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JP3636033B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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JP3636033B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度でかつ延性に優れ、しかも母材とめっき皮膜の界面の密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、家電製品、建材、および自動車等の産業分野においては溶融亜鉛めっき鋼板が大量に使用されている。なかでも、塗装性、溶接性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が使用されることが多い。
【0003】
一方、これらの産業分野においては、素材の高性能化と同時に軽量化が強く推進されており、素材鋼板に対する高強度化の要請が強く、数多くの高強度化技術が開発されている。しかしながら、鋼板の高強度化に伴い、延性が損なわれるため、加工性が劣化するという問題があった。
【0004】
この問題に対して、特開平 5− 70886号公報に示されるように、Si、Alを適量添加し、鋼中に残留オーステナイトを含む、局部延性が著しく改善された、プレス成形時の加工性が良好な高張力鋼板が開発されている。
【0005】
このように、高強度でかつ加工性に優れた材料が要求され、特に自動車車体用等の素材としては、さらに、防錆能が高く、経済性にも優れている材料が要求される。そのため、高強度でかつ加工性に優れた鋼板を母材として、これに合金化溶融亜鉛めっきを施した材料が要求されることとなった。
【0006】
通常、溶融亜鉛めっき鋼板は、母材鋼板を脱脂洗浄した後、または脱脂洗浄を行わずに、弱酸化性雰囲気または還元性雰囲気中で予熱し、水素と窒素の混合ガスからなる還元性雰囲気中で焼鈍し、その後、鋼板をめっき温度付近まで冷却して溶融亜鉛浴に浸漬することにより製造される。
【0007】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、この溶融亜鉛めっき鋼板を、連続的に熱処理炉で 500〜 600℃の材料温度で 3〜60秒間加熱してFe−Zn合金めっき皮膜を形成させることにより製造される。めっき皮膜は、FeとZnの金属間化合物からなり、めっき皮膜中のFe含有量は、一般に 8〜12質量%である。めっき付着量は、通常、片面当り20〜70g/m2であり、この範囲より少ないものは通常の方法では製造することが難しく、また、この範囲を上回るものはめっき皮膜の耐パウダリング性の確保が困難であるため、一般には供給されていない。
【0008】
このような合金化溶融亜鉛めっき鋼板の母材として、前掲の特開平 5− 70886号公報に記載される残留オーステナイトを含有する加工性が良好な、かつ高張力の材料を用いると、母材鋼板とめっき皮膜の界面の密着性(以下、「皮膜密着性」と記す)が低下するという問題が生じる。
【0009】
この皮膜密着性は、塗装後の低温チッピング性などと密接な関係があり、母材として極低炭素鋼を用いる場合は、特開平10− 96064号公報に記載されるように、粒界へZnを侵入させることによるアンカー効果によって皮膜密着性を向上させることが可能である。しかしながら、隣接するフェライト相間(粒界)にC濃度の高いオーステナイト相などの第二相が存在すると、溶融亜鉛めっき皮膜の合金化処理の際の粒界反応(鋼板とZnとの反応)が著しく抑制されて粒界へのZnの侵入が遮られ、皮膜密着性が低下する。
【0010】
このため、フェライト相と第二相を含む鋼板を母材として用いた、高強度でかつ延性に優れ、高い皮膜密着性を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板材料は、未だ供給されるには至っていないのが現状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、主として自動車用の素材として使用される合金化溶融亜鉛めっき鋼板で、特に、局部延性に優れた残留オーステナイトを含む鋼板を母材として用いた、高強度でかつ延性に優れ、しかも皮膜密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板、およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明者らは、まず、前掲の公報(特開平 5− 70886号公報)に記載されるSi、Alの複合添加による残留オーステナイト(すなわち、第二相)を含む鋼を母材として、これに合金化溶融亜鉛めっき処理を施し、皮膜密着性を調査した。その結果、同程度のSi、Alを含有し、第二相を含まない鋼を母材とした場合に比べて皮膜密着性の低下が認められるが、上記のSi、Alを複合添加した鋼に、さらにTiまたはNbを含有させた鋼を母材として用いたところ、第二相を含んでいても皮膜密着性の向上が可能であることが判明した。すなわち、このTiまたはNbを含有させた鋼を溶融亜鉛めっきラインで還元雰囲気中で焼鈍する際の低温での処理を、 450℃以上 550℃以下で20秒以上行うと、皮膜密着性が向上する。さらに、めっき皮膜と接している側のフェライト相の結晶粒径が小さくなると皮膜密着性の向上が著しいことを知見した。
本発明はこれらの知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記(1)の合金化溶融亜鉛めっき鋼板、および(2)のその製造方法にある。
(1)質量%で、C:0.05%以上0.25%以下、Si:0.02%以上 2.5%以下、Mn:0.5%以上3%以下、Al:0.03%以上2%以下と、Ti:0.005%以上0.05 以下(但し、 (48/14) N≦ Ti (48/14) N+ (48/32) S+ 0.010 の場合を除く)およびNb:0.0025%以上0.25%以下の少なくとも一方を含有するとともに、下記(i)式および(ii)式を満足し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.04以下、Sが0.01%以下、Nが0.01%以下で、かつ、オーステナイト相を体積%で1%以上含有する母材鋼板の表面に、Fe含有量が質量%で7%以上15%以下の合金化溶融亜鉛めっき皮膜を有し、このめっき皮膜下の母材鋼板表面のフェライト結晶粒の平均粒径が0.6μm上6μm以下で、めっき皮膜と接している粒界部分に第二相が存在する下記粒界の比率が90%以下である合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0013】
0.5≦Si(%)+Al(%) ・・(i)
0.005≦Ti(%)+2×Nb(%)≦0.25 ・・(ii)
ただし、Si(%)、Al(%)、Ti(%)およびNb(%)は、
それぞれSi、Al、TiおよびNbの鋼中含有量(質量%)を意味
する。
「粒界部分に第二相が存在する粒界の比率」:
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の断面において、観察の対象とした
粒界の数に対する第二相が存在する粒界の数の比率
(2)質量%で、C:0.05%以上0.25%以下、Si:0.02%以上2.5%以下、Mn:0.5%以上3%以下、Al:0.03%以上2%以下と、Ti:0.005%以上0.05 以下(但し、 (48/14) N≦ Ti (48/14) N+ (48/32) S+ 0.010 の場合を除く)およびNb:0.0025%以上0.25%以下の少なくとも一方を含有するとともに、下記(i)式および(ii)式を満足し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.04以下、Sが0.01%以下、Nが0.01%以下である熱間圧延後または冷間圧延後の鋼板を母材とし、これに、弱酸化性雰囲気中で予備加熱処理を施し、続いて還元性雰囲気中で 780℃以上 870℃以下の温度に昇温し、次いで 350℃〜 550℃まで冷却し、この温度領域で20秒以上保持する焼鈍処理を施した後、溶融亜鉛めっき処理を行い、さらに合金化処理を行う蒸気(1)に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
0.5≦Si(%)+Al(%) ・・(i)
0.005≦Ti(%)+2×Nb(%)≦0.25 ・・(ii)
ただし、Si(%)、Al(%)、Ti(%)およびNb(%)は、
それぞれSi、Al、TiおよびNbの鋼中含有量(質量%)を意味
する。
前記の「フェライト結晶粒の平均粒径」とは、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の断面において、めっき皮膜と接しているそれぞれのフェライト結晶粒のめっき皮膜と接している部分の長さの平均値をいう。
【0014】
また、「第二相」とは、オーステナイト相、パーライト相、マルテンサイト相等の薄膜状の相であり、「粒界部分」とは、隣接するフェライト相の粒界に沿った部分をいう。したがって、「粒界部分に第二相が存在する粒界」とは、フェライト相とフェライト相の粒界に沿って第二相が存在している粒界をいう。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法について詳細に説明する。なお、母材鋼板の化学成分含有量の「%」、めっき皮膜中のFe含有量の「%」およびめっき浴中のAl濃度の「%」は、いずれも「質量%」を意味する。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、母材鋼板の化学組成を上記のように規定するのは以下の理由による。
C:0.05%以上0.25%以下
Cは、残留オーステナイトを安定に析出させるために必要な元素で、母材のC含有量が0.05%より低いとオーステナイト相中のC濃度が下がるため不安定になり、残留オーステナイト相を体積%で1%以上含有する鋼を製造することが困難になる。一方、母材のC含有量を増加させることにより容易に鋼の強度を高めることが可能で、C含有量の増加は高張力鋼板を製造する上で得策ではあるが、同時に延性が劣化し、溶接にも支障が生じる。したがって、母材のC含有量は0.05%以上0.25%以下と規定する。母材鋼板を、所定量の残留オーステナイトを安定して有し、かつ、非常に高い延性を備える鋼板とするためには、C含有量が0.08%以上0.15%以下になるように調整するのが好ましい。
Si:0.02%以上 2.5%以下
Siはフエライト相の体積率を増加させることにより、オーステナイト相中のC濃度を増加させる作用を有しているが、その含有量が0.02%未満ではその作用効果が十分発揮されない。一方、 2.5%を超えて含有させると、還元雰囲気中での焼鈍処理(以下、「還元焼鈍処理」という)時にSiの酸化物が母材鋼板の表面に濃化し、溶融亜鉛めっき処理の際、濡れ性を確保することができなくなる。したがって、Si含有量は0.02%以上 2.5%以下と規定する。溶融亜鉛めっき処理後の合金化を速やかに進行させることも考慮すると、Si含有量を0.02%以上 0.7%以下とするのが好ましい。
【0016】
なお、後述するAlもSiと同様の作用効果を有しており、両者をともに含有させることにより、効果的にフェライト相の体積率を増加させ、オーステナイト相中のC濃度を増加させてオーステナイト相を安定化させ、残留オーステナイトを鋼中に1%以上残存させることができる。そのためには、〔Si(%)+Al(%)〕が0.5以上になるように、すなわち前記の(i)式が満たされるように両者の含有量を調整することが必要となる。
Mn:0.5%以上3%以下
Mnはオーステナイト安定化元素であり、その効果を得るには0.5%以上含有させることが必要である。しかし、3%を超えて含有させると、鋼の脆化が生じる。したがって、Mn含有量は0.5%以上3%以下と規定する。なお、Mn含有量が増加するに伴って鋼板の製造コストが上昇するので、0.5%以上2.5%以下とするのが好ましい。
Al:0.03%以上2%以下
AlはSiと同様にフエライト相の体積率を増加させることにより、オーステナイト相中のC濃度を増加させる元素である。しかし、含有量が0.03%未満ではその作用効果が十分発揮されない。一方、Alの含有量が2%を超えると、鋼中の介在物が増加し、鋼の延性が劣化する。したがって、Alの含有量は0.03%以上2%以下と規定する。より延性の高い材料を安定して製造する上から、0.1%以上1.4%以下とするのが好ましい。なお、前記のように、〔Si(%)+Al(%)〕が0.5以上になるように、AlとSiの含有量を調整することが必要である。
Ti:0.005%以上0.05 以下(但し、 (48/14) N≦ Ti (48/14) N+ (48/32) S+ 0.010 の場 合を除く)
Nb:0.0025%以上0.25%以下
TiおよびNbはいずれも皮膜密着性を向上させる作用を有する元素であり、それらのいずれか一方または両方を含有させる。
Tiについては、含有量が0.005%未満ではその作用効果が十分発揮されない。一方、含有量が0.25%を超えると、TiCが生成して鋼が硬く脆化しやすくなり、鋼としての性能が劣化する。強度と延性のバランスを考慮すると、0.005%以上0.05%以下とするのが好ましい。したがって、 Ti の含有量は 0.005 %以上 0.05 %以下(但し、 (48/14) N≦ Ti (48/14) N+ (48/32) S+ 0.010 の場合を除く)とする。
【0017】
Nbについては、含有量が0.0025%未満ではその作用効果が十分発揮されない。一方、含有量が0.25%を超えると、Tiを含有させる場合と同様に鋼が脆化しやすくなる。したがって、Nbの含有量は0.0025%以上0.25%以下と規定する。強度と延性のバランスを考慮すると、0.0025%以上0.03%以下とするのが好ましい。
なお、TiとNbの両方を含有させる場合は、〔Ti(%)+2×Nb(%)〕が0.005%以上0.25%以下、となるように、すなわち前記の(ii)式が満たされるように調整することが必要である。0.005%に満たない場合は、皮膜密着性を向上させる作用効果が発揮されず、0.25%を超えると、鋼が脆化しやすくなる。Ti、Nbをそれぞれ単独に含有させる場合と同様、強度と延性のバランスを考慮すると、〔Ti(%)+2×Nb(%)〕が0.005以上0.06%以下となるようにするのが好ましい。
【0018】
Ti、Nbを含有させることにより皮膜密着性が向上するのは、以下の理由によるものと推測される。
【0019】
前述したように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の母材として残留オーステナイトを含有する材料を用いると皮膜密着性が低下するのは、粒界部分にC濃度の高いオーステナイト相などの第二相が存在すると、前記合金化処理の際の粒界反応が著しく抑制されて粒界へのZnの侵入が遮られることによるものである。しかし、Ti、Nbを含有させると、主としてフェライト結晶粒の粒界にTiC、NbCなどが生成し、粒界近傍のC濃度が低下する。このため、粒界はTi、Nbが添加されていない場合に比べて若干活性になる。また、TiC、NbCは第二相が生成する際の核発生頻度を高める作用も有しており、粒界に沿って生成する第二相が細粒に分断された状態で生成するため、前記の粒界反応の抑制が緩和されると考えられる。
【0020】
さらに、このような材料においては、還元焼鈍処理における低温での保持の際、粒界部分にSiやMnが酸化物として表面に濃化し、粒界部分にはこれらの酸化物が偏析しているが、これら酸化物はめっき浴中のAlによって還元されるため、粒界近傍ではめっき浴中のAl濃度の低い部分が生じることになる。そのため、めっき時に粒界近傍で母材とめっき皮膜の界面のAl濃度が低下し、合金化処理の際の粒界近傍での反応性が高くなり、粒界と粒内の反応差による凹凸、または、粒界へのZnの侵入が生じやすくなって皮膜密着性が向上する。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の母材鋼板は、上記の合金元素を有し、残部がFeと不純物からなる鋼板である。不純物中のP、SおよびNの含有量については上限を下記のように規定することが必要である。
P:0.04%以下
Pは不可避的に混入する元素で、鋼板の延性を劣化させ、また、溶融亜鉛めっき皮膜の合金化を遅延させる。したがって、その含有量は低い方が好ましく、許容上限を0.04%とする。好ましくは0.02%以下、より好ましくは 0.012%以下である。下限は特に規定しないが、含有量を 0.005%未満に調整しようとすれば製造コストが高くなるので、 0.005%程度とするのがよい。
S:0.01%以下
Sも不純物として鋼中に含有される元素で、その含有量が0.01%を超えると、MnSの析出が増えて鋼板の延性が阻害されするのみならず、オーステナイト安定化元素であるMnがMnSの形成に消費される。したがって、S含有量は0.01%以下に抑えることが必要である。S含有量の下限は特に規定しないが、通常は、 0.008%程度までの材料であれば、特に問題なく製造することができる。
N:0.01%以下
Nも不純物として不可避的に鋼中に含有される元素であり、その含有量は低い方が好ましい。N含有量が0.01%を超えると、AlNが生成しやすく、Alが消費されるので、N含有量の上限を0.01%と規定する。下限は特に規定しないが、通常、0.0002%程度までの材料であれば、特に問題なく製造可能である。
上記の母材鋼板は、さらに、体積%で1%以上の残留オーステナイトを含む組織を有していることが必要である。これは、高い延性を得るためで、例えば、引張強さTs が590MPa程度では、伸びEl が30%以上の延性が必要であり、この強度と延性のバランスを得るためには、残留オーステナイトが体積%で1%以上含まれていることが必要である。残留オーステナイトの存在量の上限は特に規定しないが、母材鋼板の引張強さを390MPa以上790MPa以下程度とすると、30%以下とすることが好ましい。これを超える残留オーステナイトが存在すると、引張強さが高くなりすぎ、延性が劣化する。なお、このような組織は、後述するように、上記の母材鋼板に適切な還元焼鈍処理を施すことにより得ることができる。
【0021】
なお、ここでいう残留オーステナイトの存在量は、以下のようにX線回折により測定される値である。すなわち、ターゲットにはCoを使用し、オーステナイト相の (220)面およびフェライト相の (211)面のそれぞれの回折ピークの積分値の比率からオーステナイト相の体積%を求め、残留オーステナイトの存在量(体積%)とする。また、引張強さTs および伸びEl は、JIS Z 2201に規定される5号引張り試験片により測定される値である。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、上記の母材鋼板の上にめっき皮膜を有する鋼板であるが、めっき皮膜下の母材表面のフェライト結晶粒の平均粒径が 0.6μm 以上 6μm 以下であり、めっき皮膜と接している粒界部分に第二相が存在する粒界の比率が全粒界に対して90%以下であることが必要である。
【0022】
皮膜密着性は母材鋼板とめっき皮膜の界面の幾何学的形状と関係があり、皮膜密着性を高めるためには、前記界面の単位面積あたりの凹凸を増加させればよい。結晶粒界がこの凹凸に相当する作用効果を有しており、したがって、結晶粒が細粒であるほど皮膜密着性が向上する。この効果を得るためには、フェライト結晶粒の平均粒径が 6μm 以下であることが必要である。粒径がこの上限を超えて大きくなると、隣接するフェライト結晶粒の粒界部分に第二相が多くなり、皮膜密着性を向上させることができなくなる。一方、現在、製造可能なフェライト結晶粒の平均粒径の下限は 0.6μm である。したがって、めっき皮膜下の母材表面のフェライト結晶粒の平均粒径が 0.6μm 以上 6μm 以下とする。母材鋼板が上記の組成を有するものであれば、還元焼鈍処理でフェライト結晶粒の平均粒径を 0.6μm 以上 6μm 以下とすることができる。
【0023】
なお、フェライト結晶粒の平均粒径の測定は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の断面を測定の対象とし、粒径の大きさに応じて走査電子顕微鏡(SEM)観察、または透過電子顕微鏡(TEM)観察によりめっき皮膜と接しているフェライト結晶粒の長さを測定して平均値を求めることにより行う。例えば、粒径が 2μm 以上とみられる場合は、倍率が5000倍のSEM観察によりめっき皮膜と接しているフェライト結晶粒(20個以上とするのが好ましい)の長さを測定して平均値を求め、粒径が 2μm 未満とみられる場合は、倍率が 10000倍以上のTEM観察により同じくフェライト結晶粒(10個以上とするのが好ましい)の長さを測定して平均値を求め、フェライト結晶粒の平均粒径とすればよい。
また、めっき皮膜と接している粒界部分に第二相が存在する粒界の比率が全粒界に対して90%以下であることとするのは、皮膜密着性を向上させるためである。前記粒界の比率が90%を超えると、皮膜密着性の劣化が著しくなる。下限については特に規定しないが、C含有量の下限を0.05%とし、残留オーステナイトを少なくとも1%含有する鋼板を製造する場合、前記第二相が存在している粒界の比率が30%以下となることは殆どない。実際に鋼板としての性能が良い部分で、密着性の良好なものを考慮すると、第二相が存在している粒界の比率の範囲は5%以上90%以下となる。
なお、第二相の存在の有無の判定は、フェライト結晶粒の平均粒径の測定の場合と同様に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の断面を対象とし、粒径の大きさに応じてSEM観察、またはTEM観察によりめっき皮膜と接している粒界部分における第二相の存在の有無を判定し、観察の対象とした全粒界数に対する第二相が存在する粒界数の比率を求めることにより行う。この場合、第二相の厚みが 1μm 未満であれば第二相が存在しない粒界とし、第二相の厚みが 1μm 以上であれば第二相が存在する粒界とすればよい。また、観察の対象とする粒界の数nは10以上とするのが好ましい。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板においては、さらに、めっき皮膜中のFe含有量が 7%以上15%以下であることが必要である。Fe含有量が 7%より低いと、めっき皮膜の表面にη相が残存するため、塗装性、溶接性、フレーキング性が劣化する。また、15%より高くなると、Γ相の厚みが厚くなり、パウダリング性の劣化が著しくなる。
上記本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を工程順に説明する。
【0024】
まず、母材鋼板は、上述した化学組成を満たすものであれば、熱間圧延後、および冷間圧延後の鋼板のいずれであってもよい。熱間圧延後、酸洗処理を施した鋼板でもよい。
【0025】
上記母材鋼板には、圧延油、防錆油などの油が塗布されている場合が多いので、溶融亜鉛めっき処理を施す前に、前処理として、脱脂処理を行うことが好ましい。脱脂方法としては、アルカリ脱脂、アルカリ中での電解脱脂など、通常使用されている方法を適用すればよい。アルカリとしては、 5〜20質量%の水酸化ナトリウムを使用すればよい。
【0026】
熱間圧延後の黒皮材を連続式溶融亜鉛めっき設備(CGL設備)で直接還元した後、めっき処理する場合は、鋼板表面の油分を燃焼させてしまうので、脱脂を省略することも可能である。また、黒皮材をCGL設備中で酸洗し脱スケールするような場合には、上記の脱脂は必要はない。
【0027】
次いで、弱酸化性雰囲気中で予備加熱処理を行う。バーナーによるガス加熱方式の加熱炉、ラジアントチューブを用いた加熱炉などがあるが、いずれの炉を使用してもよい。なお、母材鋼板のSiとAlの合計含有量は 0.5%以上であり、めっき濡れ性がよくないので、この予備加熱工程で鋼板表面を酸化し、その後の還元焼鈍処理の工程で還元鉄を生成させる方法を採るのが、濡れ性を確保する上で好ましい。このときの目標酸化量としては、例えば、Si含有量が 0.2%以下、Al含有量が 1%以下では、 0.2g/m2以上であれば十分めっき可能である。また、Si含有量が 0.2%を超えるか、Al含有量が 1%を超える場合は、 0.5g/m2 以上の酸化鉄を生成させることが好ましい。
【0028】
続いて、還元焼鈍処理を行う。この処理は、残留オーステナイトを安定に生成させ、適正な体積比率に調整するために必要な処理で、まず、 780℃以上 870℃以下の温度に昇温する必要がある。フェライト相+オーステナイト相の2相組織とするためには、Ac1 変態点以上Ac3 変態点以下の温度領域で加熱する必要があり、この温度領域より低いと、セメンタイトの再固溶に時間がかかりすぎ、高いと、オーステナイト相の体積率が増加しすぎるため、オーステナイト相中のC濃度が低下する。
【0029】
その後、 350℃〜 550℃まで冷却し、この温度領域で20秒以上保持(低温保持)する。これは、オーステナイト相をベイナイト相に変態させながら、Cの濃縮を促進させるためである。処理温度が 550℃を上回るとベイナイト変態が生じず、一方、 350℃を下回ると下部ベイナイト相が生成して、オーステナイト相へCが十分に濃縮しなくなる。なお、この温度領域での滞留時間(低温保持時間)は、20秒以上とする。この時間は、オーステナイト相中にCを十分濃縮させるための必要時間であり、より好ましくは60秒以上である。
【0030】
前記の 780℃以上 870℃以下の温度から 350℃〜 550℃の温度領域までの冷却において、 700℃までを徐冷することが好ましい。また、 700℃から 350℃〜 550℃の温度領域への冷却は50℃/s程度の速度で行うのが好ましい。
【0031】
なお、実際のCGL設備中では上記の冷却パターンで冷却できないことも多いが、残留オーステナイトを安定に生成させ、適正な体積比率に調整することができれば、上記のヒートパターンに限定されない。例えば、 780℃から20℃/sで 500℃まで直線的に冷却された材料でも、残留オーステナイトを1%以上に調整することは十分可能である。
【0032】
めっき皮膜下の母材鋼板表面の粒界部分での第二相の存在率を下げるためには、上記低温保持の際の雰囲気を、露点が−20℃以上−5 ℃以下程度の雰囲気とするのが好ましい。この条件下で母材鋼板の表面を酸化させると、粒界部分での酸化が生じやすく、表層部分でのCの濃縮が生じなくなるため第二相は成長しにくくなる。この方法以外にも粒界部分での第二相の成長を抑制する方法があり、第二相が存在する粒界が本発明で規定する90%以下であれば、いずれの方法を用いても特に問題はない。
【0033】
続いて、溶融亜鉛めっき処理を行う。この処理は従来行われている方法に準じて行えばよく、めっき浴中のAl濃度は0.08%〜0.16%程度、めっき浴温は 440℃〜 480℃程度とすればよい。めっき処理後、ガスワイピングにより、めっき目付量を調整し、引き続き、合金化炉で合金化処理を行う。
【0034】
合金化処理は、前述したように、めっき皮膜中のFe含有量が 7%以上15%以下になるように行う。合金化処理は、通常、 480℃以上 600℃以下で操業されることが多い。しかし、高温で合金化させた場合、オーステナイト相が消失するので、残留オーステナイト量を高くし、高延性を得るためには、 520℃以下の低温領域で合金化することが好ましい。また、合金化処理の効率を高めるためには、 480℃以上の温度域での合金化処理が好ましい。
上述したように、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、局部延性に優れた残留オーステナイトを含む鋼板を母材として用いためっき鋼板で、高強度でかつ延性に優れ、しかも皮膜密着性に優れている。このめっき鋼板は、本発明の方法により容易に製造することができる。
【0035】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する鋼を溶製し、これに熱間圧延および冷間圧延を施して厚さ1.2mm の鋼板とした。これらの鋼板から幅80mm、長さ200mm の板片を切り出して母材鋼板とし、これらの母材鋼板に、溶融めっきシミュレータ装置(レスカ社製)を使用して、大気中または窒素雰囲気中で 550℃まで15℃/sで昇温し、その温度で2秒間保持し、 200℃まで冷却する予備加熱処理を施した後、表2に示す露点を有する水素(10体積%)と窒素の混合ガス雰囲気中で同じく表2に示すヒートパターンで還元焼鈍処理を施した。
【0036】
【表1】
Figure 0003636033
【表2】
Figure 0003636033
続いて、溶融亜鉛めっき処理を行い、さらに合金化処理を行った。めっき浴には、Al濃度が0.13%のFe飽和浴(Feを飽和状態まで溶解させた溶融亜鉛浴)を使用し、浴温は460℃とした。合金化処理は、めっき処理の直後、シミュレータ内で赤外加熱炉を使用して行った。
このようにして得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、以下に述べる方法で剪断引張り試験および低温チッピング試験により皮膜密着性を評価するとともに、母材鋼板の引張強さ、伸び、および残留オーステナイトの体積率、めっき皮膜下の母材表面のフェライト結晶粒の平均粒径、粒界部分に第二相が存在する粒界の全粒界に対する比率、およびめっき皮膜中のFe含有量を測定した。
〔引張試験〕
上記のように作製した合金化溶融亜鉛めっき鋼板からJIS Z 2201に規定される5号引張試験片を作製し、引張試験を行って引張強さTsおよび伸びElを求めた。
〔残留オーステナイトの体積率〕
合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき皮膜を酸で溶解し、除去した後の鋼板表面について、前述した方法で残留オーステナイトの体積率を求めた。
〔フェライト結晶粒の平均粒径〕
粒径が2μm以上とみられる場合は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の断面を研磨し、3%のナイタールによりエッチングを行い、SEM観察によりめっき皮膜と接しているフェライト結晶粒の長さを結晶粒20個について測定し、その平均値をフェライト結晶粒の平均粒径とした。粒径が2μm未満とみられる場合は、TEMにより同じく断面観察し、めっき皮膜と接しているフェライト結晶粒の長さを結晶粒10個について測定し、その平均値をフェライト結晶粒の平均粒径とした。
〔粒界部分に第二相が存在する粒界の比率〕
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の断面を対象とし、めっき皮膜と接している粒界部分10〜20個について第二相の厚みを測定して、第二相の厚みが1μm未満であれば第二相が存在しない粒界とし、1μm以上であれば第二相が存在する粒界としてカウントし、観察の対象とした粒界の数に対する比率を求め、粒界部分に第二相が存在する粒界の比率とした。
〔めっき皮膜中のFe含有量〕
めっき皮膜をインヒビターを含有する10%HClで溶解し、溶液中のZnおよびFeを定量し、めっき皮膜中のFe含有量を求めた。
〔皮膜密着性〕
剪断引張り試験および低温チッピング試験により評価した。
( )剪断引張り試験
合金化溶融亜鉛めっき鋼板から幅20mm×長さ80mmの試験片を2枚(一組)作製し、図1に示すように、重なり部分の長さが12.5mmになるように長手方向に重ね合わせ、その部分に接着剤(サンスター製E6973)を塗布した後、乾燥機中で180℃×20分の処理をして接着した。なお、接着剤には、その厚みを規定するために平均粒径100μmのビーズを2質量%添加した。
【0037】
接着後の試験片を、温度−20℃で 5分以上保持した後、引張り試験を行って強度を測定した。なお、接着性の評価は、めっき皮膜のない状態で上記のように接着し、同様に引張り試験を行って接着剤の強度を測定し、その強度を 100としてこれに対する相対比率で表し、下記の基準により行った。
【0038】
◎:特に良好(相対比率で80%以上)
○:良好(相対比率で65%以上80%未満)
△:やや不良(相対比率で55%以上65未満)
×:不良(相対比率で55%未満)
( )低温チッピング試験
合金化溶融亜鉛めっき鋼板から150mm×70mmの試験片を作製し、これに市販の浸漬式リン酸塩処理液(日本パーカーライジング社製PB-L3080、付着量3〜7g/m2)で処理した後、カチオン型電着塗料(日本ペイント社製PTU-80、付着量20μm)による下塗り→中塗り(関西ペイント製TP-37/付着量35〜40μm)→上塗り(関西ペイント社製ネオ6000/付着量35〜40μm)の3コート塗装を施した。合計膜厚は100μm程度であった。
【0039】
得られた塗装鋼板を−20℃に冷却保持し、グラペロメーターを用いてJIS A 5001に規定される道路用砕石100gを空気圧(ゲージ圧)1.98×105 Pa (2.0kg/cm2)、衝突速度100〜150km/hの条件で衝突させ、各衝突点での塗装の剥離径を測定した。この剥離径の最大のものから10測定点の平均値(平均剥離径)を求め、下記の基準により評価した。
【0040】
◎:特に良好(平均剥離径が3.0mm未満)
○:良好(平均剥離径が3.0mm以上4.0mm未満)
△:やや不良(平均剥離径が4.0mm以上5.0mm未満)
×:不良(平均剥離径が5.0mm以上)
測定結果を表3に示す。なお、表3の「評価」の欄の「( )」の欄は剪断引張り試験による評価結果、「( )」の欄は低温チッピング試験による評価結果で、両評価結果を合わせて皮膜密着性を評価した。具体的には、( )の評価と( )の評価が同じであれば、その評価を「総合評価」の欄に◎印(特に良好)、○印(良好)、△印(やや不良)、または×印(不良)で表示し、異なる場合は、低い方の評価を「総合評価」の欄に○印、△印、または×印で表示した。
【0041】
【表3】
Figure 0003636033
この結果から明らかなように、本発明で規定する条件を満たす合金化溶融亜鉛めっき鋼板は高強度でかつ延性に優れ、しかも皮膜密着性に優れている。
【0042】
【発明の効果】
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、高強度でかつ延性に優れ、しかも皮膜密着性に優れている。この鋼板は、本発明の方法により容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の剪断引張り試験で用いた試験片の接合状態を示す図で、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
1:合金化溶融亜鉛めっき鋼板
2:接着剤

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.05%以上0.25%以下、Si:0.02%以上2.5%以下、Mn:0.5%以上3%以下、Al:0.03%以上2%以下と、Ti:0.005%以上0.05 以下(但し、 (48/14) N≦ Ti (48/14) N+ (48/32) S+ 0.010 の場合を除く)およびNb:0.0025%以上0.25%以下の少なくとも一方を含有するとともに、下記(i)式および(ii)式を満足し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.04以下、Sが0.01%以下、Nが0.01%以下で、かつ、オーステナイト相を体積%で1%以上含有する母材鋼板の表面に、Fe含有量が質量%で 7%以上15%以下の合金化溶融亜鉛めっき皮膜を有し、このめっき皮膜下の母材鋼板表面のフェライト結晶粒の平均粒径が0.6μm以上6μm以下で、めっき皮膜と接している粒界部分に第二相が存在する下記粒界の比率が90%以下であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
    0.5≦Si(%)+Al(%) ・・(i)
    0.005≦Ti(%)+2×Nb(%)≦0.25 ・・(ii)
    ただし、Si(%)、Al(%)、Ti(%)およびNb(%)は、
    それぞれSi、Al、TiおよびNbの鋼中含有量(質量%)を意味
    する。
    「粒界部分に第二相が存在する粒界の比率」:
    合金化溶融亜鉛めっき鋼板の断面において、観察の対象とした
    粒界の数に対する第二相が存在する粒界の数の比率
  2. 質量%で、C:0.05%以上0.25%以下、Si:0.02%以上2.5%以下、Mn:0.5%以上3%以下、Al:0.03%以上2%以下と、Ti:0.005%以上0.05 以下(但し、 (48/14) N≦ Ti (48/14) N+ (48/32) S+ 0.010 の場合を除く)およびNb:0.0025%以上0.25%以下の少なくとも一方を含有するとともに、下記(i)式および(ii)式を満足し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.04以下、Sが0.01%以下、Nが0.01%以下である熱間圧延後または冷間圧延後の鋼板を母材とし、これに、弱酸化性雰囲気中で予備加熱処理を施し、続いて還元性雰囲気中で 780℃以上 870℃以下の温度に昇温し、次いで 350℃〜 550℃まで冷却し、この温度領域で20秒以上保持する焼鈍処理を施した後、溶融亜鉛めっき処理を行い、さらに合金化処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
    0.5≦Si(%)+Al(%) ・・(i)
    0.005≦Ti(%)+2×Nb(%)≦0.25 ・・(ii)
    ただし、Si(%)、Al(%)、Ti(%)およびNb(%)は、
    それぞれSi、Al、TiおよびNbの鋼中含有量(質量%)を意味
    する。
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