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JP3645405B2 - 高クロムタービンロータの加工方法 - Google Patents
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JP3645405B2 - 高クロムタービンロータの加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高クロム材からなるタービンロータの軸部表面に、高温強度、耐焼き付き性、および耐摩耗性等の優れた特性を付与する高クロムタービンロータの加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
火力発電施設においては、蒸気タービンの熱効率を向上させるため、蒸気温度の高温化が進められており、蒸気タービン部品やそれらに関連する周辺部品が、高温環境下に曝されるようになっている。特に、タービンブレードは最も高温蒸気に曝され高温強度が要求され、このタービンブレードを支持しているタービンロータについても同様の特性が要求される。
【0003】
このような事情のもとで、500〜650℃という高温蒸気下で使用されるタービンロータには、高クロム材が多用されている。高クロム材はクロムを3〜12%含有し、高温強度に優れた材料であり、タービンロータの胴部材として好適な材料と考えられる。
【0004】
ところで従来一般に、タービンロータとして高クロム材を適用した場合、軸部を含む全体が一体的に構成されており、このタービンロータの軸部を支持する軸受としてはホワイトメタルが多用されている。しかし、この組み合わせによれば、高クロム材からなるタービンロータの軸部とホワイトメタルからなる軸受との接触により、ゴーリングと呼ばれる焼き付きによるトラブルが生じ易い。
【0005】
そこで、焼き付きによるトラブルを解消するために、高クロム材からなるタービンロータの軸部の外層に、耐焼き付き性、耐摩耗性等に優れた材料を適用することが考えられ、例えば、タービンロータの軸部に低合金鋼を焼き嵌める焼き嵌めスリーブ形式、あるいは低合金鋼の溶接肉盛りを行う溶接肉盛り形式等が開発された。
【0006】
焼き嵌めスリーブ形式の場合には、タービンロータの構造上、軸継手部を最後に焼き嵌める必要があって作業が面倒であり、また軸継手部ではトルクを前後の軸間で伝達することから、焼き嵌め面にキーを必要とし、構造的に複雑となる欠点がある。また、この焼き嵌めスリーブ形式によれば、焼き嵌め面圧が高いことから、タービンロータのわずかな振れ回りによって生じる焼き嵌め面の滑りにより、フレッチング疲労という現象が発生する。この現象は面圧集中部の改良などの実施により解消されつつあるが、現状ではまだ完全に解消するに至らず、定期的な検査等を必要としている。さらに、タービンロータの後軸形状によっては、焼き嵌めスリーブ形式を採用するのが難しいという問題もある。
【0007】
一方、溶接肉盛り形式は、タービンロータの軸部の外周面に周方向に沿って開先加工を行い、この開先部分に溶接肉盛り部を形成するもので、ドイツで開発された技術であり、最近では我国等でもその採用が徐々に増加している。しかし、この形式では溶接肉盛りした低合金鋼にキャビティーなどの溶接欠陥が内在したり、また、溶接肉盛り部が溶接特有のデンドライト組織となることから、耐焼き付き性、耐摩耗性などの特性が著しく低下するという欠点もある。また、タービンロータが高クロム材製であると、タービンロータそのものが溶接により低温割れを生じ易くなったり、タービンロータの母材成分の希釈の影響を大きく受ける肉盛り層において、応力除去用の焼鈍熱処理を行う際の再熱により、割れ感受性が高くなるという問題もある。この他にも、運転使用中に割れが発生する可能性もある。
【0008】
そこで、内部に生じている欠陥を潰すことを目的として溶接肉盛りした部分を鍛造する方法が考えられる。しかし、高クロム材の母材と低合金鋼をベースとした溶接肉盛り材は高温での変形抵抗に大きな差があり、そのまま鍛造した場合、鍛造時の加熱によって肉盛り部が塑性流動(溶接継手部での滑り)を生じやすく、溶接肉盛り部を円周方向に一定の厚さに保つのが難しく、場合によっては軸芯がずれる可能性がある
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
発明者らは、タービンロータの軸部に低合金鋼を溶接肉盛りし、その溶接肉盛り層の部分に加熱軽鍛造を施すことによって、溶接欠陥が無く、緻密な均一組織の異種金属層が得られることを見い出した。
【0010】
しかし、高クロム系材料では一度タービンロータシャフトとして全体を鍛造成型した後、軸受け部に溶接肉盛りのための開先加工を施し、低合金鋼を肉盛り溶接して成型された軸受け部を何の対策なしに再度熱間鍛造成型を施す場合には次の不都合が生じる。
【0011】
溶接肉盛りを施行する軸受け部の範囲はタービンの大きさにもよるが、500mm程度までの長さである。このようにそれ程長さがないにもかかわらず、溶接肉盛りの後の熱間鍛造成型においてはタービンロータ全体を加熱炉に入れ全体を鍛造温度1150℃に加熱するため、すでに成型されているタービンロータの変形抵抗が少なくなり、自重により変形し軸芯が曲がってしまうことが1つの問題である。次に鍛造温度における高クロム材の母材と低合金鋼をベースとした溶接肉盛り材は、高温での変形抵抗に大きな差があり、高クロム材系の軸芯を中心とした同心円状に溶接肉盛りした低合金層が一様に鍛造しにくく、鍛造後の機械加工によって溶接肉盛り層の厚さが周方向に不均一になる可能性が大きい。また鍛造の程度によっては境界部で滑りを生じ、剥離現象が発生することに注意が必要である。
【0012】
本発明は、このような課題に対処するためになされたものであり、タービンロータの軸部に、溶接欠陥がなく、耐焼き付き性、および耐摩耗性に優れた低合金鋼の材料を溶接する加工方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の高クロムタービンロータの加工方法は、高クロム材からなるタービンロータの軸部の外周面に周方向に沿って開先加工を行い、この開先部分に異種金属の溶接肉盛り部を形成した後、その溶接肉盛り部を加熱して鍛造成型を行うことにより、前記軸部の表面の対軸受摺動特性を高める高クロムタービンロータの加工方法において、前記溶接肉盛り部の加熱に際し、その溶接肉盛り部の表面側をタービンロータ母材との溶接部側よりも高温に設定し、この温度差を保持した状態で前記溶接肉盛り部の鍛造成型を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明において、溶接肉盛り部の表面側は高温に設定され、タービンロータ母材との溶接部側は低温に設定されている。このため、溶接肉盛り部の表面側は変形しやすく、またタービンロータ母材との溶接部側は変形し難い。従って、タービンロータ母材の変形を抑えながら表面側のみを変形することが可能になり、溶接部における滑りを防ぐことが可能である。
【0015】
さらに、温度差を保持した状態で鍛造成型を行うことにより、溶接肉盛り部における溶接欠陥を無くすことが可能である。なお、高クロムタービンロータは、溶接肉盛りを行う前にすでに一度鍛造が施されているため、溶接肉盛り部の範囲以外については基本的に鍛造を施す必要はない。
【0016】
請求項2記載の高クロムタービンロータの加工方法は、請求項1記載の高クロムタービンロータの加工方法において、溶接肉盛り部の加熱温度として、溶接肉盛り部の表面近傍を900〜1200℃に設定し、タービンロータ母材と溶接肉盛り部との境界部を700℃以下に設定することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、鍛造を行うための加熱温度を規定している。本発明で鍛造を行うための熱間変形可能な加熱温度は、900〜1200℃の範囲である。一方、加熱温度が700℃以下の低温度では、変形抵抗が著しく増加して変形し難く、変形性能が高温時と比較して5%以下となるため、ほとんど変形を示さなくなる。従って、溶接肉盛りされた低合金鋼の外層部のみを900〜1200℃に加熱し、高クロム母材と溶接肉盛り部との境界部を700℃以下の低温度にすることで、溶接部における滑りを防ぎ、また溶接肉盛り部内部に存在する溶接欠陥を無くすことが可能である。
【0018】
請求項3記載の高クロムタービンロータの加工方法は、請求項1または2記載の高クロムタービンロータの加工方法において、溶接肉盛り部の加熱手段として、高周波加熱を用いることを特徴とする。
【0019】
本発明において、溶接肉盛りされた低合金鋼の外層部のみを900〜1200℃に加熱し、高クロム母材と溶接肉盛り部との境界部を700℃以下の低温度として急勾配の温度差を設ける手段としては、高周波加熱方式が最適である。高周波加熱方式は、溶接肉盛り部の材質、溶接肉盛りの厚さ、軸部の直径等の違いにより高周波加熱条件を変えることができ、肉盛り溶接された低合金鋼の外層部のみを加熱することが可能である。したがって、タービンロータの軸部における局部加熱のため、タービンロータ母材が変形する等の問題も生じない。
【0020】
また本発明においては、溶接肉盛り後に鍛造を施すため、溶接肉盛りに高度な技術を必要としない。即ち、これまで溶接肉盛り技術に関する多くの提案がなされているが、これは溶接肉盛りの方法や溶接肉盛り材料の成分などに関して、難しい条件が数多くあるためである。しかし、本発明によれば、肉盛り溶接後に鍛造を行うことにより、溶接肉盛り材料の制約がなくなり、軸受け特性、すなわち耐焼き付け性や耐摩耗性等の優れた材料を選択することができる。また、溶接時に発生する溶接欠陥に過度の注意を必要としない。すなわち、溶接欠陥が生じたとしても、鍛造過程で欠陥を潰し、溶接欠陥を無くすることが可能になるからである。
【0021】
なお、高周波加熱条件を確立する方法としては、予め本発明の材料と異なる別の試験体でシュミレーションを行う方法、あるいは伝熱解析を行い実測することなく制御する方法のいずれを採用することもできる。
【0022】
また、本発明の方法では、タービンロータ母材に変形が生じないため、軸心が変化せず、軸心を基準として鍛造される溶接肉盛り層に機械加工を施す際にも、均一な厚さの溶接肉盛り層を確保することが可能となる。
【0023】
請求項4記載の高クロムタービンロータの加工方法は、請求項1または2記載の高クロムタービンロータの加工方法において、異種金属としてクロム・モリブデン・バナジウム鋼のみを使用して溶接肉盛りを初層から2層目以降まで行うことを特徴とする。
【0024】
クロム・モリブデン・バナジウム鋼(CrMoV鋼)は強度が高く、また過去におけるタービンロータ材としての使用実績から、耐焼き付き性および耐摩耗性等に全く問題がない。しかし、高クロムタービンロータの母材と溶接肉盛り材であるクロム・モリブデン・バナジウム鋼とは共に溶接性が悪いため、溶接肉盛り材であるクロム・モリブデン・バナジウム鋼を最初から溶接すると溶接欠陥が発生してしまう。そこで通常では、強度の低い材料を最初に肉盛り(初層溶接という)し、その上に強度の高いクロム・モリブデン・バナジウム鋼を溶接する方法が採用されている。
【0025】
これに対し、本発明によれば、鍛造によって溶接欠陥の無い高クロムタービンロータを得ることができるので、初層溶接から最終層までに亘って直接クロム・モリブデン・バナジウム鋼のみを肉盛りすることが可能であり、これにより作業の簡略化が図れる。
【0026】
また、溶接肉盛り部における溶接欠陥を潰すために通常では、タービンロータにおける鍛造比を3S以上に設定する必要がある。この3Sという鍛造比は、直径の大きいロータ材を鍛造する場合に、ロータの中心部近傍の溶接欠陥を潰すために必要な鍛造比とされている。ところが、本発明によれば、溶接肉盛り部の表面近傍のみを加熱して鍛造することにより、溶接欠陥を無くすることができるので、通常のタービンロータで必要とされる3S以上の鍛造比は必要なく、溶接肉盛り層の厚さが例えば15mmである場合、10mmの厚さまで鍛造すれば良い。
【0027】
請求項5記載の高クロムタービンロータの加工方法は、請求項1または2記載の高クロムタービンロータの加工方法において、異種金属としてクロム・モリブデン鋼のみを使用して溶接肉盛りを初層から2層目以降まで行うことを特徴とする。
【0028】
なお、クロム・モリブデン・バナジウム鋼は、強度には優れているが、溶接性は特に良好ではない。これと反対に、溶接性の優れた溶接材料を選定した場合には軸部の強度が犠牲となる問題がある。そこで、溶接性が優れ、かつ強度も優れている低合金鋼を選択することが望ましい。このような条件を満たす溶接肉盛り材料として、クロム・モリブデン鋼(CrMo鋼)が挙げられる。
【0029】
本発明において、クロム・モリブデン鋼として、例えば2.25Cr1Mo鋼を用いた場合には、強度がクロム・モリブデン・バナジウム鋼に及ばないものの、溶接性を低下させず、設計強度を満足させることができる。また、2.25Cr1Mo鋼によれば、溶接欠陥を少なくし、鍛造成型を容易にすることが可能である。
【0030】
請求項6記載の高クロムタービンロータの加工方法は、請求項1または2記載の高クロムタービンロータの加工方法において、溶接肉盛り部の初層を低合金鋼の下盛りにより形成した後、2層目以降の溶接肉盛り部をクロム・モリブデン・バナジウム鋼により形成することを特徴とする。
【0031】
本発明においては、溶接肉盛り方法として、初層に強度の低い低合金鋼を用い、2層目以降に強度の高いクロム・モリブデン・バナジウム鋼の溶接を行い、その後鍛造成型を行う。初層に強度の弱い低合金鋼を用いることにより、溶接欠陥の極力低い溶接肉盛り部を形成し、また、軽鍛造を施す際に簡単に溶接欠陥を潰すことが可能となる。
【0032】
請求項7記載の高クロムタービンロータの加工方法は、請求項1または2記載の高クロムタービンロータの加工方法において、溶接肉盛り部の鍛造成型後に、1000〜1100℃の加熱および油冷による焼き入れ処理と、600〜700℃の加熱および徐冷による焼戻し処理を施すことを特徴とする。
【0033】
即ち、本発明においては、溶接肉盛り及び鍛造成型を行った後に、高クロムタービンロータそのものを1000〜1100℃に加熱して油冷を行う焼き入れ処理と、600〜700℃に加熱し徐冷する焼戻し処理を施す、という調質熱処理を行う。
【0034】
溶接肉盛り部は低合金鋼の材料であり、この材料のオーステナイト化温度は高クロム材からなるタービンロータのオーステナイト化温度とほぼ同様である。このため、溶接肉盛り及び鍛造成型後にタービンロータ全体の調質熱処理を行うことにより、溶接部の組織は溶接後の脆い組織でなく、靭性のある組織へと変化させ、疲労強度の優れた組織とすることができる。また、調質熱処理以前に行われた局部加熱による組織変化は、調質熱処理により消去させることができる。なお、溶接肉盛り及び鍛造成型後に応力除去焼鈍を施すという方法を用いてもよい。
【0035】
このように、肉盛り溶接部の鍛造成型後に調節熱処理を行うことにより、通常の鍛造材に相当する溶接肉盛り部を得ることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る高クロムタービンロータの加工方法の実施形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0037】
実施例1
本実施例は、溶接肉盛り材料としてクロム・モリブデン・バナジウム鋼を用いる場合についてのものである。
【0038】
まず図1に示すように、高クロム材によって、軸部2を両端に有する高クロムタービンロータ1を作成し、全体に鍛造成型を行った。
【0039】
次に、図2に示すように、高クロムタービンロータ1の軸部2に、機械加工により開先加工を施し、これにより開先部分3を形成した。溶接材料として、強度の高いクロム・モリブデン・バナジウム鋼を用いて、溶接肉盛り部4を形成した。なお、開先部分3の深さを10mmとし、肉盛り厚さを15mmとして、機械加工後の最終厚さが5mmとなる設計とした。
【0040】
そして、高周波加熱装置(図示しない)により加熱条件を設定し、15mmの厚さを有する溶接肉盛り部4の外層を1100℃に加熱し、肉盛り層と高クロム母材との境界部を660℃の温度に設定した。
【0041】
加熱後に、鍛造成型を行い、5mmの余盛りを高クロムタービンロータ1の表面と同様とするために、回転しながら鍛造成型を行った。
【0042】
最終的に、1050℃の加熱および油冷を行う焼き入れ処理と、650℃の加熱および徐冷を行う焼戻し処理(調質熱処理)を施した。この調質熱処理によって、図4に示すように、高クロムタービンロータ1の軸部2を完成させた。
【0043】
以上の方法によって得られた高クロムタービンロータについて、超音波探傷試験を行った。超音波探傷試験は、パルス反射法により行い、超音波ビームの送受信の方向および用いる超音波の種類を異ならせた垂直探傷試験及び斜角探傷試験により、欠陥を調査した。なお、垂直探傷試験においては、反射波の強さを12dB(周波数5MHz)とし、エコー高さは10〜30%とした。また、斜角探傷試験においては、反射波の強さを6dB(周波数5MHz)とし、エコー高さは、10〜20%及び20〜30%とした。
【0044】
上記試験結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
Figure 0003645405
【0046】
表1に示すように、本実施例では垂直探傷試験及び斜角探傷試験のいずれにおいても、欠陥個数は0個であった。これにより、本実施例の方法では溶接肉盛り部4に溶接欠陥が全くなく、優れた特性の軸部2が得られることが確認された。また、軸部2の軸心についても、偏心等の発生はないことが確認された。
【0047】
実施例2
本実施例では、溶接材料として初層に低合金鋼を、2層以降にクロム・モリブデン・バナジウム鋼を用いた。
【0048】
なお、高クロムタービンロータ1の軸部2を形成する方法は、実施例1と同様である。
【0049】
上記のようにして得られた高クロムタービンロータについて、超音波探傷試験を行った。なお、試験条件は実施例1と同様である。
【0050】
この結果、表1に示すように、垂直探傷試験及び斜角探傷試験においても、欠陥個数は0個であった。これにより、本実施例の方法によっても、溶接肉盛り部4に溶接欠陥が全くなく、優れた特性の軸部2が得られることが確認された。また、軸部2の軸心についても、偏心等の発生はないことが確認された。
【0051】
実施例3
本実施例では、溶接材料としてクロム・モリブデン鋼を用いた。
【0052】
なお、高クロムタービンロータ1の軸部5を形成する方法は、実施例1と同様である。
【0053】
上記のようにして得られた高クロムタービンロータについて、超音波探傷試験を行った。なお、試験条件は実施例1と同様である。
【0054】
表1に示すように、垂直探傷試験及び斜角探傷試験においても、欠陥個数は0個であった。これにより、本実施例の方法によっても、溶接肉盛り部4に溶接欠陥が全くなく、優れた特性の軸部2が得られることが確認された。また、軸部2の軸心についても、偏心等の発生はないことが確認された。
【0055】
比較例1
本比較例では、溶接材料としてクロム・モリブデン・バナジウム鋼を用いた。
【0056】
図1に示す高クロムを母材とした高クロムタービンロータ1について鍛造成型を行った。その後、図2に示すように、高クロムタービンロータ1の軸部2に、開先加工を施して溶接開先部3を機械加工によって設けた。溶接材料として、強度の高いクロム・モリブデン・バナジウム鋼を用いて溶接肉盛りを行い、溶接肉盛り部4を形成した。
【0057】
次に、1050℃に加熱して油冷を行う焼き入れ処理と、650℃に加熱し徐冷を行う焼戻し処理を施し、高クロムタービンロータを形成した。
【0058】
表1に示すように、垂直探傷試験において、エコー高さが10〜30%のとき欠陥個数は5個であった。また斜角探傷試験において、エコー高さが10〜20%のとき欠陥個数は40個、エコー高さが20〜30%のとき欠陥個数は5個であった。本発明の実施例に比し、溶接欠陥が発生することが認められた。
【0059】
比較例2
本比較例では、溶接材料として初層に低合金鋼を、2層以降にクロム・モリブデン・バナジウム鋼を用いた。
【0060】
なお、高クロムタービンロータ1の軸部2を形成する方法は、比較例1と同様である。
【0061】
上記のようにして得られた高クロムタービンロータについて、超音波探傷試験を行った。なお、試験条件は実施例1と同様である。
【0062】
表1に示すように、垂直探傷試験において、エコー高さが10〜30%のとき欠陥個数は5個であった。また斜角探傷試験において、エコー高さが10〜20%のとき欠陥個数は28個、エコー高さが20〜30%のとき欠陥個数は3個であった。本発明の実施例に比し、溶接欠陥が発生することが認められた。
【0063】
比較例3
本比較例では、溶接材料としてクロム・モリブデン鋼を用いた。
【0064】
なお、高クロムタービンロータ1の軸部2を形成する方法は、比較例1と同様である。
【0065】
上記のようにして得られた高クロムタービンロータについて、超音波探傷試験を行った。なお、試験条件は実施例1と同様である。
【0066】
表1に示すように、垂直探傷試験において、エコー高さが10〜30%のとき欠陥個数は3個であった。また斜角探傷試験において、エコー高さが10〜20%のとき欠陥個数は20個、エコー高さが20〜30%のとき欠陥個数は2個であった。
【0067】
以上のように、溶接材料を異ならせた鍛造成型前後での超音波探傷試験結果より、本発明によれば、鍛造成型を行うことにより、欠陥個数が0個となり、完全に溶接欠陥を潰すことができることが確認された。
【0068】
また、溶接肉盛り部における図示しない外層の組織検査の結果によると、鍛造成型後のデンドラント組織は分断された緻密な鍛造組織となっており、溶接肉盛り層でありながら、鍛造品と同等な組織に変化していることが確認された。
【0069】
なお、本発明によれば、溶接性は悪いが強度の高い材料を溶接肉盛り材料として使用できることから、設計上のマージンも大きく改善され、小型タービンから大型タービンまで適用することが可能となる。さらに、本発明によれば、溶接肉盛り部に欠陥が生じないことから、定期点検時における溶接肉盛り層の検査は基本的に不必要となり、検査を簡略化することができる。
【0070】
【発明の効果】
以上で詳述したように、本発明に係る高クロムタービンロータの加工方法によれば、高クロムタービンロータの軸部に低合金鋼を溶接肉盛り後鍛造成型することによって、溶接時に生じた欠陥を潰し、緻密な均一組織の溶接肉盛り層を得ることができ、耐焼き付き性および耐摩耗性の優れた高クロムタービンロータを得ることができ、信頼性の大幅な向上が図れる等の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高クロムタービンロータの加工工程を説明する図で、溶接肉盛りを行う前の状態を示す図。
【図2】本発明の高クロムタービンロータの加工工程を説明する図で、溶接肉盛りを行った状態を示す図。
【図3】本発明の高クロムタービンロータの加工工程を説明する図で、鍛造成型を行った状態を示す図。
【図4】本発明の高クロムタービンロータの加工工程を説明する図で、機械加工終了後の状態を示す図。
【符号の説明】
1 高クロムタービンロータ
2 軸部
3 開先部分
4 溶接肉盛り部

Claims (7)

  1. 高クロム材からなるタービンロータの軸部の外周面に周方向に沿って開先加工を行い、この開先部分に異種金属の溶接肉盛り部を形成した後、その溶接肉盛り部を加熱して鍛造成型を行うことにより、前記軸部の表面の対軸受摺動特性を高める高クロムタービンロータの加工方法において、前記溶接肉盛り部の加熱に際し、その溶接肉盛り部の表面側をタービンロータ母材との溶接部側よりも高温に設定し、この温度差を保持した状態で前記溶接肉盛り部の鍛造成型を行うことを特徴とする高クロムタービンロータの加工方法。
  2. 請求項1記載の高クロムタービンロータの加工方法において、溶接肉盛り部の加熱温度として、溶接肉盛り部の表面近傍を900〜1200℃に設定し、タービンロータ母材と溶接肉盛り部との境界部を700℃以下に設定することを特徴とする高クロムタービンロータの加工方法。
  3. 請求項1または2記載の高クロムタービンロータの加工方法において、溶接肉盛り部の加熱手段として、高周波加熱を用いることを特徴とする高クロムタービンロータの加工方法。
  4. 請求項1または2記載の高クロムタービンロータの加工方法において、異種金属としてクロム・モリブデン・バナジウム鋼のみを使用して溶接肉盛りを初層から2層目以降まで行うことを特徴とする高クロムタービンロータの加工方法。
  5. 請求項1または2記載の高クロムタービンロータの加工方法において、異種金属としてクロム・モリブデン鋼のみを使用して溶接肉盛りを初層から2層目以降まで行うことを特徴とする高クロムタービンロータの加工方法。
  6. 請求項1または2記載の高クロムタービンロータの加工方法において、溶接肉盛り部の初層を低合金鋼の下盛りにより形成した後、2層目以降の溶接肉盛り部をクロム・モリブデン・バナジウム鋼により形成することを特徴とする高クロムタービンロータの加工方法。
  7. 請求項1または2記載の高クロムタービンロータの加工方法において、溶接肉盛り部の鍛造成型後に、1000〜1100℃の加熱および油冷による焼き入れ処理と、600〜700℃の加熱および徐冷による焼戻し処理を施すことを特徴とする高クロムタービンロータの加工方法。
JP27002197A 1997-10-02 1997-10-02 高クロムタービンロータの加工方法 Expired - Lifetime JP3645405B2 (ja)

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