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JP3630919B2 - スペクトルのピーク判定方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、EPMA、Auger分析装置、ESCA、蛍光X線分析装置等の分析機器より得られたスペクトルのピーク判定方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
種々の分析装置を用いた測定において、得られたスペクトルから正確なピークの検出を行うことは分析精度の向上という観点から非常に重要である。そのため、分析装置には測定の結果得られたスペクトルあるいはそれを平滑化したスペクトル(以下、これらを総称して原スペクトルと称す)のピークを自動的に判定するためのプログラムが搭載されているのが通常である。
【0003】
そのピーク判定法は、原スペクトルから2次微分スペクトルを得、その2次微分スペクトルにおいて閾値以下で負側に凸の部分を有意のピークと判定しているのが通常であるので、近接して複数のピークがあった場合にはそれらのピークは分離されず、全体として一つのピークとしてしか判定されない場合があった。
【0004】
その例を図5を参照して説明する。図5(a)は原スペクトルを示し、図5(b)はその2次微分スペクトルを示している。図5(a)、(b)の横軸は当該原スペクトルを得るために用いた分析装置の種類によって異なる。例えば、原スペクトルがEPMAや蛍光X線分析装置によって得られたものであれば、横軸は検出されたX線の波長またはエネルギーを表し、Auger分析装置によって得られたものであれば横軸は検出されたAuger電子のエネルギーを表し、ESCAによって得られたものであれば横軸は束縛エネルギーを表す。また、縦軸は通常は強度あるいはカウント値を表すが、その他のものである場合もあり得る。
【0005】
さて、原スペクトルで上に凸になっている部分は、2次微分スペクトルでは負側に凸になる性質がある。図5(a)、(b)においては、原スペクトルで上に凸になっているP に対しては2次微分スペクトルの同一位置に負側に凸であるP′ が現れ、同様に原スペクトルの上に凸になっているP ,P ,P に対しても2次微分スペクトルの同一位置に負側に凸であるP′ ,P′ ,P′ が現れている。
【0006】
そこで、図5(b)に示すように、2次微分スペクトルの値を、図中一点鎖線で示す閾値と比較するのである。閾値が負の値であることは当然である。この閾値は適宜な手法によって定めることができる。例えば、負の一定値としてもよいし、他の従来知られている手法によって定めてもよい。
【0007】
そして、2次微分スペクトルにおいて閾値以下で負側に凸になっている部分については、原スペクトル中の当該負側に凸になっている部分の極小値の位置にノイズではない有意なピークがあると判定するのである。従って、図5(b)においては、原スペクトル中において、P′ とP′ の位置にピークがあると判定されることになる。
【0008】
これに対して、図5(a)の原スペクトルを見れば、P ,P の位置にもそれぞれピークがあると判断されるのであるが、図5(b)では、P′とP′の間の極大値が閾値より小さいので、異なるピークとは判定されず、一つのピークとして判定されてしまうのである。この場合のピーク位置は、最小の極小値の位置、図5(b)ではP′ の位置となる。なお、図5(b)において、P′ とP′ の間の極大値が閾値より大きければ、異なるピークとして判定されることは当然である。
【0009】
このように、従来のピーク判定法では、図5(a)のP ,P のように離れて存在するピークは異なるピークとして判定されるのであるが、P ,P のように二つのピークが近接して、一方のピークが他のピークの肩越しに瘤状に現れているような場合には全体として一つのピークとしてしか判定されない場合があったのである。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するものであって、二つのピークが近接して、一方のピークが他のピークの肩越しに瘤状に現れているような場合にも異なるピークとして判定することができ、以て分析精度の向上を図ることができるスペクトルのピーク判定方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1記載のスペクトルのピーク判定方法は、2次微分スペクトル値が負になるスペクトル領域内でそれぞれの位置での閾値以下の極小値が存在する場合において、2次微分スペクトル値が極小値をとる位置が一つしかない場合には、当該極小値をとる位置にピークが存在すると判定し、前記極小値が複数ある場合には、2次微分スペクトル値がある極小値から増加して極大値をとり、その後減少していって、当該極大値からの2次微分スペクトル値の差がその位置での閾値の絶対値以上となる位置がある場合には、当該位置より大きい側に新たなピークの候補点があるとし、2次微分スペクトル値が極小値から増加していって、当該極小値からの2次微分スペクトル値の差がその位置での閾値の絶対値以上になる位置でピークが終了したと判定することを特徴とする。
請求項2記載のスペクトルのピーク判定方法は、請求項1において、閾値としては、請求項2記載のように、2次微分スペクトルの標準偏差に基づいて求められたノイズ標準偏差値を用いる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ実施の形態について説明する。
まず、測定の結果得られたスペクトルを平滑化すると共に、2次微分スペクトルを得る。スペクトルの平滑化は、スペクトルの各点の回りにピークの平均半値幅程度の数の平滑化点をとって行う、サビツキー−ゴーレイ(Savitzky−Golay)法を用いればよい。これによれば、スペクトルの回りにとる平滑化点の数を 2m+1 (mは自然数)、スペクトルのステップ幅をt、スペクトル中のピーク半値幅をwとすると、mは
m=[w/t] …(1)
程度とすればよいことが知られている。ここで、[]は括弧内の整数部分を取るガウス記号を示す。
【0013】
さて、測定の結果得られたスペクトルの各点の値をp (i=1,2,…,n)とすると、平滑化されたスペクトルの各点の値s は、平滑化フィルタによって定まる係数をfとして
【0014】
【数1】
Figure 0003630919
【0015】
で与えられる。同様に2次微分スペクトルの各点の値d は、2次微分フィルタによって定まる係数をgとして
【0016】
【数2】
Figure 0003630919
【0017】
で与えられる。
【0018】
次に、閾値を定める。この閾値は従来と同様に定めることができることは当然であるが、ここではノイズ標準偏差値T を用いるものとする。ノイズ標準偏差値T は次のようにして求めることができる。
【0019】
さて、(2) 式と(3) 式から
【0020】
【数3】
Figure 0003630919
【0021】
が得られる。なお、Ajk=gである。
【0022】
ここで、d の分散をσ 、p の分散をδ とすると、p は互いに独立であると仮定すれば、誤差伝搬の関係から
【0023】
【数4】
Figure 0003630919
【0024】
となる。なお、p は互いに独立であるという仮定は厳密には正しくないが、ノイズ標準偏差値を求める計算には実際上差し支えないものである。ここで、測定が統計的な事象であることを利用すれば、
【0025】
【数5】
Figure 0003630919
【0026】
となるから、
【0027】
【数6】
Figure 0003630919
【0028】
で与えられることになる。この(7) 式を計算するのは容易ではないが、平滑化されたスペクトルの各点の値s と、測定によって得られたスペクトルp とは大きな変化がないのが通常であるので
≒p …(8)
としても大きな誤りはなく、しかも上述したようにp は互いに独立であると仮定することができるのと同様に、s も互いに独立であると仮定することができるので、(3) 式から2次微分スペクトルの分散σ は、
【0029】
【数7】
Figure 0003630919
【0030】
としてよく、従って、2次微分スペクトルの標準偏差σ
【0031】
【数8】
Figure 0003630919
【0032】
で与えられることになる。
そして、正の係数aを導入して、ノイズ標準偏差値T を次のように定める。
【0033】
【数9】
Figure 0003630919
【0034】
このノイズ標準偏差値T を閾値として用いるのである。ここで、正の係数aは経験的、実験的に定めればよいが、通常は 0.5〜 3程度の範囲で設定すればよいことが確認されている。
【0035】
次に、ピークの判定法について説明する。なお、以下では横軸をx軸とし、x=x(i=1,2,…,n)における2次微分スペクトルの値及び閾値を、それぞれ、d ,T とする。また、xの値の小さい方から順次2次微分スペクトルの値を注目していくものとする。
【0036】
さて、このピーク判定法において、ピークの有無を判定するために用いる条件は次のようである。
【0037】
▲1▼:d >T のときには何もしない。
【0038】
▲2▼:d ≦T になったときには、その位置よりxの値の大きい側に新たなピークの候補点があると判断する。
【0039】
▲3▼:閾値以下の範囲において、2次微分スペクトルの値が減少して極小値drminをとり、その後増加していって
−drmin ≧│T│ (ただし、d ≦T ) …(12)
を満足する位置x があった場合、最初のx の位置でピークが終了したと判定する。
【0040】
▲4▼:閾値以下の範囲において、2次微分スペクトルの値が減少して極小値drminをとり、その後増加していったとき、(12)を満足する位置x は存在しないが、そのまま増加していって閾値を越えた場合には、ピークが終了したと判定する。
【0041】
▲5▼:閾値以下の範囲において、2次微分スペクトルの値が増加して極大値drmaxをとり、その後減少していき、
rmax −d ≧│T│ …(13)
を満足する位置x があった場合には、最初のx の位置よりxの値の大きい側に新たなピークの候補点があると判定する。
【0042】
▲6▼:閾値以下の範囲において、2次微分スペクトルの値が減少して極小値drminをとり、その後増加して極大値drmaxをとり、その後減少していったとき、当該極小値drminと極大値drmaxとの差の絶対値が、当該極大値drmaxをとる位置での閾値の絶対値より小さいときには、当該極小値drminをとる位置、及び次の極小値をとる位置をピークの候補点とする。
この条件は、条件▲5▼に優先する。
【0043】
▲7▼:▲2▼または▲5▼によってxの値の大きい側に新たなピークの候補点があると判定された後、▲3▼または▲4▼によって最初にピークが終了したと判定されるまでの間に極小値が一つしかない場合には、当該極小値をとる位置に正式なピークが存在すると判定する。
【0044】
▲8▼:▲2▼または▲5▼によってxの値の大きい側に新たなピークの候補点があると判定された後、▲3▼または▲4▼によって最初にピークが終了したと判定されるまでの間に極小値が複数ある場合には、これらの極小値の中で最小の値をとる極小値をとる位置に正式なピークが存在すると判定する。
【0045】
次に、以上の条件▲1▼〜▲8▼によって、ピークの判定が具体的にどのように行われるかを例をあげて説明する。
[例1]いま、平滑化スペクトルの2次微分スペクトルが図1の実線で示すようであり、閾値が一点鎖線で示すようであり、x においてd =T となっているとすると、x より左側では条件▲1▼によって何の処理も行われず、x の時点で条件▲2▼によって、x の右側に新たなピークの候補点があると判定される。
【0046】
そして、x において極小値d をとる。その後増加して、x の時点で、
△=d −d =│T│ (ただし、d<T) …(14)
となったとすると、条件▲3▼によってx の位置でピークが終了したと判定される。そして、この場合には条件▲7▼によって原スペクトルのx の位置に正式なピークが存在すると判定される。
【0047】
その後、x においてd =T となるので、x より右側では条件▲1▼により何の処理も行われない。
【0048】
[例2]いま、平滑化スペクトルの2次微分スペクトルが図2の実線で示すようであり、閾値が一点鎖線で示すようであり、x においてd =T となっているとすると、x より左側では条件▲1▼によって何の処理も行われず、x の時点で条件▲2▼によって、x の右側に新たなピークの候補点があると判定される。
【0049】
そして、x において極小値d をとっている。その後増加を続け、x の位置で閾値をよぎっている。
そして、
−d <│T│ …(15)
であるとすると、条件▲4▼によってx の時点でピークが終了したと判定される。そして、この場合には条件▲7▼によって原スペクトルのx の位置に正式なピークが存在すると判定される。
より右側では条件▲1▼により何の処理も行われない。
【0050】
[例3]いま、平滑化スペクトルの2次微分スペクトルが図3の実線で示すようであり、閾値が一点鎖線で示すようであるとし、d =T 、d =T であり、x で極小値d をとり、x で極大値d をとり、x で極小値d をとるものとする。また、
△=d −d =│T│ …(16)
△′=d −d =│T│ …(17)
△″=d −d =│T│ …(18)
であるとすると、このとき、上記の[例1]と同様に、原スペクトルのx の位置に正式なピークが存在すると判定される。
【0051】
また、x の位置において条件▲5▼によってx の右側に新たなピークの候補点があると判定され、その後、x の位置において条件▲3▼によってピークが終了したと判定されるので、条件▲7▼によって原スペクトルのx の位置にも正式なピークが存在すると判定される。
より右側では条件▲1▼により何の処理も行われない。
【0052】
[例4]いま、平滑化スペクトルの2次微分スペクトルが図4の実線で示すようであり、閾値が一点鎖線で示すようであるとし、d =T 、d =T であり、x で極小値d をとり、x で極大値d をとり、x で極小値d をとるものとする。また、
−d <│T│ …(19)
△=d −d =│T│ …(20)
であるとする。
【0053】
このときには、条件▲6▼によって二つの位置x ,x がピークの候補点として判定される。そして、x の位置において条件▲3▼によってピークが終了したと判定されることになるが、図4の場合にはd >d であるので、条件▲8▼によって原スペクトルのx の位置に正式なピークが存在すると判定されることになる。x より右側では条件▲1▼により何の処理も行われない。
【0054】
以上、4つの例について説明したが、上記の条件▲1▼〜▲8▼によって実際の原スペクトルにおけるピークの有無を判定することができることが確認されている。
【0055】
以上のように、このスペクトルのピーク判定方法によれば、2次微分スペクトルの値の変化の仕方、2次微分スペクトルの各点での値と閾値の関係、及び2次微分スペクトルの各点における近傍の極値からの変動分とそのときの閾値との関係等に基づいて原スペクトルにおけるピークの有無を判定しているので、従来は全体として一つのピークとして判定されていたような、二つのピークが近接して、一方のピークが他のピークの肩越しに瘤状に現れているような場合にも異なるピークとして分離判定することが可能となり、従って、上述したピーク判定法の処理を行うプログラムを作成して種々の分析装置に搭載し、測定の結果得られたスペクトルに対して上述した処理を実行させることによって、従来では分離されなかったピークを分離して検出することが可能となるので分析精度の向上を図ることができるものである。
【0056】
なお、上述したような方法でノイズ標準偏差値が計算できるのは、信号検出の際、確率事象に基づいてノイズが発生する場合であり、本発明はそれに当てはまるEPMA、Auger分析装置、ESCA、蛍光X線分析装置等の分析機器より得られたスペクトルのピーク判定に適用することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記の説明では測定の結果得られたスペクトルを平滑化するものとしたが、これは必須の要件ではなく省略することも可能である。その場合には(3) 式のsi+j としてはpi+j を用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスペクトルのピーク判定方法を説明するための第1の例を示す図である。
【図2】本発明に係るスペクトルのピーク判定方法を説明するための第2の例を示す図である。
【図3】本発明に係るスペクトルのピーク判定方法を説明するための第3の例を示す図である。
【図4】本発明に係るスペクトルのピーク判定方法を説明するための第4の例を示す図である。
【図5】従来のスペクトルのピーク判定方法を説明すると共に、本発明が解決しようとする課題を説明するための図である。

Claims (2)

  1. 2次微分スペクトル値が負になるスペクトル領域内でそれぞれの位置での閾値以下の極小値が存在する場合において、
    2次微分スペクトル値が極小値をとる位置が一つしかない場合には、当該極小値をとる位置にピークが存在すると判定し、
    前記極小値が複数ある場合には、2次微分スペクトル値がある極小値から増加して極大値をとり、その後減少していって、当該極大値からの2次微分スペクトル値の差がその位置での閾値の絶対値以上となる位置がある場合には、当該位置より大きい側に新たなピークの候補点があるとし、2次微分スペクトル値が極小値から増加していって、当該極小値からの2次微分スペクトル値の差がその位置での閾値の絶対値以上になる位置でピークが終了したと判定する
    ことを特徴とするスペクトルのピーク判定方法。
  2. 前記閾値は、2次微分スペクトルの標準偏差に基づいて求められたノイズ標準偏差値であることを特徴とする請求項1記載のスペクトルのピーク判定方法。
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