JP3646038B2 - 固体電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質型燃料電池に関し、特に固体電解質型燃料電池の構成部材にクロムを含む耐熱性合金を用い、その構成部材からクロム含有ガスが生じた場合でも、クロム含有ガスが原因となる発電能力の低下等の問題を生じさせない固体電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体電解質型燃料電池など燃料電池は、省資源の観点、また環境に対する影響の観点からも新しいエネルギー源として注目されている。
【0003】
固体電解質型燃料電池は、固体電解質層と、固体電解質層の一方の面に設けられた燃料極と、その反対側の面に設けられた空気極とを備えた単電池と、これら単電池を電気的に接続するインタコネクタ等から構成され、燃料極に燃料ガス、また空気極に酸化剤ガスを供給することにより発電作用が起き、電力が発生する。
【0004】
このような固体電解質型燃料電池は、燃料電池の中でも動作温度が700〜1000℃と比較的高いことから多様な燃料が使用可能な上、発電効率が高く、またすべて固体材料で構成されているため取扱いが容易であるなどの利点があり実用化に向けた研究開発が進められている。
【0005】
固体電解質層は、主に8YSZ(YSZ:イットリアをドープした安定化ジルコニア)、あるいは3YSZ等から構成されている。
【0006】
空気極は、LaSrMnO3 (LSMと称している)が代表的な材料として用いられ、またLSM中のLaを他元素で置換したものや、MnをCoに置き換えたCo系材料も提案されている。燃料極は、Ni/YSZサーメット等に代表される材質により構成されている。空気極や燃料極は、例えば最初に固体電解質層の片面に燃料極となる原料を塗布し、1450℃程度の高温で焼成し、次に反対側の面に空気極の原料を塗布し、1150℃程度の低温で焼成して形成している。こうして空気極と固体電解質層と、また燃料極と固体電解質層との間に界面が形成される。
【0007】
インタコネクタは、一般にドープしたLaCrO3のセラミック等が用いられてきているが、セラミックが高価なことや、近年作動温度の低温化が実現されたこと等から、クロムを含有する耐熱性合金の使用が検討されてきている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、インタコネクタにクロム含有の耐熱性合金を用いる場合、次のような不都合があった。
【0009】
すなわち、クロムを含有する耐熱性合金からなるインタコネクタを固体電解質型燃料電池に用いると、固体電解質型燃料電池で発電動作が開始されると、用いられたインタコネクタが酸化雰囲気下で高温に曝されることにより、インタコネクタに含有されているクロムが酸化し、インタコネクタの表面に酸化クロム層(Cr2O3)が形成される。酸化クロム層(Cr2O3)が表面に形成されると、酸化クロム層の酸化クロムが更に酸素と水に反応して、気体のCrO2(OH)2が発生して、発散される。インタコネクタから発散されたCrO2(OH)2は、インタコネクタに対向して設けられている空気極に接触して、空気極と電解質層との界面で還元され、空気極と電解質層との界面に酸化クロムを析出させる。
【0010】
空気極と電解質層との界面に析出した酸化クロムは、酸化剤ガスと空気極との反応を阻害し、発電開始から2〜300分以内に空気極と電解質層間の過電圧を大きくし、燃料電池の発電性能を著しく低下させていた。このように、クロム含有の耐熱性合金をインタコネクタに利用した場合問題があり、このようなクロムにより生ずる問題をクロム被毒という。
【0011】
かかる問題を解決する方法として、耐熱合金製のインタコネクタの表面をコーティング剤でコーティングしてクロム含有ガスが蒸散しないようにしたり、あるいは発散されたクロム含有ガスを捕捉する捕捉層を燃料電池内部に設ける等の方法が知られているが、インタコネクタにコーティングを施す方法には制約があり、又コストがかかり、一方捕捉層を設ける方法は、捕捉層が有する捕捉能力を超えたときクロム含有ガスを捕捉できず、効果が長時間持続しなかった。
【0012】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、インタコネクタ等構成部材ににクロム含有の耐熱性合金を用いた場合であっても、クロム含有ガスによる問題を空気極と電解質層間に発生させることのない固体電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明では、上記課題を解決するため、次のように固体電解質型燃料電池を構成した。すなわち、固体電解質型燃料電池を構成する単電池の空気極と電解質の材質を、それら空気極と電解質の界面においてクロム含有ガスによる影響を受けない組み合わせとした。例えば、空気極をLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)で構成し、電解質をサマリアドープしたセリアベース酸化物、例えばCe0.8Sm0.2O1.9で構成した。このような空気極と電解質の構成によれば、クロム含有ガスの雰囲気下においても空気極と電解質との界面において、クロム被毒の影響、すなわち酸化クロムの析出による発電能力の低下を引き起こすことがなく、固体電解質型燃料電池において性能低下等の問題を発生させない。
【0014】
クロム被毒の影響を受けないことは、クロムを含有する耐熱性合金で形成したインタコネクタを用いて発電動作を行わせた場合に、空気極と電解質の間に生じる通電抵抗が大きく増加しないことからわかる。理由としては、インタコネクタからクロム含有ガスが発生して空気極に接触した場合に、空気極と電解質層との界面に酸化クロムを形成させないか、あるいは界面に酸化クロムが形成された場合でも通電抵抗の上昇等の問題を生じさせないためと考えられる。
【0015】
更に本発明は上記例の組み合わせに限らず、電解質は、少なくともセリアベースの酸素イオン導電性の蛍石型でよく、また空気極は、ペロブスカイト型酸化物でよい。なお、燃料極は従来から使用されている材質と同様の材質を使用できる。
【0016】
又、電解質を複数の層とし、少なくとも空気極が設けられる側の電解質を空気極との界面においてクロム含有ガスの影響を受けない成分で構成するようにしてもよい。その場合、他方の側の電解質を通常用いられる一般的な電解質、例えばZrO2系、あるいはLaGaO3系とすることができる。
【0017】
このように固体電解質型燃料電池を構成することにより、空気極と電解質との界面において酸化クロムによる問題が発生せず、クロムを含有する耐熱性合金でインタコネクタ等、各種構成部材を製造した場合であっても発電性能の低下をもたらすことがない固体電解質型燃料電池を提供できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる固体電解質型燃料電池(平板型固体電解質型燃料電池)の一実施形態について説明する。
【0019】
固体電解質型燃料電池は、インタコネクタとしてのセパレータ10と単電池12とからなる燃料電池20を複数積層して構成されている。
【0020】
単電池12は、図1に示すように燃料極14と、固体電解質層16と、空気極18からなり、固体電解質層16の表裏にそれぞれ燃料極14と空気極18とが形成してある。固体電解質層16は、図1に示すようにイットリアなどをドープしたジルコニア焼結体(YSZ)からなる第1電解質4と、サマリアドープしたセリアベース酸化物の第2電解質6の2層で形成され、第2電解質6は、例えば0.05mmなど適度の厚みを有し、第1電解質4の表面に積層されている。
【0021】
空気極18は、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3であり、第2電解質6の表面に形成され、また第1電解質4の表面には、Ni/YSZサーメットからなる燃料極14が形成されている。
【0022】
セパレータ10は、図5に示すように合金セパレータ22とセラミックセパレータ24からなり、セパレータ10の四隅には、空気等の酸化剤ガスを流通させる酸化剤ガスの供給孔と、酸化剤ガスの排気孔と、都市ガス等の燃料ガスを供給する燃料ガスの供給孔と、燃料ガスの排気孔等(図示せず)がそれぞれ形成してある。またこれら各孔どうしは、燃料電池20を積層すると連続し、それぞれの供給通路や排気通路を形成する。なお、各通路の形成はこれに限るものではない。
【0023】
合金セパレータ22は、Inconel600耐熱性合金で形成されており、所定量のクロムを含有している。空気極18との接触面側には溝部15が形成され、溝部15により酸化剤ガスの供給孔と酸化剤ガスの排気孔を連通する酸化剤ガスの通路が形成されている。
【0024】
セラミックセパレータ24は、セラミックからなり、中央には単電池12を収容する凹部25が形成されている。凹部25の底部には、燃料ガスの供給孔と、燃料ガスの排気孔に連通する溝部17(燃料通路)が形成してあり、溝部17の上にニッケルメッシュ32を有している。
【0025】
なお、セパレータ10を、合金セパレータ22とセラミックセパレータ24の2種類の材質から形成したが、本発明はこれに限らず、セパレータ10をInconel600等の耐熱合金のみから形成してもよい。
【0026】
また、セパレータ10を、ストロンチウムをドープしたランタンクロマイトなどからなるセラミックのみから形成してもよい。その場合、燃料電池20、あるいはその周辺の構成部材の一部、例えばガス通路のガスケットなどにクロムを含有するクロム含有合金が用いられているときに、このような構成部材を原因とするクロム被毒の問題を十分防止することができる。
【0027】
次に燃料電池20の作用について説明する。
【0028】
まず、セラミックセパレータ24の凹部25に単電池12を収容し、合金セパレータ22を上から被せ、燃料電池20を構成する。すると、空気極18は、合金セパレータ22に接触し、合金セパレータ22を介して上部に重ねられる図示しない燃料電池に導通し、また燃料極14は、凹部25の底に設けられたニッケルメッシュ32を介し、集電孔34を通して下部に重ねられる図示しない燃料電池に導通する。
【0029】
燃料電池20を順次積層し、固体電解質型燃料電池を構成したなら、所定温度に上昇させ、酸化剤ガス通路から空気を、又燃料ガス通路から都市ガス等の燃料ガスを供給し、それぞれのガスを空気極18と燃料極14に接触させて、発電を開始させる。すると、合金セパレータ22は、Inconel600を基材としているため、燃料電池20の発電作用により高温酸化雰囲気下に曝され、合金内に含有されているクロムが酸化し、合金セパレータ22の表面に酸化クロム層が形成される。
【0030】
更に、形成された酸化クロムが酸素と水に反応して、気体のCrO2(OH)2が発生して発散され、空気極18に接触する。ところが空気極18の材質がLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3であり、空気極18に接する第2電解質6がサマリアドープしたセリアベース酸化物から構成されていることから、両者の界面では合金セパレータ22から発生したクロム含有ガス(CrO2(OH)2)による影響を受けることがない。このため、固体電解質型燃料電池は、発電作用の低下等を起こすことがなく、発電が長時間安定して行われる。
【0031】
なお、上記例では固体電解質層16を第1電解質4と第2電解質6の2層で形成したが、本発明は固体電解質層16を2層でなく、第2電解質6と同等の所定の成分のみで形成してもよい。例えば、固体電解質層16をサマリアをドープしたセリアベースの酸化物で形成し、その表裏面に上記空気極18と燃料極14を形成してもよい。この場合でも、空気極18と固体電解質層16との界面が所定の条件に保持されるため、クロム含有ガスによる発電能力の低下を防止できる。
【0032】
また、上記例では合金セパレータ22をNi基合金のInconel600で形成したが、本発明はFe基合金等その他の合金類からなるセパレータであって、クロム含有ガスを発生させるセパレータに対しても有効である。
【0033】
(実験例)
以下、固体電解質型燃料電池の実験例について説明する。実験装置を図4に、又実験結果を図2、図3に示す。
【0034】
実験装置は、図4に示すようにセラミック製の容器52と、容器52の内部に収容した試験片54を押さえる蓋56等からなり、蓋56には空気を導入させる供給口58と、導入した空気を排出する排出口60が形成されている。なお、78は白金電極、80はメッシュ状の白金電極である。
【0035】
試験片54は、本発明にかかる第1試験片と、従来例の第2試験片を用意し、また、蓋56はInconel600の合金製とセラミック製を用いた。
【0036】
第1試験片は、電解質16とその上に設けた空気極18であり、電解質16は第1電解質4(8YSZのペレット(直径20mm、厚さ2mm)からなる)と、第2電解質6(サマリアをドープしたセリア(SDC)の膜(厚さ20μm)からなる)とからの2層構造で構成し、空気極18は、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)粉をヘキシレングリコール中に分散し、その溶液をスクリーン法で第2電解質6上に塗布し、1100℃で4時間焼成して形成した。そして、第1電解質4の周囲に電極62を巻き付けた。
【0037】
従来例としての第2試験片(図示せず)は、電解質を8YSZで形成し、その上に平均粒径2μmのLa0 . 6Sr0 . 4MnO3+δ (LSM)粉をヘキシレングリコール中に分散し、その溶液をスクリーン法で塗布し、1150℃で焼成して空気極18を形成し、更に電極62を電解質の周囲に巻き付けた。
【0038】
実験は、試験片54を容器52内に入れ、蓋56で試験片54の上部を覆った状態で試験片54の上下方向に電流を流し、全体を所定温度(800℃)に加熱し、供給口58から排出口60に向けて空気を流し、燃料電池の使用条件と同様な条件において、上下方向に電流密度0.3A/cm2で通電させて、空気極18と電解質16(電極62)の間の分極(過電圧)を測定した。
【0039】
結果を図2に示す。図2に示すように、本発明にかかる第1試験片では、過電圧は、2500分経過した時点でもほとんど変化がなく、クロム含有ガスを発生させないセラミック製の蓋56を用いた場合とほぼ同様の値であり、クロム含有ガスの影響を受けていないことがわかる。これに対して、第2試験片を用いた実験では、100分以内に過電圧が−2000mVに上昇し、蓋56からのクロム被毒を受けていることがわかる。
【0040】
また、図3に他の実験例の結果を示す。
【0041】
図3の表は、空気極と第2電解質の材質を変更し、それぞれの組み合わせにおいて上記実験と同様に行なって測定したときの過電圧の値を示す。結果から、クロム含有の耐熱性合金をセパレータに用いた場合に、最もクロム被毒を受けない組み合わせは、空気極にLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3を使用し、第2電解質にCe0.8Sm0.2O1.9を使用した組み合わせであることがわかる。
【0042】
尚、上記例では平板型の固体電解質型燃料電池を例に説明したが、本発明は平板型に限るものではなく、円筒型の固体電解質型燃料電池、その他の形状の固体電解質型燃料電池であってよい。
【0043】
更に、クロム含有合金はセパレータ等インタコネクタに用いるだけではなく、固体電解質型燃料電池を支持する支持部材や、容器、配管等、その他の構成部材でよく、クロムを含有した耐熱合金の使用箇所を特定するものではない。
【0044】
【発明の効果】
本発明の固体電解質型燃料電池によれば、単電池の空気極と電解質とを、空気極と電解質の界面でクロム含有ガスによる発電能力の低下を生じさせない組み合わせの材質としたことから、セパレータ等固体電解質型燃料電池の構成部材にクロム含有合金を用いることができ、安価で、長時間安定した発電動作を行う固体電解質型燃料電池を提供することができる。
【0045】
また電解質を少なくとも2層とし、空気極側の電解質を空気極とクロム被毒が生じない成分としたので、空気極との界面を形成する必要な部分にのみ所定の電解質とし、それ以外の電解質の基台部分を通常の扱いやすい一般的な電解質で構成できるので、効率、価格、性能等を良好に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる単電池を示す断面図である。
【図2】実験結果を示すグラフである。
【図3】実験結果の表を示す図である。
【図4】実験装置を示す図である。
【図5】燃料電池を示す断面図である。
【符号の説明】
4 第1電解質
6 第2電解質
10 セパレータ(インタコネクタ)
12 単電池
14 燃料極
15、17 溝部
16 固体電解質
18 空気極
20 燃料電池
22 合金セパレータ
24 セラミックセパレータ
25 凹部
32 ニッケルメッシュ
34 集電孔
54 試験片
56 蓋
58 供給口
60 排出口
62 電極
78 白金電極
80 メッシュ状の白金電極
Claims (4)
- 固体電解質型燃料電池の空気極および固体電解質を、該空気極と該電解質との界面において、固体電解質側をCe1−xSmxO2−δ、空気極側をLa1−ySryFe1−zCozO3とすることを特徴とする固体電解質型燃料電池。ただしx=0.1〜0.5、y=0.05〜0.6、z=0.01〜0.95、δは不足酸素とする。
- 固体電解質を第1電解質と第2電解質の2層とし、かつ前記第2電解質層をCe1−xSmxO2−δ、空気極をLa1−ySryFe1−zCozO3として前記第2電解質上に形成したことを特徴とする固体電解質型燃料電池。ただしx=0.1〜0.5、y=0.05〜0.6、z=0.01〜0.95、δは不足酸素とする。
- 前記Ce1−xSmxO2−δがCe0.8Sm0.2O1.9であり、前記La1−ySryFe1−zCozO3 がLa0.6Sr0.4Co0.2 Fe0.8O3である請求項1または2に記載の固体電解質型燃料電池。
- 前記固体電解質型燃料電池の構成部材の少なくとも一部に、クロム含有合金を用いている請求項1〜3に記載の固体電解質型燃料電池。
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