113では、FCFAIL信号に基づいたRLYCUT信号が発生したか否かを判定する。図3に示すように、サブマイコン31にはメインマイコン21からMCFAIL信号が入力され、OR回路41からRLYCUT信号が入力される。RLYCUT信号が発生していないと判定するとステップS114に進み、異常であると判定する。RLYCUT信号が発生していると判定するとステップS115に進む。ステップS115では、FCFAIL信号をクリアして、ステップS116に進む。サブマイコン31は、FCFAIL信号をクリアした旨の信号をメインマイコン21に送信する。
【0032】
メインマイコン21は、FCFAIL信号がクリアされた旨の信号を受信した後、ステップS19にてd軸電流Idmとq軸電流Iqmを出力する。このときの出力値は、Idm,Iqmともに0[A]である。次のステップS20ではRLYCUT信号がクリアされているか否かを判定する。クリアされていないと判定するとステップS21に進み、異常であると判定する。クリアされていると判定すると、ステップS22に進む。
【0033】
メインマイコン21が行う制御において、ステップS22からステップS30で行う制御は、ステップS13からステップ21までの制御と同じなので、それぞれの説明については省略する。ただし、ステップS24で出力する電流値IdmとIqmはそれぞれ、1kHzのIdm=0[A],1kHzのIqm=−110[A]である。本発明による車両用モータ制御装置では、モータ4の最大駆動周波数より大きい高周波の電流を用いて異常診断を行うので、d軸のみではなく、q軸にも電流を流して診断を行う。つまり、q軸に電流を流して異常診断を行っても、車両挙動の影響は発生しない。また、サブマイコン31が行う制御において、ステップS116からステップS123で行う制御は、ステップ107からステップS115で行う制御と同じなので、それぞれの説明については省略する。サブマイコン31は、ステップS24で出力する電流値Idm,Iqmに基づいてトルク比較機能診断を行う。
【0034】
メインマイコン21は、ステップS29でRLYCUT信号をクリアしたと判定すると、ステップS31に進む。ステップS31ではCHK1信号をサブマイコン31に出力して、ステップS32に進む。サブマイコン31は、ステップS124にて、メインマイコン21が出力したCHK1信号を受信したことを確認してステップS125に進む。ステップS125では、CHK1信号に基づいたRLYCUT信号がクリアされているか否かを判定する。クリアされていないと判定するとステップS126に進み、異常であると判定する。クリアされていると判定すると、ステップS127に進む。ステップS127では、メインマイコン21内の比較部24に対する診断開始信号CHK2をメインマイコン21に出力し、ステップS128に進む。
【0035】
メインマイコン21は、ステップS32にて、サブマイコン31が出力したCHK2信号を受信したことを確認してステップS33に進む。ステップS33では、RLYCUT信号がクリアされたか否かを判定する。クリアされていないと判定するとステップS34に進み、異常であると判定する。クリアされたと判定するとステップS35に進む。ステップS35では、メインマイコン21の制御異常を示す異常信号MCFAILをクリアして、ステップS36に進む。ステップS36では、サブマイコン31にCHK1信号を出力して、ステップS37に進む。
【0036】
サブマイコン31は、ステップS128にて、CHK1信号を受信したことを確認してステップS129に進む。ステップS129では、d軸電流Ids*=150[A],q軸電流Iqs*=0[A]の内部出力を行う。ここでの電流指令値Ids*,Iqs*は、メインマイコン21内の比較部24で診断を行うためのものであり、高周波電流を用いる必要はない。次のステップS130では、サブマイコン31内の比較部34による診断をマスクするための制御を行う。すなわち、メインマイコン21内の比較部24で診断を行っている間は、サブマイコン31内の比較部34での診断は行わないようにする。
【0037】
メインマイコン21は、ステップS37において、サブマイコン31の電流指令値Ids*,Iqs*を検出してステップS38に進む。ステップS38では、上述したように、Idm*とIds*,Iqm*とIqs*とをそれぞれ比較することにより、制御異常診断を行う。すなわち、次式(4)または(5)の関係を満たすときは異常であると判定する。
|Idm*−Ids*|>|ΔId1| …(4)
|Iqm*−Iqs*|>|ΔIq1| …(5)
次のステップS39では、ステップS38で行った制御異常診断の結果に基づいて、MCFAIL信号をサブマイコン31に出力する。
【0038】
サブマイコン31は、ステップS131にてRLYCUT信号が発生しているか否かを判定する。発生していないと判定するとステップS132に進み、異常であると判定する。RLYCUT信号が発生していると判定するとステップS133に進む。ステップS133では、CHK2信号をメインマイコン21に出力してステップS134に進む。
【0039】
メインマイコン21は、ステップ40にて、サブマイコン31が出力したCHK2信号を受信したことを確認して、ステップS41に進む。ステップS41では、RLYCUT信号が発生しているか否かを判定する。発生していないと判定するとステップS42に進み、異常であると判定する。RLYCUT信号が発生していると判定するとステップS43に進む。ステップS43では、MCFAIL信号をクリアして、ステップS44に進む。
【0040】
サブマイコン31は、ステップS134にて、RLYCUT信号をクリアしてステップS135に進む。ステップS135では、d軸電流Ids*=0,q軸電流Iqs*=0の内部出力を行い、ステップS136に進む。ステップS136では、RLYCUT信号がクリアされたか否かを判定する。クリアされていないと判定すると、ステップS137に進み、異常であると判定する。クリアされたと判定すると、ステップS138に進む。ステップS138では、メインマイコン21にCHK2信号を出力してステップS139に進む。
【0041】
メインマイコン21は、ステップS44でCHK2信号を受信したことを確認してステップS45に進む。ステップS45からステップS52までの制御は、ステップS37からステップS44までの制御と同じであるので、それぞれの説明については省略する。また、サブマイコン31が行う処理のうち、ステップS139からステップS148で行う処理は、ステップ129からステップS138で行う処理と同じなので、それぞれの説明については省略する。ただし、ステップS139で出力する電流値Ids*とIqs*はそれぞれ、Ids*=0[A],Iqs*=150[A]である。すなわち、ステップS139で出力する電流指令値Ids*,Iqs*に基づいて、メインマイコン21内の比較部24はトルク比較機能診断を行う。
【0042】
メインマイコン21は、ステップS52でCHK2信号を受信するとステップS53に進む。ステップS53では、RLYCUT信号をクリアしてステップS54に進む。ステップS54では、CHK1信号を出力してステップS55に進む。ステップS55では、インバータ1の制御のためのベクトル演算を開始する。
【0043】
サブマイコン31は、ステップS149において、メインマイコン21が出力したCHK2信号を受信したことを確認してステップS150に進む。ステップS150では、インバータ1の制御のためのベクトル演算を開始して本制御を終了する。
【0044】
本発明の車両用モータ制御装置によれば、電流指令値と実際の電流値とからトルク比較機能診断を行う際に、診断用の疑似電流指令値として、モータ4を駆動させる最大駆動周波数より大きい高周波電流を用いることにより、モータ4が作動することなく車両挙動の影響を抑えることができる。これにより、従来の制御装置では車両が完全に停止した状態でなければトルク比較機能診断を行うことができなかったが、本発明による電気自動車およびハイブリッド車の制御装置では、モータ4が所定回転数以下である、車両走行時にも診断を行うことができる。さらに、トルク比較機能診断の前後に時定数の確認を行うことにより、より正確に診断を行うことができる。
【0045】
本発明は上述した実施の形態に何ら限定されることはない。例えば、電気自動車やハイブリッド車以外に、モータを用いて駆動する全てのものに適用することができる。すなわち、モータ駆動周波数より大きい高周波電流を用いることにより、モータを駆動させることなくトルク比較機能診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による車両用モータ制御装置の構成を示す図
【図2】本発明による車両用モータ制御装置のモータコントローラの構成を示す図
【図3】モータコントローラ内のメインマイコンとサブマイコンの信号の流れを示す図
【図4】本発明による車両用モータ制御装置による制御手順を示すフローチャート
【図5】図4に続く、本発明による車両用モータ制御装置による制御手順を示すフローチャート
【図6】図5に続く、本発明による車両用モータ制御装置による制御手順を示すフローチャート
【図7】図6に続く、本発明による車両用モータ制御装置による制御手順を示すフローチャート
【図8】図7に続く、本発明による車両用モータ制御装置による制御手順を示すフローチャート
【符号の説明】
1…インバータ、2…トルクプロセッシングコントローラ(TP/C)、3…モータコントローラ(M/C)、4…駆動用モータ、5…電流検出器、6…エンコーダ、7…開閉器、8…バッテリ、21…メインマイクロコンピュータ、22モータ制御演算部、23…座標変換部、24…比較部、25…電流制御部、26…制御モード切替部、27…ゲイン設定部、31…サブマイコン、32…モータ制御演算部、33…座標変換部、34…比較部、41…OR回路
Claims (7)
- 直流電力を交流電力に変換してモータに供給する電力変換装置と、
前記電力変換装置から前記モータへ印加される電力を制御する第1のモータ制御指令を演算する第1の演算装置と、
前記第1のモータ制御指令に対する疑似的な第2のモータ制御指令を演算する第2の演算装置と、
前記第1および第2の演算装置によりそれぞれ演算された第1および第2のモータ制御指令を比較演算して、比較演算結果が異常を示すときに前記モータへの電力の供給を停止する比較停止装置と、
前記モータの最大駆動周波数より大きい周波数を有する診断用の第1および第2のモータ制御指令を前記比較停止装置へ与えて前記比較演算が正常に行われるか否かを診断する診断装置とを備えることを特徴とする車両用モータ制御装置。 - 請求項1の車両用モータ制御装置において、
前記モータは、ベクトル制御される電力変換装置からの電力で駆動される3相交流同期モータであり、
前記第1の演算装置は、運転条件によって決定されるトルク指令値と前記モータの実回転角度とに基づいて、d軸電流、q軸電流およびモータ電気角を演算し、
前記第2の演算装置は、前記トルク指令値と前記第1の演算装置で演算されたモータ電気角とに基づいて、d軸電流、q軸電流およびモータ電気角を演算することを特徴とする車両用モータ制御装置。 - 請求項2の車両用モータ制御装置において、
前記診断装置は、q軸電流をゼロとし、d軸電流に所定値を与えて前記診断を行うことを特徴とする車両用モータ制御装置。 - 請求項2の車両用モータ制御装置において、
前記診断装置は、d軸電流をゼロとし、q軸電流に所定値を与えて前記診断を行うことを特徴とする車両用モータ制御装置。 - 請求項2〜4のいずれかの車両用モータ制御装置において、
前記比較停止装置は、前記第1の演算装置で演算されたd軸電流と前記第2の演算装置で演算されたd軸電流、前記第1の演算装置で演算されたq軸電流と前記第2の演算装置で演算されたq軸電流、および前記第1の演算装置で演算されたモータ電気角と前記第2の演算装置で演算されたモータ電気角とをそれぞれ比較し、
それらの比較結果が異常値を示したときに前記モータへの電力の供給を停止することを特徴とする車両用モータ制御装置。 - 請求項1〜5のいずれかの車両用モータ制御装置において、
前記診断装置は、前記比較演算が正常に行われるか否かの診断に用いる時定数を診断の前に検出し、前記検出した時定数の値が正常であると確認したときに前記診断を行うことを特徴とする車両用モータ制御装置。 - 直流電力を交流電力に変換してモータへ印加する車両用モータ制御装置の診断方法において、
前記モータへ印加する電力を制御する第1のモータ制御指令を演算し、
前記第1のモータ制御指令に対する疑似的な第2のモータ制御指令を演算し、
前記第1および第2のモータ制御指令を比較演算して、比較演算結果が異常を示すときに前記モータへの電力の供給を停止し、
前記モータの最大駆動周波数より大きい周波数を有する診断用の第1および第2のモータ制御指令により前記比較演算が正常に行われるか否かを診断することを特徴とする車両用モータ制御装置の診断方法。
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